とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第5章 『POKE MOA EVIL』
最終編 第2話

「ここが地下か…」

ピーチ
「というより地下牢ですね、牢屋しかありません」


俺たちは順調に地下へと辿り着く。
ここまで敵はまだそこまで湧いては来ず、比較的安全にここまで来れた。
そして、この地下には筋トレしてる何者かがいるらしい。
事実、静かなはずの地下空間で、何やら荒い息遣いと床が擦れる音が聞こえるのだ。
それは確かに筋トレをイメージさせる音。
俺はある程度予想がついているのだが、あえて何も言わずにおく。
そして、俺たちが音のする牢屋を視界に納めると…



「誰だっ!?」

ピーチ
「…スキャン開始、種族特徴、体型、タイプを計測」
「完了、ケケンカニと予測…ポケモンですね」


「ですよね〜って、相変わらずやる事無いから筋トレすか、李さん?」


俺がピーチの背後から顔を出すと、李さんはおおっ!と驚いて笑う。
そして流れる汗を腕で拭い、ニカッと笑い直してこう言う。



「聖じゃねぇか! 何だ、また新しい女拾ったのか?」

ピーチ
「また、とは…さては鬼畜ですね? 仮マスター…」


「違う! そういうんじゃないから!?」
「断じて体目当てとか、そういうのは無いから!!」


俺は完全に勘違いしているピーチにそう叫ぶ。
こういう時、改めて家族の皆がおかしな思考になってるのを気付くな…
フツーに考えたら当たり前の反応なんだが…



「ハハハッ! まぁ、聖は誰にも手は出さないからなぁ〜」
「しっかし、そいつ誰だ? 何かやけに角張ってる顔だけど…」

ピーチ
「…種族名ポリゴン、マスターから与えられた呼び名はピーチ」
「どうぞお好きにお呼びください、李さん」


ピーチは変わらぬ無表情無感情でそう答える。
李さんはふーん…と、さほど興味は無さそうに聞いていた。
まぁ、考えるのがダメな人だからな…俺の意見を待ってるんだろ。



「李さん、とりあえずこの世界は色々ヤバい…力を貸してください」


「何言ってんだ? アタシたちはいつだって聖の為なら力を貸す」
「だから、そんな聞き方をするな…ピンチならアタシはどんな時でも聖を助けるぞ?」


李さんはあっさりとそう答える。
端から聞いてたピーチは、顔には出さないがポカーンとしているみたいだった。
まぁ、フツーの目から見たら何かおかしいんだろうな…


ピーチ
「…恋人なのですか?」


「違う…家族だ」


「ハハハッ! まぁアタシみたいな、がさつなのじゃ聖には相応しくないわな!」


決してそんな事は無いのだが、今は置いておく事にする。
敵がどこから出て来るかも解らない以上、長居は禁物だ。
敵が段々強くなってるのも気になる、速く城から出る方法を探さないと…


ピーチ
「とにかく、門番を倒さなければ外には出れません」
「生半可な一撃では効果無し、重要なのは連撃と予測しています」


「考えて闘うのは苦手だ、作戦は任せるよ…アタシはどうせ突っ込むしか脳が無い」


李さんの発言にピーチは言葉を詰まらせる。
ピーチはどうやったってプログラム上のアルゴリズムで動くからな。
獣型思考の李さんとは真逆とも言える。
とはいえ、このふたりがいれば遠近バランス良く戦えるし、しっかりと役割分担は出来るはず。
問題は、あの巨人を撃破出来るのか?だが…



「ピーチ、勝算は?」

ピーチ
「…李さんの能力も未知数ですが、あの門番の性能も未知数です」
「私の提案する作戦としては、再生する速度を越えて連撃を加え、瓦解を狙うか」
「もしくは弱点部分を探し、そこをピンポイントに狙うか…という2択です」


妥当な所だな、逆にこの面子じゃそれ以外の作戦は難しい。
3人しかいない以上、何とか無理にでも突破しないと…



「とりあえずやってみようぜ? まずは叩くだけ叩いてやる」
「それでダメなら、弱点探しゃ良いんじゃねぇか?」


李さんはことのほか的確な意見を言ってくれた。
確かに、迷う位ならやりやすい方からやった方が良い。
俺は頷き、方針を決める。



「よし、なら李さんはひたすら接近戦、ピーチは遠距離から支援だ!」


「おおよ! 任せな!!」

ピーチ
「やむを得ませんね、了解しました」


とりあえず、今はやれる事をやる。
それでダメなら、その時考えれば良い。
俺には、信頼出来る仲間がいるのだから…



………………………




「おおりゃあ!!」

巨人
「!?」


李さんは全力で踏み込み、開始1番で巨人の片足に『アイスハンマー』を叩き込み、巨人のバランスを崩す。
防御力は大した事無い、李さんのパワーなら一撃で一気にもぎ取れる。
そして間髪入れずにピーチが遠距離からトライアタックを放った。
その隙に李さんは更にもう片方の足を思いっきり叩き飛ばす。


ドバァァァァァンッ!! ズズゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!


ピーチ
「敵、体の破損箇所が再生開始…動きは止まりますが、連撃を持ってしてもダメージは無いと判断」
「しかし、スキャンによる弱点部分の特定は不可能、現状倒す方法…皆無」


やはり、このままじゃ巨人型を倒す事は出来ない様だ。
このままじゃ、ジリ貧になる…と、なると。



「どうする!? こんな状況をどうにかする策はあるのか!?」


「…ああ、あるぜ!」

ピーチ
「…本当に、ですか?」


ピーチは無表情だが、かなり疑いの眼差しを向けている様だった。
李さんは期待を寄せた目をしている…俺は構わずに言葉を続ける。



「ああ、それも今思い付いた取って置きの策がな!!」
「奴の足を見ろ! 李さんの攻撃で足が吹っ飛びすぎて再生しきれてねぇ、そこがつけ目だ!!」


俺はまだ足がやられて起き上がれない巨人の足を指差して言う。
ふたりはまだよく解っていない様だな…



「そ、それでアタシたちは何をすれば良いんだ!?」


「こちらも足を使う!!」


俺はパンッ!と自分の右足を叩いて、アピールする。
ピーチは無表情無感情にこう聞く…


ピーチ
「足を、どうやって?」


「逃げるんだよぉぉぉぉぉぉっ!! どけー! ザコ敵共ーーー!!」


俺はクルリと踵を返して逃走する。
こうなったら全力でやってやるぜ! 息が切れるまでなーーー!!


ピーチ
「うわーん、何なのこの人ー?」


「ええい! ゆっくりボイスみたいな口調でツッコムな!?」
「せめて腹から力を込めて叫べぇい!!」


「つーか、これで良いのかよーーー!?」


俺はザコ敵を回避しながらダッシュした。
鈍足の李さんとピーチは俺の後を追いかけ、すぐに城から離れて行く。
俺は再生しきった巨人を見てニヤリと笑う。
やっぱり、アイツはあの場を動けないタイプの門番だな。
射程距離さえ脱してしまえば、アイツはもう追っては来ない。
倒す事は無理でも、動きを止めてすり抜ける事は出来たって訳だ。



………………………



ピーチ
「…いつから気付いていたのですか?」


「ん? 別に…倒せないなら別の方法を考えただけさ」
「負けイベントなんて、あのタイミングじゃ多分有り得ないし、無敵なら逃げるのも選択肢かなって」


「な〜んか釈然としないなぁ〜…」


李さんはあまり納得してない様だ。
まぁ、あれは仕方ない…多分倒せないんだから。
とはいえ、すり抜けるにしても、やはりふたりがいたから何とかなったと思う。
ふたりがいなければ、すり抜ける為の隙を作る事すら難しかっただろうな。
そういう意味ではふたりが城内にいたのは運が良かった。



(…それもシナリオ通りなんだろうが)


良くも悪くも、ここは恐らくラスボスの世界。
今までと同じ様に、ゲーム的なシナリオは進行中だと思われる。
ただ、俺たちにミスは許されない…誰かひとりでも欠けるのは俺が許さない。


ピーチ
「…ともかく、これで外の探索が可能になりました」
「この先には分岐点がありますが、どちらに向かいますか?」


俺たちが見る先には3方向の分岐路。
右方向には遠くに大きな雪山が見える。
正面には村らしき何か。
左方向は、森…か。



「聖に任せるぜ? アタシはどこでも良い」

ピーチ
「同意します、どうぞ貴方が選択してください」


「…なら、村に向かうか」


俺はとりあえずそう決めて1歩踏み出す。
山や森となれば、ダンジョンみたいな物だ。
今の状態では食料も確保出来ないし、下手に休む事も出来ない。
それなら、村で準備を整えてからの方が良いだろう。
整えられるなら…だが。


ピーチ
「…生存者がいると思いますか?」


「…ああ、少なくともひとり位はいると思いたい」


「他の連中もやっぱいるって事か?」


李さんの言葉に俺は頷く。
少なくとも後5人…まずは皆と合流して安全を確保しないとな。
恐らく、どのルートにも誰かは配置されていると俺は踏む。
問題は、その上でどこが比較的安全かだ。
ザコ敵も次第に強くなるのかもしれないし、あまりグズグズはしていられない。
すぐに行動しないとな…


ピーチ
「…とりあえず、敵は大量にいます」


「良いねぇ、フラストレーションが溜まってた所だ!」


ピーチは道の先にいるザコ敵を目視した。
李さんは嬉しそうに指の骨をボキボキ鳴らし、笑う。
俺はふたりの背中に守られ、ただ信じる事しか出来なかった。



………………………




「やれやれ、やっと着いたぜ…」

ピーチ
「敵も、次第に量より質となってきましたね…」


ふたりはかなり疲れていた。
李さんはまだ何とかって感じだが、ピーチは予想以上に消耗が激しいみたいだ。
遠距離で攻撃する以上、PPの問題は必ずあるからな。
それ以前に、ピーチは体内電気が切れたら動けなくなってしまうらしい。
普段は自己発電でちゃんと賄えるんだそうだが、戦闘を繰り返したりすると足りなくなっていつか枯渇するらしい。
城で停止していたのは、そういう背景があったのだ。
俺が見付けてなかったら、どうなっていたか…

敵も気が付くと、デカイ奴が増えてきた。
その分、小型のが減ってるわけだが、露骨に難易度は上がってる。
李さんやピーチも、戦う度に強くなっている感じだが、やはり疲労はいかんともし難い。
とりあえず、村で休めりゃ良いが…


ピーチ
「生体スキャン開始……ヒット、ひとりですが」


「予想通り…ってとこか」


まぁ、この空気じゃな…村すら色褪せて、誰ひとり住んでいそうにない。
そして、そんな中ただひとり生きている家族…か。


ピーチ
「…外ですね、あの草むらで寝ている様です」


「外で寝てるのか? 度胸あんなぁ〜」


俺は敵の気配が無いと判断し、先頭を歩く。
ふたりはそれに付いて来て、やがて草むらに近付くと…いた。
両腕を枕にしてスースー眠る少女。
長い赤髪、特徴的な2本の尻尾、現代的な服…
間違いないな、夏翔麗愛ちゃんだ。



「夏翔麗愛じゃんか…ひとりなのか?」

ピーチ
「他の生存者は確認出来ません、少なくとも100m以内では」


「とにかく起こそう、夏翔麗愛ちゃん…」


バシッ!と俺は後に弾かれる。
夏翔麗愛ちゃんに触れようとしたら、突然何かの力を受けたのだ。
かなりの衝撃で俺はすぐに動けなかった。
その場で尻餅を着き、頭を抱える。
何が…起きたんだ?


ピーチ
「…強力な念動反応、自動で敵を迎撃するシステムの様です」
「寝ている状態でも防衛出来る様にしているとは…しっかりさんですね」


ピーチはそう解説するが、そうなると起きるのを待つしかないわけだ。
やれやれ…まさか自動迎撃されるとは。
夏翔麗愛ちゃんもちゃんと考えて寝てるって訳か。
見た所、夏翔麗愛ちゃんは特に服に汚れ等も無く、怪我も無い。
いくつか交戦した可能性は有るだろうが、どうにかやり過ごしていたのかもしれないな。


ピーチ
「…データベースに該当無し、この少女は何ですか?」


「夏翔麗愛ちゃんって言ってな、エムリットなんだ…」

ピーチ
「エムリット…検索にヒット、感情ポケモン…伝説と言われるポケモンですが、本当に?」


ピーチは疑っている様だった。
解らなくもないが、これは真実だ。
今ここで無邪気に寝ている夏翔麗愛ちゃんは、紛れもなく伝説のエムリットなのだから…



「まぁ、伝説とか言ったら他にも沢山いるもんな〜」


「確かに…今思うと、本当に豪華な面子が住んでるよな〜」


香飛利みたいなコモンもいれば、白那さんみたいなスーパーレアもいるからな…
李さんもそういう意味ではコモン系か。
何気にピーチはレア系だよな…ポリゴンって希少そうだし。


ピーチ
「…確かに、特徴はエムリットのそれですね」
「放たれている念動力も、並のエスパーとは思えません」
「信じがたい事ですが、本当に伝説のポケモンがここに…」


とりあえず、俺たちは先に村を調べる事にした。
ピーチは夏翔麗愛ちゃんを観察してたが、俺たちが動くとすぐに付いて来る。
まずは食料探しだな…



………………………




「…何だこりゃ? ひとつも扉が開かないぞ?」


「こっちもだ! 殴ってもビクともしねぇ!」

ピーチ
「…何かの障壁でしょうか? エネルギー反応は有りませんが」


俺たちはどの家屋にも入れずに往生していた。
小さな村で、さほど探索出来る範囲が無いのは良いんだが、一気にやる事が無くなったな。



「何かのフラグがあるのか? 鍵みたいな何かとか…」

ピーチ
「気になりますね…何故開かないのでしょうか?」


ガチャ!と、いきなり音がする。
ピーチがおもむろにドアノブを握ると、何をやっても開かなかった扉が容易く開いたのだ。
俺と李さんはギョッとし、扉を見る。
ピーチは無表情無感情にその扉を開き、俺たちは中を見た。



「…暗闇か、明らかにダンジョン臭いな」


「でも、これ入れないぜ?」


李さんは暗闇の中に手を入れようとするが、やはり遮られる。
どうやら、ピーチだけが中に入れるらしい。
これは相当怪しいな…一体何があるんだ?


ピーチ
「内部のスキャンは不可能、恐らくは別次元の空間と予測」
「…どうしますか?」


ピーチは無表情無感情に俺を見て聞いてくる。
俺は、どうすれば良いのか迷っていた。
これは露骨な何かのフラグ…だが、間違いなく危険があると俺は予想している。
そんな場所に、家族と無関係なピーチをひとりで放り込めるか?
俺には、そんな決断は到底出来ない。



「…ピーチ、お前が決めろ」

ピーチ
「………」


ピーチは無言だった。
だが、俺の言葉の意味は解ってくれている気がする。
俺には、ピーチを送り出す事は出来ない…むしろ行ってほしくない。
だが、それによってこの世界をクリア出来ないのであれば、それはピーチを元の世界に返す約束が果たせなくなる。
だが、それはあくまで推測だ。
もしかしたら、ただの部屋とかかもしれないし、危険は無いのかもしれない。
フラグも関係無く、別にクリアに必須じゃないかもしれない。
だが、それもあくまで推測だ。
結局の所、入ってみなきゃ何も解らない…


ピーチ
「…入れ、とは言わないのですか?」


「バカを言うな、むしろ入らせたくない」

ピーチ
「ですが、それでは道は閉ざされるかもしれませんよ?」


「その時はその時だ、俺が絶対に何とかする」
「お前は佐藤さんからの預かり者だ、俺にはお前を守る義務がある」


ピーチは考えている様だった。
恐らく、命令すればピーチは行くのだろう。
だが、俺はそれを強制したくはない。
行くにしても、ピーチの意志で決めてほしいのだ。
少なくとも自分で決めた道なら、何が起こってもきっと後悔はしないだろうから…


ピーチ
「…ズルいですね、自分では責任を取れないからって」


「…子供だからな、そういうのは大人が取るもんだ」
「でも、俺は約束は必ず守る…お前を元の世界に戻す」
「その為なら、俺は多少の無茶は通して見せるつもりだから…」


ほとんど屁理屈だろう。
俺は基本的にワガママだからな…
だが折れる気も無い、ここはピーチに決めさせる。
俺は、ピーチがどっちを選んでも絶対に救ってみせる。
夢見の雫は、誰かを救う為に使うなら惜しみはしない。


ピーチ
「…解りました、それなら中に入ります」
「そして、覚えておいてください…私は、ただ貴方に救われるだけのつもりはありません」


ピーチはそう言って俺に背を向ける。
暗闇だけが待つ扉の先を見据え、ピーチはこう告げた。


ピーチ
「誰かを助けたいと思う気持ちは、私にも有ります!」


ピーチは珍しく強い口調でそう言った。
そして、大して速くもない速度で中に走り込む。
気が付けばピーチは闇に消え、俺たちはふたりその場に立ち尽くしていた。



「…良かったのか?」


「決めたのはアイツだ…だったら、俺は信じるさ」
「アイツは、必ず戻って来るって…」


俺たちはピーチを信じた。
俺たちの家族ですらない、ただのポリゴン。
そんな彼女が、誰かを助けたいと言った。
俺は、その言葉を信じたい…そして、支えてやりたい。
せめて、この世界の間だけでも…



………………………



ピーチ
「…ここは、何かの部屋?」


中に入ると、そこは謎の建物の内部だった。
造りは、石…? いえ、茶色のレンガみたいにも見える。
スキャンしてみると、やはりレンガの様。
が、触れてみるとまるで違う感触…これは、何かのフィールド?
どうやら、この部屋全体に何かが張り巡らされている。
ひとりで入って来た入り口は消えてしまい、もう外には出られない。
少なくとも、見えているひとつの扉を開けるしか私には選択肢が無い様だった。


ピーチ
(扉は…開く)


レンガの扉は大して重さも感じずに開き、先の空間を見せる。
特に変哲も無い、今の部屋と似た様な造りの部屋だ。
ただ、そこには鏡がある。
私はその鏡の前に立ち、自分の全身像を見た。
鏡は2m程の高さがあり、床から生えている感じだ。
何故ここに鏡が有るのかは解らないが、少なくともこれ以外には何も無い。
私は周りを見渡し、確認してから再び鏡を見る。
すると驚きの事態に気付いた。
この鏡に写し出されている私は、一切動いていないのだ。
私はやや後ずさるも、鏡の私は直立不動で動かない。
そして、鏡の私は突然言葉を放った。


鏡の私
『まずは最初の試練』
『鏡に写るのはゴールへの道…鏡の自分を追うが良い』


言葉はそれだけ。
それ以降は何も発さず、ただ正面を向いてまた直立不動だった。
ただし、私は気が付けば扉の前…つまり部屋の入り口に戻されていたのだ。
私は考える…鏡の自分はゴールへの道。
つまり、あの鏡に写っている方向が、恐らくはゴールへの道。
私は、慎重に足を1歩踏み出した。
鏡の姿は変わらない…私はもう1歩踏み出す。


ピーチ
(床のレンガはほぼ1歩で1パネル…規則正しく敷き詰められていますね)


私はパネルの様に規則正しく並べられている床のレンガをひとつづつ踏み込んで行く。
すると、5歩歩いた時点で鏡の私は右を向いた。
やはり…この鏡こそが正解へのルート。
私は右のレンガを踏む、鏡の私は動かない。
そのまま鏡の私が変わるまで私は1歩づつレンガを渡って行った。
私は鏡の姿を参考にし、レンガの床を進む。
そして、17歩程で鏡の前に辿り着いた。
私はその鏡に手を触れる…すると、私はまた部屋の入り口に戻された。


ピーチ
(違う…戻ってない、ここは別の部屋)


その証拠に、部屋の奥には鏡がふたつある。
そこに写る私は、ふたり同時にこう口を開く。


鏡の私たち
『鏡に写るのは、片方は真実…もう片方は虚偽』
『ゴールへは、己の姿がヒントとなる』


その言葉を発したと同時、鏡はそれぞれ左右を向く。
左の鏡は左、右は反対。
私は考える…これはどちらかが虚偽。
それを見分ける方法は思い付かない…しかし、己の姿がヒントとなる?
私は自分の足を見る…角張りは有りますが美しい御足です。
その私の足が、何かのヒントになるのでしょうか…?


ピーチ
(…成る程、確かにヒントですね)


ある意味、子供騙しに近い。
右の鏡に写っている私は、僅かに角張りが無いのだ。
これはすなわち虚偽。
私は迷わずに左へと踏み込む。
すると、今度は左が前、右が左を向いた。
私は慎重に鏡を見る…やはり、今度は左が虚偽になっている。
右が虚偽だと決めつけていたら、あっさり失敗してましたね。
ここは横着してはいけません…私は正確に鏡を見分けゆっくりと歩を進めて行く。
そして、私は最終的に右の鏡へと辿り着いた。
その鏡に触れ、私は更に先の部屋へと辿り着く。



………………………



ピーチ
「次は、3枚の鏡ですか…」


鏡は更に増える、そしてそれ等が一斉に言葉を発する。


鏡の私たち
『鏡に写るのは全てが虚偽、ゴールへ導くヒントは無が知っている』


それを聞くと、鏡はそれぞれ後、左、右を向いていた。
私はすぐに答えを導く。
これは全てが虚偽…でしたら、前に進めば良い。
ヒントは無が知っている…つまり、そこに写らない姿。
私はさっさと謎を解き、その部屋をも簡単に越えてみせる。
3枚目の鏡に触れ、私は更に先の部屋へと進んだのだ。



………………………



そして、私は祭壇の様な場所に辿り着く。
そこには何かのパーツが置かれており、私は周りを確認して祭壇の階段を上る。
鏡は無く、祭壇の更に奥には扉があった。
しかし、このパーツは一体?
見た感じ、黄色の枠組みに黒と青の模様が付けられている。
接続端子と思われる部分もあり、少なくとも何かに接続するパーツなのは理解出来る。
私は、とりあえずそれを持ち上げ、口で接続端子を咥えてみた。
こうする事により、私は電子機器のデータを読み込む事が出来るのだ。


ピーチ
(これは…『アップグレード』?)


私は中のデータを読み取り、その意味を知る。
これは、ポリゴンが進化する為のアップグレード。
これを使えば、私はポリゴン2に進化出来る?
しかし、これには問題がある。
アップグレードと言っても、進化するには別の要因が必要なのだ。
つまり、持っているだけでは進化出来ない…せめて、何かの機器があれば出来ると思うのですが…


ピーチ
「…今はどうしようもありませんね」
「これはとりあえず有りがたく頂戴して、先に進みましょう」


私はそう思い、アップグレードを胸の谷間に仕舞って更に先の扉を開ける。
すると、また空間は切り替わり、目の前には…村の風景が広がっていた。



………………………



どうやら、今のが最後だった様ね。
思ったより拍子抜け…簡単な謎だった。
とはいえ、もし間違っていたらと思うと、ゾッとするのも事実。
ちょっとした油断でもあれば、その場で取り返しのつかない事になる可能性もあったし。
とりあえず、無事に出て来れて良かった…



「!? ピ、ピーチ…だよな?」


「っぽいけど…あれ? 何か、こんなに丸かったっけ?」
「あ、いや…人間的には普通なんだけど」


私は?を浮かべる。
一体ふたりは何を言ってるんだろう?
丸い…って、何が?
私は思わず自分の両手を見る。
すると、その腕は角張りの無い美しい腕だった。


ピーチ
「えっ? これって…」


私は自分の体をスキャンし、ホログラムに出力する。
私の目の前に存在する私は、表情豊かに戸惑っている。
そして、見えるのは…角張りが全て取れた新たな自分の姿だった。










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第2話 『ピーチmkU』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/07(火) 06:10 )