とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない














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第4章 『新たなる再会』
第6話

「な、何かとてつもなく嫌な予感がしてきたのぅ…!」


俺はとある日の放課後、強烈な寒気に襲われた。
ほんの一瞬ではあったが、俺は確実に何かを感じ取っていたのだ。
とはいえ、所詮俺はただの人間。
超能力やオカルトの類いなど、例外を除いて使えない。
何かを感じ取れたかといって、それをどうこう出来るとは限らないのだ。



「ちっ…例によって今は誰もいないのか」


今日は俺も掃除当番だったからな…
流石に関係無い奴らはさっさと帰ってるし、他の当番も終わればスタコラサッサ…
俺は別に焦ってもいないので、ゆっくりと帰る準備をしていた所にコレだ。

俺は、とりあえず今の状況を考えてみた。
穹がこちらに来た時点で、ディアルガまで来ているのは解っている。
しかも…これは混沌世界ではなく、現実世界に紛れた存在としてだ。
つまり、穹やディアルガは守連たちと同様に、人との生活を営んでいるって訳だな。



(しかし、そうなるとジガルデやルギアも来る可能性はあるのか?)


同じボス幹部だ、有り得なくもないだろう。
とはいえ、ジガルデは色々無茶な身体だし、ルギアは噛ませ同然の扱い。
余程の改変入れない限り、あのまま人間社会には入れない気もするが。



「いた、魔更 聖…」


「ん? あれ、赤城さん…こんなタイミングに珍しいな、どうかしたのか?」


俺の教室に入って声をかけて来たのは、隣のクラスの赤城さんだった。
いつもだったら、赤城さんはすぐに家に帰ってしまうから、このタイミングに会うのは何気に初めてだったり。
俺はとりあえず席に座ったままだったので、その場から立ち上がる。

すると、彼女は何やら怪しげな顔をして…


沙譚
「……なぁ、アタシの事どう見える?」


「は? どうって、フツーに…」


俺は言いかけて止まる…この時点で、彼女がフツーじゃない事に気が付いたからだ。
赤城さんは露骨に顔を恍惚とさせ、息を荒くし俺の方へ無造作に近寄って来ている。

俺は一瞬で身構えるが、赤城さんは歩きながら制服の上着を脱ぎ捨て、ブラジャー1枚になった。
今は既に7月、夏服は解禁しているので上着を脱げば当然即下着だ。
赤城さんの胸は決して大きい方ではないが、それでもちゃんと膨らみはあり、その弾力は下着の上からでも解る物だった。

俺はこんな状況でも、かなり頭は冷静になっている。
そして考えた…この赤城さんは何かに操られているのではないか、と?
だとしたら、俺を狙う何者かが既に放たれている?
混沌の違和感は無かった、となると…これも現実に巻き込まれた何かなのか?


赤城
「なぁ…? 今なら誰もいないし、ここで1発アンタの濃〜い奴アタシに注入してくんない?」


赤城さんは、本来絶対に言わないであろう卑猥な事を言って、スカートをたくし上げた。
すると、そこには下着すら穿いておらず、マトモに赤城さんの秘部が…


ドガシャァッ!!


聖&沙譚
「!?」


その瞬間…突然、俺たちの間を何かが通り抜けた。
俺は何事かと思ってその先を見ると、黒板に何かが突き刺さっているのを確認した。
いや何かじゃない…これは、鞄だ。

って!? 鞄って突き刺さるモンでしたっけ!?
少なくとも黒板はパラパラと破片を溢しており…鞄は角を直角に突き立てたまま、プラプラと揺れている。
俺は、若干顔が青くなるのを感じた。
そして赤城さんはスカートから手を離し、俺よりも更に青い顔でギギギ…と首を後ろに向けていく。

俺もその視線を追うと…そこにいたのはまさしく鬼だった。


沙譚?
「オイコラテメェ? 人様の身体で何しようとしてんだオラァ!?」

沙譚
「ヒィィィィッ本物ぉ!? 何で? もうさっさと帰ったんじゃ!?」


どうやら、半裸の赤城さんは偽物という事が判明した。
そして、鬼の形相で黒板に鞄を突き刺したのは、本物の赤城さんらしい。
つかマジで怖ぇ! 一体どうやったら鞄が突き刺さるんだっつーの!?


沙譚
「ちょっとばかし忘れ物してたのを思い出してなぁ…そんで教室に戻ろうと来てみれば、テメェと魔更がナニしようとしてやがったのを見かけたんだよ!」
「魔更が誰とヤろうがアタシはどうでも良いが、よりにもよってアタシに化けてヤりやがるとは良い度胸じゃねぇかテメェ!?」

偽物
「ヒィィィィッ!! 計画失敗!? 後まだヤッてない!!」


そう言って偽物は身体をグニャグニャに変形させ、別の姿に変身する。
その姿は、俺も見覚えのある、まさしく真性のHENTAIだった。



「お、お前はぁっ!?」


「はぁ〜い♪ 良い子の皆〜勃起してたか〜い?」
「皆のオナペット、メタモンちゃんだよ〜♪」


遂に、遂に来てしまったのか…
ある意味、ラスボスよりも凶悪な究極キマイラが!?
もはや、コイツがいては混沌を超えてセクシャルが始まる…まさしくこの世の終わりだ…


メタモン
「いやぁ〜、や〜っと聖様の精子で孕ませてもらえると思ったら、いてもたってもいられなくて、子宮(偽装?)がキュンキュンしてたの〜♪」

沙譚
「とりあえず黙れボケ!!」


赤城さんはボグシャアとメタモンの土手っ腹に喧嘩キックを入れる。
するとメタモンは体をくの字に曲げ、教卓に吹っ飛んだ。
よ、容赦無ぇな…する必要も無いが。


メタモン
「くふ…『柔軟』の特性により打撃は通用しませんぜい?」


「いや柔軟ってそういう特性じゃねーから!!」


メタモンはそれこそ体をグニャグニャにし、軟体っ振りをアピールしていた。
赤城さんはそれを無視して、とりあえず鞄を黒板から引っこ抜く。
そして、鞄をヒュンヒュンと振り回し始めた。
え? 鞄ってそんな風切り音鳴ります?


沙譚
「なら、これはどうだ?」


ザシュッ!


メタモン
「あひゃあ!?」


何と赤城さんは鞄の角を掠める様にしてメタモンの顔を切り裂いた。
とはいえ、血が出るわけでもなく、メタモンの顔は切り裂かれてもすぐに別の場所に顔が出来るだけ…


メタモン
「ふふ〜ん♪ 私は内蔵の位置を好きな場所に移動させることが出来る!」
「つまり急所は常に移動し、致命傷を受ける事は無い!」


「○愚呂兄かよ!? つか変身してないメタモンはむしろ貧弱なはずなのに!!」


コイツは、ありとあらゆる意味でギャグ補正を受けすぎている。
もはやメタモンですら無いのかもしれない、コイツは…


沙譚
「ちっ、物理的なヤキはやっぱダメか…まぁ良い、さっさと帰るぞクソ野郎!」

メタモン
「いや〜ん! せめて精子貰ってから〜!!」


「ちょっ、ちょっと待て!! 赤城さん、そのメタモンとどういう関係なんだ!?」


赤城さんはメタモンの首根っこ?を掴んで、連れて帰ろうとしているのだ。
俺はそれに疑問を覚え、思わず赤城さんを引き止めた。
すると、赤城さんははぁ…と大きなため息をひとつし、こう語り始める。


沙譚
「…ついこないだだよ、コイツが突然現れたのは」
「たまたま峠をバイクで走ってたら、コイツを轢いちまってな…慌ててマシン止めたら、コイツがタイヤに絡まってたんだ…」
「後は成り行きで連れて帰っただけだ…まぁ気にすんな」

メタモン
「今は悶々(もんもん)って名前貰いました〜、以後よろしく〜♪」


それだけ言って、ふたりはすぐに教室を出て行った。
俺は唖然とし、しばらくその場から動けなかった…



「マジかよ…? ホントに大丈夫なのか赤城さん?」



………………………



沙譚
「ちっ、やっぱ対策考えないとダメか」

悶々
「え〜良いじゃないですか〜、沙譚さんだってHは興味あるでしょ?」

沙譚
「あったとしても、アタシの姿でヤる理由にはならねぇだろ!?」


アタシが悶々に額を押し付けてメンチを切ると、悶々は冷や汗を垂らして目を反らす。
この後の事を想像したな?


悶々
「も、もしかしてお仕置きですか〜?」

沙譚
「今日は油風呂だ…ゆっくり楽しめ」

悶々
「ヒィィィィッ!? それだけはご勘弁を〜!!」


コイツには、物理的な攻撃はほとんど意味を成さない。
従って、コイツへのお仕置きはそういうのに限る。
やれやれ、少しずつでも言う事聞く様にしねぇとな…



………………………



沙譚
「………」

悶々
「あ、もう出るんですか〜?」


アタシがライダースーツでマシンの前に立つと、ほぼ同時に悶々が現れる。
コイツにも今は服を着せてはいるが、肌の色から何まで薄紫だからとにかく見た目が目立つのが厄介だ。
なので、外に出る時は極力誰かに変身させているのだが…


沙譚
「また付いて来る気か?」

悶々
「はいっ、折角のご主人様ですし、ご奉仕しないと〜♪」


そう言って悶々は手をわきわきさせ、いやらしい動きをする。
コイツはぶっちゃけ両刀使いらしいから、マジもんに女孕ませる事も出来るらしい。
精神的には極めてニュートラルであり、男でもあるし女でもある。
逆に言えばどちらでもないとも言え、コイツにとっては性別なんてものは些細な違いらしい。


沙譚
「とりあえず、来るなら変身してメット付けろ」
「妙な事しやがったら、振り落とすからな?」

悶々
「大丈夫ですって、胸揉む位で止めときますんで♪」

沙譚
「よし、そこに座れ…まずは誰が主人か解る様に焼き印してやる!」

悶々
「ヒィィィィッ○ING!? それとも○D!?」


悶々はとにかく扱いが難しい。
悪意は一切無いだけに、本能的にコイツは性的な欲求をぶつけて来るのだ。
元々、前にいた世界でも繁殖の為に活躍していたらしく、コイツにとってはそれが当たり前になっちまってるのも問題か…


沙譚
「とりあえず、嫌なら来るな」
「来るなら、それなりに覚悟して来い…」


アタシがそう言ってフルフェイスのメットを悶々に放ると、悶々はそれをキャッチして頭に被る。
そしてアタシの姿に変身し、悶々はマシンの後部座席に乗ってアタシにしがみついた。
アタシはそれを確認すると、アクセスを回す。

そして、今日もアタシの日課は始まるのだ…



………………………



オオオオオオオオオオッ!!


悶々
「うひょーーー! やっぱ速い〜!!」

沙譚
「お前、よくこのスピードでもビビらねぇな?」


少なくとも、今アタシは180kmを出してる。
並の人間なら、声すら出せねぇ位だがな。
コイツは初めからこのスピードでもこうやって楽しんでいる。
ある意味不思議な奴だ…


悶々
「僕って、やっぱり変身しないとなーんにも力無いですからね〜」
「自分の力でこんなスピードなんて出せないから、こういうの大好きなんですよ〜♪」

沙譚
「だけど、変身すりゃ出来んだろ?」

悶々
「そりゃ勿論! ピジョットになればマッハで飛べますよ♪」


そりゃトンでもねぇな…やっぱコイツは色々と頭のネジが足りてねぇんだ。
普通の人間とは感性が違いすぎるから、アタシみたいな偏屈に懐いちまったのかね…?



………………………



沙譚
「ほらよ、スポーツドリンクで良いよな?」

悶々
「どうも〜♪ やっぱこれが1番!」


アタシたちは途中のコンビニで小休憩を取る。
そして飲み物をふたつ買い、アタシたちはそれを飲んで休んでいた。


悶々
「んぐんぐんぐっ! ぷはぁ〜♪」


悶々は体液にもっとも近いと言われる、某スポーツドリンクを一気飲みする。
コイツはこれが大好物で、大抵は毎日飲んでいる位だ。
コイツにとっては変身ってのは意外に疲れる行為であり、そうポンポン変身すると軽く息切れはするらしい。


悶々
「いやぁ〜人間の世界って便利だし、平和で良いな〜♪」

沙譚
「お前の世界は、不便で平和じゃ無かったのか?」

悶々
「ですね〜大災害で9割のポケモンが死んじゃったし、地殻変動で殆どの大陸は分断」
「当然残された文明も僅かで、大抵は生きていくのが精一杯の世界でしたから!」


悶々は笑いながら、そんな事をあっさりと述べる。
そこには悲しさとか悔しさとか、そういう感情は何も無かった。
淡々と、そんな絶望的な状況を笑って語る。

…アタシと同じ顔で言われるのは少々シュールだが。
まぁ傍目に見られたとしても、双子の姉妹とでも思われる程度だろう。


沙譚
「お前は、そんな世界でも絶望はしなかったのか?」

悶々
「ん〜よく解んないですね〜」
「僕の場合、ほぼ不老不死だから、世界がどうなろうがあんまり影響無いですからね〜」
「食べる物も、変身して対応した食事を食べれば良いし、繁殖の為に利用される事も普通」
「自分を増やす事は滅多に出来ませんけど、僕たちメタモンは少しづつ分裂を繰り返して一応数は増えますし、正直絶望とかは感じた事無いですね〜」
「そもそも、他のポケモンは人化してますけど、僕は実際どうなんでしょうか?」
「こうやって、ただ人に変身しているだけなのかもしれませんよね?」


ある意味怖く、ある意味空しかった。
メタモンである悶々は、そもそもポケモンの人化という奇天烈な現象でさえ、自分にとっては何も変わらないと言うのだ。
あまつさえ、自分の人化はそもそも意味が無いとも取れるこの言動…

悶々にとって、本当に怖い物は何なのか?
アタシは、何となく知りたいと思ってしまった。


沙譚
「お前、怖い物とかあるのか?」

悶々
「な、何? まさか新しい拷問の模索!?」


アタシはメンチを切って黙らせる。
そして悶々は、渋々こう話し始めた…


悶々
「強いて言うなら…自分以外の全生命が消える事ですかね?」
「まぁそんな事、普通有り得ませんけど」
「メタモンにとっては、変身する事が全てです」
「それこそ鉱物植物問わず、僕たちは変身してその種族の数を増やす事が出来る」
「そんなメタモンでも、メタモンには変身出来ないんです…」
「もし最後にメタモンだけが残された時、僕たちは虚無となります」
「ただただ、何も無い永遠を、分裂し続けるだけの虚無…」


アタシと同じ顔で、悶々は無表情に、そして無感情に言い放った。
アタシはそれを想像し、軽く恐怖を覚える。
有り得ない事とはいえ、それはまさに虚無。

メタモンはメタモンに興味を抱かない。
逆に、メタモンは自分以外の全てが興味なのだ。
だからこそ、悶々はどんな事に対しても常に楽しもうとする。
特に…エロ関係に対しては!


沙譚
「ちっ、お前はやっぱ頭がイカれてるよ」

悶々
「かもしれませんね〜、脳ミソが存在するならですけど♪」


あながち冗談でもないのかもな…
コイツは脳ミソすらコピー出来るんだから。



………………………



その後、アタシたちは夜遅くまで走り続けた。
悶々は、それをいつも楽しそうにしている。
アタシは、何だかそんな悶々が少しだけ羨ましかった。


沙譚
「………」

悶々
「ふい〜、今日も堪能した〜♪」

兄貴
「おい沙譚、何かお前が出て行った後に男が来て、これ渡してくれって頼まれたんだが、一体何なんだこりゃ?」


そう言って兄貴がポケットから取り出したのは、まるでタブレットのケースみたいな箱だった。
アタシは?を浮かべてそれを受け取ると、それには手紙が添えられている。


悶々
「ま、まさか排卵誘発材!? 手紙にはこれ飲んで僕の精子で妊娠してくださいって書いてるんじゃ!?」

兄貴
「何ぃ? それはまた度胸あるラブレターだな…」

赤城
「真に受けんなクソ兄貴、んなわきゃねぇだろ…これは悶々用だ」


アタシは手紙の内容を見て、すぐに察する。
やれやれ、わざわざここまで持って来るとはな…
っていうか、アイツこんな物持ってるって事は、似た様な境遇って事か?
そもそも悶々と知り合いだったみたいだし、他にも人化したポケモンがいる可能性は高いのか…?


悶々
「ぼ、僕に孕んでほしいだなんて…そんな夢の様な話が!?」

沙譚
「とりあえず、テメェの脳ミソすり潰して犬に食わせんぞ!?」
「コイツは偽装薬つって、1錠飲めば1日の間は悶々でも人間みたいに見えるんだそうだ…」

兄貴
「な、何でそんなモンをアイツが持ってたんだ?」

沙譚
「さぁな、アイツも似た様な事情抱えてんだろうさ」
「それで、たまたま薬が出来たから、お裾分けします…ってとこだろ」


悶々はとりあえずそれを受け取り、中を見てみた。
ひとつひとつ袋に包装されており、見た目は完全にタブレットだな。
一箱30錠…約1ヶ月は持つ計算だ。


沙譚
「とりあえず、明日からで良いからそれ飲んどけ」
「そうすりゃ、服着るだけで外にも出れるそうだ」

悶々
「でもこれ、変身したらどうなるんですか?」


アタシたちは全員沈黙する。
そりゃ、どうなるんだろうな?
とりあえず全ては明日試せば良い、アタシは疲れたから先にシャワーを浴びたい…



………………………



親父
「おぅ悶々! 今日はどうだった?」

悶々
「いやぁ〜今日は不作です…」

沙譚
「…何の話だ?」


アタシが睨み付けて聞くと、クソ親父と悶々は目を背けた。
野郎…またロクでもない事画策してんじゃねぇだろうな?
そもそも、元を辿れば親父が悶々の名を与えたんだ…
で、親父のゴリ押しで悶々を匿う事にしたし。
まさか、その親父がロクでもない事を考えてんだとしたら…


沙譚
「おいクソ親父、まさか悶々使って妙な事してんじゃねぇだろうな?」

親父
「バカ言うない!? 俺ぁ悶々にマッサージしてもらってるだけだ!」

悶々
「まぁ、下の方も当然やってますけどね!」

沙譚
「よしクソ親父、家族会議だ…ちょっと骨身に教えるから覚悟しとけ!?」

親父
「ま、待て誤解だ!? 俺はパイズリってのを1度だけ体験したくて…!」

沙譚
「そのパイズリは誰の姿でやらせたんだよクソ親父ぃ!?」


アタシは、思いっきりクソ親父の延髄にハイキックをかました。
すると親父は人形の様に錐揉みして床に倒れる。
悶々はあ〜あ…と、他人事の様に親父の成れの果てを真顔で眺めていた。


沙譚
「テメェも少しは自重しろ!」

悶々
「いやぁ〜僕としては、エロに関われるならむしろカモンですので!」

沙譚
「だからそれを自重しろと言ったんだ!!」
「後、誰の姿でパリズリをしたぁ!?」

悶々
「いや、そりゃこの家には沙譚さん以外には女いないし…」


アタシは頭抱えて死にそうになる。
あのクソ親父…娘の体で欲情しやがったのか!
くっそ…延髄切りじゃ甘かった、記憶を消せる様に脳を揺さぶらねぇと…!

アタシは多少錯乱しながらも、悶々に体で止めに入られ、その場は何とか収まった。
とはいえ、このままじゃその内トンでもない間違いが起こる気がする…



………………………



悶々
「どうです?」

沙譚
「ふむ、確かに人間に見えるな」


次の日の朝一番、悶々は早速偽装薬とやらを飲み、アタシに結果を訪ねて来た。
どうも、この薬は自分自身は騙せないらしく、あくまで他の目から見た場合にしか効果が無い様だ。


沙譚
「よし、それでアタシに変身してみろ」

悶々
「はーい」


悶々は変身しているはずだが、アタシの目には何も変わっていない様に見えた。
どうやら、変身能力すら偽装させるらしい…スゲェなこの薬。


沙譚
「こっちからは変わった様に見えないな…」

悶々
「あ、そうなんですか? おかしいな、ちゃんと変身してるのに…」
「ちなみに、どんな姿に映ってるんです?」


今の悶々は黒髪ショートヘアーのボーイッシュスタイル。
ただ女性の身体である為か、胸は露骨に強調されており、150pの低身長に90前後の膨らみを搭載してやがった。
尻も大きめで、男の目は相当引くだろうな…


沙譚
「つか、お前って変身しないとHも出来ないのか?」

悶々
「無理ですね、元の姿では遺伝子情報がメチャクチャですし、そもそも性器が存在しないんで」


確かに言われてみれば、元の悶々は体が完全に軟体系のそれであり、いわばゲルみたいな物だからな。
どう見ても人間としての機能を有してる様には見えないんだよな…


沙譚
「まぁ、良いか…とりあえず学校行って来る」

悶々
「はーい、聖様によろしく言っといてください♪」
「今度こそ孕みに行きまーす♪って」


アタシは何も答えなかった。
アイツがどうなろうと知ったこっちゃねぇ…アタシの姿でヤらなけりゃ!



………………………




「あ、赤城さん…だよね?」

沙譚
「心配すんな、悶々には薬飲ましてある…そしたら変身しても姿は変わらない様に見えたよ」


アタシはいつもの交差点で魔更に出会った。
魔更は昨日の事を思い出してか、いきなり疑問を浮かべている様だったが…
アタシはとりあえず、昨日もらった薬の件を話し、魔更を納得させる。



「そうなのか…そこまで偽装してくれるんだな」
「とはいえ、対抗薬飲んでるから俺には解らんわけだが…」


ん? 対抗薬? 何だ、そんなのもあんのか。
だったら、ソイツの事も詳しく聞いとかねぇとな。


沙譚
「何だその対抗薬ってのは?」


「逆に偽装を見破る薬だよ…俺はそれを飲んでるから、偽装薬を飲んだポケモン娘の本当の姿が解る」
「赤城さんにも何錠か渡そうか? 今日は光里ちゃんにも渡すつもりだったし」


アタシはそこで?と思う。
まさか、光里も関わってんのか?


光里
「あ、おはようふたりとも〜♪」


「おはよう光里ちゃん、今日も問題は無い?」

光里
「うん、穹ちゃんとっても良い娘だから全然大丈夫♪」
「家ではゲームばっかりしてるけど、ちゃんと言う事聞いてくれるし、素直で可愛いよ♪」


光里の奴、えらく上機嫌だな…
さしづめ、その穹ちゃんとやらがポケモン臭いが、光里の方は特に問題は無さそうだ。

それに比べて、ウチのモンは…



「とりあえず、これが対抗薬…一応光輝君の分もあるから」

光里
「うん、ありがと♪ これ飲めば、偽装してても解るんだよね?」


魔更はああ、と頷くと光里は早速1錠飲んでみた。
とはいえ、この面子なら全く意味の無い状態だが…



「あ、先輩方おはようございます♪」


ん? 美代か…朝出会うのは随分久し振りに感じるが、あれから問題は解決したのか?
表情はそれ程明るくも無さそうだが…



「おはよう悠和ちゃん、今日は久し振りにタイミング合ったね?」

悠和
「は、はい…今日は、たまたま…」


どう聞いてもテンションが低い…やはり美代はまだ何か引きずっている様だな。
魔更も気持ち顔が暗いし、やれやれ…朝からテンションが下がる面だ。

そんな中、光里はかなり驚いた顔で美代を見ていた。
何だ…? とアタシは思うも、その意味はすぐに光里の口から語られる…


光里
「うわ…聖君から聞いてたけど、本当に悠和ちゃんもポケモンだったんだね?」
「っていうか、綺麗〜! 白髪だけど銀色に近いから、すっごく朝日に映える〜」


なん…だと? 美代が、ポケモン?
光里は知っていたのか…?
この場で露骨に目を見開いて驚いていたのは、きっとアタシだけだろう。
そして、魔更はやはりポケモン娘との関わりがあったのだ。


悠和
「…光里先輩、聞いたんですか?」

光里
「うん、私もキュレムの穹ちゃんと一緒に暮らしてるから♪」


それを聞いて美代も驚く。
光里はニコニコ笑い、穹ちゃんとやらの魅力を余す所無く、身振り手振りを交えて美代に伝えていた。

アタシはその間に薬を貰う事にする…


沙譚
「…魔更、アタシにも薬を寄越せ」


「ああ、それじゃこの箱ごとあげるよ」
「俺はまた家で新しいのを貰うから」


それを聞いたアタシは魔更から箱を貰い、早速1錠飲んでみた。
すると…すぐに美代の姿は本来の姿に変わり、アタシは思わず息を飲む。
確かに、綺麗っちゃあ綺麗だ。
おまけに尻尾まで生えてやがる…獣系のポケモンか?


悠和
「聖先輩、まさか赤城先輩も?」


「ああ…聞いて驚くなよ? あのメタモンと一緒に住んでいるらしい…」


その言葉を聞いて、美代は凍り付いた。
そして同時にかなりウザそうな顔をする…あの大人しそうな美代が、蔑む様な顔を!?


悠和
「赤城先輩…もう何回襲われたんですか?」

沙譚
「そうかよ…アイツはそんだけ変態なんだったな!」
「てか、お前ら知り合いだったのか?」


魔更たちはコクリと頷き、当時の悶々の事を、事細やかに話してくれた。
アタシはそれを聞き、ただ頭を抱えるだけだった…



………………………



沙譚
「あのバカ、前の世界でも全然変わってねぇじゃねぇか!」


「っていうか、アレは無理だろ?」

悠和
「Hする事しか考えてませんからね…」

光里
「うわ、それだけ聞くと本当に救いが無い」


散々な評価だな悶々!?
だが、アタシは悶々の事情も一応知ってる。
アイツにはアイツの悩みはあるし、怖い事もあると解った。
アイツの事は、とりあえずアタシが何とかしてやれば良い。

…まぁ、手遅れな部分は置いといて!


沙譚
「とりあえず、悶々はバカで変態だが、一応ウチの家族だ」
「アイツの事は、とりあえずアタシに任せな」
「アイツが悪さするなら、今度こそ油風呂に浸からせてやる!」


「うわ…哀れメタモン」

悠和
「油風呂は確定ですね…」

光里
「いや、流石にサーたんが一緒なんだし、きっと少しは改善してるよ!」


味方は少ないな、本当に頑張れよ悶々?
アタシはまた頭を抱えながらも、先頭切って学校に向かう事にした。
そして、例によって面白くもない授業は全部終わり、放課後に…



………………………



沙譚
「ちっ…」

悶々
「沙譚さん機嫌悪いみたいですけど、どうしたんですか?」


アタシは、今日も悶々と一緒に走り続けていた。
だが、アタシはどうにも調子が悪いのを感じる。
悶々を後ろに乗せてるからってスピードを緩める事は無い。
むしろ速い方が悶々は喜ぶ位だからな…

つまるトコ、スランプって奴かな…?
まぁ、そこまで大袈裟なモンでも無いが。


沙譚
「何か調子が上がらないんだよな…」
「ここまで走っても、いつものテンションまで上っていかない」

悶々
「この辺は毎日欠かさず走ってますし、たまには違うコースを走っては?」


アタシは悶々に言われて、ふむ…と考える。
確かに、いつも同じ様なコースを走り続けるのもアレか…
明日からは別のコースも視野に入れるかな?


沙譚
「つーか、お前良くアタシの機嫌とか解るな?」

悶々
「そりゃ、こうやって触れ合いながら走ってたら何となく解りますよ?」
「沙譚さん、調子良い時はもっと心拍数激しいですし」


心拍数とか計られてたのか?
まぁ、背中越しでも心音は耳当てたら聞こえるのかね?


悶々
「僕はセックスの時に相手の心拍数を計算して、絶頂までのリズムを調整出来るんですよ?」
「やっぱ同時に絶頂出来ると、気持ち良さ倍増だもんね〜♪」


ダメだ、コイツはやっぱ変態だ!!
とはいえ、アタシが面倒見ると言った以上、コイツに不祥事は起こさせない。
一応、釘は刺さねぇとな…


沙譚
「とりあえず、警察沙汰だけは勘弁しろよ?」

悶々
「ご安心を! 同意の元でしかヤりませんので!!」


ダメだ…不安しかない。
魔更の時に迫ったのは同意を得るつもりだったのか!?
ただでさえクソ親父がバカな事やらかしてるのだから、ちょっとやそっとでは信用出来る気がしない。


沙譚
「くっそ…頼むから少しは自重してくれ」
「他に何か趣味は無いのかよ?」

悶々
「うーん、変身してオナニーする位しか趣味が無い…」
「あぁいや、ある意味エロ本見るのは趣味になる?」


アタシは色々爆発しそうだった。
とりあえず、コイツの性欲は長い目で改善していこう…
すぐに何から何まで対処しようとするのはただの徒労だ。
少なくとも、これから長く一緒に過ごすのなら、それ位の寛容さがいるとアタシは割り切る事にした…

その後…アタシたちは軽く流す様に走り、その日は特に問題も無く1日を終えたのだった。










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第6話 『復活のメタモン』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/02(木) 20:59 )