とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第7章 『バトルフロンティア』
第3話
実況
『遂に7戦目突入!! 先日の敗戦からパートナーポケモンをチェンジしての再挑戦だが、果たしてシンボルゲットはなるのか魔更 聖!?』



「………」
華澄
「………」


俺は後日、完全回復した華澄と一緒にアリーナへ再挑戦した。
ここまで何の危なげもなく、華澄は無傷で勝ち進んでくれる。
やはり、未来さんとは違いすぎるな…
同じ戦績でも、華澄は無傷で常に俺の為にと尽くしてくれる。
未来さんは、あくまで自分の為…最後は確かに信念を曲げられたとは思うが、それでも未来さんは俺の事を思ってはくれたのだろうか?
もはや、その疑問に答えてくれる人はいない。
俺は、とりあえず当面の目的である、アリーナキャプテンを見据えた。
今度のポケモンはエンブオー男の様で、太ましい肉体に、立派な牙が印象的。
とりあえず、男相手に容赦はいらない…俺は軽く華澄にこう指示した。



「料理法は任せる…一撃で仕留めるも良し、安全に判定でも構わない」

華澄
「承知…あの程度の相手、未来殿に比べれれば恐れるに足りませぬ」


華澄は軽く手をブラブラさせて待っていた。
それを見てキャプテンは少し気を高める。
トレーナーとしては十分あの人は優秀だ、だがポケモンはそうじゃない。
ウチの華澄はスゴいぜ…? きっと目を丸くする。
さて、いきなり終わるか…それとも少しはこじれるか?


審判
「それでは、一本目! 始め!!」

キャプテン
「行け! 『突っ張り』!!」

エンブオー
「ふんっ!!」


エンブオーは決して遅すぎない足で突っ込む。
が、それをわざわざ待つ華澄じゃない…華澄は目にも止まらぬ速度でエンブオーの射程に一瞬で入る。
あまりの速度差に虚を突かれたエンブオーは目を丸くし、次の瞬間には華澄はエンブオーの背後に駆け抜けていた。
手には水手裏剣の回転。
華澄はすぐにそれを弾けさせ、屈めていた体勢を解き、ゆらりと力を抜いて立ち上がる。
エンブオーは、少し時間差を置いて前のめりに倒れた。


キャプテン
「…え?」

審判
「…あ、エ、エンブオー戦闘不能!!」
「よって、勝者ゲッコウガの華澄!!」


まさに一閃。
流石華澄だな、安心して見てられる。
これで最高ランクのマスターランクはクリアか。
こりゃ、華澄なら本当に残り全部クリア出来そうだな…


華澄
「…何と呆気ない」


「珍しいな…華澄さんがそんな台詞を言うなんて」

華澄
「も、申し訳ありませぬ…悪気は無かったのでござるが」
「昨日の、未来殿の印象があまりに強すぎて、つい…」


やれやれ、華澄さんも未来さんの影響を受けてたって所か…
とりあえず、これでシンボルゲット…さて、これでここに用はもう無いな…



………………………



借音
「おめでとうございます、聖さん、華澄さん♪」

麻亜守
「まぁ、当然の結果だな!」


「…借音さん、未来さんの姿は見てませんか?」


俺はダメ元でそう聞いてみる。
すると、借音さんは申し訳なさそうに首を横に振った。
まぁ、仕方ない…期待はしてなかったからな。
きっと未来さんは、またどこかで戦っているのだろう。
あの人は、戦う事でしか生きる意味を見出だせない人なのだから。
なら、俺は信じるかない。
その内、またひょっこり再会出来るだろう、と…


華澄
「…聖殿、未来殿の事はやはり気になりますか?」


「…いや、今はそうでもない」
「未来さんの事だ、きっとどこかでまた戦ってるさ」


俺の言葉を受け、華澄も少し頬笑む。
華澄は俺以上に気にしてたんだろうな…顔見りゃ解るぜ。
華澄としても、未来さんの信念はキツかったんだろう。
俺は逆に誇れる…そんな未来さんの信念と真っ向勝負して引き分けたんだから。


麻亜守
「とりあえず、他の家族も探すの?」

借音
「そうね…きっと皆待ってるでしょうし」

華澄
「聖殿、行きましょう」


「あぁ、何人巻き込まれたか解らないが、全員探すぞ!!」


俺たちはとりあえず移動を開始する。
次の施設に向かえばまた誰かに出会う可能性はあるな。
つーか、俺は肝心な事を忘れていた。
大まかだったら、恵里香に聞けば解るんじゃねーのか?
前の混沌じゃ一切通信出来なかったから、すっかり失念してたぜ。
俺はとりあえずスマホを片手にこう話す。



「ある時は正義の労働者! ある時は科学の犠牲者! そしてその実態は…?」

恵里香
『愛と正義の使者! アトミックランナー ○ェルノブ!!』


よし、完璧だな。
とりあえず恵里香と通信出来るのは解った。
さて、とりあえず本題に入るか。



「この混沌の規模は解るか?」

恵里香
『大まかに言えば、遊園地の時と似てるね…あの時よりかは範囲でいうなら小規模だけど』
『でも、巻き込まれた数は同等以上と思った方が良いかもね』


以上、ね…ゲストが混ざってる位だ、人の数から言っても相当な数だからな。
とはいえ、ほぼアトラクションの様な施設を楽しむこの混沌は一体何なのか?


恵里香
『気楽にすれば良いと思うよ?』


「ん…? そうか?」

恵里香
『少なくとも、その混沌には悪意を感じない』
『まぁ、今の所は…だけど』
『とりあえずキミも楽しめば良いよ、そこはきっとそういう場所だから』


俺はとりあえず納得する事にした。
さて、それなら楽しむとしますかね♪



「華澄、賞金ってどの位だ?」

華澄
「それが、聖殿のゴールドパスとやらは全てがフリーになる代わり、賞金も出ない様なのです」
「ですので、何か必要な物は全てそのパスで購入出来るかと思います」


俺はゴールドパスを見て、へぇ…と思う。
まぁ、全部タダなんだから、賞金無いのも当然か。
無限に稼げたらマズイからな。



「そういえば、麻亜守ちゃんはどうやって挑戦したんだ?」

借音
「ジュニアの部門は、無料なんですよ」
「ですので、貰える賞金もこのフロンティア専用の通貨で、いわば交換券みたいな物みたいですね」
「パスも必要無かったですし、ブレーンやシンボルといった物も全くありませんでした」


成る程、ジュニアは無料で報酬は専用通貨ね。
って、俺たちにとっちゃこの世界のは全部仮想通貨なんだが…
まぁ、それも仕方ない…とりあえず当面はこのパスで何とかするか…



「振〜り向〜いてご〜らん? 君の〜つけ〜た道〜が〜♪」


「その声、メロディさん?」


俺たちは背後から突然歌声が聞こえた方を振り向く。
すると、そこには相も変わらずの歌姫、メロディさんが笑顔で手を振っていた。


メロディ
「うふふ、どう調子は?」


「まぁまぁですね…昨日は少し疲れましたけど」

メロディ
「まぁ、そりゃそうよね…初めてみたいだし、こんなお祭りはそうそうあるもんでもないしね」


成る程、そうなるとこのイベント自体が混沌その物の可能性があるのか。
そうなると、あながち安全ってのも頷けそうだ。
プロレスの時も似た様な雰囲気だったしな。



「そういえば、メロディさんこのパス無くても大丈夫なんですか?」

メロディ
「うん? 別に良いよー♪ 私はバトルとかあんまりしたくないし、お金は歌って稼げるから♪」


俺が貰ったゴールドパスを見せてそう聞くが、メロディさんはあっけらかんと答える。
何とも逞しい精神の持ち主だ。
逆に言えば、歌えさえすれば稼げるって言い方だな。
確かにメロディさんの歌には力がある。
ちょっとした1フレーズですら、心を振るわされる何かがあるからな。
正直、この人はタダ者じゃないと思う。
間違いなく、その道じゃ名のあるポケモンなんだろうな。


麻亜守
「お姉ちゃん、開会式で歌ってた人〜」

メロディ
「おっ! よく知ってるね〜もしかして見てくれてたの?」

借音
「いえ、直接ではないですけど、モニターに映っていたので」

メロディ
「あははっ、そりゃそうか! ちなみに、ふたりは親子?」

借音
「はい…血は、繋がってませんけど」


それを聞いて、メロディさんは少し暗い顔をする。
借音さんたちもそれなりの境遇だったからな。
それでも、麻亜守ちゃんは借音さんを本当の母親と同様に愛しているし、借音さんも同様だ。
そういう意味では、櫻桃さんはある意味父親ポジか…本人が聞いたら怒るだろうけど。


麻亜守
「血は繋がってなくても、お母さんは私のお母さんなのだ!」

メロディ
「あはは…そっか」
「良いな、そう言うの…私は、親とか家族とか知らないから」

華澄
「メロディ殿は、天涯孤独だったのですか?」

メロディ
「うん、物心ついた時にはもう自分で楽器使って歌ってた」
「私が産まれた世界は、貧富の差が激しくてね…」
「私は暗い街の隅で、ひとりただ歌い続けた」
「その内、誰かがそんな私の歌におひねりをくれたの」
「そしたら、私はそれを元手にどんどん色んな歌を歌い続けた」
「気が付いたら、私の歌にはいつも誰かが聞いてくれていて、気が付けば私はアイドルになってた」
「たかだか子供のメロエッタひとりに、世界中が動いたのよ…?」


それは、よくある成功例というストーリーラインに思えた。
だが、メロディさんの顔は暗い。
まるで、そんなヒーロー街道が虚しいとでも言わんばかりに。



「メロディさん、もしかして…友達とかいないんじゃ?」

メロディ
「ギクゥッ…! って言うとでも思ったか? バカめ、すでにひとりはいるわっ!!」

麻亜守
「ひとりかよっ!? 寂しいなアイドル人生!!」


うわ、麻亜守ちゃんにツッコマれた…これは悲しい。
心なしかメロディさんの顔も引きつっている…


メロディ
「ま、まぁほら! 私って一応幻系だし? そんな人前にポンポン出て来るわけじゃないから!!」


「の割に、既に俺とはもう3回も会ってますけどね」

華澄
「そもそも、歌う為にここに来ているのですから、人前に出なければ意味が無いのでは…?」


メロディさんは言葉を詰まらせた。
正論だわな…まぁ、別に良いんだけど。
でも逆に気になるな…そんなメロディさんの友人って。



「おっと、ここで油売ってても仕方ない…とりあえず移動しないと…」

メロディ
「あははっ、ゴメンね邪魔しちゃって? それじゃ、またどこかで会おう!」
「アディオス! アミーゴ〜♪」


そんな言葉を放ちながらメロディさんは楽しそうに走り去って行った。
やれやれ…一体何を考えて俺たちの所に来たのか?
単に寂しがりな性格なんだろうか?
攻撃は高そうだが、防御は低そうだな…


借音
「…聖さん、大雑把ですがあっちの方角に誰かいるようです」
「人数までは把握出来ませんが、かなり大きな精神力を感じます」

華澄
「精神力…でござるか? 同じエスパータイプでしょうか?」


「だとしたら、三海や夏翔麗愛ちゃんたちの可能性は高いか?」

麻亜守
「ん〜でも夏翔麗愛お姉ちゃんじゃないっぽい?」


む…麻亜守ちゃんがそう言うって事は違うのか?
まぁ、そもそもエスパーとは限らないんだが…
俺たちはとりあえず借音さんが示してくれた方角を目指す。
するとその先にあったのは、何やらデカいピラミッドだった。



………………………




「バトルピラミッド…君の勇気を見せてみろ!ねぇ…」

華澄
「近くには知った顔は見当たりませぬ、既に中に?」

借音
「はい、中にいますね…でも、何か感じ取り辛い?」

麻亜守
「む〜、何か頭がムズムズする!」


どうやら、妨害電波みたいな物があるっぽいな。
と、なると反則防止か…テレパシーや透視とかで情報を漏洩されるのはフェアじゃないからな。



「借音さん、これ以上は探査しないでください」
「変に目をつけられたら大変だ…麻亜守ちゃんも」

借音
「解りました、それでは後は聖さんたちに任せます」

麻亜守
「ん、解った」


俺たちはとりあえず施設内に入る事にする。
俺はパンフレットを開いてルールを確認した。
中に入れるのはトレーナーひとりとパートナーのポケモンひとり。
道具の持ち込みは禁止、中では支給されるバッグを使ってピラミッドを探索…か。
ランクごとに別のピラミッドがあり、ポケモンのCPとランクによって分けられる…か。



「場合によっちゃ、借音さんと行くのも良いかもしれないな」

華澄
「ふむ…確かに、拙者と一緒では強制的にマスターランクとなりますからな」
「そうなると、聖殿への負担が相当大きくなる…」

借音
「逆に私とでしたら、ランクは低い分、トレーナーへの負担が軽くなると言うわけですね」


俺は頷く。
このピラミッドは己の足で探索する施設だ。
そうなると、中の仕掛けも解らないのにいきなりマスターランクは危険度が高すぎる。
いくら華澄が無敵でも、俺はそうではないのだから…


麻亜守
「じゃあ、私はジュニア部門で遊ぶ!」

華澄
「しかし、トレーナー無しでも行けるのですか?」

借音
「はい、保護者が付き添うのならトレーナーの有無は問わないとの事ですよ?」


ふむ、それなら今回は華澄さんには麻亜守ちゃんの面倒を見てもらって、俺は借音さんと挑戦してみるか。
とりあえずヤバイと思ったらテレポートも出来るし、何とか…なるだろ!
俺はとりあえず借音さんを信じて挑戦する事にする。
まずは借音さんのCP測定だな…



………………………



研究員
「えーっと、サーナイトの借音選手…CPは7320」
「過去に挑戦経験は無し、ですのでノーマルランクでの挑戦になりますが大丈夫ですか?」


「はい、よろしくお願いします」

借音
「ドキドキしますね…」


借音さんのCPは実に際どいラインだ。
ノーマルのアベレージがどんなもんかは解らないが、直接戦闘では苦戦しそうだな。
メガ進化のひとつでも出来れば問題無いんだが、そこまでは欲張りという物だろう。
そもそもメガストーンあるかも解らんし…



「って、そう言えば借音さんの家にはゲンガナイトがあったみたいですけど、サーナイトナイトは無かったんですか?」

借音
「えっと…あるには、あるんですけど」
「私は、1度たりともそれを成功させた事はありません」
「肌身離さず、常に身に付けてはいますが、これがその力を発揮した事は無いのです…」


そう言って借音さんは、身に付けていたショルダーバッグからそれを出して見せてくれる。
って、やっぱあるにはあったのか…
どうやらネックレスタイプのロケットに付いている様で、そのせいかロケットにしてはちょっと大きなサイズだった。



「…とにかく、初見ですし無理はしない様にしましょう」
「極力俺もサポートしますし、借音さんも辛かったらすぐに言ってください」

借音
「はい、大丈夫です…きっとお役に立って見せますので♪」


俺は少し不安には思う。
サーナイトはトレーナーの為になら全力で戦えるポケモンだ。
借音さんみたいなほんわかした人でも、いざ戦いとなればスゴい力を出すのかもしれないし…
その気になればブラックホール○ラスター位なら撃ちかねない種族だからな…



………………………




「ってなわけで、1階層目! バッグには最低限の水と食料か」
「相当な長丁場の施設って聞くし、否が応にも緊張するな…」

借音
「はい…かなり薄暗いですし、足元には注意をしてください」
「…ここならある程度のサーチは出来る様です、知った脳波は…ありませんね」


借音さんは目を瞑って軽く全身を輝かせる。
そして周りの脳波をサーチしてそう言った。
やはりエスパータイプは頼りになる。
完全手探りのこの状況だと、少しでも情報が多いのはアドバンテージだからな。
俺たちは借音さんを先頭にゆっくりと歩いて行く…すると、しばらくして狭い通路は終わり、そこから先は迷路が広がっていた。



「マジかよ…これを7階層まで続けるのか?」

借音
「気を付けてください! 近くに誰かがいます!」
「恐らく、トレーナーとそのポケモン!」
「どうやら、他の参加者の様です!」


早速か…と俺は舌打ちする。
このピラミッドにおいては、他のトレーナーとのバトルはぶっちゃけデメリットでしかない。
しかも、ルールの都合上射程距離に入ったら強制的にバトルに巻き込まれる仕様だ。
参加者からすれば、バトルは基本行わないのがセオリー。
だが、腕に自信があるならライバルは潰しておいた方が良いのも事実。
特に、漁夫の利を狙ってバトルする奴もいるだろう。
そうなったら最悪だ、連戦はとにかく避けたい。
ましてやおよそ戦闘向きとは思えない借音さんでは、バトルは避けるのが鉄則と思った方が良いだろう。



「…道は分岐無し、避けようが無いな」

借音
「どうしますか? 相手はこちらに気付いてはいないと思いますが」


「一応聞いておきます、勝算は?」

借音
「…何とも言えません、私はこんな条件のバトルなんてした事無いので」


だろうな…優しい借音さんがそもそもバトルなんてするイメージすらこちらは湧かないんだから。
しかし、そうなると待つ方が良いか…
この施設はあくまで最上層に登るのが条件。
早い者勝ちとか、そういうのはルールにも書いちゃいない。
つまり、あくまで生存優先…相手も同じ事を考えていると思いたい所だな。

そのまま、俺たちは動かずにじっと待った。
そして、相手の気配が遠ざかるまで俺たちは待機する。
やがて、借音さんから合図を受け、俺たちはゆっくりと歩き出した。
あくまでスローペース…無理なバトルはする事無い。
しかし、ここで俺は重要な事に気付く。



「まさか…時間制限が無いって事は、逆に後から新たな参加者が現れる事も考えなきゃならないのか…!?」

借音
「そ、そういえば…当然後から参加者は次々と入るわけですから」


そうなったら最悪だ、遅れれば遅れる程、後から来るトレーナーとの戦闘を考慮しなきゃいけなくなる。
しかも、食料は最低限の備蓄のみ。
緊急時にはいつでもギブアップ出来るとはいえ、これは想像以上に過酷なルールかもしれない。
遅れすぎず、速すぎず、その上で交戦を極力避ける。
前を進んでいる連中は、どんな気分で進んでるんだ?



(いや、問題はまだある…それはつまり)


俺たちの前には、前の参加者が残っている可能性があるって事だ!



………………………




(…やはり、交戦がある)


俺は相手に気付かれない様、隠れて移動する。
幸い薄暗いおかげで、既にバトルをしている相手たちには気付かれ難い。
可能ならこのまま先を急ぐぜ!


借音
『聖さん、先に言っておきます』


(借音さん?)


突然、借音さんからテレパシーが送られる。
他者に聞かれない為の配慮だな…しかし、何だ一体?


借音
『私のテレポートは、連続20回が限界です』
『そして、対面から使用する際には、必ずワンテンポ遅れるという事を留意してください』


(20回…PP限界か、しかしワンテンポ遅れるって?)

借音
『解りやすく言うなら、必ず後出しになるという事です』


俺はようやく理解する。
つまり、借音さんのテレポートは確実に逃げられるが、必ず相手の技を1発食らう覚悟がいるという事。
どの道相手トレーナーとのバトル中では逃げる事は禁止されてる。
そこまで意識する事は無いかもしれないが、タメ時間は考えなきゃならないって事か…



………………………




(ここまでバトル0…完璧な進行だな)

借音
『もうすぐ階段です、近くには誰もいません』


ならばと俺はダッシュする。
とにかく階段まで行ければこの場は切り抜けられる。
ここまでで2時間…想像以上にキツいぞこれは。

そして俺たちはついに2階層に到達。
その先はさほど迷路にはなっていなく、仕切りの壁は少なかった。
だが、前に広がる光景はまさに異様。
様々なトレーナーとポケモンが踞っているのだ。
つまり、あれは脱落者…回収待ちって事か!?


借音
『気を付けてください! 何か嫌な気配を感じます!!』


俺はすぐに警戒体勢を取る。
周りに集中するが、トレーナーの気配は無い。
だが、確かに何か嫌な予感がする。
これって…後から何か気配が……?



「あ〜」


「出たぁーーー!?」


俺たちは叫んでしまう。
階段から離れた矢先、突然背後からミイラ女が現れたのだ。
真っ黒な包帯に全身を包み、顔にはひとつ目の様な模様が付いている。
そして、そいつは両手を前にかざし、ゾンビの様にゆっくりと近寄って来た。
しかし、このミイラ女…良いおっぱいしてやがる。
目測、92はあると見た! 身長は俺より低いからかなりの爆乳だ!!


借音
「はぁっ!!」


ドバァンッ!と突然爆発。
といっても借音さんが放ったそれは『シャドーボール』で、爆発と言うには火薬的な物ではない。
とりあえず効果は抜群の様で、謎のミイラ女は吹っ飛んで消えてしまった。
うーむ、誰かも解らなかったが、良いモン持ってたな…


借音
『今のはサマヨールです! 恐らく、この施設に放たれているポケモンです』
『どこから現れるかは検討もつきませんが、もし動きを縛られたらテレポートでも逃げられません!』


そりゃ怖い…成る程サマヨールだったのか。
あんなおっぱいに迫られるなら、ある意味悪くないと思う俺はやはり異端なのだろうか?
世の男はおっぱいには逆らえんのだ!!


借音
『聖さん、そこまで餓えていらしたなんて…』


ぐはぁ!? 借音さんに欲望駄々漏れてたぁ!!
冷静に考えたら、借音さん俺の心読んで会話してるんだったぁ!!
俺とした事が完全に恥ずかしい!!
しかし、もはや後の祭り! 借音さんのおっぱいだって十分魅力的だい!!
ちなみに目測、サイズは84程とフツーに大きめ、ウエストが細いからカップサイズは結構あるだろう。
身長も高くはないし、スペックは十分だな!


借音
『聖さん…そういう事は堂々と考えないでください!』


(いえいえ、謙遜なさらず! 俺はおっぱいを差別しない!!)


無論、大きいのは良い事だ。
だが、小さくてもおっぱいはおっぱい。
守連みたいな貧乳も立派なおっぱいだから、俺は差別しない!
…ん? 初対面では鼻で笑ってた?
バーロー! ありゃ夢の世界で記憶無いからノーカンよぉ!!


借音
『聖さん…』


(お気になさらず、これは俺の趣味嗜好ですので…)

借音
『いえ、既に囲まれてますが…』

サマヨール女A
「あ〜」
サマヨール女B
「い〜」
サマヨール女C
「う〜」
サマヨール女D
「え〜」
サマヨール女E
「お〜」


ふっ…俺の魅力に引き寄せられてしまったか。
モテる男は辛いぜ!



「流石の俺も6Pは無理だ…てなわけで、ここは魔更家に伝わる独特の戦法で切り抜ける事にするぜ!!」

借音
「そ、それは一体!?」


「それは…逃げるんだよぉ〜!! 借音さんテレポートテレポートテレポート!!」


そんなこんなで、俺たちはテレポートの無駄使いで切り抜ける事に成功した。
はてさて、こっから一体どうなるやら…?
まだまだ波乱は続きそうである…



………………………




「やれやれ…とんだおっぱい地獄だったな」

借音
「…はぁ、幸い全て逃げ切れましたけど」


俺たちは命からがら2層目を攻略した。
これで無傷の3層目か…テレポートはまだ3回目、余裕はあると思いたいが。


借音
「まだ半分…このまま逃げていて良いのでしょうか?」


「と、言いますと…?」

借音
「確かに、ここまで安全ではありますが、最終的にはブレーンとの戦闘を考えなければならないという事です」


俺は言われて予想する。
確かにこのまま進めば、いずれ最後にブレーンが待っているのだろう。
だが、借音さんは心配しているのだ…このままで、ブレーンに勝てるのか?と…
借音さんのCPは恐らく微妙なライン。
果たしてブレーンに勝てるのか?
多少リスクを考慮しても、戦う必要はあるのかもしれない。
戦えばその分、借音さんのレベルも上がるはず。



「…半分手前か、この先何があるかも解らないし、さっきみたいな状況なら、なるべく倒した方が良かったのか?」

借音
「ですが、前も後も危険が存在する以上、英断は必要かと」


英断か、確かにこの際割り切る事は必要だな。
臆病なだけじゃクリアは出来ない。
俺はある程度覚悟はしておく。
借音さんの成長も、俺は信じなければならない。



………………………




「…トレーナーは露骨に少なくなったな」

借音
「ノーマルランクとはいえ、ここまで来るのも難しいのかもしれませんね」
「しかし、気を付けてください…嫌な気配はまたあります!」


サマヨールがまた出て来るか?
しかし、囲まれない限りは倒すのも今は考慮に入れる。
借音さんの成長もここからは考えないと……



「………」


「……?」
借音
「マズ…!?」


俺たちは身動きが出来ないでいた。
目の前には、謎の青タイツ女。
細目で特に動く気配も無く、ただ俺たちと対峙していた。
胸はそこそこか…しかし、なんかこのポーズどこかで……


借音
『聖さん、完全に捕まってます!! このままだとテレポートは出来ません!!』


(ん、だとぉ!?)


って事は、コイツ『ソーナンス』かよ!?
ヤバイぞ…完全カウンター戦術の鉄砲玉じゃねぇか!!
しかも、対峙したらもう逃げられない…どうすりゃ良い!?



(状態異常でゆっくりと倒すのが基本だが…)

借音
『催眠術なら出来ます! やってみますか?』


だが、ソーナンスには『神秘の護り』もある。
ましてやエスパータイプ…考えを読まれて待たれたらかなり不利だ!
このフロアに誰も残ってないわけだぜ…全員コイツに狩られたかっ!



(借音さん、瞑想は使えますか?)

借音
『は、はい! ですが、まさか押し切るつもりなんですか!?』


可能ならそのつもりだ。
幸い借音さんはシャドーボールが使える。
最大まで特攻を上げてぶっ放せば一撃で倒せる可能性は高い!
が、出来るなら小細工はしたいのも事実だ。



(痛み分けとか出来ます?)

借音
『いえ、それは無理です…』


(なら、とにかく瞑想を積みましょう! 最大まで!!)


借音さんはその場で両手を合わせ、目を瞑って体をぼんやり輝かせる。
ソーナンスは微動だにせず、ただ待ち構えていた。
アンコールの気配は無いな…なら、怖いのは『道連れ』位の物だろう。
タイミングはかなり重要だ…失敗したらその場でアウトだからな!

やがて、このまま5分経ち、借音さんは能力を最大まで上げた。
この状態なら弱点1発で倒せる可能性は高い!



(借音さん、ここで催眠術だ!)

借音
『は、はいっ!』


借音さんは目を見開き、ソーナンスと目を合わせる。
ソーナンスは軽く震え、やがて眠りに落ちた。
立ったまま寝てやがる…だが、この聖! 容赦せん!!



「今だ、シャドーボール!!」

借音
「はっ!!」


一際大きな衝撃音。
最大まで能力を高めた借音さんのシャドーボールは軽くソーナンスを吹き飛ばした。
俺は倒れたソーナンスを見てダメージを図る。
って、流石に解かんねぇな…ゲームと違ってライフバーが無いし。


借音
「大丈夫です、気絶してます…『影踏み』の効果も無くなった様です」


俺たちは自由に動けるのを確認して安堵する。
そして、俺たちはそれも束の間、更なる恐怖に立ち会う事になった…



「クソッタレ! 大量発生すんのかよ!?」

借音
「これで逃げるのは無理です! 瞑想が聞いている内に薙ぎ倒しましょう!」


意外にも強気な借音さん。
サーナイトは、ピンチの時に信頼するトレーナーの為、最大パワーを出すと言われている。
その力は凄まじく、サーナイトのサイコパワーはブラックホールすら作ると言う。
…まぁ真面目に作ったら地球がヤバイがな!!



………………………



借音
「はぁ…はぁ…!」


「大丈夫ですか!?」


俺は四つん這いになって苦しむ借音さんの背中を擦る。
結局、シャドーボールのPPが切れかけるまで倒したからな。
そのお陰か、借音さんのレベルはいくつか上がってるみたいだ。
しかし、疲労ばかりは何ともし難いな…これでトレーナー戦にならなけりゃ御の字なんだが…



「少し休みましょう…階段の真ん中辺りなら襲われる事は無いっぽいですし、トレーナーの気配を感じたら動けば良い」


借音
「は、はい…すみません、こんな事位で」


俺は借音さんの手を取り、優しく立ち上がらせた。
借音さんの手、細いな…
元々サーナイトはサイコパワーによって体を支えてるから体は細く、いわゆる不定形に分類された種族。
それが人の体を得て、借音さんは自分の足で歩いている。
それは、サーナイトにとってはどれ程辛かったのだろうか?


借音
「辛い…と思った事は、1度も無いんですよ?」


「……」


借音さんは俺の心を読んでそう発言した。
その声は優しく、俺を気遣ってくれているかの様に。


借音
「この体は、確かに重いです」
「でも、ちゃんとそれを支える為の力もこの体にはある…」
「櫻桃さんなんか、それ位で甘えるな!って、叱咤してきましたし…」
「むしろ、麻亜守の方が自然に走り回ってましたね…」
「それなのに…私ひとりが辛いだなんて思ってたら、あの世界は生きていられませんでしたし」


俺は借音さんの世界を思い出す。
あの世界は、世界振動によって大地を引き裂かれ、ほとんどのポケモンが死に絶えた地獄だ。
それでも、残されたポケモンたちは力強く生きていたらしい。
絶望に負けはせず、今を大切に生きようとしていた。
そんな借音さんたちは、今こうやって俺たちと生きてる。
そうだ…信じる事が、俺に出来る最大の事だ。



「…なら、後半分も頑張りましょう」
「借音さん、俺に力を貸してください…」

借音
「はい、私にお任せを…♪」


そこから先、毒やら麻痺やら怨念やら、凄まじいまでの妨害を俺たちは受ける羽目になった。
だが、幸運にも落ちてる道具とかに救われたりもし、俺たちは遂に戦い続けながらも、最上層へと辿り着けた。



………………………



実況
『遂にノーマルランク、本日ひとり目の到達者だーーー!!』
『難易度最難関と言われる、このピラミッドを登りきったのは魔更 聖とサーナイトの借音!!』
『しかし、最後の戦いは勝利出来るのかぁ!?』


太陽の光が無く、既に現時刻は夜になっていたのを俺は理解した。
そして、その上でまだ誰も登りきれてない…
難易度最難関ね…そりゃ面倒なわけだ。



「よくぞここまで来た! 私がピラミッドキングだ!」
「まずは治療を受けるが良い…私との対戦はその後だ」


そう言ったのは、探検家みたいな服を身に付けたガタイの良いオッサン。
気難しそうな顔に見えるが、思ったよりも気さくな良い人の様だった。
とりあえず、借音さんは近くにいたナースから簡易的な治療を受ける。
体力とPPは、これで回復するか。


キング
「さて、それでは最後の戦いだ!」
「我々に勝てれば、シンボルゲット! さぁ、始めよう!!」


ズシィィィィン!!と、突然地面を揺らす轟音。
俺たちとキングの間に降って来た何かは、ポケモンだった…
身長は180p程、だが異様なのは全身を覆う岩肌!
人の形はしているが、ゴツゴツした岩がいくつも積み重ねられて出来てる様なその体は、まるで岩人形。
男か女かも解りにくいその姿は、目と口元位しか人肌に見えず、額には点字の様な何かがピカピカ光っていた。



(上には飛行船…あそこから降下したのかよ)

キング
「さぁ、相手をするのはこの『レジロック』だ!」

審判
「それでは、試合開始!!」


レジロックとはな! かなりの大物じゃねぇか!!
とはいえ、借音さんなら不利でもない! 物理対特殊!
ある意味解りやすい構図だな!!


キング
「まずは『岩雪崩』!!」

レジロック
「!!」


レジロックは足元を右手で叩き、岩を複数舞い上がらせる。
その勢いは速く、見てからかわすのは至難の技だった。


借音
「!!」

キング
「むう!?」


だが、借音さんはそれらを容易く空中で停止させて見せる。
ただの念力だが、今の借音さんは前よりも力強くなってる!
入場前とは、あらゆる部分が成長しているんだ!


キング
「ならば、『地震』!!」


ドギャァァァァァッ!とピラミッドが揺れる。
借音さんは流石にかわせずマトモに食らってしまうが、何とか耐えている。
借音さんはそのまま、全力で『サイコキネシス』を放った。


ギュウゥゥゥゥン!!


レジロック
「!?」


レジロックの体は強烈な念動力で引き裂かれかける。
だが、流石は伝説のポケモン! この位ではまだ倒れはしないか!


キング
「凄まじい威力だな…ならば『砂嵐』!!」

レジロック
「!!」


レジロックは腕を横に降ると、砂嵐でフィールドを多い尽くす。
だが、未来さんのに比べたら涼風だな…改めてあの人は規格外だ。
って、そりゃこれノーマルランクなんだから、そこまでの無茶な相手は出て来ないわな…
氷華の時もリミッターがあったらしいし、このレジロックにもそれがついてる可能性は高い。
だが、それなら臆する事は無い。
俺たちは俺たちの全力で相手をするまでだ!!



(とはいえ、砂嵐中は特防が高まる…突き崩せるか?)


迷いが隙を生むのは解っているが、相手はレジロック。
攻撃力も低くは無い、加えてこの状況…待っていてもダメージは増える!



「とにかく、サイコキネシスで攻撃だ!!」

借音
「はいっ!」


借音さんは再びサイコキネシスを練る。
レジロックは反射的に体を丸め、そのダメージに耐えていた。
威力は十分…だが、耐えられてる!
そして、大技の後は当然隙が出来る!


キング
「よし、岩雪崩だ!!」


今までの中でも最速の反応でレジロックは岩雪崩を放つ。
地面から打ち上げられた岩の固まりは多数上から降って来る。
借音さんは回避が間に合わず、多数の岩によってダメージを受けた。



(くそっ! やはりダメージレースになって来たか!)


予想はしてたが、耐久力の差が出始めている。
互いに効果抜群の技は持ってない為、持てる最大攻撃力で戦わねばならないのに…
ましてやレジロックは『クリアボディ』の特性…能力低下で揺さぶりをかける事も出来やしない!
このタイミングで催眠術は成功するかリスクも大きすぎる、ゴリ押しするしかないのに、その武器が足りないなんて!


借音
『…聖さん、どうか力を』


(借音さん!?)


借音さんは綺麗だった服をボロボロにしながらも立って前を向いていた。
腕からは血も流れており、間違いなく相手よりもダメージは大きい。
砂嵐の蓄積もそれを加速させている。
長引けば長引く程、こちらは不利になるんだ!
そんな中、借音さんは俺の力を求めている…?
いや、違う…借音さんが求めているのは、俺の信頼。
借音さんは切り札を持っている…それを信じてほしいのだ。
今まで1度も反応しなかったそれは、果たしてこのタイミングで都合良く起動するのか?
果たして俺の信頼程度の絆で、それは起こるのか!?



「疑問なんかいらない! 俺は最後まで信じ続けるだけだーーー!!」

借音
「はいっ! 信じてください!!」


互いの意識がリンクしたのを感じた。
その瞬間、借音さんの胸元からロケットが浮かび上がる。
そして、それに埋め込まれているメガストーンが反応し、借音さんは凄まじい光に包まれた。
メガ進化特有の紋章が借音さんの前に浮かび上がり、それはオーラを纏って弾ける。
やがて、借音さんの姿は美しい白ドレスの姿に変化した。
両腕には肘まで伸びる白手袋がはめられており、胸には赤の突起が2枚伸びている。
それは胸当ての様にも見えるが、あれこそがサーナイトのサイコパワーを生み出す源。
トレーナーの気持ちを感じ、意志を感じ、愛を感じる機関。
そして、この状態の借音さんは…!



「『破壊光線』!!」

借音
「はいっ!!」


借音さんは胸の前に両手を掲げ、黒い渦の様な球体を小さく生み出す。
そして、空間が捻れるかと思う程の振動が発生し、借音さんの足元の床が何枚か剥がれて浮き上がった。
次の瞬間、小さな渦は一筋の閃光となり、ピンク色の輝きを持ってレジロックを撃ち抜く。
レジロックはそのまま光に包まれ、やがて弾ける光に吹っ飛ばされた。
フィールド端の壁に叩きつけられ、そのままぐったりとする。
これが『フェアリースキン』発動時の威力か。
エフェクトも思ったよりフェアリーっぽくなるんだな…
さて、間違いなくダウンだと思うが、どうだ!?


審判
「…レ、レジロック戦闘不能!!」
「よって、勝者! サーナイトの借音!!」

実況
『決まったーーー!! 絶望的かと思われた戦況からまさかの逆転劇!!』
『勝って尚ボロボロの姿ながら、起死回生の一撃で勝利をもぎ取ったぁ!!』


借音
「…ぁ」


「借音さん!?」


俺は力尽きて膝から床に落ちる借音さんに、すかさず駆け寄る。
もはやメガ進化も解けており、初見なせいもあってかあの1発が限界だった様だ。
借音さんは俺に肩を支えられると、安心したのかそのまま気絶してしまった。


キング
「医療班、すぐに治療だ!! サーナイト、レジロック共に、すぐ搬送しろ!!」


キングの素早い判断に医療班が上空から降下して来る。
そして、借音さんとレジロックをすぐに抱き抱えて上空のヘリに戻って行った。
ピラミッドだとこんな面倒な搬送がいるんだな…


キング
「悪いな、本来ならテレポート担当のケーシィがいるんだが、今は全員施設内に出張ってて人手が足りなかったんだ」
「まぁ、だが安心してくれ! 君のサーナイトは必ず元気にしてみせる!」
「さぁ、そしてこれをプレゼントだ! ノーマルのブレイブシンボル!」


俺はキングからブロンズカラーのそれを受け取った。
これで3つ目か…っても、色バラバラでも意味あるのかね?
まぁ、あくまで祭って事だし、俺としても参加する事に意味があると思ってるしな。
はぁ…とにかく疲れた……結局家族には会えずだし、すれ違ったのかもしれないな。



………………………




「…借音さんは流石に安静だな」


俺はとりあえず施設のポケモンセンターで借音さんの容態を聞き、特に問題は無いとの報告を受けて安堵していた。
とはいえ、普段戦う事の無い借音さんがメガ進化までして戦ったんだ。
正直、相当な負担だったはず…祭りとはいえ、辛い思いをさせてしまったかもしれないな。


華澄
「あ、聖殿! 戻られていたのですか?」


「おう華澄か、ついさっきな…やれやれだよ」


俺はとりあえず息を吐いてベンチに座る。
腹も減ったし、華澄たちと合流出来たなら飯でも食うかな?
って、そういや麻亜守ちゃんはどうなったんだ?



「麻亜守ちゃんは?」

華澄
「あ、その…残念ながら、途中退場の形になってしまって」


「ジュニア部門とはいえ、流石に最難関施設は荷が重かったか」


華澄は苦笑いをしている。
麻亜守ちゃんは現在軽く治療中だそうだ。
そんなに重症ではないものの、バトルに負けての退場だったから、念を押して看てもらってる様だな。



「まぁ、ノーマルですらあの内容だったからな…ジュニアもどれ位キツかったのか」

華澄
「あ、いえ…その、難易度そのものはまさに子供騙しみたいな物だったのです」
「麻亜守殿も、楽しみながらゆったり進んでいたのですが、運悪く強敵と当たってしまって…そのまま敗退してしまったのです」


「強敵ねぇ…? 麻亜守ちゃんはジュニアなら年齢高い方なのに、そんなに規格外な子供がいたのか?」


華澄はあはは…と、珍しく苦笑いで何とも言えない顔をしていた。
ん…? もしかして、何か妙な事でもあったのか?


華澄
「…一応、ルールに抵触はしてなかったらしいので、拙者も何も言えませんでした」


「? 一体、何があったんだ? 華澄さんらしくない歯切れの悪さだな」

華澄
「…も、申し訳ありませぬ、そういうつもりでは無いのですが」
「その、実は麻亜守殿と戦ったのら……」


「聖ーーー!」


突然の叫び声と共に俺の視界は真っ暗になった。
どうやら誰かに抱き着かれている様で、俺の後頭部には素晴らしい膨らみの山が押し付けられているかの様。
そして、俺の目は何者かの腕で完全に塞がれていた。



「ふ…この感触、そしてさっきの声」
「さては三海だな!?」

三海
「当たり〜♪」

麻亜守
「流石は聖お兄ちゃん! おっぱいの感触で当ててみせるとぅわぁ!!」


どうやら麻亜守ちゃんも一緒の様だ。
つー事は、華澄が言い渋っていたのは…


華澄
「ははは…やはりバレバレでしたな」

三海
「ふふ…まぁ、仕方がない♪」

麻亜守
「むぅ…流石に背後から目隠ししたら解らないと思ってたのに!」


成る程、どうやら皆で結託して俺を驚かせようとしたわけか。
華澄は流石にバラしかけていたが、先手を打たれたって所だな。



「とりあえず一端離れろ三海…素晴らしい感触だが前が見えん」

三海
「ン…了解」


三海は俺から離れ、改めて俺の前に浮遊する。
そこにいたのは紛れもなく三海で、薄紫のTシャツとピンクの短パンを身に付けていた。
三海は嬉しそうにしており、今にも飛び付いて来そうな雰囲気だが。
これでももう精神的には壮年期だそうだからな…



「やれやれ、そりゃ三海が相手じゃ麻亜守ちゃんには無理だわな…」

麻亜守
「ある意味ズルい! 0歳とは思えないのに!!」


そりゃごもっとも…とはいえ、0歳には間違いないからな。
つっても、年齢とか自己申告だろうし、よく通ったモンだな。
それよか、保護者同伴が必須みたいなのに、誰が保護者やったんだ?



「三海、誰と一緒に参加したんだ?」

三海
「ン…名前は聞けなかったな、成人女性ではあったが」
「歌声がとても綺麗な人だった…後、ギターで人を殴り倒してたな」


それはまたロックなお姉さんだな…
って、誰だよそれ? 歌で思い当たるのはメロディさん位だが、ギターで悪党殴り倒す人には見えんぞ?


麻亜守
「ちなみに私は瞬殺されたから見る暇も無かったのだ!」

華澄
「申し訳ござらん…拙者もあまりの事に驚き、そこまでは見ておりませんでした…」


あらら…何とも偶然だな。
まぁ、どうせメロディさんとはまた会えそうな気がするし、その時に聞いてみれば良いだろ。
とりあえず、今日はこれで飯にでもして、明日借音さんの回復を確認してからまた次の計画を立てよう…



………………………



三海
「アムアムアムッ!!」
麻亜守
「ハグハグッ!!」


「…どうなってるんだ、エスパーポケモンの腹は」


やや遅めの夜食となった俺たちは、とりあえず施設内の食堂で飯を食っていた。
そんな中、三海と麻亜守ちゃんはこれでもかという程にがっついている。
三海に関しては見慣れた光景だが、麻亜守ちゃんも今日は偉く大食いだな。
まぁ、麻亜守ちゃんも育ち盛りだろうし、食欲旺盛なのは良い事か…


華澄
「ふふ…ふたりともよっぽどお腹が空いていたのですな」


ほんわかムードで食事を取る華澄さんは相変わらずの少食。
俺も今回は相当腹が減っていたが、三海たちを見ると逆に食欲が無くなってくるな…



「ったく、メロディさんのゴールドパスが無かったらゾッとする金額だろうな…」


少なくとも、量だけでなく飯のクオリティも決して悪くない。
ましてや、こういったイベント会場の飯なんて高いのが相場だ。
これで守連や香飛利がいたら、本気で食材を食い尽くしかねないだろうな。


三海
「ンー! お代わり!!」

店員
「も、申し訳ございません…実は、もう食材が底をついてしまって」

三海
「ン…解った、腹八分目って言うし、我慢する」


俺たちはガクッ!とずっこけそうになった。
こんだけ食って八分目かよ!!
既に5人前は食ってただろ!?


麻亜守
「…化け物か三海!!」

華澄
「あ…はは」


「…ホントに守連が一緒じゃなくて良かった」


夜遅めとはいえ、見事に食い尽くしたな!
まぁ、俺と華澄はこれで問題無いし、とりあえずは良しとするか…
明日の朝までこうだと洒落にならんが。
タダとはいえ、運営は大丈夫だろうか?
経費から出るらしいけど、この出費は予想外だろフツー?


三海
「…ン、眠くなってきた」


「あらら、いつものパターンか…三海、もう少し我慢しろよ?」
「俺たちももうすぐ食い終わるから、そしたらゆっくり休もう」


三海はゆっくりと頷いてウトウトする。
つい忘れそうになるが、三海は常時メガ進化状態の最悪燃費だからな。
基本的に、動く時は誰よりも効率良く動くが、その分動けない時間も相当多い。
実質、三海は1日の半分は寝てる状態だからな。
逆に無理に動くとそれだけ三海はエネルギー不足になる。
可能な限り、三海には無理はさせたくないんだが…


華澄
「…三海殿の様子からして、相当無理をしていたのでは?」


「だろうな…本来ならひとりで活動し続けるのには限界がある」
「きっと俺を探して、無理にでも奔走していたのかもしれないな…」


三海にとって俺は恐らく拠り所だ。
メガストーンを脳に埋め込まれ、常時メガ進化起動状態の三海は、フツーのポケモンとは違いすぎる。
あれから成長したとはいえ、三海がマトモにバトルで動けるのは30分位だろう。
ちょっとでも無理をすれば、すぐにガス欠を起こして体が痩せこけるからな。
三海にとって、この食事量は生きる為の必須量ともいえる。
だからこそ、俺も三海の食事量に関しては何も言う事は無い。
家族も皆理解してくれてる…三海は、最強の家族でもあるが、ある意味最弱の家族でもあるのだから。



「むしろ、あの過酷なピラミッドをよく三海は耐えれたな」

華澄
「確かに、食料は配給されてたとはいえ、それはあくまで子供用の物でしたからな…」


保護者をやってくれた人は、相当三海の事を大事にしてくれたのだと俺は思う。
いくら今の三海でも、燃費の悪さはどうにもならんはずだからな…


三海
「………」

麻亜守
「むぅ、三海ぃすでに旅立ちそうだぞ!?」


「おっといかんいかん! さっさと食うぞ華澄!?」

華澄
「は、はいっ」


俺たちはすぐに残りの食事をかっ込み、眠りかけている三海を抱っこして寝室に向かった。
三海は俺の腕の中で嬉しそうな顔をしながら眠りについている。
やれやれ、こういう所はまだまだ子供っぽいよな…



………………………



麻亜守
「…お母さん、大丈夫だよな?」


「ああ、大事を取って休んでいるだけだから、明日には会えるよ」

華澄
「麻亜守殿、寂しいでござるか?」

麻亜守
「…んーん、私は三海ぃよりもお姉ちゃんだから、そんなワガママは言わないのだ!」


そう言って、麻亜守ちゃんは華澄に抱き着いた。
やれやれ…強がってはいるが、やっぱ寂しいんだな。
華澄は優しく麻亜守ちゃんを抱き締めて頭を撫でてあげる。
こうやって見てると、華澄も母親みたいだな…
昔は華澄さんも何も解らないポンコツだったのに、今や逆に何でも出来る完璧超人だからな。


麻亜守
「む…華澄お姉ちゃん、やっぱりお母さんよりもおっぱい大きい」

華澄
「あ、はは…」


「まぁ、華澄よりも大きいの探す方がフツーは難しいと思うがな」
「麻亜守ちゃんも、大きくなったらきっとお母さん位にはなるさ♪」

麻亜守
「…むぅ、でも私は血が繋がってないから同じにはならないと思う」


俺たちは言葉を詰まらせてしまう。
そう言えばそうだった…麻亜守ちゃんと借音さんは、同じ種族でも血が繋がってないんだったな。


華澄
「…大丈夫でござるよ、麻亜守殿はきっと借音殿と同じ様に、綺麗なサーナイトになれると思います」

麻亜守
「…本当?」


華澄は優しく微笑んで頷く。
根拠は無いのだろう、でも華澄は確信してる様な顔だ。
麻亜守ちゃんも、華澄の真面目な微笑みに少し安心していた。
そして、やや嬉しそうに華澄の胸に顔を押し当てて頬笑む。
想像したのかもしれないな…未来の自分の姿を。
いや、仮にもラルトスだ、本当に未来予知したのかも…


麻亜守
「………」

華澄
「…ふふ、このまま眠ってしまいましたな」


「…まぁ、華澄さんのおっぱいに包まれたら、天国だろうしな♪」

華澄
「…でしたら、聖殿もいかがですか?」


俺は、思考が停止する。
俺の横では三海が安らかに寝息を立てている。
ここはダブルベッドがふたつで、ふたり一組でひとつのベッドに寝る寝室だ。
そんな中、華澄さんが妙な言葉を口走った…?
華澄さんは麻亜守ちゃんを優しくベッドに寝かせ、やや恥ずかしそうに俺を一瞬見て目をすぐに背ける。
俺はかなりドキッとした…こんな華澄さん、見た事無いぞ!?


華澄
「…聖殿、もし…もしもです」
「もし、拙者が…子供が欲しいと願ったら、聖殿は…叶えてくださいますか?」


「……!」


それは、純真な願いに感じた。
いや華澄の言う事だ、冗談などあるはずがない。
そんな華澄が…本気で、願っている?


華澄
「…申し訳ございませぬ、今のは忘れてくだされ」
「こんな状況とはいえ、こんな物は約定を違える行為」
「聖殿も、お疲れでしょう…もう、休んでくだされ」


華澄はそう言って、麻亜守ちゃんと同じベッドで布団に包まる。
俺は心臓をバクバクさせながら、深呼吸して三海の横に並んで眠った。
約定、ね…
大方、阿須那や女胤たちとの決め事か…華澄らしい義理堅さだな。
正直、もし華澄が本気で求め、願い、迫ったなら…俺は受け入れてしまっていたかもしれない。
華澄の様な、純真に幸せを望んでくれる娘の気持ちを、俺は拒めなかったかもしれない。
そう思うと、途端に怖くなる。
俺は、家族を皆愛すると言ったのに。
それなのに、俺はその約束を守れないかもしれない。
ただ、その想いが俺は怖かった。
そして、同時に察する。

俺は…幸せにはなれないかもしれない、と。



………………………




「……」
華澄
「……」

麻亜守
「むぅ…?」

三海
「………」

借音
「あの、ふたりともどうかしたのですか?」


俺たちは、次の日の早朝、借音さんを迎えに行って外に出ていた。
だが、俺は昨日の事が忘れられず、華澄と共に黙りこけている。
俺も華澄も、気持ちは一緒なのにそれが並ばない。
互いに思いが交錯し、行き違っているのだ。
俺は、無意識に華澄を避けてるのかもしれないな。
華澄は多分いつも通りのはずだ、ただ俺のダメさをカバーしてくれているだけに過ぎない。
俺は…こんなにも情けなかったのか?
違うだろ!? 俺は家族皆を救うと決めている!!
それは、華澄だけが特別であってはならない!
俺は、それだけは曲げてはならない…!!


ドンッ!



「痛ぇ!? テメェ、どこ見てやがる!?」


「あ…悪……」


ドカァ!と途端に俺は蹴り飛ばされる。
油断していたのが悪かったが、相手はポケモンだ。
見た感じ、口元が若干尖っており、目元が黒い。
歯並びが特徴的で、俺は相手がワルビアル辺りと踏んだ。
俺は地面を転がり、すぐには立てなかった。
こんな時は、いつも華澄が助けてくれるのに、今回は華澄も油断していたのか、呆気に取られて敵に捕まっている。
借音さんや麻亜守ちゃん、三海も既に捕まっていた。
俺は、これも天罰か…と思い、ゆっくり立ち上がる。


ワルビアル
「おう、兄ちゃん! 随分良い女はべらせてんなぁ!?」
「ちょ〜っと借りても良いか?」


「…ざけんなクソヤロウ、家族に手ぇ出すなら命の保証はしねぇぞ!?」


俺は口から血を流しながら、ギンッ!とワルビアルを睨む。
それ見て、一瞬ワルビアルは怯むが、次の瞬間には借音さんと麻亜守ちゃんの悲鳴が聞こえる。
これは警告か…俺は舌打ちし、華澄と三海を見た。
ふたりはともかく、借音さんと麻亜守ちゃんはマズイ。
下手に刺激したら、危害が及ぶか…クソが。


ワルビアル
「へっ! 良い度胸だな兄ちゃん!?」
「だが、女が大事か? えぇ? 動いてみろぉ!!」


ワルビアルの右拳が俺の頬を殴打する。
俺は口の中を切り、血を吐いた。
かなりのパンチに俺は再び吹っ飛ぶ。
だが、俺は歯を食い縛って立ち上がった。
そして、なおもワルビアルを睨む。
華澄はギリッ…!と歯軋りする音をここまで響かせていた。
三海も何とか感情を抑えて我慢してくれてる。
流石の三海でも悪タイプには超能力が通せないし、下手な動きは犠牲を伴う。
結局、皆人質状態か…やれやれ、俺はイケメンじゃないからこんな時は無力だな。



「…貴方たち、そこで何してるの?」

ワルビアル
「!? な、何だテメェはぁ!?」


「…メ、メロディ、さん?」


見ると、ワルビアルの背後からメロディさんが近寄って来ていた。
そして、その顔は怒りに震えている顔。
あんなメロディさんの顔は初めてだな…いつもニコニコしていた人なのに。


メロディ
「…成る程ね、随分外道な事してるじゃないの?」

ワルビアル
「へっ! あれが見えねぇか? お前も余計な事するなら痛い目見……」

仲間A
「ぶしっ!?」
仲間B
「ばわっ!?」


何と、突然借音さんと麻亜守ちゃんを掴んでいた男ふたりが吹き飛ぶ。
その背後には、やたらガタイの良い女性がふたり立っていた。
ひとりは赤いセミロングの髪に、黒い色が混ざったワイルドな感じの女性で、赤の革ジャンと黒いシャツ、黒のズボンを身に付けている。
耳は頭の上に付いており、尻尾もある事からポケモンなのは解るが。
だけど、あの尻尾の色艶…どこかで?

ちなみに、もうひとりは緑と赤の短髪に、赤の半袖シャツと白のズボン。
こちらも負けじと屈強な体だが、その体は引き締まっており、瞬発力の高そうな見た目だった。
脇の辺りには白い皮膚が腕と繋がっており、まるでムササビみたいにも見える。
こちらも鋭い目をしており、間違いなく強いのは見て解った。


赤服の女性
「やれやれ、折角の祭りなのにつまんねぇ事すんなよな?」

白服の女性
「全くね…空気を読みなさい」

ワルビアル
「な、何なんだお前らは!?」

華澄
「誰かは知りませぬが、感謝いたす…」

三海
「ン…もう倒しても良いのか?」


気が付けば、華澄と三海も一瞬で敵を倒し、束縛から逃れていた。
やれやれ…これで形勢逆転だな。
俺は軽く息を吐くが、それ以上にメロディさんは目を細めてイラついている。
な、何か雰囲気が違うな…?


メロディ
「折角の楽しいお祭りだってのに、よくも水差してくれたな小悪党がぁ!?」

ワルビアル
「く、クソッ! こうなったらテメェから!!」


ワルビアルがメロディさんに手を出そうとした瞬間、ソイツの頭はギターの胴体部分で横に殴り飛ばされていた。
メロディさんは片手でそれを振るっており、ワルビアルは鼻血を噴いて吹っ飛ぶ。


メロディ
「ブレスの出来ない歌はなぁ! 誰も歌えやしねぇんだよ!!」

ワルビアル
「ひっ!?」


俺たちは目を疑った。
メロディさんが言い放った後、ワルビアルの真上にはグランドピアノ。
メロディさんはその足を掴んで思いっきり振り下ろし、ワルビアルの体を容赦無く叩き潰した。
場が騒然とするものの、すぐに警備のポケモンが現れて場を静める。


警備
「そこを動くな!? 大人しくしろ!!」

赤服の女性
「はいはい、コイツ等が元凶な?」


赤服の女性がそう言って悪党の首根っこを掴んで投げ捨てる。
同様に白服の女性や華澄たちも同じ様に悪党を投げ捨てた。
警備のポケモンはそれらに手錠をかけ、とりあえず連行する。
ワルビアルは完全に頭が潰れていたが、生きてるのだろうか?



「やれやれ…助けられちゃいましたね」

メロディ
「…まぁね、ああいうのは見過ごせないし♪」

三海
「昨日のお姉さんか、また助けられてしまったな」


あらら…やっぱメロディさんだったのか。
三海はメロディさんに近付くと、メロディさんはニコニコして三海の頭を撫でた。
三海は気持ち良さそうに目を細め、頭を撫でられている。
壮年期の心でも、潜在的にそういう所は変わらないのか…


華澄
「そちらのおふた方も、感謝いたします」

赤服の女性
「気にすんなよ…たまたま通りすがっただけだし」

白服の女性
「そうね、たまたま…ね」


そう言ってふたりの屈強な女性は背を向けて去って行く。
何か、意味ありげな感じに思えたが、誰だったんだろあのふたり?
なーんか、どっかで見た気がするんだけど、気のせいかな?



「それより、借音さん、麻亜守ちゃん大丈夫か!?」

借音
「は、はい…大丈夫です」

麻亜守
「うぅ…怖くても泣かないからな!」

三海
「ン…よしよし」


三海は年齢上年下にも関わらず、麻亜守ちゃんの頭を撫でてあげていた。
当然麻亜守ちゃんは複雑な顔をしている。
ははは…どっちがお姉ちゃんか解らないな。


メロディ
「…とりあえず、気を付けてね?」
「こんなお祭りだし、血の気の多いポケモンたちは多いから」


「あ、はい…でも、メロディさんって意外に荒っぽいんですね?」


俺が複雑そうな顔で言うと、メロディさんはやや顔を引きつらせた。
少なくともあのメロディさんはかなりロックだったぞ…?
怒りに任せてグランドピアノ振り下ろすとか、正気の沙汰とは思えない。
ちなみに、あれはメロディさんの特殊能力で生み出された物なのか、今は跡形も無くなっていた。


メロディ
「あ、はは…私って、治安の悪い貧民街で育ったせいか、結構喧嘩っ早くて…」
「ブチキレると、つい周りが見えなくなっちゃうんだよね…」


それはかなり重症だな…迂闊に余計な怒りは買わない様にしなければ!
髪型貶してキレたりしないだろうな? 何か怖くなってきたぞ…


メロディ
「べ、別に普段からキレてる訳じゃ無いんだからね!?」

三海
「ン…だが、昨日も私が絡まれてたら、ギターで殴りかかってたな」

メロディ
「そ、それは君がピンチだったから!?」


何だかなぁ…メロディさんも人の娘か。
いや、ポケモンの娘か? ともかく、メロディさんは怒らせたらマズイ、と。
ネタも自粛しよう…弾みでグランドピアノ落とされても困る。
俺は人間だから本気で死にかねん。


華澄
「ちなみに、さっきのふたり組は知り合いですか?」

メロディ
「え? ううん、知らない人だよ?」
「何か突然乱入したみたいだね…」


乱入ねぇ…って、やっぱ気になるなぁ?
あのふたり、どこかで会った事ある?
でも顔に覚えが無いしなぁ…ホントにたまたまだったのか?


三海
「…これから、どうする?」


「おっと、そうだな…メロディさん、何かオススメあります?」

メロディ
「えっ!? そ、そうねぇ…とりあえずバトルパレスとかどう?」
「聖君たちなら、楽勝かもしれないけど…」


バトルパレスねぇ…俺はパンフレットを見ながら場所を確認する。
『絆』を試される施設ね…成る程、そりゃ楽勝だ。
俺たちの絆は何よりも強い。
これなら、負ける気はしないな!



「皆はそれで良いか?」

華澄
「異論はありませぬ」

三海
「ン…聖が行くなら♪」

借音
「はい、行きましょう♪」

麻亜守
「私もジュニアで頑張る!」


とりあえず、決定だな。
次の目的地はバトルパレス! さーて、今度は誰がいるのかね?
って、もしかしたらいないかもしれないんだよな…
とはいえ、恵里香の言い方的には全員いそうな気もするんだよな…


メロディ
「まぁ、とりあえず頑張って! 私も影ながら応援してるから♪」


そう言ってメロディさんはギターを振り回しながら走り去って行く。
あのギターも凶器だと思うと笑えないな…一体何人の血を吸って来たのか?
さて、まぁそれは置いておいて、とにかくバトルパレスに向かおう。



………………………



三海
「…ン?」


「どうした三海?」


俺たちが、バトルパレスを視界に納めた時、三海は突然周りを見渡した。
何かを探している様だが、気になる物でも見付けたか?


華澄
「三海殿、どうなされた?」

三海
「…何か、色々混ざってる」


「色々…? 何の事だ?」

借音
「もしかしたら、他の家族では?」

麻亜守
「私には解らないぞ?」


感じ取ったのは三海だけか。
とはいえ、三海が見ているのは別の方角。
つまりパレスではないのだ。
そうなると厄介だな…折角ここまで来たのに、進路を変更するのか?



「三海、家族の反応か?」

三海
「いや、解らない…あまりに思念が混ざりすぎている…」
「個人をここから特定するのは、無理だと判断する」


三海はかなり険しい顔をしていた。
あまり良さそうな情報にも思えない…か?


三海
「興味深いな、この混沌の正体に関わる何かかもしれん、私はあっちに行ってみるよ…」

華澄
「それでしたら、拙者もご一緒しましょう…三海殿ひとりでは万が一も有り得ます」

三海
「ン…そうだな、それなら助かる」


「そうか、まぁ華澄が一緒に行くなら大丈夫だろうし、任せるよ」


華澄たちはそれを聞いて軽く笑う。
そして、三海と一緒にこの場から一旦離れた。



「…じゃあ、俺たちはこっちだな」

借音
「はい、そうですね」

麻亜守
「うむっ、頑張るのだ!」


俺たちはバトルパレスを目指す。
ここには誰もいないのだろうか?
三海はより遠くの方を目指してしまったが。
借音さんたちも特に反応は感じていない。
恐らくここでも中の様子は探らない方が良いからな、このまま自粛させた方が良いだろう。
さて、何はともあれ次の施設。
俺は少なからず楽しんでいるのを自覚する。
荒っぽい所もあるが、それも祭りの醍醐味。
どうせなら、楽しまないと勿体無いわな…










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第3話 『家族の愛、聖の哀、確かな絆』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/13(月) 16:10 )