とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第4章 『新たなる再会』
第5話

「…ちょっと地球には、休んでもらうのさ」

守連
「ばばばばっ…さぶい〜〜〜!!」

華澄
「一体、これは何事なのですか!?」


俺たちは突然の猛吹雪に身を凍えさせる。
ちなみに今は6月も下旬! もうすぐ7月だというのにこの異常気象…間違いなく混沌だろコレ!?
今、家のリビングにいるが、室内気温は何と-3℃!!
窓から外を見れば一面銀世界で、人間はあっさり凍死するレベルだろう!
阿須那、女胤、愛呂恵さんと三海の4人はそれぞれ外に出ていたが、大丈夫なんだろうか?


ピンポーーーン!!


そんな異常事態の中、突然のインターホン。
俺は?を浮かべつつも、玄関を見た。


華澄
「もしや、遭難者では!? 誰かが助けを求めているのやも…!」


そう言って華澄はすぐに玄関に向かった。
俺からしたら危険極まりないと思うのだが、華澄は迷わずに玄関を開ける。
そして、そこから飛び出して来たのは猛吹雪。
一瞬にして家内は凍りついていき、見る見る内にセルフ冷凍庫の完成だった。
俺たちは夏服のままだからかなりヤバい!
やっぱり危険だらけだったか!?



「華澄! すぐにドアを閉めろ!!」

華澄
「は、はいっ!! って、何かが中に!?」


華澄は何かを目で追うも、すぐにドアを閉める。
吹雪は辛うじて収まったものの、玄関は完全に凍りついていた。
そして、ゆっくりとした歩みでリビングに侵入して来る幼女…

…ん? 幼女?


幼女
「…やっと、会えた」


「お、お前は…!?」


リビングで俺の前に歩み寄って来たのは、予想外極まりない来訪者だった。
水色寄りの青髪で長さは肩の下位まで伸びるセミロング。
身長は120p程度の幼女体型。
全身を黒い半透明の鎧で身を包み、背中には水色の翼が氷で形成されている。
彼女の額の中心には黄色の角が真上に突き立ち、尻には棘の様な突起が飛び出している尻尾を揺らしている。
俺は直ぐ様に理解した、この幼女はあの時の…!?



「キュ…レム!?」

キュレム
「…魔更 聖、返して」


突然現れて手を差し出し、突然返してって何の事だ!?
それよりも、これでこの異常気象の原因が解った!
全部コイツが作り出してたのか!?



「くそっ…今更になって復讐か!?」
「とはいえ、再生怪人はあっさり倒れるのが定番だぜ!?」


実の所、諸々の都合もあってキュレムは以前も割とあっさりやられてたりするんだが…まぁそれは良い!
俺は臨戦態勢で某ヒーローの変身ポーズの様な構えを取るが、キュレムは無感情に?を浮かべ、首を横に傾げて考えていた。


華澄
「あ、あの聖殿…この娘は、もしや敵では無いのでは?」

守連
「ばばばば…っ、わだじも…ぞうおぼぶ〜〜〜!!」


ふたりは何とキュレムを擁護する。
俺は改めてキュレムを見るが、確かに攻撃意志は感じない。
今の所、コイツはただ立っているだけ…か。
その状態だけで冷凍庫を作り上げるんだから、堪ったもんじゃないんだがな!!



「とりあえず冷凍禁止!!」

キュレム
「!?」


俺がビシィ!と指差して命令すると、キュレムはビクッと目を見開いて背伸びする。
そしてかなり悲しそうに能力を弱めていった…
とりあえず、しばらくはこのままだな…つか、これじゃ家中ビショビショだよ。



「くっそ…何でこうなるかな〜?」
「で、お前は何でここにいるんだ? いや来たんだ、か?」
「返せって何の事だ?」

キュレム
「楔(くさび)…貴方がパクった」


俺はハッ!?となる…コイツ、何という忘れた頃の伏線を…
そんなの読者絶対忘れてるぞ? 何それ?と言われても仕方ない位さりげない俺の意味深行動だったからな。
とはいえ、全てこの再会の為の伏線だったと言うのだから、誰が予想出来ただろうか!?
…まぁ、それは良い!



「しかし、その為だけにここに来たのか? ってか、どうやって来たんだ?」

キュレム
「解んない…気が付いたら公園にいた」
「それで少し歩いたら、魔更って表札が見えた」
「魔更 聖…そう思ってピンポン鳴らした」


成る程、あくまで偶然だがキュレムは楔の為にここに来たんだな…
俺はやれやれ…と頭を掻き、1度自室に戻る。
確か机の引き出しに保管してたはずだ。
俺は凍りついた階段で滑らない様に気を付け、自室に辿り着く。
上は既に気温が上がってきており、湿度がかなりヤバかった…



「ぐは…蒸すな部屋の中は!」


今度は一転して暑くなってくる。
俺はすぐに引き出しから楔を取り出し、タオルを複数持って下に降りた。



………………………




「これで良いのか?」

キュレム
「楔!」


早速飛び付こうとするキュレムの額を俺はタオルを持った右手で抑え、制止する。
くそ、タオル持って正解だった、かなり冷てぇ…
そしてキュレムはパタパタと可愛く手を振り回すも、当然俺には届かない。
そして、俺はまずこう注意した。



「返すのは良いが、絶対に悪さには使うなよ!?」

キュレム
「むー! 悪さって?」


「…誰かを傷付けたり、悲しませたりする事には絶対使うな」
「使う時は、誰かを守る為に使え」
「その約束が出来るなら、これは返してやる」


俺が厳しい顔でそう言うと、キュレムは無表情に首を傾げる。
そして考えた後、キュレムは小さく頷いた。
今一信用し難いが、とりあえずこっちから信頼してやらないとこっちも信用されない。
俺はゆっくりと楔をキュレムの掌に乗せてやった。
それを見て、キュレムは少しだけ頬笑む。
そんなに嬉しかったのか…


キュレム
「…ありがと」


「いやまぁ、俺がパクったのは事実だし…」
「とりあえず、これからどうするんだ?」

キュレム
「…どうしたら良い?」


いや、俺に聞かれても…
こういう時は白那さんにでも聞いてみるか?


華澄
「とりあえず、今はここに置いておく方が良いのでは?」

守連
「うん…キュレムちゃん、きっと何も解らないし」


確かにそれが良いか…何だでここが1番安全とも言えるからな。


キュレム
「外に出る」


「ヘイ、ステイ!! 早速好奇心旺盛だなレディ!?」
「だからここにいろって!! 何も知らないんだろ!?」

キュレム
「大丈夫、ディアルガも外歩いてた」


「はっ!? ディ、ディアルガ!?」


まさかアイツも来てるのか!?
どうなってんだ? まさか、既に混沌世界に入っていたのか?
だが、違和感は感じなかった…少なくとも寝ている間にでも入っていなければ、気が付かないとはならないと思うが。


キュレム
「でもディアルガ何か見た目おかしかった…人間みたいに見えた」

華澄
「…という事は、既に偽装薬を使っているのでは?」


「有りうるな…こりゃ益々白那さんに聞いてみないと」


俺たちは頷き合い、とりあえず1度城に向かう事にした。



………………………



白那
「…成る程、やはり混沌の可能性は高いね」


「そう、ですか…」


俺たちは白那さんの部屋で事情を説明し、白那さんもまたディアルガとの事を話してくれた。
どうやら、ディアルガもまた敵意は無く、今は人間界で生きていこうとしているらしい。
敵だった頃の姿しか知らないから俺には何とも想像出来ないが、白那さんは少し遠い目をしていたのが何だか印象的だった。


華澄
「とりあえず、キュレム殿はここに置いておくのは?」

白那
「出来れば止めた方がいい、騰湖ちゃんたちに見つかったらトンでもない事になりうる」


「でも、それじゃあどうすれば?」
「少なくとも、キュレムには敵意は無いし、俺が仲介すれば騰湖たちも口は出さないでしょう?」

白那
「だけど、それは今後の問題に対して、根本的解決にはなり得ない」


俺の考えはあっさり否定される。
白那さんはやや厳しめの顔でこう言い放った。


白那
「聖君の影響という物は、ことのほか大きい…」
「もし、聖君の仲介で仲を取り持った所で、聖君がいない場合はその力も意味を失う…」
「その時、彼女たちはどうなるのか? 聖君なら解るはずだよ?」


確かに、あくまで俺が言った所で、それはその場しのぎにしかならないかもしれない。
だけど俺が信じてやらなきゃ、誰も信頼なんて出来ない。
俺はキュレムとは約束した。
それなら、コイツはちゃんと守れると信じてやらなきゃ…



「俺は、キュレムを信じてやります…もちろん、騰湖と鳴も」

白那
「そして、また悠和の時の様な感情を生み出すのかい?」


俺はその言葉を聞いて言葉を詰まらせる。
俺はこの時点で今の状況に気付いた。
今、俺がキュレムを推せば、騰湖たちはそれに対して嫉妬心を生む…
そうなれば、また悠和ちゃんの様に苦しめる事になるのか?

前に1度悠和ちゃんとは一対一で話し合った。
悠和ちゃんの苦悩も、嫉妬心も、悲しみも、俺は全部聞かされた。
そして、阿須那が悠和ちゃんを励ました事も…

俺は、愚かだったのかもしれない。
皆を愛する…それは間違っていない。
だけど、今後現れるポッと出の存在ですらそうなると、皆は段々不安になって来るんだ。
増えれば増える程、自分に対して触れ合える機会は減って行く。
そしてその度に心を苛まれては、いつか壊れてしまうかもしれない。
俺は、そんな皆の心を、万全にしてやる事は多分出来ない…?


白那
「聖君の事は当然信頼しているし、愛している」
「だけど、今の君を取り巻くこの環境は、想像以上にギリギリで安定していると思った方が良い」


「…まさに、混沌か」


俺は改めて納得する。
俺には、限界があるのだ。
救えるポケモンは全て救う…その決意は変わらない。
だけど、その救ったポケモン全てに愛を与えられるとは限らないのだ。
俺は気付いてしまった…これ以上、俺を愛する者を無闇に増やしてはならないと。


華澄
「聖殿は、本当に特別な方です…例えほんの少しでも、その優しさに触れれば心は傾く」

守連
「うん…でも、それは同時に誰かも傷付けてしまう」

キュレム
「…?」


華澄と守連も悲しそうにしていた。
自分たちとて例外ではないかもしれない…そう思っているのだろう。
キュレムは不思議そうに首を傾げ、どうすれば良いのか困っている様だった。


白那
「酷かもしれないけど、キュレムは自由にさせた方が良いかもしれない」
「勿論、こちらから援助はする…偽装薬は何とかしよう」
「後は、ディアルガの様に誰かにでも拾ってもらえれば…」


「ダメです! いくらなんでも誰とも知れない他人にキュレムを預けられない!」
「もし間違いが起こったら取り返しがつかなくなる!!」


俺は想像して恐怖する。
キュレムは想像以上に力のコントロールが拙い。
ある程度言葉は受け入れてくれるが、見た目相応にキュレムは幼く感じるのだ。
他人相手にいきなり懐くとは思えないし、力が解き放たれれば一気に世界は大混乱する。
そうなったらもう俺には止められないかもしれない…

そもそも、混沌の一端とはいえ、ここは紛れもなく現実世界だ。
今まで俺たちがフツーに過ごしている世界に、キュレムたちはまさか来訪してしまった。
ディアルガが既に誰かの元に世話になっている様だが、アイツは仮にも白那さんと同等の存在だからまだ安心出来る。
少なくとも無闇に暴れたりしないだろうし、白那さんも危険には感じていない様だからな。
だが、キュレムにはその安心感が無い。
やはり、せめて信頼出来る人に預ける方が…



「…白那さん、キュレムの引き取り先は俺に任せてくれませんか?」

白那
「分かった、聖君がそう言うなら任せるよ」

守連
「でも聖さん、誰に頼む気なの〜?」


俺はあえて答えなかった。
そして、白那さんから偽装薬を貰い、キュレムを連れてまた家に戻る。



………………………




「とりあえず、偽装薬な…これを飲むんだ」

キュレム
「飲む…んっ」


キュレムは特に疑いも無しに偽装薬を1錠飲んだ。
俺は対策用の薬を飲んでいるから見た目は解らないけど、他の目からはどう見えているのか?


守連
「わわっ!? これは流石にマズイよ〜!!」

華澄
「す、すぐに服を持って来ます!!」

キュレム
「?」


「何だ…どうかしたのか?」

守連
「キュレムちゃん、偽装したら裸なの〜!」


俺は思わず吹き出してしまった。
という事は、今見えてるこの黒い氷の鎧は能力で形成しただけの物かっ。
つまり、それが見えなくなるから真っ裸!!
こんな状態で外に出たら即変態オジサンに拉致られるわ!!
コイツ、羞恥心の欠片も無いんだな…
そもそも、この氷の鎧も半透明でビミョーに乳首とか大事な部分が見えてしまうのだが…
ちなみに俺は幼女に欲情する程落ちぶれてはいないので大丈夫だ。



………………………



華澄
「と、とりあえず下着は仕方ないので下だけでも拙者のを…」
「服も拙者のを渡しますが、サイズはそれでも大きいでござるな…」

キュレム
「ん…服、邪魔…いらないっ」


「ダーメ! これからこの世界で生きていくなら必須!」
「ワガママ言わないなら、悪い様にはしないから、大人しく着る!」
「って言うか、白那さんから服借りた方が良かったんじゃ?」
「夏翔麗愛ちゃんとかのだったらサイズ合うんじゃないのか?」


俺がそう言うと、華澄はハッとなった。
突然の事にテンパってたな…華澄さんにしては珍しい。


守連
「私、ちょっと借りて来るね?」


「ああ、頼むよ」


守連はすぐに家を出て城に向かった。
キュレムはぶかぶかの服に悪戦苦闘しながらも我慢はしている様だった。


華澄
「うーむ、やはり尻尾と翼がことのほか難敵ですな」


「何だでドラゴンだからな、騰湖たちと同じ特徴を持ってるから、服は難儀するわな…」


キュレムは翼のせいで上手く服を着れていない。
とりあえず改造しなきゃ無理そうだな…


愛呂恵
「ただいま戻りました…が、何やら問題でも?」

三海
「ン、ただいま聖〜♪」


「ああ、お帰りふたりとも…買い物ご苦労様」


三海は俺を見付けてすぐに抱き着いて来る。
俺は三海を撫でてやり、三海は嬉しそうに目を細めた。


キュレム
「……んっ」


「ひぃっ!? 冷たい! キュレムさん冷たいです!!」


何を思ったか、キュレムは三海の真似をして俺の足に抱き着いた。
しかし、氷の鎧に覆われているキュレムの体はまさしく氷。
俺の足は徐々に体温を奪われていた。


キュレム
「熱い…離れる」


と、すぐにキュレムは離れてしまった。
何を考えていたのか?…ってか、人肌ですら熱いのか。
キュレムの様な氷タイプは、常に冷えてないとパフォーマンスが下がるのだろうか?


愛呂恵
「キュレム、ですか…? これはまた珍しいポケモンですね」


「ああ、以前女胤の世界で戦ったボスだったんですけど、突然この世界にやって来てしまったんです」

愛呂恵
「成る程、それでこれからどうするつもりなのですか?」


「とりあえず、信頼出来る人物に預ける事にしました」
「引き取ってくれるかは、まだ解りませんが」


俺がそう言うと、愛呂恵さんは特に何も言わずにキュレムを一瞥してキッチンに向かった。
とりあえず食材を冷蔵庫に入れるのだろう。
三海もそれを見て愛呂恵さんの後を浮遊して追う。
三海もすっかり家の手伝いが出来る様になったな…



………………………



愛呂恵
「…それでは、これを着てください」
「翼と尻尾を考慮して改造してありますので、問題は無いと思います」


あれから守連はいくつか服を借りて来て、それを愛呂恵さんがちゃちゃっと改造してくれた。
普通の青Tシャツは背中の翼の部分を切り取り、ホックを付けて背中で固定出来る様にする。
下は青スカートでそのまま尻尾の下を隠す様に。
後は特に問題無く、下着も靴下も大丈夫そうだった。


キュレム
「ん…暑い」


「うわ、服がもう湿ってるぞ? 下着が透けるから氷の鎧を解くんだ!」

キュレム
「むぅ、面倒…」


愚痴りはするも、キュレムは氷の鎧を解除して項垂れた。
まぁ、この季節は暑くなるし、多少は仕方ないが…


華澄
「とりあえず、自分の周りだけ空気を冷やせば良いのでは?」
「そうすれば服も濡れませんし、体も冷えましょう」

キュレム
「グッド、そうする」


キュレムはそう言って自分の周りを冷やし始めた。
意外にコントロールは出来てるのか、吹雪いたりはしなかった。


愛呂恵
「…とりあえず、すぐに掃除を致します」
「このままではフローリングが傷んでしまいますので」

三海
「ン、手伝う…」

守連
「私も〜♪」


そういや家は既に氷が溶けてビチョビチョだったな…
気温が元に戻ったから偉い事になってる。


華澄
「やれやれ、拙者も助太刀するでござるよ」


「じゃあ、こっちは任せるから」

華澄
「はい、どうかお気をつけて」


俺はキュレムの手を引いて家を出ようとする…が触ったら手が凍りそうになる。
うぐぅ…迂闊すぎた。


キュレム
「熱いから触らないで」


「しかも嫌がられた!? 親切心なのに!!」


俺は泣きそうになるも、とりあえずキュレムを誘導して外に出る事にした。
靴も借りてあるのでそれを履かせる。
俺は凍傷しかけた手に息を吹きかけ暖める。
そして、とりあえず外に出るが…



「うわ…湿気がヤバい」

キュレム
「…暑い」


キュレムは日差しに耐えられないのか、氷で日傘を作ってしまった。
そういえば偽装薬で見える分にはこういう能力系はどう見えるんだろ?
ただの日傘に見えるんだろうか?



………………………



俺はとりあえずキュレムを連れて街を歩いてみる。
キュレムが離れない様に気を付けながら人目も気にしておく。
何人か通り過ぎたものの、特にキュレムを気にする人間はいなかった…



「って、そういやこの時間だから家にはいないのか…?」

キュレム
「?」


俺は目的地に近付くも、そう思う。
確か日曜は基本絶対にフルタイムで仕事してるって言ってたな…
仕方ない、遠回りになるが商店街に行くか…



………………………




「わちゃ、流石に混んでるわな…」

キュレム
「人、一杯…暑い」


キュレムは露骨に嫌そうな顔をする。
まぁ、この時期にこの熱気だからな…
俺たちが立ち寄ったのはご存じ、こすぷれ〜ん1号店。
姉さんや阿須那がいなくなったとはいえ、この店は相変わらず繁盛していた。
とはいえ、全盛期に比べればやはり2号店には客足は負けており、以前程の熱気は無い様にも感じる。



「時間は昼前か…上手く休憩時間に会えるかな?」


俺はとりあえずその場で待つ事にした。
一応メールだけ送信しておき、俺は自販機で飲み物を買って待つ事にする。



「ほれ、とりあえず天然水…」

キュレム
「…ん」


キュレムはそれを受け取ると早速飲む。
すると、自販機の温度が気に入らなかったのか、少し嫌な顔をした。



「あ、もしかして熱かったのか?」

キュレム
「ん…もっと冷たい方が良い」


そう言ってキュレムはペットボトルを掌で冷やした。
そして凍るギリギリと思われる位の温度でグイッと飲む。
今度は大丈夫そうだ。



「お前って、何でも冷たい方が好みなのか?」

キュレム
「うん、凍る位でも構わない」


それはそれで難儀だな…食事とか冷凍食品そのままが良いって事か?
ある意味コック泣かせだな…作り甲斐が無い。
とはいえ、手間がかからないとも言えるし、それはそれでか…



「とりあえず、まだ解らないけどこれから会う人にお前の事頼むから、ちゃんと言う事聞いて良い子にしてるんだぞ?」

キュレム
「…む、頑張ってみる」


キュレムは少し不安そうな顔をするも、そう言ってくれた。
俺は思わず頭を撫でてやろうかと思ったが、確実に凍るのが解ったので止めておいた…
俺は学習する男なのだ!



………………………




「やっほ〜! 聖君、今日は呼び出して何?」


「ゴメン光里ちゃん、どうしても頼みたい事があって…」


そう、俺が選んだのは光里ちゃんだった。
今まで一緒に学校で過ごして、俺が信頼出来ると思った友人だ。
光里ちゃんにとっては突拍子も無い現実を突きつける事になるが、それも含めて俺は全部話すつもりだ。


光里
「うん、それで頼みって?」


「この娘を預かってくれないかな? それも、出来ればずっと…」


俺は横にいたキュレムを紹介する。
キュレムは無表情に光里ちゃんを見て、少し戸惑っている様だった。
光里ちゃんは流石に驚いてポカンとしている。


光里
「ずっとって…どうして? この娘、まさか孤児とか?」


「詳しい話は光里ちゃんの仕事が終わってから話すよ」
「無理なら断ってくれて構わない…ちなみに生活費に関しては全額支給するよ」


勿論これは俺が言い出した事だから、生活費の負担は一切かけさせない。
光里ちゃんにはあくまでフツーに生活してほしいのだ。
ただ、その中にキュレムを入れてあげてほしい…これが俺の望みだ。


光里
「…とりあえず、詳しい話を聞いてから決断するけど」
「聖君がそこまで言う程の事だから、普通の事じゃ無いんだよね…?」


「ああ…多分、信じられないと思うよ」
「でも信じてほしいから、俺は全部話すつもりだ」


俺の決意を感じてか、光里ちゃんはあまり見せない程の真剣さで表情を引き締めた。
とりあえず、後は仕事が終わってからだな…



………………………



風路
「とりあえず、ここなら大丈夫よ♪」


「姉さん、ゴメン…急に頼み込んで」

風路
「良いのよ、それより本当に光里ちゃんに話すの?」
「何だったら、私が受けても良いのよ?」


俺は姉さんの家、つまりこすぷれ〜ん2階のリビングでキュレムと一緒にいた。
ここは前に光里ちゃんから告白を受けた所だな。
光里ちゃんにとってはトラウマだったかもしれないが、とりあえずここが都合も良い。
最悪、本当に姉さんに頼る事になるかもしれないしな…
だが、俺はどうしても光里ちゃんに頼みたかった。
このまま、光里ちゃんを騙し続けるのも俺には心苦しいし、いっその事全部打ち明けたかったのだ。



「…俺は光里ちゃんに全てを話すよ」
「これは良い機会だと思うんだ、光里ちゃんには知る権利はあると思ってる」
「ここまで一緒にいて、信頼は出来ると確信してるし、彼女ならキュレムを任せても良いと思うから…」

風路
「…分かったわ、貴方がそこまで言うなら私は何も言わない」
「でも、ダメだったらいつでも頼るのよ?」
「姉さんはいつだって聖君の味方なんだから♪」


姉さんはそう言って口元に人差し指を当てウインクする。
いつもの癖だな…俺は思わず微笑んでしまう。
そんな俺たちのやり取りを見て、キュレムは首を傾げていた。


光里
「ゴメン、ちょっと着替えに手間取って!」


「いや、良いよ…どの道ちょっと長引くし、時間は大丈夫?」

光里
「うん、大丈夫…弟には連絡したし♪」


それなら大丈夫か。
俺たちはとりあえず、それぞれソファーに座る事に。
テーブルを中心に、中央には姉さん、その右に俺とキュレム。
左には光里ちゃんが座った。
姉さんはすぐに飲み物を用意し、それをテーブルに置いてから座る。
そして、俺はまず最初からこう告げる。



「光里ちゃんには、今まで隠していた事がある」

光里
「隠している、事…?」


「…俺は、ポケモンと一緒に暮らしてる」


光里ちゃんは当然だが?となる。
俺は予想内だし、とりあえずそのまま話を続ける。



「この娘はキュレムと言い、『境界ポケモン』と呼ばれてる存在で、今は人の姿に変化してこの世界に来たんだ」

光里
「それって、ゲームのポケモン、だよね?」
「…つまり、擬人化って事? 同人誌的な?」

風路
「そうね、その方が解りやすいわね…」
「かくいう私も、本当は人間じゃないの…ケンホロウと言う、ポケモンなのよ?」


光里ちゃんはえぇっ!?と、予想通りかなり驚く。
姉さんは試しに手で風を操って見せる。
明らかに作られた風に、光里ちゃんは冷や汗を垂らしていた。


光里
「そんな…まさか本当に?」

キュレム
「むぅ…熱い」


ピキピキピキ…と音をたててキュレムはコップを冷やしてしまう。
中身はメロンソーダだが、表面が凍り付いているな…光里ちゃんはそれを見て更に驚いていた。


光里
「…どうして、こんな? 何で私にそれを話すの!?」


「…俺は、光里ちゃんを信じているからこそ、このキュレムを頼みたいんだ」
「俺は既に、大勢のポケモンを抱えている、これ以上は正直限界なんだ」
「でも、だからといってキュレムを放ってはおけない…!」
「だから、お願いだ光里ちゃん! 決して金に苦労はかけさせない!!」
「どうか、キュレムの事を守ってくれないか…?」


俺はソファーから立ち上がり、床に膝をついて土下座した。
その姿を見て光里ちゃんは狼狽える。


光里
「そ、そんな事しないで!? 私なら構わないから!」
「大丈夫! この事は誰にも言わないし、キュレムちゃんの事は私が何とかして見せるから!!」


「…ありがとう、この恩には絶対に報いる」

風路
「うん、良かったね聖君♪」
「それで、キュレムちゃんはそれで良いのね?」

キュレム
「ん、聖と約束したから…」

光里
「それじゃ、キュレムちゃん今日からよろしくね♪」


光里ちゃんはキュレムに手を差し出す。
握手なんだろうが、俺は結果が予測出来たのであえて何も言わなかった。
すると、キュレムはとりあえず手を握るが…


光里
「あ、あはは…冷たいね、手」

キュレム
「…光里、熱い」

光里
「露骨に嫌な顔された!? 仲良くなりたかっただけなのに!!」


まぁ、そうなるわな…キュレムもかなり譲歩して握手したんだろうが、やはり体温は気に入らなかったらしい。



「とりあえず、キュレムには名前を付けてあげてくれ」
「人間界で生きる以上、名前は必要だからな」

光里
「えぇと…名前かぁ〜?」
「キュレムキュレムキュレムキュレムキュレム…だったら、Qちゃん!」

風路
「…オバケの?」

キュレム
「犬は人に媚びへつらう姿が気に入らないから嫌い…」


おっと、ネタが降って来たな…
しかし、キュレムは本当に犬が嫌いなのか?
その辺の真意は定かではないな…


光里
「とりあえず、漢字にするなら『穹』かな?」


光里ちゃんは指で空中に字を描く。
こちらからだと裏表反対なのでかなり解り辛いがまぁ何とか理解した。
意味にすると、空とか、大きいとか、そんな意味の字だ。
幼女体型のキュレムからしたら意味深だが、まぁ良いんじゃないかな?



「どうだキュレム?」

キュレム
「ん、穹…分かった。私の名前…穹」

光里
「それじゃ、改めてよろしくね♪」


光里ちゃんは笑顔で穹に笑いかける。
その顔を見て、穹は少し照れたのか、顔を赤らめて目を逸らしてしまった。


光里
「いや〜ん可愛い♪ もう思いっきり抱き締めたいのに〜!」


光里ちゃんは両手で頬を押さえて見悶えていた。
まぁ、可愛いのは確かか…とはいえ、抱き締めたら凍るからな。
さっきの握手で嫌がられたのが効いているのか、本当に抱き締める事はしなかった。
とりあえず、これで穹の事は光里ちゃんに任せて大丈夫だろう。
俺も出来るだけサポートしないとな…穹が、見知らぬ世界で苦労しない様に。



………………………



光里
「というわけで、新しい家族を紹介します」


「穹、よろしく」


「…はぁ?」


弟は片目を釣り上げて?を浮かべる。
いや、そりゃそうでしょうけどね…
穹ちゃんは早速靴を脱いで中に入るが、四畳半の狭いワンルームに充満する熱気に当てられ、すぐに足を止めた。



「…むぅ」


コォォォォォ…


穹ちゃんはとりあえず周りの空気を冷却して気温を下げる。
まぁ、暑いよね…この時期は夜でも。


光里
「ゴメンね? かなり狭くて暑苦しいかもしれないけど…」


「…我慢する、約束」


穹ちゃんは健気にもそう言ってくれる。
ええ娘や〜! 私は抱き締めたい衝動に駆られるが、嫌われたくないので我慢した。
とりあえず、私も中に入ってまずは着替える事にする。


光里
「ほら、外に出る!」


「へいへい…」


弟はいつもの様に目の届かない場所に移動する。
こういう時は不便なのよね…これが妹なら気にせずに着替えれるんだけど。
私は軽く息を吐いて、まずは部屋着に着替える。
シャワーは職場で借りたし、家ではいっか。


光里
「穹ちゃんは着替えあるの?」


「ん、聖から貰った」


そう言って穹ちゃんは、持っていた紙袋を高々と持ち上げる。
それ程大きくない紙袋だけど、穹ちゃんのサイズならあんな物だろう。
とはいえ、女の子である以上やっぱりある程度は着飾りたい。
穹ちゃんの服もちゃんと考えてあげないとなぁ…



「着替える?」

光里
「そうだね、部屋着とかあるの?」


「むぅ…良く解んない、今日まで服とか着た事無いから」


ぐは…それまで裸族だったの!?
まぁ、穹ちゃんは氷タイプで寒ければ寒い程過ごしやすいらしいから、服は無い方が涼しいんだろうなぁ…


光里
「とりあえず、中身見せてね?」
「んっと…これは寝間着か、下着も何着か…ん? 何でこれ背中ホックになってるの?」
「スポーツブラみたいになってるけど、これ上着よね?」


「翼が邪魔、だからその形」


私は言われて察する。
そういえば、今は穹ちゃん偽装薬の効果で人間に見えているだけという事だった。
つまり、穹ちゃんは元々翼と尻尾があるのだ…
明日になれば偽装は解けてるから、外に出る時は必ず飲ませてと注意されてたっけ。


光里
「とりあえず、今はいっか…おーい! もう良いわよー!!」


私は玄関に向かって叫ぶと、弟は玄関を開けて中に入って来る。
そしていつもの様に鬱陶しそうな顔でふてぶてしくしていた。


光里
「あんたねぇ、少しは穹ちゃんに気を使うのよ?」
「この娘、人間じゃないんだから」


「…は?」


「キュレム、境界ポケモン」
「失った体を真実と理想で埋めてくれる英雄を待つ、氷の伝説ポケモン」


おお、図鑑説明の様に見事な自己紹介。
とはいえ、弟は呆れ返った様に微妙な顔をしていた。
まぁ、気持ちは解るよ…見た目はただの子供に見えるもんね、
とはいえ、本気でこの娘は冷気を操れる。
その気になれば街中を氷の世界に変える事も出来るんだそうだ。



「やれやれ、何か電波な娘を拾って来たな…」
「大体金はどーすんだよ? 毎日の食事だって苦労してんのにさ!」


私はそこでふふんと鼻を鳴らし、厨二的なポーズで札束を弟に見せつけた。
すると弟はうおっ!?と驚き後ずさる。
いや、私もこんなのポンと渡されて同じリアクションしたわよ…


光里
「とりあえず、この娘の生活費は別途で保証してもらえるから安心して」
「なので、これは穹ちゃんの生活費です!」


「何だよ…ぬか喜びか、まぁそれだけでも美味い話だけどな」


とりあえず、先行投資で100万円。
もろもろ必要な物も出て来るだろうからとの事だ。
食費に関しては未知数との事で、どれだけ食べるかは解らないから足りなければ気軽に言ってくれと聖君は言ってたけど…


光里
「…とりあえず何か食べたいのはある?」


「ピザ! たまには頼もうぜ!」


「何でも良い、冷たければ」


ハッキリと割れたわね…ピザで冷たいってのは無いでしょ?
いや、冷凍ピザとかは売ってるけど、この場合どうしよ?
弟は宅配キボンヌだし、冷凍物じゃ流石にお腹一杯食べるのはキツイ。
資金的には穹ちゃんがどれだけ食べるか未知数だし、どうしようかな?


光里
「まぁ、今日は出逢いの日だし、とりあえず宅配ピザにしますかね!」


「うっしゃあ! 俺、肉メインが良い!!」


「…それ冷たいの?」

光里
「ううん、かなり熱いから…穹ちゃんは冷やして食べた方が良いかも」


私がそう言うと、穹ちゃんは眉を細めてむぅ…と唸った。
中々難しいよね…今後は穹ちゃん用に冷凍食品も考えないと。
…家に冷凍庫無いけど。
とりあえず私はスマホで宅配を注文し、後は飲み物を冷蔵庫から出してテレビを点ける。
すると、まずはニュースが始まった。
弟と穹ちゃんもその場に座り、全員でテレビを見る。



「むぅ、足元熱い…少し冷やす」


穹ちゃんの足元が急速に冷却され、冷気がこちらまで届いて来る。
っていうか、段々と部屋の気温が下がって来てる気がするんだけど?



「おいおい、何か冷えてきてねぇか?」

光里
「きゅ、穹ちゃん! 少し加減して!?」


「ん…分かった」


穹ちゃんは力を調節して自分の周りだけ器用に冷やす。
私はとりあえず安心し、改めてニュースを見る。
何々…今日の昼前に突然の異常気象。
局地で猛吹雪、何かのアトラクションか?
悪質なイタズラの可能性もあり、警察当局は調査を続けている模様…


光里
「……?」


「げふん」


露骨に咳払いして目を逸らした!?
これ完全に穹ちゃんの仕業だよね!?
うわ、警察出動してるよ! もう色々起こってるよ!!



「何じゃこりゃ…妙なイタズラもあったもんだな〜」


とりあえず内緒にしとこう。
世の中知らなくても良い事はあるのだ。



「…ところで、この子誰?」


「今更かよ!? 弟だよ弟! 姉ちゃんのお・と・う・と!!」


そういえばまだ名乗ってもいなかったわね。
っていうか、この作品でまだ弟の名は1度も出ていない。
今まで完全なモブだったわけだけど、ついに情報公開される時が来たのね!



「…名前、知らない」


「ああ、そっか…まずはそれか」
「俺は光輝…『新央 光輝』(しんおう こうき)だよ」


とりあえず弟はそう名乗る。
穹ちゃんはそれを聞いてとりあえず覚えた様だ。



「光輝、光里の弟…分かった」

光輝
「っていうか、お前っていくつなの?」

光里
「そういえば聞いてなかったね? 穹ちゃん何歳なの?」


「…覚えてない、数えてもいなかったから」
「多分、人間としてなら25位だと思う…レシラムとゼクロムよりかは上だから」


それは驚きだ…私たちより年上とは。
ポケモンは見た目で判断出来ないとは聞いてたけど、流石に伝説のポケモンと言われるキュレムは色々特別なんだろう…


光輝
「…25〜? いくら何でもそれはねぇだろ?」

光里
「ううん、穹ちゃんは伝説のポケモンだから不思議じゃ無いんだと思うよ?」
「単に見た目が幼いってだけなんだろうし」


「合体したらきっとボンッキュッボンッになれる」


だそうですが、それはどんな感じなのだろうか?
とりあえず私には想像も出来そうに無かった。
その後、とりあえず私は光輝に色々説明しながら時間を潰す。
そして、ついに宅配ピザはやって来た…



………………………



光輝
「うおお…! この久し振りの肉厚!!」


「…むぅ、熱すぎる」

光里
「穹ちゃんのはこっちのお皿に切り分けてあげるから、自分で上手く冷やしてみて」


私はとりあえず8等分のピザをふた切れづつ皿に盛る。
そして残りふた切れは食べた後に足りないと思えばそっちに渡す予定だ。
サイズは1番大きいのにしてあるからふたつでも結構ボリュームあるけど…



「………」


ビキビキビキッ!と音をたてて穹ちゃんの皿が凍っていく。
それを見てピザにかぶり付いた光輝は目を丸くしていた。
うん、見たら驚くよね…そりゃ。



「…ん」


バリボリバリッと氷を噛み砕く様な音で穹ちゃんはピザを食べる。
その顔は思いの外ご満悦で、美味しそうに食べていた。
見ているこっちも幸せになれそうな笑顔なのだが、凍ったピザをバリバリ食べる様はシュールだ…


光里
「うーん、やっぱりピザは温かい方が良いよね…」

光輝
「同感」


「冷たいのが良い、これは美味♪」


まぁ、満足してるしいっか…
私たちは結局ふた切れで満足し、残りふた切れは冷蔵庫に仕舞って明日の朝御飯にする予定となった。
その後はとりあえず寝間着に着替えて就寝。
穹ちゃんは暑苦しいから布団はいらないとの事で、そのままクッションで寝るらしい。



………………………



そして翌朝。


光輝
「起きろー! 朝だぞー!?」

光里
「うぅ…もう朝かぁ〜」


「………」


うわ…改めて見たら本当に人間じゃ無いんだね穹ちゃん。
偽装が解けて、角やら翼やら尻尾やらがちゃんと見えてる。
髪の色も全然違うし、こんな姿だったんだ…


光輝
「とりあえず、起きねぇな…」

光里
「うん、ちなみに触っちゃダメだよ? 凍る可能性あるらしいから」

光輝
「んなアホな事しねぇよ…コイツの周辺凍ってるのに」


確かに…穹ちゃんの周りだけだけど、窓やら床やらが凍ってしまっている。
あらら…これは対策考えないといけないなぁ〜


光里
「とりあえず、顔洗って着替えるわ…」

光輝
「ん…朝飯はどうする?」

光里
「私はコンビニ寄って買うから、ピザ食べて良いよ?」


私がそう言って洗面所(トイレ&風呂兼用)でとりあえず顔を洗った。
今日も学校かぁ…もうすぐ期末だし、最低限勉強しないと。



………………………



光里
「それじゃあ、ちゃんとお留守番しててね?」


「ん、頑張る」

光輝
「何だったらテレビゲームとかで、暇なら遊んでても良いから」


光里たちはそう言って家を出て行った。
とりあえず学校に行くらしい。
私はひとりで留守番を請け負い、とりあえずリビング(兼寝室)でしばらくくつろいだ。
そしてまずはテレビのリモコンとやらに挑む。
一応字は読める…電源、これか。


テレビ
『それでは朝の占いです! 今日は牡羊座の人が運勢良好♪』



「占い…」


とりあえず私は自分の誕生日とかすら覚えてないので全く意味が解らない。
私はチャンネルとやらを色々変えてみる。
この時間はどれも似た様なのが流れるだけだ…



「何だ、随分狭い家を選んだんだな?」


「…ディアルガ、おっす」


私は突然ベランダから窓を開けて、中に入って来るディアルガに挨拶した。
ディアルガも誰かの世話になってるらしいけど、何処なんだろうか?


ディアルガ
「…ふむ、今はお前だけか?」


「そう、ふたりは学校」

ディアルガ
「どこも似た様な物か…こちらもそうだからな」
「しかし、偽装薬は飲んでいないのか?」


私は頷く。
今は留守番だし、誰かがピンポンしても出なくて良いと言われてる。
それなら薬を飲んでおく必要も無い、どうせ誰にも見られないのだから。


ディアルガ
「ふ…貴様は留守番か」


「そっちは良いの?」

ディアルガ
「こちらはオートロックとか言うのがあって、誰もいなくてもちゃんと監視してもらえるんだそうだ」
「故に私は自由に動き回れる…合鍵も貰ってるしな」


そう言ってディアルガはベランダで靴を脱ぎ、中に入って窓を閉めた。
そして、近くのクッションに座り、少し脱力する。
ディアルガ、何だか疲れてる?



「…何かあったの?」

ディアルガ
「別に、ただ…これが日常なのだと思うと、少しな」


ディアルガは俯いて悩んでいる様だった。
あれから約半年、正常に戻った私たちは目的も生きる意味も見出だせず、ただただ空虚に生きていた。
そして、今回の世界移動…原因不明で意図も理由も解らない。
ただ、私たちはここに来て、ここにいる。
そこに、意味はあるの…?
…ちなみに、私とディアルガはアルセウスに操られていた時に面識はある。
住む世界は違うけど、その時の記憶が残っているから、私たちは一応知り合いなのだ。


ディアルガ
「…貴様の主はどうだ?」


「悪くない…良く笑うし、よく喋る」
「私に対してもそんなに怖がらないし、今の所は問題無い」
「そっちは…?」

ディアルガ
「さぁな…良くも悪くも人間だ」
「だが、度胸はあるな…それなりに」


ディアルガは息を吐き、俯いたまま呟く様に答える。
あまり調子は良くなさそう…本当に、何とも無いんだろうか?



「…ディアルガ、これどう使うか解る?」

ディアルガ
「…ん? 何だこれは…電気機器なのは解るが」
「とりあえず、電源はこれか…EJECT、何かが入っているな」


ディアルガはとりあえず黒くて四角い電気機器を触って調べていた。
そして、テレビの下の箱から紙切れを見つけ、それを取り出した。


ディアルガ
「説明書か、成る程これを見ろ」


ディアルガは説明書の紙を私に見せる。
そこにはこの電気機器の使い方が書いてあり、とりあえず私たちは使い方を覚えた。



………………………




「…どうするの?」

ディアルガ
「ビデオ端子…というのには接続されてるな」
「となると、これはテレビの設定が必要な様だ」
「リモコンにビデオの項目は無いのか?」


私はリモコンを見てみると電源の近くにビデオと書かれたボタンを見つける。
私はそれをすぐに押して画面を切り替えた。
すると、ビデオ1と画面左上に文字が現れ、画面に何か映っていた。


ディアルガ
「何だこれは? テレビゲームという奴か?」


「そういえばゲームあるって聞いてた」


という事は、これはゲーム機らしい。
画面には何かのゲーム画面が映っているらしく、イケメンたちが小躍りしていた。


ディアルガ
「ん、これがパッケージか…○きめきメモリアル ガールズサイド」
「ジャンル、恋愛シミュレーション」
「何だこれは…恋愛をシミュレーションとは何の意味があるんだ?」


「…解んない、とりあえず他のゲームは無いの?」


ディアルガはテレビの下の箱を漁り、何個かのケースを見つけた。
とりあえずそれがソフトっぽい。
問題は何のゲームか。


ディアルガ
「…○ァイナルファンタジーZに三○無双、ペル○ナ3とか言うのもあるな」
「他にも色々あるが、私には判断出来んぞ?」


「何かシューティングとかやりたい」

ディアルガ
「シューティングねぇ…これか?」
「何々実況おしゃべり○ロディウス…って、実況?」


おお、何だか面白そうなタイトル。
私はそれに決めて早速ディスクを入れ換えてもらう。
私は説明書を確認してやり方は覚えた…後はゲーム起動!


『実況! おしゃべり○ロディウス〜!!』



「おお…喋った」

ディアルガ
「ほう、とりあえず喋るから実況なのか?」


私はとりあえず適当に自機をセレクトする。
と言うか、16機もあるとどれ選べば良いか解り辛い。



「とりあえず可愛いから猫で良い」

ディアルガ
「ミケか…三毛猫だからミケ、安直だな」


私は自機を決定し、次にらくちんオートを選択。
そしてついにゲームが始まった。


『全国の女子高生のみなさーん!? 実況のタコだよ♪』


ディアルガ
「既に女子高生とかいう年齢を超越している我々には、何ともシュールだな」


「まぁ、心はJKで」


私はとりあえずゲームを進める。
流石に最初はそれ程難しくもなく、らくちんオートの名に恥じずボタンひとつだけでサクサク進められる。
その際にやたらと実況されているのが何かとシュールだった。


ディアルガ
「ほう、思いの外ちゃんとシューティングしているな」


「グッド、これは面白いゲーム♪」


実況と世界観のバカさ加減を抜きにすれば、これは本当に楽しいゲームだった。
そのおバカな世界観も受け入れられるならこれは間違いなく神ゲーだろう。
私はそのままサクッと1面をクリアし、楽しくゲームを続けた。


ディアルガ
「しかし、どこかで見た事のある武装だな」


「知っているのディアルガ?」

ディアルガ
「うむ、あれは確か…とある並行世界で見たんだが、この武装と似た機体が、何やらシーラカンスとか鯨とかと戦っていた気がするな…」


「それは興味深い…でも何で海洋生物?」


ディアルガは解らん…とだけ言って黙ってしまった。
むぅ、気になる…
私は少し気を取られながらも2面もちゃんと攻略出来た。



………………………



ディアルガ
「やれやれ、相変わらず熱中すると止まらないな…」


「むぅ…! もうちょっとでクリアだから…」


結局、私は3面辺り1度躓き、そこからコンティニューを続けてようやく最終面。
既に時間は昼過ぎとなっており、お腹は空いてきていた。
だけど、ようやくハマってた難所を抜け、私は最後のボスと思われる敵を撃破する。



「やった…クリア!」

ディアルガ
「何だ最後のは? 何もしてこなかったが…」


私は気にせずに感動に酔いしれる。
そして、伝説のタコ焼きは…


『あ、どうも…ごちそうさま!』


チュドーーーーーンッ!!



「………」

ディアルガ
「………」


「( ゚д゚)」

ディアルガ
「…昼、どうする?」


私は無言でゲーム機の電源を落とし、放心した。
何故か、凄く空しくなった…そして、お腹空いた。



「とりあえずタコ焼き食べたい」

ディアルガ
「お前熱いの苦手だろう?」


「凍らせて食べるから大丈夫」

ディアルガ
「やれやれ、それではタコ焼きの本質が否定されてる気がするがな…」
「まぁ良い、待っていろ…すぐに買って来る」


ディアルガはそう言ってベランダから飛び降りる。
私はよろ、とだけ言ってその場で手を振った。



「…むぅ、ゲームは奥が深い」


少なくとも楽しかったのは確かだ。
コンティニューしてでも最後までやりたくなったのは、ゲームが素晴らしかったからに他ならない。
とはいえ、ラストのアレはちょっと…
いや、アレも何かのネタなのかもしれないし、解る人には解るのかもしれない…
とりあえず、今の内に他のゲームの説明書でも見ておこう…



………………………



ディアルガ
「買って来たぞ」


「お〜♪ 良い匂い…」


私は、ディアルガがビニール袋から出したタコ焼きを一船受け取る。
そして、すぐに冷却して熱を冷ます。
ディアルガはため息をひとつ吐いて自分の分のタコ焼きを熱々の状態で食べ始めた。



「グッド、冷たくても美味しい♪」

ディアルガ
「私には理解出来んがな…はふっ!」


ディアルガはあまりの熱さに苦戦し、はふはふ良いながら少しづつ食べていた。
むぅ、熱いなら冷まして食べれば良いのに…



「ディアルガはそうまでして熱々のタコ焼きを食べたいの?」

ディアルガ
「何を言う、熱くないタコ焼きは魅力半減だろう」
「むしろこの熱さに耐えながら租借するのが通なのだ…はふっ!」


成る程、私にはどうやっても味わえない魅力と言う事だ。
とはいえ、悔しくても対抗は出来ない。
どうやっても私に熱い物は無理なのだ。
仮に食べれたとしても、条件反射ですぐに冷却してしまうからどうしようもない。
これは本能的な物だ…私は人肌以上の熱さには我慢出来ないのだから…


ディアルガ
「そういえば言い忘れていたが、私には大愛という名を貰った」
「今後はその名で呼べ…はふっ」


「だいあ…?」

ディアルガ
「大きな愛…と書くそれで大愛」


私はそれを聞いてぷふー!と吹き出す。
これは滑稽だ…あの冷血ディアルガが愛?
さしものディアルガもこれには相当恥ずかしい様だ。


大愛
「…笑うな、似合わないのは百も承知だ」


「でも、嫌じゃないんだ?」

大愛
「自分から頼んで名付けてもらったのだ…無下には出来ん」
「それに、お前はどうなんだ? 人の世界で生きるなら名は必要だろう?」


「私には穹と言う名を貰ってる」
「大きな、とか大空とかそういう意味らしい」


私は自慢げに鼻を高くする。
大愛はそれを聞いてふーん、と言う風にあまり興味は無い様だった。


大愛
「…貴様、随分笑う様になったな」


「そう言う大愛は、随分大人しくなった」
「前だったら、死んでも人になんか身を寄せなかったのに」

大愛
「それはお互い様だろう? お前とて、人に関心等抱かなかったはずだ」


確かに、そうだ。
私たちは共に本来は冷酷非情。
自分の事しか考えず、傲慢。
それ故に、心の邪気につけ込まれてアルセウスの配下にされた。



「…大愛は、何がしたい?」

大愛
「私は…何も解らない」
「ただ、パルキアは幸せそうだった…」


大愛は弱々しかった。
自分の存在理由が解らなくなってる。
でも、それは私もそう。
自分の事もよく解らない、人間の事も解らない。
でも、私はこう思った。



「私は、生きたい」
「自分の意志で、人生を楽しみたい」

大愛
「例え、人に隷属してもか?」


「違う、光里たちは家族」
「魔更 聖もそう言ってた…大愛は、違うの?」


私の質問に大愛は答えられなかった。
俯き、食べ終わったタコ焼きの船をゴミ箱に捨てる。
その顔は、見た事も無い程にみっともなかった。



「…今の大愛は弱い、それじゃパルキアには勝てない」

大愛
「分かっているさそんな事…」
「だが、どうやっても…勝てる道が見えない」
「私には、あの幸せそうな顔のパルキアには勝てる気がしない…」


「だったら、探す」
「私も手伝うから、大愛の道を探す」


大愛は答えなかった。
でも目を瞑って何かを考えている様だった。
私は思う。きっと私たちがこの世界に来たのは意味があるのだと。
そして私は期待する。
家族と言ってくれた光里たちに…
私みたいな存在でも、幸せになって良いのだと思える様に。










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第5話 『幸せになれる道』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/02(木) 19:38 )