とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない














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第4章 『新たなる再会』
第5話

「…ちょっと地球には、休んでもらうのさ」

守連
「ばばばばっ…さぶい〜〜〜!!」

華澄
「一体、これは何事なのですか!?」


俺たちは、突然の猛吹雪に身を凍えさせていた。
ちなみに今は6月も下旬! もうすぐ7月だというのに、この異常気象…間違いなく混沌だろコレ!?

今、俺たちは家のリビングにいるが、室内気温は何と-3℃!!
エアコンの性能を軽く越える速度で冷却されており、暖房が追い付かないのだ!
それもそのはず、窓から外を見れば既に一面銀世界であり、外にいる人間はあっさり凍死するレベルなのだ!
阿須那、女胤、愛呂恵さんと三海の4人はそれぞれ外に出ていたが、果たして大丈夫なんだろうか?


ピンポーーーン!!


そんな異常事態の中、突然のインターホン。
俺は?を浮かべつつも、玄関を見た。
こんな状況でインターホンって…
俺は疑問に思うも、華澄はすぐにハッとなって椅子から立ち上がった。


華澄
「もしや、遭難者では!? 誰かが助けを求めているのやも…!」


そう言って、華澄はすぐに玄関へ走る。
俺からしたら危険極まりないと思うのだが、華澄は迷わずに玄関を開けた。
そして、そこから飛び出して来たのは猛吹雪。
一瞬にして家内は凍りついていき、見る見る内にセルフ冷凍庫の完成だった。
俺たちは夏服のままだからかなりヤバい!
やっぱり危険だらけだったか!?



「華澄! すぐにドアを閉めろ!!」

華澄
「は、はいっ!! って、何かが中に!?」


華澄は何かを目で追うも、すぐにドアを閉めた。
しかし、吹雪は辛うじて収まったものの、玄関は完全に凍りついている。
そして、ゆっくりとした歩みでリビングに侵入して来る幼女が…

…ん? 幼女?


幼女
「…やっと、会えた」


「お、お前はぁ〜…!?」


リビングで俺の前に歩み寄って来たのは、予想外極まりない来訪者だった。
その姿は、水色寄りの青髪で長さは肩の下位まで伸びるセミロング。
身長は120p程度の幼女体型。
全身を黒い半透明の鎧で身を包み、背中には水色の翼が氷で形成されている。
彼女の額の中心には黄色の角が真上に突き立ち、尻には棘の様な突起が飛び出している尻尾を揺らしている。

俺は直ぐ様に理解した、この幼女はあの時の…!?



「キュ…レム!?」

キュレム
「…魔更 聖、返して」


突然現れて手を差し出し、突然返してって何の事だ!?
それよりも、これでこの異常気象の原因が解った!
全部コイツが作り出してたのか!?

キュレムがその気になりゃ、街のひとつやふたつは冷凍しちまえる程の力は持ってるはずだからなっ。



「くそっ…今更になって復讐か!?」
「とはいえ、再生怪人はあっさり倒れるのが定番だぜ!?」


実の所…諸々の都合もあって、キュレムは以前も割とあっさりやられてたりするんだが…まぁ、それは良い!
俺は臨戦態勢となり、某ヒーローの変身ポーズの様な構えを取るが、キュレムは無感情に?を浮かべ、首を横に傾げて考えている様だった。

おのれ…無駄に可愛い仕草をしおって!


華澄
「あ、あの聖殿…この娘は、もしや敵では無いのでは?」

守連
「ばばばば…っ、わだじも…ぞうおぼぶ〜〜〜!!」


何と、ふたりはキュレムを擁護した。
俺は改めてキュレムを見るが、確かに攻撃意志は感じない。
今の所、コイツはただ立っているだけ…か。
その状態だけで冷凍庫を作り上げるんだから、堪ったもんじゃないんだがな!?



「とりあえず、冷凍禁止!!」

キュレム
「!?」


俺がビシィ!と指差して命令すると、キュレムはビクッと目を見開いて背伸びした。
そして、かなり悲しそうに能力を弱めていく…
とりあえず、しばらくはこのままだな…つか、これじゃ家中ビショビショだよ!



「くっそ…何でこうなるかな〜?」
「で、お前は何でここにいるんだ? いや来たんだ、か?」
「返せって何の事だ?」

キュレム
「楔(くさび)…貴方がパクった」


俺はハッ!?となる…コイツ、既に読者全員の記憶から忘れられたであろう頃の伏線を、今更回収に来るとは!!
多分大抵の読者は忘れてると思うぞ? 何それ?と、言われても仕方無い位さりげない俺の意味深行動だったからな。
とはいえ、全てこの再会の為の伏線だったと言うのだから、誰が予想出来ただろうか!?

…まぁ、それは良い!!



「しかし、その為だけにここに来たのか? ってか、どうやって来たんだ?」

キュレム
「解んない…気が付いたら近くの公園にいた」
「それで少し歩いたら、魔更って表札が見えた」
「魔更 聖…貴方の名前思い出して、ピンポン鳴らした」


成る程、あくまで偶然来た(?)だけみたいだが、とりあえずキュレムは楔の為にここに来たんだな…
俺はやれやれ…と頭を掻き、1度自室に戻る事にした。
確か机の引き出しに保管してたはずだ。

俺は凍り付いた階段で滑らない様に気を付け、何とか自室に辿り着く。
上は既に気温が上がってきており、湿度がかなりヤバかった…



「ぐは…蒸すな部屋の中は!」


今度は一転して暑くなってくる。
俺はすぐに引き出しから楔を取り出し、タオルを複数持って下に降りた。



………………………




「ったく、これで良いのか?」

キュレム
「楔!」


早速飛び付こうとするキュレムの額を、俺はタオルを持った右手で抑えて、制止する。
くっそ〜、タオル持って来て正解だったぜ…かなり冷てぇ!

そしてキュレムはパタパタと可愛く手を振り回すも、当然射程距離的に俺の体には届かない。
そして、俺はまずこう注意する事にした…



「返すのは良いが、絶対に悪さには使うなよ!?」

キュレム
「むー! 悪さって?」


「…誰かを傷付けたり、悲しませたりする事には絶対使うな」
「使う時は、誰かを守る為に使え」
「その約束が出来るなら、これは返してやる」


俺が厳しい顔でそう言うと、キュレムは無表情に首を傾げた。
そして少し無言で考えた後、キュレムは小さく頷く。
今一信用し難いが、とりあえずこっちから信頼してやらないとこっちも信用されないからな…

俺はそれを確認して、ゆっくりと楔をキュレムの掌に乗せてやった。
それを見て、キュレムは少しだけ頬笑む。
そんなに嬉しかったのか…

ゲーム的には、コレってあんまりキュレムにとっては良い思い出でも無さそうなんだが…
まぁ、本人が喜んでるんならそれで良いけどな。


キュレム
「…ありがと」


「いやまぁ、俺がパクったのは事実だし…」
「とりあえず、これからどうする気なんだ?」

キュレム
「…どうしたら良い?」


いや、可愛く首を傾げて俺に聞かれても…
こういう時は、やっぱ白那さんにでも聞いてみるか?
城にいてもらうのもそれはそれで問題がありそうだが…


華澄
「とりあえず、今はここに置いておく方が良いのでは?」

守連
「うん…キュレムちゃん、きっとこの世界の事、何も解らないし」


確かに現状それが1番良いか…
何だで、ここが1番安全とも言えるからな。
しかし、そんな俺たちの相談も露知らず、キュレムさんはあっさり玄関の方に向かっていた。


キュレム
「とりあえず外に出る」


「ヘイ、ステイ!! 早速好奇心旺盛だなレディ!?」
「だから、ここにいろって!! 何も知らないんだろ!?」

キュレム
「大丈夫、ディアルガも外歩いてた」


「はっ!? ディ、ディアルガ!?」


まさか、アイツも来てんのか!?
マジでどうなってんだ? まさか、既に混沌世界に入っていたのか?
だが、違和感は全く感じなかった…少なくとも寝ている間にでも入っていなければ、気が付かないとはならないと思うが…


キュレム
「でも、ディアルガ何か見た目おかしかった…まるで人間みたいに見えた」

華澄
「…という事は、既に偽装薬を使っていたのでは?」


「有りうるな…こりゃ、益々白那さんに聞いてみないと」


俺たちは頷き合い、とりあえず1度城に向かう事にした。
何はともあれ、まずは情報を整理しないと…
やれやれ…俄にざわついてきた感じがするな?



………………………



白那
「…成る程、やはり混沌の可能性は高いかもね」


「そう、ですか…」


俺たちは白那さんの部屋で事情を説明し、白那さんもまたディアルガとの事を話してくれた。
どうやらディアルガもまた敵意は無く、今はこの世界で生きていこうとしているらしい。

敵だった頃の姿しか知らないから、俺にはその姿が何とも想像出来なかったが…
それを話してくれた白那さんの顔を見ると、少し遠い目をしていたのが何だか印象的だった。


華澄
「とりあえず、キュレム殿はここに置いておくのは?」

白那
「出来れば止めた方がいい、騰湖ちゃんたちに見つかったら、トンでもない事になりうる」


「でも、それじゃあどうすれば?」
「少なくとも、キュレムには敵意は無いし、俺が仲介すれば騰湖たちも口は出さないでしょう?」

白那
「だけど、それは今後の問題に対して、根本的解決にはなり得ない」


予想外に、俺の考えはあっさり否定された。
そして、白那さんはやや厳しめの顔でこう言い放つ。
その顔は、少なからず厳しめの表情であり、俺はちょっと緊張してしまった。
あの白那さんが、久し振りにこんな顔をするとは…


白那
「聖君の影響という物は、家族にとってはあまりにも大きい…」
「もし、聖君の仲介で仲を取り持った所で、聖君がいない間はその力も意味を弱まるんだ…」
「その時、彼女たちは何をしかねないのか? 聖君なら解るはずだよ?」


確かに…あくまで俺が言った所で、それはその場しのぎにしかならないのかもしれない。
だけど、俺が信じてやらなきゃ、誰も信頼なんて出来ないじゃないか…
俺はキュレムと約束をした。
それなら、アイツはちゃんと約束を守れると信じてやらなきゃ…



「俺は、キュレムを信じてやります…もちろん、騰湖と鳴も」

白那
「そして、また悠和の時の様な感情を生み出すのかい?」


俺はその言葉を聞いて、言葉を詰まらせる。
俺はこの時点で、今の状況にようやく気付いた。
今俺がキュレムを推せば、騰湖たちはそれに対して嫉妬心を生むのか…
そうなれば、また悠和ちゃんの様に苦しめる事になるのか?

前に1度、俺は悠和ちゃんと一対一で話し合った。
悠和ちゃんの苦悩も、嫉妬心も、悲しみも、俺はその時全部聞かされた。
そして、阿須那が悠和ちゃんを励ました事も…

俺は、愚かだったのかもしれない。
皆を愛する…それは間違っていない。
だけど、今後現れるポッと出の存在ですらそうするとなれば、皆は段々不安になって来るんだ。

そんな例外が増えれば増える程、他の家族は自分に対して触れ合える機会が減って行くと感じる。
そしてその度に心を苛まれていては、いつか心が壊れてしまうかもしれない。
俺は、そんな皆の心を万全にしてやる事は、多分出来ない…?


白那
「聖君の事は当然信頼しているし、愛しているさ」
「だけど、今の君を取り巻くこの環境は、想像以上にギリギリで安定していると思った方が良い」


「…まさに、それこそ混沌か」


俺は改めて納得する。
俺には…限界があるのだ。
救えるポケモンは全て救う…その決意は変わらない。
だけど、その救ったポケモン全てに愛を与えられるとは限らないのだ。
俺は気付いてしまった…これ以上、俺が愛する者を無闇に増やしてはならないと。


華澄
「聖殿は、本当に特別な方です…例えほんの少しでも、その優しさに触れれば心は傾く」

守連
「うん…でも、それは同時に誰かも傷付けてしまうのかも」

キュレム
「…?」


華澄と守連も、悲しそうにしていた。
自分たちとて例外ではないかもしれない…そう思っているのだろう。
当のキュレムは不思議そうに首を傾げ、これからどうすれば良いのか困っている様だった。


白那
「酷かもしれないけど、キュレムはディアルガ同様、自由にさせた方が良いかもしれない」
「勿論、こちらから援助はする…偽装薬は何とかしよう」
「後は、ディアルガの様に誰かにでも拾ってもらえれば…」


「ダメです! いくらなんでも誰とも知れない他人にキュレムは預けられない!」
「もし間違いが起こったら、それこそ取り返しがつかなくなる!!」


俺は想像して恐怖した。
キュレムは、想像以上に力のコントロールが拙いのだ。
ある程度言葉は受け入れてくれるが、見た目相応にキュレムは幼く感じる。
他人相手にいきなり懐くとはとても思えないし、力が解き放たれれば一気に世界が大混乱する。
俺の知らない場所でもしそうなったら、その時俺には止められないかもしれない…

そもそも、混沌の一端かもしれないとはいえ、ここは紛れもなく現実世界だ。
今まで俺たちがフツーに過ごしている世界に、キュレムたちはまさか来訪してしまったという事になる。

ディアルガは既に誰かの元に世話になっている様だが、アイツは仮にも白那さんと同等の存在だから、まだ安心出来るだろ。
少なくとも無闇に暴れたりはしないだろうし、白那さんも危険には感じていない様だからな。

だが、キュレムにはその安心感がまだ無い。
やはり、せめて信頼出来る人に預ける方が…



「…白那さん、キュレムの引き取り先は俺に任せてくれませんか?」

白那
「分かった、聖君がそう言うなら任せるよ」

守連
「でも聖さん、誰に頼む気なの〜?」


俺はあえて答えなかった。
そして、白那さんから偽装薬を1箱貰い、キュレムを連れてまた家に戻る。



………………………




「とりあえず、偽装薬な…これを飲むんだ」

キュレム
「飲む…んっ」


キュレムは特に疑いも無く、渡された偽装薬を1錠飲んだ。
俺は対策用の薬を飲んでいるから見た目は解らないけど、他の目からはどう見えているのか?


守連
「わわっ!? これは流石にマズイよ〜!!」

華澄
「す、すぐに服を持って来ます!!」


突然、守連と華澄が大慌てで騒ぎ始める。
俺とキュレムは共に?を浮かべ、同時に首を傾げる事になった。


キュレム
「?」


「何だ急に…どうかしたのか?」

守連
「キュレムちゃん、偽装したら裸なの〜!」


俺は思わず吹き出してしまった。
という事は、今見えてるこの黒い半透明の鎧は、能力で形成しただけの物かっ。
つまり、それが見えなくなるから真っ裸!!
こんな状態で外に出たら、即変態オジサンに拉致られるわ!!

しっかし…コイツ、羞恥心の欠片も無いんだな?
そもそも、この氷の鎧もあくまで半透明であり、ビミョーに乳首とかそうあう大事な部分が見えてしまいかねない位危険なのだが…

ちなみに、俺は幼女に欲情する程落ちぶれてはいないので大丈夫だ。(何が?)



………………………



華澄
「と、とりあえず下着は仕方ありませんので、下だけでも拙者のを…」
「服も拙者のを渡しますが、サイズはそれでも大きいでござるな…」

キュレム
「ん…服、邪魔…いらないっ」


「ダーメ! これからこの世界で生きていくなら必須!」
「ワガママ言わないなら、悪い様にはしないから、大人しく着る!」
「っていうか、白那さんから服借りた方が良かったんじゃ?」
「夏翔麗愛ちゃんとかのだったら、フツーにサイズ合うんじゃないのか?」


俺がそう言うと、華澄はハッとなった。
突然の事にテンパってたな…華澄さんにしては珍しい。


守連
「私、ちょっと行って借りて来るね?」


「ああ、頼むよ」


守連はすぐに家を出て城に向かった。
キュレムはぶかぶかの服に悪戦苦闘しながらも、我慢はしている様だった。
しっかし、見れば見る程コイツの特徴って…


華澄
「うーむ、やはり尻尾と翼がことのほか難敵ですな」


「何だで伝説のドラゴンだからな、騰湖たちと同じ特徴を持ってるから、服はそら難儀するわな…」


キュレムは翼のせいで上手く服を着れていない。
とりあえず、改造しなきゃ無理そうだな…


愛呂恵
「ただいま戻りました…が、予想通り問題でも?」

三海
「ン、ただいま聖〜♪」


「ああ、お帰りふたりとも…買い物ご苦労様」


三海は俺を見付けて、すぐに抱き着いて来た。
俺はそんな三海の頭を撫でてやり、三海は嬉しそうに目を細める。
大体いつも通りの反応だな…よしよし♪


キュレム
「……んっ」


「ひぃっ!? 冷たい! キュレムさん冷たいです!!」


何を思ったのか、キュレムは三海の真似をしてか、何故か俺の足に抱き着いた。
しかし、氷の鎧に覆われているキュレムの体はまさしく氷。
俺の足は徐々に体温を奪われていく…


キュレム
「熱い…やっぱり離れる」


と、すぐにキュレムは離れてしまった。
ホントに何を考えていたのか?…ってか、人肌ですら熱いのかっ。
キュレムの様な氷タイプは、常に冷えてないとパフォーマンスが下がるのだろうか?


愛呂恵
「キュレム、ですか…? これはまた、珍しいポケモンですね」


「ああ、以前女胤の世界で戦ったボスだったんですけど、突然この世界にやって来てしまったんです」

愛呂恵
「成る程…それで、これからどうするつもりなのですか?」


「とりあえず、信頼出来る人物に預ける事にしました」
「引き取ってくれるかは、まだ解りませんが」


俺がそう言うと、愛呂恵さんは特に何も言わずにキュレムを一瞥してキッチンに向かった。
とりあえず食材を冷蔵庫に入れるのだろう。
三海もそれを見て、愛呂恵さんの後を浮遊して追う。
三海もすっかり家の手伝いが出来る様になったな…



………………………



愛呂恵
「…それでは、これを着てください」
「翼と尻尾を考慮して改造してありますので、問題は無いと思います」


あれから守連はいくつか服を借りて来て、それを愛呂恵さんがちゃちゃっと改造してくれた。
普通の青Tシャツは背中の翼の部分を切り取り、ホックを付けて背中で固定出来る様にする。
下は青スカートで、そのまま尻尾の下を隠す様に。
後は特に問題無く、下着も靴下も大丈夫そうだった。


キュレム
「ん…暑い」


「うわ、服がもう湿ってるぞ? 下着が透けるから氷の鎧を解くんだ!」

キュレム
「むぅ、面倒…」


顔をしかめて愚痴りはするも、キュレムは氷の鎧を解除して項垂れた。
まぁ、この季節は暑くなるし、多少は仕方無いが…


華澄
「とりあえず、自分の周りだけ空気を冷やせば良いのでは?」
「そうすれば服も濡れませんし、体も冷えましょう」

キュレム
「グッド、そうする」


キュレムはそう言って、自分の周りだけを冷やし始めた。
意外に能力のコントロールは出来てるのか、別に吹雪いたりはしなかった。
成る程…これだとある意味セルフクーラーだな。
近くにいるだけで高い冷却能力を発揮している…冷蔵庫と言っても差し支えないかもしれない。


愛呂恵
「…とりあえず、すぐに掃除を致します」
「このままでは、フローリングが傷んでしまいますので」

三海
「ン、手伝う…」

守連
「私も〜♪」


そういや、家は既に氷が溶けてビチョビチョだったな…
気温が元に戻ったから偉い事になってる。


華澄
「やれやれ、拙者も助太刀するでござるよ」


「じゃあ、こっちは任せるから」

華澄
「はい、どうかお気を付けて…」


俺はキュレムの手を引いて家を出ようとする…が触ったら手が凍りそうになった。
うぐぅ…迂闊すぎた。


キュレム
「熱いから触らないで」


「しかも嫌がられた!? 親切心なのに!!」


俺は泣きそうになるも、とりあえずキュレムを誘導して外に出る事にする。
靴も借りてあるので、それを履かせてやった。
俺は凍傷しかけた手に息を吹きかけ、暖める。
そして、とりあえず外に出るが…



「うわ…湿気がヤバい」

キュレム
「…暑い」


キュレムは日差しに耐えられないのか、氷で日傘を作ってしまった。
そういえば偽装薬で見える分には、こういう能力系はどう見えるんだろ?
ただの日傘に見えるんだろうか?



………………………



俺はとりあえず、キュレムを連れて街を歩いてみる。
キュレムが離れない様に気を付けながら、人目もちゃんと気にしておく。
何人か人間が通り過ぎたものの、特にキュレムを気にする人間はいなかった…

ふむ、とりあえず日傘は気にならないらしい。



「って、そういやこの時間だから、まだ家にはいないのか…?」

キュレム
「?」


俺は既に目的地に近付くも、肝心な事を忘れていた。
確か日曜は基本フルタイムで仕事してるって言ってたからな…



(仕方無い…ここからだと遠回りになるが、商店街に行くか…)


俺はそう考えて少し項垂れる。
ホントに暑い…そんな中余計な距離を歩く羽目になるとは。



………………………




「わちゃ、流石に混んでるわな…」

キュレム
「人、一杯…更に暑い」


キュレムは露骨に嫌そうな顔をした。
まぁ、この時期にこの熱気だからな…
ちなみに、俺たちが立ち寄ったのはご存じ、こすぷれ〜ん1号店。
姉さんや阿須那がいなくなったとはいえ、この店は相変わらず繁盛していた。
とはいえ、全盛期に比べれば、やはり2号店の客足には負けており、以前程の熱気は無い様にも感じる。

そんな大袈裟な行列が出来る程、って感じじゃないもんな…



「時間は今昼前か…上手く休憩時間に会えるかな?」


俺はとりあえず、しばらくその場で待つ事にした。
一応メールだけ送信しておき、俺は自販機で飲み物を買って待つ事にする。



「ほれ、とりあえず天然水…」

キュレム
「…ん」


キュレムはそれを受け取ると早速飲んだ。
すると、自販機の温度が気に入らなかったのか、少し嫌な顔をする。



「あ、もしかして熱かったのか?」

キュレム
「ん…もっと冷たい方が良い」


そう言って、キュレムはペットボトルを掌で冷やした。
それはピキピキと音をたて、そして凍るギリギリと思われる位の温度で止めてキュレムはグイッと飲む。
今度は大丈夫そうだ。



「お前って、何でも冷たい方が好みなのか?」

キュレム
「うん、凍る位でも構わない」


それはそれで難儀だな…食事とか冷凍食品そのままが良いって事か?
ある意味コック泣かせだな…作り甲斐が無い。
とはいえ、手間がかからないとも言えるし、それはそれでか…



「とりあえず、まだどうなるか解らないけど、これから会う人にお前の事頼むから、ちゃんと言う事聞いて良い子にしてるんだぞ?」

キュレム
「…む、頑張ってみる」


キュレムは少し不安そうな顔をするも、一応そう言ってくれた。
俺は思わず頭を撫でてやろうかと思ったが、確実に凍るのが解ったので止めておく…
俺は学習する男なのだ!



………………………




「やっほ〜! 聖君、今日はわざわざ呼び出して何?」


「ゴメン光里ちゃん、どうしても頼みたい事があって…」


そう、俺が選んだのは光里ちゃんだった。
今まで一緒に学校で過ごして、俺が信頼出来ると思った友人だ。
光里ちゃんにとっては、突拍子も無い現実を突き付ける事になるが、それも含めて俺は今回全部話すつもりだ。


光里
「うん、それで頼みって?」


「この娘を預かってくれないかな? それも、出来ればずっと…」


俺は横にいたキュレムを光里ちゃんに紹介する。
キュレムは無表情に光里ちゃんを見て、少し戸惑っている様だった。
光里ちゃんは、流石に驚いてポカンとしている。


光里
「ずっとって…どうして? この娘、まさか孤児とか?」


「詳しい話は、光里ちゃんの仕事が終わってから話すよ」
「勿論、無理なら断ってくれて構わない…ちなみにこの娘の生活費に関しては全額支給するよ」


勿論これは俺が言い出した事だから、生活費等の負担は一切かけさせない。
光里ちゃんには、あくまでフツーに生活しててほしいのだ。
ただ、その中にこのキュレムを入れてあげてほしい…これが俺の望みだ。


光里
「…とりあえず、詳しい話を聞いてから決断するけど」
「聖君がそこまで言う程の事だから、普通の事じゃ無いんだよね…?」


「ああ…多分、信じられないとは思う」
「でも信じてほしいから、俺は全部話すつもりだ」


俺の真剣な決意を感じてか、光里ちゃんはあまり見せない程の真剣さで表情を引き締めた。
とりあえず、後は仕事が終わってからだな…



………………………



風路
「とりあえず、ここなら大丈夫よ♪」


「姉さん、ゴメン…急に頼み込んで」

風路
「良いのよ、それより本当に光里ちゃんに話すの?」
「何だったら、私が受けても良いのよ?」


俺は姉さんの家…つまり、『こすぷれ〜ん1号店』の2階にあるリビングで、キュレムや姉さんと一緒にいた。
ちなみに、ここは前に光里ちゃんから告白を受けた所でもあるな。
光里ちゃんにとってはトラウマだったかもしれないが、とりあえずここが都合も良い。

最悪、本当に姉さんに頼る事になるかもしれないしな…
だが、俺はどうしても光里ちゃんに頼みたかった。
このまま、光里ちゃんを騙し続けるのも俺には心苦しかったし、いっその事全部真相を打ち明けたかったのだ。



「…俺は光里ちゃんに全てを話すよ」
「これは良い機会だと思うんだ、光里ちゃんにも知る権利はあると思ってるから」
「ここまで一緒にいて、信頼は出来ると確信してるし、彼女ならキュレムを任せても良いと思うから…」

風路
「…分かったわ、貴方がそこまで言うなら、私は何も言わない」
「でも、ダメだったらいつでも頼るのよ?」
「姉さんは、いつだって聖君の味方なんだから♪」


姉さんはそう言って、口元に人差し指を当ててウインクする。
いつもの癖だな…俺は思わず微笑んでしまった。
そんな俺たちのやり取りを見て、キュレムは首を傾げている。

そんな中、ドタドタとけたたましい音をたててリビングにやって来る者がひとり…


光里
「ゴメン、ちょっと着替えに手間取って!」


光里ちゃんは余程焦っていたのか、普段着が少し着崩れていた。
そして、やや荒くなった息を深呼吸して整え、ニコッと笑う。
俺はそれ見て微笑み、まずはこう言葉をかけた



「いや、良いよ…とりあえずお疲れ様」
「少し長い話しになると思うけど、時間は大丈夫?」

光里
「うん、大丈夫…弟には連絡したし♪」


それなら大丈夫か。
俺たちはとりあえず、それぞれソファーに座る事に。
リビングのテーブルを中心に、東側に俺とキュレム。
西側には光里ちゃんがそれぞれ座った。
姉さんはすぐに飲み物を用意してくれ、それをテーブルに置いてから最後に北側へ座る。
そして、俺はまず最初からこう告げる事にした。



「まず…光里ちゃんには、今まで隠していた事がある」

光里
「隠している、事…?」


「…俺は、ポケモンと一緒に暮らしてるんだ」


光里ちゃんは、当然だが?となる。
俺はそんなの予想内だし、とりあえずそのまま真顔で話を続けた。



「この娘はキュレムと言い、『境界ポケモン』と呼ばれてる存在で、今は人の姿に変化して、この世界に現れてしまったんだ」


俺はそう言ってまずキュレムを紹介する。
キュレムは特に会釈する事も無く、コップに入っているジュースをピキピキと冷やしていた。

うむ、Going my wayなレディだ! 実に興味が薄そうだな!?
アンタの事なんだから、少しは興味持ってよ!?

ちなみに光里ちゃんはポカーンとしていた…
いや、まぁそうだろうけどね!


光里
「それって…ゲームのポケモン、だよね?」
「…つまり、擬人化したって事? 同人誌的な?」

風路
「そうね、その方が解りやすいわね…」
「かくいう私も、本当は人間じゃないの…ケンホロウと言う、ポケモンなのよ?」


光里ちゃんはえぇっ!?と、予想通りかなり驚く。
姉さんは試しに手で風を軽く操って見せた。
その明らかに作られた風でテーブルに置かれていたテイッシュの箱が浮き上がり、それを見て光里ちゃんは冷や汗を垂らしてしまう。


光里
「そんな…まさか、本当に?」

キュレム
「むぅ…まだ熱い」


更にピキピキピキ…と音をたて、キュレムはコップを更に冷やしていく。
流石に完全に凍らせてしまったら飲めない為、キュレム的にも調整が難しいのかもしれないな…
ちなみに中身はメロンソーダだが、既に表面が凍り付いている…光里ちゃんはそれを見て、更に驚いていた。


光里
「…どうして、こんな? いや何で急に、私にそれを話すの!?」


「…俺は、光里ちゃんを信じているからこそ、このキュレムを頼みたいんだ」
「俺は既に、大勢のポケモンを抱えている、これ以上は正直限界なんだ」
「でも、だからといってキュレムを放ってはおけない…!」
「だから、お願いだ光里ちゃん! 決して金銭面とかで苦労はかけさせない!!」
「どうか、キュレムの事を守ってくれないか…?」


俺はソファーから立ち上がり、床に膝を着いて土下座した。
その姿を見て、光里ちゃんは狼狽える。


光里
「そ、そんな事しないで!? 私なら、別に構わないから!」
「大丈夫! この事は誰にも言わないし、聖君の頼みならキュレムちゃんの事は私が何とかして見せるから!!」


「…ありがとう、この恩には絶対に報いる」

風路
「うん、良かったね聖君♪」
「それで、キュレムちゃんはそれで良いのね?」

キュレム
「ん、聖と約束したから…」

光里
「それじゃあキュレムちゃん、今日からよろしくね♪」


光里ちゃんはキュレムに手を差し出す。
挨拶としての握手なんだろうが、俺は結果が予測出来たのであえて何も言わなかった。
すると、キュレムはとりあえず手を握るが…


光里
「あ、あはは…随分冷たいんだね、手」

キュレム
「…光里、熱い」

光里
「露骨に嫌な顔された!? ただ仲良くなりたかっただけなのに!!」


まぁ、そうなるわな…キュレムもかなり譲歩して握手はしたんだろうが、やはり人肌の体温は気に入らなかったらしい。



「とりあえず、キュレムには名前を付けてあげてくれ」
「人間界で生きる以上、人としての名前は必要だからな」


光里ちゃんはそれを聞き、口元に手を当てて考え始める。
光里ちゃんの事だし、そんなネタに走った名前は付けないと思うが…


光里
「えぇと…名前かぁ〜?」
「キュレムキュレムキュレムキュレムキュレム…だったら、Qちゃん!」

風路
「…オバケの?」

キュレム
「犬は人に媚びへつらう姿が気に入らないから嫌い…」


おっと、ネタが降って来たな…
しかし、キュレムは本当に犬が嫌いなのか?
その辺の真意は定かではないが…

つーか、○バQはそんな○ョジョ的な理由で犬が嫌いなんじゃねぇっつーの!



「そこはむしろキュウリのだろうが!」

風路
「ご飯のお供には鉄板よね〜♪」


「むぅ…野菜は嫌いじゃない」


おっと、キュレム的には野菜はむしろ構わないらしい。
まぁ、凍らせて食べるんならそっちの方がある意味美味いかもしれんしな…

つーか、とりあえずそろそろ止めとこう…下手にツッコムと長くなる!


光里
「まぁネタは置いておいて…とりあえず、漢字にするなら『穹』かな?」


光里ちゃんは指で空中に字を描く。
こちらからだと、裏表反対なのでかなり解り辛いんだが…まぁ何とか理解した。
意味にすると、空とか、大きいとか、そんな意味の字だ。
幼女体型のキュレムからしたら、やや意味深に感じるが…まぁ良いんじゃないかな?



「どうだキュレム?」

キュレム
「ん、穹…分かった」
「私の名前…穹」

光里
「それじゃ、改めてよろしくね♪」


光里ちゃんは笑顔で穹に笑いかける。
その顔を見て、穹は少し照れたのか、顔を赤らめて目を逸らしてしまった。


光里
「いや〜ん可愛い♪ もう思いっきり抱き締めたいのに〜!」


光里ちゃんは両手で頬を押さえて見悶えていた。
まぁ、可愛いのは確かか…とはいえ、抱き締めたら凍るからな。
さっきの握手で嫌がられたのが効いているのか、本当に抱き締める事は流石の光里ちゃんもしなかった。

とりあえず、これで穹の事は光里ちゃんに任せて大丈夫だろう。
俺も出来るだけサポートしないとな…穹が、見知らぬ世界で苦労しない様に。



………………………



光里
「というわけで、新しい家族を紹介します」


「穹、よろしく」


「…はぁ?」


弟は片目を釣り上げて?を浮かべる。
いや、そりゃそうでしょうけどね…私も最初はそんなんだったし。
穹ちゃんは早速靴を脱いで中に入るが、四畳半の狭いワンルームに充満する熱気に当てられ、すぐに足を止めた。



「…むぅ」


コォォォォォ…


穹ちゃんは、とりあえず周りの空気を冷却して、いきなり気温を下
げた。
まぁ、暑いよね…この時期は夜でも特に。


光里
「ゴメンね? かなり狭くて暑苦しいかもしれないけど…」


「…我慢する、約束」


穹ちゃんは健気にもそう言ってくれる。
ええ娘や〜! 私は物凄く抱き締めたい衝動に駆られるが、嫌われたくないので我慢した。
とりあえず私も中に入り、まずは着替える事にする。


光里
「ほら、外に出る!」


「へいへい…」


弟はいつもの様に、目の届かない場所に移動した。
こういう時はホントに不便なのよね…これが妹なら、気にせずに着替えれるんだけど。
私は軽く息を吐き、まずは部屋着に着替えた。
シャワーは職場で借りたし、家では別にいっか。


光里
「穹ちゃんは、着替えあるの?」


「ん、聖から貰った」


そう言って穹ちゃんは、持っていた紙袋を高々と持ち上げる。
それ程大きくない紙袋だけど、穹ちゃんのサイズならあんな物だろう。
とはいえ女の子である以上、やっぱりある程度着飾りたいのは本音のはず。
穹ちゃんの服も、ちゃんと考えてあげないとなぁ〜



「着替える?」

光里
「そうだね、部屋着とかあるの?」


「むぅ…良く解んない、今日まで服とか着た事無いから」


ぐは…それまで裸族だったの!?
まぁ穹ちゃんは氷タイプで、寒ければ寒い程過ごしやすいらしいから、服は無い方が涼しいんだろうなぁ…


光里
「とりあえず、中身見せてね?」
「んっと…これは寝間着か、下着も何着か…ん? 何でこれ背中ホックになってるの?」
「見た目スポーツブラみたいになってるけど、これ上着よね?」


「翼が邪魔、だからその形」


私は言われて察する。
そういえば、今は偽装薬の効果で人間に見えているだけ…という事だったわね。
つまり、穹ちゃんは元々翼と尻尾があるのだ…
明日になれば偽装は解けてるから、外に出る時は必ず飲ませてと注意されてたっけ。


光里
「とりあえず、今はいっか…おーい! もう良いわよー!?」


私は玄関に向かって叫ぶと、弟は玄関を開けて中に入って来る。
そしていつもの様に鬱陶しそうな顔で、ふてぶてしくしていた。
私はそれを見て、目を細めて弟を睨み付ける。


光里
「あんたねぇ、少しは穹ちゃんに気を使うのよ?」
「この娘、人間じゃないんだからっ」


「…は?」


「キュレム、境界ポケモン」
「失った体を真実と理想で埋めてくれる英雄を待つ、氷の伝説ポケモン」


おお、図鑑説明の様に見事な自己紹介。
とはいえ、弟は呆れ返った様に微妙な顔をしていた。
まぁ、気持ちは解るよ…見た目はただの子供に見えるもんね、
とはいえ、本気でこの娘は冷気を操れる。
その気になれば、街中を氷の世界に変える事も出来るんだそうだ。



「やれやれ、何か電波な娘を拾って来たな…」
「大体、金はどーすんだよ? 毎日の食事だって苦労してんのにさ!」


私はそこでふふんと鼻を鳴らし、厨二的なポーズで札束を弟に見せつけた。
すると弟はうおっ!?と驚き、後ずさる。
いや、私もこんなのポンと渡されて、同じリアクションしたわよ…
そういう所は何だで姉弟よね〜


光里
「とりあえず、この娘の生活費は別途で保証してもらえるから、安心して」
「なので、これは穹ちゃんの生活費です!」


「何だよ…ぬか喜びか、まぁとりあえず何とかなるならもう良いや」


とりあえず、先行投資で100万円は貰ってる。
もろもろ必要な物も出て来るだろうから、との事だ。
食費に関してはまだ未知数との事で、どれだけ食べるかは解らないから足りなければ気軽に言ってくれと、聖君は言ってたけど…


光里
「…とりあえず、何か食べたいリクエストはある?」


「ピザ! たまには頼もうぜ!?」


「何でも良い、冷たければ」


ハッキリと割れたわね…ピザで冷たいってのは無いでしょ?
いや、冷凍ピザとかは売ってるけど、この場合どうしよ?
弟は宅配キボンヌだし、冷凍物じゃ流石にお腹一杯食べるのはキツイ。
資金的には穹ちゃんがどれだけ食べるか未知数だし、どうしようかな?


光里
「まぁ、今日は出逢いの日だし、とりあえず宅配ピザにしますかね!」


「うっしゃあ! 俺、肉メインが良い!!」


「…それ冷たいの?」

光里
「ううん、かなり熱いから…穹ちゃんは冷やして食べた方が良いかも」


私がそう言うと、穹ちゃんは眉を細めてむぅ…と唸った。
中々難しいよね…今後は穹ちゃん用に冷凍食品も考えないと。
…家に冷凍庫無いけど。
とりあえず、私はスマホで宅配を注文し、後は飲み物を冷蔵庫から出してテレビを点ける。
すると、まずはニュースが始まった。
弟と穹ちゃんもその場に座り、全員でテレビを見る。



「むぅ、足元熱い…少し冷やす」


そう言うと、穹ちゃんの足元が急速に冷却され、冷気がこちらまで届いて来た。
っていうか、段々と部屋の気温が下がって来てる気がするんだけど?



「おいおい、何か冷えてきてねぇか?」

光里
「きゅ、穹ちゃん! 少し加減して!?」


「ん…分かった」


穹ちゃんは力を調節し、自分の周りだけを器用に冷やす。
とりあえず室温が安定したのを確認し、私は安心してから改めてニュースを見る。

何々…今日の昼前に突然の異常気象。
局地で猛吹雪、何かのアトラクションか?
悪質なイタズラの可能性もあり、警察当局は現在も調査を続けている模様…


光里
「……?」


「げふん」


露骨に咳払いして目を逸らした!?
これ、完全に穹ちゃんの仕業だよね!?
うわ、警察出動してるよ! もう色々起こってるよ!!



「何じゃこりゃ…妙なイタズラもあったもんだな〜」


とりあえず、弟にはまだ内緒にしとこう。
世の中、別に知らなくても良い事はあるのだ。



「…ところで、この子誰?」


「今更かよ!? 弟だよ弟! 姉ちゃんのお・と・う・と!!」


そういえば、まだ名乗ってもいなかったわね。
っていうか、この作品でまだ弟の名は1度も出ていなかったりする。
つまり今までは完全なモブだったわけだけど、ついに情報公開される時が来たのね!



「…名前、知らない」


「ああ、そっか…まずはそれか」
「俺は光輝…『新央 光輝』(しんおう こうき)だよ」


とりあえず、弟はそう名乗る。
穹ちゃんはそれを聞き、まず名前を覚えた様だ。



「光輝、光里の弟…分かった」

光輝
「っていうか、お前っていくつなの?」

光里
「そういえば聞いてなかったね? 穹ちゃん何歳なの?」


「…覚えてない、数えてもいなかったから」
「でも多分、人間としてなら25位だと思う…レシラムとゼクロムよりかはいくつか上だから」


それは驚きだ…私たちより年上とは。
ってか大人!?
ポケモンは見た目で判断出来ないとは聞いてたけど、流石に伝説のポケモンと言われるキュレムは、色々特別なんだろうな…


光輝
「…25〜? いくら何でもそれは無ぇだろ?」

光里
「ううん、穹ちゃんは伝説のポケモンだから不思議じゃ無いんだと思うよ?」
「単に見た目が幼いってだけなんだろうし」


「楔で合体したら、きっとボンッキュッボンッになれる」


だそうですが、一体それはどんな感じなのだろうか?
とりあえず、私には想像も出来そうに無かった。
その後、とりあえず私は光輝に色々説明しながら時間を潰す。
そして、遂に待望の宅配ピザはやって来た…



………………………



光輝
「うおお…! この久し振りの肉厚!!」


「…むぅ、熱すぎる」

光里
「穹ちゃんのはこっちのお皿に切り分けてあげるから、自分で上手く冷やしてみてね?」


私はとりあえず8等分のピザをふた切れづつ皿に盛る。
残りふた切れは、食べた後に足りないと思えば、そっちに渡す予定だ。
サイズは1番大きいのにしてあるから、ふたつでも結構ボリュームあるけど…



「………」


ビキビキビキッ!と音をたてて、穹ちゃんの皿が途端に凍っていく。
それを見て、ピザにかぶり付いていた光輝は目を丸くして手を止めた。
うん、見たら驚くよね…そりゃ。



「…ん」


バリボリバリッと、氷を噛み砕く様な音で穹ちゃんはピザを食べ始める。
その顔は思いの外ご満悦で、実に美味しそうに食べていた。
見ているこっちも幸せになれそうな笑顔なのだが、凍ったピザをバリバリ食べる様はシュールだ…


光里
「うーん、やっぱりピザは温かい方が良いよね…」

光輝
「同感」


「私は冷たいのが良い、これは美味♪」


まぁ、満足してるしいっか…
私たちは結局ふた切れだけで満足し、残りふた切れは冷蔵庫に仕舞って明日の朝御飯にする予定となった。
その後はとりあえず寝間着に着替えて就寝。
穹ちゃんは暑苦しいから布団はいらないとの事で、そのままクッションで寝る事となった…



………………………



そして翌朝…
穹ちゃんとの生活2日目が早くも始まる…


光輝
「起きろー! 朝だぞー!?」

光里
「うぅ…もう朝かぁ〜」


「………」


私は弟に起こされ、大きな欠伸をして体を起こす。
そして穹ちゃんの姿を確認し、私は思わずギョッとしてしまった。


光里
「うわ…改めて見たら、本当に人間じゃ無いんだね穹ちゃん」


偽装が解けてしまったからなのか、角やら翼やら尻尾やらがちゃんと見えてる。
髪の色も全然違うし、本当はこんな姿だったんだ…


光輝
「とりあえず、起きねぇな…」

光里
「うん、ちなみに下手に触っちゃダメだよ? 凍る可能性あるらしいから」

光輝
「んなアホな事しねぇよ…コイツの周辺が既に凍ってるのに」


確かに…穹ちゃんの周りだけだけど、窓やら床やらが凍ってしまっている。
あらら…これは対策考えないといけないなぁ〜


光里
「とりあえず、顔洗って着替えるわ…」

光輝
「ん…朝飯はどうする?」

光里
「私はコンビニ寄って買うから、ふたりはピザ食べて良いよ?」


私はそう言って洗面所(トイレ&風呂兼用)に向かい、とりあえず顔を洗った。
今日も学校かぁ…もうすぐ期末だし、最低限勉強しないと。



………………………



光里
「それじゃあ、ちゃんとお留守番しててね?」


「ん、頑張る」

光輝
「何だったら、テレビゲームとかで遊んでても良いから」


光里たちはそう言って家を出て行った。
とりあえず、学校とかいう場所に行くらしい。
私はひとりで留守番を請け負い、とりあえずリビング(兼寝室)でしばらくくつろいだ。
そして、まずはテレビのリモコンとやらに挑む。
一応、これでも字はちゃんと読める…電源、これか。

私は早速リモコンを操作し、テレビを点灯させた。
そして画面に映ったのは何やら女性の人間…
今は早朝のニュース番組をやっている。

私は、それを珍しげな顔で注視していた。


テレビ
『それでは朝の占いです! 今日は牡羊座の人が運勢良好♪』



「占い…?」


星座占いとの事だけど、私は自分の誕生日とか全く覚えてないので、そもそも意味が無かった…
私は、そのままチャンネルとやらを色々変えてみる事に…
とはいえ、この時間はどれも似た様な番組が流れるだけだけだった。

そんな風に若干暇を持て余していると、突然窓の外から声をかけられる…



「何だ、随分狭い家を選んだんだな?」


「…ディアルガ、おっす」


私はディアルガの存在に気付き挨拶をする。
その後、ベランダの窓を開けてあげると、ディアルガは物珍しそうな顔で部屋を見渡していた。

確か、ディアルガも誰かの家で世話になってるらしいけど、一体何処なんだろうか?


ディアルガ
「…ふむ、今はお前だけか?」


「そう、家主のふたりは学校」

ディアルガ
「どこも似た様な物だな…こちらもそうだ」
「しかし、貴様は偽装薬を飲んでいないのか?」


私は頷く。
今はそもそも留守番だし、誰かがピンポンしても出なくて良いと言われてるのだ。
それなら、わざわざ薬を飲んでおく必要も無い、どうせ誰にも見られないのだから。

…ディアルガの様な例外を除いて。


ディアルガ
「ふ…成る程、貴様は留守番か」


「そっちは外に出て良いの?」

ディアルガ
「こちらの家にはオートロックとか言うのがあって、家に誰もいなくてもちゃんと監視してもらえるんだそうだ」
「故に私は自由に動き回れる…ちゃんと合鍵も貰ってるしな」


そう言ってディアルガはベランダで靴を脱ぎ、家の中に入って窓を閉めた。
その後カーテンも閉め、外からの視界をシャットアウトする。
成る程…カーテンの事は失念してた。
これならホントに誰にも見られないね。

ディアルガの奴、意外に気が利く。


ディアルガ
「…少し休ませて貰うぞ?」


「…ん」


私が許可すると、ディアルガは近くのクッションに座り、少し脱力した。
ディアルガ、何だか疲れてる?
私は何となく気になってしまい、聞いてみる事にした。



「…何かあったの?」

ディアルガ
「別に、ただ…これが日常なのだと思うと、少しな」


ディアルガは俯き、悩んでいる顔をする。
あれから約半年…正常に戻った私たちは、目的も生きる意味も特に見出だせず、ただただ空虚に生きていた。

そして、今回の世界移動…原因不明で意図も理由も解らない。
ただ、私たちはここに来て、ここにいる。
そこに、果たして意味はあるの…?

ちなみに…生まれた世界は違えど、私とディアルガはアルセウスに操られていた時に面識はある。
住む世界も違ってたけど、その時の記憶が残っているから、私たちは一応知り合いなのだ。

もっとも、本当はこんな風に雑談を交わす程仲が良かった訳じゃないけど…


ディアルガ
「…貴様の主はどうだ?」


「悪くない…良く笑うし、よく喋る」
「私に対しても、そんなに怖がらないし、今の所は問題無い」
「そっちは…?」

ディアルガ
「さぁな…良くも悪くも人間の子供だ」
「だが、度胸はあるな…それなりに」


ディアルガは息を吐き、俯いたまま呟く様に答える。
あまり調子は良くなさそう…本当に、何とも無いんだろうか?
私は少しだけ心配してしまうものの、とりあえずそれは今は置いておく。

折角ここに来てくれたのだ、なら聞いておきたい事がある。



「…ディアルガ、これどう使うか解る?」

ディアルガ
「…ん? 何だこれは…? 電気機器なのは解るが」
「とりあえず、電源はこれか…こっちはEJECT、ん…? 中に何かが入っているな…」


ディアルガは、とりあえず黒くて四角い電気機器を触って調べていた。
そして、テレビの下の箱から紙切れを見付け、それを取り出して確認する。


ディアルガ
「取り扱い説明書か、成る程これを見ろ…」


ディアルガはそう言って説明書の紙を私に見せる。
そこにはこの電気機器の使い方が書いてあり、とりあえず私たちはそれを見て使い方を覚える事にした。



「…電源は入ったけど、どうすれば画面に映るの?」

ディアルガ
「ビデオ端子…というのには接続されてるな」
「となると、これはテレビの設定が必要な様だ」
「リモコンに、ビデオの項目は無いのか?」


私はリモコンを見てみると、電源の近くにビデオと書かれたボタンを見付ける。
私はそれをすぐに押して、画面を切り替えた。
すると、ビデオ1と画面左上に文字が現れ、画面に何かが映っている。


ディアルガ
「何だこれは? テレビゲームという奴か?」


「そういえば、ゲームあるって聞いてた」


という事は、これはゲーム機らしい。
画面には何かのゲーム画面が映っているらしく、イケメンたちが小躍りしていた。


ディアルガ
「ん、これがパッケージか…○きめきメモリアル ガールズサイド」
「ジャンル、恋愛シミュレーション」
「何だこれは…恋愛をシミュレーションとは、一体何の意味があるんだ?」


「…解んない、とりあえず他のゲームは無いの?」


ディアルガはテレビの下の箱を漁り、何個かのケースを見付けた。
とりあえずそれがソフトっぽい。
問題は何のゲームか…?


ディアルガ
「…○ァイナルファンタジーZに三○無双、ペル○ナ3とか言うのもあるな」
「他にも色々あるが、私には全く内容が判断出来んぞ?」


「なら、何かシューティングとかやりたい」


私は何となく気になってたジャンルを指名する。
ゲームの事は少し雑誌で見たから、ちょっと気になる。
でも、この家にあるのかはまだ解らない…


ディアルガ
「シューティング、ねぇ…これか?」
「何々…実況おしゃべり○ロディウス…って、実況?」


おお、何だか面白そうなタイトル。
私はそれに決めて、早速ディスクを入れ換えてもらった。
私はそのゲームの説明書を確認し、とりあえずやり方は覚えた…後はゲーム起動!


『実況! おしゃべり○ロディウス〜!!』



「おお…喋った」

ディアルガ
「ほう、とりあえず喋るから実況なのか?」


私はとりあえず適当に自機をセレクトする。
というか、いきなり16機もあると、どれ選べば良いか解り辛い。



「とりあえず可愛いから猫で良い」

ディアルガ
「ミケか…三毛猫だからミケ、安直だな」


私は自機を決定し、次にらくちんオートを選択。
そしてついにゲームが始まった。


『全国の女子高生のみなさーん!? 実況のタコだよ♪』


ディアルガ
「既に女子高生とかいう年齢を超越している我々には、何ともシュールな発言だな」


「まぁ、心はJKで」


私はとりあえずゲームを進める。
流石に最初はそれ程難しくもなく、らくちんオートの名に恥じずボタンひとつだけでサクサク進められた。
その際に、やたらと実況されているのが何かとシュールだった。


ディアルガ
「ほう、思いの外ちゃんとシューティングしているのだな」
「成る程…射撃をメインに敵機を撃ち落とすゲームだから、そういうジャンル名なのか」


「グッド、これは面白いゲーム♪」


実況と世界観のバカさ加減を許容出来るならば、これは本当に楽しいゲームだった。
そのおバカな世界観が好みであるならば、これは間違いなく神ゲーだろう。
私はそのままサクッと1面をクリアし、楽しくゲームを続けた。


ディアルガ
「しかし、どこかで見た事のある武装だな」


「知っているのディアルガ?」

ディアルガ
「うむ、あれは確か…とある並行世界で見たんだが、この武装と似た機体が、何やらシーラカンスとか鯨とかと戦っていた気がするな…」


「それは興味深い…でも何で海洋生物?」


ディアルガは解らん…とだけ言って黙ってしまった。
むぅ、気になる…
私は少し気を取られながらも、2面もちゃんと攻略出来た。



………………………



ディアルガ
「やれやれ、貴様は相変わらず何かに熱中すると止まらないな…」


「むぅ…! もうちょっとでクリアだから…」


結局、私は3面辺り1度躓き、そこからコンティニューを続けてようやく最終面まで辿り着いた。
既に時間は昼過ぎとなっており、お腹も空いてきている。
だけど、ようやくハマってた難所を抜け、私は最後のボスと思われる敵を撃破する事が出来た。



「やった…クリア!」

ディアルガ
「何だ最後のは? ボスが何もしてこなかったが…」


私は気にせずに感動に酔いしれる。
そして、伝説のタコ焼きは…


『あ、どうも…ごちそうさま!』


チュドーーーーーンッ!!



「………」

ディアルガ
「………」


「( ゚д゚)」

ディアルガ
「…昼、どうする?」


私は無言でゲーム機の電源を落とし、そのまま放心した。
何故か、凄く空しくなった…そして、お腹空いた。



「とりあえず、タコ焼き食べたい」

ディアルガ
「タコ焼きって…貴様は熱いのが苦手だろう?」


「凍らせて食べるから大丈夫」

ディアルガ
「やれやれ、それではタコ焼きの本質が否定されてる気がするがな…」
「まぁ良い、待っていろ…すぐに買って来てやる」


ディアルガはそう言って、ベランダから外に飛び降りる。
私はよろ…とだけ言って、その場で手を振って待つ事に。
そして他のゲームのパッケージとか説明書とかを色々見ていった。



「…むぅ、ゲームは奥が深い」


少なくとも楽しかったのは確かだ。
コンティニューしてでも最後までやりたくなったのは、あのゲームが素晴らしかったからに他ならない。
とはいえ、ラストのアレはちょっと…
いや、アレも何かのネタなのかもしれないし、解る人には解るのかもしれない…
とりあえず、今の内に他のゲームの説明書も見ておこう…



………………………



ディアルガ
「買って来たぞ」


「お〜♪ 良い匂い…」


私は、ディアルガがビニール袋から出したタコ焼きを、一船受け取る。
そして、すぐに冷却して熱を冷ました。
ディアルガはため息をひとつ吐き、自分の分のタコ焼きを熱々の状態で食べ始める。

私はまずカチコチにしたタコ焼きをひとつ口に入れて頬張った。



「グッド、冷たくても美味しい♪」

ディアルガ
「私には理解出来んがな…はふっ!」


ディアルガはあまりの熱さに苦戦し、はふはふ良いながら少しづつ食べていた。
むぅ、熱いなら冷まして食べれば良いのに…



「ディアルガは、何故そうまでして熱々のタコ焼きを食べたいの?」

ディアルガ
「何を言う、熱くないタコ焼きは魅力半減だろう」
「むしろ、この熱さに耐えながら租借するのが通なのだ…はふっ!」


成る程、私にはどうやっても味わえない魅力という事だ。
とはいえ、悔しくても対抗は出来ない。
どうやっても私に熱い物は無理なのだから…

仮に食べれたとしても、条件反射ですぐに冷却してしまうからどうしようもない。
これは本能的な物だ…私は人肌以上の熱さには我慢出来ないのだから…


ディアルガ
「そういえば言い忘れていたが、私には大愛という名を貰った」
「今後はその名で呼べ…はふっ」


「だいあ…?」

ディアルガ
「大きな愛…と書く、それで大愛だそうだ」


私はそれを聞いてぷふー!と吹き出す。
これは滑稽だ…あの冷血ディアルガが愛?
さしものディアルガも、これには相当恥ずかしい様だった。


大愛
「…笑うな、似合わないのは百も承知だ」


「でも、嫌じゃないんだ?」

大愛
「自分から頼んで名付けてもらったのだ…無下には出来ん」
「それに、お前はどうなんだ? 人の世界で生きるなら名は必要だろう?」


「私は既に穹と言う名を貰ってる」
「大きな、とか大空とかそういう意味らしい」


私は自慢げに鼻を高くする。
大愛はそれを聞いてふーん、という風に、あまり興味は無い様だった。


大愛
「…貴様、随分笑う様になったな」


「そう言う大愛は、随分大人しくなった」
「前だったら、死んでも人になんか身を寄せなかったろうに」

大愛
「それはお互い様だろう? お前とて、人に関心など抱かなかったはずだ」


確かにそうだ。
私たちは共に、本来は冷酷非情。
自分の事しか考えず、常に傲慢。
それ故に、心の邪気につけ込まれてアルセウスの配下にされた。

私はあの時の気分を思い出して、胸が気持ち悪くなる。
自分の意志すらねじ曲げられ、ただの手先として動く駒でしかなかった私たち…

あの時の記憶は鮮明に残されており、今でもあの焼き尽くされる痛みは脳裏に焼き付いている。
同時に、あの時受けたレシラムとゼクロムの必至な感情も、心に残っている…

魔更 聖…特異点と一緒にいたから、あのふたりはあそこまで強くなった。
きっと聖がいなかったら、あのふたりは私には勝てなかったはず。
それだけ、聖の存在は大きかったのだ…
私も、直接話して何となく解った。

聖は、良くも悪くも普通の人間とは違いすぎる。
いつか…あの子は不幸になるんじゃないか?と、そう思わせる位には。



「大愛は…これから先、何がしたい?」

大愛
「私は…まだ何も解らない」
「ただ、パルキアはとても幸せそうだった…」


対して、大愛はとても弱々しかった。
多分、自分の存在理由が解らなくなってる。
でも、それは私もきっとそう…
自分の事もよく解らないし、人間の事も解らない。

でも、私はこう思った。



「私は、生きたい」
「自分の意志で、人生を楽しみたい」

大愛
「例え、人間に隷属してもか?」


「違う、光里たちは家族」
「魔更 聖もそう言ってた…大愛は、違うの?」


私の質問に、大愛は答えられなかった。
彼女はただ俯き、食べ終わったタコ焼きの船をゴミ箱にそっと捨てる。
その時の顔は、見た事も無い程にみっともなかった。



「…今の大愛は弱い、それじゃパルキアには勝てない」

大愛
「解っているさ、そんな事…」
「だが、どうやっても…勝てる道が見えない」
「私には、あの幸せそうな顔のパルキアに、勝てる気がしない…」


「だったら、探す」
「私も手伝ってあげるから、大愛の生きる道を探す」


それを聞いても、大愛は答えなかった。
でも目を瞑って、何かを考えている。
私はこう思った…きっと、私たちがこの世界に来たのには、何か意味があるのだと。

そして、私は期待する。
家族と言ってくれた、光里たちに…
私みたいな存在でも、幸せになって良いのだと、思える様に…










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第5話 『幸せになれる道』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/02(木) 19:38 )