とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第5章 『POKE MOA EVIL』
第6話 近未来編

「………」

フーパ
「遂に、ここまで来たね…」


俺はいつもの暗闇でフーパと相対していた。
フーパはやや悲しそうな表情をしながら、何かを覚悟する様な顔をしている。
いつものおちゃらけたフーパじゃ無い?


フーパ
「…アタシが、憎いかい?」


「…何故、そう思う?」


フーパの考えは俺には解らない。
だが、フーパには自分の考えがあり、それを俺に託している様な感じにも見えていた…


フーパ
「…そろそろ、アタシの役目も終わる」


「…何だと? 役目…?」

フーパ
「そう、役目…まぁ、大した役目じゃない」
「精々、君の記憶に残るかもしれない程度の役目さ…」


俺には意味が解らなかった。
だがフーパの顔はただ寂しそうな、悲しそうな、フツーの少女の顔だった。



「フーパ…答えてくれ、お前は助けたい奴がいるんだよな?」

フーパ
「そうだよ、そして…それももうすぐ終わる」
「だから、君には期待してるよ…本当に、ホラで無い事をね」


「…俺は約束を守る、必ずお前もその大切な奴も救ってやる」
「そして、全部救って俺たちは元に戻る…」


そう、きっと完全には戻らないのだとは思う。
だけど、俺は出来る限りの形には戻す。
ここまで雫の力は使わずに済んだが、それもラスボスの設定したレールの上なのだと俺は思っている。
そして、残り2世界…そこには、何がある?


フーパ
「…多分、アタシはこれが最期になると思う」


「…?」

フーパ
「…決して、手は抜かないでくれ」
「アタシの事は、何も気遣わなくて良い…ただ、君は目的を果たす事だけを考えて」
「終わったら、アタシが知っている真実を話すよ…」


フーパはそれだけ言って、俺はゲートに吸い込まれる。
フーパは一体、何を…?
俺の意識は、そこで別の世界に飛ばされた。



………………………



POKE MOA EVIL 『近未来編』

『悲哀』



………………………




「……ん」


私は、昼間の日差しに目を当てられ、昼寝から目を覚ます。
時刻は大体昼過ぎ、少し寝過ぎたらしいですね。
ちなみに、今私がいるのは公園のベンチです。


少年
「お姉ーちゃん!」


「…あ、何?」


私は寝ぼけ眼でそう答える。
私に話しかけたのは、年下と思われる位の少年で、半袖短パンとフツーの格好だった。
とはいえ、それは服装の話で少年の頭には可愛らしい丸い耳がふたつ付いてる。
額には三日月の白い模様があり、それが少年のポケモンとしての特徴だった。
ちなみに、私は10歳だから歳はそれ程変わらないはず。
ただ、話しかけて来た少年はもっと小さかっただけだ。


少年
「ねぇ、今日はタコ焼き屋さんいないの?」


「…五郎(ごろう)さんなら、もう少ししたら来ますよ」


私はあくびをしてそう答える。
ちなみに、五郎さんというのは私の雇い主です、種族は『ゴロンダ』。
まぁ…要するにタコ焼き屋のバイトなんですけどね。
この世界では未成年雇っても問題無いみたいなので気楽なものです。


少年
「むぅ〜、だったらお姉ちゃんがタコ焼き焼いてよ〜!」


「…良いですけど、味に文句は言わない様に!」


私はビシッ!と少年を指差してそう言うと、タコ焼き屋の屋台へと向かう。
いつもなら、雇い主の五郎さんがやってるんですけど、いない時は私が代理でやる事もあります。
…まぁ、タコ焼きなんて焼き加減さえマトモなら、味はテキトーに何とかなるんですけどね。


少年
「…あれ、あの連中」


「…鬱陶しいですね、暴走族の『腐外道』(バッドヴィラン)ですよ」
「あれは関わらない方が良いのです…ならず者ですし」


私はそう言って少年を見せない様に奴らの目から隠す。
少年はまだ小さいヒメグマだから、ああいうのには関わらせないのが精神衛生上に良いのです。


腐外道A
「痛っ! ババァ、どこ見てやがる!?」

お婆ちゃん
「ひええ…ご、ごめんなさい…目が悪くて!」


不運にも通りすがりのお婆ちゃんが腐外道のメンバーにぶつかってしまう。
当然の様に睨まれ、お婆ちゃんは怯えて腰を抜かしていた。
相手はズルッグやズルズキンで構成されたモヒカン集団。
ひ弱そうなピクシーのお婆ちゃんには辛い相手ですね…タイプ相性は置いておいて。
私は流石に見かね、争いを止め様と思いますが、その瞬間爆音をあげてバイクのエンジン音が鳴り響いた。
それは、私にとっては慣れた音で、聞き馴染みの音。
そして、漆黒のハーレーに乗って近付く男がひとり。
その男は、ツンと真上に伸びた短髪の白いツンツンヘアーで、ヤンキーみたいな三角形のサングラスを着用。
頭には黒い耳が立っており、それはヒメグマの少年と少し似ている。
服装もやんちゃを通り越しており、黒のジャケットとパンクなズボンに身を包んだ、やや時代錯誤な服装。
そして、口には小さな竹の葉っぱを咥えており、黒い鼻と並んで彼の特徴でもあります。

腐外道の連中は、その目立つ出で立ちに怒りを露にし、こう良い放った。


暴走族A
「おお? オッサン、何の様だ? 怪我したくなけりゃとっとと失せな!」

オッサン
「…そいつは聞けへん相談やな、その人は俺の大事な客や」

暴走族B
「客だぁ? 一体何なんだテメェは!?」

暴走族C
「俺らに逆らったら無事じゃすまねぇぞ!?」


すぐにサングラス男は腐外道に囲まれる。
その隙にお婆ちゃんはその場から離れ、サングラス男はそれを見てニヤリと笑ってバイクから降りる。
身長180pの大柄な体格は格闘タイプらしくゴツい。
そして、ダルそうな低音の声を響かせてこう言う。


オッサン
「何…ねえ」
「知りたいなら、教えたる…俺は」
「通りすがりの、タコ焼き屋さんや!!」


その瞬間、腐外道の数人が吹っ飛ぶ。
サングラス男は右腕を振り回しただけで3人を数m飛ばしたのだ。
流石ですね、あんな雑魚相手じゃ敵にもならない。
私は勝利を確信し、吹っ飛んだ腐外道の間を縫ってサングラス男の元に向かった。
それを見て、男はこう言葉を放つ。


オッサン
「ん? どうした夏翔麗愛!? その子は?」


私はため息を吐き、少年を前に出す。
そして、少年にタコ焼きを出す様に薦めた。
腐外道のメンバーは既に恐れおののいて逃げてしている。
この辺で五郎さんに逆らうバカがまだいるんですね…やれやれですよ。

ちなみに、私の名前は『槍野 夏翔麗愛』(やりの かとれあ)…多分、姉妹では1番影薄いエムリットですよ。
既に4ヶ月はこの意味不明な世界で過ごしており、実の所もう11歳になっているはずです。
つまり、元の世界で時間が経っていないなら、私が長女の年齢!!
ここから先は私がお姉ちゃんとして皆を先導して行くのですよ!


五郎
「…客か、ならちょっと待っとけ!」
「すぐに焼いたるわ、夏翔麗愛は準備せぇ!!」


私は怒鳴られ、すぐにネタの準備をする。
屋台はフツーのこじんまりとした奴で、移動式ではない。
鉄板にはプロパンガスが直結しており、チャッカマンで火を入れればすぐに熱は通る。
私は浮遊してタコ焼き用の鉄板に油を塗り、そこに用意していたネタを流していく。
ジュワーと音をたて、ネタが熱されている間に私は天かす、鰹粉末、タコを順に入れていった。
やがて、ネタが良い感じに焼けてくると、五郎さんはそれをチャッチャッとゼンマイ通しでひっくり返していく。
そして出来上がったら、専用の舟にタコ焼きを6個乗せて私がソースを塗る。
最後に青のりと鰹節を乗せ、マヨネーズを適量かけたら完成です。


五郎
「おまっさん! 出来立てやで♪」

ヒメグマの少年
「ありがとう〜、はいこれ200円!」

夏翔麗愛
「毎度ありなのです♪」


ヒメグマの少年は嬉しそうに去って行った。
そして、入れ替わる様にさっきのお婆ちゃんが現れる。


ピクシーのお婆ちゃん
「さっきはありがとうございます…」

五郎
「気にせんでええよ、ほんでいくつでっか?」

ピクシーのお婆ちゃん
「それじゃ10舟くださいな♪」

夏翔麗愛
「了解なのです! じゃんじゃん焼くのです!!」


と、まぁ大体いつもこんな感じで過ごしてます。
そして、夕陽が沈む前に屋台は店仕舞いし、私は帰る準備をした。


五郎
「…さっさと帰るぞ、ほら送ってやるから乗ってけ」

夏翔麗愛
「むふふ〜そんな事言って私のちっぱいの感触に萌えたいのですね♪」

五郎
「じゃあな、明日もよろしく頼むぞ」

夏翔麗愛
「って、華麗にスルーしやがったのです! 捨て台詞にしては型破りでも無いのです!!」


私はそんなツッコミを入れながらもバイクの後部座席に座る。
ちなみにヘルメットが必須の法律も無いのでノーヘル上等なのです!
『現実ではノーヘルダメ! 絶対!!』



………………………



♪ Let's GO! キングゴルーグ!!
(脳内再生でお楽しみください)


今は 昔の ポケモン世界

影の 拳が 大地を 衝く

幻の魔神を 倒す為

魂で火を灯せ!

深い 愛が 呼び覚ます

キング ゴルーグ ここ に 在 り!



………………………



五郎
「…じゃあな夏翔麗愛、明日は休んでも良いからな?」

夏翔麗愛
「お言葉に甘えるのです! 全く、こんな少女を連日働かせるなんて違法なのですよ!」

五郎
「お前が金いるからってやってんだろが…ほれ、今日の分だ」


私はとりあえず五郎さんから5000P(ポケ)紙幣を受け取る。
まぁ、昼からの営業でしたから妥当ですね。
何をするにもお金は重要なのです、お父さんを探す為には…


五郎
「…親父さんの事はこっちでも調べてやる、お前は無理すんじゃねぇぞ?」

夏翔麗愛
「…解ってます、だけどこの世界はちょっと寂しいのです」


私は悲しくなって俯く。
この世界は、驚く程に狭い。
そして、そこから感じ取れる感情は7割が悪意や憎悪に満ちている。
私は感情の神と言われてはいるものの、その感情を操れるわけでは無い。
良い所、心を読んだりは出来ますが、もっぱら得意なのは嘘か真実かを当てる能力ですね。
もっとも、これは感情の揺らぎで当ててるだけで、騰湖お姉ちゃんみたいに自動追跡の○タンドみたく焼き殺すわけじゃないですけど…


五郎
「とにかく明日は休め、働くのはせめて明後日からにしろ」

夏翔麗愛
「解ってるのです…ちゃんと休みますよ」


私がそう言うと、五郎さんはそのままバイクを走らせて去って行く。
私は既に暗くなり始めている空をチラリと見て、ため息を吐いた。
そして、私がこの世界で下宿してる孤児院の中に入って行く。



………………………



少年
「あ、夏翔麗愛が帰って来た〜!」

夏翔麗愛
「ただいまなのです、三(さぶ)飯の用意なのです!」


私は玄関で早速顔を見せたサンダースの少年、三にそう話す。
すると、三は呆れた様な顔でこう返した。



「…まだ夕飯には速いよ、欲しければ自分で作れば?」

夏翔麗愛
「やれやれなのです…全く、もう少ししっかりしたツッコミが欲しい所ですね」


この世界はネタが通用し難いのです。
やはり聖お父さんがいないと成分が足りない!


少女
「夏翔麗愛お姉ちゃん、お帰り〜♪」

夏翔麗愛
「おうふ、一(いつ)! 今日も温かいですね〜♪」


私は抱き着いてきたブースターの一を撫でてやり、ニコニコ笑う。
すると、嬉しそうに一は微笑み、私の胸に顔をスリスリして来た。


少年B
「夏翔麗愛姉さん、お帰り」

夏翔麗愛
「二(ふたつ)、ただいまなのです! 貴方もさぁドンと来いなのです!!」


私が両手を広げてカモン!としてやると、二はため息を吐いて丸眼鏡をクイッと調整する。
そして情けない姉を見る様な目でこう良い放った。



「情けない姉さんに甘える程、僕は愚かじゃないですよ…」


実際に口で言われる…おのれ、舐めてやがりますね!
ちなみに二はシャワーズの少年です。
っていうか、この孤児院はイーブイ系列の子供しかいないんですけどね…


女性
「あら、帰ってたのね…お帰りなさい夏翔麗愛♪」


最後に現れたのはイーブイのお姉さんで、この孤児院の経営者。
行く宛の無い私の事を引き入れてくれたお人好しの良い人です。


夏翔麗愛
「零(れい)さん、ただいまなのです!」


「はい、お風呂沸いてるから先に入って良いわよ♪」


私はお言葉に甘える事にする。
とりあえず鉄板焼の臭いは結構染みつくのです…



「じゃあ、私も一緒に入る〜♪」

夏翔麗愛
「良いですよ〜お姉ちゃんと一緒にバスタイムを楽しむのです!」


私はそう言って一を抱き上げて一旦部屋に戻る。
そして、着替えを持ってから一と一緒にお風呂に入りました。



………………………



そして、その日の夜…食事後に私は三からこんな言伝てを聞いた。


夏翔麗愛
「博士が?」


「そっ、明日で良いから来てくれってさ」


ちなみに博士とは、近くの研究所に住んでる変人です。
種族はフーディンで相当な頭脳を持ってるそうですが、天才とバカは紙一重と言いますし、博士はもっぱら後者の類いに思える人です。
とはいえ、別に悪い人でもなく基本的には気さくで人付き合いも良い変人ですね。



「どうせ博士の事だから、また変なロボットでも造ったんじゃないか?」

夏翔麗愛
「有り得ますね…自称マッドサイエンティストですからね」
「まぁ、明日朝イチで大笑いしに行ってやりますよ♪」


私がそう言うと、皆笑い出す。
言っちゃ何ですけど、博士の発明は大抵失敗作ばかりです。
まぁその度に笑いの種にはなるからいつも楽しみにはしてるんですけどね♪
私は今回もどんな笑いが提供されるかをワクワクしながら明日を待つ事にした。

そんな日常が、フツーになって行くのが…私は少し、悲しかった。



………………………



そして次の日。


夏翔麗愛
「おいーっす! 博士、来たですよ〜!」

博士
「おお! よく来てくれた!!」


博士は嬉しそうに私を出迎えてくれる。
博士の頭はボサボサの白髪で髭も凄く長い。
歳も既に60を越えてるそうで、この調子ですといつポックリ逝くか解ったもんじゃないのです。
博士は白衣をはためかせて私に近寄る。
そして私は笑顔でこう聞いた。


夏翔麗愛
「今度はどんなダッチワイフを造ったんですか?」

博士
「失礼な! ありゃちょっとしたミスじゃ!!」


ちなみにダッチワイフは前の発明品です。
まぁ、あまりに形容しがたい何かだったので、あれで勃起出来る人は魔界の住人か何かだと思いますよ…
…動く前に自爆してこの世を去りましたが。


博士
「とにかく地下へ来るのじゃ!! 目に物見せたるわい!!」


博士はノリノリで地下の開発室へと降りて行った。
私も浮遊して後を着いて行く。
そして、地下の部屋で見た物は…


博士
「これじゃ!!」

夏翔麗愛
「ジジイついに耄碌(もうろく)したですか!? 猫の死体とか見せて、少女にトラウマ与える快感に目覚めたのですか!?」


私は流石に全力でツッコミます。
手術台の様なテーブルに乗せられていたのは猫の死体。
定番の三毛猫ですが、何をトチ狂って死体を…


博士
「ええい! 説明不要!! とにかくこれでコイツは甦る!!」


博士はそんな事を言い出し、デカイ電極をふたつ持った。
そしてそこからはかなりの電気が発せられているのは理解する。
もしかしなくても、甦るって…それ、で?


博士
「さぁ甦るのじゃ! この電撃でーーー!!」

夏翔麗愛
「やっぱりですかこのダメ博士!?」


博士は猫の死体に強烈な電撃を浴びせる。
ショックで死体はバシッと跳ねるが、動く様子は無い。


博士
「………」
夏翔麗愛
「………」

博士
「……」
夏翔麗愛
「……」

博士
「…さぁ甦るのじゃ! この電撃でーーー!!」

夏翔麗愛
「繰り返してんじゃねぇですよこのおバカ!!」


私は横から博士をグーで殴り抜ける。
小さくても攻撃105族舐めんなです!!
博士は思いっきり吹っ飛び気絶する。
私はすぐに猫の死体を外に運び、迷惑のかからない場所でそっと墓を作ってあげた。



………………………



夏翔麗愛
「お! の! れ! 博士ーーー!!」

博士
「ち、違うんじゃ! これはちょっとしたミスで…!!」

夏翔麗愛
「ダマラッシャイ! 猫ちゃんの死体を拾って改造しようだなんて外道ですか!?」

博士
「か、改造じゃない! あれは蘇生の…」


私は念力で博士の動きを止め、テレキネシスで宙に浮かべる。
その気になればミンチも可能ですが、やった所でこのバカ博士がドクター○ンチにはなれません!
なのでここはかなり脅しつけておきます。


夏翔麗愛
「とりあえず試すなら自分の体でやるのです!!」

博士
「ま、待て!! こ、今度のは絶対に凄いぞ!?」
「お、お前には特別にそいつを見せてやる!!」


私はピクッと眉を動かし、博士を下に降ろす。
特別なとはちょっと気になりますね…まぁ博士のポンコツが言ってる事ですから、あまり期待は出来ませんが。


夏翔麗愛
「とりあえず、何なんですか?」

博士
「うむ、こいつはまだ誰にも知られていない秘密兵器じゃ!」

夏翔麗愛
「ひ、秘密兵器〜!?」


そいつは何て素敵な響き!?
秘密兵器とは子供たちのロマンじゃないですか!!
私は目をキラキラさせて博士を見る。
博士は無駄に格好つけてポーズを取り、そしてこう言い放った。


博士
「あまりに重要機密ゆえ、数々のロックをしてある」
「まずは、そこの本棚の2段目右から3冊目を引っ張れ!」

夏翔麗愛
「ほいほい!」


私が浮遊してその本を引っ張ると、ガシャン!と何か機械音が聞こえた。
ちなみに本のタイトルは、むっちり熟女のポケモン娘、貴方のモノでよがらせて!だった…
ぎゃ、逆に気になるタイトルです…! でもこれ完全にスイッチに改造してあって読むのは無理ですね…orz


博士
「よし、次はそこのランタンを下に下げろ」

夏翔麗愛
「はいです!」


私が反対側の壁にある電気ランタンを下に引っ張ると、また機械音が響いてロックが外れた様でした。
これ、本当に厳重にしてあるんですかね?
博士にしては真面目すぎる仕掛けです。


博士
「次はそこの全自動掃除機を踏め!」

夏翔麗愛
「はいです!」


私は対角線上の端で充電されている自動掃除機を軽く踏む。
三角形の奴でコーナーも楽々掃除してくれる凄い奴ですね♪


博士
「よし、次はトイレで水を流せ!」

夏翔麗愛
「まだ有るんですか…しつこいですね〜!」


私はトイレのドアを開き水を流す。
すると、突然スピーカーから声が聞こえた。


スピーカー
「ピンポーン! ロックが解除されました」
「それでは後を見てください」


私は言われて後ろを見る。が、別に何も無かった。


スピーカー
「アホーが見ーるーー!!」

夏翔麗愛
「博士〜!? 良い加減にしろです!!」

博士
「いやジョーク! イッツァジョーク!! だから拳握らないで!?」


手の込んだ嫌がらせしてるんじゃないですよ!!
やっぱり信じた私がバカだった様です…


ガクンッ!!


夏翔麗愛
「おおっ!?」

スピーカー
「それでは、これより格納庫に移動します!」


スピーカーからそんな音声が鳴り、私はトイレに座ってドキドキする。
そしてすぐにトイレの部屋がまるごとエレベーターになって下に下がっている様でした。
それも、かなり深い…地下数10mは進んでいる気がします。



………………………



スピーカー
「格納庫に到着しました! これより先は、キングゴルーグのハンガーです!」

格納庫
「キング…ゴルーグ!?」


ドアが自動で開くと、私は目の前の巨大ロボに絶句する。
そのサイズは50mはあろうかと言うサイズで、見た目は白いゴルーグ。
所々改造された形跡があり、背中には巨大ブースター、両腕にはキラリと輝く鉄の拳。
腹部には大きな砲門が着いており、レーザーでも出そうでした。
これは、まさしく男のロマン!!


博士
「どうじゃ! 凄いじゃろ!?」

夏翔麗愛
「博士!? こ、このゴルーグは一体!?」


博士は突然テレポートで私の側に現れる。
そして両腕を腰の後で組み、博士は笑いながらこう話した。


博士
「こいつはキングゴルーグ! かつて太古の昔に魔神と戦ったと言われるロボットじゃ!」

夏翔麗愛
「ロボット…ポケモンじゃないのですか?」

博士
「もちろん、昔は本物のゴルーグだったのかもしれんな…」
「しかし、それにしたってこのサイズのゴルーグは聞いた事も無い」
「しかもこれは原種のゴルーグの姿であり、人化したポケモンでは無い!」


確かに、このサイズはフツー有り得ませんね。
しかも人化して無いと言うからには、古代では人化前のポケモンたちが生きていたんでしょうか?


博士
「何故こいつがここに埋まっていたのかは解らん」
「じゃが、ワシはこいつを見つけて整備に整備を重ねた!」
「可能な限りの修理と改造を施し、いつでも魔神と戦える様に調整していたのじゃ!!」

夏翔麗愛
「魔神って、何なんですか?」

博士
「知らん! 文献では世界を滅ぼしかねない存在とは語られておる」


そりゃ物騒な事ですね…とはいえ、このキングゴルーグがその魔神と戦ったって訳ですね。


夏翔麗愛
「ちなみに、動くんですか?」

博士
「…いや、少なくともワシには無理じゃった」
「言い伝えでは強力な超能力で動かしていたとも言われているのじゃが…」


フーディンの博士で無理となると、私では到底無理そうですね…
とはいえ、こういうのは気合いと熱血があれば案外動く物ですよ!


夏翔麗愛
「博士、コックピットを開けてください! 私がやります!!」

博士
「構わんが、無理じゃと思うぞ?」


博士はそう言ってゴルーグの後頭部に私ごとテレポートし、そこにあるスイッチを押して、コックピットを開く。
私はそれに乗り込み、シートに座った。


夏翔麗愛
「おおっ! まさにスーパーロボット!!」

博士
「センサーに両手を乗せろ、後は超能力で動けと命じれば自在に動く…はずじゃ!」


私は試しに全力で超能力を練って球体型のセンサーに注ぎ込む。
センサーは軽く光るも、動く様子は全く無かった。
私はめげずに気合いを込める。
ですけど、やっぱり動く気配はありませんでした…


博士
「ほらな? 無理じゃろ? お前さんのレベルじゃまだな…」

夏翔麗愛
「むぅ…これでも伝説のポケモンですのに!」

博士
「まぁ諦めろ…コイツには意志があるとも言われておるし、動く時は自分で決めているのかもしれん」

夏翔麗愛
「くっ、それもロマンの成せる設定ですか!」
「仕方ありませんね…今回は諦め……」


私は言いかけて動きを止める。
私は感じた、何処かにお父さんがいると。
そして、私はすぐに博士に頼んで外にテレポートしてもらう。
私は鬼気迫る表情で空を飛び、グルリと小さな世界を見渡してお父さんの位置を探る。
間違いない、この感情の揺れは聖お父さんだ!!
きっと、私の事を迎えに来てくれたんだ!!

私は狂喜乱舞し、すぐにお父さんのいる場所に向かって飛んで行った。
4ヶ月は長かった…でも、信じていたから耐えられた!
お父さん、今すぐに会いに行くね?

しかし、この時私は知らなかった…
お父さんが既にいくつもの修羅場を越え、そしてそれはまだ続くのだと…
そして、私は後に知る…この世界の悪意は、あまりにも大きすぎたのだと。



………………………




「タコ焼きください」

店主
「毎度〜」


とりあえず俺は公園でタコ焼きを買っていた。
金は前に李さんから貰ってたのを使ったが、どうやらあれは共通通貨だったらしい。
という事は、今までの世界はそれなりに繋がりがあるって事なんだろうか?
時代を超えて来たって事は、これまでの流れは歴史を追っていたりしたのかもしれないな…



(そうだとしたら、マリスやセヴァさんの一族は今も血が残っているのだろうか?)
(西部の一件は、歴史書に乗ってたりするのだろうか?)
(清山拳は今も受け継がれている? 北辰さんは偉人扱いされてたり…?)
(そして、最強を求める闘士も後を絶たないのだろうか…?)


俺はこれまでの長い旅を思い返していた。
辛くも苦しい旅を家族と共に過ごし、そしてそんな世界で俺たちは絆を育んだ。
一体、何が目的でここまでの事をやらせたんだろう?
そしてフーパは…?



「とっつげきーーーーー!!」


「はっ!? 殺気!?」


俺は瞬間的に体を捻り、その場から離れる。
すると、俺の体を掠めて何か巨大な物体が地面へと激突した。
ビターーーーン!!と地面にぶつかったソレはどうやら人間… じゃなくてポケモンの様で、もくもくと砂煙をあげてゆらりと立ち上がった。


俺は数歩退がり砂煙からタコ焼きを守る。
そして、収まった頃に俺はタコ焼きを食べ始めた。
うむ、美味いな…これは良いソース使ってるぞ。



「ふ…やるのです、流石はお父さん!」
「本来なら受け止めてくれる所を、あえて回避するとは!」


頭を抱えながらもそう語る赤髪の少女。
少し背が伸びただろうか? 以前に比べると少し大きくなった様にも見える。
服は黒のパーカーに藍色のジーンズと露出は抑え目。
だけど、その姿はちゃんと俺の記憶にある娘の姿だった。



「人前でお父さんは禁止!!」

夏翔麗愛
「うぐっ!? まず、最初がそれなのです!?」


夏翔麗愛ちゃんはオーバーにリアクションして狼狽える。
そして、体に付いた砂や土を念力で払い落とす。
俺は黙々とタコ焼きを食べ、食い終わると舟を近くのゴミ箱に捨てた。



「夏翔麗愛ちゃんもタコ焼き食うか? 結構美味いぞ♪」

夏翔麗愛
「遠慮するのです…作り過ぎて見飽きてますので!」


ん? 作り過ぎって…何で?
っていうか、夏翔麗愛ちゃんももう4ヶ月はここにいるんだとしたら、それなりに逞しく生きていたって事かな?


夏翔麗愛
「とりあえず、今度こそ突撃ーーー!!」


「甘いわぁ!!」


俺は夏翔麗愛ちゃんの捨て身タックルを回避し、身を翻す。
だが夏翔麗愛ちゃんは空中で軌道を変え俺の体にしがみついた。
やれやれ…捕まってしまったか。



「少しは成長したみたいだけど、まだまだ甘え癖は直らないか?」

夏翔麗愛
「違うのです! 成分が足りないのです!!」
「もう4ヶ月会ってないのです! 寂しかったのです! 悲しかったのです!!」
「早く…早くお母さんに、会いたいです……」


これでも夏翔麗愛ちゃんは10歳の子供だ。
例え伝説のポケモンと呼ばれていても、その事実は変わらない。
…まぁ、実際には精神年齢20歳のはずなんだけど。



「…もう大丈夫、とはとても言えないけど」
「それでも、良かった…見つかって」

夏翔麗愛
「…この世界は寂しいです、あまり好きにはなれない」


夏翔麗愛ちゃんは目を赤くして涙を拭く。
夏翔麗愛ちゃんは感受性が高過ぎるエスパーだからな…常に人々の感情が頭に流れてきているのか。
だとしたら、この世界は相当荒んでいるのかもしれない。
見た目的にはやや近未来的な世界観だが、一体何があるんだろうか?



「とにかく、この世界のボスを倒さない事には終わらない」

夏翔麗愛
「ボス…?」


「ああ、いるはずなんだ…そいつを見付けて倒せば、この世界はクリアとなる」


夏翔麗愛ちゃんは何かを考えている様だった。
何か思い当たる節でもあるんだろうか?


夏翔麗愛
「…魔神」


「えっ?」

夏翔麗愛
「ううん、まさか…ね」


夏翔麗愛ちゃんは自問自答していた。
一体、何を知っているんだろうか?
ボソリと何か呟いていたけど…


夏翔麗愛
「とりあえず身近な人に聞いてみるのです!」
「五郎さん、魔神とかって聞いた事あります?」

五郎
「んなモン俺が知るか…それより、そいつが親父さんか?」


夏翔麗愛ちゃんはタコ焼き屋の店主に話しかけていた。
どうやら知り合いの様で、何やら色々と話しているみたいだった。
俺はとりあえず近付いて話に加わる事にする。



「さっきはどうも、夏翔麗愛ちゃんの知り合いなんですか?」

五郎
「まぁな…随分若く見えるが、こんな子供こしらえるたぁ、ヤリ手じゃねぇか」


どうやら盛大に勘違いされているらしい。
夏翔麗愛ちゃんは口笛を吹きながらそっぽを向いている。
確信犯だなコノヤロウ! だからあれ程他人に吹き込むなと…



「とりあえず、違うんで! 俺は夏翔麗愛ちゃんの兄みたいなモンです」

五郎
「…まぁ、そんな事だろうとは思った」
「別に良いさ、俺にはさほど関係ねぇし」


五郎さんはダルそうにタコ焼きを焼いている。
何かぶっきらぼうな人だな…悪い人じゃ無さそうだけど。
夏翔麗愛ちゃんはやや不満そうな顔で五郎さんにこう言う。


夏翔麗愛
「とりあえず、感謝するのです」

五郎
「…もう行くのか?」

夏翔麗愛
「はい、ボスが見付かったので、この世界からはオサラバベイベーなのです♪」


五郎さんは特に感情は出さずに、そうか…とだけ答えた。
夏翔麗愛ちゃんもそれ以上は追求せず、とりあえずその場を後にする。
俺は夏翔麗愛ちゃんの後を追った。



………………………




「どこに向かうんだ?」

夏翔麗愛
「とりあえず博士に会うですよ、フーディンの」


フーディンね…成る程、頭良さそうなイメージだな。
さて、今回はどんなボスが待っているのか…
俺は色々イメージしながらも歩いた先にある研究所らしき建物を見た。
とはいえ、見た目はフツーの貸ビルみたいな建物で、2階建ての小さな物だ。
な、何かイメージしてた研究所とは違うな…


夏翔麗愛
「言いたい事は解るけど、あえてツッコマないのが大人の対応なのです!」


「うむ、過度に期待するのはいかんな! こんなんでもきっと凄い仕掛けがあるんだろう!!」


俺はそんな風に好意的解釈をしつつ、研究所の中に入って行った。
すると、入ってすぐに立派な髭の爺さんが現れた。
どうやら、この人が博士みたいだな…白衣着てるし。


博士
「んむ? 夏翔麗愛、彼は?」

夏翔麗愛
「私のボスなのです! 聖って言うのです!!」


「どうも、夏翔麗愛ちゃんから聞いて話を聞きに来ました」


俺がそう言うと、博士はふむ…と顎に手を当て、何かを考える。
夏翔麗愛ちゃんは特に構わず、さくさくと話を進めた。


夏翔麗愛
「博士、魔神以外にこの世界で何か大きなボスっぽいのはいるの?」

博士
「ボスっぽいの…とはのぅ〜」
「強いて言うなら、エス研の所長辺りかの? ワシ的にはラスボスでも構わん!」


それはかなり私的な恨みがありそうだ。
夏翔麗愛ちゃんも蔑む様な目で博士を見ている。
うん、何となく解るよ…


博士
「まぁ聞け、ここ最近エス研はやけにキナ臭い研究をしてると聞く」
「どうも腐外道を使って何かをしているようじゃの〜」

夏翔麗愛
「…予想外に本格的な情報なのです」


「ああ、RPG的にはイベント発生って感じだな」


少なくとも、組織的な単語も出て来たし、悪くは無さそうだ。
とはいえ、研究所や組織と戦うには流石に夏翔麗愛ちゃんひとりでは…


夏翔麗愛
「ボス、今…私をディスりましたね?」
「この夏翔麗愛! 仮にもエムリットなのです!!」
「お母さんには及ばないけど、それでもそんじょそこらのポケモンに遅れを取る程弱くもないのです!!」


夏翔麗愛ちゃんはまるで仮面ライダーの変身ポーズみたいなのを取ってアピールする。
うーむ、自信は満々だけど大丈夫なのかね?
夏翔麗愛ちゃんのバトルなんて見た事無いし、どうにも非戦闘員のイメージが…


夏翔麗愛
「博士、研究所吹っ飛ばしても良いですか? ボスが信用してなさそうなので…」

博士
「止めてぇ!? せめてエス研にしてぇ!!」


ヒデェ…そんなにエス研が嫌いなのか。
っていうか、博士の怯え様からしてマジっぽいな…流石は仮にも伝説のポケモンか。



「よし、ならば夏翔麗愛に命ずる!! エス研へ潜入だ!!」

夏翔麗愛
「ラジャッ!」

博士
「本気でやる気なのか? なら、これを持って行け」


ビシッと敬礼する夏翔麗愛ちゃんに博士が何か球体を投げ渡した。
掌で隠れる位の水晶玉みたいな物だ。


夏翔麗愛
「何ですかこれ? 新手の核爆弾ですか?」

博士
「そんなモンがあったらとっととぶっ放しとる!」
「そいつは不思議玉じゃよ、爆睡玉じゃ」
「使えば一般的な建物で、一フロア分は纏めて眠らせる事が出来る」
「ただ近すぎると効果が無いから気を付けろ?」
「逆に言えば近くにいれば味方は眠らん」


「成る程、使う時は近くにいれば良いわけだ」

夏翔麗愛
「効果時間は?」

博士
「ポケモンの特性にも寄るが、1分〜5分位じゃ」
「確実に安全なのは1分と思えば良い」


思ったより短いな…とはいえ囲まれてもこれなら緊急回避になる。
夏翔麗愛ちゃんは浮遊も出来るし、その気になれば空から逃げればどうにでもなりそうだな。


夏翔麗愛
「とりあえず貰っておくのです!」
「で博士、エス研には何があるんですか?」

博士
「ん? 研究の事か? まぁ、何やらアンドロイドみたいな物を造ってるとか…」
「あくまで噂じゃが、腐外道にポケモンを拐わせてそいつを改造しとる…なんて噂も出とるの」
「まぁ、流石に腐外道とはいえ、そこまで倫理観を捨てはせんと思うんじゃが…」


確かにキナ臭いな…火の無い所に煙はたたない。
そういう噂があるって事は、行方不明者とかそういうのが多発してるのかも…



「…ここ最近、誰かが急にいなくなったりとかしてませんか?」

博士
「ふーむ、そうじゃの…表立っては報道されとらんが」
「この前の老人会で、知り合いがひとりいなくなってたの…」
「まぁ、あいつも年じゃし、ポックリ逝った可能性もあるがの!」

夏翔麗愛
「…ボス?」


「ああ、他にも似た様な事例があるかもしれないな…」
「とりあえず、エス研とやらに行ってみるか!」


俺たちは頷き合い、歩いてエス研に向かう。
北に向かえばその内着くそうだが…



………………………




「…何て言うか、本当に近未来って感じだな」

夏翔麗愛
「うーん、でもそんなに技術水準が上がってる様には感じないんだけど…」


確かに、車はフツーだし街並みはややきらびやかって程度だが。
しかし、現代編からの変化を見ると明らかに違いが有る気がした。
少なくとも、科学技術とか機械工学とかはこっちの方が大分凄そうだ。
見た感じエスパータイプが多いみたいだし、この世界はそういう水準の時代なのかも。


夏翔麗愛
「…腐外道」


「ん? あれか…」


夏翔麗愛ちゃんが立ち止まってとある数人の暴走族を見る。
どうやら、腐外道ってのは暴走族らしい…ズルッグやズルズキン、他にはベトベターやドガースみたいなのもいるな。
典型的なヤンキーだが、バイクは近代的でツッパリ系じゃない。
こういう所は実に近未来的だな…


夏翔麗愛
「ちょっと直接聞いてみるのです」


「って、4人相手だけど大丈夫か? 話し合いって訳じゃないんだろ!?」

夏翔麗愛
「軽く捻ればあの手の悪党は吐きますよ、まぁボスは巻き込まれない程度に距離取ってください」


そう言って夏翔麗愛ちゃんは怯える事無く、腐外道に近付いて行く。
な、何か夏翔麗愛ちゃんのイメージが変わるな…こんなに落ち着いてる娘だったっけ?
まぁ、精神年齢は俺より上なんだし、普段の夏翔麗愛ちゃんはワザとそう振る舞っていたのかもしれないが。


夏翔麗愛
「おいそこのブタ共、テメー等に聞きたい事があるのです…」


「夏翔麗愛さん!? 初っぱなから喧嘩売ってるじゃないですか!?」


夏翔麗愛ちゃんは恐れを知らぬ態度で堂々と言い放つ。
その際に指をポキポキと鳴らし、ハナからヤル気満々だ…ってどこの世紀末救世主だよ!!
当然、見た目小学生の幼女にそんな事を言われても悪党共は怯まない。
むしろ厳ついメンチを切ってズルズキンの男が夏翔麗愛ちゃんに顔を近付けた。


ズルズキン
「何だ嬢ちゃん!? 随分口が悪いが、ちょっと親の躾がなってないんじゃねぇの!?」

夏翔麗愛
「…親は関係ねぇだろ、なのです!!」


ボグシャッ!と鈍い音が響く。
夏翔麗愛ちゃんは、目の前に顔を近付けていたズルズキンの脳天に容赦無く右拳を振り落とす。
その際に手が淡い光を放ってたけど、何の技だったんだろ?
とりあえず、ズルズキンは一発でアスファルトにめり込み、血を吹き出して気絶していた。
ってか強ぇ!? 流石はエムリット!!


ドガース
「な、こ、このガキ!!」

夏翔麗愛
「臭い息を吐くのは、その位にしろです!!」


ドギャッ!!っと今度は右手を開いてドガースに向ける。
瞬間、空間が捻れてドガースは吹き飛んだ。
今のは『サイコキネシス』だな…三海に比べれば流石に弱いが、それでもザコは一撃だな…


夏翔麗愛
「次に死にたい奴は前に出るのですよ…」

ベトベター
「ひええ!! 勘弁してください!!」

ズルッグ
「何でも聞いてください!!」


ご覧の通り、あっさりと悪党は屈服した。
夏翔麗愛ちゃんを本気で怒らせるのは止めよう…ああはなりたくない。
俺は夏翔麗愛ちゃんの評価を改めておく…夏翔麗愛ちゃんは、強い!
流石は伝説のポケモンだな…ってか、これまでの面子に比べて今回は楽すぎないか?
今までは少なからず成長しながら攻略してきた感じだったのに、今回はいきなりレベルがぶっ飛んでる感じだ。
…それとも、この上で対策が待ってるのか?


夏翔麗愛
「エス研から何を依頼されてるんです?」
「誘拐とか、まさかそんな悪どい事やってるんじゃ無いですよね?」

ベトベター
「め、滅相も無い!!」

ズルッグ
「俺たちゃしがない暴走族ですぜ!?」

夏翔麗愛
「…嘘は吐いてない」


夏翔麗愛ちゃんは少し苦い顔をした。
夏翔麗愛ちゃんは感情の神、感情の流れを読み取る事で嘘はすぐにバレるからな。
逆に言えば、嘘じゃないと解るとここでの聞き込みは意味を為さないとも言えるが…


夏翔麗愛
「…エス研とはどんな関係?」

ベトベター
「俺たちゃよく知らねぇ、でもヘッドが何か研究員と話してたのは見た事有る!」

ズルッグ
「そもそも、腐外道は規模最大のグループだ、数100人から成る隊員の中でヘッドの動きを把握してる奴は限られてる…」


「そんなにいるのか…だとしたら確かに端の下っ端に聞いても仕方ない部分はあるな」

夏翔麗愛
「…分かりました、もう良いですよ」
「これからはあんまり人に迷惑かけるなですよ?」

ベトベター
「は、はい〜!!」

ズルッグ
「これからは心を入れ換えます!!」


そう言ってふたりは倒れているふたりを背負ってバイクで去って行った。
やれやれ、そんなに情報としては旨味は無かったかな?


夏翔麗愛
「…気になるのです、エス研は一体何を求めているのです?」


「エス研って、そもそもなんの研究所なんだ?」

夏翔麗愛
「エスパー能力開発研究所…略してエス研」
「そこでは数々のエスパータイプを研究し、またエスパーの素養が無い者でもエスパータイプとなれるのかを研究する施設」
「一般的には、オカルト集団とも言われ、大きな研究所ではありますが世間的には金食い虫とも言われてるはぐれ集団ですよ」
「博士は元そこの研究者だったらしいですけど、嫌気が差して出て行ったそうです」


成る程、キナ臭いにも程があるな。
超能力の開発か…



「○インドシーカーは良ゲーですか?」

夏翔麗愛
「歴史上に名を残す屈指のクソゲーなのです!!」
「その内容はもはやゲームですらない、運ゲー!!」
「恐らく後にも先にもこれ程のクソゲーは2度と出ないと思われる恐ろしい代物なのです!!」


夏翔麗愛ちゃんはワナワナと震え評価してくれる。
うん…あれやっぱダメだよね。
とはいえ、この世界には本当に超能力者がいる。
エスパータイプは存在するのだから…


夏翔麗愛
「とにかく、行くしか無いです」


「エス研だな…そこに何かの秘密があるはずだ!!」


俺たちはそう思い、エス研を目指す。
一体何があるのかは解らないが、俺たちは何かあると予想してる。
この世界はゲーム的に作られているはずだ。
だったら、俺たちが向かう事はいわばイベント進行。
だとしたら、間違いなく何かがあるはず…



………………………




「ここが、エス研か」

夏翔麗愛
「表向きはフツーの研究所です、入るだけならタダですよ」


そう言って夏翔麗愛ちゃんは正面から堂々と入場する。
俺は後を付いて行き、研究所の中に入って行った。
中はそれなりに大きく、綺麗に作られている。
清潔そうな白の壁で中は覆われており、まるで病院の様に静かだった。


受付嬢
「ようこそ、エス研へ! 今日は何の御用でしょうか?」

夏翔麗愛
「とりあえず見学させてほしいのです、ふたり構いませんか?」

受付嬢
「畏まりました、それではこの見学証をどうぞ!」
「それを職員に見せれば、中の研究施設を見学する事が出来ます!」


受付嬢からふたつの見学証を貰い、俺たちはそれを身に付ける。
ブレスレットになっており、簡易なゴムの輪で腕に巻くだけの物だった。
夏翔麗愛ちゃんはそれを付けて奥に入って行く。
俺はそれに付いて行って中の施設を見る事にした。



………………………




「…成る程、エスパー開発ね」

夏翔麗愛
「主にエスパータイプ以外のポケモンに、エスパー能力を開花させるのを目的にしてるの」
「例え素養が無くても、ここで訓練すれば身に付けられる…そんな夢の様な施設…」


確かに夢の様だな…だが、それは現実を突き付けられるとも言える。
素養が無い者は無いのだ…そもそもエスパータイプというのはそういう物なのだから。


夏翔麗愛
「…ここは悪意に満ちている」
「憎しみの連鎖…どこかに現況がある!」


夏翔麗愛ちゃんはいつになく真剣だった。
まるで、ここにある何かを敵として認識している様に、夏翔麗愛ちゃんには何か感情の流れを感じ取っているみたいだ。
それは、とても悲しい何かに思えた。
夏翔麗愛ちゃんの顔はそう語っている。
そして、それを救いたいのだとも…
俺は、そんな夏翔麗愛ちゃんの背中をそっと押してあげた。
すると、夏翔麗愛ちゃんは驚いた様に振り返る。
その表情は不安そうだったが、それでも俺は笑ってやった。



「大丈夫、夏翔麗愛ちゃんの心は俺が守るよ」

夏翔麗愛
「…お父さん、ううん…ボス!」
「私、頑張る! きっと、家族の為にやってみせる!!」
「だから、信じてね♪ 夏翔麗愛は親孝行者になるのです!!」


俺たちは微笑みあって先を見る。
どこかに、鍵みたいな何かがあるはず。
そして、そこから俺たちは先に進むんだ…この世界の、悪意と戦う為に!



………………………




「…しかし、この能力開発って本当に効果あるのか?」

夏翔麗愛
「まぁ、9割無いって言って良いと思うのです」
「そもそも、エスパータイプの技ではなく、エスパータイプその物になる開発だなんて馬鹿げてますからね」


俺たちはテキトーに研究所の開発環境を見学してそう話す。
よくあるSF的な開発とかじゃなく、ただ話を聞いて念じたり祈ったり…はっきり言って胡散臭いとかそういうレベルじゃない。
むしろ宗教系の修行みたいに見える…こんなのに通う奴らも大概だが。


夏翔麗愛
「事実上、資金は信者から集めてると言って良いみたいですね」
「…私には悪意しか感じないですけど」


夏翔麗愛ちゃんはとにかく嫌そうな顔をする。
この内容だと、洗脳も疑われるな…やれやれ。
俺たちはとりあえず研究所の奥まで進み、そこのとある場所で立ち止まった。
そこは一見変哲の無い階段だが、地下に続いている様で一般人が許可無く入るのは禁止されている様だ。



「さて、露骨に怪しいが…?」

夏翔麗愛
「構わず進むですよ、どの道そのつもりでしたし」
「強行突破前提でここまで来てますので、問題は無いのです」


そう言って夏翔麗愛ちゃんは浮遊して階段を下りる。
俺はそれを追って行った…



………………………




「暗いな…やけに明かりが少なくないか?」

夏翔麗愛
「…それよりも、妙な感情が渦巻いてる」
「悪意や憎しみの中に、悲しみも混じってる…?」


俺たちは地下に到達すると、暗い廊下をただ進んでいた。
所々明かりが照らされているものの、中は暗く視界が極端に悪い。
そんな中、夏翔麗愛ちゃんは何かの感情を読み取っていた様だった。



「一体、この先には何があるんだ?」

夏翔麗愛
「…何か部屋がありますね、誰もいない様です」


夏翔麗愛ちゃんはそう断言し、暗くて見え難かった部屋のドアを横に見付ける。
夏翔麗愛ちゃんはそのドアを開けようとするが、ドアノブも無く開ける事は出来なかった。



「…センサーが付いてるな、何だこれ?」

夏翔麗愛
「指紋か網膜か知りませんけど、流石に厳重にセキュリティは組まれているって事ですね」


流石にどうしようもないな、ただそうなるとこの先もどうにもならな……


パキビキベキィ!


夏翔麗愛
「面倒なのですよ、破壊するに限ります」


「…まぁ、強行突破前提だしな」


俺は頭を抱えるも、ツッコミは入れなかった。
夏翔麗愛ちゃんの『念力』でねじ曲げられた扉は無惨に部屋の外に放り出されたのだ。
そして警報が即座に鳴る…てか、当たり前だわな。



「どうするんだ!? すぐに追っ手が来るぞ!?」

夏翔麗愛
「ボスは中を調べて、私はここで足止めするのです!」


そう言って夏翔麗愛ちゃんは俺を部屋の中に押し込んで背を向ける。
俺はすぐに頭を切り替えてスマホのライトを起動させ、中の状況を確認した。
どうやら研究室の様だが…何だ、これ?



(…何かの細胞、いや臓器にも見えるが)


俺が机の上を見ると、それはあった。
カプセルというか、フラスコというかそういうのに培養液っぽいのが入ってる。
そして、形容しがたい何かがそれに培養されている様だった。
俺はその机にあった資料に目を向ける。



(…実験成果、サイキックロイド第29号?)


どうやら、何かの研究成果報告書の様だった。
俺はその内容を上から順に読み進めて行く。


当29号は、今までの物に比べても概ね基準値以上の結果を記録。
念動レベルは3以上と、最低限の能力使用は可能。
精神汚染も見られず、命令にも忠実と完成度はかなり高い結果に。
ただし、動作中に何故か不可解な挙動有り。
まだ実験の余地は残されているでしょう。
今後の計画としては、弱点となりうる脊髄部の装甲補強を想定…



(な、何だこれは? サイキックロイドって、まさか人造人間みたいな?)


少なくともかなりヤバイ代物の様だ、俺はすぐにその紙をポケットにねじ込み、夏翔麗愛ちゃんの所に向かう。
すると、直後に爆発音。
何か火の手があがるが、夏翔麗愛ちゃんは涼しい顔で前を睨み付けていた。


夏翔麗愛
「その程度じゃ涼風にもなりませんね!」

追っ手A
「ぐべっ!?」


夏翔麗愛ちゃんは炎タイプっぽい相手を念力で吹っ飛ばす。
続けて3人が走って来るが、夏翔麗愛ちゃんは軽く拳を握り、浮遊して相手の顔面を的確に打ち抜いて行く。
全て一撃の元に相手は沈み、追っ手は全員倒れた様だ。
呆気ないな…いや夏翔麗愛ちゃんが強いと言うべきなのか?


夏翔麗愛
「…ボス、何かあった?」


「ああ、気になる資料を見付けた、もうここにはそれ以上の物は無さそうだ!」


俺がそう言うと、夏翔麗愛ちゃんは俺を『テレキネシス』で浮かせ、すぐにその場から浮遊して奥に進む。
こりゃ楽だ…三海もよくやってくれるが、やっぱエスパータイプって便利だよな〜


夏翔麗愛
「妙な感情はこの先で感じるのです! きっと、何かいるのです!!」


「もしかして、ボスか?」

夏翔麗愛
「そうかも…でも、どうなのか解らない」


夏翔麗愛ちゃんにしては、曖昧な言い方だな。
いつもだったら大抵は確信めいた言い方をするのに。
それとも、それだけ妙って事なのか?
とりあえず追っ手も無く、俺たちは最奥の部屋へと辿り着いた。
夏翔麗愛ちゃんはすぐにドアをねじ曲げ、中に入る。
その部屋は一際明るく、広い空間が広がっていた。



「誰だ貴様らは!?」

夏翔麗愛
「エス研の所長ですね? ちょっと聞きたい事があるのですよ…」


見ると、部屋は白い壁で覆いつくされている。
壁の上部には窓があり、まるでここは実験場の様にも感じた。
そして、白衣を来た紫の長髪をなびかせる目付きの悪い男がこちらを睨む。
な、何か気味の悪い目だな、細目で何か異質な視線を感じる。


夏翔麗愛
「『カラマネロ』の悪医禍(わるいか)所長、何を企んでるんです?」
「腐外道のヘッドと何か企んでいるみたいですけど、ここに渦巻いてる悪意と関係あるのですか?」


悪医禍
「ふん、奴らは運び屋に過ぎん!」
「我々はもはや雌伏の時は終わったのだ!!」
「遂に魔神を見付けた! そしてそれが目覚めれば、我々は世界を、いや歴史をも支配出来る!!」


悪医禍はそう言って高らかに笑う。
こいつは、狂気のマッドサイエンティストだな…
解りやすい悪党で良かったぜ…


夏翔麗愛
「…ある意味拍子抜けなのですよ、てっきりもっと小物っぽく嘘吐いてくれると思ったのに」


っていう事は、ホラは吹いてないって事だ。
あの野郎は本気で世界征服とか俗な事考えてやがるんだ!


悪医禍
「良い機会だ! 貴様らを我が実験体のデータ収集に使わせてもらおう!!」
「出て来い! サイキックロイド29号!!」


ゴゴゴゴゴゴゴッ!!



「サイキック…ロイド!?」

夏翔麗愛
「…何なのです、それ?」

悪医禍
「ふははははっ! 見るが良いこの造型美を!!」
「エスパー能力の才が無い者でも、この開発計画によって誰もがエスパーになれる!!」
「そしてこの29号は今までの中でも傑作! さぁ、精々逃げ回るが良い!!」


29号
「シュコーーーー!!」

夏翔麗愛
「ターミネーターなのです!?」


「しかも人間に擬態してない奴な!!」


見た目はまさにそんなの。
全身を機械のパワードスーツで固めている感じだが、想像以上にデカイ!
3mは軽く越えてやがる! 横にも相当太く、腕の太さは人間の倍位はありそうだ。
頭はバケツ頭みたいになっており、目元だけが長方形にへこんでいる。
そしてそれは赤く光り、こちらを見て何かを考えている様だった。


悪医禍
「さぁ、やれ29号! 力を見せてもらうぞ!?」

29号
「シュー!」


29号は黒光りするボディを傾け、その場から高速移動して来る。
かなりのスピードで、下手な車並みの速度だ!
俺はその場から一旦離れ、夏翔麗愛ちゃんに任せる事にする。
頼むぞ…無理はするなよ!?


夏翔麗愛
「…!!」


夏翔麗愛ちゃんは挨拶代わりとばかりに念力で攻撃する。
だが、29号の体は何か膜の様な物に包まれ、念力は弾かれてしまった。



「バリヤーかっ!?」

夏翔麗愛
「ちょこざいな! なのです!!」


夏翔麗愛ちゃんはすぐに上昇し、29号の突進を回避する。
29号はそのまま壁まで直進し、そして壁に激突する…はずが。



「壁を走った!?」

夏翔麗愛
「コンチクショウ! ミニ○駆みたいな!!」


29号は壁に沿って夏翔麗愛ちゃんよりも高く走る。
よく見たら壁は円形になっている様で、この空間は球状になっているのを理解した。
初めから、アイツはこの空間を自由自在に走れるんだ!!


悪医禍
「ふははっ! 29号の速度は時速300kmまで加速する!」
「いつまでも逃げ切れんぞ!?」

夏翔麗愛
「○イクマンみたいな動きしやがってですぅ!!」


「大丈夫だ夏翔麗愛ちゃん! 奴に○ーターマンは装備されていない!!」


俺はそんなネタを返しつつ、夏翔麗愛ちゃんの戦いを見守った。
相手はとりあえず接近戦が得意みたいだが、遠距離技が効かないとなると厄介だぞ?


29号
「シュー!!」

夏翔麗愛
「このぉ!!」


夏翔麗愛ちゃんは、拳を握り炎を纏わせる。
とりあえず鋼タイプと予想しての炎技か! 夏翔麗愛ちゃんは見た目以上にパワーがあるが、果たして通用するか!?


ガコォッ!


夏翔麗愛
「! 硬いのですぅ!!」

29号
「シュー!!」


29号は顔面に拳を貰うも、まるで怯まない。
そしてすぐに夏翔麗愛ちゃんに右腕をぶん回して体を薙いだ。
小さな体の夏翔麗愛ちゃんは、地上に向かって叩き落とされる。
だが、夏翔麗愛ちゃんは床スレスレで止まり、難を逃れた。
ふぅ…危ねぇ! アイツ、かなり強いぞ!?


悪医禍
「ふはははっ! 29号の装甲はバリヤーで覆われている!」
「例え戦車砲でも傷ひとつ着ける事は出来ん!!」
「加えて、最高馬力は5万!! その気になれば大の大人でも一瞬で挽き肉に出来るぞ!?」

夏翔麗愛
「っ! そんな○龍型軽巡洋艦以下の馬力で、この夏翔麗愛は落とせんのであります!!」


夏翔麗愛ちゃんはそう叫び、全力でサイコキネシスを練る。
空間はねじ切られながら29号へとその衝撃波は向かい、29号はバリヤーを張ってそれを防ぐ。
壁すらもめくり上げる程の衝撃だったが、29号はやはり無傷だった。
ちなみに○龍型の馬力は約51000馬力な…まぁどっちもどっちよ。



「だが、パワーが違いすぎるぞ!?」

夏翔麗愛
「機体をズタズタにしてくれるのです!!」


夏翔麗愛ちゃんは何とかしようと動き回りながら超能力を放つも、全てが止められてしまっている。
しかも、ハイパーアーマー持ちの様に怯む事無く動き回って加速して来る。
これじゃ、対処のしようが限られる!!
何か、何か弱点は…!?



(…!? 弱点…?)


俺はふと、あの時の資料を思い出す。
確か、あの資料には…?


『弱点部となりうる、脊髄部の装甲…』



「! 夏翔麗愛ちゃん!! 奴のうなじを狙え!!」

悪医禍
「!? な、何故その事を!?」

夏翔麗愛
「心臓を捧げよ!! なのです!!」


夏翔麗愛ちゃんは急ブレーキして反転する。
29号は反応して拳を振るうが、夏翔麗愛ちゃんは直前で身を捻り、その拳を頬に掠めて回避する。
そして頬から血を流すも、夏翔麗愛ちゃんは獲物を見定める目で29号の背後に抜け、そこから更に反転して炎の拳を握った。
そして狙うは29号のうなじ…つまりは、脊髄部!!
夏翔麗愛ちゃんは正確に29号のうなじを打ち抜き、そこから炎を流し込む。
すると、29号のうなじは即爆発。
夏翔麗愛ちゃんは爆風で吹き飛ばされ、天井に叩き付けられてしまった。
だが、29号は爆炎をあげて地上に落ちる。
そのまま大爆発し、俺と悪医禍は吹き飛んでしまった。


夏翔麗愛
「あ、ぐ…っ!」


「間に合えぇ!!」


俺は上空から落ちて来る夏翔麗愛ちゃんを受け止める。
だが、衝撃でかなり痛い! 子供の体とはいえ、あの高さから落ちて来れば鉄アレイ以上の重さを受け止めるのと同義なのだ。
俺は床に倒れながらも、痛みに耐えて夏翔麗愛ちゃんの体を確認する。
良かった…何ともない。


夏翔麗愛
「ボ、ボス…?」


「だ、大丈夫だ…これでも日頃から鍛えてはいるからな!」


とはいえかなり痛いのは確かだ。
こりゃ、しばらく腕は上がりそうにない。


悪医禍
「く、くそ…!! このまま終わってたまるか!!」


悪医禍は隠し扉を開いてそこから脱出していた。
くそ、ここで逃がす事になるなんて!!


夏翔麗愛
「嘘…何で?」


「どうしたんだ夏翔麗愛ちゃん!?」


夏翔麗愛ちゃんは29号の残骸を見て顔を青くしていた。
そして静かに涙を流し、震えている。
俺には意味が解らなかったが、夏翔麗愛ちゃんは何かを感じ取ったのか?


夏翔麗愛
「そんなのって……こんな、こんなクソみたいな展開、許せるわけ無いじゃないですかぁ!!」


夏翔麗愛ちゃんはひとり怒りを露に叫んでいた。
その意味は俺には何も解らない。
だが、このままではマズイのは理解していた。
警報が鳴り響き、赤い警告ランプが点灯している。
このままじゃ、すぐに捕まる…!



「くっそ! 夏翔麗愛ちゃん、逃げるぞ!?」

夏翔麗愛
「…くっ! チックショウ!! なのですぅ!!」


夏翔麗愛ちゃんは俺を浮かせてその場から移動する。
そして、隠し扉を破壊してすぐにそこから離れた。
だが、目の前には大勢の警備員。
今の夏翔麗愛ちゃんひとりで戦うのは…!


夏翔麗愛
「これでも食らえなのです!!」


夏翔麗愛ちゃんは爆睡玉を取り出し発動させる。
不思議玉は光輝き、すぐに砕け散った。
そして、その瞬間白い煙が周りを覆い、全ての警備員を眠らせた。



「おおっ、スゲェな不思議玉!!」

夏翔麗愛
「この先は地上なのです!」


俺たちは光る出口に向かって飛び出す。
だが、その先に待ち受けていたのは…



「なっ!?」


「おいおい、悪医禍が青い顔で逃げたと思えば、ガキかよ!」
「まぁ、良い…これも仕事だからな!!」
「テメェ等! 腐外道の恐ろしさを教えてやれ!!」


俺たちを待ち受けていたのは、黒いジャケットに身を包んだ暴走族集団だった。
だが、その数がヤバイ! 見ただけでも100人はいやがる!!
数えるのも鬱陶しい位の連中は手に凶器を持っており、とてもじゃないが今の夏翔麗愛ちゃんが捌ききれる数じゃない!
夏翔麗愛ちゃんもダメージは大きいんだ! 爆睡玉も無いのに、どうすりゃ良い!?


バルゥゥゥゥゥゥンッ!!



「な、何モンだ!?」


「寄って集って子供を襲うたぁ、見過ごせへんなぁ?」
「ええ? 腐外道のヘッドさんよぉ!?」

夏翔麗愛
「ご、五郎さん…」


そう、突然ハーレーに乗って颯爽と現れたのは、タコ焼き屋の店主である五郎さんだった。
五郎さんはバイクから降り、100人相手を見定める。
俺たちは五郎さんの背中に守られ、その頼もしさは尋常じゃなかった。
だけど…



「五郎さん、いくらなんでもこの数は無茶だ!!」

五郎
「昭和の男に、無茶なんて言葉は通用せぇへんで?」

夏翔麗愛
「それは逆算すると既に40代近いのがバレてしまうのです!!」


現実的には31年前がギリギリ昭和だからな…近未来の設定ならもっと上がるはずだから…うん、そうね!
とはいえ、五郎さんは不適に笑って拳を握る。
そして口に加えた竹の葉を噛み締め、構えた。
その姿はまさに漢! 腐外道の兵隊共はビビりまくっており、既に勝負は決しているかの様な雰囲気だった。


ヘッド
「人道 五郎(じんどう ごろう)…!? まさか、20年前の腐外道を率いていた、最強と伝えられる伝説の!?」

五郎
「懐かしい話やな…せやけど、今の俺はしがないタコ焼き屋や」
「そして、俺が作った腐外道は、子供を襲う様な外道やない!!」


五郎さんはこめかみに血管をビキビキと浮かび上がらせ、怒りを露にする。
の気迫に兵隊は後ずさる、ヘッドですらかなり怯えている様だった。
だが、ヘッドは唇を噛み締め、意を決した様にこう叫ぶ。


ヘッド
「テメェ等、ビビるな!! 所詮は過去の男だ!!」
「全員でフクロにしちまえ!!」


ワァァァァァァァッ!!と全員が鼓舞され突っ込んで来る。
五郎さんはニヤリと笑い、先頭から拳で薙ぎ倒した。



「!? ス、スゲェ…!! 一振りで数人が!!」

夏翔麗愛
「五郎さんはかなりのレベルですよ…今の私でも勝てる気はしません」
「あんな雑魚相手なら、お釣りが来ると思うのです…」


夏翔麗愛ちゃんの言葉は誇張でも何でも無かった。
五郎さんに群がる兵隊はまるで○国無双の雑魚の様に吹っ飛んでいき、みるみる内に数を減らしていく。
やがてヘッドは顔を青くして震え始める。
まるで悪夢だろうな…これが、五郎さんの実力か!


五郎
「どないした? 武器まで持っててこの程度か?」

ヘッド
「くっそがぁ! 化け物かテメェは!?」

五郎
「おら、どうした? 男なら武器なんて捨ててかかって来いや?」


五郎さんは涼しい顔で挑発する。
すると、ヘッドは顔を引きつらせながらも金属バットを捨てて五郎さんを睨んだ。


ヘッド
「クソがぁ!! テメェなんざ怖くねぇぞ!?」
「テメェなんざぶっ殺してやるぅぅぅ!!」


ヘッドは勇気を振り絞って立ち向かった…が、相手が悪すぎた。
五郎さんは軽くクロスカウンターでヘッドの顔面を拳で打ち抜き、ヘッドは後方に一回転してダウンする。
そしてそのまま立ち上がる事は無かった…残る兵隊も恐れおののき、退散する。
やれやれ…ただの消化イベントだったか。


五郎
「…お前ら、大丈夫か?」

夏翔麗愛
「…お陰さまで、なのです」


「ありがとうございます! おかげで助かりました!!」


俺は頭を下げて礼を言う。
五郎さんはぶっきらぼうに手を上げ、気にした様子は無かった。
しかし、これでもやっぱボスは出て来てないのか?
悪医禍はそれなりに怪しかったんだが、とっとと逃げた所を見るとアイツがボスとは思えない…か。


五郎
「…どないしたんや? 夏翔麗愛、えらい思い詰めとるみたいやな?」

夏翔麗愛
「…エス研の奴ら、本当にポケモンを拐って改造してやがったです!」


「…え!? 何で、そんな事解るんだ?」


夏翔麗愛ちゃんの台詞はあまりに唐突だった。
だが、考えてもみれば夏翔麗愛ちゃんは感情を何度も読み取っていた。
その元凶は、あの29号だったのか…?


五郎
「そいつは、聞き捨てならへんな…エス研の奴ら、怪しいとは思っとったが」

夏翔麗愛
「あの中で、サイキックロイドとかいうのと戦いました…」
「そいつ…友愛フレンズの子供の、お父さんだったのです」


五郎さんはそれを聞いて少なからずショックを受けた様だった。
俺には知らない単語が出て来たが、意味は解る。
あの29号は、誰かの…父親だったのか?
そして、それを夏翔麗愛ちゃんは…殺した。


五郎
「…夏翔麗愛、そいつは俺が殺した事にせぇ」

夏翔麗愛
「!? そんな事、出来るわけ…!!」

五郎
「アホゥ! お前みたいな子供が生意気言うな!!」
「ええか? これはお前の責任やが、そのケツ拭くのは大人の仕事や」
「せやから、この事は心に刻め! お前のせいで大人の俺が罪を背負うんやと…」


夏翔麗愛ちゃんは震えて拳を握り締めていた。
その拳からは血が滲み、俺はギョッとする。
だが、それだけ夏翔麗愛ちゃんは我慢しているのが解った。
認めているんだ…自分はまだ子供で、大人には見られていないと言うのが。
それでも、夏翔麗愛ちゃんは受け入れた。
五郎さんの気持ちも、きっと解っているから…



「夏翔麗愛ちゃん、その気持ちは悪医禍にぶつけてやれ」

五郎
「そうや、これからは俺も助けたる…エス研なんざ、ぶっ潰したるわ!!」


ふたりは互いに強く頷く。
このふたりは、互いを信じているんだな…
俺は自然とそう思えた。
夏翔麗愛ちゃんはこの4ヶ月五郎さんと一緒にいたみたいだけど、その絆は想像以上に強いのかもしれない。
俺は、少し嫉妬する。
本当なら、俺がそうなってやらなきゃならなかったのに…


五郎
「…とりあえず、友愛に戻るで」

夏翔麗愛
「解ったのです…ちゃんと、説明しないと」


「ちなみに友愛って?」

夏翔麗愛
「友愛フレンズ、孤児院ですよ…私がお世話になってる家でもあります」


成る程、そうだったのか…確かに、そこの子供の親が死んだとなると、夏翔麗愛ちゃんには辛いはずだよな…
とはいえ、夏翔麗愛ちゃんはその罪を受け止めている。
体は小さくとも、心は大人なのだ…だけど、世間はそれを知らない。
だから夏翔麗愛ちゃんは五郎さんの気持ちを受け取った。
そして、夏翔麗愛ちゃんはきっと強くなる…そんな五郎さんの背中を知っているのなら…

俺は、信じた…きっと、夏翔麗愛ちゃんはこの世界でもっと大きくなるのだと…



………………………




「バッシティ! バッシティ! バッシティバッ!」

夏翔麗愛
「てれてて〜れて〜れててれ〜て〜♪」

五郎
「何で○偵物語やねん…」


俺たちは五郎さんのハーレーに乗って友愛フレンズに向かっていた。
思わず気分的に名曲を口ずさんでしまったが、五郎さんにもネタの神はいたらしい…


五郎
「…とりあえず着いたで」

夏翔麗愛
「ご苦労なのです! さぁ、ボス…」


「うむ、苦しゅうないぞ」


俺は夏翔麗愛ちゃんに手を引かれて座席から降りる。
そして孤児院である、友愛フレンズの外観を眺めた。
そこはやや古臭さのある建物で、どっちかというと保育所みたいにも見えるな。
中には子供用の遊具も置いてあり、今は誰もいないが普段は誰かが遊んでいるのだろう…


五郎
「中に入るで?」

俺たちは五郎さんに付いて行って中に入る。
そして玄関に入るとひとりのケモミミ女性がエプロン姿で現れた。
あの特徴的な耳、イーブイか。


イーブイ
「あ、あら五郎さん! きょ、今日は何か?」

五郎
「ちょいと、な…少し、話させてくれ」


イーブイの女性は顔を赤らめ、少し戸惑っていた。
それを見て五郎さんはぶっきらぼうに言葉を放つ。
イーブイの女性は少し不安そうに俯いていた。



(なーんか、気になる関係)

夏翔麗愛
(バレバレなのですよ…とっとと告れば良いのです!)


俺たちはとりあえず女性に案内され、リビングの様な応接間に案内された。
そこにイーブイの女性は飲み物を出して座り、俺たちもテーブルを囲む様にソファーに座った。


五郎
「まず、伝える事がある…一の親父さんが見つかった」

イーブイ
「そ、それは本当ですか!?」


イーブイの女性は驚く。
あの驚き様だと、行方不明か何かにでもなってたみたいだな。
だが、それはもう…


五郎
「…エス研の実験室で改造されてやがった…ポケモンの面影が無い程にな」


イーブイの女性は顔を青くし震えだす。
何を想像したかは解らないが、概ね間違ってもいないだろうな。


五郎
「ソイツは明らかに戦闘用に改造されとった、俺たちはソイツに襲われたんや…」

イーブイ
「そ、それで一のお父さんは…?」

五郎
「俺が殺した…あのままやと、こっちもヤバかったんでな」
「悪いとは思ったが、こっちも命がけや…」


イーブイの女性は顔を押さえて更に震える。
どうすれば良いのかも解ってなさそうだな…
とはいえ、それも仕方ないのかもしれない。
一般人が理解出来る範疇じゃ無いのだろうから…



「あれ〜? 皆どうしたの〜?」

イーブイ
「い、一…」


一と呼ばれた女の子は赤い尻尾を振りながら?を浮かべていた。
今度はブースターか? しかし、小さい子だな…5〜6歳って所か?


夏翔麗愛
「…一、お姉ちゃんとあっちに行くのです」
「今、零お姉ちゃんと五郎さんは大事な話をしてますので…」


「そうなの?」


夏翔麗愛ちゃんは空気を読んで一ちゃんをその場から離れさせた。
この場には俺たち3人だけが残る。
っていうか、この人は零って名前なのか…覚えとこ。


五郎
「恨むんなら恨んでくれても構へん…」
「せやけど、仇は討ったる…悪医禍は俺がぶっ殺したる」
「一の親父さんだけやない、他にも犠牲者は出てるんや」


「その結果、誰かが死んでもですか?」


零さんが涙目で五郎さんに言うと、五郎さんは無言で立ち上がる。
そして零さんに背を向け、こう呟いた。


五郎
「…そうや、こんなクソッタレた計画は跡形も無く潰したる!」


五郎さんは漢の背中でそう語り、部屋から出て行く。
俺もとりあえずその後を追った。
零さんは泣き崩れてその場を動きそうになかった…何か、辛いな。



………………………



五郎
「とりあえず、まずは情報集めやな」


「そうですね、悪医禍がどこに潜伏しているかも解りませんし」
「魔神とかいうのも気になります…一体、そんな者がどこにいるのか?」

五郎
「神様ってなると、神社が定番やが…あんな神社には大して何も無いからな」


どうやらあまり期待出来る情報じゃなさそうだ。
とりあえず、博士を訪ねてみるしかないか…



「明日、フーディンの博士を訪ねましょう、それでまずは作戦会議です」

五郎
「ええやろ、ほな明朝にロボ研で待つわ」


「…ロボ研って言うんですか? あの研究所?」

五郎
「何や知らんかったんか? 超ロボット研究所…略してロボ研や」
「『桜咲 春生』(さくらざき はるお)博士が、エス研から独立して立ち上げた研究所やな…」
「エス研絡みの話なら、妥当な情報線や」


俺もとりあえずはそう思う。
悪医禍の事を敵視してたみたいだし、何か知ってると思うんだけど…


五郎
「とりあえず明日待ってるで?」


「はい、夏翔麗愛ちゃんにも伝えておきます」


五郎さんはバイクですぐに去って行く。
俺はそれを見送る。
そして、今日は友愛で世話になり、夏翔麗愛ちゃんと次の朝を待った…



………………………



夏翔麗愛
「おはようなのです!」

五郎
「おう、来たか…」


「博士は?」


五郎さんは親指を立てて中を指差す。
どうやら、トイレの様だな…なら待つか。


夏翔麗愛
「…本当に何か知ってるんですかね?」

五郎
「俺が知るか…聞いてみりゃ解る」


「まぁ、期待するとしましょう…」


やがて、トイレの水が流れる音と共に博士は現れる。
前に見た白衣姿で長い髭を弄くりながらあくびをしていた。


夏翔麗愛
「博士、社会の窓を閉めるのです! これでも乙女の前ですよ!?」

博士
「おお、すまんすまん…良い加減忘れっぽくなってな〜」
「して、今日は朝早くから何用じゃ? エス研は爆破したのか?」


「爆破はしてませんが、こんな物を見付けました…」


俺はそう言って例の資料を博士に見せる。
紙はクシャクシャになっていたが、博士はそれを元に戻して目を通す。
そして、すぐに顔をしかめた。


博士
「あの馬鹿者が、まだこんな計画を進めとったのか…」

五郎
「…って事は、もう何年も前から研究されてたって事か?」


博士は頷きはしなかったが、肯定している様にも見えた。
そして、その資料をクシャクシャに丸め、ポイッと近くのゴミ箱に捨ててしまった。


博士
「…魔神の封印を本当に解く気か」


「魔神って何なんですか? 少なくとも悪医禍はその力があれば歴史すら支配出来ると…」

博士
「所詮は言い伝えに過ぎん…と、言いたかったが、それではロマンが無い」
「やはり、キングゴルーグはこの時の為に眠っておったのか…」

五郎
「何だ、そのキングゴルーグってのは?」


「いかにもな名前ですね…」

夏翔麗愛
「悪の魔神を倒す為に造られたスーパーロボットなのです!」
「ですが、まだ誰も動かす事が出来ないのです…」


成る程、そりゃ熱い展開だ。
とはいえ、動かないのか…何か鍵とかあるんだろうか?



「っていうか、そんなのどこにあるんですか?」
「スーパーロボットって言うからにはそれなりのデカさだろうし…」

夏翔麗愛
「ここの地下に眠っているのです…50mはあるですよ」


そいつぁデケェ…Lサイズユニットかよ。
しかし、そうなるとやっぱ魔神ってのがボスっぽいな…
だが、それにはキングゴルーグを動かす必要が…か。


五郎
「…何で動かへんのかは解るんか?」

博士
「恐らくは、キングゴルーグの意志だろう」
「時が来れば、必ず動くとワシは信じておる!」


「やはり、魔神の顕現に呼応するって事か?」

五郎
「…それならしゃあない、とりあえず悪医禍の方を何とかせなな」
「博士、奴の潜伏しそうな場所は解るか?」


博士はふむ…と考え、数秒経ってからこう答える。


博士
「…光輪(こうりん)神社かの」


「神社…って、本当にそんなありきたりな場所に?」

夏翔麗愛
「安直過ぎる考えなのです…拍子抜けなのです」


五郎さんも無いと思ってただけにノーコメントだな。
しかし、博士が言うんだし、それなりの根拠があると思うけど…


博士
「あそこに壺があるのは知っとるな?」

五郎
「…ああ、バカでかい奴だろ? それがどうした?」

博士
「あれに魔神は封印されておる…と、言い伝えにはある」
「まぁ、流石にそれは無いじゃろう…と、ワシもそう思っておった口じゃ」
「じゃが、今は逆に不安じゃよ…あの馬鹿者が計画しておる事を考えるとな!」


博士はやや怒りとも取れる口調で言い放つ。
その言葉に俺たちは驚き、博士の次の言葉を待った。


博士
「…サイキックロイドの計画は、予備段階の実験に過ぎん」
「その真の目的は、エスパーを液体金属化させて壺に封入する事で、擬似的に神を造り出す計画じゃ」


「擬似的に、神を!?」

五郎
「大それた計画やな…だが、それ以上に」

夏翔麗愛
「エスパーを液体金属化って、まさかあのサイキックロイドみたいなのを大量に犠牲にするのですか!?」


博士は、いや…と首を横に振る。
どうやらサイキックロイドは関係無いらしい。
しかし、それはつまり言葉通りって…


博士
「恐らく実際に使用されるのは、この世界に存在する純エスパーのポケモンたちじゃろう」
「サイキックロイドはあくまでその神体を動かす為の実験に過ぎんはず」
「そして、既にそこまで完成しておるという事は、動かす準備はほぼ出来ている可能性が高い」


「何てこった…じゃあ、下手したらもう既に?」

夏翔麗愛
「急ぐのですよ! モタモタしてたら手遅れに…」

五郎
「待て、今更慌てた所でどうしようもあらへん…」
「博士の話を信じるなら、既に液体金属エスパーは出来上がってる可能性が高い」
「そして、それが光輪神社で行われるとしたら…もう間に合わへんかもしれん…」


五郎さんは冷静に状況を見ている様だった。
だが、俺たちは生憎子供だ。
だから俺は笑ってこう言ってやった。



「平成の男に、諦めるなんて台詞はありませんよ!?」

夏翔麗愛
「そうなのです! 例え、もう救えなくても…戦う事を止めたら未来は無いのです!!」


俺たちの言葉を聞き、博士はハッハッハ!と笑う。
五郎さんは軽く舌打ちし、そして不適に笑った。


五郎
「上等やガキ共! せやったら、昭和の大人は無茶を通さへんとな!!」

博士
「行ってこい夏翔麗愛! ワシはここでキングゴルーグの様子を見ておく」
「何かあれば、こいつで連絡しろ!」


そう言って博士は腕時計を夏翔麗愛ちゃんに投げ渡す。
夏翔麗愛ちゃんは?を浮かべるが、博士はこう説明する。


博士
「見た目は古臭いが、通信機じゃよ」
「右のボタンを押したら発信受信が出来る」
「ただ、使えるのはエスパータイプだけじゃ! あくまでそれはテレパシーの範囲を拡大させる意識拡張機能だからの」

夏翔麗愛
「何気に便利なのです…! 有りがたく使わせてもらうのです!」


夏翔麗愛ちゃんは腕時計を左手に巻き、すぐに研究所を出る。
そして、俺たちは光輪神社を目指す…のだが。


ダダダダダダダダッ!!



「な、何だこりゃ!?」

夏翔麗愛
「マシンガンなのですよ! まさか狙われてたんですか!?」

五郎
「ちっ、愛車がオシャカにされとる…ありゃ、私設軍隊やな」


五郎さんは相手の軍服を見てすぐに判断する。
敵は一般的な迷彩服に身を包み、小隊を組んでこちらと相対していた。
今は互いに障害物に隠れ、機を伺っている。
しかし、相手はタイプも解らない謎のポケモン隊だ。
武装してるって事は、自身の技にあまり自信が無いとも取れるが…?


夏翔麗愛
「とりあえず、あの程度なら5秒で蹴散らせるのです!」

五郎
「上等や…ほな行くで!?」


夏翔麗愛ちゃんたちは示し合わせて飛び出す。
夏翔麗愛ちゃんが先頭を飛び、五郎さんが後から追った。
すると、3人の兵士がマシンガンを掃射する。
だが、その弾丸は夏翔麗愛ちゃんの念力によって簡単に静止し、カランカランと音をたててアスファルトに落ちる。
そして、相手が驚いた瞬間には五郎さんが拳を振るっていた。


兵士たち
「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」

隊長
「くっ!? ここまでの力が!?」

夏翔麗愛
「雑魚は引っ込んでいるのですよ!!」


夏翔麗愛ちゃんは軽くサイコキネシスで隊長を倒す。
バキベキ!と骨を折られ、隊長は血を吹いて倒れた。
宣言通り5秒! こりゃスゲェや…まぁ、三海の時はもっと大多数の兵士と相手してたしな。
やっぱエスパーってのは戦略級だ…並の兵隊じゃ相手にならない。


夏翔麗愛
「ボス、急ぐのですよ!」

五郎
「バイクがやられた以上、走るしかねぇ!!」


「くっそ〜! こちとらフツーの人間だってのに!!」


俺は仕方なく走る。
そして、進む毎に小隊が現れ、夏翔麗愛ちゃんたちはそれらを撃破していく。
明らかに時間稼ぎをする為の布陣に見えた。
こいつら、初めから勝つつもりで来てない!?
だとしたら、思ったよりも切迫してるのか? 相手にとっても余裕は無いのかもしれない。



………………………



夏翔麗愛
「はぁ…はぁ…良い加減しつこいのです!」

五郎
「やれやれ…ハナからこっちの消耗が目的やろな」
「時間稼ぎも出来るし、一石二鳥か…」


あれから1時間、断続的に敵は現れ、倒しては進むを繰り返していた。
だが、想像以上に敵は狡猾だ…こっちの戦力が少ないのを理解している。
こちらが限られた戦力である以上、単純な数の暴力ほどキツい物は無い。
現に夏翔麗愛ちゃんと五郎さんは目に見えて消耗していた。
流石にこのままじゃ…!


キュラキュラキュラキュラッ!


俺たちは悪夢の音を聞いて冷や汗を垂らす。
ついに、奴らは本気を出し始めた…
たったふたりの戦力相手に、戦車隊を投入して来たのだ!


五郎
「…やってくれるやんけ」

夏翔麗愛
「マズイですよ? 流石に肉弾戦でアレを相手するのは…」


「昭和の漢でも無茶ですよ!」


だが、その言葉に火が点いたのか五郎さんは笑う。
そして、戦車相手に隠れる事無く、五郎さんは真っ正面から立ちはだかった。



「ちょっ!?」

夏翔麗愛
「無謀なのです! 流石に戦車砲を止めるだけの余力は私には無いですよ!?」

五郎
「黙っとけ…あんなモン、棺みたいなモンや!!」


戦車は砲身を五郎さんに向ける。
五郎さんは走り出し、真っ直ぐに戦車へと向かった。
そして戦車は砲撃を開始する。
凄まじい爆音と共に、砲弾が五郎さんを襲った。
五郎さんは、その砲弾相手に拳で挑む。


ドォォォォォォォォォンッ!!


当然大爆発…だが、五郎さんは少し怯んだだけで退がる事すらしなかった。
腕は一撃でボロボロ、それでも五郎さんは歯を食い縛って走り出す。


夏翔麗愛
「止めるのです五郎さん!! そのままじゃ、死んでしまいますよ!?」

五郎
「上等や!! 漢、人道 五郎!!」
「1度決めたら、絶対に退かん!!」


五郎さんはそのままボロボロになった右拳で戦車を殴る。
すると、戦車は見事に浮き上げられ、逆さまになって吹き飛んだ。
それは地上へと落ちて爆発。
燃え盛る炎の元、五郎さんはニヤリと笑う。
そして、次から次へと来る戦車に向かって五郎さんはただ走って拳を振るった。

俺たちは、その光景に何も出来なかった。
夏翔麗愛ちゃんはガタガタ震え、五郎さんの奮闘を見ている。
五郎さんは多数の戦車相手に怯みもせず、砲弾相手に拳1本で戦ったのだ。
そして数分が過ぎた後、場は静かになる。
五郎さんは堂々と血塗れで立っているが、自慢のジャケットはボロボロ、サングラスも吹き飛び、満身創痍。
ただ、それでも竹の葉だけは噛み締め、前に進んで行った。
もう戦車隊はいない、その場のは全滅だ。
だが、いつ増援が来るとも限らない、すぐに隠れないと!


ブゥゥゥゥゥゥゥンッ!!


その音は、聞いた事も無い音だった。
だが、すぐに背筋が凍る程の恐怖が全身を駆け巡る。
その瞬間、五郎さんはこちらに向けて全力で拳を振るった。


夏翔麗愛
「五ろ…!?」

「うわぁっ!?」


五郎さんの拳は強烈な風圧を巻き起こし、俺たちを後方へ吹き飛ばす。
そして、飛ばされながら見た目の前の光景は、あまりも悲惨な光景だった。


チュッ! ドォォォォォォォォォンッ!!!


大爆音。俺たちは更に爆風で吹き飛ばされる。
五郎さんはその爆風のど真ん中におり、もはや閃光で何も見えない。
俺はこの時点で空を見て理解した…狂ってやがる。



(爆撃機だと!? そこまで俺たちが憎いのかよ!!)


形状と大きさから言って、かなり高性能そうな爆撃機だ。
数発程の爆弾だが、俺たちは見事に焼き払われた。
地域の住民被害すら考慮してねぇ! 奴らは…本当の悪魔だ!!


夏翔麗愛
「あぐっ!? あああっ!? あああーーー!?」


突然、夏翔麗愛ちゃんが頭を抱えて悲鳴をあげる。
俺はすぐに理解して立ち上り、夏翔麗愛ちゃんに向かって走った。
夏翔麗愛ちゃんは、この一帯から放たれた負の感情を丸ごと受け止めてしまったんだ!
きっと、それは悲しみや恐怖、そして憎悪に満ちている負の感情!
感情の神たるエムリットは、それを全て引き寄せてしまったんだ!!



「しっかりしろ夏翔麗愛ちゃん!!」

夏翔麗愛
「ああぁっ!! ウアアアアアアァァァァッ!!」


俺は夏翔麗愛ちゃんの体を抱き締めるが、夏翔麗愛ちゃんは反発する様に念動力で拒否する。
ヤバい、完全に俺の言葉が目に入っていない!
俺はすぐに夢見の雫を取り出す! 四の五の言ってられるか!!
夏翔麗愛ちゃんに取り憑いた悪意は、俺が吸い出してやる!!



「夏翔麗愛ちゃんの体から、出て行けぇぇぇぇっ!!」


雫は淡く光り、夏翔麗愛ちゃんの体から黒く濁った悪意を全て吸収する。
そして雫は半分程濁り、透明度は目に見えて無くなった…
俺はゾッとする…これだけの悪意を、夏翔麗愛ちゃんはその身に受けたのか。

1発でこれだけの濁り、アルセウスさんですらそれなりに苦しむレベルのはず。
改めて、エムリットの業の深さが解るな…夏翔麗愛ちゃんは特に純粋過ぎるのかもしれないし。
だから、自分の力をコントロールしきれずに全部受け止めてしまった…
まだ、夏翔麗愛ちゃんはエムリットとしての力を扱いきれていないのかもしれないな…


夏翔麗愛
「あ…ぁ……」


「もう大丈夫だ…俺はここにいるぞ?」


夏翔麗愛ちゃんは呻き声をあげて俺に力強くしがみ付く。
その力はかなり強く、俺は体に痛みを覚えながらも、ちゃんと受け止めた。
夏翔麗愛ちゃんは震えている。
様々な負の感情を一気に受け止めて、どうすれば良いのか解らないんだ…
そして、大事な人をひとり…!



「…五郎さん」


俺は焼け野原になった瓦礫の山を見て呟く。
俺たちを助ける為に、五郎さんは犠牲になってしまった。
迷わず敵に挑み、そして大人として使命を全うした。
でも、どうすれば良い!?
こんな、悪魔の様な馬鹿げた戦術で戦う相手に、どうやって勝つ!?
戦車所か爆撃機まで使うそのバカさ加減…こんなものは闘争じゃない。
ただの…殲滅じゃないか……!?


夏翔麗愛
「お父さん…私、戦うから」


「夏翔麗愛ちゃん!?」

夏翔麗愛
「大丈夫…私が守るから、皆助けるから」
「だから、一緒に帰ろ? お母さんの所に…」


夏翔麗愛ちゃんは震えながら言葉を放つ。
そして、その言葉は弱々しくも決意に満ちていた。
夏翔麗愛ちゃんは絶望なんてしていない。
ただ、悲しんでいるんだ…こんなバカげた戦いで死んでしまった被害者の為に。

俺たちは無言で涙した。
そして決意を固める…諦める事は絶対にしないと。
その後、そんな決意を踏みにじる様に空を切る轟音。
俺たちはただ…空を横切るそれに向かって、睨み付ける事しか出来なかった…



………………………



博士
「な、何が起こっているんじゃ!?」
「どうしたキングゴルーグ!! ついに、お前が動く時が来た言うのか!?」

キングゴルーグ
「……!!」


ロボ研の地下深くに眠っていたキングゴルーグ。
今まで誰が動かそうと思っても動かず、沈黙を守り続けた守り神。
だが、人々の悪意、恐怖、憎悪が巻き上がるこの世界にて、キングゴルーグは…ついに目覚めの時を迎えたのだった!


博士
「むう…! 地響き!?」
「まさか、パイロット無しで動き出すとは!」


キングゴルーグは主を持たずに右足を踏み出す。
その衝撃により、固定されていた金具は壊れ、地下は強烈な地響きに見舞われる!
桜咲博士はすぐに出撃用のワープゲートを開く。
キングゴルーグの正面に巨大なゲートが現れ、キングゴルーグはそれを見て目を金色に光らせた。


博士
「こうなったら後は流れに任せるだけよ!」
「行け! キングゴルーグ!! 今こそ、お前の拳で正義の鉄拳をお見舞いするんじゃ!!」

キングゴルーグ
「……ゴー!!」


キングゴルーグは桜咲博士の声に答える様に音を放つ。
それは彼の意志であり、怒りと悲しみ!
今、キングゴルーグは近未来の世界に躍り出る。



………………………




「クソッタレが…このまま諦めたりはしねぇぞ!?」

夏翔麗愛
「絶対に勝つのです…! こんな悪党共に、好きにさせはしないのです!!」


私たちはふたり抱き合って決意を新たにする。
空を飛ぶ爆撃機は手当たり次第に絨毯爆撃を行い始めた。
その度に建物は砕け散り、人々は死んで行く。
私は、流れる感情をコントロールしてみせる…もう、これ以上お父さんに負担はかけさせない!!


夏翔麗愛
「皆の無念…私がちゃんと受け止めるですよ」


「無理はするな夏翔麗愛ちゃん、またさっきみたいに暴走するかも…」


私は無言で浮遊する。
そして私にだけ見える感情の渦を、私は片手で制した。
それらは天へと真っ直ぐに向かい、光の柱を立てる。
これは私にしか見えない…だから、お父さんは心配そうに私を抱き締めていた。



「…くそ、戦車隊まで来やがった!」

夏翔麗愛
「諦めない…諦めたらそこで終わりなのです!!」


既に一面は焼け野原。
もはや生存者を探す方が難しい。
そんな崩壊した地面を堂々と走る戦車隊…私は既に怒りを通り越していた。
嫌な世界だとは思ってたけど…でも、そんな世界でも良い人はいた。
私は、そんな人たちのお陰で、この世界が少しは好きになれたのに…


夏翔麗愛
「こんな事して、一体何が楽しいんですかぁぁぁっ!!」


直後大爆音、ただし空から。
私たちは同時に空を見上げると、爆撃機が木端微塵になっていた。
そして、私たちを影に包む巨大なシルエット。
背中のバックパックと足の裏からブースターを噴射し、空を飛ぶその姿。
私はただこう叫んだ…


夏翔麗愛
「キング…ゴルーグ!?」

キングゴルーグ
「!! ゴー!!」


キングゴルーグは私の声に反応してこちらを向く。
認識してる? 誰かが乗っているの!?
キングゴルーグはすぐに目から何か光を放つ。
その白い光に包まれ、私とお父さんは光に吸い込まれた。



「な、何だここは!?」

夏翔麗愛
「…キングゴルーグのコックピット」
「誰も、乗ってなかったの!?」


キングゴルーグのコックピットには私たち以外存在しなかった。
つまり、無人で動いていたと言う事。
キングゴルーグは自分の意志で動いたと言うの!?


ピーピー!


夏翔麗愛
「通信…?」


私は腕時計のボタンを押し受信モードにする。
すると、頭の中に博士の声が聞こえてきた。


博士
『夏翔麗愛! キングゴルーグは来たか!?』

夏翔麗愛
『はい、今乗っているです!! これ、動かせるんですか!?』

博士
『解らん! じゃが、キングゴルーグは自らの意志で飛び立った』
『そしてお前さんを助けたのなら、それはお前さんを求めているのかもしれん!』


つまり、キングゴルーグは私を助ける為にここまで…?
だとしたら、私は自分の意志を伝えなければならない。
私はコックピットにあるセンサーを両手で触れる。
すると、以前よりも遥かに強烈な光でそれは輝き、キングゴルーグは私の意志を受け取る。


夏翔麗愛
「…行ける、動く!」


「動かせるのか!? つか、よく見たら全周囲モニター!?」

博士
『後はお前に任せる! この世界の命運は、お前たちに賭けるぞ!?』


私は思わず笑みが出る。
そして、キングゴルーグの怒りを知った。
そうだよね…こんなの許せない!
だから、やろう…


夏翔麗愛
「行くのです、キングゴルーグ!! 光輪神社まで直行ですよ!!」


私が気合いを入れると、キングゴルーグは答える。
ブースターを最大まで吹かし、光輪神社まで空を飛んで移動した。



説明しよう!
キングゴルーグの最大戦速はマッハ3!
しかし、その速度に達するには3分もの加速が必要だが!!



ドォンッ! ドバァンッ!!



「流石キングゴルーグ! 何ともないぜ!!」

夏翔麗愛
「装甲が違うのですよ!!」



説明しよう!
キングゴルーグには分厚く柔軟な装甲素材が使われている。
古代の技術で作られたそれは、まさにロストテクノロジー!
更に、キングゴルーグはエスパーの主を得る事により、念動バリアが展開出来るのだ!!



夏翔麗愛
「とりあえず戦車は無視なのです!」


「戦闘機が来るぞ!?」

夏翔麗愛
「そんなもん、押し通るのです!!」


キングゴルーグは加速して戦闘機を体で吹き飛ばす。
戦闘機の砲やミサイルなど全く通用しない。
まさに、無敵のスーパーロボットだった…


夏翔麗愛
「見えたですよ!! 光輪神社!!」


「あ、あれが壺か!? 確かにデケェな…!」


モニターから見える壺は確かに大きい…30m位はありそうですね。
だけど、このキングゴルーグはもっと大きい。
私たちは、壺からやや離れた被害の無さそうな土地にゆっくりと着陸した。


悪医禍
「ば、馬鹿な…!? 何だこのロボットは!?」


「慌てる事は無い…既に儀式は整った!」


「おい、早くしろ! もう軍隊は残り少ないんだ!!」


何やら3人が言い合っていた。
ひとりは神主で、もうひとりは軍服。
どうやら、全員グルの様ですね…


夏翔麗愛
『警告するのです! さっさと武装解除して投降するのです!!』
『そうしたら、命だけは助けてあげます!』


私は外部スピーカーを通してそう告げる。
悪医禍と軍服の男は怯むが、神主はひとり壺に向かっていた。
そして、神主は高らかにこう告げる。


神主
「来ましたぞ…遂に!!」
「この封印されし壺に!!」
「1000人のエスパーを液体金属に変え、壺に封入した今!」
「訃憂把(ふうぱ)様がお降りになられる!!」


その言葉を聞き、お父さんは凄く感情が揺れた。
私の後で、お父さんは何かに怯えている…?



「…やっぱり、そういう事だったのかよ!!」

夏翔麗愛
「どうしたのです!? 一体何が…」


聞こうとすると、途端に地震。
かなり大きな揺れで、壺の中から金色の液体金属が飛び出て来る。
そして、それは段々形を整え、巨大な人型の形態を取り、色が浮かび上がった。
その姿は灰と紫の配色。
体は中心に黒い穴が空いており、2本の足は短足で短く太い。
頭部は角が左右に2本、後頭部からは髪の毛にも見える太い角が真っ直ぐに立っていた。
だが、腕が1本も無い…明らかに人型のそれなのに、だ。



「解き放たれし、魔神…!!」

夏翔麗愛
「あれを知っているのですか!?」


「ああ…だけど、今は何も聞かないでくれ」


お父さんは何かに耐える様だった。
私にはその意味は解らない…だけど、それがお父さんにとって重要なのは解った。


夏翔麗愛
「私は親孝行者なのです! お父さんの言う事はちゃんと聞くですよ!!」


私は改めて魔神を見る。
大きさはキングゴルーグと同等。
魔神はゆっくりと目を開き、こちらを睨む。
まさに魔神と言うべき禍々しさ…口には多数の牙が見えており、恐怖を煽ってくる。
そして、魔神は言葉を放った。


魔神
『ついに、ここまで来たんだね…』


『フーパ!! お前が言っていたのはこの事だったのか!?』


お父さんは魔神をフーパと呼んだ。
聞いた事はないけど、お父さんの知り合いだったの?


フーパ
『そう、そしてこれがアタシの役目!』
『ここで君を殺し、世界を終わらせる!!』
『さぁ、抗ってみせろ!! 全てを救うと言うなら、このアタシを倒してみせろ!?』


フーパの胴体を6本の腕が浮遊する。
それらは左右に3本づつ…何やら金色のリングから飛び出ており、自由自在に動かせる様だった。
これが、魔神の攻撃形態!?


悪医禍
「ふ、ふははっ!! これだ! これこそが我らが求めた魔神!!」

軍服
「これで世界は俺たちの物だ!!」

神主
「さぁ、我らをお導きください!!」

フーパ
『うるさいよ』


ズンッ!!と一瞬の圧力。
フーパの腕のひとつが3人を押し潰した。
そのスピードは目に見える速度ではなく、明らかにワープ系!
フーパが掌で虫でも殺す様に押し潰した後から、大量の血が流れていた。
あまりに無情の一撃。
フーパにとって、あんな3人は何の価値も無いんだ…
ただ、フーパはお父さんだけを見ている…


フーパ
『さぁ、邪魔物は消えた…これで心置きなく戦える!!』


フーパの腕は不規則に空中を飛びこちらを見定める。
あまりに圧倒的なプレッシャー…間違いなくコイツは強い!
だけど、私は退かない! そしてお父さんも顔を引き締めた。
私たちは心をリンクさせ、全てをキングゴルーグに伝える。
そして、私たちはフーパに向かってこう叫んだ。


夏翔麗愛&聖
『私(俺)たちの絆を見せてやる!!』


私はお父さんの心も一緒にキングゴルーグに伝える。
キングゴルーグは目を光らせ、大きく掌を前に向け、黒い光をビームの様に放った。
それは拡散ビームの様に照射され、フーパの体を焼いていった。


フーパ
『ぐっ!? 中々、やるね…!!』



説明しよう!
キングゴルーグの掌には、内蔵されたビーム照射機がある!
そこからは集中、拡散、思いのままのビームをコントロールして放つ事が出来る!
そのビームのはゴーストタイプのパワーを帯びている為、エスパーやゴーストには効果抜群となるのだ!!


夏翔麗愛
『ビーム集中!! シャドーブラスターーー!!』

フーパ
『甘い!! 1度見ればそんな物は簡単に対処出来る!!』


フーパは目の前に金色のリングを展開する。
それは伸縮自在の様で、集中させた2発目のビームの太さを、容易に飲み込むサイズまで一瞬で広がった。


フーパ
『さぁ、自らの武器を食らうが良い!!』

夏翔麗愛
『きゃぁぁぁぁっ!!』


ズバァァァァァンッ!とキングゴルーグの左肩が吹き飛ぶ。
フーパは別のリングからビームを放ち、こちらに向けて来たのだ。
どつやらこちらのビームを転送した様ですね…厄介な!
とりあえず、弾けたのは幸い装甲だけの様で、まだまだ大丈夫の様です。



「気を付けろ! フーパはあの6個のリングを使って次元を操れる!!」

夏翔麗愛
「だったら、鉄拳制裁なのです! シャドーナックル!!」


ガキャアッ!!と右の鉄拳がフーパの顔面を捉える。
流石のフーパも後に吹き飛び、両足を踏ん張って堪え忍んだ。
どうやら、あの巨大さだけに運動性は無さそうですね!


フーパ
『くそっ! 想像以上に体が鈍い!!』

夏翔麗愛
『付け込ませてもらうのですよ! もう1発!!』


フーパはすぐにリングを展開させる。
私はしまった…と思うが遅かった。
キングゴルーグの左手はリングに飲み込まれ、その瞬間にリングは逆に収縮してキングゴルーグの左手を切断した。



「左手が!!」

夏翔麗愛
「あんのチート能力! ウザすぎなのです!!」

フーパ
『ハハハッ! アタシのリングは無敵だ!!』
『こんな使い方も出来るんだよ!?』


フーパはリングを自由自在に動かし、6本の腕をロケットパンチの様にこちらへ叩き付けて来る。
1発1発は大した事無いけど、数とスピードが厄介です!
私は念動バリアを全身に張り巡らせて攻撃を防ぐ。
すると、フーパは顔をしかめて舌打ちした。


フーパ
『流石に、この程度じゃビクともしないか…』
『だが、ゴルーグは所詮ゴルーグ! 悪タイプに不利なのは変わらないはず!!』

夏翔麗愛
『舐めるな! なのです!!』


私はフーパの隙に付け込み、右足で蹴りを放つ。
フーパは横っ腹にそれを受け、体をズラす。
そして口から若干の血を吐き、ダメージがあるのは目に見えた。


フーパ
『まだまだぁ!! こいつはどうだ!?』


フーパは全身から『悪の波動』を全力で放って来る。
私は右手を前にかざし、バリアを展開してそれを防ぐ。
こっちは念動バリアではなく、キングゴルーグに内蔵された特殊バリアです!


夏翔麗愛
『プロテクトシャドーーー!!』


悪の波動はキングゴルーグの右手から展開された黒いバリアで相殺される。
恐らく、念動バリアだったらタイプ的にぶち抜かれてましたね…
ゴーストであるキングゴルーグの武装は、あまりフーパには相性が良くない様です。



「あのフーパはエスパー悪だ! ゴーストの技はしっかり通るはず!」

夏翔麗愛
「ですが、その分こっちはタイプ不利なのですよ!!」


「構うかそんなモン! タイプ相性なんざ、勇気で覆せ!!」


私はニヤリと笑い、呼応する。
そして、私たちの勇気でキングゴルーグは目を光らせる。
私はキングゴルーグを飛び上がらせ、上空からフーパを見据えて、右足を構え急降下する。


夏翔麗愛
『フライング! シャドープレス!!』

フーパ
『甘い!』


フーパは瞬時にリングで自身をワープさせる。
動きは鈍いですが、これがとにかく厄介ですね!!


フーパ
『足は貰うぞ!!』


ズバァンッ!!



「くっそ! 右足がリングに持って行かれた!!」

夏翔麗愛
「バランス制御! ブースター吹かして無理矢理行くのです!!」


思った以上に状況はマズイ。
フーパのチート能力は易々とキングゴルーグの装甲を持って行ってしまう。
フーパに攻撃は通用する…けど、ダメージレースでは不利になっている!


フーパ
『さぁどうする!? 腕も足も1本づつ! このままバラバラになるかい!?』

夏翔麗愛
『すぐ調子に乗るのがお前の弱点ですよ!!』


私は高笑いするフーパに向かってブースターを吹かし、フーパの顎を右膝でカチ上げる。
そして、膝に内蔵されてる武装をゼロ距離で解き放つ。


夏翔麗愛
『シャドーニーブラスターーー!!』

フーパ
『ぐああああああああっ!!』


フーパは顔面で膝から照射されたビームをマトモに受ける。
今度はかなり効いてる! このままぶっ倒すのです!!


夏翔麗愛
『うおおっ!!』

私は続けて右拳を振るう、そして空中に飛んで左のキック。
吹き飛んだフーパに向かい、私は全身の砲から拡散ビームを全弾発射する。
フーパの6本の腕もろとも巻き込み、フーパはボロボロになっていた。
だけど、まだ倒れない…フーパは必至な顔でこちらを睨み付けている。
フーパの感情には、迷いが無い…悪意も無い、そして憎しみも無い。


夏翔麗愛
『何故…貴女は戦っているのです!?』

フーパ
『戦いの最中に下らない事を! 君たちを殺す為さ!!』


フーパは口から悪の波動を放ち、こちらを吹き飛ばす。
まだ、こんな力が…!



「夏翔麗愛ちゃん! 今は考えるな!!」
「フーパを倒せば、全て解るんだ!!」


私はお父さんの言葉を受け、迷いを捨てる。
フーパが何を考えているのかは解らない。
でも、私たちは負けるわけにはいかないのだから!


フーパ
『さぁ、いい加減死ねよ鉄屑!? もう、その面は見飽きた!!』

夏翔麗愛
『念動バリア! 全開!!』


フーパは怒りの感情で悪の波動を口から放つ。
私は無駄と感じながらも念動バリアを展開した。
しかし、予想通り悪の波動はバリアを素通りしてくる。
キングゴルーグは全身を激しく揺らし、その場で膝を着いてしまった。


フーパ
『ハッハッハ!! これで終わりだ! 君たちの全ては無駄だったのさ!!』


『ざけんなぁ!!』

夏翔麗愛
『まだ私たちには…』


私はお父さんと心をシンクロさせ、キングゴルーグの最後の武器を起動させる。
瞬間、コックピット内は虹色のオーラに包まれ、それはキングゴルーグの全身を覆っている様だった。
そして、私たちは同時にこう叫ぶ。


夏翔麗愛&聖
『漢の拳がある!! シャドーブレイク! マキシマムパンチ!!』


キングゴルーグは残された右拳を硬く握り、それをフーパに向けて射出する。
フーパはそれをリングで防ごうとするが、拳は闇へと消え去り、瞬時にフーパの胴を貫いた。
フーパは訳も解らずに血を吐き、その場で両膝を着き、天を見上げる。



説明しよう!
キングゴルーグの動力源には、超巨大なZクリスタルが内蔵されている!
そのクリスタルがパイロットの意志とシンクロした時、キングゴルーグの鉄拳は、次元を超えて相手を打ち破るのだ!!



フーパ
『そ、んな…!? こん、な…隠し、技…を!!』

夏翔麗愛
『…私たちの、絆の勝利なのです!!』


気が付くと腕はキングゴルーグの元に戻り、キングゴルーグは天へと拳を振り上げた。
キングゴルーグもボロボロですけど、見事に魔神を倒したのです!!


フーパ
『は、はは…凄いね、本当に』


『フーパ! 理由を話せ!! 何故こんな事を!?』


お父さんは必至に叫びますが、フーパは微笑むだけ。
そして、フーパの体は色を失い、液体金属の塊となってその場に飛び散った。
壺も同時に粉々に砕け、もはやこの場には何の悪意も残っていない…終わったん、ですね。


夏翔麗愛
「…お父さん、フーパは」


「……!!」


お父さんは悔しそうだった。
本当はフーパに何か聞きたかったはずなのだ。
でも、それももう…



………………………



フーパ
『やぁ、聞こえるかい?』


『フーパ!? お前、まだ…!!』


俺は突然頭の中でフーパの声を聞く。
だが、それと同時に俺たちはゲートに飲み込まれてしまった。
勝利の余韻を噛み締める事無く、俺たちは無情にも分断されてしまったのだ…


フーパ
『ジャリボーイ、約束だ…真実を話すよ』


『真実!?』

フーパ
『私はね、本当は…もう死んでるんだ』


俺はゲートに飲み込まれながら絶句する。
フーパはよりにもよって、そんなバカな事を告白したのだ。


フーパ
『今の私は、限りなく本物に近い偽物のプログラムだよ』
『何故、彼女がこんなプログラムを作ったのかは解らない』
『でも、きっと…それは彼女の最後の良心だったんだ』


『何だ、何を言っている!? 彼女って、首謀者の事か!?』


俺には声しか聞こえない。
それでもフーパが泣いているのだけは、理解出来た。


フーパ
『ありがとう、ジャリボーイ…アタシを信じてくれて』
『後…ゴメンね、こんな事を背負わせて…』
『君の家族はこれで全て救えた…後は、君の意志で最後の世界をクリアしてくれ』
『そして、頼むよ…どうか、彼女を……』


最後の言葉は聞き取れなかった。
誰かの名を言った様だったが、俺はすぐにいつもの暗闇の世界に飛ばされ、今度は誰もいないその空間の寂しさを噛み締める事になった…



「あんの…バッカヤロウがぁぁぁぁ!!」
「死んでたってどういう事だよ!? 一体何が理由でこんな事になったんだよ!?」
「彼女って誰だ!? 最後の世界って、何が待ってるんだよ!!」


俺は思いの丈を込めて叫ぶ。
だがそこには何も無い。
俺は息を整え、最後の世界へと繋がるゲートに吸い込まれる。
そして、俺は一方的に約束されたフーパの言葉を噛み締め、顔をしかめる。
終わらせなきゃならない…もう、家族どうこうなだけじゃない。
ここから先は、俺の意志で結末を見届ける!!
そして、フーパが守りたかった彼女を絶対に救ってみせる!!










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第6話 『キングゴルーグ大勝利! そして、最後の世界へ…』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/06(月) 21:07 )