とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第5章 『POKE MOA EVIL』
最終編 第7話

「…ふむ、妙じゃの? 何故あの森で行方不明になってしまったのか…」


俺たちは、遠回りながらも再び鯉の魔物に頼み込む事になった。
だが、今回の事態は鯉にとっても不思議な様で、何とも言えない雰囲気が漂っている。
やはり、今回の現象は魔物にとってもイレギュラーなのか?
それとも、魔王は独自のシナリオで俺たちを陥れている…?
いや、そもそもこの鯉はかなり立ち位置が違うみたいだから、今の魔王とは関わりが無いんだろうが。



「…3人がどこにいるか、見えるか?」


「まぁの、じゃが少々面倒な所に転移したの…」
「とはいえ、どうせ行くのじゃろう? お主らは…」


俺は笑う、そりゃそうだ。
家族全員で魔王と戦う…俺はそのつもりだからな。
そしてそれを曲げる気は毛頭無い。
俺はやると言ったらやり遂げる!
俺は軽く笑い、すぐに真剣な表情で鯉を見る。
すると鯉はやや呆れた声でこう言った。



「…やれやれ、本当におかしな人間じゃなお主は」
「まぁ良い! この際、儂も最後まで付き合ってやる!」
「さぁ、早速送るぞ!? 良いか、この先で必要な物は単純な力!!」
「力の無い物は先に進む事は出来ん、それを肝に命じておけ!!」


鯉はそう言って眼を光らせる。
俺たちは鯉の能力によって転移し、夏翔麗愛ちゃんたちがいるであろう謎の場所に送られた。



………………………




「!? こ、ここが…っ?」

ピーチ
「…な、何ですかこれ!? 重力指数、2倍!?」


俺はまずいきなり膝を着く。
体が異様に重い! 重力2倍だと…? つまり、体重76kgの俺は152sって事かよ!?



「くっ…! 聖様、すぐに外へ!! ここは私たちだけで何とかします!!」


瞳さんは俺を掴み、外に投げ飛ばす。
どうやらここは洞窟の入り口付近だった様で、俺は洞窟の外に出されて重力2倍から解放された。
くっそ! まさか、転移していきなりこんな仕打ちを受けるなんてな!
とはいえ、こっから俺ひとりで外の敵を何とかするのか〜?


喜久乃
「私が聖さんを守ります! 皆は、夏翔麗愛たちを!!」

ピーチ
「喜久乃さん!?」

唖々帝
「ちっ! 任せたぞ喜久乃!!」



俺の側には喜久乃が残る。
喜久乃みたいなタイプのポケモン娘だと、この重力は辛いのかもしれない。
なお、ポケモン的には重力状態なら回避が下がるだけので、低命中技でも当てれる様になるだけなのだが。
…まぁ、一応飛行が地に落ちる様にもなるな。
どっちにしてもレアな状況だ…大丈夫なのか?



「聖様、3人は私たちが必ず救います! どうか、そこで吉報を!!」


瞳さんはそう言って奥に駆け込んで行く。
それを追って唖々帝さんとピーチが追う。
後は…任せるしかないか!


喜久乃
「ちっ、早速敵が湧いて来ましたね…覚悟しなさい!」
「私がいる限り、聖さんには絶対傷付けさせません!!」


外では影モンスターが湧いて来ていた。
だが、俺はここで不思議に思う。
敵の編成が、何故か弱い?
今ではあまり見なくなった小型の獣系が複数編成されてるのだ。
喜久乃はそれを軽く苦無で薙ぎ払い、俺に敵を近付けさせなかった。
まさか、敵はこっちの戦力に合わせて編成を変えているのか?



………………………




「…成る程、この洞窟は先に進めば進む程、重力が増していく」

ピーチ
「現在の重力は通常の2.5倍です、このペースですとどこまで上がるのか…!」

唖々帝
「…っ! くそ…これ以上は無理か」


唖々帝さんは苦い顔をし、歩みを止めた。
唖々帝さんは体が大きい方ですし、元々浮遊して移動するのが本業のクワガノン。
こうやって地に押し付けられては、移動もままなりませんか…



「…ピーチさんは大丈夫なのですか?」

ピーチ
「私はもう少しなら何とか…これでもパワーコントロールは出来ますので」


とりあえず、唖々帝さんは早々に撤退してもらう。
ここからは、ふたりで行かなければ…



………………………



ピーチ
「あそこを見てください!! 香飛利さんが地面に!?」


「香飛利さん!!」


私は神速で一気に近付く、重力がかなり上がるものの、私は歯を食い縛って耐えた。
そして、同時に香飛利さんの容態も理解する。
マズイ…圧力で窒息しかけてる!?
私はすぐにその場で自分の両脇腹に親指を突き刺す。
かなりの痛みを伴い出血が出ますが、この『腹太鼓』で私のパワーは最大状態となる。
スタミナは一気に失いますが、今は四の五の言ってられません!!
私は香飛利さんの体を抱え、その背中に手を置いて一気に押す。
思いっきり踏み込んだ私の震脚で地面の岩は割れ、香飛利さんはピーチさんのいる方向に思いっきり吹っ飛んで行った。
同時に香飛利さんはかはっ!と息を吐き出し、ピーチさんは香飛利さんを受け止める。
衝撃でピーチさんごと吹っ飛ぶも、香飛利さんは何とか呼吸を正常に戻した様です。


ピーチ
「瞳さん!」


「貴女は香飛利さんとすぐに外へ!! 恐らく、夏翔麗愛様たちは更に奥でしょう…」


私はピーチさんに香飛利さんを託し、更に前を見る。
腹太鼓の反動で一瞬気が遠くなりますが、私はそのまま真っ直ぐに走る。
時間はあまりかけられない、すぐに助けに行かないと!!



………………………




「いた!? 夏翔麗愛様!!」

夏翔麗愛
「!? 瞳お姉ちゃん…よくここまで来れたのですね?」


夏翔麗愛様はことのほか余裕そうだった。
既に最大パワー状態の私でも辛くなり始めているのに、夏翔麗愛様はやや苦い顔で私を一瞥し、そして更に奥を見る。
その先は行き止まりであり、最奥…
そこには巨大な赤き竜に乗った悪魔の様な男が、ひとりの女性と対峙している。
その女性は不適にこの状況を笑い、指をボキボキ鳴らして相手を見ていた。


悪魔
「ここまで辿り着いた奴は3人か…だがマトモに動けるのか?」


「ああ、ハンデみたいなもんだろ? お前だって同条件だ」


そう、その女性は紛れも無く李さん。
李さんはズシリと重い踏み込みで前に足を出す。
地面の床はそれだけでひび割れ、李さんにかかっている重力の高さを物語っていた。
相手はそれを見て竜を動かす。
竜もまた、かなり重い足取りで前に踏み込み、地面を割る。
すると竜の背中に乗っている悪魔は長い槍を取り出し、それを李さんに向けて斜め上から振り下ろした。
李さんはかわす事など出来るはずもなく、その槍を正面から受ける。
急所は僅かに外し、槍は首の横を掠めていった。
李さんは痛みを意に介する事無く、全力で前に出る。
槍が戻るよりも速く踏み込み、目の前には竜の頭。
そこに向かって李さんは拳を強く握り、冷気を用いて竜の脳天に拳を振り下ろした。
ベキャァァァァッ!!と何かが砕ける様な音と共に、竜の頭はグチャリ!と潰れる。
乗っていた悪魔はバランス崩して地面に落ちるも、すぐに体勢を整えて槍をしっかり両手で構えた。
李さんはなおも不適に笑い、竜の返り血を全身に浴びながら今度は悪魔を見る。


悪魔
「キ、キサマ…!? 一撃でコイツの頭を砕くとは!!」


「ウォーミングアップは終わりか? なら、そろそろ本気でやろうぜ?」


李さんは余裕で挑発する。
本当に、あの重力下で平気なのですか?
相手も同条件とはいえ、こうまでパワー差を見せるなんて…


夏翔麗愛
「ものの数では無かったですね…単純な力比べで李お姉ちゃんとやり合うのは愚の骨頂なのです!」


夏翔麗愛様が言う以上、そういう事なのでしょう。
つまり、力が全てのこの洞窟では、まさに李さんの独壇場。
いくら強い武器を持っていても、ここでは重りにしかならない…


悪魔
「ちぃ…舐めるなよ!?」


悪魔はそれでも長い槍を高速で振り回す。
そのパワーは流石と言えますが、李さんは踏み込んで距離を潰し、槍を軽く左腕で横からガードする。
腕から血が飛び散るものの、李さんは怯み事無く更に前へと踏み込んだ。
そして、右拳を握る音がここまで聞こえる程の強さで握り込み、李さんは思いっきり振りかぶってその拳を相手の顔面に向ける。
相手は咄嗟に槍を手から離し、両腕でガードするも、李さんの拳はそのガードごと突き破り、悪魔の顔面を打ち抜いて洞窟の奥の壁まで吹っ飛ばした。
凄まじいパワーに悪魔は血を吐き、ヨロヨロとその場で崩れ落ちる。
李さんはそんな悪魔を見下ろし、微笑した。


悪魔
「バ、バカな…これ程のパワーが出せるとは!?」


「へっ、こんなもんか…大した事は無かったな」


悪魔はそのまま意識を失い、やがて黒い霧となって霧散する。
李さんはやや退屈そうにため息を吐くも、すぐに背を向けて私たちの方に歩いて来た。
…って言うか、これもしかして助ける必要無かったのでしょうか?
結局、李さんがひとりで何とかしてしまいましたし、夏翔麗愛様もやれやれ…と言った顔でため息を吐いていました。



「何だよ、瞳も来てたのか?」

夏翔麗愛
「とりあえず、すぐに出るのですよ! 結局香飛利お姉ちゃんが見付かってませんし!」


…どうやら来た意味はあったらしい。
ふたりは完全に香飛利さんそっちのけで、あの対決に集中してたみたいですし、私たちが駆けつけてなかったら香飛利さんは今頃死んでいましたね…(-_-;)



「…とりあえず、香飛利さんは既に救出してます」
「外では聖様たちが待っていますので、早く戻りましょう!」


私たちはとりあえず、すぐにその場から離れる。
その後、私は無理が祟り、出血多量で倒れる羽目になりました…



………………………




「やれやれ…まぁ、無駄足じゃなくて良かったな」


俺たちはその日の夜、比較的安全なジャングルに移動していた。
そこで焚き火を焚き、俺たちはテキトーに肉でも焼いて食って休んでいたのだ。


喜久乃
「っていうか、危なかったですよね!? 香飛利さん、死にかけてましたよ!?」


喜久乃が全力でツッコム。
当の香飛利は瞳さんと一緒に今は眠っている。
洞窟から出て来たは良いが、香飛利は呼吸困難で酸欠、瞳さんは出血多量で貧血、李さんは左腕を骨折と中々の被害じゃないか…
無事に合流出来たものの、こりゃ確かに危なかったと言えるな。


夏翔麗愛
「…これもシナリオだと思うですか?」


「…だろうな、っていうか全部だろ多分」


恐らく、ここまでの全てはシナリオ通り…と思う。
正直、イレギュラーがあるのかすら俺たちには解らない。
前に魔王と出会った時、確実に俺を狙っていたのは明白だ。
だが、俺は雫を行使してでもその場から逃げた。
果たして、ここがイレギュラーになっているのかが俺には予想出来ない。
個人的には、夢見の雫の使用はそれ自体がイレギュラーだと思ってはいる。
もし、それすらも予測範囲だとしたら、俺は果たして勝てるのか?
全てコントロールされてしまっているなら、最終的に俺たちはどうなる?



(フーパは、クリア出来ないゲームは制作者として失敗作だと言ってたが…)


ここまでの全てを統括すると、恐らく制作者は魔王。
フーパの相方であり、共にこの世界を訪れた来訪者。
しかし、フーパの死によって魔王となり、俺たちをこの混沌に巻き込んだ。



(やはり、シナリオなのか…?)


どう考えても、俺以外の家族を巻き込む理由が解らない。
夢見の雫が目的なら、何故家族を巻き込む?
それとも、巻き込まなければならない理由があるのか?


ピーチ
「…それは、私と聖が出会う事もシナリオなのでしょうか?」
「作られたシナリオの中で、あえて私と聖は引き合い、マスターを救う事が出来たのでしょうか?」


俺は何も答えられなかった。
本当なら、主人公らしくここは『そんな事無い』って、言ってやりたい所だが…
残念ながら可能性が高過ぎる…魔王にとっては、俺とピーチの出会いも恐らくシナリオ。
魔王は…夢見の雫以外に見ている物があるのか?


唖々帝
「…ここまでの経緯を聞いた時点では、まるで私たちが試されている様だな」

喜久乃
「確かに…どうして私たちだったんでしょうね?」
「普通…言っちゃアレですけど、私がいた世界は、私じゃなくて華澄さんが普通いそうな世界でしたけど」

夏翔麗愛
「…ボスにとって、1番身近な家族がひとりもいない」
「もしかして、それ自体が魔王にとって意味のあるシナリオなのかも」


「ゲームバランス…って言えば、確かかもな」
「今までの世界で、守連たちが来ててみろ…ゲーム的に考えたらどうなってると思う?」


夏翔麗愛ちゃんと喜久乃は素直に想像して苦い顔をした。
まぁ、当たり前だわな…


喜久乃
「ヌル過ぎてクソゲーですね…! もしあの幕末に華澄さんがいたら、開始数分でエンドロールですよ!」

夏翔麗愛
「確かに…全ての世界で、ただのチート級レベル主人公が蹂躙するだけのクソゲーですね!」
「個人的にはクソゲーハンターなので、それはそれでどんなクソさになるかは逆に興味ありますが!」


うーん…まぁ、華澄さんはともかく、女胤や三海辺りだとバカゲーにはなるかもな。
その場合、俺の胃が持たなさそうだが…



「つーか、女胤とか呼ばれてたら今頃何人子供出来てるか解らんわ!!」


思わず叫んでしまった。
とはいえ、ワンクリックでエロシーンはある意味需要はあるのか…
シナリオが壊滅的でも、ヌケるならエロゲーはクソゲーになり難いからな。
アレでも女胤は可愛くてエロいし、おバカなヌキゲーには適正なのかもしれん…
その場合の竿役が俺なのが大問題なだけでなっ…!!
あ、いや…もちろん他の竿役に女胤をヤらせるのはもっと論外なのだが。


喜久乃
「…想像して頭痛くなりましたよ、間違いなく女胤さんはアウトです!!」

夏翔麗愛
「実力行使に出られたら流石のボスでも逃げられないですからね…」
「お母さんもそれ位の気概で押し倒してほしいのですが…」


そういえば、白那さんってああ見えて、自分からはとてもエッチなんて出来ない純情派なんだよな…俺的にはドストライクなんだが。
守連に至っては、小動物貫き通してるからな…あそこまで退いた位置に行かなくてもとは思うが。



「とりあえず、これから魔王の所に行くんだよな?」

唖々帝
「ああ、そこで元凶を叩く…! それで終わりだ」


「…だけど、俺は約束を守る」

夏翔麗愛
「…フーパの為に、ですか?」


俺は頷かない…確かにフーパの為でもあるが。
この場合、俺は皆との約束も指している。
夜のジャングルで焚き火を囲み、俺は皆にこう話す。



「…皆、生きて帰るぞ? 全部救って、そして家に帰る」
「魔王は元凶だが、俺には約束がある…」

喜久乃
「良いですよ、聖さんが決めた事なら私は反論しません」

唖々帝
「同感だ…聖の為に私は戦うだけだからな」


「難しい事は解んねー…でも戦う事ならいくらでも出来るさ♪」

夏翔麗愛
「愚問ですね、香飛利お姉ちゃんも瞳お姉ちゃんも、きっと同じ事言うのです♪」

ピーチ
「…皆さん、本当に聖が好きなんですね」


家族は皆一致団結してる。
でもピーチだけは複雑な表情で、俯いていた。
ピーチは俺に尽くす必要や義務は無い。
あくまで利害の一致で協力してるに過ぎないからな。
俺にとっては、ピーチは守らなければならない存在だが。


夏翔麗愛
「当然なのです、ボスがいるから私たちは今を生きています」
「ボスがいなかったら、ここにいる皆は誰ひとり生きていなかったかもしれないもの…」

喜久乃
「…そうですね、皆聖さんには感謝しか出来ない」

唖々帝
「ああ…聖は私たちの太陽だ」


「細かい理由はいらない…アタシは聖が好きだから一緒にいる」
「聖は、そんなアタシたちを受け入れてくれたんだ…」


香飛利と瞳さんもそうだろう。
皆、俺の為なら粉骨砕身、迷わずに協力してくれる。
だからこそ、俺も皆を信じて突き進める。
この信頼無くして、俺たちの絆は生まれないんだ…


ピーチ
「………」


「ピーチ、お前は自由に決めろ」
「お前を佐藤さんの所に返すのが、俺の約束だ」
「その為に、わざわざ危険な橋を渡る事は無い」
「何なら、ここで待っててくれても良い…全部終わったら、きっと次の瞬間には佐藤さんの目の前さ」


俺は微笑んで言ってやる。
全く迷いの無い俺の言葉に、ピーチは何も答えられなかった。
ただ三角座りで俯き、どうしようか考えている様だった。


喜久乃
「やれやれですね…悩む位なら、初めから関わらなければ良かったんですよ」
「中途半端に聖さんに関わって、いざ巻き込まれてからじゃ、相当手遅れですからね…」

ピーチ
「別に後悔はしてません…聖の事は信じていますし、協力を惜しむ気もありません」
「ただ、私は…ここで最後なんですよね」
「聖と一緒にいられるのは…」


俺は、その言葉に少し胸が抉られた。
ピーチは内心そんな事を考えていたのか…
確かに、俺はピーチを元の世界に返す事だけを考えていた。
だが、ピーチとしては…それは別れに他ならない。
ピーチにとって俺という存在は、いわば初めての友人。
共に事件に関わり、一心同体でクリアまでこぎつけた、頼れる相棒。
だが、それも所詮は魔王が用意したシナリオの上でしかない。
だから、俺たちは…これで良いんだ。



「ピーチ、その想いは人間の証だ」
「お前は、まだ目覚めてほんの数日…それだけの期間で、そんな感情を持つ事が出来たなら、きっと佐藤さんも誉めてくれるさ」


俺のその言葉に、ピーチは少し表情を和らげる。
そう、ピーチには佐藤さんがいる。
大切な家族だ…俺は、その絆を大事にしてほしいと思う。
だからこそ、俺は…俺たちは負けられない。
恐らく後少しで終わりだ…長かったこの混沌も決着する。
そして、全てを救って…俺たちは元の場所に戻ろう。



「とりあえず、アタシは寝る! 腕治さないといけねぇし…」


李さんはそう言ってその場で大の字に横たわる。
唖々帝さんはそれを見て、ため息を吐く。
そして唖々帝さんも無言で両腕を枕にして寝転んだ。


喜久乃
「…私も寝ます、お休みなさい」


「ああ、お休み…」

夏翔麗愛
「私はボスの側で寝るのです〜♪」


喜久乃はやや不機嫌そうにそっぽを向いて横たわる。
ピーチに一応気を使ってるのかもな…不器用だが。
夏翔麗愛ちゃんは俺に嬉しそうに抱き着き、俺は押し倒される様な形でそのまま横になった。
それを見て、ピーチは何も言わず、三角座りのまま膝に顔を埋めて眠る。
やれやれ…明日には全員回復すれば良いんだが。
とりあえず…俺も眠ろう………



………………………




『夢…の雫……りとあらゆる……を……る……出来……の様な………』
『な…に……故?』


夢を見ていた。
そこは、真っ白な明るい世界。
最果てとは真逆の、白が埋め尽くす世界。
俺はおぼろげな意識の中、誰かの声を聞いた。
この声はエコーがかっており、酷く聴こえ難い。
俺はほとんど断片的にしかその声を聞く事は出来ず、全く理解は出来なかった…
ただ、その声は何故か…悲しく聞こえる。



『願い……しと………じ………パの……に』
『…の………私……必ず……!』


段々と、言葉が遠ざかっていく。
その声は、段々と憎悪を募らせていくのが理解出来た。
悲しみ、憎しみ、怒り…そんな負の感情が、言葉も無く俺の胸に突き刺さって来る。
何故、そんなにも苦しんでいるんだ?
俺には、まるで理解出来なかった。
だって、これは夢なんだから………



………………………




「………」


今度は、ちゃんと同じ場所で起きられた事に俺は安堵する。
妙な夢を見たのは確かだが、まるで内容が記憶に残っていない。
まぁ、得てして夢ってのはそう言うモンだが…
どうやら、俺が1番先に起きた様で、まだ皆眠っている様だった。
そして、俺の体にしがみ着いている夏翔麗愛ちゃんの安らかな寝顔を見て俺は頬笑む。
この笑顔を、失ってはならない…
俺は改めてそう決意し、始まるであろう最終決戦に向けて意識を変えていく。



「…長かったな、本当に」


俺は、夏翔麗愛ちゃんを優しく引き剥がし、再び地面に寝かせてあげた。
夏翔麗愛ちゃんは少し反応するものの、すぐにまた安らかな寝息をたて始める。
俺は、頭を覚醒させる為に少し歩く事にした。
皆の視界から出ない様に気を付け、俺はグルリと円を描く様に皆の寝ている範囲の外周を歩き続ける。



(…風すら吹いちゃいない、こんな寂しい世界で、何で魔王はこんな決戦を望んだ?)


ここまでの戦いがシナリオ通りなら、決戦もまた魔王のシナリオ。
そして、どちらが勝つのかは…俺には解らない。
ここまでシナリオ通りなら、最後までシナリオ通りかもしれない。
魔王は、最終的にどうなるのか…俺には予想も出来ないが。



(だけど、俺は救うと決めた…)


それは、フーパとの約束。
既に死んでいたフーパの、コピーとも言える存在と約束した。
何故、そんなコピーを俺に差し向けたのかは解らない…あのフーパも疑問に思っていた。
そしてフーパは、それを最後の良心と言った。
それはつまり、魔王の良心…俺がそれを倒した事で、もしかしたら魔王はもう救いが無くなっているのかもしれない…



(…それでも、俺は救う)


俺は夢見の雫を掌の上に出し、それを見る。
大分濁っているな…回数2回でこれは、ちょっとマズイレベルだ。
また、アルセウスさんに怒られるパターンだな…これは。
俺はそれでも、あのアルセウスさんだから、優しく諭してくれるのだろう…そう思えたから、何故だか微笑んでしまった。



(そうだ、謝れる内や怒られる内は、まだ良いんだ)


俺たちが敗北すれば、もうそんな事すら出来なくなってしまう。
そうなったら、きっと皆悲しんでしまうだろう。
いや、下手をすれば存在自体が無かった事になる可能性も否定出来ない。
人は、例え死んでも…そこに存在したという事は、絶対に無かった事になんてしてはいけない。
だから、俺は必ず救うと誓う。
この雫の継承者として、正しく魔王を救う!
俺は安らかに輝く雫の濁りを頭に思い浮かべ、空を見上げた。
この世界の空は…もっと、濁っているのだと思うと、とても悲しくなった……










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第7話 『7人のポケモン娘、最終決戦直前!』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/07(火) 11:56 )