とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第6章 『過去、そして未来』
第1話
香飛利
「♪〜♪〜〜♪」


「おっ、美味いな〜これ! いつの間に香飛利は料理覚えたんだ?」

櫻桃
「確かに、香飛利が料理したいって言ったからやらせてみたけど、意外に何とかなってるね…」


私は簡単な料理だけど、ポークステーキを焼いた。
味付けはよく解らないから、櫻桃さんに少し教わって練習。
火加減は大体何となくで解っていた。
あいえいち?とか言うのは難しかったけど、それも使い方を教わって何とか頑張れた。



「くそ、何だか悔しいな…俺も、もっと頑張らないと!」

櫻桃
「まぁ、頑張りな…料理は一朝一夕で出来るもんじゃないから」

香飛利
「もぐもぐ…うん、美味し〜♪」


私は自分で焼いた肉を食べて頬笑む。
やっぱり、平和な世界で食べるご飯が1番美味しい♪



………………………



唖々帝
「成る程、ここはそうするのか…」

借音
「はい、編み物の基本はそれで何とかなります」
「今の唖々帝さんのペースですと、寒くなる頃には丁度完成するかもしれませんね♪」


私は借音から編み物を教わっていた。
あれから平和な世界に戻り、私は別の戦いを始めてみたのだ。
それは、この編み物。
今はマフラーを教わりながら編んでいるが、これが中々難しい。
私の場合は外で働くのは適してないだけに、基本は城の仕事で生活しているが、やはり私は私で、他にも出来る事を見付けたかった。
戦う事しか出来ない私だが、これもまた戦いだ。
私はそれなりに楽しみながら、編み棒をヘタクソに動かして少しづつ編んでいく。
目標は、冬までに手袋と帽子もセットだからな…厳しい戦いだ。



………………………




「ふっ!」

愛呂恵
「…!」


バシバシバシッ!と打撃音が城の庭園で鳴り響く。
私は愛呂恵さんに手合わせをお願いし、訓練をしていた。
あれから私は確実に強くなったと思いますが、それでも愛呂恵さんは更に強い。
ましてや、愛呂恵さんはここから更にメガ進化可能と、更に切り札を持っている。
やはり、私とは根本的に強さのレベルが違うのですね。



「はいっ!」

愛呂恵
「………」


愛呂恵さんは表情ひとつ変えず(変わった所見た事無いですが)に私の手足を捌いていく。
私はどんどんスピードを上げているにも関わらず、愛呂恵さんは両手だけで捌くのだ。
私はやや変則的にリズムを変える。
そしてあえて愛呂恵さんの攻撃を誘い、カウンターを狙います!


愛呂恵
「…!」


「取った!?」


私は読み通り愛呂恵の右腕を取る。
私はすかさず間接技に移行し、愛呂恵さんの体を…



「!?」


捻る前に私の体は宙を舞った。
見ると、私の腕は愛呂恵さんの耳に捕まれ、体は足で蹴り上げられていたのだ。
あの一瞬で間接技を外されて、同時に浮かされるなんて…!


愛呂恵
「…動きはとても良くなりましたね」
「ですが、相手の特徴を理解した攻めは行うべきです」
「私の場合は、耳も手と同じ使い方が出来ますので、迂闊な組技は逆効果ですよ?」


愛呂恵さんにそう指摘される。
私は身を捻って綺麗に着地し、はぁ…と息を吐いた。
そして、手を合わせて愛呂恵さんに礼をする。



「…流石です愛呂恵さん」
「まだまだ、私は未熟ですね…」

愛呂恵
「そうでもありません」
「ポケモンには相性という物があります」
「私の場合は接近戦に特化していますし、瞳さんの場合は単に戦法における相性が悪いとも取れます」
「これで貴女の相手が遠距離特化の相手であれば、実力の差は埋められていたかもしれません」


成る程…確かに言う通りかもしれませんね。
接近戦においては、単純に手数が多いミミロップは無類の強さを誇る。
ましてや、鍛えに鍛えられた愛呂恵さん程のレベルであれば、それは並の格闘タイプが束になっても勝てる物では無いでしょうね…
逆に私は、動きに緩急をつけて戦う変則型のスタイル。
基本防御寄りのスタイルですし、相手の攻撃を捌いてこちらの攻撃を当てるスタイルですから、相性は確かにありますか。



「ありがとうございました愛呂恵さん」
「また、よろしくお願いします」

愛呂恵
「いえ、いつでもどうぞ」
「向上心があるのは良い事ですし、貴女にとっては大きな事でしょう」
「これまでの貴女は、少し内向的過ぎる部分がありましたから」


言われて私は思い出す。
確かに、私は基本的に前に出るのを嫌っている。
だから、いつも明海には負担をかけているんだけど。
それでも、今は少し進めたと思う。
進化した影響もあるかもしれないけど、これからは私も前に出よう。
その方が、きっと今より強くなれる気がするから…



………………………



喜久乃
「はぁ!!」

華澄
「2手遅いですぞ!?」


私は保護色状態で遠距離から電撃を放ち、奇襲をかけるが華澄さんには読まれていた。
どころか、既に足元から『影打ち』で体勢を崩され、目の前には『ハイドロポンプ』。
もちろん優しい華澄さんはわざと外してくれており、私はその場でグラつくだけで済んでいた。
ちなみに電撃は体勢を崩したせいであらぬ方向に飛んでしまっている。
ここは城の訓練場ですので、天井を焦がしただけですね…


華澄
「喜久乃殿、保護色で隠れるのは良いですが、この訓練場では臭いと音が丸解りです…」
「いくら視界を誤魔化してても、居場所は簡単に解るでござるよ?」

喜久乃
「そこまで瞬時に感じ取ってるんですね…」
「これでも気配は絶ってるはずなのに…」


私は、はぁ…と息を吐く。
やっぱり華澄さんは桁が違う。
改めて戦ってみると、そのレベルの高さが尋常じゃないのが解りますね。
あれから私も強くなってるのに、それでもこの差か…


華澄
「忍に重要なのは、判断力もそうですが、何よりも情報戦です」
「瞬時に適切な対応と判断が出来なければ、一人前とは言えませぬ」

喜久乃
「…それは解ってるんですけどね」
「まぁ、本当に忍になる気は無いですし、単にやるだけやってみたかっただけですよ」
「ありがとうございます華澄さん、良い経験になりました」


私はそう言って礼をする。
私が忍として戦うのはこれが最後です。
教えてもらった恩はありますが、あれはあくまで生きる為の知恵。
私は、どっちかというと平和主義者ですから、出来れば戦わずに生きたいのが本音です。


華澄
「そうでござるか…少し残念ですが、それも喜久乃殿が決める事」
「これから先、どんな混沌が聖殿を襲うか解りませぬし、いつでも戦える覚悟は持つべきですが…」


真面目だなぁ〜華澄さん。
私なんて巻き込まれたら、で十分なのに…
四六時中覚悟完了してたら、こっちの精神が持ちませんって…
改めて、華澄さんは特別製だと思う。
だけど、そんな華澄さんだから、聖さんは信頼してるんだろうな…
そこだけは、悔しい気がした…



………………………




「ずぇりゃあぁぁっ!!」

鐃背
「ほう中々!! じゃがまだまだよ!!」


正面からアタシたちは組み合うも、アタシの体は簡単に持ち上げられる。
以前に比べたら持った方だが、やっぱ鐃背さん強ぇ!!
アタシは嬉しさに笑みが漏れながらも、鐃背さんに投げ飛ばされて背中からマットに落ちた。
ここは、主にスポーツ用の訓練場で、基本的には運動用の部屋だ。
アタシは、挑戦の意味も込めて鐃背さんに相撲でアタックしたんだが、やはり相手が強すぎた!


鐃背
「ふむ、随分強くなったの? 前の混沌で相当揉まれた様じゃが、見違えたぞ!」


鐃背さんは嬉しそうに笑っていた。
アタシも思わず釣られて笑う。
そうだ、アタシの周りには強い人は一杯いる。
そして、戦うのが楽しい。
これからも、アタシは戦い続ける。
もちろん、仕事も、生活もだ…



「うっしゃあ! もう1本!!」

鐃背
「どんと来い! 何回でも相手してやるぞ♪」



………………………



少年
「なぁ、夏翔麗愛…背伸びてね?」

夏翔麗愛
「ふふん、成長期なのです! 私は伸び盛りなのですよ♪」


私は堂々と胸を張ってそう言う。
クラスメートからはやや怪訝な目で見られたが、そこまで不自然では無かった様ですね。



『…お願いだから、下手な事は言わないで』

夏翔麗愛
『棗お姉ちゃんは心配性なのです!』


私たちはテレパシーで会話する。
今は下校時刻で周りには小学生が跋扈している。
棗お姉ちゃんは、心配性だから会話に気を使っているのですね。


少年
「…まぁ良いや、そんじゃまたな!」

夏翔麗愛
「うむっ、宿題はしっかりやるのですよ!?」


「…貴女もねっ」


むぅ…棗お姉ちゃんは厳しいのです!
まぁ、混沌のせいで今日の宿題は完全に忘れていたのは事実ですが。
とはいえ、やっぱりこの世界の方が楽しい。
家では家族は一緒にいられるし、学校にはクラスメートたちがいる。
私は、こういった暖かい感情の色が大好きだ♪



………………………




「…さて」


俺は今日の宿題を片付け、背伸びをする。
長かった混沌も終わり、とりあえずもうすぐ夏休み。
今年は皆で旅行も行きたいし、色々考えないとなぁ…



「…ピーチの奴は、楽しくやってんのかな?」


フーパもいなくなり、もうピーチとは会う事も出来ない。
だけど、俺は大丈夫だと思う。
きっとピーチはピーチで、頑張っているはずだから…


守連
『聖さん、三海ちゃんと買い物行ってくるけど、何か必要な物ある?』


部屋の外から守連の声が聞こえる。
向こうも勉強は終わったみたいだな…
俺はとりあえず部屋の中からこう伝える。



「別に良いよ! それより気を付けてな!?」


俺が大きめの声で言うと、守連ののほほんとした返事が聞こえた。
改めて帰って来たのを実感するな…
さて、ふたりが買い物って事は、家には誰もいないのか。
確か愛呂恵さんも今日は城に行くって言ってたから、何か久し振りにひとりだな…



「…ふっ、落ち着け俺」
「こういう時ほど冷静になるんだ…俺がひとりの時に何も起きない事の方がおかしい!」
「どこだ…どこから来る!?」


俺は馬鹿馬鹿しいと思いつつもキョロキョロと周りを見回す。
当然の様に何も無いわけだが、それでも油断は出来ない。
俺はあえて窓を開け、外を見てみた。
この辺りは通行人も少ないが、フツーに人はいる。
とりあえず混沌の気配は無いし、今回は流石に…



「邪魔するぞ?」


「何かキター!! って、ディアルガ!?」


突然窓から入って来たのはあのディアルガだった。
かつて白那さんと激闘を繰り広げ、敗北して消えたあの…


大愛
「大愛と呼べ、折角貰った名だからな…」


「つーか玄関から来い! わざわざ偽装してんだから怪しい行動取るなよ!?」


俺は全力でツッコム。
何でこの人は窓からわざわざ入るのか…
面倒だから、とか言いそうだが社会に馴染む気なら直した方が良いぞ。


大愛
「どの道すぐに出る…それよりひとつ聞かせろ」


「あん? 何をだよ…?」

大愛
「これはどう使うのだ?」


そう言って大愛さんは何やらコードをポケットから出した。
ちなみに大愛さんは半袖短パンの夏服。
スタイル自体は白那さん並にスペックあるから圧巻だな。
しかし、何だこれ…って、HDMiケーブルじゃねぇか。



「何でこんなモンを?」

大愛
「テレビに接続するのにいるのだが、付けても何も反応せんのだ」


「方向は確認した?」

大愛
「ああ、何なら両側試した」


「電源は入れ直した?」

大愛
「うむ、それでも画面が暗いままだった」


ふむ、だとすると機器の相性問題だが…
そうなると俺には何とも言えないな…



「とりあえず、テレビと機器の型番とメーカー調べて、店の人に聞いた方が良いかな」

大愛
「…???」


うん、まぁそうだよね!
流石の大愛さんもポカンとしている。
こういうのって、基本的にはセットで付いてるのを使うのが定番なんだが、後から買い直すってなると不具合が出る事もあるからな。
しかも、種類が多すぎるしド素人にはまだまだ難しいわな。



「万丁君には聞かなかったの?」

大愛
「私は電話を持っていないからな」
「宙はバイトとやらで忙しいし…」


成る程、万丁君バイトして学校通ってるのか…本当に真面目なヤンキーだな。
しかし、それでわざわざ俺の所に来るなんて…
まぁ、大愛さんに他の人間の知り合いなんて少ないだろうし、仕方ないのかね…



「とりあえず、何の機器を使おうとしてるんだ?」

大愛
「…詳しくは知らないのだが、わいふぁい…? とか言うのを使うのにいるらしい」
「今まで使っていた物が壊れてしまって、新しいのを買っておいてくれと言われたのだが…」


それで買ったは良いが使えませんでした…と。
やれやれ、仕方ないな…わざわざ頼って貰ったのに、突き放すわけにもいかないか。
俺はスマホを取り出し、電話をかける。



「もしもし、大城戸さん?」

大城戸
『はい、どうかしましたか聖君?』


俺はとりあえず大城戸さんに連絡し、会社の専門家を呼んで貰う事にした。
大愛さんから住所を聞き出し、場所を伝えると大城戸さんはすぐに手配しましょう、と返事をしてくれる。
俺はそれを大愛さんに告げると、大愛さんは驚いた様に俺を見ていた。



「1時間程で来てくれるから、それまでには家に戻ってて」

大愛
「そ、そうか、すまないな…手間をかけさせた様で」
「いきなり邪魔して悪かった…すぐに出て行こう」


大愛さんがそう言うと、次の瞬間にはもう消えていた。
時間操作か…改めてスゴいよな、ディアルガの能力も。
でも、大愛さん本当にフツーになったんだな。
俺にはあの時のイメージがまだ残ってるだけに、未だに不安はあるってのに。



(に、してもだ…何か寂しそうな感じがしたな)


もっと言えば、思い詰めている様にも感じる。
まだ人間界に来て日も浅いし、苦労は多いんだろうが…
光里ちゃんとこは今の所問題無く過ごしてるみたいだし、とりあえず穹は大丈夫だろう。
赤城さんの所は逆に何で問題無いのか切実に問いたいが。



(考えてもみりゃ、まだ増える可能性はあるのか?)


そうなって来ると、今後の対策も考えなきゃならないな…
やれやれ…混沌もいつ来るか解らないし、問題は山積みだな。



………………………



華澄
「…聖殿の、1番好きなポケモンですか?」

阿須那
「せや、気にならへんか?」

女胤
「確かに、気にはなりますね…」
「聖様は、私たちを皆愛していると言ってはくれているものの、聖様自身はどんなポケモンが好きなのでしょうか?」


ウチ等は夜、夕飯後にテーブル囲んで話し合ってた。
守連と三海はゲームに夢中で話には加わってない。
そこへ、洗い物を終えた愛呂恵が話に加わる。
手にはトレーが乗っており、全員分の飲み物があった。


愛呂恵
「どうぞ皆様…」

阿須那
「おおきに♪ いつも気が利くなぁ〜」

女胤
「ありがとうございます、いただきますね」

華澄
「かたじけない、いただきます」

守連
「私も飲む〜♪」

三海
「ン〜ワタシも♪」


結局、皆でテーブルを囲む事になった。
何やかんやで仲ええよなウチ等は…
それでも皆飲み物の好みは違うんやから、ある意味貴重やな…


守連
「オレンジジュース美味し〜♪ この苦味と酸味が最高〜♪」

阿須那
「おっ、もしかして豆変えた? ええやん、このコーヒー味わい深いわ♪」

華澄
「やはり、緑茶が1番…これが落ち着きます」

女胤
「良い香りです…紅茶はこの温度がやはり1番良いですね」

三海
「ン…甘いの好き♪ イチゴセーキ〜♪」

愛呂恵
「喜んでいただけて何よりです。作り甲斐があります」


そう言って愛呂恵は野菜ジュースを飲む。
愛呂恵は自分で配分してるんよな…やっぱ愛呂恵のこういう所は素直に尊敬するわ。
基本全部手作りで、同時に出すんやからな…
皆こんだけ好みバラバラやのに、愛呂恵は見事に答えよる。
ウチもまだまだやな…きっと風路はんもこれ位やるやろし。


女胤
「それより、愛呂恵さんはどう思いますか? 聖様の好きなポケモンの事」

愛呂恵
「そうですね…強いて言うのであれば、可愛い系、美しい系、たくましい系、格好良い系と…その辺りの特化系が好みの様には感じます」

阿須那
「って、そんなんほとんどのジャンルやんか!」
「まぁ、確かに聖は選り好みしてないイメージやけど…」

華澄
「強いて言うのでしたら、胸の大きい女性が好きな傾向ですからね…」


そういう意味では守連以外は全員ヒットやからな。
最も、守連は可愛い系の特化でもあるし、そこはバッチリ聖にもヒットしとる言う事か…


守連
「きっと、聖さんはポケモンは皆好きなんだと思う」
「ひょっとしたら、特別好きなポケモンもいるのかもしれないけど、でも聖さんはきっと皆好きだって言うと思う」


守連は笑顔やった。
その顔には全く不安も迷いも無い。
せやけど、そんなんはウチでも解るわ…
ウチが気になるのは、その上で何のポケモンが好きなんか、や。


阿須那
「試してみるか…なぁ、聞こえる恵里香?」


ウチは聖みたくスマホを耳に当てて恵里香を呼ぶ。
すると、案外容易く答えは返って来た。


恵里香
『聖君の好みねぇ…そんなに知りたい?』

阿須那
「って、知ってるんか!?」


あまりにも意外な反応。
恵里香は聖の好みを知ってるんか?
せやけど、恵里香の声はどことなく暗かった。
ウチは少し真面目になる。
恵里香は…何を知っとるんや?


恵里香
『…ひとつだけ言っておくよ、知ったら終わるかもしれないよ?』

阿須那
「!? 何やそれ…脅しか?」


違うのは雰囲気で解る。
恵里香は確実に知ってる…せやけど、それを知る事で何かが終わるかもと言うた。
それは、恐らく今の家族の均衡。
さしづめ、ウチ等の関係が崩れるとでも…?


恵里香
『口止めはされてないから、知りたいなら話してあげるけど』
『お勧めはしない…ボクの様に、知っていても聖君を愛してあげられる娘じゃなきゃ、とてもね…』


それは、ある意味挑戦やった。
恵里香は良くて、ウチ等はアカンっちゅうんか?
それはつまり…最悪の答えを予想させる。


阿須那
「…聖の裏切りとでも言うんか?」


全員の空気が一気に切り替わる。
恵里香は無言やったが、肯定してる様にも感じた。
ウチは唇を噛み締める。
信じとうはない…あの聖が、裏切りなんて。
聖はウチ等に嘘なんて吐かへん…ましてや、裏切り?


恵里香
『正確には、裏切りとは違う』
『だけど、あれは…聖君にとってはただの事件だった』
『そしてその結果があったからこそ、今の世界もあるんだよ…』


ウチは言葉が浮かばんかった。
解らへん…恵里香の言葉の意味が。
事件って何や? いつの話や?
そんなん、ウチ等は知らへん…せやけど、恵里香は知ってる。
そして、それを知れば…全てが終わる?
ウチは途端に寒気がした。
世界が終わる…何も残らん…今、こうやって幸せを感じる世界すら…まさか。


阿須那
「夢…なんか?」


夢…そう、これは聖が望んだ夢。
聖に都合の良い様に設定された、ただの夢。
ウチ等のこの想いすら、聖に設定された、ただの理なんか?


恵里香
『それでも知りたいかい? 知れば、戻れなくなる』
『ここから先の話は、真に聖君を愛せる者のみが聞く事の出来る領分だよ?』
『少なくとも、今のキミにその資格があるとは、ボクには思えないけどね…』


ウチは疑問に思ってしもうた…
信頼を出来なくなってしもうた…?
聖の事は愛してるのに、それは…偽り?
ウチはガタガタ震える。
こんなに怖い事は無い。
全部、夢で幻とか、そんなの冗談やろ?


恵里香
『もう1度聞くよ? そ・れ・で・も…知りたいのかい?』

阿須那
「………」


ウチはすぐには答えられんかった。
この時点で、ウチは何かを失った気がする。
そして、ウチは無感情にこう答えた。


阿須那
「聞かせぇや…」

恵里香
『良いんだね? 全てを終わらせる可能性があるんだよ?』

阿須那
「構へんわ、そんなんハッタリや!!」
「ウチ等は、聖を愛してる!! その想いが創られた物なわけあらへんやろ!?」


ウチは勇気を振り絞ってそう叫んだ。
下手したら聖に聞こえとるな…せやけど、ウチは引かん!
聖を愛する資格、そんなんぶら下げられて、大人しく引けるかっ!!


恵里香
『…解ったよ、じゃあ話そう』
『ただし、これはあくまで事件だ』
『聖君が、ただひとり愛したポケモンを、失っただけの事故…』


ウチは絶句した。
聖が、ただひとり愛した?
それだけでも相当やのに、失った…?


恵里香
『事の発端は、聖君の少年時代に遡る』
『聖君の度重なる夢見の雫の使用により、アルセウスは暴走』
『聖君はアルセウスを妥当する為に、まずひとりのポケモンをパートナーに選んだ』
『それが、聖君の最愛のポケモンだよ…』

阿須那
「…そのポケモンは誰なんや?」

恵里香
『…ムウマさ、夜泣きポケモンのムウマ』
『だけど、その娘ひとりではアルセウスにはとても勝てなかった』
『聖君は雫の力でもう1度やり直し、ひとりでダメならふたりと守連ちゃんを…』
『ふたりでダメなら3人と阿須那ちゃんを…そして4人と華澄ちゃんを』
『それでも勝てなかった聖君は、遂に5人目…女胤ちゃんを呼び寄せた』

阿須那
「!? 女胤が、5番目?」


つまり、ウチ等4人は…その5人の内のひとり?
せやけどそれはおかしい。
それなら何でウチ等の記憶に無いんや?
女胤が知らんわけ無いやろ?
5人って…


恵里香
『…この時、初めてボクの力に限界がある事に気付いたんだ』

阿須那
「…限界?」

恵里香
『ボクの世界送り(ワールドメール)は、5人までしか同一世界線には送れない事が判明した』
『そして、それを知らずにボクは6人をアルセウスの元に送ったんだ…』
『でも、考えたらおかしいと思わなかったかい?』
『強大なボスを倒すなら、10人でも100人でも同時に送り込めば良い』
『何故、5人までなのか?と…』


確かに、疑問っちゃあ疑問やった。
せやけど、それが恵里香の限界…?
あくまで、同一世界線には5人までの制限ルール。


恵里香
『話を戻そう…無理矢理6人送った結果、ムウマは消滅したよ』
『存在その物を全て無かった事にされ、夢見の雫の継承者である聖君と、あらゆる世界の制約を受けない、最果てのボクだけがそれを覚えている』


ウチはまたしても絶句した。
存在その物が無かった事に?
せやから、ウチ等は覚えてすらおらんのか?
そして、聖は…それに絶望して、あの夢の世界を?


恵里香
『聖君は絶望した…全て自分のせいだと言って』
『それでも、聖君は諦めなかった…何度でも君たち4人とアルセウスに挑んだ』
『でも、その全てで敗北…何度と無く繰り返した後、遂に聖君は初めて折れてしまった』
『幼い心をズタボロに引き裂かれ、絶望して逃げた』
『ボクとの約束すら反故にし、ムウマへの想いを無理矢理忘れてまで、あの夢の世界を造った』
『…後は、君たちも知る結果だけどね』


ウチは、頭の中がグチャグチャになっていた。
つまり、聖には初めからそのムウマが心にあるという事。
今の聖は全てを取り戻している…つまり、それはムウマへの想いも…?
ウチ等は、まさかそのオマケなんか?
聖にとってはそのムウマがあくまで1番で、それがいなくなったからウチ等で妥協してるんか?
解らへん…わからへん…ワカラヘン……



「おい、阿須那…少しやかましいぞ? 時間が時間だからちょっと…」


ドォォォォン!!と爆音。
ウチは有無を言わさずに『火の粉』を聖に向けていた。
辛うじて当たりはしなかったものの、家の壁は炎上。
すぐに華澄が水を放ち火を消す。
そして女胤が聖の側に立ち、守る様にウチの前に立った。
ウチはスマホをテーブルに置き、女胤を睨み付ける。


阿須那
「どきぃや女胤…? 殺されたいんか?」

女胤
「一体、恵里香さんから何を聞いたんですか!?」
「阿須那さん、貴女は今、普通ではありませんよ!?」


「恵里香から…? どういう事だ!?」

阿須那
「なぁ…聖、ウチ等はオマケなんか?」


ウチは体温の影響で涙さえ蒸発していた。
せやけど、ウチは泣いてる。
信じたい…せやけど、何なん!?
こんな、こんなに辛いなんて…愛してる聖に牙剥けるなんて…!!
こんなん! こんなんイヤやぁ!!


阿須那
「ムウマって誰なん!? ウチ等はソイツがおらん代わりのついでかぁ!?」


「!? お前、聞いたのか!?」

阿須那
「質問に答えぇや!?」


ウチは室内や言うのに日照りを発動させ、『オーバーヒート』を使う。
すると、横から華澄が突っ込み、邪魔をしに来た。
ウチはそれを華澄に向けて全力で放つ。
せやけど、瞬時に愛呂恵と三海がウチの炎と動きを止めた。
クソッタレが!! 皆、何も知らんから…!!


守連
「どうして…? どうして阿須那ちゃんがそんなにも怒ってるの!?」
「ムウマって誰!? それが一体何なの!?」


「…もう良い守連、これは俺の失態だ」


聖は静かに守連を制し、ウチの前に歩み寄って来る。
ウチは涙を蒸発させながら愛呂恵たちに捕まれ、動きを制限されていた。
やがて、聖は悲しそうな目で俯き、ウチの頬に手を当てる。
ウチの体温は今100℃以上や、聖の手は明らかに火傷した。
ウチは首を必死に振り回し、聖からの接触を拒否する。
それでも、聖は構わずウチに触れて来た…



「すまなかったな…秘密にしてて」

阿須那
「さ、としぃ…!」

ウチは体温が下がり、涙が蒸発せずに零れ落ちる。
聖はそんなウチの涙を指で拭った。
聖の手には火傷の跡が残っており、あまりに痛々しかった。



「…いつかは、話さなきゃならないんだと思ってた」
「それが、まさかここまでお前を追い詰めてしまってたなんて…」

阿須那
「うぅ…!! うぅぅっ!!」


ウチは自分を恥じた。
やっぱり聖はウチ等が愛している聖や。
恵里香の言っていた意味が解った…ウチには、資格が無かったんや。
信じられへんかった…聖の事を疑ってしもうた!!
ウチは、拘束を解かれ、その場に膝から沈む。
聖はそんなウチの事を咎める事無く、優しく背中を擦ってくれた。



「…話すよ、全部」
「ここにいる6人には、全部話す」
「だけど、それはここにいる者だけの胸に留めてほしい…」
「他の皆には、いつか俺が自分で必ず話すから…」


ウチ等は、改めて聖を加えてからテーブルを囲んだ。
そして、遂にウチ等は知る事になる。
聖の愛したポケモンの事を…そして、この先に待つ、真実を……










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第6章 『過去、そして未来』

第1話 『耐久ガン振り輝石ムウマで黒眼滅び戦術をやっていたのは俺だけではないはず』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/08(水) 09:52 )