魔更 聖編
第2話
保美香
「…え?」

医者
「…恐らく、脳への傷が深かったと思われます」
「今、彼の記憶は大半が失われてしまっているのです…」


わたくしは、医者の診断結果を聞いて戸惑っていた。
信じられない事ですが、聖さんは一命は取り留めた物の、その記憶の大半は失われてしまったと言うのですから…
わたくしは、記憶を失ってしまった聖さんを相手に、ただ悲しい顔をする事しか出来なかった。
そんなわたくしの顔を見て、記憶を失った聖さんはこう言う。



「…どうかしたんですか?」

保美香
「…いえ、申し訳ありません」
「聖さん、貴方は…私のせいで…!」


厳密には違うのですが、これは実質わたくしのせい。
聖さんは、あの戦いの結果…カミツルギの攻撃を受けてしまった為に記憶を失ってしまった。
一命は取り留めたものの、その結果はあまりにも重い…
わたくしは自分の力の無さを呪い、聖さんの顔を見て涙した。
そんな聖さんは、私の顔を見て優しく微笑んでくれる…



「貴女の事は知らないですけど、そんな顔をしないでください…」
「貴女みたいな綺麗な人が、そんな顔はきっと似合わないですよ…?」

保美香
「…!! 聖、さん…貴方は、記憶を失ってもまだ、そんな言葉を…」


聖さんは、例え記憶を失ってもわたくしの事を気遣ってくれていた。
わたくしはそんな彼の言葉を受けて、ただ涙を流す。
そんな彼の純粋な想いに、わたくしは泣く事しか出来なかった…
彼を取り囲む悪意が何なのかは全く解らない…ですが、彼が何者かに狙われているのは確実。
わたくしは、そんな彼を…ただ守ってあげたいと思った。



「…すみません、俺のせい…なんですよね」
「貴女みたいな人が…そんな悲しい顔をするなんて」

保美香
「!? …申し訳ありません、そういうわけではないのです…」
「ただ、これはわたくしの不備…! 貴方を守れなかった、わたくしの、不備です!」


聖さんは、ただ悲しそうに俯いていた。
きっと、わたくしの事を心配してくれているのでしょう。
もはや、記憶を失った聖さんは本来の目的すら覚えていない。
つまり、聖さんは目的すら失ったただの子供。
そんな彼を、わたくしは見捨てる事など出来るはずがない!
どんな組織がこの少年を狙っているのかはまだ解らない…
ですが、わたくしはこの少年を守ってみせます。
例え己が傷付く可能性を考慮しても、わたくしたちを、旦那様を守ってみせると言ったこの少年を、わたくしは見捨てる事など出来はしないのですから…!



「やっぱり…俺には、何故貴女がそんな悲しい顔をするのかが解らない…」
「でも、その原因が俺にあるのなら、俺はきっと償わなければならないんだ…」
「一体、俺はどんな罪を犯したんですか? どうして、貴女はそんなにも泣いているんですか!?」


わたくしは、すぐに涙を拭いて冷静になる。
聖さんは不安になっているのだ…大人であるわたくしが、子供である聖さんを不安にさせてはいけない。
わたくしは先導する大人として、子供の聖さんを立派に導いて差し上げなくては!


保美香
「聖さん、安心してください…そんな聖さんの不安は、わたくしが必ず払拭してみせますわ…」
「ですのでご安心を…貴方はただ、わたくしを信じてください!」


わたくしはそう言ってその場を離れる。
今の聖さんでは、きっと多くは理解は出来ない。
ですので、わたくしは別の方向から真相を探ります!



………………………



黒服
「…ゲートの出現?」

保美香
「はい…確認はされたのでしょうか?」


わたくしは、駅前に向かってこの黒服女性を探していた。
以前、だんな様から聞いた所、この方はPKM対策班という職の方で、PKMの出現や、その対策のスペシャリストとの事。
わたくし自身は初めてお会いする方ですが、この方の名は御影 真莉愛(みかげ まりあ)さん。
年齢的にも上の方で、間違いなく大人と呼べる、頼れる人物でしょう。


真莉愛
「ここ数時間の間では、ゲートの出現は確認されてないわね」

保美香
「そう、ですか…」


そうなると、あのカミツルギはゲート以外の移動方法で現れたという事になる。
しかも、○ィバイディングドライバーの様に空間を置き換えていたのだ…
そうなると、一体どんな存在が彼を狙っていると…?


真莉愛
「…その、魔更 聖君だっけ? 本当に、ただの子供?」

保美香
「…何か気になる点でも?」


真莉愛さんは何か疑いをかけている様でした。
そもそも、わたくしにとってもあの少年は不思議な部分があると思っている。
ですが、それは悪い印象では決してなく、むしろ好印象という意味合いの方が強い。
良くも悪くも、聖さんは優しいのだ…そう、記憶を失ってもその本質が消えない程に。
本来ウツロイドであるわたくしの触手を見て、彼は何ひとつ恐れも抱かずに笑ってみせた。
普通の人間であれば異様にも見えるはずのあれを、彼はわたくしがポケモンだから、と優しく笑ってくれたのですから…


真莉愛
「魔更…ね、嫡子がいるなんて話は聞いた事無いけど」

保美香
「嫡子…?」

真莉愛
「…マサラエンジニアリングって会社があってね、それを一代で築いたのが社長の魔更 准一(じゅんいち)って人なのよ」


わたくしはそれを聞いて驚く。
確かその企業は世界的にも有名で、IT企業としてはトップクラスの会社。
聖さんは、そんな会社の御曹司だと…?
しかし真莉愛さんの顔は暗い…先程も呟いていましたが、そんな話は聞いた事が無いと言っていましたからね。


真莉愛
「貴女たちが襲われた公園の近くに、その魔更社長の家があるのよ」

保美香
「!? では、やはり聖さんはその家に向かおうと…」

真莉愛
「かなり可能性は高いわね…でも、公式に魔更社長に息子はいない」
「今も独身で、家にもほとんど帰ってないそうだし、その家はほとんど無人らしいわよ?」


と、なると…聖さんの存在はこの世界に存在しないという証明にもなるかしら。
聖さんは、異世界から来たと明確に言っていた。
ゲートの事は知らず、突然置き換わる様に巻き込まれたとも。
そして、明確な何者かに命を狙われている…!


真莉愛
「保美香さん…その聖君って、信用出来るの?」

保美香
「…してなければ、こんな話はしていません」
「彼は、純粋なのです…ただ、ポケモンが好きで、それを守ろうと思っているだけの、ただの少年」


まだ少ししか話もしていませんが、それでもわたくしには触手を通して彼の心情は知っていた。
彼には隠すべき何かがあり、そしてそれが恐らく狙われている。
そしてわたくしたちポケモンを絶対に傷付けまいと、彼には明確な決意がその脳内にあった。
救えるポケモンは全部救う…そんな、子供ひとりには重すぎる決意を持って…


真莉愛
「…悪いけれど、ただの少年とは思えないわよ?」
「少なくとも、未登録のPKMに命を狙われてるって…間違いなく異端児」
「相当の理由と後楯(うしろだて)が無ければ、私たちが確認も出来てないPKMが潜めるはず無いんだから…」

保美香
「つまり、それがあるという事ですね?」


わたくしは確信めいた目で真莉愛さんを見る。
真莉愛さんはサングラスをかけている為、視線は見えませんが、間違いなく険しい顔をしています。
しかし、真莉愛さんは俯いて考えるだけで、その組織めいた何かの正体は解らない様でした。


真莉愛
「一応、そういう組織が無いわけではないわ」
「でも、それは多分ひとりの少年を殺す為に動く様な組織じゃない…」
「多分だけど、その聖君を殺そうとしている組織は、かなり特殊な集団なのかもしれないわね…」

保美香
「特殊…ですか」


聖さんが何かを隠しているのは間違いない…そして、わたくしはその一部を知ってしまっている。
触手を通して彼の意志は見極めた…その奥にある真相の一部も。
彼には簡単に明かせない秘密があり、その力はいわば奇跡を起こす神の力。
単純に考えるのであれば、その力を狙われているというのが妥当でしょうね。
そして同時に、それはだんな様を取り戻す最強の手札ともなる。


保美香
(聖さんが味方なのは間違いない…そして、必ず救うというあの意志は、確固たる物)


そして、それを可能にする奇跡の力…だんな様を救う、最強の切り札。
ですが、彼はそれをすぐに使おうとはしない…つまり、その力には何か強烈なデメリットもある…?
考えてもみれば、そんな都合の良い力があるのでしたら真っ先に使えば良いはず。
それをしない…あるいは出来ないという理由があると仮定出来ますわね。
どちらにしても、だんな様を救うには彼の力が必要不可欠だとわたくしは判断します。
だからこそ、守らなければならない…彼を狙う不届者から。



………………………




「………」

美拑
「………」


今、ボクの目の前では聖さんが食事をしている。
保美香さんから連絡を受け、ボクは今彼の護衛をしているのだ。
彼の頭は包帯でグルグル巻きにされており、怪我の大きさを物語っていた。
かなり鋭い斬撃で切られたらしく、その傷は聖さんの脳すらも傷付けてしまい、彼は今記憶を失ってしまっているのだ。
ボクは、そんな彼を命を狙う輩から守らなければならない…



「…すみません、俺のせいで機嫌悪くしてるみたいで」

美拑
「…別に、気にする事はありませんよ」
「機嫌が悪いのは確かですけど、別に貴方のせいだけじゃありませんから」


ボクはまだこの少年を信用していない。
保美香さんはやけに肩入れしてるみたいだけど、ボクにはその理由が解らない。
少なくとも、主殿が消えた理由はこの人が関わってる可能性が1番高いはず。
だとしたら、軽々しく信用するのは危険だ…第一、何を考えてるのかも解らないし。
って、今は記憶喪失だから解らなくても仕方ないんだけど…



「………」

美拑
「………」


度々こうやって無言の空間が生まれる。
初めて会った時とは完全に別人だ。
今のこの人からは、何も強さを感じられない。
少なくとも、最初に見た時はもっと強い意志力に満ち溢れていた。
今の彼からは、それが微塵も感じられなくなってしまった…


美拑
(命が狙われているだなんて、どう考えてもおかしい)


それだけの何かがこの人にはあるというのだ。
つまり、普通じゃないって事。
主殿の事も、絶対何か繋がってると思う方が自然だ。
でも、ボクにはそんな事を推察出来る頭は無い。
特攻はカイオーガやレシラム並みに高くとも、知能が高いわけでは無いのだから…


美拑
(もっともソードフォルム限定で、ですけどね!)


厳密にはボクは物理主体だから特殊攻撃は苦手だ。
お陰で折角の高い特攻はぶっちゃけ死んでいる。
どうせなら、特攻の数値は防御か素早さにでも回してくれれば良いのに…
え? そんなんバランス崩壊するから有り得ねぇって? サーセン、これでも使用率上位ですもんね!!



「…この街は、ポケモンが多いんですか?」

美拑
「さぁ? ボクには解りませんね」


聖さんは窓から外を見て呟いていた。
その顔はどこか寂しく、そしてとても儚く見える。
ボクはロマンチストってわけじゃないけど、それでもこの人の顔はあまりにも弱く見えて、そこには悲壮感が漂っているかの様に見えた。


美拑
(…狙われる、理由か)


襲って来たポケモンは、明確に殺意を持っていたという。
つまり聖さんは排除しなければならない程、危険な存在だと認識されているはず。
それだけの理由が無ければ、ただの人間が狙われる訳が無い。
ましてや、保美香さんの予測では組織的な動きだというし、どう考えても普通じゃないでしょ…



「…ピカチュウ」

美拑
「遂に頭壊れたんですか? 貴方は人間ですよ?」


ボクは思いっきりツッコンでしまうが、彼の視線の先を見て納得してしまった。
そこには見窄らしい姿のピカチュウ娘がおり、この建物に向かってるのだ。
そして、その少女と思えるピカチュウが建物の目の前に辿り着いたかと思うと、突然空間が揺れる。
ボクたちは突然の違和感に危機感を覚えた。
環境音が完全に消え、部屋の機能が停止したかの様な感覚に囚われる。

そして次の瞬間…ガシャァァァァァァァン!!と、窓を割ってそのピカチュウはここに突撃して来た。
ボクはそれに対して素早く反応し、盾を構えて聖さんの前に立つ。
盾に強烈な衝撃が加わり、ボクは一瞬後ろにズレた。
そして同時に確信する…聖さんは確実に命を狙われているのだと!
まだ半日位しか経ってないのに、もうふたり目の刺客!
流石にこれだけのペースで投入して来るって事は、相当な何かがあるんだろう。
とにかく、今はこの敵を何とかしなきゃならない!
ボクは盾を振り回して相手を振り払う。
ピカチュウは、まるで機械仕掛けの様な不気味な表情をし、カタカタと震えながら笑っていた。


ピカチュウ
「ピパパパパパパッ!!」


「……?」

美拑
「何なんですか、コイツ! 会話すら成立しないんじゃないですか!?」


聖さんは不思議そうな顔でピカチュウを見ていたが、こっちにそんな余裕は無い。
ピカチュウは体を震えさせて発電し、大量の電撃を撒き散らして来たのだ。
ボクの『キングシールド』は連続使用にリスクがある。
ここは無理矢理にでも止め…



「伏せろ!!」


ボクは聖さんに後ろから抱き付かれ、前のめりに倒される。
その瞬間電撃は集束して前方に撃ち出された。
かなりの威力の『10万ボルト』で、壁が軽く爆砕する。
ボクがそのまま突っ込んでいたら、あれをマトモに受けていたかもしれない…


美拑
「くっ! とにかく攻撃だ!! 相手にこれ以上好きにさせるかぁ!!」


ボクは剣を構え、立ち上がって突っ込む。
相手はそれを見てか、その場からジャンプし、そのまま天井に張り付いてしまった。
嘘でしょ!? ○パイダーマンじゃないんだから!!
ボクは危険を感じ、すぐに盾を構える。
相手は電撃を纏って突撃し、盾を思いっきり殴り付けたのだ。
当然ながら、このキングシールドには攻撃ダウンの効果が付いている。
ピカチュウはそれを忘れてまた殴った…お陰で今の攻撃は最初よりも弱いのが解る。
これなら接近戦でやれるはず!


美拑
「ハァァァァァッ!!」

ピカチュウ
「!!」


ピカチュウは凄まじい速度で狭い部屋を駆け抜ける。
機材やら何やらを吹き飛ばし、壁を蹴ったりして高速移動しているのだ。
この速度は速すぎる! どうにかして足を止めないと…
とは思う物の、ボクにはそんな器用な技も頭も無い。
愚直に攻める事しか、ボクには出来ないのだ…
しかし、このピカチュウは嘲笑う様に速度差を見せ付ける。
狂気に歪んだその表情はカタカタと震え、まるで人間味を感じさせなかった。


美拑
(くっそ…! 少しは特殊技も練習しとくんだった!!)


悔やんでも後の祭り、良くも悪くもこの相手はボクの苦手なタイプだ。
圧倒的なスピードとパワーで動き回って撹乱してくる。
ちょっとでも隙を見せたら、ボクはあっという間に倒されてしまうだろう。
シールドフォルムのままでは攻撃も出来ないし、力も足りない。
どうする…? どうやってアイツを倒す!?



「!!」


ボクにそんな迷いが生まれた瞬間、突然聖さんが横からピカチュウにタックルしていた。
そのまま壁に押し付け、千載一遇のチャンスを生む。
ボクは迷わずに突っ込み、剣を構えてゴーストのエネルギーを集めた。


ピカチュウ
「!!」


「ぐあっ!!」


聖さんは蹴りを腹に食らって簡単に吹き飛ばされる。
ピカチュウは自由になり、これだとまた動かれてしまう!
だけど、ボクはその前に盾を投げ付けて相手の移動を封じた。
そしてそのまま剣を両手で構え、真上から一刀両断。
ピカチュウは縦に体を切り裂かれ、そのまま黒い気になって霧散してしまった。
すると途端に空間が歪み、次の瞬間には何事も無くなっていく。
そう、さっきまでの戦いが夢か何かだと思える位、何事も無くなっているのだ。
破壊された物は全て元に戻っており、配置まで再現…一体、何が起こったんだ?
ボクは頭がどうにかなりそうだったけど、それ以上に聖さんは苦しんでいた。
聖さんは壁際で踞り、血を吐いていたのだ。


美拑
「聖さん!? あんな無茶するから!!」


「…だけど、動かずにはいられなかった」


ボクはナースコールを押して看護婦を呼ぶ。
って、説明どうしよう!? このままだとボクが容疑者にされそうなんだけど!?
とりあえず、ボクは謎のPKMに襲われたと説明し、その場は乗り越えた。
幸い、聖さんの体に付着していた静電気が理由となったので、ボクは無罪と解ったのだ。
だけど、代わりに少し面倒な事になってしまった…



………………………



真莉愛
「はろーおはろー♪」


「空気嫁や魔女」


聖さんは無意識にそう反応した。
記憶は無いはずなのに、どうして息を吸うかの様に…?


真莉愛
「…ピカチュウに襲われたって報告受けたんだけど、その子はどこに?」

美拑
「突然消えましたよ…黒い気になって」


正確にはフェイタルKOして消えたんですけどね…
とりあえず証拠は無いですし、そういう事にしておきましょう。
それ位の勢いがなければ、こっちが殺されてましたし…



「空間が…突然切り替わって」

真莉愛
「空間が? ピカチュウにそんな能力あったっけ?」

美拑
「あるわけ無いでしょう…絶対別のポケモンが関わってますよ」


勿論、それが何かとかボクに解るわけ無いんですけどね!
あのピカチュウも普通じゃなかった…戦闘能力もかなり高かったし、いきなり消滅するなんてあり得ない。


真莉愛
「…お話にならないわね、それでどうしろって言うのよ」

美拑
「こっちのセリフでもありますよ…何でこんなにも命狙われてるんですかこの人?」


「…いや、多分さっきのピカチュウは俺を殺そうとはしてない」


聖さんの言葉に私たちは目を見開く。
聖さんは俯きながら、何かを思い出そうとし、少し頭を抱えていた。



「理由は解らない…でも、そんな気がしたんです」

真莉愛
「…だとすると、組織内で分裂でもしてるのかしら?」
「殺害派と、誘拐派って感じで、派閥があるのかもしれないわね…」

美拑
「もしくは、第3勢力とか…」

真莉愛
「でも、手口は似てるのよね…空間が置き換わって、襲われるって所とか」


確かに、保美香さんが襲われた時もボクと似た様な状況だったらしい。
そうなると、同組織で内紛の方がしっくり来るのかも…


真莉愛
「光の、粒子と黒い気…か」


真莉愛さんはひとりで考えていた。
今回でもう2度の襲撃…そして明確に聖さんをターゲットとしている。
そしてそこには似ている様で違う部分が多数あるのだ。


美拑
「会話は出来てたカミツルギ…出来なかったピカチュウ」

真莉愛
「明確な理由は解らないけど、殺害派とそうじゃなさそう派が存在している」


ダメだ…これ以上考えると知恵熱が出る。
そもそもボクに解明させようと思う方がバカなのだ。
とりあえずここは真莉愛さんに任せてボクは考えるのを止めよう…
と、そんな風に思って適当に話を合わせていく。
30分程話をした所で彼女は帰り、とりあえずボクはまた聖さんを護衛する事にした。



………………………




「………」

美拑
「………」


相変わらず会話は無い。
でも、今のボクは彼を信用しようとは思った。
この人は、記憶が無くても誰かの為に体を張れる人だ。
理由なんていらずに、誰が求めてなくても、無意識に助けようとする。
そんな強さを心に秘めているこの人は、少なくとも信頼出来ると魂が示していた。
最初は疑惑が多かったけど、あの戦いで彼が見せた行動は勇気ある行動だ。
その時の彼の魂の輝きは何より強く、ボクは眩しささえ覚えたのだから…
その魂は、主殿と同じ位強いのかもしれないと、ボクは何となく思った。


保美香
「美拑…お疲れ様です」

伊吹
「襲われたって聞いたけど、大丈夫かい?」


現れたのは保美香さんと伊吹さんだった。
ボクはとりあえずため息を吐き、頭を抱えてこう話す。


美拑
「この人、本当に何なんですかね?」

保美香
「人間ですわ…命を狙われる程度の」

伊吹
「でも〜、それはどうしてなのかな〜?」


「………」


聖さんは無言で外を眺めていた。
あれからずっと聖さんは無言で外を見ている。
保美香さんたちが入って来たにも関わらず、それでも外を見ているのだ。


保美香
「…何を、見ているのかしら?」

美拑
「…ポケモンだそうですよ、ここから道路を行き交うポケモンを見てるんだそうです」

伊吹
「ふふふ…そんなにポケモンが好きなんだね〜♪」

美柑
「ま、そんなに行き交っちゃいないんですけどね」

保美香
「PKM法があるとはいえ、日本人口の0.000005%ですからね」

伊吹
「うふふ〜、それでも彼は〜、きっと珍しいんだね〜♪」

多分そうなんだろう。
この人はポケモンがきっと大好きだから、こうやって眺めてる。
その顔はとても安らかで、優しい目をしていた。
そんな聖さんを見てか、伊吹さんは楽しそうに笑っている。


保美香
「とりあえず食事を持ってきましたので、これをどうぞ」

美拑
「あ、助かります! もうお腹減っちゃっててどうしようかと…」


流石は保美香さん、わざわざ弁当を作ってくれるなんて♪
ボクはとりあえず我慢出来ずにそれを開き、箸を持って食べ始めた。
うん美味しい! やっぱり保美香さんの料理は最高だ♪


伊吹
「聖く〜ん、何か思い出した〜?」


「…はい、俺はきっとポケモンが好きなんです」
「そして、多分何か大切な物を探してる…」
「そんな俺の正体は…何なんですかね?」


その言葉はどことなく重かった。
正体…か。
もしかしたら、彼はとんでもない存在なのかもしれない。
だからこそ、何者かに狙われているんだろうし。


保美香
「きっと、ただのポケモン好きな人間ですわ、それだけでしょう」

伊吹
「…保美香〜?」

美拑
「………」


ボクは無言で弁当を食べていた。
伊吹さんは少し疑念を抱いている様だ。
ああ見えて伊吹さんは頭が良い人だから、きっと何かを考えてる。
でも同時に優しすぎる人だから、きっと何も言わないのだろう…


伊吹
「とりあえず〜、アタシも今日は〜ここにいるよ〜」

保美香
「…何か理由があるのかしら? ここは危険と隣り合わせなのですよ?」

伊吹
「だからこそ〜だよ、ここにいるんだよ〜」


伊吹さんは笑っていた。
伊吹さんが何を考えているのかはボクには解らない。
でも、優しい伊吹さんだから、放ってはおけないのだろう。
伊吹さんは戦いが嫌いだ、だから直接戦闘には期待出来ない。
だけど、あの戦争に巻き込まれて、伊吹さんは戦う事の意味を知ったはず。


伊吹
「アタシは〜、戦えないかもしれないけど〜、それでも〜護る事は出来ると思うんだ〜…」

美拑
「…でも、伊吹さんが聖さんを護る理由は無いんじゃないですか?」

伊吹
「そんな理由は〜、いらないよ〜」

保美香
「美柑、伊吹は結構頑固ですわよ」

伊吹
「誰かを助けるのに〜、理由はいらないから〜、ね♪」


伊吹さんはニコニコ笑顔で即答する。
本当にこういう人だからな…ゆるほわ天然お姉さんだけど、芯が強い。
だけど、頼もしいのは確かだ…ボクに出来ない事でも、伊吹さんなら出来る事はある。
何より、ひとりよりかはふたりなのだ。
正直、得体の知れない組織が相手じゃ、ひとりは怖すぎる。


保美香
「決心は固そうですわね…でしたら何も言いませんわ」
「わたくしは家に戻りますので、伊吹と美拑は彼をお願いします」
「着替えは新たにここにありますので、ふたりともそれを使ってください」


そう言って着替えが入った鞄をテーブルに起き、保美香さんはひとり出て行った。
って、ふたり分あるって事は初めから伊吹さんが残るって予想してたんだな…
とりあえず、これから夕飯の準備もあるだろうし、保美香さんは1番大変だ。
でも今は茜さんが全面的に手伝ってるし、前程忙しくも無いだろうな。



「………」

伊吹
「〜〜〜♪」


伊吹さんは楽しそうに聖さんと外を見ていた。
一体何を考えているのか解らないけど、多分常人には理解出来ない様な事考えてるんだろうな〜
ボクはそんな風に思いながらも美味しい弁当を平らげ、それを机に置いてうーん!と背伸びをした。
食べたら運動したくなって来たな…


美拑
「少し外に出ます…もし、何かあったらすぐにスマホに連絡ください」

伊吹
「うん〜、分かったよ〜♪ お姉さんに任せて〜♪」


ボクはそのまま壁を抜けて外に出る。
一応、怪しい奴が彷徨いてないか警戒もしておこう。
ボクは主殿の剣であり盾だけど、ボクを助けようとしてくれた人の為なら、その剣を振るえる理由にはなる。
本当はあまり関わりたくないんだけど、それでももう関わってしまった…
それなら、戦おう…それで、何か護れるのなら!










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』

X

『突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語』



第2話 『ピカチュウ強襲』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/01(水) 21:35 )