とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない














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第5章 『POKE MOA EVIL』
第4話 幕末編

(これで3人か…まだ、後4人も救わないとならないんだな)


俺は暗闇の空間で、ここまでの事を整理していた。
原始、西部、功夫…明らかに、今までの混沌とは毛並みの違う世界が、まだ後4つもあるというのだ。


フーパ
「まぁ、気長に考えるんだね…ここまでの時間は、決して無駄にはならないだろうし」


フーパは気楽そうに、寝転がりながらそう言う。
俺は、特に何も答えなかった。
あれから既に3ヶ月…他の世界ではどうなっているのか?
少なくとも、その世界においては、ある程度馴染んでいる可能性は高い。
心配事ばかりだが、悲観もしてられないな。


フーパ
「さぁ、次の世界が始まる…」
「いや…君の家族にとっては、もう始まっているんだけどね」


俺は、無言のまま世界を移動させられた。
今度は、誰がいるんだ?
俺はあれから、少しは強くなった体を思い、拳を握る。
香飛利や唖々帝さん、瞳さんが、今どうしているのかも気になる所だな…



………………………





POKE MOA EVIL 『幕末編』

『潜入』



………………………




「むぅ…丹羽(にわ)の奴め、一体何を企んでおる?」


そこは、とある和風の城の一室。
そこにはふたりの男がおり…その内のひとり、座布団に座って顔をしかめている男は『ニョロボン』であり、城主の丹波(たんば)。

青い髪でチョンマゲを頭に結っており、典型的な古風のスタイル。
服もまさに大名とか、そういう偉い人の物を思わせ、その者の格位高さを示していた。
そして、向かい合って座っているもうひとりの男は『アギルダー』で、赤紫の忍装束に身を包んでいる忍。

ふたりはここで極秘に落ち合い、とある密命に対して打ち合わせていたのだ。


丹波
「して、水刃(すいは)よ…何か案はあるか?」

水刃
「はっ! この件に関しては、私の部下に任せようかと思います」
「その者は、若くはありますが…素質は十分かと」


水刃と呼ばれたアギルダーの男は、丹波にそう進言する。
彼は丹波の忠実な部下であり、最高位の忍。
この世界においても、3指に入ると言われる忍の男である。
その水刃の答えに、丹波は関心を示す。
そして、丹波は水刃にこう確認した。


丹波
「ほう! して、その者は誰か?」

水刃
「…もう3ヶ月前になりますが、ひとりの少女を拾いまして」
「その者は、全く見た事の無い服に身を纏い、我々の想像を越える何かを知っている様でした」
「私は、あえてその少女に私が持つ忍道を教え、この様な時の為にと思って育てておりました」

丹波
「成る程、ならば早速その者を…」

水刃
「いえ、奴ならば既に…!」


シュタッ!と、突然天井から何者かが現れる。
その者は、身長140cm程であり、黄色の忍装束を身に纏った少女。
キリッとしたその顔付きに、短く茶色の短髪がさらりと揺れる。
少女は片膝と右手を床に着き、頭を下げて敬礼した。
水刃はそれを見て笑い、丹波にこう紹介する。


水刃
「名は『螺 喜久乃』(ねじ きくの)…まだ12の若さですが、既に十分な実力があります」
「是非、今回の密命…この喜久乃にお任せあれ!」

丹波
「12の若さとな!? その様な少女に、丹羽の暗殺を任せると?」

喜久乃
「…殿の不安は、察しています」
「ですが…任務であるならば、私は必ず遂行してみせましょう!」


喜久乃の目は、真っ直ぐに真剣だった。
喜久乃にとって…誰ひとり家族のいないこの世界で、3ヶ月の期間とは想像を絶する苦しさだったはず。

しかし、喜久乃はそんな状況でも決して諦めず、この世界でただひとりの家族を期待して待っていた。
そして、喜久乃は感じたのだ…今回の任務こそ、その家族に繋がる何かが隠されていると。

だからこそ、喜久乃は本来やりたくもないであろう、こんな暗殺任務を請け負ったのだ。


水刃
「殿…どうか、この喜久乃を信じてお任せを…」
「私は、汲んでやりたいのです…喜久乃の秘めた想いを」

丹波
「そなた…喜久乃に、並々ならぬ感情を抱いておるな?」


水刃は頷きはしなかったが、無言で頭を下げていた。
やがて、丹波はため息をひとつ吐き、こう喜久乃に言う。


丹波
「良かろう! では喜久乃よ、そなたには丹羽城への潜入任務を言い渡す!!」
「そなたが遂行するのは、丹羽城への潜入及び、要人の救出と城主である丹羽の暗殺だ!」
「…出来るのだな?」

喜久乃
「お任せを…! 必ずや任務を遂行してみせます!!」


喜久乃の決意は固かった。
そして喜久乃は確信している、その城には必ず聖がいると。
先日、空間の歪みを遠くに見た喜久乃は、聖の転移を確信していた。

その転移先はまさに丹羽城…故に、喜久乃は自ら水刃に進言し、この任務に着かせてもらったのだ。
水刃もまた、喜久乃の想いを理解した上で、あえて危険を察しながらも送り出す決意をした。

この3ヶ月で、まるで親子の様に修行を共にした喜久乃の事は、水刃も大切に思っていたのだろう…
しかし…そんな喜久乃が、例え命を賭けてでも救いたい人がいる。
それを知った水刃は、心を殺してでも喜久乃をこの任務に推薦したのだ。


丹波
「よし、ではすぐに出立せい!! 詳細は水刃に聞いておるのだろう?」

喜久乃
「はっ! この喜久乃にお任せを!!」


喜久乃の心に迷いは無い。
任務は任務…しかし、その真の目的は聖の救出。
それだけは、決して喜久乃が曲げる事の出来ない最大の目的だったのだから…



………………………



水刃
「…遂に、この時が来たのだな」

喜久乃
「はい、水刃さんには返しきれない恩がありますが…」

水刃
「良い…私とて理解はしていた、そなたがいずれこの世界からいなくなると言うのは」


水刃さんは、本当に寂しそうな顔をする。
私もその顔を見て、少しだけ躊躇した。
水刃さんは本当に良くしてくれた…何も知らない私に、忍びとして生きる術を教え、自らの忍道をも仕込んで。

たった3ヶ月とはいえ、結果として私は以前よりも遥かにレベルアップし、今や水刃さんも認めてくれる忍になれた。
…勿論、それでも華澄さんの様な忍にはとても及ばないでしょうけど。
(-_-;)


水刃
「行くが良い…恐らく、これが最後の会話となろう」
「息災でな…そして、そなたの大切な人が救われる事を祈っている」

喜久乃
「水刃さん、今までありがとうございました…このご恩は絶対に忘れません」

水刃
「…喜久乃、これを」

喜久乃
「え、これは…?」


水刃さんが渡したのは、焦げ茶色の菱形を模した石が埋め込まれた短刀。
それは水刃さんが大事にしていた…


水刃
「私には、結局その短刀に秘められた力は解放出来なかった…」
「しかし、そなたならその力があると私は思っている」
「だから、受け取ってくれまいか…?」

喜久乃
「…ありがとうございます、大切に使わせてもらいます」


私はそれを受け取り、礼をする。
そして水刃さんに背を向け、私は丹羽城を睨み付けた。
聖さんはあそこに現れた…だったら、私は行かなければならない。
聖さんはきっと私を探しに来てくれた…でも、この世界はきっと聖さんに危害を加える。

だから、私は聖さんを救ってみせる…!
そして、皆の所に戻るんだ…家族の、所に。



………………………



喜久乃
(ここが、丹羽城か)


私は、まず城門前で隠れていた。
ちなみに、私は水刃さんとの修行の成果で、体内の水分温度を操れる様になり、ペラペラモードと人間形態はある程度自由に使い分ける事が可能となっている。
『熱湯』の温度操作を体内で行えるので、PPが続く限りはほぼ常時人間形態は維持出来るのだ。

とはいえ、あまりに長時間維持しようとしたら流石にPPは切れる。
つまり、私にとってはこの熱湯のPPが命綱となる訳だ。


門番
「山!」


「川!」

門番
「よし、通れ!」


私が隠れている間に、門でそんなやり取りが行われる。
どうやら、入るには合言葉がいる様ですね…
しかし、これならすぐにでも入れそうです。
私は『保護色』の偽装を解き、門に近付く。
この保護色も、服の色事変える事は出来ないから、隠れる時はペラペラモードでやるのが基本。
服はピッチリ密着している水着みたいなタイプだから、ペラペラモードでも簡単には脱げない。

私が近付くと、門番の侍は私を見て合言葉を要求する。
私はすぐに前の男の言葉を思い出してこう答えた。


喜久乃
「川!」

門番
「よし、通れ!」


あっさりと中に入れる。
さて、ここまでは楽に行けましたが、聖さんはどこにいるのか?
まずは警戒しながら進まないと…潜入の基本は、あくまで誰にも見付からない事。
つまり…可能な限り、戦闘は避けないといけない。

私はそのまま城内を探索し、情報を集める。
城内の会話を集める限り、どうもかなりの重要人物を捉えてるらしい。
それは水刃さんから聞いた、要人の事だろう。


喜久乃
(確か、ダイケンキの『北辰 龍虎』(ほくしん りゅうこ))


かなりの剣豪であり、丹羽に和平を求めた人らしいけど、丹羽の暴虐によって捕らえられたと聞く。
今回の密命は、この要人の救出も含まれている。
とはいえ、聖さんと天秤にかけるわけには…


喜久乃
(…でも、北辰さんも恐らく重要人物ではある)


聖さんも北辰さんも、どちらの居場所も解らないのであれば、どちらを優先すればいいかは正直難しい。
ここは、とりあえず隠れながら情報を集める方が良さそうですね…
私はそう思い、保護色を駆使しながら城の中を更に進んで行く。
そしてしばらく進んだ後、気になる情報を耳にした。


男A
「例の男はどうなってるんだ?」

男B
「地下の牢屋に捕らえらてるらしいぜ? まぁ、曰く付きのアレだがな…」

男A
「あぁ、幽霊のアレか…」


それは、かなり重要な情報だった。
地下、か…そこに、聖さんか北辰さんがいるのだろうか?
どちらにしても、行かなければならない様ですね…
地下…ですか。
私は城内の構図を思い出し、地下へのルートを思い出す。
安全に侵入するのであれば、ここからだと少し遠いルート…確か、水道を通らなければ。


喜久乃
(水は、苦手ですからね…)


いくら強くなったとはいえ、タイプの弱点は変えられない。
地面タイプである私は、根本的に水が苦手なのだ。
水道を越えるとなると、かなり覚悟を決める必要がありますね。
とはいえ、今の私にはそれを克服する術もちゃんと体得している!


ザバァァァァァァッ!!


私は、多少目立つながらも『波乗り』で水道を走る。
今は幸い夜ですし、人気の少ない水道に目を走らせている人間はいない様で安心しました…
さて、これで地下への道はショートカットです。


喜久乃
(ん? 今、何か大きな影が見えた様な…)


水面が若干揺れる。
しかし、それは一瞬の事で特に何も起こらなかった。
かなりの魚影に見えましたが、一体何が泳いでいたのか…?
とはいえ、今は過ぎた事を考えている暇は無い。
私はそれを無視して、先を目指す事に…

そして、目的の地下へと迎える階段を私は見付けた。



………………………



喜久乃
(しっかし、呆れる程に広い城ですね…)


少なくとも、この世界では最も大きい城なのは確からしい。
外から攻められる事を前提にした城内構造、更に内部に入られても迷わせる様な構造…
例え潜入出来たとしても、容易に深部へは入り込めないですね…


喜久乃
(ですが、私は進まなければならない)


聖さんが巻き込まれている。
それならば、私は迷うわけにはいかない。
私にとって、聖さんを救う事は最優先だ…それは、守連さんとの約束でもある!

私はかつて守連さんと約束した、もし守連さんたちがいない時は、その時は私が必ず聖さんを守ると!
あくまで勘ですが…この世界には、恐らく他の家族はいない。
だったら、私が聖さんを守る…!

それだけは、私が絶対に守るべき約束なんだ!!



………………………



喜久乃
(ここからが地下…一体、何があるのでしょうか?)


水道から城内部への通路を通り、私は人気が一切無い、地下への階段を降る。
それはあまりに不気味であり、私は言われの無い寒気に襲われた。
間違いなく、この先に何かがあると予想出来る。
それは、恐らく人知を越えた何か…? まるで、怨念めいた物を感じますね。

私は、徐々に冷や汗が吹き出すのを感じた…この先にいるのは、普通の何かでは無い?


喜久乃
(く…まさか、敵が待ち構えていますか?)


私は、地下の様相を見てそれを予測する。
明らかに異質なこの空間、それはまるで生きている物を食らうかの様な怨念めいたプレッシャー…
私は全身からその気配を感じ取り、すぐに技を放つ。

私の全身から電気が放電され、周囲一体を電気で埋め尽くした。
その『放電』により、感じ取られた何かは少なからず拡散する。
間違いなく何かがいる! 私の放電で反応したという事は、恐らくここを守るポケモン!

マズイですね、流石に無対策で易々と入り込みすぎましたか…
とはいえ、こちらも覚悟無しに来た訳じゃない。
誰が相手でも、私は負ける気はありません!!


喜久乃
(かかって来なさい! 返り討ちにしてみせますよ!!)


私は腰に下げていた苦無を取り、戦闘体勢に入る。
すると空気が蠢き、私の周辺から何者かの姿が出現した。
それは形容しがたい何かで、やや体が透けている。
私は寒気を覚えながらも、それに向かって電撃を放った。
電気タイプでありながら、同タイプで最鈍クラスの素早さを持つ私に、機敏さはまず求められない。

だからこそ、恵まれた耐久力で戦うのが私の戦術だ。
例え攻撃を受けても、私はちょっとやそっとじゃ怯まないのですから!
私の電撃を受けた何かは、空間ごと蠢き、遂にその場から具現化する。
その姿は全身を包帯で包んでおり、一見すると真っ白な包帯のミイラに見えた。

私はギョッとするも、その意味を推察する。


喜久乃
(多分『デスカーン』ですね…下手に触れば、同じ様にミイラにされるという事ですか!)


私はすぐに距離を離し、遠距離から『泥爆弾』を放つ。
それは真っ直ぐに投擲され、ミイラに当たる。
ミイラはその場で倒れ、青い炎をあげて燃え尽きた…原理は解りませんが、やはり使役されている!?

そして気が付けば、私の廻りは謎のミイラに囲まれている状態だった…


ミイラ
「おお〜!」

喜久乃
「くっ、かなりの数ですね…!」


ザッと見るだけでも、約数10体はいる。
全てを捌くにはリスクもかかる…ですが、聖さんが関わっているならば退く事は出来ない!

私は両手で印を組み、技の発動を準備する。
ミイラたちはゾンビの様に近付いて来るも、私は冷静に対処した。


喜久乃
「手加減はしませんよ!?」


私はその場で『地震』を起こす。
この地震によって発生する重力により、ミイラたちはその場で全員潰された。
あくまで最小限の力で起こした地震なので、建物にはさほど影響は出ていないはず。

私は天井等を確認し、影響が無いのを確認して周りを見渡した。
数10体のミイラは全て押し潰された様で、私は周囲の気を改めて探る。


喜久乃
(やはり、元は断たれていない! 本体が近くにいますか?)


ミイラたちは所詮尖兵…それを使役する本体のデスカーンがいるはず。
私は、その存在を警戒しながら周囲に気を付け、ジッ…と待つ。
すると、すぐに私の感覚に引っかかった何者かが背後に表れた。
私はすぐに反転し、その相手に泥爆弾を放つ。

…が、それは謎のフィールドを瞬時に張り、攻撃を防いで見せた。
同時に私は確信する、これが本体なのだと!


喜久乃
「デスカーン、貴方がそうですね!?」

デスカーン
「クックック…中々の手練れの様だな」
「だが、アレは渡さぬ…あれは丹羽様にとって、危険な存在よ」


私はこの時点で、少なくとも誰かがいるのを悟る。
少なくとも、丹羽にとって不都合になりうる存在がここにあるという事。


喜久乃
(しかし、この男…見た目が凄まじく色物ですね)


デスカーンは、黄色の棺を模した何かを全身に纏っている。
それはかなり形容し難く、まさに鉱物系。
顔も体型も解らないその姿は、どう表現していいのか私には解らなかった。
しかし、その体からは4本の黒い影の様な腕が伸びており、それは私に向かって攻撃して来る。
私はすぐに保護色を発動し、その場の背景に隠れて視界を攪乱した。

するとその手は対象を見失い、動きを止める。
私はこの時点で確信する、相手はあくまで目でしか私を認識していない。
攻撃は不定でも、あくまで見るのは本人の目!

それならば、私の姿は相手には完全に認識出来ないはず。
私は相手の死角に移動し、そこから泥爆弾を放つ。
それは相手の横顔に直撃し、デスカーンはすぐに振り向いた。
しかし、その速度は私よりも更に遅い…私の泥爆弾は、視界を奪うのが目的ですからね。

私は直撃前に移動は終わらせており、デスカーンが振り向いた時点で既に私はその場にいない。
いくら私の素早さが遅くとも、こうやって撹乱すればある程度誤魔化ます。

私はそのまま、相手の背後から『10万ボルト』を放ち、デスカーンの体を感電させた。
しかし、それ一撃で倒れる事は無く、まだデスカーンは不適な目を周囲に向けて警戒する。
頭も謎の被り物に覆われている為、表情もよく解りませんが、目付きから怒り狂っているのは解ります。

私はそうやって、相手の死角を維持したまま隙を伺う。
敵に温情をかけるつもりはありません。
私の技が威力不足でも、何度も当てればいずれ倒れるはずですからね!


喜久乃
(さぁ、どこまで耐えられますか!?)


私は電気と泥爆弾を織り混ぜ、常に相手の死角から攻撃していく。
次第に、相手が疲弊していくのが目に見えて解った。
私は勝ちを確信し、デスカーンの背後からトドメの電撃を放つ。
電撃はデスカーンの背中に直撃し、デスカーンはグラリと体を揺らし、前のめりに倒れた。

私はそれを確認し、周りも警戒する。
周りには他のミイラの気配は確認出来ない、どうやら本体との接続が切れた様ですね。
私は息を吐き、まだ周囲を警戒しながらも敵意を探った。


喜久乃
「…終りですか、まぁこんな物でしょう」


敵は完全に沈黙した様です…ミイラたちも追加は無い様ですし。
数は流石に多かったですが、所詮物の数ではありませんでしたね。
ミイラにされた方はお気の毒ですが、今の私にはそれを気にする感情はありません。
運が悪いと思っていただけると幸いです。


喜久乃
「…さて、この先に誰かがいるのですかね?」


「おんや〜? あんた誰や?」


私が敵の撃破を確認すると、部屋の奥から間延びした男の声が地下に響き渡った。
それは身長180cm程はある長身、一般的な侍の衣装とは違った、ややハイカラとも言える青い衣装に身を包んだ男。
髷は結っておらず、やや荒い髪質の青いザンバラ髪。
ですが、頭部から伸びる貝殻を模した黄土色の角はとても大きく、まさにそれこそが彼の象徴とも取れた。
私はその姿を見てすぐに察する。
この男こそが、丹羽に捕らえられていたと言われる存在…北辰 龍虎。


喜久乃
「貴方が、北辰 龍虎ですか?」

北辰
「お? もしかしてワイを知ってたんか?」


その男は、特徴的な放言で私に話しかけて来た。
それは、かの阿須那さんを思い出させる…確か聖さんが言うには関西弁だとか。
北辰さんはニコニコと細目で笑っており、こんな場所だというのにまるで緊迫感を感じない。
しかし、彼の腰に携えられている一刀は、それだけで只者では無いと感じさせる。
脇差しの大きさから見ても、その刀はまるで太刀。
それも、一般的な刀のそれよりも、更に大きく感じた。


喜久乃
「私は、丹波(たんば)殿の命を受け、ここに潜入した忍です」
「名は…とりあえず喜久乃と呼んでください」


私はそう言って一礼をする。
聞いた話によれば、この方はあくまで和平の為にこの城に来たと聞いている。
それが丹羽には受け入れられず、こうやって捕らえられたと思われますが…


北辰
「ほうか! せやけど喜久乃はん若いなぁ〜?」
「見た所、子供みたいやけど大丈夫か?」


案の定心配されてますね…とはいえ、それも私の見た目では仕方無し。
とりあえず、北辰さんの救出はこれで…良いのでしょうか?


喜久乃
「そもそも、捕らえられたと聞いているのに、何で普通に出て来るんですか!?」

北辰
「な、何やいきなり…別にええやんか」

喜久乃
「いや良くないでしょう!? 捕らえられたと聞いたから助けに来てるのに、全然捕らえられて無いじゃないですか!?」


私が強くツッコムと、北辰さんは頬をポリポリ掻いて複雑そうな顔をする。
そして、やっぱりまた笑いながらこう言った。


北辰
「いやぁ〜ワイ方向音痴でな? 天守閣目指してたら、いつの間にかここにおってん!」
「そしたら妙な包帯男が彷徨いとるし、とりあえずいなくなるの待っとったんや!」


私は、それを聞いて腰が砕ける。
何て人騒がせな人なのだろうか…? つまりは、天然で迷って行方不明になってた、と。
やれやれですね…まぁ良いでしょう、私の真の目的はそれじゃないのですから。


喜久乃
「…とりあえず、あそこから水道に出れます」
「そこから先は、自分で勝手に脱出してください」


私は出口を指差し、素っ気なくそう言った。
まぁ安全かは解りませんけど、ここから素直に上に上がるのは普通に考えて危険でしょう。

北辰さんの腕前がどれ程かは解りませんが、逃げるだけなら多分問題無いはず…
本当に方向音痴じゃなければですけど!


北辰
「ほうか、ほんで喜久乃はんはどないするんや?」

喜久乃
「貴方に話す義理はありませんが?」


私は、そう言って顔をしかめる。
別に言っても構わなさそうなのですけど、どうもこの人は信用して良いかがまだ解らない。
基本的に他人は簡単に信用しない方が良い…この部分だけは、何気に騰湖さんの意見に賛成ですね。
鳴さんだと、多分簡単に信用しちゃうからなぁ…だからホントに心配になるんですよ。


北辰
「まぁ、そらそやな…ほな、ワイも自由にさせてもらうわ♪」
「とりあえず天守閣や、丹羽はんに話あるし」

喜久乃
「話してどうなるんですか? 丹羽は、既に宣戦布告までしてるんですよ?」


私の呆れた言葉を聞いて、北辰さんは少し眉をひそめる。
そして、やや真剣な顔で彼はこう返した。


北辰
「せやから話すんや…戦争なんかやっても、血が流れるだけや」
「ワイはそんなん認めん、せやから和平の話をしに来たんや」


どうやら、想像以上の馬鹿みたいですねこの人。
…誰かさんに、少し似ています。
とはいえ…実際に丹羽が止まるとは、とても思えない。
あれは野心の塊と聞いていますし、どちらにしても戦争は避けれないと丹波さんも言っていた。

だからこそ、私に暗殺の任務が下されたのですが…


喜久乃
「既に、丹波さんは暗殺の命を下しています」
「これ以上、話し合いは不要だと思いますけど?」

北辰
「それでもや」


北辰さんは、一向に退く気配は無かった。
やれやれですね…まぁ、それなら放っておきますか。
どの道、本当に方向音痴ならどうせ辿り着けない。
その前に私が暗殺成功すれば、それで話は終りですからね。


喜久乃
(まっ、この人には恨まれるかもしれませんけど)


それも、どうせ聖さんと再会したらオサラバの世界での話です。
私がいくら憎まれても、痛くも痒くもありませんよ。


喜久乃
「じゃ、後は勝手にしてください」
「私は私の目的がありますし、グズグズしていられませんので」


私は、そう言ってさっさと背を向ける。
そして、走り出そうとした所で北辰さんに肩を掴まれ、私の体はグイイッと後ろに引かれた。
私はグルリと勢い良く首を振り向かせ、目を細めて北辰さんを睨んだ。


北辰
「まぁ、待ちぃな…ワイも付いてくで?」
「何か危うそうやし、ワイが一緒に行ったるって♪」


私はクラリと倒れそうになった…何で、この人はそんな結論に辿り着くんですかね!?
正直、邪魔に感じるんですけど…?
私は…かなりイラつきながらも、何とか冷静を保ち比較的温厚にこう答える。


喜久乃
「…結構です、私はひとりで十分なんで」

北辰
「せやから、ワイも勝手に付いてくって♪」


ダメだ…この人、どうしようもない。
私には振り切れる素早さは無いし、いっそ痺れさせて放置してやろうか?
しかし…私は何とか思い止まり、とりあえずこう譲歩した…


喜久乃
「…はぁ、もう良いです、勝手にしてください」
「その代わり、私の邪魔したら全力で電撃かましますからね!?」

北辰
「おお怖…そら気を付けるわ」


私の体から発せられた『電磁波』を感じたのか、北辰さんは少し後ずさる。
とはいえ、すぐに笑って私の動きを待っている様だった。
私は頭を抱え、ため息を吐いて部屋の奥へと歩き出す。
多分、この先にも道はあるはず…北辰さんが迷い込んで来たのなら。
私は気を引き締め、本当に捕らえられているであろう、聖さんの事を思う。
絶対に助けてみせる…その為なら、私は城内皆殺しでもやってみせます。

まぁ…必要があればですけど。


喜久乃
(聖さん…やっと来てくれたのに)


この3ヶ月は、本当に辛かった。
誰も知り合いはおらず、水刃さんに拾われて、とりあえず生きる術を学んだ。
そして、いつか聖さんが来てくれると信じて、今日を待った…
でも、聖さんはこの城に転移してしまい、現在消息不明。
もしかしたら、拷問とかを受けている可能性もある…だからこそ、絶対に助けなければ。

そうして私は強く決意を固め、聖さんの救出を第一に考える。
北辰さんはニコニコ顔でいますが、ホントに何を考えてるのか読めない…
とにかく…私の目的の為、利用出来るならさせてもらいましょう…



………………………




「俺の後には、背後霊がいる」

フーパ
『それは、側に立つ者と言う意味で○波紋(○タンド)!』


やれやれだぜ…まさか開幕から牢屋にぶちこまれるとは流石に予想してなかった。
つーか、今回は幕末編かよ? どんだけ和風なんだ…
俺は、この世界に辿り着いた時点で、いきなり天守閣に放り出されていた。
そして、当然怪しい者として即御用。
まぁ、切り殺されなかったのは幸いだが…どの道、俺は死ぬ事が無いだろうからな…

さて、とはいえ今度は誰が助けてくれる事やら…? クリアアイテムになるのも、楽じゃないぜ。


フーパ
『まぁ、ぶっちゃけやる事無いだろうし、寝るかオナニー位してれば?』


(まぁ寝るしかないな、他に選択肢は無い)


俺はそう考え、さっさとその場で寝る。
幸い床は木で出来てるし、体は痛いが何とか寝れるだろ。


フーパ
『全く…どうせなら、喘ぎ声のひとつでもあげてくれれば笑えるのに』


(ド阿呆、お前はお前で良い加減にせい! そんなに構ってほしいのか?)

フーパ
『べっつに〜? ただ…アタシは、この状態じゃ何も出来ないし…』


(まぁ、こっちからは見る事も触る事も出来ないしな)

フーパ
『お? 触れるなら犯したくなる?』


(次にテメェの顔を見た瞬間、プッツンするという事だけだぜ…)


そんなこんなで、俺たちは馬鹿な会話を脳内で繰り広げた。
本当にやれやれだな…やる事無いと、フーパのアホ会話に付き合わされるから苦行だぜ。

と、そんな中…唐突に足音が地下に響き渡る。
俺は目を細めて、その音の方向に視線を向けた。
そこに見えたのは…



「ほう、意外にふてぶてしいのぅ」


「あん? テメェは…確か丹羽とか言ってたな」


俺は、突然表れた肥満体系の殿様を、寝転んだまま睨み付ける。
そいつはそんな俺を見てクククと笑い、緑の扇子をパタパタと扇いでいた。
見た感じだと解りづらいが、頬の丸いピンク模様と頭から伸びているぐるりと巻いた触角から判断するに…



(ニョロトノか…まさに殿だな)


しかし、何ともまぁ…そのままな役職だ。
この調子だと、他にも似た様な役職がいるんじゃないのか?
つーかこの世界なら、それこそ華澄さんの独壇場ではないか!
いや、むしろ華澄さんがいない方が不自然に感じる。

…え、ホントにそう思いません?



(とはいえ華澄がいるなら、すぐにでも終わっちまいそうだな)


俺は、あれから改めて気付いた事がある。
それは、この混沌はあくまでゲーム風だという事。
つまり、華澄の様に最初からチートレベルのキャラがいたら、ゲームにならない。
俺はそんな一種の法則性を推測し、この世界に巻き込まれている家族を想像していた。



(この推測は逆も然りだ…弱すぎてもゲームにならない)


つまり、あからさまに無理ゲーになる様な調整はされてないはず。
この時点で、麻亜守ちゃんはまず省かれる…いくら何でも、ひとりで放り出すのは酷すぎるからな。
むしろそんな事になってたら、俺は絶対に首謀者を許しはしない。
その時は…雫の限界に迫ってでも、全てを終わらせて元に戻してやる…!


丹羽
「何だ貴様? この私に対して無視とはな…」


「生憎、野郎に興味は無い…ましてやいかにも胡散臭そうな殿様蛙が相手じゃな」


どうやら何か話しかけられてたらしい…
俺はひとりで考え込んでいたから、全く気付かなかった様だ。

とりあえず、丹羽は俺の返した言葉を受けて微笑する。
その両生類特有の目は中々に気持ち悪く、軽く恐怖を感じる位だった。
蛇に睨まれた蛙ならぬ、蛙に睨まれた蛇ってか?
まぁ、割と洒落にはならない…丸飲みとかされたらたまらんしな。


丹羽
「まぁ良い、貴様は後の交渉に役立ちそうじゃ」
「精々死なない程度に苦しめ…別に死んでくれても構わんがな」


丹羽は、全くもってテンプレ悪党だった。
まぁ、温情をかけられても困るがな…
丹羽はそのままいなくなり、俺はひとり眠りにつく。

やれやれ…本当に一体誰が来るのかね?
ランク的には強すぎず弱すぎずが適切、成長性も加味するなら、ある程度の弱さは許容されてるわけだが…



(香飛利や瞳さんは、それこそ非戦闘員だったからな…)


唖々帝さんは、逆にガチガチの戦士だったわけだが…
ただそれでも唖々帝さんは、守連たちの規格外レベルに付いていけるレベルじゃない。
それこそ、実力ランキングだったら良いとこ中堅レベル。
ゲーム的には、ある意味丁度良い位のレベルなんだろう…
西部編は構成的にも戦闘が少ない世界だったし、唖々帝さんの成長はあまり見られていなかったはず。



(しかし、ここまで全員にZクリスタルが配布されるとはな)


しかも、どれも見た事も聞いた事も無い技ばかり。
いわゆる某クソゲーで言われる様な捏造奥義なのだが…
そもそもZ技は、本質的にあくまでそのポケモンが使える全力の技。
本家のゲーム中では限られた数しかないだけで、現実的にはオリジナルで作る事は可能なのかもしれないな…



(…となると、タイプの被りも避けられてるか?)


香飛利はノーマル(多分)、唖々帝さんは電気、瞳さんは恐らく格闘。
タイプ一致は考えられてないものの、一応バラけてる。
だとすると、それ以外のタイプを使える対応は…



(解るわけねぇ! どんだけの技を皆が覚えているかも解らないのに…)


結局、考えても予想は出来なかった。
まぁとにかく俺の予想では、守連たち高レベル組は来ていないとほぼ確信している。
恐らく強めに見積もっても唖々帝さんと同格か、その前後って所だろう。
逆に下限は麻亜守ちゃんを除けば、やや不明瞭。
あえて瞳さんや香飛利が選ばれてたし、成長性加味なら麻亜守ちゃん以外は全員有り得るか…



(まぁ、麻亜守ちゃんも成長性は有るだろうけど…)


どっちにしても、ゲーム的にはマゾゲーレベルになる…
開幕1マス目から『さいこふぁいなる』で問答無用にゲームオーバーするクソゲーじゃ無いだろうし。



(やっぱそれなら、ゲーム的に歯応えはそこそこあった方が良い、か)


少なくとも、もう4つ目の世界だ…半分は過ぎる位のライン。
つまり、RPGなら中盤戦…いわゆる冒険に詰まって来てもおかしくない頃か。



(と、なるとまた非戦闘員? 毬子ちゃんや教子ちゃん辺りか?)


他にも明海さんが浮かんだが、タイプ被りを気にすると瞳さんと丸被りなのは気になるな。
ゲーム的には単調なのは問題だし、ここは別のタイプを選ぶべきだろう。

と、なると…土筆ちゃんや未生羅ちゃんか? 可能性は高そうだ。
虫も毒もまだ出てないからな…Z技のタイプでも問題は無い。



(…って、ここまで考えた所で、今の俺にはどうしようも無いんだよな)


結局、考えた所でエネルギーを使うだけだったのに気付いた…
昨日から水も食料も与えられてないし、ぶっちゃけしんどい。
やっぱ寝よう…そうしないと逆に辛いわ。
俺はそう思い、ここからは何も考えずに眠る事にした。

幸いにも、空腹過ぎてマトモに動く気はしない。
今は、無駄なエネルギーを消費しない様にしないとな…



………………………



喜久乃
「…地下牢は、ここからだと向かえない?」

北辰
「せやろな…ワイが出て来た道は上に登るだけやったし」


何でこの人は天守閣目指してるのに、下に下るんですかね?
方向音痴以前の問題でしょ、それ?
私は残念な生き物を見る目で、北辰さんのニコニコ顔を見ていた。
当の北辰さんは一向に気にした風は無く、とにかく笑顔。
って言うか、基本的に天然で明るい人みたいで、悩みとかまるで無さそうな顔です。
はっきり言って一緒にいられると頭が痛くなりますね…

騰湖さんとは、別ベクトルに話が通じませんし…


喜久乃
「この広さの地下が複数あるとなると、入り口は限定されそうですね」

北辰
「とりあえず、その聖はんっちゅうのを探したらええわけや♪」
「まぁその内見付かるやろ、地下なんてそんなに沢山あるわけやないし」


何て楽観的な…本当に頭が痛くなります。
聖さんが囚われているなら、その状態も想定しなくてはならないのに。
下手をすれば、飲まず食わずで放置されているかもしれない。
とにかく、早く見付けて私が助けないと!
そう思い、私が駆け足で走り出そうとすると、またグイッと肩を掴まれて引き込まれた。
私はグリン!と勢い良く首を回し、北辰さんを睨む。

すると、北辰さんは少し苦い顔をして私の前に出た。


喜久乃
「…どうかしたんですか?」

北辰
「こら、あかん…待ち構えられとるわ」


私は言われて、すぐに気配を察知する。
迂闊でした…既に手が回って来ているとは。
ここは速やかに全滅させて、とりあえず隠れれば…


北辰
「喜久乃はんは隙見て走れ、ワイが何とかする」

喜久乃
「それは助かります…ですが、勝算は?」


北辰さんは、特に考えた様子も無く笑う。
私は頭を抱えそうになりましたが、もうどうでも良くなりました。
利用出来るなら、それに越した事はありませんからね。
私は北辰さんが階段を上って行く傍ら、保護色を使い壁に沿って移動する。
そのまま、先行する北辰さんは堂々と階段を上り切り、ニコニコ顔で侍たちの前に立っていた。


侍A
「ほ、北辰 龍虎がいたぞ!?」
侍B
「ひ、引っ捕らえろ!!」
侍C
「覚悟ぉ!!」


3人の侍(ポケモン男)が、同時に北辰さんに刀を構えて襲いかかる。
北辰さんは一切表情を崩さず、やや身を屈めてから両手を自身の手甲にそれぞれ添え、何かを握る。
そして次の瞬間…


バキィィィィンッ!!


と、鉄の砕ける音と共に、3人の侍は刀を叩き折られた。
あまりに一瞬の一撃であり、後からは確認出来ませんでしたが、北辰さんは両手に2本の刀を持っていた様でした。
それは腰に下げている刀では無い…手甲に刀を仕込んでいたのでしょうか?

少なくともさっきのは相当速い抜刀術の様で、北辰さんの手に刀は握られていなかった。
あの一瞬で仕舞い直すなんて、相当なスピードですね…

とりあえず、武器破壊された3人の侍は、ガタガタ震えながらその場で腰を抜かして震えていた。


北辰
「悪いな、ちーっと見逃してくれや」


北辰さんは変わらずニコニコ顔で、侍たちに堂々と背を向ける。
侍たちは、北辰さんが立ち去るのを見るだけで、追う事もしなかった。
私は保護色を維持したまま移動し、侍が見えなくなる所で北辰さんに話しかける。


喜久乃
「…何で切らなかったんですか?」

北辰
「切ったら死んでまうやんけ」


私は開いた口が塞がらなかった。
この人は馬鹿所か大馬鹿らしい…それも救いが無い位の。
やはり、この人は本気で和平を考えていそうですね。
それも、相手の武器は全て叩き壊してでもという条件付きで…

そもそも、そんな事を実行するからには、自分に相当な実力が備わってなければとても成し遂げられない。
どう少なく見積もっても、この人は相当な使い手でしょう。


喜久乃
「…せめて気絶させれば良いのに」

北辰
「ワイ手加減苦手やねん…」


だから基本武器破壊ですか…それはそれで面倒なのでは?
まぁ、これで敵を呼ばれて鬱陶しい事にならなければ良いんですけど…


喜久乃
(とにかく地下です…聖さんの救出が先)


私は保護色維持で壁に沿い、周りに気を配って通路を進む。
流石に腰元や侍がウロウロしている。
だけど、その者たちの注目は全て北辰さんに向いてくれるので、私が見付かる事は無かった。

そんな腰元は堂々たる北辰さんに驚くも、北辰さんのニコニコ顔を見て恐怖は抱かなかったのか、普通にスルー。
侍はポカーンとしつつも、ハッとなって刀を抜くが、直後に叩き割られる。
まるでコントみたいな光景ですが、これも北辰さんの実力あっての事ですね。


北辰
「毎度ご苦労さん♪ 仕事頑張ってや〜」

腰元
「あ、はぁ…?」


「な、何で急に刀が!?」


やはり、凄まじいスピードですね。
抜刀術とはいえ、瞬きする間も無く刀を抜き差ししてるんですから。
並の侍では、見る事は到底出来ないでしょう。


喜久乃
(しかし、この城はやけに水タイプのポケモンが多いんですね)


地下から上がってからは、全ての侍や腰元は水タイプで統一されていた。
一部例外はいるみたいですけど、基本的に魚系のポケモンが多くを占めているみたいですね。


北辰
「ん? ありゃ何ぞ?」

喜久乃
「…室内で、三度笠被る意味あるんですかね?」


通路の先…曲がり角の所で、ひとりの侍が三度笠を深々と被って歩いていた。
口には草の葉っぱを咥えており、何かどっかで見た事ある風貌だ。
しかし、尾骨から伸びている立派な緑の草木を模した尻尾は草タイプを予想させる。

私はここでしまった…と思う。


喜久乃
「…用心棒ですか、草タイプでわざわざ用意して来るとは」

北辰
「ほう、そうなんか…まぁええやん♪ ほな行こか」


北辰さんは私のツッコミを待たずして、真っ直ぐ用心棒に向かう。
あの人には、警戒という2文字が無いんですか!?
私は頭を抱え、北辰さんの後から保護色で隠れる。
壁際にすぐさま移動し、私は用心棒を観察した。


喜久乃
(ジュカイン辺りですね…袖から刀の様な草が見える)


北辰さんはダイケンキですから相性最悪…大丈夫なんですかね、本当に?


用心棒
「おっと、これは奇遇…よもや北辰 龍虎に会えるとは」

北辰
「何や有名やなワイ♪ ほな、急ぐんでな…」


チャキッ!と、用心棒は腰の刀に手をかける。
口元はニヤリと笑い、やる気は満々ですね。
対して北辰さんは構えもしない…やる気が全く見えない。
北辰さんは変わらず歩みを進め、用心棒の射程に容易に入って行く。

完全に馬鹿の行動ですが、そこは流石に大馬鹿。
用心棒が刀を振るう前に、北辰さんは器用に刀の柄から切り落としたのだ。
これでは握っている柄の部分だけが残り、刀は抜けなくなってしまった…流石大馬鹿。
用心棒はポカンと口を開けて柄だけになった刀を見ていた。
結局…北辰さんが強すぎて、用心棒意味無いじゃないですか!

っていうか…


喜久乃
「何でそんなに強いんですか!?」

北辰
「そんなん知らんがな…」


あくまで天然だった。
実際、北辰さんは自分の強さに自信はある様ですけど、ここまで実力差があるとは…
結局、そのまま同じパターンで北辰さんは城内を闊歩して行く。
私はそれに隠れて安全に進んでいた。
っていうか、私の出番無いですね…まぁ一応忍なんで、忍んでて良いでしょう。



………………………



北辰
「地下はこっちか…?」

喜久乃
「そうですね、雰囲気的にも牢屋って感じがします」
「ちなみに天守閣行くなら、そっから上がれると思いますよ?」


私はそう言って、奥の階段を指差す。
北辰さんはそれを見て、ほ〜と唸った。


北辰
「ほな、ワシはここまでやな…天守閣に用があるさかいに」

喜久乃
「まぁ、期待はしてませんけど、精々頑張ってください」
「私は私で、助けたい人がいるんで…」

北辰
「気丈やな〜…子供やねんから、もっとらしくしてもええんやで?」


そう言って、北辰さんは笑う。
私は、はぁ…と、もう何度目か解らないため息を深く吐いた。
北辰さんは、最後までニコニコ顔で笑っている。
何が楽しくてそんなに笑えるのか…? それとも別に楽しくなくても笑っているのか?
もう、訳が解らなくなりそうなので、私は気を取り直して地下への階段をひとりで降りて行く。
今度は肩を掴まれる事も無く、私はただ先に進んだ。



………………………



喜久乃
(…薄暗いですね、とはいえ明かりはある)


地下牢はかなり視界が悪かった。
ひとつふたつのランタンが設置されているものの、蝋燭の火では大して明かりにもならない。
牢屋はいくつもあるが、そこには様々なポケモンが捕まっている様でした。
私は暗がりを利用し、保護色に隠れて牢屋の中を観察して行く。

聖さんは…いた!! 見付けた!!


喜久乃
(聖さん! …って何か妙な服着てますけど、センス変わったんですかね?)


少なくとも、和服でも洋服でも無い服を着ていた。
強いて言うのでしたら、中華風の服でしょうか?
とりあえず今は眠っている様で、冷たい床にひとり寝転がっている。

さて、それなら鍵を壊してさっさと…


喜久乃
(…待ってください、何でコレが牢屋になるんですか?)


私は、ある意味当たり前の事に疑問を抱いた。
いや、これが聖さんの為の牢屋なら問題無い。
ですが、ここには他にもポケモンがいる。
そもそもポケモンの力を持ってすれば、鉄を切り裂き、木は砕ける。
なのに、何でここの囚人はただ捕まっているんですか?

この牢屋はただの木造です。
特に変哲も無い、ただの木で出来た…
こんなの、私じゃなくても破るのは簡単ですよ?


喜久乃
(おかしい…中にはいかにも屈強な奴もいるのに)
(まさか…ここにはとんでもない仕掛けが?)


「おんや〜? 鼠が入ったんですかねぇ?」


私は全身総毛立つ。
突然、気配も感じさせずに、私の背後を取った者がいるのだ。
私は保護色を維持しているが、それでも気配を察知された!?
もちろん所詮は生身だけを誤魔化す保護色だ…目を凝らせば服は見えるし、背景との違いも気付ける。
ですが、ここはかなり薄暗い地下牢。
ただ目を凝らせば解る様な環境では無いはず…


喜久乃
(な、何ですかあの男!?)


私は後にゆっくりと振り向き、相手を見て驚愕した。
その姿はまさに異様。
以前のデスカーンとは、また違う色物が出てきました。
その姿は、形容するなら城…い、いや本当に城なんですよ!?
全く持って意味は解りませんが、本当に城なんです!!


喜久乃
(って言うか城ですな…じゃなくて! 『 シロデスナ』!?)


またしても色物ゴーストとは恐れ入ります。
しかし、これで逆に合点もいった。
シロデスナの能力で牢屋に縛り付けているのですね!!

良く見たら、囚人の足元には砂が蠢いている。
『砂地獄』で縛っていたのか…おまけに体力も奪う。
看守としては優秀なポケモンですね。
しかし、そうなると私は例によって相性最悪。

さて、どうしますかね…?


シロデスナ
「さてさて、どんな風に始末してやりますかねぇ〜?」
「ここの所、イキの良い獲物がいなかったので楽しみです♪」


シロデスナは全身が砂で出来ており、ある程度体を自由に変化させられる様だ。
頭頂部には赤いスコップ(シャベル?)が真上に伸びており、まるで頭から生えている様にも見える。
正直、人間性が希薄過ぎて表現に困ります。

強いて言うなら砂人間…表情すら曖昧であり、目と口がギョロギョロと蠢いている感じ。
服や髪の毛など、おおよそ人間的な特徴は見当たらず、これ程不気味な存在は中々お目にかかれないでしょうね。


喜久乃
(とりあえず、まずは死角に…)

シロデスナ
「フフフ〜♪ イッツァ! ディナーターーーイム!!」


私は、相手の下半身が瞬時に蟻地獄へと変わっていくのを見て驚愕する。
そして、その砂は近くの牢屋にすら進入し、その中にいた囚人は生気を吸われたかの様にミイラ化していき、やがてその全身すら砂に飲み込まれて消滅した。
あいつが言った言葉は、誇張でも何でもなくそのままの意味!
そして、私はこの時点で足を止めて自ら姿を現す。
もはや保護色の意味も無い、いやそんな事すらどうでも良い。


喜久乃
「聖さんに手を出すなら、その薄汚い脳ミソからぶち壊してやりましょうかぁぁぁっ!?」


私は半分理性を失い、もう半分で冷静に敵の能力を分析した。
いくらほとんど素早さが無いシロデスナとはいえ、攻撃範囲と殺傷力は凄まじい。
この攻撃が聖さんの牢屋に到達するまでおよそ10秒!

その時間以内にアイツをぶち殺す!!


喜久乃
(相性不利とか効果無しとか、そんなのは些細な問題ですよ!!)


私はその場で両手を思いっきり床に当てる。
そして、そこから私の地面エネルギーが床に伝わり、床板を剥ぎ飛ばしながら『大地の力』がシロデスナを襲う。
その余波でシロデスナが使った謎の技は、モーゼの十戒の様に真っ二つになった。
これで無効化出来ましたか!?


シロデスナ
「おほ〜! 中々のエネルギー!!」
「ですが! これならまだ私の方が上ですねぇ!?」


何と大地の力を直撃されながらも、シロデスナは反撃とばかりに大地の力で私の技を押し返して来た。
シロデスナの特攻は、マッギョよりも高い…!
私のよりも、威力は…高いですかぁぁ!?


喜久乃
「クソッタレがぁぁぁっ!!」


私は完全に押し返され始める。
このままじゃ、どれだけ力を込めても逆転出来ない。
とはいえ、あの無差別攻撃は逆に止まってる!
でしたら、ここはこれで良しとします!


喜久乃
(ですが…あいつに余裕を与えたら、また同じ事の繰り返し!)


そしてそうなったら、私の負けだろう。
だったらどうする? どういう手を打つ? どんな策を張る?
私はこの3ヶ月で学んだ事を反復し、この状況を変える方法を考えた。
そして…その方程式は、思いの他すぐに浮かんで来た。
私はそれを実行する為のルートを導き出し、確実に勝利出来る可能性が1番高いルートを選択。
そして、そのルートに向かって私は迷わず突き進む!
聖さんを守る為なら、私は鬼でも悪魔にでもなってみせる!!



………………………




「ラリホー!! 夢の世界からこんにちわ!!」

喜久乃
「ここで今すぐぶち殺してやりますよぉぉぉっ!!」


ヒィィィィッ!? 何か騒がしいかと思って目を覚ましたら、いきなり過激発言!?
まさかネタに対してここまで殺意込められるなんて、オジさん初めてだよ!?



「って、馬鹿な事言ってる場合じゃない!!」
「あれ、もしかして喜久乃じゃないのか!?」


俺はその場から立ち上がり、喜久乃らしき忍者の姿を見る。
首に巻いた黄色のスカーフが激しく揺らめき、その忍者は地面の激しい縦揺れに耐えている様だった。


喜久乃
「かはぁっ!?」

シロデスナ
「良いですねぇ〜! さぁ、どこまで耐えられますかぁ!?」


誰と戦っているのかと思えば、相手は砂の化け物。
いや、多分シロデスナだ! まさかあんな異形の砂人間とは…
喜久乃は電気タイプでもあるから、地面技の直撃はマズイ!
喀血したって事は、技を食らってたのか…!!



「喜久…」
喜久乃
「っ!!」


俺が叫ぼうとすると、喜久乃は瞬時に苦無を3本右手で投げた。
それらはシロデスナの額、胸、腹に刺さるが、すぐに砂から落ちる様に床へと転がる。
まるでどこぞの○ロコダイルさんだな…通常攻撃は効きそうにないぞ!?


シロデスナ
「無駄ですよぉ!? そんな物は通じません!」
「そして私のダメージはぁ! ほれ、このとぉぉぉぉぉぉりっ!!」


シロデスナは気持ち悪い高笑いをあげ、自分の周りの砂を集める。
すると、シロデスナの体はより強固になった様だった。
『砂集め』か…? だとしたら回復技だが。


シロデスナ
「さぁ、これで先程のダメージは、かいぃぃぃぃぃむっ!!」

喜久乃
「それは助かります…!」


次の瞬間、喜久乃の目が怪しく光る。
一瞬の事だったが、シロデスナは体をびくっと震わし、何かを吸い取られる様に体の砂を少し萎ませた。
対して喜久乃はニヤリと笑い、口元の血を右手の甲で拭う。
その姿は、先程喀血していた者とは思えない元気な素振りだった。


シロデスナ
「おお…こ、こしゃくなぁっ!」

喜久乃
「思ったより回復しなかったですね…ワザと直撃食らって死にかけたのに」
「まぁ、私の方が数段HP高いみたいですし、仕方無いですね…」


やはり、やったのは『痛み分け』!
シロデスナの回復を見越して、ダメージを調整してやがったのか。
喜久乃って意外に頭が回るタイプなんだな…知らなかった。
いや、でも考えてみればゲームとかやるのでも喜久乃はパズルゲームとか得意だったし、有り得なくはないのか。


シロデスナ
「し、しかぁしぃ!! この程度ではまだまだ余裕ぅぅっ!」
「回復はまだまだ出来ます! 痛み分けでは形勢は変わりませんよぉ!?」


ザッパァァァァンッ!!とその瞬間シロデスナは『濁流』に巻き込まれた。
喜久乃は既に両手を床に当てており、そこから濁流を発生させたのだ。
それは、喜久😱乃の真っ正面から凄まじい勢いで噴出し、半径10mはある濁流がシロデスナを容赦なく襲った。

弱点を突かれたシロデスナは、苦しみながらも体をピキピキと固め始める。
あれは『水固め』だな…一応防御が上がる特性だが。


キンキンカキンッ!!


シロデスナ
「無駄無駄ぁ! この状態の私は防御が2ばぁぁぁぁいっ!!」
「そんな苦無で何になるぅぅっ!?」


喜久乃
「………」


キンキンキンッ!と、更に無言で3本の苦無を追加する。
だが、苦無は刺さる事すら無く、全てが弾かれた。
な、何か意味があるのか!? あれなら特殊技をぶち込んだ方が…


シロデスナ
「ふははっ! ここで私は更にダメージを回復ぅぅぅ!!」

喜久乃
「…良かったですよ、本当に馬鹿な脳ミソで♪」


バキャァァァァンッ!!と、凄まじい音がシロデスナの足元で鳴り響いた。
直後、シロデスナの足元は突然『地割れ』の様に開き、奴はそこに真っ逆さま…
それはまるで、地獄の番犬の口に落ちて行く哀れな亡者の様だった。

そして…地割れに飲み込まれた直後、また凄まじい音で今度は重い何かがぶつかるかの様な音が鳴り響く。
その瞬間、割れた床の穴から大量の血飛沫が噴出。
割れた地面が元に戻る力で挟まれたのか…どうやら、一撃必殺に偽り無しの様だな。



「FATAL KO! WIN KIKUNO!!」

喜久乃
「クククククッ! アッハッハッハッハッ!!」
「まさか本当に、こ〜んなにあっさり引っ掛かるとは思いませんでしたよ…」
「まぁ、かわせないとは思ってましたけどね♪」


喜久乃は余程面白かったのか、高笑いして体を震わせていた。
やはり…ここまでの行動は全て、相手の精神をコントロールする為の布石か。
一見無駄な攻撃に思わせて、あえて敵に余裕を持たせたのは、地割れの発動はあまりに隙が出来るから。
特に相手はやけに回復に拘ってたみたいだし、喜久乃はそれを完全に読んでいたんだな。

とはいえ…見事な絶命勝利だ。


喜久乃
「……はぁ」


喜久乃は笑い疲れたのか、今度は力無く項垂れる。
それなりに強敵ではあったのだろう。
ダメージもあったし、疲労は確実にあるはず。
喜久乃はそのまま俺の牢屋に歩み寄り、鉄格子を軽めの地震で破壊した。
良く考えたら、ここの地下牢って何の為にあるんだ?
ポケモンだったら簡単に壊せるよな…?

俺はとりあえず、気になっていた事から尋ねる事にする、



「…その性格は、元々なのか?」

喜久乃
「さぁ? 少なくとも、私は変わった記憶は無いですね」
「聖さんの為だったら、私は誰だって殺せますよ?」


その妖艶な瞳は、およそ12歳の少女とは思えなかった。
だが、コイツも何だで女胤や騰湖たちと一緒の世界で俺と戦い抜いたんだ。
今思い出しても、あの頃の喜久乃とはほとんど会話した記憶も無い。
基本的に無言で、所々ツッコミがあった程度の気もする。

まぁ、あの世界は基本的に女胤が濃すぎたせいで、他の面子が霞みまくってたんだが…
ぶっちゃけ女胤から聞かなきゃ、喜久乃が元仲間とは思ってなかったわけで…



「まぁ、これも年上の役目か…」

喜久乃
「はぁ…?」


俺は、問答無用で喜久乃の頭を拳骨でぶん殴る。
かなり鈍い音がし、喜久乃は膝をカクンと揺らして頭を抱えた。


喜久乃
「…! 何するんですかぁっ!?」


「Be Quiet!! ダマラッシャイ!!」
「簡単に殺すとか言うな!! 命を安く扱うな!!」
「どんだけ悪党でも、殺すからにはその死の責任を取れ!!」

喜久乃
「!?」


喜久乃は、涙目で驚いていた。
考えてもいなかったって顔だな…

だが、俺にはよぅく解った…喜久乃は善悪の感情が希薄すぎると。
今までは平和な世界だったから、その側面に気付かなかったんだ…
だけど、こんな世界で喜久乃にソロプレイさせりゃ、モロにソレが引き立って来る。
俺は家族なんだから、そんな喜久乃をちゃんと叱ってやらないとならないわけだ。



「良いか? 相手を倒すのには、何も言わない」
「救い様の無い外道に、情けをかけろとも言わない」
「だけど誰かを殺すからには、その死を良く考えろ…!」
「もう戻って来ない命は、殺した奴が覚えておかなきゃならないんだからな!?」

喜久乃
「うぐ…! うぅ…!」


あらら、泣いちまったか…いきなり拳骨はハードすぎたかな?
俺は、泣きじゃくる喜久乃の頭を今度は優しく撫でてやった。
すると喜久乃は更に泣きじゃくり、目を真っ赤にし始める。
そしてそのまま俺の腰に抱き着き、俺の胸に顔を埋めて静電気を撒き散らした…仕返しかコノヤロウ!?



「ええい! 痺れて動けんだろうがトラップポケモン!?」

喜久乃
「じがだないじゃないでずがぁ!! やっど! やっど会えだのにっ!!」


もはや滅茶苦茶だった。
だが、やはり喜久乃はまだ小さな女の子なのだ。
12歳(今年13)という、ギリギリ中学1年の少女は、訳も解らずに異世界に跳ばされてひとり生きていたのだから…



「…よく、生きていてくれたな」
「俺は、それだけで嬉しいよ…」

喜久乃
「うわぁぁぁんっ!! 聖さん、聖さぁぁぁぁんっ!!」


しばらく、俺は地下牢で喜久乃に抱き締められた。
ついでに麻痺が進行したのは言うまでもなかった…チクショウ。



………………………




「ええい、麻痺治しはまだかっ!?」

喜久乃
「すいません、自分麻痺しないもんで…」


地面&電気ですからねっ!! これで『柔軟』なら完璧ですけど!!
俺は尚も痺れる体を動かしつつ、喜久乃と一緒に天守閣を目指していた。
そこには丹羽がいる…確実にアイツがボスだろう。


喜久乃
「…ですけど、ボスを倒すのがクリア条件って」
「それって、もし聖さんが来る前に私が倒してたらどうなってたんでしょうか?」


そりゃ確かに疑問だな…その場合はどうなるんだ?
いや、俺がクリアアイテムで死なない以上、恐らくボスも同様の処理があるはず。
恐らく、ボスとの戦いは俺の来訪と連動しているはずだ。
もしくは…仮に倒せたとしても、その時は別のボスが生み出される…とか?



「…とにかく、俺にはある程度の予想しか出来ない」
「少なくとも、俺は既に3つの世界で3人と再会した」
「そして、お前の後にまだ3人いる計算だ」

喜久乃
「後…3人、でも既に助かった3人は、また行方不明?」


そう…結局助かった者も、またゲートに吸い込まれているのだ。
それは単純に考えても、元の世界に戻ったとは限らない。
むしろ、まだ何かある気もする…俺の勘はそう言ってる。



「喜久乃ならどう考える? 俺が7つの世界をクリアした時、何が待っていると思う?」

喜久乃
「99%以上、真のラスボス登場ですね…あるいはラストダンジョン」
「少なくとも私がプレイヤーの立場なら、最後に全員でラスボスに挑むのか?と、期待してプレイする所ですよ」


全くもって同意見だ。
ここまでゲームとして成立させてるなら、最後に全員集合は鉄板のシナリオだろう。
無論、それが無い作品もあるにはあるが、普通なら作るのがごく自然のはず。
つまり、戦いは何も終わっちゃいない…俺は、相当な思い違いをしている可能性もあるかもな。



(初めからクリア出来る事を前提としたら、それはまさしく罠か?)
(下手をすれば、最後の最後は皆の成長いかんで決着を決める事前提…?)


俺は少しゾッとした。
下手をしたら、既に半分ミスっているのかもしれないんだ。
俺は皆を心配するあまり、クリア速度を重視したプレイを優先させた。
それはつまり、皆の成長をそこで止めたとも言える。
別に、ボスが倒れるまでシナリオクリアにならないなら、レベル上げは自由なのだ。



(とはいえ、香飛利の時は四の五の言ってられなかったからな)
(唖々帝さんの時は延ばそうと思えば延ばせたか?)
(逆に瞳さんは時間リミットが勝手に来た感じだったが…)


考えてもみれば、そこまでの自由度は無かったのかもしれない。
負ければ即死が待っている混沌のゲームで、突発的なイベントをただのレベル上げに考えるのはかなり無理がある。
やはり、シナリオ進行速度も予想通りと思うべきか?


喜久乃
「…あまり考えない方が良いですよ、これは」


「え?」

喜久乃
「ぶっちゃけ、私たちを信じてください」
「そしたら、ラスボスなんざ捻り殺してやりますよ!」


喜久乃はあっさり過激発言をする。
俺は少し呆気に取られたが、途端に笑いが込み上げて来た。
そうだな、そんなに簡単な事だったな。



「喜久乃…言葉を言い換えろ」

喜久乃
「ド低能のクサレ脳ミソなラスボスなんざ、脳髄引っこ抜いて爆殺○ェイタリティしてやりますよ!」


「さっすが喜久乃さん! 更に悪化している!!」


喜久乃にネタをかまされるとは中々新鮮だ…
俺たちはそんなやり取りにニヤリとしながら、ふたりで天守閣を目指す。
そして、そこには既に用心棒らしきポケモンがふたり程倒れていた。
偉く離れて吹き飛んでるな…派手にやられた様には見えないが。


喜久乃
「聖さんに負けず劣らずの大馬鹿がやったんでしょう…どうせ傷ひとつ付いてないですよ」


喜久乃はそう言って断言する。
成る程、大馬鹿ね…そりゃ興味あるな♪
俺たちはそのまま天守閣に入り、ボスと思われる丹羽の元に辿り着いた…



………………………




「丹羽! お前の野望もここまでだ!!」

丹羽
「ほう…まさか砂除(さじ)を倒すとはな、それとも貴様の力を見誤ったか?」

喜久乃
「やったのは私ですよ! あんなクサレ外道、ミンチにしてやりましたよ!」


喜久乃の過激発言に、丹羽はクククと笑う。
それを見た喜久乃は不思議そうな顔をし、こう丹羽を問い詰める。


喜久乃
「…北辰さんはどうしたんですか? ここに来たはずでしょう?」

丹羽
「知りたいか? ならばここまで来るがいい!!」


丹羽はそこから背中側の障子を破り、バルコニー(?)に出る。
そしてそのまま真上に大ジャンプし、屋根へ上った様だ。
あの体型で随分身軽だな…まぁニョロトノは鈍足って程のポケモンでもないし、アレ位は蛙的にフツーなのかね?


喜久乃
「追いますよ聖さん!!」


「よし、頼んだぞ喜久乃!!」


俺たちはすぐに後を追った。
喜久乃は一足飛びで屋根に飛び移るが、当然俺にそこまでの身体能力は無い。
なので無理矢理ジャンプして屋根の端に掴まり、力技で屋根によじ登った。
くっそ…腹減って力が出ねぇ〜!


喜久乃
「北辰さん!?」

丹羽
「ふははははっ! ワシに逆らう者はこうなるのだ!!」


見ると、屋根の天辺左右にある鯱(しゃちほこ)のひとつに、大柄の男が血塗れで寄りかかっていた。
その姿はまさに瀕死と言えるレベルで、丹羽の強さを想像させる…


喜久乃
「…北辰さん、貴方本当に大馬鹿なんですね」


喜久乃は北辰さんとやらの姿を見て、キツく拳を握った。
間違いなく怒ってるな…でも、あの時の様な大きな怒りではない。
まるで、沸々と煮えたぎる様な静かな怒りだ。
そしてギリッ…!と、歯を食い縛って丹羽を睨み付ける。
技じゃないので、残念ながら防御は下がらないが。


丹羽
「貴様もすぐに後を追わせてやろう! そして丹波の奴もこれまでだ!!」

喜久乃
「何勘違いしてんですか? あの北辰さんが、簡単にやられるわけ無いでしょうが…」
「どうせ、斬るの嫌がってワザと負けたんですよ」
「本っ当に大馬鹿ですよ…! 真面目にやったらアンタなんか瞬殺出来る位強いのに」


あの喜久乃がそんなにも褒めちぎるとは…あの人はそんなに強いってのか?
でも、斬るのが嫌だからって…どこぞの有名な偉人さんですか、その人は?


丹羽
「ふんっ! それがどうした? 人も斬れぬ男が、そもそもワシに勝てるか!」
「そして、見るが良い!! これからこの世界を支配する気高きワシの姿を!!」


突然、丹羽の体が膨張を始める。
その姿は風船の様に膨らみ、体躯は倍以上に大きくなった。
そして、顔はより本物のニョロトノに近くなる。
目や口は完全に蛙のそれとなり、不気味さを通り越して気持ち悪いと言えるレベルだ。
ある意味、先祖帰りか…?


喜久乃
「…はぁ、何かテンション下がってきました」
「これがこの世界のボスとか…本当にちっちゃいですね〜」


喜久乃は極めて冷静だった。
ため息を軽く吐き、腰の後ろに差してあった短刀に手をかける。
その持ち手には、Zクリスタルと思われる菱形の石が組み込まれていた。
色は黄土色…となると地面タイプ用か!?


丹羽
「ふははははっ!! すぐにあの世に送ってやる!!」


丹羽の声は野太く、異形のそれに近くなっていた。
そしてすぐに雷雨が発生し、屋根の上はかなりの暴風が吹き始める。
俺は吹き飛ばされない様に屋根に這いつくばり、天辺で相対する丹羽と喜久乃を見ていた。


喜久乃
「ちっ…『雨降らし』ですか、何気に厄介な特性ですね!」


喜久乃はそう言いながらもすぐに指先を天に向け、電気エネルギーを溜め込む。
そしてそのまま指を振り下ろし、強烈な『雷』がまず丹羽を襲った。


ピシャァァァァァァァンッ!!


まさにそれは轟雷。
流石に守連とは比較にならない弱さだが、それでもタイプ一致の大技。
弱点を突かれれば、いかにあのサイズでも…


丹羽
「温いわぁ!!」


ズバシャァァァァァァッ!!と、雷に打たれた丹羽が口からごんぶとの『ハイドロポンプ』を放つ。
喜久乃は隙を突かれた感じだが、その場で身を捩って何とかかわした。
だがその威力は凄まじく、掠っただけで喜久乃の小さな体はバランスを崩して転んでしまう。
喜久乃は歯を食い縛り、何とか這いつくばって落下を阻止してみせた。
そして、すぐに体から再び電撃を放つ。
今度は網状の『エレキネット』だ! 丹羽は全身を電気の網で包まれた。
が、それでも丹羽には全く通用しない…


丹羽
「ふははははっ!! この程度か!?」

喜久乃
「何て馬鹿げた特防してやがんですか!?」


エレキネットは瞬時に破られ、丹羽は共に巨大化した扇子を振り回して泥の塊を放った。
『マッドショット』か!? 地面も喜久乃は弱点なのに!!


喜久乃
「があぁっ!!」


喜久乃は、這いつくばったままマッドショットの直撃を受けて苦しむ。
だが、次の瞬間には目を光らせ、『痛み分け』の準備に入った。
体力差があるなら効果は大きいはず! これで相手の体力も減れば…


丹羽
「むぅ…!? ふぅはぁ!! どうやら、あまり効果は無かったみたいだな!?」

喜久乃
「クソッタレです…! それ程HP差が無いってんですか!?」


どうやら、予想に反して丹羽のHPは高くなかった様だ。
仮にも雷とエレキネットを受けてたし、痛み分けじゃ起死回生にはならないか…!


丹羽
「これでトドメにしてやる!! 渾身のハイドロポンプで死ぬが良い!!」


丹羽は大きな口を開け、そこからごんぶとのハイドロポンプを放つ。
喜久乃はマッドショットの影響で動きが鈍い。
このままじゃ、死ぬ!?



(クソッ! ここからじゃ間に合わない!! せめて俺が盾になれれば!!)


俺は、この大嵐で身動きひとつ取れない自分の無力さを呪った。
喜久乃はあんなにも頑張ってるのに、報われないのか!?
こんな所でゲームオーバーになるのか!?
俺は、夢見の雫の使用を覚悟する。
喜久乃を死なせるわけにはいかない、最悪コンティニューしてでも…!


喜久乃
「…!?」


ズバシャァァァァァァッ!!


その時、俺は目を疑った…
ハイドロポンプが喜久乃に迫り、直撃する瞬間…それは何かの力によって四散したのだ。
そして同時に、喜久乃の前には大柄の男が立っていた。
それは、全身血塗れでおよそ戦えるとは思えない、青いザンバラ髪の角付き侍。


丹羽
「き、貴様!?」

北辰
「いやぁ〜、ちぃ〜と眠っとったわ♪ お陰で体力回復やで?」

喜久乃
「北辰さん…貴方って人は、こんな状況で!」


喜久乃の驚く顔を見る事無く、大きな背中で守ろうとするその男は、まさに漢だった。
その顔はニコニコと笑顔であり、頭から血を流してるのに全く緊迫感が無い。
だが、放っている気は尋常じゃない!
北辰さんは、腰に差しているフツーよりも一回り大きな太刀に右手をかけた。


喜久乃
「北辰さん!?」

北辰
「心配すな喜久乃はん…これは大人の仕事や」
「せやけど、ワイはバカやさかいアイツには勝てん…」
「せやから、後は任せるわ…」

喜久乃
「北辰さん、 まさか死ぬ気ですか!?」

北辰
「さ〜て、お立ち会い! 滅多に見れへんで、ワイの本気は!?」


北辰さんは、笑いながらも全身から虹色のオーラを放つ。
これは、もしかしなくても全力技!?
まさか、北辰さんも使えるのか!?


丹羽
「何をしても通じんぞ!? ここで死ねい!!」


丹羽は、再びハイドロポンプの体制に入る。
丹羽は正面から力技で押し切るつもりだ。
だけど、北辰さんはそれを笑って返すつもりでいる!
一体、どんな技が飛び出すんだ!?


北辰
「名付けて、北辰流抜刀術! 『退魔神剣 流転』(たいましんけん るてん)!!」


北辰さんは迫り来るハイドロポンプに対し、ただ単純に刀を抜刀しただけ…
だが、それは北辰さんの全力技であり、最終奥義のZ技!!
そのただの居合いは、恐るべき速度と気を持ってハイドロポンプの水流を容易く断ち切る。
そして、その衝撃波は丹羽の体を両断……せずに、背中に突き抜けた!?



「ま、まさかあの奥義は、あまりの速度の為に衝撃が後ろに突き抜け、背中から両断されると言われる…!」

喜久乃
「南斗○鶴拳!! って、んなわきゃないでしょうが!?」


おっと、こんな時でもツッコミが良いキレだな!
俺はネタに満足し、改めて丹羽を見る。
丹羽はピタリと動きを止め、グリンと目を回してその場で膝を着いた。
見た目は何ともないのに…一体何が?

俺はこの時点で北辰さんが振り抜いた刀を見て驚愕した。
北辰さんのあの刀は…逆刃刀じゃないか!?
まさに、人を斬る為の刀じゃない! 初めから、北辰さんは『峰打ち』をする為だけにあの技を振るったのか!!
だとしたら、倒せないのは当たり前…だって、峰打ちの効果は。


喜久乃
「サンキューですよ北辰さん!! 貴方はやっぱ最高の大馬鹿です!!」
「んじゃ、ここでこっちも初お披露目!!」
「私の師匠、水刃さんから受け継ぎしこの短刀に秘められた力で、トドメ差してやります!!」


今度は喜久乃がその場から大ジャンプし、短刀を抜く。
そして喜久乃の体は虹色のオーラに包まれ、地面のエネルギーらしき力が短刀に込められている様だった。
そして喜久乃は気を失っていそうな丹羽の脳天を見据えて、短刀を両手で落とす。
丹羽の脳天に深々と刺さった短刀は光輝き、そして喜久乃はこう叫んだ。


喜久乃
「名付けて! 『超振動炸裂剣』(ちょうしんどうさくれつけん)!!」
「地震のエネルギーを、直接脳ミソで受けやがれです!!」


喜久乃の刀から地震のエネルギーが直接丹羽の脳ミソを揺さぶる。
その力は凄まじく、丹羽の頭は派手に内部から破裂した。
オーノー…またしても絶命勝利! 喜久乃さんは本当に容赦が無いな…


しかし、今回ばかりは仕方無いかもしれない。
北辰さんでトドメをさせない以上、あそこで仕留めなければ全滅も有り得ただけに。


北辰
「はぁ〜大爆殺やな…こら見事なもんや」

喜久乃
「はぁ…はぁ…」


喜久乃は血塗れになりながらも、息を荒らげて刀を握ったままその場から後に倒れた。
俺は屋根から転がり落ちて来る喜久乃の小さな体をしっかりと受け止めてやる。



「よくやった喜久乃…!」

喜久乃
「…やってやりましたよ、北辰さんの分までね♪」


「よ〜し、そんな子供は修正してやらないとな〜」

喜久乃
「ちょっ!? 待ってくださいよ!! 今動けそうに無いですから!!」


俺は反省の無さそうな喜久乃に拳骨を握ると、喜久乃は慌てて両手を振って拒否する。
そんな喜久乃を見て、北辰さんがニコニコ笑って近付いて来た。
近くで見ると本当にデカいな…体付きも凄いし、流石って感じがする。


北辰
「とりあえず、和平は無理やったわ…やっぱワイには荷が重かったな」

喜久乃
「何言ってんですか…本当なら一撃であんなザコ倒せるくせに」
「あの最後の技、ワザと相手を殺さないギリギリで止める効果でしょ?」

北辰
「…まぁな、それがワイの限界や、ワイには人は殺せん」


「でも、尊敬します…それだけの力がありながら、自分の信念を決して曲げない真っ直ぐさを」

喜久乃
「聖さん…」


俺の言葉に、北辰さんはハハハッ!と、嬉しそうに笑ってくれた。
喜久乃は逆に複雑そうに顔を背ける。
そして、北辰さんは東の海を見てこう言った…


北辰
「見てみい、世界の夜明けや…」

喜久乃
「…はい」

「うん…」


俺たちは、既に夜明けを迎え始めた水平線を見て感動する。
純粋に綺麗だよな…やっぱり。
だけど、俺たちにはそれを楽しむ猶予も無いらしい…


喜久乃
「さ、聖さん…!?」


「大丈夫…俺は信じてる、お前たちが必ず勝つって!」


俺の笑顔に、喜久乃は強く頷く。
この先に何が待つのかはまだ解らない。
でも、俺たちは絶対に負けない!
例え何があっても、俺たちは皆で元の世界に戻るんだ!!
その決意の元、俺たちはゲートに吸い込まれた…



………………………



北辰
「…行ってしもたか」
「ワイも、信じとるで…」
「喜久乃はんたちにも、必ず夜明けは来ると…」










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第4話 『外道に生きる資格は無い! 爆殺!! 超振動炸裂剣!!』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/05(日) 19:55 )