魔更 聖編
第4話

(さて、ようやく城に着いたわけだが…)

美拑
「うわ…ナビの衛星写真で見るよりも綺麗ですね」

保美香
「確かに…一見すると、敵が潜んでいるとは思いがたい神秘さがありますわね」


私たちが踏み込んだそこは、鬱蒼と高い木が茂る樹海の中にあった。
そして高い塀に囲まれた城門を私たちは潜る。
その先に広がっていたのは、あまりにも美しい花々が咲き誇る庭園だった…


美拑
「………」

保美香
「これは…何と、美しい」


「…隅々まで手が入っている、ここまでの庭園は見た事が無いな」


美拑は完全に心奪われており、保美香も感嘆の息を漏らす。
かくいう私も、この美しい庭園に安らかな気持ちを感じていた。
花に関しては素人だが、それでもこの花々に注がれている愛情は、素晴らしい物だと想像出来る。
あまりにも、敵の拠点とは思いがたい…


美拑
「ですが、間違いなくここに聖さんがいる…!」

保美香
「…! 血痕…ですか」


ふたりが見付けたのは足元に点々と広がる血痕。
それも、無理矢理傷痕を引きずったかの様な感じで、この美しい庭園にはとてもミスマッチな、生々しい跡だった。



「…これは、肉片…か?」


私は思わずそれを拾い上げる。
ほんの1mm以下程のサイズだが、足元でもある石畳の角に引っ掛かっていたのだ。
そして、恐らく…これは聖君の。


美拑
「ふざけてる…! こんなの絶対におかしい!!」
「この庭園から感じられる魂はとても美しいのに、城から流れてる魂は吐き気を催す程にドス黒い!!」

保美香
「…美拑」


「どうやら、あの城にいる者は確かに魔王の様だな」
「ゲームとやらで言うのであれば、この城はかつては光溢れる希望の城だったんだろう…」
「だが、今は魔王の力でここは暗黒に包まれている…」


我ながら自分で臭い台詞だとは思う。
だが、ふたりは真剣な目をして城を睨んでいた。
それだけ、異質なのだ…あの城から感じる殺気は!



「ふたりとも、覚悟は出来ているか?」

美拑
「当然です!」

保美香
「聖さんがどんな仕打ちを受けているかも解りませんが、必ず助けてみせますわ!!」


ふたりとも気合は十分だな。
それならば問題は無い…このまま城に突っ込む!!



「!? ふたりとも走れ!!」

保美香&美拑
「!?」


私はふたりに叫ぶと、反射的にふたりはその場から移動する。
そして私は逆にバックステップして敵の攻撃をかわした。
かなり上空から落ちて来た様で、石畳が粉砕されている。
辛うじて花々は無事だったものの、相手の雰囲気は全くお構い無し。
私ははぁ…とため息を吐き、とりあえず前髪をかき上げて相手を睨んだ。



「……ァァ」


そこにいたのは長い耳を頭から垂らす女性。
ボロボロのメイド服に身を包み、体勢を前屈みにしつつ、口から涎を垂らしている。
全身の筋肉が異様にパンプアップしており、その体は私と比べると数段巨大に見えた。
だが、私は何ひとつ恐れは抱かない。
確かに威圧感はあるが、それだけだ。
この相手からは全く、人間性を感じない。
言うなれば獣か…いや、獣にも劣る畜生だな。


美拑
「凪さん、大丈夫ですか!?」


「問題無い! ふたりは先を急げ!! ここは私ひとりで十分だ!!」

保美香
「!! 美拑、先を急ぎますわよ!!」


保美香はすぐに美拑を連れて城に走る。
美拑は少し戸惑っていたが、状況を察してすぐに走り出したな。
それに反応したのか、長い耳の女は保美香たちを見据える。
そして強靭な筋肉のバネを使って踏み込み、そこから飛び出そうとする。
私はその前にそいつを『暴風』で空高く吹き飛ばした。
私は翼をはためかせ、その敵を追う。



「こんな美しい庭園に、君は無粋すぎる…」
「少し、場所を変えようか!!」


私は空中で相手の耳を掴み、そのままトップスピードまで加速して城の上空まで到達する。
そして私はその勢いのまま、城の1番高い天井に敵を叩き付けた。
かなりの勢いがあった為、敵は城の内部にまで突き抜けてしまう。
私は少ししまった…と思いつつも後の祭りだと思い、そのまま崩れた壁から内部に進入した。
やれやれ…ふたりに先行させておきながら、私が先に最上階とは…
ゲームとかだと、確かラストボスは1番高い所にいるのが定説らしいし、そうなると私が1番乗りだな…



………………………



美拑
「保美香さん、地下への階段がありますよ!?」

保美香
「上か下か…おおよそ2択と思われますわね」
「貴女はどっちと予想しますか?」

美拑
「上です! 絶対上!!」

保美香
「…なら下ですわね! こういう場合、地下に広がる迷宮の先にラスボスがいる物ですわ!」

美拑
「いーやーでーすー!! 絶対地下とか嫌な予感しかしません!!」


露骨に嫌がりますわね…まぁ、この城はかなり薄暗いですし、怖がりの美拑では致し方無いのですが。


保美香
「美拑、聖さんを隠すなら地下の方が可能性は高いですわよ?」

美拑
「でも〜何か絶対出ますって!! ただでさえさっきの敵も気持ち悪かったのに〜!」


まぁ、そりゃ出るでしょう…仮にも敵の拠点なのですから。
しかし、虎穴に入らずんば虎児を得ず…ここは割り切って貰わないと。


保美香
「それなら貴女は上を目指しなさい、わたくしはひとりで下を調べるかしら」

美拑
「はいっ! それなら問題無しです!!」


美拑は嬉しそうに上の階段を目指して走った。
やれやれですわね…美拑の怖がりがこんな所で発揮されようとは。


保美香
「………」


わたくしは下への階段の手前で固まる。
これは…美拑でなくとも恐怖を感じますわね。
下には一切の灯りが存在してなかった。
流石のわたくしも暗闇では目が効きませんからね…仕方ありません、触手を使って空気を頼りに進みましょう…



………………………




「!? な、何だ今の音は?」


俺は爆発音に似た音で目を覚ます。
途端に痛みが襲い、俺は歯を食い縛ってそれに耐えた。
どうやら、部屋の外で何かがあった様だが…一体何事だ?
俺は改めて体を寝かせたまま部屋の状況を確認する。
ここは別に牢屋とかそういう所ではなく、どこか懐かしさを覚える部屋だった。



(あれ…俺は、ここを知ってる?)


それは、記憶のどこかに確かに引っ掛かっていた。
俺はかつて、この部屋にいた事がある…?
でも、それはいつだ…? 全く思い出せない…
俺は、立ち上がる事が出来ない為、その場を這いずってベッドに上がる。
そして近くの机に目が行った。
その瞬間、俺は頭痛に見舞われる。



(何…だ? 思い出そうとすると、頭が割れそうになる!!)


一体何なんだ俺の記憶は!?
俺がこの城を知ってるって事は、俺はこの城の関係者なのか!?
俺が戸惑っていると、更に激しい音が外で鳴り響く。
一瞬部屋が揺れた…外では、まさか戦闘でも起こってるのか!?



………………………




「ふぅ…久し振りに技を振るったが、こんな所か」


私は先程の敵を『エアスラッシュ』一撃で切り伏せた。
すると敵は黒い霧となって消え去り、その場には死体すら残らなかったのだ。
私はとりあえず周りを確認する。
ここは最上階のはずだが、あるのは部屋がひとつだけ、か…
しかし、あまりにその部屋は目立つ…恐らく、何かあるな?
私はそう思ってその部屋にゆっくり近付く…が、その瞬間私の背後から異様な気配を感じ、私は背筋を凍らせて戦慄した。



(な、んだ…この感覚は!? 今、私の背後にいるのは何なんだ!?)


「ほう、動けるかピジョットの女…かなりの素養があると見た」
「だが、運が悪い…私の前に立っているとは」


動ける…と言っても、私はその場から1歩も動く勇気は絞り出せず、何も状況を確かめられない。
解る事は、相手が恐らく女性という事だけだ。
やや低めの音程で、抑揚はほとんど無い。
かなり達観した喋り方であり、台詞ひとつから尊大さを感じる。



「ふ…私の『オーラ』に恐怖したか、ならば良い…そのまま『動くな』」


「!?」


その声ひとつで、私は呼吸すら困難になる。
背後の女は言葉ひとつだけで私の動きを封じ、恐怖を植え付けるのだ。
やがて女は何か這いずるかの様な音をたてながら私の横を通り過ぎる。
そこで私が見たモノは、異様としか言えない相手だった。
その体は白銀と水色で構成された配色の女。
下半身は蛇の様になっており、長さは数mあった。
背中からは5本の突起が飛び出しており、それが恐らく種族特徴。
左手は水色、右腕は白銀のこれまた異様な配色。
髪は腰まで届く美しい白銀で、チラリと見えた横顔からは微笑みが見えた。
その女は謎の部屋の前まで歩き、そして扉の前に手をかざすと、扉はまるで分解される様に細切れになっていく。
規則正しい形の立方体にまで分解されたそれは、音もたてずに光の粒子となって消え去ってしまった。
そして、その先に私はひとりの少年を見付ける。



「!? な、何だ…貴女は?」


「ほう、恐怖すら抱かぬか」
「流石は、異界の神の使途よ…やはり、人の子にその力は過ぎたる物だ」
「本来ならば、この世界においては永遠に封印せねばならぬ物」
「故に、ふたつの雫が存在する等あってはならない」


「…? 雫? 異界の、神? 一体…貴女は何者なんだ?」


女は表情ひとつ変えず、微笑みを見せたまま安らかに言葉を放つ。
そしてそこから放たれた名とは、我々が知る由も無い程の存在だと証明した…



「私は『ジガルデ』…この世界の秩序を護る監視者」
「そして、お前はその秩序を崩壊させる…故に、ここで消えてもらう」
「もうひとつの雫も消さねばならぬが、不確定要素が多い故、まずは手近なお前からだ」


「待ってくれ!? 頼む、教えてくれ!! 貴女は常葉 茂の居場所を知っているか!?」


その瞬間、私の心が反応する。
今、この圧倒的な状況で、あの無力な少年は、この場に関係の無い人間の居場所を尋ねたのだ。
ジガルデと名乗ったポケモンは、なおも表情を変えず、ただ無感情にこう言った。


ジガルデ
「知っている、が…何故それを聞く?」


「頼みます…! 俺はどうなっても良い!! その人をこの世界に戻してください!!」


聖君は勢いでベッドから落ち、這いずりながらそう懇願した。
私は、頬から涙が伝うのを感じる。
私は…何をやっている? こんな事で、騎士を名乗れるのか?



(違う!! こんな理不尽が許されてはならない!!)


あんな少年を犠牲にして、茂さんを救った等と…末代までの恥!!
守らねばならない…あの勇気ある少年を!
自らの死すら恐れず、それでも他人である私たちの為に命を差し出す少年を!!
私に、もはや恐怖は無い! 今ここで、奴を倒して聖君を救ってみせる!!



「ジガルデェェェ!!」

ジガルデ
「愚かな…動かねば死ぬ事は無かったものの」


私は翼をはためかせて奴の背後から突進する。
そして全身に『暴風』の風を纏い、そのまま右手を前に構えて突っ込んだ。
私の右手は指先からジガルデの背中を破壊していく。
ジガルデは背中から貫かれ、その場でバラバラになった…
私は、すぐに恐怖する…が反応してその場から横に飛ぶ。
気が付けば、ジガルデは私の背後にいたのだ…無傷の状態で。


ジガルデ
「…提案をしようか? その少年を諦めれば、お前の主を助けてやろう」


「間違えているぞジガルデ! 私は今、主の為に戦っているのではない!」
「この勇気ある少年を救う為に! 貴様の前に立ち塞がっているのだ!!」


ジガルデは数秒黙った。
私はそのまま遠距離から『エアスラッシュ』を放つ。
しかし、ジガルデの体は細胞が分解するかの様に切れるだけで、すぐに再生してしまった。
これでは、物理も特殊も通じない!?
一体奴の体はどうなっているんだ!



「凪さん、もう良い!! 俺の事は見捨てて逃げてくれ!!」
「ジガルデは、悪意があってこんな事をしてるんじゃないんだ!!」

ジガルデ
「………」


「何を言っているんだ! 例え悪意が無くとも、それでも君の事を殺そうとしてるんだぞ!?」


「それでも!」


「子供がそれ以上大人に駄々をこねるな!! これは私の意志だ!!」
「例え私が悪だと言われても、私は絶対に君を助ける!!」


私は全力で羽を羽ばたかせ、『熱風』を巻き起こす。
それ等はジガルデの全身を焼き、ジガルデは棒立ちのまま、またバラバラになった。
そして、いつの間にか別の場所に再生する。
ダメか…! 何か弱点は無いのか!?


ジガルデ
「…神の使徒か、純粋すぎる継承者だな、お前は」


「何を訳の解らない事を…!」

ジガルデ
「良かろう、今回は退こう」
「ピジョットの女を消す事は、別の災厄を引き起こしかねん…ただし」
「お前たちの力で、もうひとつの雫を消してみせよ」


ジガルデはいきなりそんな事を言い始めた。
何が何だか解らないが、退いてくれるというなら、今は助かる…か。


ジガルデ
「私が求めるのは、秩序」
「結果として大幅な遠回りとなるが、そこの継承者の優しさに免じて妥協する」
「さらばだ、優しき継承者…だが忘れるな? 私はこの世界を常に『視て』いるのだと」


そう言って、ジガルデは光の粒子となってその場から消えてしまった。
私は一気に恐怖の重圧から解き放たれ、その場で地上に落ちる。
恐ろしい奴だった…対峙するだけで、ここまで消耗させられるとは。
奴は、まさか神だとでも言うのだろうか?
以前、イベルタルというポケモンを見たが、あれと同等以上のモノを感じた。
もはや、生きとし生けるモノがどうこう出来る相手では無いのかもしれない…



「雫だって…? 一体、何なんだよ…それは?」


「…今は、それ所じゃないだろう、とにかく君を早く治療しなければ!」


私はよろめきながらも聖君の元に走る。
聖君は顔に包帯を巻き、ズタズタの足で血塗れになっていた。
見るも無惨な姿に、私は心苦しくなる。
私は騎士でありながら、この少年よりも勇気が足りなかったのだ…



「すまない…君には感謝しか出来ない、そんな状態でも、茂さんの事を案じてくれるとは…」


「…俺には、解らないんです、どうして貴女たちはこんな俺なんかを優先するのか」
「俺を見捨てれば、全部元に戻るのに…何故?」


聖君は泣いていた。
私はそんな聖君をお姫様抱っこし、ゆっくりと歩き始める。
そして、そんな聖君に私は微笑んだ。



「優先度は関係無いさ…茂さんなら、絶対にこうする」
「私たちは、そんな茂さんが好きだから、君の事も護りたいと思えるんだ!」


聖君はそれ以上何も言わなかった。
ただ、彼は泣くのを止め、唇を噛んで震えている。
そうか…強くなろうとしてるんだな、君は。
ならば、私は騎士としてこの少年を護る!
どんな理不尽があろうとも、立ち向かってみせよう!



………………………



保美香
(いくつか部屋はある…灯りは点いていませんが、ランプ等は設置されてますね)


つまり、本来ならばこの空間は人の手が入っていたという事。
しかし、今は何も無い…果たしてこの地下には一体何が?
わたくしは触手を蠢かして周囲に気を配る。
思ったよりも埃は少ない…掃除は意外にキチンとされてますわね。
逆に疑問が浮かぶ…何故そんな城が無人なのか?
凪さんが言っていた様に、魔王のせいで突然そうなったとでも?
だとしたら、流石に笑い物ですが…


保美香
「…とりあえず、予想はしていましたが」


「クククククハハハ!」


奇妙な笑い声が廊下に響き渡る。
この暗闇で戦える敵だと言うのですか?
だとしたら、かなりマズイかしら…わたくしは一切視界が解らない。
もし相手が遠距離主体の戦法だとしたら…


カァァァァァァァッ!!


保美香
「ぐわぁぁぁぁ!? 目がぁぁぁぁ!!」


突然眩しい光が差し、わたくしは視界を塞がれる。
しかし、すぐに光に目が慣れ、わたくしは相手を見た。
どうやら『日本晴れ』だった様で、相手は頭に花を乗せた草タイプ。
イメージ的には『ドレディア』でしょうか? わたくしは何故か、何となく不快になった。
理由は解りませんが、色々存在が被っている気がするのです!


ドレディア
「!!」


ドレディアは不意打ち気味に高速で移動する。
『葉緑素』ですか…! 確かに速いですが。
わたくしは冷静に状況を判断し、触手を前方多面に展開し、そこから大量の『ベノムショック』を撃ち出した。
イメージ的には○イマット・フルバーストですが、とにかくドレディアはこの狭い廊下で逃げ場もなく攻撃を食らって悶えていた。
やがてすぐに黒い霧となって消え去り、見事な噛ませっぷりを披露してくれましたわね。


保美香
「ポーション乙」


と、何故か頭にそんな言葉が舞い降りて口にしてしまった。
う〜ん、どうにもわたくしはそういうポジションでは無いと思いたいのですが…
こういうのはやはりツッコミ役がいなくては寂しい物なのですね…初めての感覚です。
ちなみに、それから探索を続けるものの、結局何も見付からず、踏み込んではならなさそうな下への階段に怖じ気づき、わたくしは探索を止めました…
恐らく、ただの罠でしたわね…



………………………



美拑
「あれ? 凪さん…って聖さん見付けたんですか!?」


「ああ、とりあえず問題だらけだ、保美香はどうした?」


ボクはとりあえず、2階、3階と敵と戦ったのを凪さんに話し、そして保美香さんが地下で探索しているのを報告した。
そしてボクたちはとりあえず3人で下に向かう事に…


美拑
「ジガルデ…? そんな大物だったんですか?」


「ああ…生きているだけでも信じられんよ」
「聖君がいなかったら、私は何も出来ずに諦めていたかもしれない…」


あの凪さんがここまで暗い顔するなんて…
例え華凛さん相手でも1歩も退かなかった凪さんが…
ちょっと、ボクには想像付かないな…


美拑
「それより、無事で何よりですよ…」


「…ゴメン、心配かけて」


聖さんは素直に謝った。
まぁ、ボクに関してはそれで許しますが…


美拑
「とりあえず、伊吹さんと保美香さんには土下座した方が良いですよ?」
「あのふたりが1番気が気じゃなかったみたいですから…」


「…ああ、約束するよ」


聖さんは、少し雰囲気が変わった様に見えた。
心なしか、強く見える。
でも、まだ記憶があった頃の強さじゃない。
あの時の彼の魂は、もっと輝いていた。



「…しかし、ここはジガルデが支配していた城だったのだろうか?」

美拑
「そうじゃないんですか? どう考えたってラスボス候補っぽいですし…」


「いや、多分あの人は……っ!?」


突然の浮遊感。
何と、ボクたちは気が付いたら空中から落ちていた…


美拑
「ちょおお!?」


突然、城は跡形もなく消えてしまった。
ボクは当然凪さんのように飛ぶことは出来ない。
とはいえゴースト化すれば、浮くことは可能だ。
とはいえ、普段から飛ぶことに慣れないため、素直のゴースト状態で落下する。

保美香
「一体何事かしら!?」

保美香さんだ、保美香さんも飛ぶといっても飛行タイプでなければ浮遊でもない。
それでも驚いたように空に飛び出したようだ。


「皆、無事か!?」

保美香
「み、見ての通りですわ…! 地下から上がろうとしたら、急に城が消えて…こんな状態に!」

ボクは保美香さんに捕まると、そのまま地面に着地した。
凪さんは聖さんを抱っこすると、華麗に着地する。

保美香
 「…一体何が起きたのかしら?」



………………………




「すみませんでした!」

伊吹
「別に良いよ〜♪ 聖君が無事に帰って来てくれただけで、アタシはとっても嬉しい♪」

保美香
「散々な目に合いましたが、同感ですわ…ですが!」
「今後、こういう勝手な行動は許しません! せめて怪我が完治するまでは、絶対安静を命令致します!」


俺は土下座したままそれを了承する。
ちなみに、ここは病院で俺はベッドの上だ。
なので土下座というよりベッド下座とも言える。
とりあえず、当面は謎の解明だな…


美拑
「ですが、雫って何なんですかね?」


「解らん…とにかくそれがふたつあって、それがあるとこの世界の秩序が崩壊するらしい」

保美香
「そして、そのひとつを聖さんが持っていると…」

伊吹
「継承者って言ってたんだよね〜? 後、神の使途?」
「何だか〜大きな話になってるけど〜?」


とりあえず、俺の記憶が戻らない事にはチンプンカンプンだ。
それに、俺が何故あの部屋を知っていたのか?
あの城は、一体何だったのか?


保美香
「とりあえず、伊吹を襲った敵も、間違いなくそのジガルデの眷属なのでしょうね…」

伊吹
「うん…秩序がどうこうって言ってたし〜、雫の事も言ってたよ〜?」

美拑
「そして、ボクたちが戦った相手は誘拐派…」


「意志疎通はどう見ても無理だったな…マトモな思考をしているのかも怪しい」


ここで共通する事は、殺害派はジガルデの眷属と思われ、こちらは意志疎通可能。
そして誘拐派は今の所目的不明で、一切の意志疎通が出来ない。
俺を何の為に誘拐したのかも結局解らなかった。
そして、もうひとつの雫を消せ…か。
それはジガルデさんの願いの様だった。
あの人は一切の悪意が無く、敵意すら存在しない。
明らかに他の存在とは一線を画す存在で、多分殺害派の親玉。
だけど、ジガルデさんは俺の為に妥協案を出してくれた…もうひとつの雫の消滅。
そこから先はどうなるのか予想出来ないが、ジガルデさんは何か俺に期待している様にも思えた。
つまり、俺の記憶にはそれだけの破壊力があるって事だ。
色んな意味で、俺の記憶喪失は敵の想定外だったのかもしれない。



「雫、秩序を崩壊させかねない程の力を持った何か…?」
「雫……雫………雫……?」


俺はその雫が何なのかを考え続ける。
そして、そんな俺の声に反応したのか、俺の中からひとつの球体が出て来た。
テニスボール位のサイズをした透明なそれは、美しい輝きをぼんやりと輝かせ、とても神秘的な存在感を放っていた…


美拑
「ま、まさかそれが雫!?」

伊吹
「綺麗だね〜♪ まるで聖君の心みたい〜」

保美香
「聖さんは、やはり…」


「ああ、本当に神の使いだとでも言うのか?」


4人はその雫を見て驚いていた。
だが、すぐに雫は光の粒子となって消え去り、俺の体に吸収される。
どうやら、コイツはいつでも俺の中にあるらしいな…


保美香
「一体、今の珠にどれ程の力が?」

伊吹
「想像は付かないね〜? でも、それがもうひとつあるって事は…」

美拑
「……パス!」


「…ううむ、どういう事だろうか?」


美拑ちゃんと凪さんは想像付かなかったみたいだな…
保美香さんはため息をひとつ吐き、伊吹さんは代わり言葉を放つ。


伊吹
「多分〜、もうひとり継承者がいるって事〜かな〜?」


「な、成る程…言われてみればそうか」
「あの雫が聖君の体に内包されているのであれば…」

保美香
「恐らく、もうひとりの所持者も同様に体内に持っている可能性が高いかしら」


「だけど、それはつまり…」

美拑
「パス2!」


「…それでは、探しようも無いのではないのか?」
「出せと言われて出るとも限らないし、もし隠されていたらどうしようもないぞ?」


そう、まさしくそれだ…つまり、解った所で何も変わらない。
この問題は、あくまで雫の存在が確定しただけで、それがどこにもうひとつあるのか等、誰にも解らないのだ。
それこそ、神にでも聞かなきゃ……



「ジガルデさん…? 視てるって事は、話も聞いてるんですか?」


俺は思いきって尋ねてみる。
全員がギョッとして周囲を警戒するが、何も反応は無かった。
まぁ、流石に都合が良すぎるか…でも、視てはいるんだろうな。
秩序の守り神であり、世界の監視者。
それはまさしく、神と同質の存在なのかもしれない…
でも、そんな彼女は極力人には干渉しないのだろう…
あくまで秩序が乱れぬ様、監視するのが仕事…
彼女が動く時というのは、それだけ世界の秩序が乱れていたのかもしれない…



(あれ…でも、部下に任せず直接俺の所に来たって事は?)


俺は素朴な疑問が湧いてしまった。
何故彼女は自ら動いたのだ? 同時に部下も動かしているのに…
後、誘拐派と殺害派はもしかして明確に仲間じゃないのか?
いや、もっと大きな勘違いをしているのかもしれない……俺は、何故かそう思った。



「俺たちは…根本から、間違えていた……?」










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』

X

『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』



第4話 『監視者』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/01(水) 21:36 )