とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第4章 『新たなる再会』
第2話
沙譚
「…はぁ」


私はため息を吐きながらも、自宅のガレージで愛車を見ていた。
状態は良い、今日も問題無く走ってくれてる。
だが、やはりアタシの欲求は完全に満たされない
このままプロになれば、それは本当に満たされるのだろうか?
それとも、プロでさえアタシはこのくすぶりを持ったままになるのだろうか?
マシンは、そんな疑問に答えてはくれなかった…



「あんだ、帰って来たと思ったらいきなり沈んだ顔だな?」

沙譚
「…兄貴か、ただいま」


アタシがそう言うと、兄貴はおう!と軽快に答える。
兄貴はドロドロに汚れた作業服に身を包んでおり、今日もバイク屋の仕事で忙しかったのだろうと予想出来た。
小さな店だけど、ウチはそれなりに繁盛している。
特に改造や修理の依頼は結構多く、親父と兄貴が毎日笑顔で作業をしているのが、もはや常態化していた。
そのお陰で、アタシはそれなりに好き勝手やらせてもらってるわけだが…


兄貴
「何だ、ついに恋する乙女にでもなったか?」

沙譚
「張っ倒すぞ? 誰がどう見たら恋する乙女に見える?」

兄貴
「まぁ、お前は恋する位ならその場で奪い取る女だわな…」


アタシは自分でもそうとは思う。
恋なんて面倒臭いだけだ、そんなモン抱える位なら初めから奪い取る。
欲しい物は欲しいと言うのが欲求だろう。
アタシはただ、今はそれをマシンに向けているだけだ…


兄貴
「…マシンが不服か?」

沙譚
「そうじゃない、ただ何かが足りない気がする」
「このまま走り続けて、アタシは本当に満たされるのかが解らない」


このバイクはアタシの全てだ。
コイツと走る事で、アタシは全てを忘れて裸になれる。
だけど、アタシは未だにあの『風』を思い出せない。
かつて、おふくろが教えてくれたあの風を…
そんなアタシの顔を見て、兄貴は低い声でこう言った。


兄貴
「…お前は、おふくろとは違うんだぞ?」

沙譚
「…分かってるさ、おふくろはアタシとは違うって」
「でも、アタシにとってあの風は、やっぱ特別なんだ…」


アタシはそう言って、フルフェイスのメットを握って家に入る。
そしてすぐに部屋に戻り、アタシは着替えを持ってシャワーを浴びる事にした。



………………………




「おう! 帰ったか沙譚!」

沙譚
「親父か、ただいま」


アタシは部屋を出てすぐに親父と会う。
親父も今日の作業は終わってシャワーを浴びた後の様だ。
親父は年齢47と、高校生の父親としては結構老いてる。
だがまだまだ元気はあり、仕事もバシバシこなしているんだからとりあえず安心だ。
体つきも良いし、並の同年代とは比較にならない程には元気があり余ってるだろうからな。


親父
「へっ、お前も益々母ちゃんに似てきたな!」

沙譚
「そうか? おふくろはもっと淑やかだっただろ?」

親父
「なぁに言ってやがる!? ありゃ皮被ってただけだ!!」
「お前らが産まれる前は、俺を押し倒して無理矢理孕みやがったんだからな!?」


アタシは頭を抱えてその光景を想像した。
おふくろはもう死んでこの世にいないが、アタシにとっては優しい存在でしか記憶に無い。
よって、そんな黒歴史行動は即刻アタシの記憶から消させてもらう。


親父
「お前も好きな男見付けたら絶対に同じ事をやる! 断言してやる!!」

沙譚
「黙れクソ親父! アタシはんな事絶対にしねぇ!!」


アタシは顔を真っ赤にしてそう言い、すぐに風呂場に向かった。
後ろから親父の小言が聞こえたが全部無視した。
ったく、人の母親像を壊すなっての!
アタシの脳裏には、未だにあの風を走らせたおふくろの背中が焼き付いてるってのに…



………………………



その日は、結局すぐに寝た。
アタシは何気に今日見た魔更の笑顔を思い出す。
アイツ、あんな顔出来たんだな…確かに3学期開始の時からアイツは変わってた。
本当に同一人物なのか?と思う程に変化していた。
アタシは特に関わらなかったし、気にもしなかったけど…
ただ、光里がアイツを好きになっていたのには、少し驚いただけだ。



………………………



沙譚
「………」

光里
「あれ? サーたん珍しいね?」


アタシはまたいつもよりも早起きしてしまった。
普段ならわざと遅れて時間ズラすのに…
くっそ…このパターンだとまたアイツも?


沙譚
「…ん? 魔更はいないのか?」

光里
「うん、どうかしたのかな?」


まぁ、時間はまだ余裕があるが。
だがモタモタしてるとすぐに余裕も無くなるぞ。
とりあえずアタシたちはその場で少しだけ待つ事にした。
…別にアタシが待つ必要は無いんだが、光里が露骨に嫌そうな視線をぶつけやがるからな…


光里
「…いつもならもう来る頃なのに」

赤城
「ん? 来たぞ…ひとりだな」


「ちょっと遅れた、ゴメン!」

光里
「ううん、まだ大丈夫だし良いよ♪」
「それより、今日は何かあったの?」


光里が笑顔でそう聞くと、魔更は何やら複雑そうな顔をする。
何か言い難い事なのか?
だが、魔更はすぐに笑ってこう言う。



「ちょっと、ね…まぁ家族の問題だから心配いらないさ」

沙譚
「家族、ね…って、お前両親いないんじゃなかったか?」


「…まぁ、それはそれ」
「とにかく、今は気にしないでくれ…」


成る程、触れられたくない事情か。
それならわざわざ聞く必要は無い、聞かれたくない事をずけずけと聞かれるのはアタシだって嫌だからね。



「っていうか、何でまた赤城さんが?」

光里
「そういえばそうだよね…いつもならもっと遅れて登校してるのに」

沙譚
「たまたまだよ…時間を間違えたんだ」


実際にはズラすのも面倒だから家を出ただけなんだが。
そしたらまた出くわすし、後は昨日と同じだ。
何だかこのままズルズルと馴染みそうで怖い…


光里
「ところで美代さんは?」


「悠和ちゃんは先に出てるよ、もう学校にいるんじゃないかな?」
「日直だから、早めに登校したいんだと…」

沙譚
「そうか、ならさっさと行くぞ? グズグズしてたら遅刻しちまう」


アタシがそう言って先頭を歩き始めると、ふたりも付いて来る。
この辺りの時間帯は他の学生も少ないが、次第に増え始めるだろう。
あんまりゴチャゴチャするのも、アタシは好きじゃないんだよな…



「そういえば、赤城さんって家この辺なの?」

光里
「うん、割と近くにあるバイク屋さんなんだよ」


「バイク屋ねぇ、それでレーサー志望か」

沙譚
「別に家がバイク屋だからって訳じゃないぞ?」
「アタシはおふくろが走り屋だったから、その道を選んだだけだ」


アタシがそう言うと、魔更はへぇ〜と感心していた。
おふくろはレーサーというわけではなかったが、とにかく走るのが好きな人だった。
アタシはそんなおふくろに憧れて、小さい頃からバイクに乗っけてもらってたんだ。
そして、アタシはあの風を体感した。
今も、アタシはあの風を追い求めている…


光里
「でも、もう亡くなちゃったんだよね、サーたんのお母さん」

沙譚
「ああ…走り屋の宿命だよ、事故で死んだ」


「…それでも、赤城さんはレーサーになろうと?」


アタシは答えなかった。
死んでしまったおふくろは何を考えていたのか?
死ぬ間際、どんな風を浴びていたのか?
アタシは、例え死ぬとしてもあの風を追い求めるのか?
その答えは、まだアタシには解らなかった…
なので、アタシは簡単に答える。


沙譚
「…アタシがレーサーになるのはただの夢だ」
「どうせ仕事するなら、好きな事で稼ぎたいしな」

光里
「そうだよね〜私もそうだから研修頑張ってるし♪」


「夢、か…」


突然、魔更は俯いて顔を暗くした。
その顔は、かつての魔更を少し思い出させた。
だが、すぐに魔更は何かを振り切るかの様に目を瞑って顔を上げる。
そして何事も無かったかの様に、黙って歩き始めた。
何だ…? 魔更は夢に対して何かあるのか?

考えてもみれば、アタシはこいつの事は何も知らない。
光里が語ってくれた事に関しては知ってるが、あくまでコイツの口からは何も聞いていないんだ。
もっとも、アタシからすれば本来興味は無い物。
なので聞く必要は特に無い。
魔更も、あまり詮索はされたくなさそうだからな。
結局、そのままアタシたちは軽い会話をしながら登校した。

そして、そのまま何事もなく1日の授業は終わる。
アタシはすぐに家に帰り、そして着替えてからすぐに走る事にした。



………………………



ブォォォォォォォォォッ!!


沙譚
(マシンの調子は良い、今ならもっと速く走れる気がする)


アタシは少し街から離れた峠でひとり走っていた。
車通りはそこそこあるが、アタシは気にせずにスピードを上げて走り続ける。
今日の風はいつもと違う…アタシは更にその先を目指そうとしていた。


赤城
(おふくろが感じた風、今なら感じられるのか?)


アタシは長い直線に入ってアクセルを強める。
スピードは最高速に達し、エンジンは全力でマシンを動かす。
アタシはそのスピードに酔いしれた…
だけど、まだおふくろのあの風はアタシには感じられなかった…



………………………



沙譚
「ちっ、今までで最高の走りだったんだがな…」


アタシは峠の途中にあるコンビニで休憩する。
時間は20時過ぎか…ちょっと走りすぎたか?
まぁ、燃料は前もって満タンにしてるし、走る事に問題は無さそうだが。
兄貴たちも、アタシが夜遅く帰った所で口うるさくは言わないからな…


沙譚
(思えば、兄貴も親父もアタシには甘いんだよな…)


もちろん親父に叱られた事も沢山ある。
だけど、親父はその後には絶対優しく笑ってくれたんだ…
兄貴もそんなアタシを見てよく笑っていた。
何だで、アタシはあのふたりに支えられてるんだと、実感する。


バォンバォン!!


と、そんな風に感傷に浸っていると、突然耳障りなエンジン音がコンビニの駐車場に木霊した。
見てみると、そこには悪趣味な改造を施されたバイクが多数駐車場に乗り込んでいたのだ。
いわゆる族だな…この辺りはちらほらいるみたいだが、面倒そうだ。
だが、あまりに耳障りだったので、ついアタシはこう呟いてしまう。


沙譚
「ちっ、気持ち悪いエンジン音たてやがって」

族A
「あぁ!? 今何っつった!?」


と、即因縁をかけられる。
やれやれ、耳の良いこって…まぁわざと聞こえる位の声で言ったんだがな。
アタシは鬱陶しくなるが、とりあえず面倒事はゴメンなので、出来る限り穏便に済ませる事にした。


沙譚
「悪趣味な音出して気持ち悪いって言ったのさ…」
「遊びでマシン転がして、人の気分を害してんじゃねーよ!」


アタシはそう言って軽く挑発し、すぐにメットを被った。
そして素早くマシンに跨がり、エンジンをかける。
すると、すぐにマシンはアタシの気分を表したかの様な音で族共を威嚇した。


オオオオンッ!!


族B
「うおっ!?」

族C
「す、すげぇエンジン音…!」

族A
「テメェ、待ちやがれ!!」

沙譚
「なら追い付いてみろよ? その見せかけだけのマシンでな!!」


アタシはすぐにその場から離れて行く。
そのスピードに恐れをなしてか、誰ひとりそこから付いて来る者はいなかった。
少しでもバイクを弄ってるなら、加速の段階で追い付くのは無理だと解る。
アタシのマシンはおふくろから受け継いだ特別製だ。
おふくろは死んでも、マシンは死ななかった。
例え事故で傷付いても、コイツはまた甦ったんだ。


沙譚
(アタシはそんなコイツと一緒に世界を目指すって決めたんだ!)


この日、アタシはマシンの限界を突き詰めた走りを披露する。
だがその風は、まだあの時の風とは思えなかった…
やっぱり…アタシには無理だってのか?



………………………



沙譚
「…ちっ」

兄貴
「やれやれ、またか?」


兄貴が店前で出迎えてくれる。
いつもの光景だが、兄貴はマシンを見てため息を吐いていた。
何だか、いつもと雰囲気が違うじゃねぇか…


兄貴
「…お前、エンジンを酷使しすぎだ」
「今のチューニングで限界を突き詰めた所で、タイムなんざそこまで変えられねぇぞ?」

沙譚
「タイムなんてどうでも良いんだよ…アタシはおふくろと同じ風を感じたいだけだ」

親父
「だが、お前にはそれは無理だ」


何と親父まで現れる。
そしてその言葉は、アタシの胸に容赦無く突き刺さった。
親父の顔は真剣その物で、まるでアタシが間違っているのだと言わんばかりに言葉を放つ。


親父
「母ちゃんは母ちゃんにしか出せないモノを持ってた」
「そのマシンは今やお前のマシンだが、ソイツが出せる限界を持ってしても、お前は決して母ちゃんと同じ風は得られない」

沙譚
「何でだ!? おふくろはこのマシンであの風を受けていた!!」
「アタシの感覚には、あの風が刷り込まれているんだぞ!?」


アタシは近所迷惑も考えず、親父に叫んでかかるも、兄貴に腕で制されアタシは止まる。
そしてアタシは俯き、拳を強く握り込んだ。
そこから親父が放った言葉はとても優しく、子供を諭すかの様な静かな声で、アタシに現実を教えようとしていた…


親父
「お前は気付いてねぇだけだ…その時の風が、大してスピードも出てなかった事を」

沙譚
「…え?」

親父
「いくら母ちゃんでも、お前を乗せてトップスピードなんか出すか」
「お前はまだ小さかったから、そんな程度のスピードでも、あまりに印象に残りすぎてるから母ちゃんを神格化しているにすぎない」
「もう、お前は母ちゃんよりも上の次元に立ってるんだと、気付かないままにな…」


アタシは呆然として、持っていたメットを地面に落とす。
カランカラン!と、それは静かな夜の空間に音を響かせる。
そしてアタシはそんな親父の言葉を信じる事が出来なかった…


沙譚
「そんな馬鹿な…アタシはあの風を追い求めていたのに…」
「それが、ただの子供騙しだったって? そんなの…そんなのあんまりじゃないか……!」

兄貴
「気持ちは解る…だがそれが現実だ」
「おふくろの風は確かに俺も覚えてる、あれはもう2度と味わう事の出来ない、優しくも強い風だった…」

沙譚
「そんな、バカな…! じゃあアタシはこれからどうすりゃ?」

親父
「甘ったれるな!! さっきも言った様に、お前はもう母ちゃんの次元を超えてる!」
「お前は、お前の夢を信じて突っ走れば良いんだ!! 母ちゃんだって、必ず笑ってそう言う!!」


親父がアタシを叱責するのはいつ振りだろう?
おふくろが死んでから、親父はアタシをほとんど叱らなくなった。
悲しくてわんわん泣く小さなアタシを、親父と兄貴は優しく慰めてくれ、アタシは次第に、おふくろの事を忘れない様にとバイク弄りを学んだ…
免許が取れる様になるまで、アタシはあのマシンを整備し続け、その日を待った。

そして今年4月でようやく18歳になり、アタシは念願の大型免許が取れたんだ。
そんなアタシが目指した夢は…


沙譚
「…夢、そうだアタシの夢は、あのマシンで世界を取る」


大型免許を取って、すぐにアタシはおふくろのマシンに乗った。
元々かなり改造されているマシンだったから、最初はアタシもかなり戸惑ったけど、それでも乗りこなしてみせた。
そしてアタシは、おふくろの風を追い求める様になったんだ…


兄貴
「おふくろは走り屋であって、レーサーじゃなかった」
「だけどお前はレーサーの道を選んだんだんだろ? なら、その道を諦めるな!」
「きっと天国のおふくろもそれを見守ってくれてる」
「今度は、お前が誰かの風になってやれ…」


兄貴は俯いたままのアタシの肩をポンと叩く。
アタシが、誰かの風に…か。
そんな事、今まで考えた事も無かったな…


親父
「かっかっか! その前に男見付けてガキ作るこったな!!」
「お前なら母ちゃんに似て、良い母親になるだろうさ♪」

兄貴
「言えてる! 年々似てきてるもんな〜」

沙譚
「…そんなに似てるか?」


アタシ自身はほとんど覚えてない。
おふくろが死んだのも、アタシがまだ5歳の頃だったし。
ただ、いつも優しく笑っていたあの笑顔だけは、今も強く脳裏に焼き付いている…


親父
「がさつな所はそっくりだ! 喧嘩っ早い所もな!」

兄貴
「まぁ、そんな所も遺伝なんだろ? 俺は親父似だからそこまででもねぇし」

親父
「へっ、お前は大人しすぎる位だ! 俺が若い頃はケツに女乗せてブイブイ言わせたもんだぞ?」


親父は親父で結構なやんちゃだった様だしな…
そんでたまたまバイクの修理でおふくろと出逢い、そのままその日の夜におふくろに押し倒されたそうだが…ホントなのかね?
アタシの母親像からでは、そんなイメージが全く湧かないのだが…


親父
「さ〜て、とっとと家に入れ! 飯食ってないんだろ?」

沙譚
「ああ、とりあえずシャワー浴びてから食うよ…」

兄貴
「なら準備しといてやるから、さっさと入って来い!」


アタシは背中を強めに押される。
兄貴は兄貴でアタシの事気遣ってくれてんだな…
アタシはやっぱまだまだ子供らしい…

その日、アタシは何故だかぐっすり眠れる。
そして次の日の朝は、想像以上に頭がスッキリしていた…



………………………



沙譚
「…って、この時間じゃ流石に光里たちもいないか」


アタシはいつも以上に早起きしてしまい、そのまま登校していた。
そして大体光里たちが通るであろう場所を、アタシはそのままスルーして学校に向かったのだ。
この時間じゃ殆ど誰も登校してねぇな…
アタシが本来投稿してる時間はギリギリだったからな…その方が逆に人が少ないから良かったんだが。



………………………



悠和
「あ…」

沙譚
「ん? アンタ、確か美代だっけ?」
「早いんだな、まさか今日も…何かあるのか?」


アタシがそう聞くと、美代はいえ…と口ごもり、一礼だけして校舎に入って行った。
何だ…? 妙な態度だな…
昨日といい今日といい、魔更の態度と何か関係があるのか?
とはいえ、魔更はあまり関わってほしくなさそうだった。
美代もそんな感じだな、拒絶とまでは言わないが、出来ればそっとしておいてほしい…って所か。


沙譚
「はっ、何だかアタシらしくないね…他人に気をかけるとは」


元々アタシは人と関わるのは極力避けてた。
基本的に関わっても良い事は少ないし、アタシには夢があるから余計な時間は割けない。
光里の事は、今思えば助けて良かったと思ってるが、当時は余計な事をしたモンだと思った。
今やアタシの唯一の友人だし、不思議と光里とは気が合う所もあったからな…



「ん? 赤城か、今日は早いな関心関心♪」

沙譚
「ちっ、雪花かよ…もう担任じゃねぇんだから、一々世話を焼くなよ?」


アタシに声をかけたのは元担任の雪花 葉竹(せっか はちく)だった。
今は確か、魔更のクラスを担当してたっけか。
そういや、あれからあんまり顔を合わせる事は無かったな…
まぁ、そんなこんなで久し振りに会った雪花は、やけに嬉しそうに笑っていた。


雪花
「お前にしては珍しいからな! 去年は大抵遅く登校して来てたし」

沙譚
「はっ、早く来た所で面倒が増えるからだよ…」

雪花
「って事は、今は面倒じゃ無くなったのか?」


アタシは固まる。
まぁ面倒は面倒だが、実際にはどう思ってるんだろうか?
自分の事なのに、それがよく解らない。
そう思うと、アタシは随分変わってしまったのかもしれないと思う…


雪花
「新央とよくつるむ様になってからは、お前も笑う様になったからな…」
「最近は魔更とも仲良くなったみたいだし、良い方向に成長してると俺は思うぞ?」

沙譚
「よせよ、柄じゃない…アタシはどっちかっていうと不良なんだしさ」


もっとも、別段素行が悪いわけじゃないがね。
授業は全部受けてるし、テストも落とした事は1度も無い。
ただアタシはこの性格だから、敵を作りやすい。
喧嘩っ早いのもあるし、何より男勝りだからな。


雪花
「それでも、お前は理由無く誰かに暴力を振るったりはしないだろ?」
「俺にとっちゃ、お前も心配の種だったからな…」
「特に、新央と一緒に包帯まみれで登校して来た時は、心臓が止まるかと思ったよ…」
「魔更もその日は怪我だらけで登校してたし、間違いなく関わったのが明白だったからな」


ちっ、あの時の事か…ホントはバックレても良かったんだけどな…
光里に余計な心配させたくなかったし、無理して出たのが災いしたか…
アタシはその時の事を思い出して頭を抱えた。


雪花
「まぁ、今は問題も無さそうで本当に安心してるよ」
「お前も自分の夢を追いかけるみたいだし、これで俺の心配は魔更だけだ」

沙譚
「…魔更の奴、何かあったのか?」

雪花
「ん? ああいや、進路の事でな…あいつ未だに明確なビジョンが見えてないみたいだからな」


何だ進路の話か…それならアタシがどうこう言う必要は無い。
ただ、魔更の態度は気になると言えば気になる。
美代の態度も関係している臭いし、なーんか秘密がある気はするがな…


雪花
「…もしかしてお前、魔更に気があるのか?」

沙譚
「張っ倒すぞ…!? どこをどう見たらそう見える?」


アタシが睨んで言うと、雪花はわははっと笑う。
やれやれ、コイツはホントに世話焼きだな…ムカつく位に。
これで悪い奴じゃないんだから、あんまり関わりたくないんだ…


雪花
「まぁ、青春出来るのは後少しだからな…今だけでも恋位してみたらどうだ?」

沙譚
「どっちにしても魔更はねぇな…光里でさえ玉砕してるってのに」

雪花
「何ぃ? 新央の奴が玉砕だと!?」
「魔更の奴…って事は本当に苧環の事を…?」


雪花はそのまま、うーむとひとり唸っていた。
アタシはため息を吐いてさっさと校舎に入る。
結局変に時間かけちまったな…もう結構な人数が登校して来てる。
光里たちに会う前にとっとと教室に入らねぇとな…

その後、アタシは特に面白くもない授業の事を考えて少し憂鬱になる。
きっと、また光里が昼に突撃して来るのだろう…
その時は、魔更や美代も一緒なんだろうな。
アタシは不思議とそれを考えたら、憂鬱さが和らいだ気がした。
そして改めてアタシは変わったのだと認識する。
アタシはおふくろを越えた先で夢を追う。
その先には、きっとアタシにも体験した事の無い風が待っているのだと想像する…

アタシはそれを想像して心が踊るのを感じる。
ああ…今夜は、特に心地良く走れそうだな…










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第2話 『おふくろの風、沙譚の夢』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/01(水) 18:55 )