とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第6章 『過去、そして未来』
第6話
女の店員
「でさ〜、やっぱこの街にはいるんだって!」

男のマスター
「バカを言ってンじゃねぇ! 仮面○イダーじゃあるまいし、そんなモンいるかっ」


聞こえてくる話題は、最近この街で噂される謎のヒーロー騒ぎ。
いわゆるここは喫茶レストランで、私は食事を取る為に立ち寄っていた。
ちなみに私はポケモンだが、今は恩人から貰った偽装薬という物を服用しているので人間に怪しまれる事は無い。
その偽装薬は定期的に送ってもらっている物で、月1位でいつも転送してもらっている…空間転移で。
まぁ、そんなわけで私は今、アメリカのニューヨークにいる。
目的は無いが、話題のヒーロー騒ぎというのは、少々気になっている所だ。


ミュウツー
(…そうか、幸せにやってるんだな、三海は)


私は、今月分の薬を転送してもらった際に、妹である三海の手紙を受け取っていた。
三海は機械的な字で綺麗に文字を書いており、その成長具合が良く解る。
段階的に考えれば、もう精神年齢は壮年期と言って良いはずだからな。
とりあえず元気に生きてくれているなら、私は安心だ。
私は微笑して手紙を読み終え、それをサンドバッグ型の鞄に入れてコーヒーを飲み、サンドを食べる。
アメリカのフードはどれもボリュームがあって良い。
値段に対して量があるから、資金的にも助かる所だ。
一応、資金は恩人に支援してもらっている。
本来なら自分で稼ぐべきだが、好意として私は毎月仕送りを受ける事にしたのだ。
両替とかは、向こうがやってくれるから気にしなくても良い。
それにしてもパルキアは凄いポケモンだな…毎月薬と金の受け取りで会うけど、どういう原理で空間操作をしてるのかが全く解らん。


女の店員
「絶対にヒーローはいるって!」

男のマスター
「はいはい、もうそれで良いよ…ん? いらっしゃい!!」


私は背後に感じる不穏な空気を読み取った。
ソイツは殺気だっており、恐らく武装している。
私はサンドを食いきり、そのままコーヒーを飲んでジャーナルを読む。
やれやれ、連続殺人犯逃走中…ねぇ。



「ヒャハハハハハハハ!! 皆殺しだぁ!!」


男はマシンガンを構えてぶっ放す。
銃弾は店内をくまなく抉り、マスターと店員はすぐにその場に伏せて助かった。
私は気にせずに、自分の方に飛んで来た弾だけを念力で全て空中に止める。
ついでに、他の客に被害が出そうなのも止めておいた。
マシンガン男は、完全に思考が停止しているのか、狂った様に銃を乱発するだけ。
私は流石に面倒になって、銃弾を1発男の肩に跳ね返す。
すると、男はマシンガンを手から落として悶絶した。
その瞬間に私は全ての銃弾を真下にそっと落とす。
幸い客も店員も全員伏せているから状況なんざ解らない。
私はとりあえず5$テーブルに置いて荷物を持ち、立ち去る事にした。
ついでに、転がっているマシンガンをバラバラに粉砕しておく。
やれやれ…銃社会は落ち着けないな。



「あん? どうなってんだこりゃ…?」

ミュウツー
(…!? 何だ、コイツは…?)


私がジャーナルを読みながら外に出ると、そこには明らかに改造が施されたバイクに跨がる女がいた。
髪はツンと左右上下に立っており、あからさまな赤髪。
体はローブの様なマントで覆われており、体は隠されている。
手にはライダーグローブを着用しており、とりあえずライダーというのは何となく解った。


ミュウツー
(コイツ…まさかポケモン、か?)


一目見ただけでは解り辛いが、染めたとは思えない赤髪に何故か碧眼色のカラーコンタクト…
極力人目を気にしているみたいだが、この真夏に全身ローブとはな…
改めて偽装薬を持っている私は気楽だと言える。
尻尾さえ気を付ければ私は人間と変わらないからな。


赤髪の女
「…やったのはアンタか?」

ミュウツー
「どう見たらそう見える? こんなひ弱そうな女が素手でマシンガンに勝てるとでも?」


私は話しかけられたので呆れた様に肩を竦めてそう言ってやる。
すると赤髪の女も呆れた顔をし、こう返した。


赤髪の女
「身長195pで筋肉もがっしりしてる女のどこがひ弱だ! テメー自分で鏡見た事ねーのかよ!?」

ミュウツー
「ちっ、冗談の通用しない奴…」


私は舌打ちして顔を背ける。
まぁ、夏場だし私も半袖ジーンズと薄着だからな…体つきは一目瞭然か、これでも戦場で鍛えられたからな。
しかし、ただただ面倒だ…何でこんなのに絡まれるかね?
私は短めに切り揃えてある髪をガシガシ掻いて赤髪を見る。
ソイツは明らかに不審の目を向けており、どうやら言い逃れするのは余計に面倒そうだった。


赤髪の女
「おい、正直に言え…さもないと」

ミュウツー
「おっ、あそこにいるのはお巡りさんかな〜?」


赤髪は何っ!?と馬鹿正直に振り向いてくれる。
私はその隙にテレポートしてとっとと退散した。
はぁ…初めからテレポートで店出りゃ良かった。



………………………



ミュウツー
(しっかし、何だったんだあの赤髪?)


これでも知識には自信がある。
だが、アイツは見た事も無さそうなポケモンみたいだった。
そもそも赤髪だけでは判別は難しいしな…
全身をローブで覆っていたし、暑さを苦手としない炎タイプか?
まぁ、どっちにしてもしばらくは撒けるだろ。
私はとりあえず路地裏から一旦人気の多い道に出て、通行人の邪魔にならない場所でジャーナルの続きを読んだ。


ミュウツー
(これか…例のヒーロー騒ぎの写真)


それは、形容に困るマスクを被った女だった。
深紅の赤をメインカラーに、黒いラインが入ったライダースーツみたいなコスチューム。
背中には、何やらバックパックみたいな物を背負っており、両手には銃を持っている。
かなり映像が荒い写真のせいで、詳細は解らないがコイツがそのヒーローって噂だ。
何でも、深夜にだけ出没し、スラム街を中心にその出現場所は多岐に渡る。
ただ、そのいずれもが何かしらの犯罪発生地点で、ソイツは必ず犯罪者を倒して誰かを助けているとの事。
誰が言ったか、マスクドライダーやら、レッドマスクやら、とにかくアメコミヒーロー好きには堪らない存在らしい。


ミュウツー
(ジャーナルの写真から身長を推測、160p程か)


となると、さっきの赤髪と一致するな。
バイクまで似てるぞ…バカかアイツ、バレバレじゃないか。
そもそも昼間でも出没してるし、深夜にだけじゃない。
何というか…途端にバカらしくなって来たな。


ミュウツー
(だが、問題はそこじゃない…どうやってこの世界に来た?)


私たちの様な特例が無ければ、この世界に人化したポケモンは現れないはず。
それとも、聖たちが遭遇したと言われる混沌なのか…?
それにかかれば、常識など何も通用しないらしいからな…
やれやれ、やはり面倒に巻き込まれた可能性が高いな。


ミュウツー
(とはいえ、興味があったのは事実か…ポケモンが隠れて人助けね)


私はクスリと笑みが零れる。
世の中には、まだそういうバカが天然でいるらしい。
だが、それだけでは問題だ。
アイツはきっとその先を考えてない。
この人間社会の中、後ろ楯も無しにゲリラでヒーロー活動とか、ナンセンスだ。
ここは、私が教えてやるべきなんだろう…面倒だが。


ミュウツー
「…アイツなら、喜んでやるんだろうな」


そして愛する妹も…それが容易に想像出来ると、私はため息が出た。
仕方ないか…関わっちまったんだし。
私はジャーナルを鞄に押し込み、少し瞑想する。
次に動体探知…500m以内位なら、私は探る事が出来るのだ。
そしてキャッチ、バイクで移動してるな…私はそれを確認してテレポートで近くまで移動する。

そして目標を見付けると私はビルの天井から飛び降り、ソイツの頭上から降って後部座席に着地…いや着座した。
赤髪はギョッとしているものの、私はすぐにテレポートで再度移動する。
やれやれ…面倒だな本当に。



………………………



赤髪の女
「で…? 一体何モンだお前?」

ミュウツー
「…ミュウツーだ、と言っても流石に解らないか?」


私たちは薄暗いスラムのとある場所で話をしていた。
とりあえず私は自分の正体を明かすが、赤髪は?を浮かべてしまう。
こういう時珍しいポケモンは面倒だな…ミュウツーはゲーム的に有名でも、現実的には希少価値だから存在が認知されてない幻同然だ。


赤髪の女
「ミュウツー…ねぇ? 変わった名前だな…」

ミュウツー
「ちなみに、種族としての名だ…私は二海、『西野 二海』(にしの ふみ)だ」


私は自分で名付けた名前を名乗る、ちなみに名字は三海の物を使わせてもらってる。
一応姉妹扱いだし、問題は無いだろう。
とりあえず赤髪は?をまた浮かべるも、少しして何かに気付いた様だった。
どうやらかなり頭の回転は残念らしい…


赤髪の女
「そうか…お前もポケモンなのか!?」

二海
「ハナから気付け! テレポートとか出来る人間がいるか?」

赤髪の女
「そりゃいるだろ? サイキッカーとかオカルトマニアとか、超能力者は現実にいるぜ!?」


私はこの時点で推測する。
成る程、コイツはトレーナーが存在する世界からやって来たな…
だが、やはり種族が解らない。
いや、そもそも名前すらまだ知らないのだからな。


二海
「とりあえず、お前の名前は?」

赤髪の女
「ジェノだ…『ジェノ・セクター』、種族は…『ゲノセクト』!」


それが、赤髪の名だった。
そして、センスの欠片も無かった。
やれやれ…やはり残念な知能の様だ…私もネーミングセンスについては人の事言えないが。


二海
「お前は、別の世界から来たんだろう? 何でこんな所でヒーロー活動なんてやってる?」

ジェノ
「理由なんて無い、俺は戦う事しか出来ない改造されたポケモンだ」


私は言葉を詰まらせる。
そして、ようやく解った…私の中にどこかあった違和感。
そうか…コイツも、似た様な境遇か。


二海
「それでどうして人助けなんてする? 大方、殺戮兵器とかに改造されたんじゃないのか?」

ジェノ
「そうだな…だから俺は逃げ出した」
「そして、今はここにいる! 誰かを助ける為に!」

二海
「逃げただと…? どうやってこの世界に来たんだ?」

ジェノ
「解らん…俺は脳改造される前に研究所を出たんだが、気が付いたらこの街にいた」
「そしたら、人に見付かって騒がれちまう始末…俺は仕方無いから隠れて生活してたよ」
「幸い、たまたま悪党を倒したらお礼されてさ…それ以来、人助けが生き甲斐になってた」


ジェノは嬉しそうに語る。
コイツはコイツで、自分の道を選んだのか…ある意味、羨ましいな。


ジェノ
「お前の事も聞かせろよ? 折角会えた別のポケモンだ…ミュウツーって珍しいのか?」

二海
「そうだな…多分珍しいんだろう」
「だが、私は産まれが最悪だったよ…」


私はジェノに産まれた頃の事を話す。
するとジェノの顔は次第に曇り、やがて悲しげな顔を見せた。
思った通り、顔に出やすいタイプの様だ。



………………………



ジェノ
「そうか…苦労したんだな、お前らは」

二海
「ああ、だが私たちは今を生きてる…生きていて良いんだと、認めてもらえた」

ジェノ
「…俺にもさ、妹がいたんだ5人」


ジェノは呟く様に話始める。
5人の妹…か、それは大家族だな。
だが、ジェノの顔は決して明るくなかった。
そもそも、いた…と過去形にしている以上、不幸な事になったのは想像が出来るな。


ジェノ
「俺たちには、過去の記憶が無い」
「3億年前に生きていた虫ポケモンの化石から再生され、改造されたんだそうだ」

二海
「古代のポケモンがベースか、なら岩タイプなのか?」

ジェノ
「いや、俺たちは鋼と虫のタイプを持つ」
「お前はどうせエスパータイプだろ?」


まぁ、ミュウツーだからな。
テレポートも見せているし、予想は容易いか。
しかし、改造されているせいなのか、鋼タイプとはな…
まぁ、ハッサムやらフォレトスやらミノマダムやらシュバルゴやらアイアントやら、珍しくも何ともないタイプだ。
つーか、今思い出しても多いな鋼虫!?
まぁ、今後も増えそうな気配は多いし、何かと鋼タイプは優遇タイプとも言えるからな…


二海
「…まぁ、ご察しの通りだ」
「それで、続きは?」

ジェノ
「俺と同時に、5人の妹たちも復元されて改造された…」
「それぞれ脳改造を施され、人類に牙を向く様に設定されて」


まぁ、よくある展開だろう…漫画とかなら。
とはいえ、コイツのは現実。
紛れもなく実際に起こった事であり、コイツはそんな狂った研究をしていた場所から逃げて来たんだ。


ジェノ
「もうアイツ等は、妹じゃない…きっと、今も俺を殺そうと躍起になってる」

二海
「待て…今も、だと?」


私はすぐに反応してしまった。
そして私は予測する。
この世界に来たのは、コイツだけではない…まさか、その妹たちも?


ジェノ
「…まだ出会ってはいない、だが俺には解る」
「アイツ等の、殺人衝動が…」


そう言ってジェノは私にジャーナルの切れ端を渡す。
そこに書かれていたのは、謎の殺人鬼出現。
確か、今日のジャーナルでも書かれていた奴だ、逃走中って記載されていたが。


ジェノ
「アイツ等は必ず俺を狙ってる…だから嬉々として人殺しをやってるんだろうさ」
「だから俺は、アイツ等を殺さなきゃならない…姉として、そして人類の味方として!!」


ジェノは拳を握り、そこから発熱する。
鋼虫とは聞いたが、炎タイプの技も使えるんだろうか?
どっちにしても、苦手なタイプだ…あまり相手にしたくは無いな。
しかし、聞いてしまった…コイツの決意を。
なら、私はどうする? 今日の事は忘れてさっさと逃げるか?


二海
「クソッタレだな…」

ジェノ
「あん? 何がだよ…?」

二海
「妹を、殺すとか言うな…姉なら、何がなんでも救ってみせろ!」


私は、自分でもバカな事を言っているんだと思う。
だが、それが恩人に教えられた希望だ。
私は妹を救う為ならどんな犠牲も構わなかった。
だけど、それじゃ何も救えなかった…
違うんだ…本当に救いたいなら、覚悟がいるんだ!


ジェノ
「救う…だと?」

二海
「そうだ、希望が無いとか言うな! 姉なら覚悟を決めろ!」
「何がなんでも救うと決めて、妹を信じてやれ!!」


互いに妹がいる姉だ、気持ちは解るはず。
私は諦めて、全部捨てた…妹さえ助かればと全てを蔑ろにした。
その結果、ただ掌の上で操られている事にも気付かず、私は全てを失いそうになった。
コイツも同じだ…望まぬ改造を受けて、望まぬ殺し合いを仕向けられている。
だったら、気付かせなきゃならない…救ってやらなきゃならない。
恩人ならこう言うだろう、俺が絶対救うと。
私にそれが出来るかは解らない…だが、善処はする。
最強の戦闘ポケモンとして産み出された私は、誰かを救う事も出来るんだと証明してみせる!!



………………………



それから、私たちは夜を待った。
ジェノは例のスーツを着込み、ヒーローとしての姿を表す。
首には紫のマフラーをしており、マスクの瞳も紫に輝く。
まるで虫の顔を模したそのマスクは、まさにどこぞのマスクドライダーの様に見えた。


ジェノ
「良いんだな? やるなら後戻りは出来ねぇぞ?」

二海
「余計な事は考えるな、お前は救う事だけ考えろ」


私はバイクを走らせるジェノに浮遊して追いかける。
深夜のスラム街、ここでまた殺人事件が起こっていた。
私たちは己の感覚を便りに、その現場に向かう。
そして、数分して現場に辿り着き、遂に…ひとり目の殺人鬼を発見した。


ジェノ
「アクアーーー!!」

アクア
「お姉様!? やっと来てくれたのですね!?」
「さぁ、殺し合いましょう! 惰弱な人間など、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して! 殺して!! 殺してぇ!!!」


ソイツは、ジェノと似た様なスーツとマスクを被り、カラーは青。
だが、完全に精神は崩壊しており、感じる思念は殺意しかなかった。
私は少し頭を抱えるも、コイツはあくまで改造されたジェノの妹。
だったら、救ってやらなきゃならない。
こんな、姉妹で殺し合いなんて、絶対に許しちゃいけない!


二海
「ジェノ! 目的を忘れるなよ!?」

ジェノ
「!! わ、解ってる!! だが、具体的にはどうすれば良い!?」

アクア
「誰がお姉様をたぶらかしてるんですの!? 先に殺しますわよ売女(ばいた)!!」


おいおい、12歳の少女に向かって売女は無いだろ…
まぁ、そんな冗談は置いておいて、私はさっさと超能力で結界を張る。
こうする事でここら一帯は外から侵入不可、不可視のバトルフィールドと化す。
中からも外には出ない仕様だ…私のパワーを超えない限り。
アイツ等がどれ位強いかは解らんが、防御に特化させてるからそうそう打ち破られんとは思う。
とはいえ、短期決戦が望まれるのは変わらない、私の力も無限じゃないからな…


アクア
「妙な真似を!! 死になさい!!」

ジェノ
「テメェの相手は俺だ!!」


ガキィ!!と甲高い金属音が鳴り響き、アクアは真横に吹っ飛ぶ。
ジェノが放った右拳でアクアは結界の壁に叩きつけられた。
だが、今の一撃でも大したダメージではないのか、アクアはすぐに復帰して首をコキコキ鳴らす。


アクア
「流石はお姉様! 一切手加減の無い一撃!!」
「それでこそ、私のお姉様! さぁ、殺し合いましょう!!」

ジェノ
「クソッタレがぁ! それなら力ずくだぁ!!」


ふたりはかなりの高速機動でフィールドを縦横無尽に走り回る。
時には『電磁浮遊』で空中を飛び、互いの手足でひたすら格闘戦を繰り広げていた。
しかし、想像以上に頑丈なふたりだな…
人化したポケモンは、基本生身だから防御力は人間と変わらないはずなんだが…


二海
(アイツ等はまさか…人化した上で改造されてるのか!?)


思えば、最初の一撃で金属音がなっていた。
つまり、そういう事…アイツ等は、本当に改造された体なんだ。


ジェノ
「ブレイズ…! キーーーーック!!」

アクア
「がはぁ!?」


何とジェノは垂直に飛び上がって、結界の天井を蹴ってから反動を付けて『ブレイズキック』を放った。
ジェノの右足から炎が激しく噴射され、アクアは宙で腹に蹴りを貰い、地上に吹っ飛ぶ。
幸い某ヒーローの必殺技の様に爆発こそはしなかったが、アクアは効果抜群の技にかなりダメージを負った様だった。


ジェノ
「…アクア!」

アクア
「お、姉…様ぁぁぁ!!」


それでもアクアは起き上がる。
腹からはスパークが出ており、その身が機械だというのをまざまざと感じさせた。
何てこった…アイツは、いやあの姉妹は…既に人の身ですら無い。
私は気になって透視してみた感じ、かなりの部分が機械化されてるが解った。
だが妙だ…それでも女としての機能だけはギリギリ残してある。
ジェノの話だと世界征服の為に作り出された人類駆逐兵器だそうだが…
いくら人外のサイボーグといえど、あれ単体では高度な文明が発達した近代兵器の前にはさほど強力とも思えない。
人類を駆逐するなら、もっと簡単な兵器もあるのだから…
ましてや、ポケモンの力が介入する世界…何故ゲノセクトは産み出された?
考えれば考える程、疑問しかない。


ジェノ
「…そうだよな、俺たちはやっぱり解り合えない」

アクア
「違いますわお姉様! 解り合えるんです!!」
「私たちが人類を駆逐し! ゲノセクトだけの世界を造る!!」
「お姉様に内蔵された、コントロール機能があれば、全てのゲノセクトを支配下に置けるのですよ!?」

二海
「何……だと…!?」


長女であるジェノには、そんな機能があったのか!?
だが、それなら何で使わない? 無理矢理にでも従わせれば、アクアと戦う必要なんて無いはずなのに…


ジェノ
「そんな機能はとっくにぶっ壊した!」
「無理矢理支配下に置くのが、姉妹の姿か? そんな物はただの人形だ!!」


ジェノは吐き捨てる様にそう言った。
私は少し安心する…やはりジェノは妹を思っているのだと…
そして、怒りを表現する様に右拳を目の前で握り、ジェノはその後銃を構えてこう続ける。


ジェノ
「お前は、俺の妹なんだよ…! 大事な家族なんだ!!」

アクア
「そうですわ! だから殺し……」


ジェノは問答無用でアクアの頭を銃で撃ち抜く。
確実に脳を貫通したその弾丸は物質ではなく、何かの技の力の様だった。
アクアは最後まで笑いながら、後ろに倒れる。
ジェノの顔は苦虫を潰した様な表情だったが、結果はご覧の通りだ。
アクアは…死んだ。


ジェノ
「…脳まで改造されて、救うだなんてやっぱ無理だろ」

二海
「…それで諦めるのか?」

ジェノ
「諦めたくなんかないさ!! だけど、無理なんだ!! 俺たちは殺し合うしかない!!」
「こんな、こんな人を殺す為だけに改造された体で、どうやって姉妹を助けりゃ良いんだよ!?」


ジェノはマスクの下で泣いていた。
そしてそれは、後悔の証。
私はホッとしていた…ジェノは少なくとも、人間なのだと。
私はつかつかとアクアの死体に向かい、すぐに頭に手を当てる。
まずは確認だ…脳は貫通しているが、何が原因で狂わされた?
私は超能力をフルに使い、脳を操っている現況を探る。
ついでに出血も念力で止め、無理矢理にでも延命はさせる。
ああ、ちなみに死んだとか死体とか言ったが、スマンありゃ嘘だ。
実際にはコイツは『まだ』死んでない。
綺麗に脳を撃ち抜いてくれたお陰で傷は綺麗だから、穴を塞げば蘇生は出来る。
もっとも、後遺症は覚悟した方が良いだろうがな。


ジェノ
「おい、何してんだよ?」

二海
「黙ってろ、今からコイツを救う」


私はそう言って集中する。
人を殺す為に作られたとか、もう私は聞き飽きた。
ミュウツーは戦う為に産み出され、最強のポケモンとして遺伝子改造された。
その中でも私と三海は、殺戮用の使い捨て兵器として戦場に投入されたんだ。
つまり、私も人を殺す為だけに産み出された存在。
この12年、私は数えきれない程の人間を殺して来た。
自分の力では何も救う事は出来ないと、理解した。
だけど、アイツは教えてくれた…生きる事の意味と、救う為の覚悟を。
だから私は証明する! 人殺しにしか使えないと思っていたこの力で、今コイツを救ってみせると!!


二海
(あったぞ…奇跡だな、たまたま貫通した傷の中に電子チップがある)


どうやらマイクロチップを埋め込んでいた様で、今は綺麗に潰れている。
私はすぐにそれだけを取り除き、アクアの傷を私の細胞で塞ぐ。
銃で頭を撃たれれば人は死ぬ…と思われがちだが、実の所即死はしない事もある。
少なくともこうやってすぐに治療が出来れば、生存する確率はグッと上げられるのだ。


二海
「…とりあえず、退散するぞ?」

ジェノ
「お、おい…?」


私は結界を解き、すぐにテレポートする。
人の目が入らない場所を拠点に選び、後はアクアの回復を待つ。
とりあえず、今夜の仕事は終わりだ。



………………………



ジェノ
「…何だよ、そんな事出来んなら、最初に言えよ!」

二海
「原因も解らないし、身体組織も解らなかったんだから、仕方無いだろう?」
「お前らはお前らでいきなり殺し合うし、いきなり頭撃ち抜くし…」
「とりあえず勝手に諦めんな!! 覚悟を決めろと言ったろうが!?」
「まぁ、妹信じた結果がこれじゃ、救いが無いと思うのは仕方無いかもしれないがな…」


私はとりあえずみっちりと説教する事にした。
そしてアクアの身体構造と脳改造について私はしっかり学習しておく。
今後はもっとスマートにやるぞ!



………………………



ジェノ
「…とりあえず、お前が規格外なエスパーってのはよく解った」

二海
「全く…下手をしたら、最終兵器を発動要請する所だったぞ…」


私は説教を終えて頭を抱える。
アクアはとりあえずしばらく寝たままだ。
脳が回復するにはまだまだ時間がかかるだろう。
無理矢理私の細胞で骨と肉を修復しただけだからな。
脳細胞までは私の細胞で塞ぐわけにはいかなかった…何があるか解らんし。
こういう時、妹がいれば治療してもらえるんだが…


ジェノ
「最終兵器ねぇ…どんな殺戮兵器なのか」

二海
「言葉のあやだ…真に受けるなっ」


もっとも、要請したらすぐにでも駆け付けてくれるんだろうな…あの大バカな恩人は。
だが、要請はしないで済みそうだし、とりあえずは安心か。
アクアは改造されてるだけあって頑丈。
脳のダメージは気になるが、自然治癒も行われる。
人体の再生力ってのは、バカにならんからな…


ジェノ
「そうか…こんな救い方も、あるんだな」

二海
「だから、私がここにいる…既に乗った船だ、最後まで付き合ってやる」
「後、4人! 必ず全員救うぞ!?」

ジェノ
「ああ…! ブレイズ、電(いなずま)、フリーズ、そして…ノーマ!」
「残りの妹も、全員救ってやるぜ!!」


私たちは互いに握手を交わす。
そして、これからの作戦を練る事にした。
今後は様々な対策も考慮しないとな…


二海
(悪いな三海…まだ、しばらく帰れそうにない)


私は、三海の手紙に書かれていた言葉を思い出し、心の中でそう呟く。
テレパシーも届かない、遠い異国の地。
私は新たな目的を見出だし、家族の幸せを願った。
そして、私もいつかそうなりたい…三海の手紙を思い出したら、そんな気持ちになれる。
だが、その為には救わきゃならない命がある。
私は、ミュウツーとして…それを成し遂げる!!










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第6話 『ミュウツーの決意、ゲノセクトの想い』

第6章 『過去、そして未来』 完


To be continued…

Yuki ( 2019/05/11(土) 08:54 )