とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない














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第4章 『新たなる再会』
第4話
白那
「…一体、何の冗談だ?」

ディアルガ
「冗談のつもりではないんがな…? ただ、貴様と話がしたい」


それは、本当に唐突な訪問だった。
今日の午前中、オレは城の自室で、ひとり恋愛小説を読んでいた所、突然このディアルガが現れたのだ。
ヤツが現れる際、ディアルガ特有である時間の揺らぎを感じた。
どうやってこの世界に来れたのかは不明だが、時間操作を利用してこの部屋まで来たのは確実だろう。

そして勿論…このディアルガは、以前オレが戦ったディアルガに違いない。
そして、明確なオレの元妻であり、子供たちの実母…

オレは以前の事も踏まえ、警戒心を強めてディアルガを睨んでいた。
目的はまだ不明だが、何度来ようがオレは絶対に負けはしない…!
そんなオレの警戒を見てか、ディアルガは軽くため息を吐いた。
そして、自慢の長い髪を軽く靡かせてこう言う…


ディアルガ
「とりあえず警戒を解け、今は貴様と争う気は無い」

白那
「…分かった、良いだろう」


オレは体の力を抜き、一旦警戒を解く事にした。
今のディアルガからは確かに敵意は感じない。
暴走したアルセウスに操られていた以前とは違い、今度はしっかりとオレの事も覚えている様だしな…

オレはそう思い、左手に持っていた小説に栞を挟んで、それをパタンと閉じてから机に置いた。
その後オレは椅子から立ち上がり、まずはその場から空間転移する。

ディアルガも一緒に連れて…行き先は、地下訓練場だ。


ディアルガ
「…ここは、地下か? それも、以前貴様を始末した場所」
「クク…あの時の借りは、もう返してもらったはずだが?」

白那
「勘違いするな…ここなら、誰にも会話は聞かれないから選んだにすぎない」
「さぁ、聞かせてもらおうか? お前の話とやらを…」


ディアルガは周りを軽く見渡し、鬱陶しそうに長い髪をかき上げた。
今回は以前身に付けていた鎧は装備しておらず、服はレースクイーンの様なピチピチの白ハイレグに、肘から下を覆う長く青い手袋。
脚にも膝から下を全て覆う青い靴下であり、靴も青のブーツを履いていた。

やれやれ、何だで胸はオレと同等はありそうだな…
身長も同じ位だし、相似点が多いのはある意味癪だが。


ディアルガ
「やれやれ…立ったまま話をするのか?」
「全く、気の利かん奴だ…」


ディアルガはそう言ってまたため息を吐く。
オレは言われてすぐに空間を開け、椅子をふたつ出してやった。
空き部屋に置いてあった、誰も使ってない椅子だ。
もっとも、それに埃はひとつも被ってはいない。
櫻桃が毎日入念に掃除してくれてるからね…

ディアルガはそれを見て、ククク…と笑い、優雅に椅子へ座る。
オレも同様に座り、両手を膝の上で合わせてやや前のめりになり、ディアルガを睨んだ。
本当に…一体、何の話をする気だ?


ディアルガ
「まぁ、そう警戒するな…別に大した話ではない」
「人の住む世界での生活とは、どんな物なんだ?」

白那
「…唐突、だな」


それは、本当に予想もしていなかった言葉だった。
あのディアルガが、そんな世間話じみた言葉を言ったのだ。
少なくとも、オレの記憶にあるディアルガは、誰にも興味を抱かず、冷血かつ冷酷。

自分以外の何者をも認めず、決して心は許さない徹底した傲慢の神だった。
そんなディアルガが…この世界に興味を?
いや、そもそも…どうやってこの世界に来れた?
少なくとも聖君の願いに便乗したとは思えない。

コイツは、ひっそりと潜伏する位なら、即日乗り込んで来るはずだからな。
まさか…これも混沌の影響なのか?
だが、前の時の様な違和感は感じなかった…少なくとも世界が切り替わった感じは全く無い。

つまりは、今いる世界は紛れもなく現実世界であり、オレたちの世界なんだ…
そんな現実に、こんな来訪者が…?
考えても考えても、結論は出ない。
元々混沌に対しても、情報が少なすぎるからな…

とりあえず、今はディアルガの話に集中する事にしようか…
彼女はやや空虚な顔をし、更にこう話し始めた…


ディアルガ
「ふと気になったのだ…お前をそうまで変えた人間の存在が」
「あのアルセウスですら救ってみせた、あの特異点…」


成る程、聖君に遠からず惹かれたか。
解らなくはない…聖君の魅力は、ただの人間とも思えないからな。
とても不可解だけど、聖君の『心』は人間離れしている。
いや、夢見の雫を継承した時点で、本来もう人間とは呼べないのかもしれないが…

そんな聖君は、知らずの内にこのディアルガすら変えようというのか?


白那
「…何故、今更になって?」

ディアルガ
「解らん…全てが元に戻ってから半年余り、私は元の世界でずっと空虚に囚われていた」
「何の興味も沸かず、ただ無軌道に生き続けるのが、何故か虚しくなった…」
「そんな時、ふと貴様と特異点を思い出してな…」


それで時空を超えて、ここに辿り着いたというのか?
ディアルガの能力だけで、そんな世界移動が出来るだろうか?
以前はアルセウスの呪縛により、能力をブーストされてたからまだ解るが…
今のディアルガ単体の能力だけでここまで来れるとは、オレには到底思えないんだが…


白那
(やはり…これも、混沌の一端と考えるべきか)


そう思えば、全ての不条理は納得出来てしまう。
恐らくだが、混沌は何でも有りと考えた方が良い。
三海ちゃんの時の例もあれば、遊園地の例もある訳だし…
あのふたつの混沌は、発生条件も不明であり、内容もクリア条件も全く違っていた。

今回の事も混沌が原因だとすれば、この程度の不可解は仕方無いと思うしかないのかもしれない。
しかし、そうなると…ひとつ問題はある。


ディアルガ
「どうした? 私の顔に何か付いているのか?」

白那
「いや、変わらず綺麗な顔だがね…少しムカつく位には」


オレが微笑して言ってやると、ディアルガも軽く笑った。
確かに敵意は感じない…むしろ、ここまで純粋な心を押し出してるコイツは見た事が無い位には。
やはり、聖君が与えた影響が大きいのか?


ディアルガ
「…貴様も、随分女らしくなった物だな」

白那
「そりゃあね…事実、今のオレは女だし」
「それに、オレたちは元々性別不明のポケモンだ…男女としての性格も、娘たちの為に設定されただけの物だからな」


とはいえ、その娘が物心つく前に、コイツはとっとと職務放棄して逃げたわけだが…
コイツにとっては、家族なんて飾りは意味を持たなかった。
時間すら超越出来るコイツに、家族の暮らしなど記憶の断片に過ぎなかったのだから。


ディアルガ
「…ふ、人の体とは本当に不思議な物だ」
「が、同時に不安にもなる…こんなにも脆い体で、この先どうすればいいのか?と…」


ディアルガは自分の手を見て、そう呟いた。
その口調は何故か弱々しく、オレが初めて見るディアルガの弱さにも見えた。

そして、何となくディアルガの心情を察する。
聖君の力によって全てが救われた後、ディアルガも皆と同じく人化したままだったのだろう。
だからこそ、今までとは違う人の体での生活に意味が見出だせなかったんだ…

それまでは、人の体みたいな不便さは微塵も無かった訳だからね…
食事も生理現象もほとんど必要とせず、その気になれば永遠に近い時間をも生きられる。
それは、まさに伝説の神話に生きる獣としての体だったのだ…
そんな神様みたいな肉体と、今の制限された人の体では、勝手が違うとかそういうレベルじゃ無いはずだからな…

オレも当時は相当苦労したモンだし、慣れるまでは櫻桃たちメイドにどれだけの苦労をかけた事か…
逆に、慣れてさえしまえばそんなに問題も無く、むしろオレとしては新たな人生が楽しい位だがね。

ディアルガにとっては、それが全く理解出来ないんだろうけど…


白那
「オレたちは所詮、ポケモンであり人間だ」
「生きとし生けるモノはいずれ死を迎える…少なくとも、オレは神としての肉体を天秤にかけられた所で、それでも人と共に生きる事を選んだだろうさ」


そして、それは聖君の望みでもあった。
だからこそ、オレたちは今ここに生きていられるんだから…
オレにとっては、聖君の存在は実質神の様な存在であり、ある意味全てだ。

その聖君が望む事なら、オレは何でも出来る…
勿論、それは聖君を信頼してるからこそでもあり、聖君が間違った道に進もうとするなら、それはオレが必ず止めるという意味でもある。

両親を知らない聖君には、そうやって道を示す大人が必要なはずだから…


ディアルガ
「人と…共に、か…」

白那
「お前じゃ、到底理解出来ないだろ? 所詮、人間を下位の存在としか見てないお前じゃあな…」

ディアルガ
「ああ、確かに解らん…だから、今はそれを知りたいと私は思うのだ」


オレは、表情には出さないものの、少なからず驚いた。
あのディアルガが、本当に変わろうとしているのか?
何故そうなろうとしているのかは、本人ですら定かではない様だけど、少なくとも悪い兆候じゃ無さそうだね。


白那
「…まさか、このままこの世界で人と共に過ごすつもりなのか?」

ディアルガ
「ああ、少なくともこの心の空虚を埋めるまでは…」


ディアルガは本気の様だった。
オレは少し考え、そして彼女の意志を汲み取る事にする。
少なくとも、今の彼女に危険な意志は無いと踏む。
恐らく、純粋に自分の中でくすぶる疑問と向き合うつもりなのだろう。

その結果、何が起こるかは定かじゃないけど…
もし何かあったとしても、その時はオレが責任を持って止めてみせるさ。
なので、オレは彼女に向けてこう提案をした。


白那
「なら、ここで一緒に暮らすか? 生活に苦労はさせないぞ?」

ディアルガ
「ふ…それこそタチの悪い冗談だな? そこまで貴様の世話になる気は無い」
「まぁ、気が向いたら頼ってやっても良いが…」


そんな軽口を言い、ディアルガは微笑して椅子から立ち上がった。
まぁ彼女の性格なら、そう言うとは思ってたけどね…
オレも微笑して無言で空間を開き、そこから偽装薬の箱を一箱取り出して、それをディアルガに差し出す。
ディアルガは?を浮かべ、それを受け取って箱を凝視した。

そして、彼女はおもむろに箱を開け、中身を見ると顔をしかめてこう言う…


ディアルガ
「何だこれは? 避妊薬か何かか?」
「いくら私でも、そこまで無節操に人と性交するつもりは無いぞ?」

白那
「…そんな冗談まで言える様になったのか?」


オレは思わず頭を抱えてしまう。
一体どういう発想でそんな言葉が出て来たのか?
それとも、今のは彼女なりのジョークだったのだろうか?
だとしたら、益々聖君が与えた影響は大きそうだけど…

オレはとりあえず首をフルフルと横に振るも、説明をしてやる事に…


白那
「それは、見た目を人と同じ様に見せる為の偽装薬だ」
「1錠飲めば24時間は持つ…元娘からの餞別と思って、素直に受け取れ」

ディアルガ
「…元、娘か」


ディアルガはそれを聞いて露骨に空虚な顔をする。
こんな冷血な母親でも、少しは感傷に浸る心があったのだろうか?
だとしても、今更母親面されるのは娘としても頭に来るだろう。

夏翔麗愛はまだともかく、藍なんかは露骨に認めたがらないだろうからな。
棗は、オレが認めるならまだしも…か。
とにかく、ディアルガに少しでも罪悪感があるなら、まずは娘に謝るのが先決だ。

少なくとも、それまで娘に合わせる気はオレには毛頭無いね。


白那
「その薬は娘が開発した物だからな…とりあえず、無くなったらまたいつでも来い」
「それ位は面倒を見てやる…この世界で、問題を起こされても困るからな」


オレは、それだけ言って自室に転移して戻り、同時にディアルガを外の世界に放り出した。
なるべく、人目のつかない場所を選んで送り込んだつもりだ、後は自分で何とかするだろう…

やれやれ…とんだ来訪者だったな。



………………………



ディアルガ
「…ここは、何処かの建物の屋上か?」


気が付けば、そんな所に放り出されていた。
やれやれ…相当嫌われてる様だな。
まぁ、仕方の無い事でもある…以前の事を鑑みればな。
私としても無駄に馴れ合うつもりは無いし、今は別にこれでも構わんさ…

私はそう思い、1度空を見てから現時刻を『観測』した。
この世界の時間感覚はまだよく解らないが、恐らく私のいた世界と大差は無いと予想する。


ディアルガ
(だとすると、16時34分か…時粒子の配分も特に問題は無い)


私は世界に存在する『時粒子』を見る事が出来る。
それは、時間ポケモンである私のみが出来る観測法であり、この時粒子を利用して私は時間を操る事が出来るのだ。

ただし、高度な時間操作はあくまで私の技『時の咆哮』の余波でしか行えない。
厳密に言うなら、時間停止や時間溯行といった類いのレベルだな。
加速や減速程度ならかなりの回数を行えるが、先述したレベルの時間操作には制限があるという事…

故に、連続で時を操れるのはおよそ5〜8回であり、技のPPが切れた時点で時間停止等の操作は不可能になる。
これはパルキアの空間操作も同様であり、奴も同様の制限は存在するのだ。

もっとも…奴の能力は汎用性が高く、私の能力と比較すれば使い勝手は雲泥の差だがな。


ディアルガ
「………」


私は渡された薬箱をマジマジと見て、そして顔をしかめた。
そして奴の言った言葉をもう1度思い出し、私は小さく呟く。


ディアルガ
「…元娘から、か」


つまりは、そういう事なのだ。
もう私は、あれの家族でも何でもないという意味。
言わば赤の他人だ。
無論、会えば世話位は焼いてやるが…という程度の関係。

私は、とりあえずその薬を1錠飲んだ。
舐めると何故かフルーツ味がし、どうやら噛み砕いて飲んでも問題は無さそうだな…

私はとりあえず効能を確かめる為、自分の腕を見てみる…
ふむ、別段自分の目から何かが変わった様には見えんな。
あくまで、他の目から人間に見える様にしているだけか。

私はそう結論付け、まずはこの建物の屋上の端まで歩き、金網のフェンスに指をかけた。
そして、金網越しに私は目下に広がる人の世界を見る。
地上では多くの人間が歩いており、それぞれが様々な表情を見せていた。

私はそんな人間の生き方を、まだ何も理解出来ないでいる。
人とは、一体何故あんなにも多様な感情を見せるのか…?
私はそれを知る為に、まずは住めそうな住居を探す事にした。
そしてその際、ひとつのルールを定める事に。
そのルールとは……



………………………



万丁
「ちっ…今月は余裕が無ぇな」


俺は財布の中身を確認して、思わず舌打ちした。
無駄遣いはしてねぇんだが、やっぱバイト位はやらなきゃならねぇと自覚する。
高校入ってからというもの、整髪剤やら原付きの維持費やらで結構カツカツだったからな〜

一応、親からの仕送りは少なくもないんだが、やはりヤンキーである事を秘密にしてるだけに、その辺の経費はとても要求出来ないのがネックだ。
可能な限り、自力で何とかしねぇと…

俺はそんな風にこれからの生活を頭で考えし、ズボンのポケットから鍵を出して玄関の鍵を開けた。
そして靴を脱ぎ、部屋用のスリッパに履き替える。
そのまま俺がリビングに入ると…



「ほう…これはまた、随分奇っ怪な髪型の人間だな?」
「貴様が、この家の主か?」


俺はとりあえず放心する。
理由は解らないが、何故か人ん家のリビングでそいつは優雅に足を絡めて座っており、テーブルに左肘を着き顎に手を当てて妖艶に笑っていた。

その姿は、パッと見で美しいと思える見た目であり、レースクイーンの様なピチピチのスーツがボディラインを更に強調している。
だがそれ以上に俺の目には注目すべき箇所がひとつあった…


万丁
(野郎…! 腹筋がスゲェな!? スーツの上からでも解る位には、筋肉がありそうだ…!)


そう、女性でありながらその肉体は引き締まっている。
身長もかなりあるし、何か格闘技でもやってんだろうか?
とはいえ、今はそんな風に色目を使っている場合じゃねぇ。
いくら何でも問題だぞコレは? 完全に不法侵入じゃねぇか!

俺は一瞬迷ったが、まずは一声こう叫ぶ事にした…


万丁
「とりあえず、誰だテメェは!?」


「私はディアルガだ、ここを住み処にしたいのだが構わんか?」


一体何を言ってるんだコイツは?
いきなり不法侵入して、住み処にしたいだぁ?
突拍子も無さすぎだろ! ディアルガとか言ってたが、もしかして外人なのかコイツ?
見た目は黒髪の日本人っぽく見えるのに…

俺はメンチを軽く切りながらも、今はまだ穏便に話す事にした。


万丁
「とりあえず理由を話せ、何でここに住みたいんだよ?」

ディアルガ
「私には行く所が無い、故に聞いているのだ」
「ここを選んだのはただの気紛れ、あくまでランダムに選んだ」


何だそりゃ? コイツの言動は何かおかしいぞ…?
一体何がどうなって、コイツは勝手に家に入れたんだ?
俺の家は仮にもマンションの12階…しかもオートロック付きであり、許可が無けりゃ建物に入る事も出来ないはずなのに。


ディアルガ
「こっちには時間はたっぷりとある、嫌なら嫌と言え」
「そうすれば、すぐにこの場から消えよう…」
「私は、受け入れてくれる者をまたランダムに探すだけだからな」

万丁
「待て…俺が受け入れないなら、お前こんな事を繰り返し続ける気か?」
「そんなの警察が黙っちゃいないぞ? これはれっきとした犯罪だ!」


俺は少々強めに言ってやった。
相手はあまりに傍若無人であり、しかも悪びれる様子も無い。
方法はともかくとしても、こうやって自由自在に忍び込めるのだとしたらそれはかなりの問題だし。

ましてや、コイツはそれを繰り返すと言ってやがる…!


ディアルガ
「そうか、人間の社会とは面倒な物だな…」
「まぁ…それならそれで、その警察とやらに厄介になれば良いだろう」
「私としては、衣食住を保証してもらえるなら、別にどこでも良いのだ…」
「何、別に無償で住まわせてくれとは言わん…何なら、宿賃代わりに夜の相手をしてやっても構わんぞ…?」


そう言って女は目を細めて笑う。
コイツは、完全に頭のネジが外れてやがる。
こんなの、普通の人間の考え方じゃない…浮世離れとか、そういう問題でも無い。

コイツは一切の言動や行動に全く恐怖を伴ってないんだ。
全てが、所詮流れみたいな物だと認識してる…
俺は逆に軽く恐怖した…今相対しているのは、まるで未知の生命体みたいな感じだ。
ひょっとしたら、コイツ本物の宇宙人とかじゃないのか?

俺は突拍子も無い事だとは思うが、それでもあえて聞いてみる事にした。


万丁
「とりあえず正直に言え、お前は地球人なのか?」

ディアルガ
「地球…とは惑星の事か? 質問の意図が解らんが、少なくとも私はこの星で生まれた存在では無いな」


ハッキリと言いやがった…!
つまり、これはやはり未知との遭遇!?
俺は世紀の発見者になってしまったのか!?
歴史に名を残す偉人への第1歩なのか!?
マジモンの宇宙人とか、一体相手すりゃ良いんだ!?

そもそも友好的かも解らんしな…ここは慎重に事を進めねば!


ディアルガ
「ちなみに、私としては無意味な情報公開は避けたい」
「故に、貴様を信頼出来ないと判断すれば、私は貴様を暗に始末せねばならなくなる…」


げぇっ!? 始末とか言われた!!
要するに口封じ…俺は気が付けば、宇宙人の食卓に並んでいたのかもしれない…
ここまで聞いてしまった以上、俺はもはやデッド オア アライブ!!
未知の宇宙技術に素手で勝てるとは思えねぇ、第一俺はコマンドー程屈強ではないのだ!


万丁
「お前まさか、地球を征服する為にやって来たのか!?」

ディアルガ
「そんな俗な事に興味は無い、私が求めるのは人の心だ…」


人の、心…?
どういうこった? もしかしてコイツには心が無いのか?
確かに、ここまで大した感情表現は見られないが、少なくとも心が無いとかそういうのじゃ無さそうだが。

とりあえず、コイツは○イリアンや○レデターの類いでは無い様だ。
どっちかというと、○レムリンや○Tの様に比較的温厚なのかもしれない。


万丁
「仮にここに住むとして、それから何をするつもりなんだ?」

ディアルガ
「ただ、ここで生きるだけだ…」
「人の営みとは何なのか? まず、私はそれが知りたい…」


そう言って彼女は何処か空虚な目をする…その瞳からは、どことなく寂しげな何かを俺は感じてしまった。


万丁
(成る程ね…詰まる所、コイツは地球人の生活を知りたい訳か)


その理由は全く不明だが、コイツはとりあえずランダムに選んで俺の家に来た。
それはあくまでたまたまであり、俺が拒否したらそれで終わりだったのだ。
だが、俺は愚かにも踏み込んでしまった。

聞かなきゃ良かったのに、聞いちまった以上、俺はもう従うしかない。
まぁ、余計な事さえ口走らなきゃ比較的無害そうだし、後は案外何とかなんだろ…!

俺はそう思い、とりあえずコイツを受け入れる事にした。
そして、更に金欠が加速するのを予想し、俺は頭を抱えて俯く。


万丁
「ちっ、とりあえず勝手にしろ…!」
「ただ…寝床は保証してやるが、衣、食は自分で何とかしてくれ!」
「俺には人ひとり養える金銭的余裕は無ぇんだ!」

ディアルガ
「何だ、貧乏人だったのか? 仕方あるまい、少し待て…」


ディアルガとかいう宇宙人は、突然虚空を見つめてボーッとしていた。
何だか解らんが、何かやっているらしい…
ま、まさか宇宙と交信しているのか!?
そして、宇宙的な便利グッズでも飛び出すのだろうか!?
俺は淡い期待をしながらも、次に何が起こるのかをじっと立って待っていた。

すると…突然ドスッ!と重めの音がし、ディアルガの手には何かが握られていた。
それをディアルガは俺に差し出し…


ディアルガ
「よし、宿賃代わりだ…受け取れ」

万丁
「…は?」


それはあまりにも突然の現象だった。
ディアルガの目の前に何か妙な穴が一瞬開き、そこから金塊が出て来たのだ…
俺はそれを片手で受け取るが、ズシリと重い…!
これ10kgはあんじゃねぇのか!?


万丁
(えっと普通の金だとしたら…確か今のレートだと、最低価値は…約500万円!?)


い、いやいやいや!! ちょっと待て!!
そもそもコレが本物とも限らない! 偽物だったらぬか喜びだ!


万丁
「あの、コレ…本物?」

ディアルガ
「安心しろ、確かな純金だそうだからな…この世界で換金すれば、それなりの金額になるだろうとの事だ」


純金!? だったら、レートは最低4000万円以上かよ!?
こ、こんなのホントに貰っても良い物なのか?
つーか、そんな価値のある物、未成年が普通に換金出来る気がしねぇ!!
確実に税金かかる代物だし、そもそも出所やら何やら不明だから、まずどっかで引っ掛かるだろ!
価値が高いなら尚更、日本みたいな国で換金出来るかっ!


万丁
「…とりあえず返す、換金なんてこの国じゃ多分無理だよ」

ディアルガ
「何…そうなのか? むぅ…なら、また少し待て」


ディアルガは金塊を持ち、また何かと交信していた。
すると金塊は一瞬で消え、今度は現金が代わりに現れる。
ざっくり見た感じ、100万円以上はありそうな札束だが…


ディアルガ
「これなら大丈夫か?」

万丁
「…偽札じゃねぇだろうな?」


少なくとも俺には判断つかないが、見た感じ1万円札の日本通貨だ。
こんなモンをポンと出すのもアレだが、一体どうやってやってんだ?
それともコレが宇宙人の技術なのだろうか?

いわゆるテレポートとかワープとかそういう技術なのかね?
実際に目の前で見せられると、案外あっさりしてたが…

とりあえず、ディアルガはため息を吐いてこう言った。


ディアルガ
「そんな事は私には解らん、元々この世界の通貨など知らんのだからな…」

万丁
「それよりも、こんな大金をポンと出せる方が疑問だろ!?」
「何なんだ今のは? どうやって金塊やら札束やらがポンと出てくんだよ!?」


俺が聞くと、ディアルガはまたため息を吐き、渋々説明し始める。
その内容はおおよそ俺が理解出来る範疇じゃなく、もはやオカルトの領域だった…


万丁
「…はぁ? テレパシーに空間操作〜!?」

ディアルガ
「言葉通りの意味だ、知り合いにテレパシーで連絡を取って、空間転移で物資を送ってもらっただけだ…」
「少々、説得に時間がかかったがな…」


やっぱりコイツは宇宙人だ…!
人類の叡知を軽く凌駕してやがる!
俺は、これからどうなって行くんだ? 俺の野望は…?


ディアルガ
「とりあえず、金銭面はそれで良いのだろう?」
「後は勝手にさせてもらうが…まず食事を任せる、食える物なら文句は言わん」


そう言って、ディアルガはそのままカーペットに背を預けて休んでしまった。
俺は途方に暮れ、大金を手に一旦自室に戻る事にする…
くっそ、ホントに大丈夫なのかよこの金?



………………………



万丁
「とりあえず買い物行くか…偽札じゃねぇのを祈るぜ?」
「おい、ディアルガ! とりあえず大人しくしとけよ!?」


俺は自室を出てからリビングに向かって叫ぶが、返事は返って来ない。
俺は不審に思い、リビングを覗くと…ディアルガはぐっすり眠っていた。
余程疲れていたのだろうか? 起きる気配はしなかった。

俺はその寝顔を見て、思わず見とれてしまう。
流石は宇宙人…地球人とは美貌も違うってか?
胸もスゲェよな…90はあんのかな? こんなモンぶら下げてるのは間違いなく地球人じゃ無い、と有名な毒蛇さんも言ってくれるレベルだろう。

俺は思わずゴクリと喉を鳴らすも、不埒な考えはすぐ捨てた。
寝てる女性に欲情するなんざ、ただの卑怯者だ。
俺はとりあえず1度押し入れを漁り、毛布を1枚見付けたのでそれをかけてやる事にした。
6月も下旬とは言え、もう日も暮れ始めてるし、あんな薄着じゃ風邪ひくかもしんねぇ…
とりあえず、今はこれでそっとしとこう…



………………………



万丁
「…とりあえず、1度貯金しとくか?」


俺は、一体いくらかも解らない札束の事を考えていた。
まずはATMで通るか確認して、行けるなら必要分以外は貯金しとくのが吉だろう。
って、金額的にはマズイか?
独り暮らしの未成年が、預金に100万以上の金を一気に入れたら怪しまれるかもしれねぇな…


万丁
「と、なると…月イチ10万づつとかにしとくか」
「それならバイト代と思われるだろうし、何とかなりそうだ」


俺はそう思い、近くの銀行に寄ってATMを利用する事にした。
そして、今回は10万円だけを貯金し、とりあえず残りは封筒に入れて厳重に保管する事にする。
つか、封筒1枚じゃ足んね〜! 3枚はいるなこりゃ…
俺はATMの側に設置されてる封筒を3枚取り、それに金を詰め込んだ。
そしていくらかは財布にねじ込み、封筒は鞄に入れる。
さて、後は飯だな…何食うか?

っていうか、ディアルガは何でも食えるのか?
食えりゃ何でも良いとは言っていたが、そもそも地球の食べ物は食えるのか?
俺は悩むも、この際1度戻って聞いてみる事にした。
買ってから食えませんじゃ、話にならねぇからな…



………………………



万丁
「ただいま〜って、こんなセリフ久し振りだな何か」


俺は自分で言ってて不思議に思った。
高校に入学してからは独り暮らしで、ただいまなんて言った事無かったからな…
俺はとりあえずリビングに向かうと、ディアルガは既に起きていた様で、テーブルに向かって何かボーッとしていた。

その姿は窓から差し込む夕日に照らされ、純粋に綺麗だと俺は思えた。
しかし、彼女の表情はどこか空虚であら、何処か危うさも感じる様に見える。
そんなディアルガは、俺の方にゆっくりと顔を向け、小さく息を吐いてこう言った。


ディアルガ
「…出かけていたのか?」

万丁
「ああ、ちょっと銀行にな…それと、お前は何が食えるんだ?」
「宇宙人の食べ物とか、俺には解らんからな…」


俺がそう言うと、ディアルガは?を浮かべて目を細める。
とりあえず、地球で食える食べ物なら良いんだが…


ディアルガ
「…とりあえず、肉か野菜か果物なら多分大丈夫だ」
「だが、宇宙人とは誰の事だ?」
「私は確かに異世界の存在だが、別に宇宙に住んではいないぞ?」

万丁
「あれ、そうなのか? じゃあまさか魔族とか天使とかそういうのか!?」


ディアルガは微妙な表情で、目を細めて?をまた浮かべる。
どうやら全部的外れらしい…だったら、コイツは一体何なんだ!?
宇宙人じゃねぇのに、テレパシーとかテレポートとかどうやってやってんだ!?


ディアルガ
「…はぁ、最初に言ったはずだが? 私はディアルガ…」
「人は、時間ポケモンとでも名付けてたな…いわゆるそれだ」


俺は、とりあえず固まった。
今何っつった? ポケモン? ディアルガ、時間、ポケモン…
それって、あのポケモンの事だよな?
ポケットモンスター…縮めてポケモン。


万丁
「だっはっはっは!! 流石に、それは無ぇわ!!」
「ポケモンて、ゲームのキャラだろ!?」
「どう見たって、見た目は人間じゃねぇか!!」


俺は腹を抱えて大笑いしてしまう。
嘘吐くにしてももっと考えろよな〜?
いくらなんでも、そんな有名なゲームのキャラになりきるとか、人の体でよくやるわ!

…まぁ、それであの超常現象が説明出来る訳じゃないんだがな!


ディアルガ
「はぁ…まぁ期待はしてはいなかったがな」
「だが、とりあえずこれ位の事は出来るんだぞ?」

万丁
「!?」


突然、ディアルガは俺の背後から声をかけて来ていた。
当然、もう俺の目の前にディアルガはいない。
俺は恐る恐る後ろを見ると、ディアルガが髪をかき上げて鬱陶しそうにため息を吐いていた。
こ、今度は何をしたんだ!?


ディアルガ
「私は時間を操れる、私にとっては未来も過去も思いのまま…」
「その気になれば、お前を赤子に戻す事も不可能ではないぞ?」
「信じられないなら…試しに体験してみるか?」


俺は瞬間、恐怖に苛まれた。
ディアルガは事も無げにそんな事を言って、俺に右手を向ける。
全身から冷や汗が出ているのが解る、そして脳が直感的に危険信号を鳴らす。

下手すりゃ殺される!? ダメだ、コイツは嘘でも何でもバケモノには違いねぇんだ!
ポケモンだとかバカな事言っちゃいるが、そもそもコイツは普通じゃない!!


万丁
「ま、待ってくれ…! 何で、何でポケモンが人間の姿してんだよ!?」
「おかしいじゃねぇか! ゲームが現実なのもおかしいが、それ以前の問題だ!!」


俺が捲し立てる様に質問をすると、ディアルガは少し悲しそうな顔をした。
何でか解らないが、俺はその顔が酷く悲しく見えたのだ。
そして、そこから放たれる彼女の言葉は…酷く寂しげな感情を醸し出していた。


ディアルガ
「…そんな事、私が知りたい」
「私は、何故人になった? 何故、ここにいる?」
「パルキアに聞いた所で、その答えはきっと返って来ない…」
「私は、何だ? 人でも無ければ、ポケモンですらないのか?」


それは、全てを諦めた様な声だった。
俺は、何となく理解した…コイツは、自分の居場所を探してんだ。
自分じゃ何も解らない、誰も答えてくれない。
コイツは、きっと相当凄い奴なんだろう…それなのに、そんなちっぽけな理由が見付からない。

俺は、既に恐怖は消えていた。
むしろ、彼女の顔を見て、哀れみすら出て来る。
そして、俺はとりあえず深呼吸をひとつし、冷静になってこう言った。


万丁
「もう良いよ…お前の事は信じる」
「だから、その手を降ろしてくれ…今更赤子にとか戻りたくねぇし」

ディアルガ
「…そうか」


ディアルガはそれで納得したのか、手を降ろして再びテーブルの前まで歩き、椅子に座った。
何か、こうやって見ると弱々しいな…儚くも見える。
そういや、平気でタメ口利いちまってたが、年齢とか聞いても良いんだろうか?
いや、そもそもポケモンって言ってるし、人間と同じ年齢換算で良いのか?
まぁ、とにかく聞いてみよう!


万丁
「…ディアルガって、何歳なんだ?」

ディアルガ
「…? さぁな、数えた事も無い」
「時間を操れる私にとっては、正確な年齢は把握出来ないからな…」
「もう数えられない程には、自分の肉体時間を加速させたりしているし…」
「まぁ、あえて言うならパルキアと生まれは同じだから、人間で言うなら29歳か」
「今年で確か30になるはずだが…」


マジか…だったら完全に大人じゃねぇか!?
しまったな、先に年齢聞いとくんだった…かなり生意気な口の聞き方しちまったな。


ディアルガ
「そういえば、まだ貴様の名を聞いていなかったな…」

万丁
「あ、そうか…俺ぁ万丁、『万丁 宙』(ばんちょう ひろし)だ」

ディアルガ
「万丁 宙…解った、なら宙と呼べば良いか?」

万丁
「あ、そ、それで良いっす」


俺はとりあえず、ソッコーで口の聞き方を変えておいた。
ディアルガさんは特に何もツッコマなかったな…
とにかく、今後はちゃんと礼儀を考えよう!


ディアルガ
「…宙、私に名をくれないか?」
「この世界で生きるには、名が必要となるだろうからな…」


突然、そんな事を言われた。
とはいえ、俺にそんな気の利いた名前を考え付くだろうか?
あまりありきたりな名前なのも何だしな…何か特徴からでも付けて見るか?



「えっと、ディアルガさんって何か特徴とかあるんすか?」
「その、時間を操る以外に…」

ディアルガ
「…特徴か、私は鋼タイプとドラゴンタイプだが」
「そうだな…金剛玉(こんごうだま)のこれを、人はダイヤモンドとか言っていたかな?」


そう言って、ディアルガさんはひとつのビー玉の様な石を取り出した。
それは丸く、確かに色はダイヤモンドの様にも見えるが、全く磨かれておらず、宝石と言うには価値は無さそうな感じだった。
だが、ディアルガさんはそれを大事そうに手で転がしており、重要な物だと言うのは何となく伝わる。
俺はとりあえずそれを見てソッコー決めた。
この人の名は…



「大愛(だいあ)とかどうです? ちょっと安直かもしれねぇっすけど」

ディアルガ
「…○紋呼吸法は使えんぞ?」


「それ○イアーさん!! 何で○ョジョネタ知ってんすか!? ポケモン世界でも流行ってんの!?」

ディアルガ
「知らん、何故か突然頭に降って来た」


何てこった…ディアルガさんにネタの神様が降りて来たのか!?
やっぱり○木先生のネタは異世界の住人にも通用するんだな…!


ディアルガ
「とりあえず、それで良い…」
「ダイア…か、どんな字で書くんだ?」


「あ、そうか…文字とか読めんのか解んねっすけど、とりあえずこんな字っす」


俺はテーブルに乗ってたメモ帳に、一緒に置いてあったボールペンで字を書いた。
すると、ディアルガさ…じゃなかった、大愛さんはそれを見て少し顔をしかめる。
あんまり、気に入らない漢字だったかな?


大愛
「ふふ、この私が…大きな愛、とはな…」


大愛さんは笑ってはいたものの、凄く悲しそうだった。
一体、大愛さんにはどんな事情があるんだろうか?
俺には、何故か大愛さんの姿が強くも弱々しく映った。
そして俺は、予感した…これから先、俺はこの人と野望を共にするのだろうと。

その後、いつか俺はこう思うのかもしれない…大愛さんとの出逢いは、きっと運命だったんだと…










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第4話 『ディアルガ再来』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/02(木) 00:03 )