とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第6章 『過去、そして未来』
第2話
『ムウマ』…夜泣きポケモン。
いわゆるゴーストタイプだが、能力はそれ程パッともしない。
闇の石で進化は出来るが、現実のゲーム内では俺はあえてそうしなかった。
対戦とか、俺にはあまり興味はなく、ただ想いのままに好きなポケモンのLvを上げる。
俺は、それだけで楽しかったからだ…

そして、俺はいつの間にか身に付けていた超常能力に目覚める。
それこそが、姉から受け継いだ世界に唯一の力。
『夢見の雫』の力だった…

俺はその力を使い、並行世界で本物のムウマと出会った。
制限として自分の記憶を失い、体をポケモンとする事で存在を維持し、その世界でムウマと仲良くなった。
そのままポケモンとして俺は強くなり、大好きなムウマと一緒に世界を救う戦いを駆け抜ける…
やがて俺は世界を大災害から救い、ムウマと別れて現実の世界に戻った。
悲しかったが、それでも俺は満ち足りていた…
そして、また同じ体験をしたいと思った。
後は、皆が知っている結果が待っている。
そう…全ての並行世界を滅ぼす、悪夢の戦い。

アルセウスとの戦いに対し、俺は迷わずムウマを最初に呼び出した。
だけど、暴走したアルセウスは強かった。
俺のチート能力を持ってしても、やり直すのが限界。
その後、ピカチュウ、キュウコン、ゲッコウガと仲間を増やして挑んだが、それでも勝てない。
俺は、そのまま何も考えずにドレディアを呼び出し、更に数を増やした。
その結果、ムウマは…消えてしまった。

俺は何が何だか解らなかった。
当時小学生の俺の頭に、それは到底理解出来なかった。
ゲームで言うなら、大切に育てたセーブデータが、突然消えてしまった様な感覚。
そう、俺は所詮ゲームデータの様にしか考えてなかったんだ…
だけど、それは違った。
失った存在は、もう戻って来ない…
俺はその後セレビィと話し合い、その力の意味を知らされる。
セレビィの力で送れるのは、原則5人まで…それを超えれば、誰かが消えるのだ、と…

俺は、よりにもよって1番レベルが高く、1番好きなポケモンを最初に消してしまった。
悲しかった…例え同じポケモンを育てても、もうあのムウマの微笑みは見る事が出来ないと知った。
俺にとって、1番大切なムウマは、あの娘だけだったんだ…

更に何度も失敗する内、俺は遂に諦めた。
そして、もう誰も失わない様に、自分だけの世界を創る事にした。
その世界には、ピカチュウ、キュウコン、ゲッコウガ、ドレディアの4人だけを呼び寄せ、その4人だけを俺は保護する事にした。
もう、戦う必要は無い…ただ、夢の世界で幸せを享受しよう。
だけど、その世界も所詮逃げ道でしかなかった。
アルセウスの力は、いずれそれすらも崩してしまう。
それに気付いた時、俺はもう1度立ち上がった。

決して諦めてはいけない。
パルキアさんたちは、身を持って俺に教えてくれた。
逃げてるだけの幸せには、何の結果も伴わないという事に…
結局、俺は変わってなかった。
いつも、失ってから気付く。

セレビィ…いや、恵里香と再会して俺は再度立ち上がる。
もう2度と、あんな結果を出してはいけないと。
ムウマの悲しみは、無かった事にしてはいけない!
そして、それ以外のポケモンたちも、俺は絶対に救わなければいけないと!!



………………………




「だから俺は…お前たちを心から愛しているんだ」

守連
「…うん」
華澄
「…はい」
女胤
「はいっ」
愛呂恵
「………」こくり
三海
「…ン」

阿須那
「……ウチは、信じられへんかった」


阿須那は死んだ人間の様に力が無かった。
俺に牙を向けたのを余程悔やんでいるのだろう。
むしろ俺は驚いた…あの阿須那が、そこまで追い詰められるなんて…
恵里香が口を滑らせたとはいえ、阿須那にとっては夢の世界を知っていただけに、余計な疑惑を生んでしまったんだな…



「阿須那、俺の事は信じられなくても良い」
「だが、家族の事は信じてやってくれ…そして俺は、決して家族を蔑ろになんかしない」

阿須那
「ちゃうやろ、ウチが悪いんや…!」
「せめて、ウチを責めてくれたらええやん!?」
「何で…! 何で聖はそんなに優しいんや!?」


阿須那は泣いていた。
他の皆も、その姿に心を痛めている。
多分、皆も少なからず疑念は抱いていたはず。
今回は、たまたま阿須那が爆発してしまったんだろう。
俺は、改めなければならない。
そして、決別しなければならないのかもしれない。
もう、俺はあの悲劇を、忘れなければならないのかもしれないな…


女胤
「聖様、そのムウマの事は、まだ愛しているのですか?」


「…そうだな、俺は皆愛している」
「もちろん、ムウマの事も…」

守連
「そのムウマには、名前は付けてなかったの?」


「ああ、付けてない」
「そもそも、お前たちに付けたのも夢の世界で初めてだからな」
「だから、ムウマには何も名付けちゃいない」


しかも、夢の世界では俺の元の記憶が無かったしな。
たまたま名付けたとも言える。
まぁ、人間として住むならいるだろ…って程度の考えだったし。


華澄
「しかし、聖殿はその方を救おうとは思わなかったのですか?」


「…え?」

愛呂恵
「確かに…夢見の雫を持ってすれば、そのムウマさんを救う事は出来たのでは?」


言われてみれば、確かにそうだ。
俺の雫は、その気になれば簡単に奇跡を起こすチートアイテム。
確かに、ムウマを助ける事は…出来たのかもしれない。
ただ、当時の俺はそこまで雫が便利な物だとは思ってなかったはずだからな。
良いとこ、当時の俺はポケモンの世界に入り込めるアイテム…って程度にしか思ってなかったはず。
しかし、今改めて考えるなら、あるいは…か?



「だが、リスクは計り知れないな…」
「恐らく、歴史を改編するレベルの願いだ…雫の侵食が持つのかどうか」

女胤
「…確かに、それは問題ですね」
「願いの難易度が高ければ高い程、夢見の雫は暴走する可能性が高い…」

阿須那
「そうなったら、またあの悲劇が繰り返される…」


俺たちは言葉を失う。
知っているからだ、あの戦いを。
アルセウスさんの暴走…いや、俺の願いで暴走させれば、世界その物が危うい。
ムウマを救う…それはやはり難しい気がするな。


三海
「…そのムウマ、どうして消えたの?」

阿須那
「いや、話聞いとったやろ? 恵里香の世界送りで消えたんや」
「世界送りの許容量を超えたから、ムウマは消滅してもうた…」

三海
「…ン〜? でも、どこに?」


「…どこに?」

女胤
「…まさか」

愛呂恵
「…消えたのではなく、別の世界に移動した、と?」


突然、そんなバカな可能性が浮上した。
確かに、考えてもみればどこに消えた?
もしオーバーフローで消えたのだとしたら、その溢れたムウマはどこに行ったんだ?
皆の記憶から消えたのも謎が残る…
何故、存在その物が無かった事に?



「…恵里香、お前は知っているのか?」

恵里香
『…残念だけど、ボクには解らない』
『最果ての世界からは、あのムウマの存在は関知出来ない』
『それに、あのムウマが人化している保証も無いよ?』


俺はスマホを耳に当てて恵里香と話すが、そう返される。
確かに、あの時のムウマはポケモンのままの姿だった。
救うにしても、ムウマというポケモンはゴマンといる、か…


華澄
「…難しいですな、せめてどこに行ったかだけでも解れば」

女胤
「ただ我武者羅に追った所で、雫への負担も考えなければなりませんからね…」


夢見の雫は決して無限の力ではない。
使う以上、相応のリスクは帯びる。
あまりに不確定要素の多い、ムウマを救うという願いは、あまりにも漠然としすぎている…
更に言うなら、恵里香でも観測出来ないという事は、同一時間軸の世界にはいないという証明。
そうなってくると、リスクは更に増大する。
やはり、あのムウマを救うには、かなり危険な賭けになる可能性が高いのだ…


阿須那
「…聖は、やっぱり救いたいんか?」


「…そう、だな」
「救えるなら救う…それが俺の意志でもある」

守連
「うん…私も、同じ想いだよ」

華澄
「…拙者は聖殿に従います」

愛呂恵
「同意見です、聖様が望むのであれば、私は命を捨ててでも従います」

女胤
「…そうですね、聖様が望むのであれば私も全てを賭けましょう」

三海
「ワタシも…聖を助けたい」


皆、想いは概ね同じか。
だが、これはそんなに簡単じゃない。
下手をしたら、関係無い者も巻き込んでしまう。
俺には、その決断は出来ない…世界すら終わらせてしまう可能性に、身勝手な決断を下す事は…


阿須那
「そのムウマ、案外生きてるんちゃうか?」


「…え?」


唐突な阿須那の見解だった。
だが、その可能性は無きにしもあらずだ。
ムウマはあくまで、俺たちの前から消えただけ。
死んだ瞬間も見てはいないのだ。
つまり、観測は出来なくても、生きている可能性はある?



「そうか…それなら」

守連
「? どういう事?」

女胤
「…成る程、救うではなく、生存確認程度であれば、雫への負担は少なくて済む…と?」

阿須那
「あくまで予想や…漠然と救うのにリスクあるなら、そのリスクを減らす願いに変えりゃええ」
「もし生きてると仮説立てるなら、ウチ等はそれを確認するだけでもええんちゃうか?」


妥協案ではある。
だが、結果的にそれは足掛かりになる。
それで生存確認出来れば良し、出来ないなら、そこからは別の話だ。
俺は夢見の雫を取り出す…濁りは無い綺麗な透明だ。
あのムウマが生きているかどうかが解れば良い。
現実改変も歴史改変もしない。
あくまで確認するだけ…それならリスクは少ないはず。



「………」

守連
「…聖、さん?」


守連が心配そうに俺を見る。
俺は冷や汗を垂らしながら迷っていた。
確認ったって、どうやって?
そんな曖昧な願いを雫に託して大丈夫なのか?
もし、それが引き金になったら、取り返しが付かなくなる。
あくまでリスクが少ないかもしれない…という予想なのだ。
俺は、その決断が出来なかった…


華澄
「生存確認…それだけとはいえ、リスクは未知数ですな」

愛呂恵
「確かに、前例も無しに実践するのは危険が高いと思います」

三海
「ン〜…でも、どうするの?」


「…ならば、我が導こう」


俺たちは全員絶句する。
そして声の方向に注目し、固まってしまった。
そこにいたのは、俺たちがよく知っている全知全能の神様…



「アルセウス…さん!?」

アルセウス
「…久しいな、我が子らよ」

阿須那
「アルセウス!? な、何でアンタが…!?」

女胤
「いえ、それよりも導きとは!?」
「貴女は解るのですか? その、ムウマの行き先を…!?」


俺たちは全員が注目していた。
地上に足を着ける事無く、やや浮いている。
その姿はまさに神。
神々しさを全身から放ち、見る者全てを圧倒する輝き。
そんな中、アルセウスさんは静かに佇み、優しく言葉を放った。


アルセウス
「正確には、我が力を持ってしても特定は難しい」
「しかし、最果てのセレビィの力を借りれば可能ではある」


「恵里香の世界送り…!?」

アルセウス
「そうだ、その力と我の力が合わされば、そなたの願うムウマの元へ導けよう」
「しかし、その結果が必ずしもそなたに実を結ぶとは限らぬ」
「それでも、そなたは望むか?」


あのアルセウスさんが、俺に問いかけた。
いつも、俺らしくあれと言ったアルセウスさんが、俺にあえて問いかけたのだ。
つまり、それだけここから先の選択は重いのか…?
全知全能のアルセウスさんですら、見えない未来。
そして、俺の選択にそれが委ねられる…?

俺は震える。
確かにムウマの事は気になる。
だが、それを俺の遺志で身勝手に決定して良いのか?
アルセウスさんですら、その選択を勧めてはくれないのに…?


アルセウス
「決断出来ぬか…だが、それも人の子よ…」
「だが、すまぬ…我は少し、意地が悪かったかもしれぬな…」


「アルセウス…さん?」


アルセウスさんの顔は少し曇っていた。
まるで、叱られる前の子供の様に俯いているのだ。
だが、アルセウスさんはすぐに顔を上げ、俺たちにこう言ってくれた。


アルセウス
「聖…そなたは、そなたのやりたい様にするが良い」
「例え何があっても、我が守ってみせよう」
「だから、進め聖…迷うな」


俺は勇気を貰った。
アルセウスさんが守ってくれると言ってくれた。
なら、俺は迷う事は出来ない。
何がなんでも真実を知る。
力が沸き上がった…そして、もう迷いは無い。



「はい! 俺は行きます!! 真実を知る為に!!」

アルセウス
「うむ…ならば、夢見の雫に願うのだ」
「そなたが会いたいムウマの事を…」
「後は、我と恵里香の力でそこまで導こう…」


俺は言われて雫に願う。
会いたい…あのムウマに。
そして、知りたい…ムウマの真実を。
俺の雫は輝き、アルセウスさんは目を瞑って力を集中させる。
後は、恵里香の世界送りによって、俺は世界を超えた……



………………………




「止めろリィザ!? このままだと、お前の存在その物が…!!」


突然の声。
俺はどうやら、謎の世界に辿り着いたらしい…
その世界は黒に光が僅かに差す暗い世界。
一見暗闇に見える世界に、4人の誰かが浮遊していた。
まるで、最果ての世界だ…でも微妙に違う。
どこかで見た事のあるかの様な…?


阿須那
『な、何なんやここ?』

華澄
『どうやら、何かの世界に辿り着いた様ですが?』


俺の側には、阿須那、華澄…守連、女胤がいた。
愛呂恵さんと三海はいない…?
4人だけ…か?


女胤
『あれは…ディアルガ?』

守連
『パルキアさんみたいなのもいる…?』


そう、俺たちが見ているのは、ディアルガらしき女性とパルキアらしき男性。
皆、人みたいな姿で、いわゆるポケモン娘(男)みたいだった。
そして、その中で金髪の長髪を靡かせる、金の仮面を被った女性がいる。
手には大鎌が握られており、まるで死神を思わせる風貌。
その女性は必至に手を伸ばし、更に前方にいる誰かに声を放っていた。


金髪の女性
「リィザーーー!!」

パルキア
「よせレイソムリア!! それ以上はお前も巻き込まれるぞ!?」


パルキアらしき男性は野太い声でレイソムリアと呼んだ女性を制止する。
しかし、その女性は構わず宙を舞って誰かに近付く。
俺は、その先にいる女性の姿を見て目を見開いた。
その女性は、暗い紫のローブに身を包み、魔女の様な紫の帽子を被っている。
その姿は、俺の記憶を微かに刺激する風貌。
記憶には無いはずなのに、俺はその女性を別の誰かに写す…
そうだ、あの女性は…あの人こそが……!!



『ムウマ…!? あれが、あの…ムウマなのか!?』

アルセウス
『そうだ、あれこそが…そなたが消してしまったムウマの成長した姿』
『ここは、全く別の次元の異世界』
『そなたが消したムウマはここに辿り着き、人化した後にひとつの歴史を終わらせたのだ』


俺の隣にはアルセウスさん。
そして、今目の前にいる者こそが、俺たちが探していたムウマの成長した姿らしい…
しかし、歴史を終わらせた…とは?


リィザ
「…リアさん」

レイソムリア
「リィザ!! 何故だ!?」
「お前は、もう縛られる必要は無い!! その先にあるのは、本当の虚無だぞ!?」


レイソムリアさんは仮面の下で泣いていた。
その声はあまりにも悲壮で、ただリィザと呼ぶ女性を心配している様だった。
だが、リィザさんは首を横に振る。
そして、苦笑しながらも彼女はこう言った。


リィザ
「…違うんです」
「この先にあるのは、希望…99%の絶望の先にある1%の希望」
「だから、私は行きます…約束があるから」


約束、その言葉に俺は何故か胸を締め付けられた。
そして、思い出していた…俺のあの時の想いを。


リィザ
「私が好きだった人が、約束してくれたんです…」
「例え離ればなれになっても、心はひとつだと…」
「だから私は行きます…この先には永遠の苦痛が待っていたとしても…」
「創造神たる、アルセウスを倒した私は、この先に行く資格がある…」


『アルセウスを倒した!?』


俺はアルセウスさんを見る。
アルセウスさんは無表情にこう答える。


アルセウス
『あくまで、この世界における別個体のアルセウスだ』
『それは我とは違う神…あのムウマージは、そのアルセウスを倒したのだろう』


成る程、別のアルセウスか…だが、ムウマージだったんだな、あの女性は…
言われてみれば確かに魔女っぽいし、ムウマージって感じはする。
だけど、約束って…それは。



(所詮、子供心に約束した、テキトーな約束なのに…)


当然、そんな厨二病前回だったガキの戯言に意味があるわけ無い。
それなのに…あの人は、それを真面目に信じていたのか…?
リィザさんは、何の迷いも無い眼だった。
ただ、信じている…自分の選択が決して間違わないと。
それが、俺には痛いほど伝わっていた。
同時に確信する。
あれはやっぱりあの時のムウマなのだと。
彼女は俺と同じだ、信じた者をただ強く想う。
その先に何があろうと、決して後悔しない。
そして今この瞬間、彼女は自分の意志で己の運命を決定付けようとしていた。


ディアルガ
「…これも、リィザが選んだ道か」

パルキア
「だが、レイソムリアまで巻き込む事は無いはずだ!」
「レイソムリア! お前は残れ!! その先に行けば、全ての世界から忘れ去られるんだぞ!?」


ディアルガは達観した様子で意にも介さない。
対してパルキアは何とかレイソムリアさんを説得しようとしていた。
だが、彼女は何も言わずにただ光輝くゲートに向かって飛ぶ。
その入り口には、リィザさんがいる。
リィザさんは複雑な顔をしながらも、レイソムリアさんを見ていた。


レイソムリア
「…私は、お前を守る為に存在している」

リィザ
「はい…でも、これからは別の誰かを守る為に生きてください」
「私も、そうします…この先には、きっと数えられない程、混沌とした世界が広がっている」
「私は、その先にある世界で、困っている人を助けます…」
「あの人がそうした様に…私が愛したただひとりの、人間の男の子」
「その、子の名は……」


肝心のその言葉が聞こえる前に、俺たちの見ている情景は光に包まれた。
視界も音も奪われ…俺たちは気が付けば暗闇の世界に漂っていた…



………………………




「………」

恵里香
「久し振りだね…聖君」


俺は、本当に久し振りに恵里香の姿を見る。
だが、俺はそれを喜ぶ事無く、ただ泣いていた。
情けない声を出して、ただ子供の様に…
そんな俺に対して、守連、阿須那、華澄、女胤の4人は優しく抱き締めてくれる。
俺は涙が止まらない。
辛かった…我慢出来なかった!
あの娘は、あんなバカな子供との約束をただ守っていた!
何も考えずに、ただの戯言の約束に、世界すら超えてしまった。
俺には、そんな価値なんて無いのに!!


アルセウス
「…悔やむな聖よ」

恵里香
「そう、キミにはそんな姿は似合わない」

阿須那
「何言うてんねん!? 聖は、聖はこんなにも苦しんでるんやで!?」

華澄
「そうです! 聖殿は、これまでも十分涙を我慢してこられたのに!」


俺はその場で踞っていたが、その意味を知った。
そうか…そうなんだな。
俺は、責任を取らなきゃならない。
リィザ…あのムウマージが、望んだのは、こんな俺じゃないんだ。


守連
「…聖、さん?」

女胤
「…聖様、今は」


「いや、ここまでだ」
「俺はもう、弱くあってはならない…」
「強くなきゃならないんだ…あの娘は、馬鹿みたいな約束を信じて今も戦っている」
「俺のせいだ!! 全部、俺が弱かったからだ!!」
「クソッタレがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


俺の叫びは最果ての世界に響き渡る。
そして、悟った。
リィザさんは生きてる…どこかの世界で。
今も、俺との約束を信じて…!


恵里香
「…何なら、ボクの胸でもう1度泣くかい?」


「冗談はよせ…俺は、お前を救う事も諦めてないんだからな?」


俺の言葉に恵里香は表情を曇らせる。
解っている…そんな事は簡単に出来ない事も。
だが、諦めはしない…きっと何か方法はある。
俺は、そう信じているからな。


アルセウス
「…それで良い、そなたはそなたの信じる道を進め」
「さぁ、元の世界へ戻るのだ…我が道を示そう」

恵里香
「そして、ボクの世界送りで送るよ…名残惜しいけどね」


「…ああ、頼む」


アルセウスさんは光の道筋を造り、恵里香は力を使う。
俺たちはその力を受けて元の世界に帰る。
気が付けば、俺たちは家のリビングに再び立っていた。



………………………



愛呂恵
「!? 聖様、それに守連さんたちも…!」

三海
「うう…良かった、皆無事だった〜!!」


三海は俺の姿を見てすぐに抱き着いて来た。
どうやら、愛呂恵さんと三海は来れなかったらしく、ここで心配していた様だ。



「…ゴメン、心配させたな」

守連
「…ただいま」

阿須那
「………」

華澄
「…聖、殿」

女胤
「…あれが、真実ですか」
「ムウマ…いえ、ムウマージのリィザさんは、今もどこかの世界で…」


そう、それが真実。
彼女は、今も誰かを助ける為に戦っている。
俺も、負けてはいられない…戦わなきゃならない。
そして、俺はもうあの日を忘れる。
もう、あの日は無かった事になったんだ…
彼女は、どこかで生きている…
それが俺のせいだったとしても、彼女は何も俺を責めてはいなかった…
俺は、そんな彼女を尊敬する。
そして、俺は俺らしく誰かを救ってみせる。
それこそが、俺の新たな約束だ。










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第2話 『超越者』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/08(水) 14:46 )