魔更 聖編
第6話
華凛
「…とりあえず、ここで休んでいろ」


「…す、すみません」


俺はあれから華凛さんに抱き抱えられ、常葉さんの家に連れて行かれた。
今はリビングのソファーで毛布をかけられて休んでいる。



(くそ…頭痛は収まったものの、あのパルキアって人の姿が頭から離れない)


俺は間違いなくあの人を知っている。
そして俺の記憶は、もうすぐ甦ろうとしているはず。
ジガルデさんも、それを望んでいるかの様な雰囲気だった。


華凛
「…やれやれ、記憶は戻りそうなのか?」


「…解りません、でも何か切っ掛けがあれば、あるいは……」


俺の回答に華凛さんはため息を吐き、胸の前で腕を組んでその豊満な代物を持ち上げていた。
そして首をコキコキと鳴らし、肩を竦める。
俺は思わずそこに視線を集中させてしまった。



「………」

華凛
「何だ? 子供らしくおっぱいでも欲しくなったか?」


「…いえ、何となく俺は胸が大きい人が好きなんだろうな…と思っただけです」

華凛
「…ふ、どいつもこいつもおっぱい信者だな、まぁ嫌いではない。それよりも速く記憶を取り戻すのだな」


そりゃごもっともだ…
とはいえ、常葉さんの居場所か…本当に俺にそれが解るのか?
いや、やらなければならない。
もうこんな争いは終わらせるべきだ!


ピンポーン!


と、その時インターホンが鳴る。
華凛さんはジャキッ!と大きな刀を手に持ち、ドアの方を睨んだ。
しばらく待って何も起きなかったが、もう1度インターホンが鳴った所で華凛さんはドアの方に音もたてず向かう。
そして、外の相手を確認してため息を吐いた。


華凛
「…何か、用ですか?」

女性
「あ、すみません…あの、こっちにセローラちゃんは来てないですか?」

華凛
「セローラ? いや、見ていないが…いないのですか?」

女性
「はい、もしかしたらって思ったんですけど…」


どうやら、近所に住んでる人の様だ。
華凛さんはテキトーに応対した後、やがてドアを締めてこちらに戻って来た。
かなり疲れてる顔だな…気を張っている為だろう。
状況的にも、いつ敵が現れるか解らない。
パルキアとかいうのは、きっと誘拐派のボスだ。
俺を一瞬で病院から転移させるチート性能からして、正直隠れる必要すら無いんじゃないかと思えて来る。
そして殺害派はやはり誘拐派と敵対しているのは判明した。
華凛さんが戦ったというヘラクロスは秩序どうこうとか言ってたらしいし、間違いなく殺害派。
でも、そいつはパルキアによって一瞬で殺されたらしい…



「パルキアがボスだと思いますか?」

華凛
「間違いないだろうな…ダーリンの居場所を知っているみたいな雰囲気だったし」
「ゲーム感覚とか言ってたが、つまりここまでの襲撃は奴のシナリオだったと思える」
「そして、タイムオーバーとも…」


俺は考えられるだけ考える。
ゲーム、シナリオ、タイム…何故そんな設定が必要なんだ?
誘拐派は常葉さんを拐ってて、更にその上で俺を狙っている。
俺の中にある何か…つまり雫。



「パルキアは、雫を狙ってるのか?」

華凛
「何だそれは?」


そういえば華凛さんは見てなかったんだっけか。
でも、アレは俺の意志で自由には出せない。
何か特別な条件でも必要なのかもしれないが、今の俺が出そうとした所で雫は外に出てくれないのだ…



「よく解らない、秩序を崩壊させる程度の球っころですよ…俺の中にある」

華凛
「…意味が解らんな、だがそれが狙われてる理由なら、想像はつく」
「空間を操れる様な化物が欲しがるレベルの代物で、秩序を護る監視者が危険視する代物」
「お前がそれを持っているという事は、お前にはそれなりに人外な能力があると言えるんだろう」


人外な、能力?
でも言われて気になった…確かに、あのパルキアやジガルデさんが意識する程の存在。
そして、それはどこかにもうひとつあり、それを消す事がジガルデさんの目的。
俺の記憶が戻れば、自ずと秩序は保たれる…?



(つまり、雫の力は秩序を乱すも直すも思いのままって事か…?)


だが、殺害派の話を含めると更に複雑だ。
俺がこの世界に現れた事で既に秩序が乱れているとヘラクロスは言っていたらしい。
だからこそ、華凛さんたちを利用してでも俺を殺そうと企んでる。
奴らは俺が死ねば、常葉さんの役目は失われ、勝手に戻って来ると言っていたらしいが…



(パルキアが常葉さんを拐っていたとして、本当に返してくれるのか?)


少なくとも、俺には想像がつかない。
パルキアの目的はそもそも何なんだ? 俺を拐って何をする?
雫が目的なら、それは一体どういう物なんだ?
何故、パルキアは異物なんだ?



「そうか、異物だから…?」

華凛
「? さっきから何だひとりでブツブツと…」


「俺もまた、この世界には必要の無い異物」
「でも、パルキアたちもそうなんだ…だからジガルデさんはそれ等の存在を許せない」

華凛
「だが、お前の記憶が戻れば秩序は保たれるんだろう?」
「何が何だか解らんが、お前は神の子か何かだとでも言うのか?」


俺はズキッ!と頭が痛くなり、右手で顔を覆う。
神…? 使途……継承者。
何だ、それ? 俺が神? いや、違う…ジガルデさんはそれでも俺を人の子と称した。
何かはある…それならやっぱり、雫っていうのが相当鍵なんだ!



「華凛…!」

華凛
「茜か…お前だけか?」


「うん、もうすぐ皆合流すると思う」


やや乱暴にドアを開けて中に入って来たのは、茜さんだった。
頭の耳をピコピコ動かし、尻尾をパタパタさせて埃を払っている。
そしてとりあえず無表情に俺を見て、少し安心した様な顔をした。


華凛
「…敵には、会わなかったか?」


「何人か…でも美拑と凪が倒したらしい」
「会話出来たらしいから、多分殺害派」


他の場所でも戦闘があったのか…だが既に終わっていたとは、御愁傷様だな。
殺害派も切羽詰まっているのかもしれない、パルキアみたいなのが出張って来た以上、もう猶予はきっと無いんだ。
やはり、雫は相当に危険な代物なんだろう…
パルキアはそれを欲しがり、殺害派はそれが奪われる前に俺を殺したい。
つまり、雫とは俺の生き死にでその存在を失うのだと予想出来る。
ジガルデさんも、最初はそのつもりで俺を消すと言っていたみたいだし。


華凛
「少し部屋に戻って仮眠を取る…悪いが、ここを頼む」


「うん、分かった」


華凛さんはかなり疲れた顔で自分の部屋に向かって行った。
俺のせいで、迷惑ばかりかけてるな…



「………」

「………」


「………」

「………」


会話は無い。
まぁ、茜さんからしたら俺に興味など微塵も無いだろうしな。
俺から話す様な話題も無いし、とりあえずこのまま黙ってよう。



「………」

「………」


「………」

「………」


「おお〜この感触…! やはり至高!!」
「これこそが茜たんのエベレスト! か・い・か・ん♪」


「じゃあ覚悟は出来てる? 私は出来てる」


「外道がぁーーー!!」


「んにゃおうぅぅぅぅぅぅぅっ!?」


と、突然茜さんに反撃されて誰かがワイヤーダメージ状態で吹っ飛ぶ。
茜さんは追撃する事まではせず、汚物を見るかの様な蔑んだ目で床に落ちた何かを見た。



「お、おお…な、何て哀れなモノを見るかの様な眼差し!」
「でも感じちゃう♪ このセローラの股間はギンギンですぞーーー!?」


「えっと、電話何処でしたっけ?」


「大丈夫、私が通報しておくから…」

セローラ
「お願い真面目に処理しようとしないで!? 後、その人誰なのさ!?」


セローラと名乗った変態は派手なリアクションで忙しなく動く。
俺たちはそんな変態を冷たい視線で見つめ、残念な顔でため息を吐いた。


セローラ
「酷い!! 何その空気読めや的な対応!?」
「え、え? もしかしてセローラちゃん場違いだった? そんな事無いよね!?」
「だってセローラちゃんってこんなにも存在感あるんだよ?」
「だから、どう見たってヒロイン候補! 何なら子作りしても良いのよ?」
「ほらほら! 抱きたくなっちゃったでしょ? 何なら今すぐでも良いよ!?」


「はっ!? まさかコイツ変態に扮して俺を殺そうとしてる殺害派か!?」


「…そうだったの、哀れなセローラ…せめて私が地獄に送ってあげる」

セローラ
「ちょっ! 何でそうなるの!? 私何か悪い事した!?」


「少なくとも公然わいせつ罪は適用出来るな、半年程は懲役だろ」


「さようならセローラ…せめて、檻の中で更正してね?」


もはやセローラはあたふたしながらツッコミまくっていた。
そして、この空気に触れた事で俺の頭はフル回転。
気が付けば、俺は息を吸う様にこんな言葉が口から出ていた。



「えいえんは、あるよ」

セローラ
「個人的にはMMRよと聞こえるのですが、どうなのでしょうか?」


「セローラ? そんな人いたっけ?」


「さぁ? 聞いた事無いね…」

セローラ
「あれ!? 既に記憶から消えてる!? 私もう永遠行ってるの!?」


俺たちは徹底的にセローラを無視し、この場をネタの空間に包み込む。
途中、茜ちゃんの乳首摘まんだりしたので、茜ちゃんは無言で反撃したがセローラは一切挫けていなかった。
おのれ、ゴーイングマイウェイなメイドだな…巨乳にもなれない半端者の癖に。



「くっそ…何か、情報がゴチャゴチャしてきやがった」
「元の記憶と、新しい記憶が整理出来てねぇ…」


「…戻ったの? 記憶…?」


俺はああ…と答え、ため息を吐く。
そして自分の体がロクに動かないのを感じて歯軋りした。



「くっそ…雫使ってセローラを生贄に傷治してやろうか?」

セローラ
「生贄って何!? 超怖いんですけど!?」


「じゃあ○ドン送りして諜殺とどっちが良い?」


「個人的には○オルグ送りの方が速いと思う…」

セローラ
「それだとホーリー○ーダー仲間に出来ない!!」


よし、とりあえずこっちは絶好調だ。
異世界のポケモン巻き込んでやるのは申し訳ないが、ここまで色々溜まってたからな!
敵が何のつもりで人の家族の偽モン使ったかは知らねぇが、ここまでブチ切れそうになったのは久し振りだ!!



「だが、体が動かん事にはどうにもならんか…」

ジガルデ
「記憶が戻ったか、継承者よ」

セローラ
「うげっ!? 何でいつの間に背後にいるの!?」


「!! 貴女が…ジガルデ……?」


突然、ジガルデさんが俺の側に現れていた。
いや、本当はずっと視ていたんだろう。
ジガルデは秩序ポケモン…あのゼルネアスやイベルタルと関係があるのでは?と言われてる大物だ。
俺が戦ったジガルデは『スワームチェンジ』の特性を持った獣みたいな個体だったが、この人は間違いなく『オーラブレイク』の純正個体。
その立ち振舞いはまるで神の様で、ある意味アルセウスさんに似ている気がした。


ジガルデ
「今、この世界には秩序を乱す要因がふたつある」


「家族の偽物と、もうひとつある『夢見の雫』ですね?」


ジガルデさんは微笑みを携えたまま、無言で肯定する。
そしてジガルデさんは左手を俺の顔に掲げ、そこから淡い光を放つ。
すると、俺の顔の包帯はゆっくりとバラバラになり、光の粒子となった。
その光景は、まるで世界の崩壊、再構築の時と酷似している。
この人の力は、やはり神の力なのか?


ジガルデ
「痛みは、どうだ?」


「!? 傷が、痛みが無い…!」


「凄い…斜めに深い傷があったはずなのに、完全に消えてる」


どうやら、ジガルデさんはこんな能力もあるらしい。
恐らく、『ジガルデセル』を利用した治療法なのだろうと俺は予測する。
あらゆる攻撃を受けても、すぐに自身を分解、再構築する事によって、この人は全ての攻撃をかわしてしまうのだ。
それを人体に応用すれば、俺の細胞を新品同様に再構築する事も出来るって事か…


ジガルデ
「これで、動けよう」


「ありがとうございます…でも、どうして俺みたいな異物にこんな?」

ジガルデ
「お前ならば、もうひとつの雫を消す事が出来ると判断したからだ」


つまり、この人はあくまで秩序の安定を望んでいる。
その為には、この世界に夢見の雫がふたつもあってはならない。
そして何かの理由があって、誰かが俺の雫を狙っている。
だったらやるしかない…俺は、全てを終わらせて全部救う!!



「約束します、ジガルデさん…俺は必ず全部救って元に戻すと」

ジガルデ
「信じよう…優しき継承者よ」
「だが、忘れるな? 私は、常に世界を視ているのだと…」


そう言ってジガルデさんはバラバラになって消えてしまった。
視ている、か…実際には視ているだけで良いはずなのに、あの人はわざわざこんな介入を繰り返していた。
それだけ、今のここは危機的状況なのかもしれない。
とりあえず、まずは常葉さんの家族と計画の練り直しだな…



「聖は、神の子なの?」


「は? んなわきゃない…俺はただの人間だよ」
「…奇跡が起こせる程度のな」

セローラ
「わお! だったら私がハーレム築ける世界作って!?」


「別に良いが、代わりにこの世界が無かった事になるがよろしいか?」


「絶対に止めるから…! 例えセローラを殺してでも」


茜ちゃんは本気みたいだな…やれやれこのセローラってのは面白いが空気が読めてない。
まぁ、とりあえずふたりには軽く説明してやるか…
俺はそう思って体内から雫を外に出してみせる。
色は綺麗な透明で未使用状態。
それをふたりは見て注目していた。



「この夢見の雫ってのは、神様が誰かの幸せを願って生み出したチートアイテムだ」
「だから、お前みたいに欲望まみれの願いなんか叶えたら、一瞬でドス黒く染まって暴走しちまう」
「そうなったら、世界なんて一瞬で消え去る位の、神の裁きが降りかかる事になるんだ…」

セローラ
「こ、怖っ! 何でそんなの貴方が持ってるんですか!?」


「これは、俺の姉さんから受け継いだ物だ…どうも、代々受け継がれていく物らしい」


「…一子相伝?」


俺はコクリと頷く。
そして、軽くふたりに夢見の雫の経緯と俺の経験を話してやった。
初対面の時は細かく語りはしなかったからな…
とりあえずそれを聞いて、茜ちゃんとセローラは俺を見る目を変えたみたいだ。



「…じゃあ、それを使えばご主人様は帰って来れるの?」


「理論上はな…どれ程のリスクになるかが解らない内は、迂闊に使えないが…」

セローラ
「周りに悪意があったら、その分危険度が増すんですよね?」
「それって、私たちにもし少しでも悪意があったら、無条件で濁るって事なんですか?」


「そういう事だな…これは俺自身も例外じゃない」
「使えば必ず濁る…程度はあれどな」
「つまり、この雫は浄化しない限り、使用には回数制限が付きまとう」


もちろん、それはもうひとつの雫もそのはずだ。
ジガルデさんの口振りからすると、恐らく同一の物が存在していると考えられる。
そして、それは確実に有り得ない状況だ。
同一時間軸の並行世界に夢見の雫はふたつと存在出来ないのだから。
だが、奇しくもこの世界は俺にとっては過去の世界。
恵里香との連絡も取れず、ここが別時間軸の世界だというのは解ってるんだ。
だから、この世界にも本来あるべき夢見の雫があるはず…
それが、この世界の秩序を乱してしまうのだろう…



(考えろ…何故こんな真似をした?)


常葉さんとの交換、夢見の雫の重複、家族のコピー…
俺の殺害を狙う秩序チーム…逆に俺を信じてくれるジガルデさん。
これ等が混ざり合う理由は何だ? もしかして、俺は何か見落としているのか?
気になるとしたら、殺害派の秩序チームだ。
秩序秩序と言っていた所を見ると、ジガルデさんに関係がありそうだが、どうにもそれを決定付ける物が無い。
逆に、何故そこまでして秩序チームは俺を狙う?



(…白那(しろな)さんのパチモンは、間違いなく雫を狙ってる)


そして秩序チームはそれを阻止したい。
俺を殺す事で、別の継承者に強制引き継ぎさせて、この世界からさっさと消してしまいたいんだ。
確証は無いが、あのジガルデさんも最初そうしようとしてたみたいだから、多分そうなんだろう。
つまり、俺が死ねば雫は俺の元いた世界に勝手に帰る…もしくは、創造主たるアルセウスさんの元に行くのだろう。
そうなれば、この世界から雫はひとつ消え去り、元の状態に戻る。
問題は、異物と称されるパチモンチームに常葉さんが囚われている可能性だが。
とにかくこれが1番厄介だ…俺ひとりならさっさと雫使って帰りゃ済むんだが。
それだと、パチモンチームが異物として残り、肝心の常葉さんが帰って来るかは解らない。
最悪、常葉さんだけが消える可能性もある。



「くっそ…やっぱ白那さんのパチモンから直接聞くしかないのか」


「…白那?」

セローラ
「ってかパチモンって…?」


俺は軽く家族の事も説明しておく。
まぁ、簡単に白那さんの事を説明しただけだが…



「パルキア…空間、ポケモン」

セローラ
「何かその人も相当無茶苦茶じゃないんですか?」


「パチモンの方はな…だが、ありゃどう見ても白那さんじゃない」


しかし、あの強さは厄介だ。
パチモンの癖に能力だけはチートだからな…
だけど恐らく精密な計算は出来てないはず…あの能力は見た目以上に繊細だと白那さんは言ってたからな。



「!? ここで、か…?」


「!! これ、何?」

セローラ
「わぁお…もしかして新手の○タンド使いかっ!?」


俺はズビシッ!っとセローラの側頭部にチョップでツッコム。
そしてやれやれ…と俺は思い、敵を探した。
この都合が良い空間も、恐らくパチモンが作った物だと思うんだが、これに関しては秩序チームも使ってた。
そう考えると、パチモンと秩序チームはどこかしらで繋がってはいるはずなんだ。
それが何かの手違いで仲違いを起こしたってのが妥当な所だが…



「とりあえず、そろそろ死んでもらおうかねぇ? 特異点のボウヤ!」


「!? まさか…そんなオチかよ!」


俺は敵の姿を見て驚愕する。
その姿は見た事のある緑と黒の配色をした体色。
ただこちらは服をちゃんと着ており、何やらやけに厚着をしていた。
まぁ、気温的には冬に入りかけてるし、人なら寒いと思えるだろうが、ポケモンでもやっぱ寒いのはダメなのかね…
ってか…とりあえずツッコムが。



「もうひとりいたのかよジガルデ!?」

セローラ
「しかも、何か神々しさが無い! 何かチンピラ染みた感じ!!」


「ジガルデの色違い…?」


正確にはこっちが正規カラーだな。
俺がかつて戦った時の相手に良く似てる。
あの時のジガルデはコアが本体みたいな物で、自我なんてとても見られなかったが…
こっちは形態的には通常形態っぽい感じで、髪型は色ジガルデさんと同じく長髪。
ただ、色ジガルデさんと明らかに違うのは2本の足で立っている事。
後、色ジガルデさんは服を着ていなかったな…もっとも細胞の形成をコントロールしているし、服っぽく見せてる細胞パーツで局部は隠していたから、そこまでエロくも無かったが…
コイツは更にエロさの欠片も無い厚手のコート!
しかも黒コートで全身を身に包んでおり、露骨に寒いの嫌ですみたいな格好だった。
おのれ…生意気に巨乳だというのに、勿体無い!


ジガルデ
「こちとら騙されてイライラしてんだ…! さっさと死んでくれや特異点!?」


「とりあえず待てバカ! いきなり意味解らんわ!!」
「お前が秩序チームの親玉だろ!? パチモンのパルキアとどういう関係だ!?」


俺がそう聞くと、ジガルデは舌打ちし、細い目を更に細めて睨む。
うわ目付き悪ぅ…あの時のとはまた全然違う個体っぽいな。


ジガルデ
「そのパルキアってのが私たちをこの世界に呼んだんだよ!?」
「しばらくしたら元の世界に帰してやるって約束でね!」


「何ぃ? 何の理由があって呼びつけられたんだよ!?」
「それで何で俺の命を狙う!?」

ジガルデ
「そんなモン私が知るか! それが秩序ってモンだろうが!?」


俺たちは全員固まる。
どうやら、秩序にも色々あるらしい。
いや、そうじゃないだろ!? 今までの秩序チームはそれっぽい雰囲気でミステリアスだったのに、ボスがコレなの!?
どう考えても脳筋タイプじゃん!! 絶対秩序の意味解ってないよ!!


セローラ
「それでは、そんなジガルデさんに問題です!」


「デデン」

セローラ
「魔更 聖がこの世界にいると秩序はどうなるでしょうか?」

ジガルデ
「乱れる!」

セローラ
「ピンポーン! 正解です、それでは第2問!」


「デデン」

セローラ
「パチモンのパルキアがこの世界にいたら秩序はどうなりますか?」

ジガルデ
「乱れる!」

セローラ
「ピンポーンピンポーン! 正解です! それでは第3問!」


「デデン」

セローラ
「異世界から来た貴女たち秩序チームが世界に干渉しまくったら、この世界の秩序はどうなりますか?」

ジガルデ
「乱れる!」


「乱れてんじゃねぇか!! 根本から間違ってるよ!?」
「つか、ノリが良いなオイ!? そろそろ真相究明が近いのに、ここでネタの神が全力出してるよ!!」


とりあえず俺たちは一旦落ち着く事にした。
そしてまずはジガルデから話を聞く事に…



………………………



ジガルデ
「そのパルキアが大量に俺たちにくれたのがコレだよ…」


「まるで夢見の雫だな…! でも透明のガラスみたいな感じだ…」


俺はジガルデがポケットから出したガラス玉を見てそう言う。
どうやら、この中に本当の空間が封じられてるらしく、これを割れば空間が元に戻る仕組みらしい。
だからこそ、この特殊な空間では何をやっても現実には影響せず、時間の経過も感じられないんだそうだ。
しかし、何でこんなモノを秩序チームに?



「結局…パルキアは何がしたかったの?」

セローラ
「呼びつけた理由が解らないもんね〜?」


「…全部ゲーム感覚だってんなら、悪趣味にも程があるな」


巻き込まれただけだというなら、秩序チームは完全に被害者だ。
死人も出てるし、そりゃジガルデ的にも仲間が殺されたんじゃ黙ってられない。


ジガルデ
「私たちは、皆元の世界に帰りたかっただけだ」
「でもパルキアに騙されたんだと知った時点で、私たちはお前を殺す計画を立てた」
「お前が特異点なのは知っていたし、殺せばパルキアの計画もおじゃんで、結果的に元の世界に戻れると思ったからだ」


「…何でそんな無茶苦茶な結論に辿り着く?」
「どう考えても、無理だろそんなの… 困ってるなら協力すれば良かったんだ!」


ジガルデはイラッとしながら目を細める。
多分頭が足りなかったんだろうな…ひょっとしたら計画も別の仲間が勝手に立てたのかもしれない。
要するに、秩序チームはただのならず者だったって事だ。
意味も良く解ってなく、勝手に騙されて、勝手に結論付けて、勝手に俺を殺そうとした。
どうせこのジガルデは大して考えもせずに、秩序秩序って言って仲間に祭り上げられてたんだろうな…


ジガルデ
「…だったら、どうすりゃ良いんだよ?」


「自分で考えろ…って言いたい所だが、今回は俺も原因だろうから、素直に助けてやる」
「安心しろよ、俺が全部救う…だからお前は黙って協力しろ!」
「この世界に秩序を護るジガルデはふたりもいらないよ…もっとも、お前はそんなの出来なさそうなタイプみたいだが」

ジガルデ
「あん? バカにしてんのか? これでもとぐろ巻けんだぞ!?」


「逆にスゲェな!? 何で人型でも出来るんだよ!?」

セローラ
「とりあえずそろそろ元の空間に戻りましょうよ…」


「うん、とりあえず割るね」


そう言って茜ちゃんはガラスを軽く床に投げ、そこから空間は元に戻った。
やれやれ…とりあえずジガルデの事を説明して最終決戦かね?
恐らく、もう残された謎は少ない…パチモンさえ倒せば、恐らく黒幕が出て来る。
俺は、何となく確信していた…パチモンの白那さんは多分、造られた存在。
そして、誰がそれを造った? それは俺の雫が目的のはず。
その目的の為にパチモンを造り、ゲームと称して異世界のジガルデたちをも巻き込んだ。
何よりも、何の罪も無い常葉さんまで巻き込んだ!
俺は沸々と煮えたぎる怒りを押さえながら、改めて決意する。
必ず、全部救うと…救える存在は、必ず全部救う!!










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』

X

『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』



第6話 『聖復活! ふたりのジガルデ!?』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/01(水) 21:38 )