とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない - 第4章 『新たなる再会』
第1話

「俺にはまだ、帰る所があるんだ…こんなに嬉しい事は無い」

夏翔麗愛
「お父さんはあっちー!」


「…で、さっきまでの事は無かった事に、と」


結局、気が付いたら俺たちはまた遊園地にいた。
どうやら、混沌世界の事件(?)は現実的には無かった事にされ、俺たちは再び現実の時空に戻った様だ…


白那
「…成る程ね、あれが混沌の世界か」


「まぁ、終わってみればこんなモンか…ある意味、拍子抜けだな」


白那さんと藍は平然と飲み物を飲んでいた。
俺たちは売店で飲み物を買って休んでいた所から再開だ。
だが、それなりに疲れは感じており、やはりちゃんとあの混沌を経験したのだと、体は感じている。

とりあえず、俺もコーラを飲んで一息つく事にした…コップの冷たさも問題無いな。



「やれやれ、ホントに突発イベントみたいな混沌だったな…」


「…そうね、でも思ったよりも面白かったわ」
「…プロレスなんて、初めて見たから」


棗ちゃんは、そう言ってメロンソーダを飲んだ。
そうか、棗ちゃんがそう言ってくれたなら、やっぱりあの興業は大成功だったんだな。
ガオガエンさんたちも満足そうだったし、また縁があったら、今度は観客としてじっくり応援したい所だ。

その後、俺たちは夕方までひとしきり遊び、またいつかここに来ようと約束した後、楽しく帰路に着いた。



………………………




「…という事があったんじゃよ」

光里
「へぇースゲー!」
「って、日曜日に遊園地かぁ…私もしばらく行ってないなぁ〜」


俺は翌日、朝の登校時に昨日の事を話していた。
もちろん、混沌世界の事は伏せてある。
まぁ、光里ちゃんが聞いたら面白がりそうではあるけど…


悠和
「私は初めてでしたし、とても新鮮でした♪」


「そっか、それなら企画した甲斐があったよ♪」

光里
「良いな〜私も仕事無ければ行きたかったな…」


光里ちゃんは本当に残念そうに項垂れていた。
まぁ、アレは俺たち以外の人間お断りの企画だったのは内緒だが。
悠和ちゃんも流石に苦笑している。

つーか、もしあの場に光里ちゃんがいたら、一緒に巻き込まれてたのだろうか?
その辺の謎も、未だによく解らないんだよな〜

もしかしたら、誰かの選択で選ばれてたりするんだったら、ちょっと怖いかもしれない…


光里
「弟も、たまには遊びに行きたいと思ってるんだろうけどなぁ…」


「そういや、弟君は一緒に住んでるんだよな?」

光里
「うん、元気に小学生やってるよ♪」
「まぁ、貧乏生活にそろそろ愚痴が多くなってきたけど…」


光里ちゃんは苦笑して言っていた。
とはいえ、今年光里ちゃんは就職活動だし、勇気さんの所ならそんなに問題は無さそうだけど…

勇気さんも光里ちゃんの事は気に入ってるみたいだし、姉さんも評価はしていたからな。



「就職活動の方はどう? 上手く社員になれそう?」

光里
「うん、元々店長には目をかけられてたし、ちゃんと研修終わったら正社員になれると思う」


そうか、そりゃ重畳。
俺はとりあえず現状維持だし、まぁ気楽なもんだな。
悠和ちゃんはそのまま進学だろうし、その後はどうするつもりなのか…?

よく考えたら、何だかんだでもう夏か…
時間はどんどん進んで行くんだな…
俺がそんな風に感慨深く思っていると、突然光里ちゃんは前方で誰かを発見し、パァと笑顔を見せてそっちに走り始めた。


光里
「あ、数少ない友達発見! おーい、サーたん!!」


サーたん…サータン…サタン…サタン!?
何だか危険な香りのする名前の人だが…一体何者だろうか?
同じ学校なのは後ろ姿を見て解るが、醸し出してる雰囲気が半端じゃない。
あからさまに近付きがたい雰囲気で、とても人畜無害な光里ちゃんの友達とは思えんが。


サータン
「…コノヤロウ、人前でその妙ちくりんなあだ名は止めろってんだろーがぁ!?」


うわ、思いっきり怒鳴られてるよ…
悠和ちゃんがドン引きしてるし。
こりゃ相当なじゃじゃ馬だな…

どう見てもアレは不良の反応であり、およそ俺たちパンピーとは属性が違うのだろうと俺は確信していた。
しかし、光里ちゃんはお構い無く極めてフレンドリーにこう言う。


光里
「え〜? だって沙譚(さたん)って、悪魔みたいで可愛くないじゃなーい!」

咲譚
「黙れ! ならアタシの事は名字で呼べよ!?」


長い髪を震わせ、沙譚さんとやらは怒鳴り散らす。
とりあえず、光里ちゃんとはどんな経緯で知り合ったのか?
このふたりにそんな接点があったとは思えんが、俺には全く解らんな。



(あれ? でも、何かこの娘どこかで見た事あるような…)


何故だか解らないが、記憶のどこかに引っ掛かっている様だった。まぁ、とりあえず今はどうでも良いか。
と、俺が思っていると案の定向こうから…


沙譚
「あん? 魔更かよ…そういや、去年から光里とよく一緒にいたっけな」
「ちっ、今日はたまに早起きしたのがマズッたか…」


沙譚さんは俺の事を知っている様だった。
あれ? 去年からって事はもしかして…



「去年同じクラス?」

沙譚
「…そうだよ、お前は誰にも関心が無いイジメられっ子だったな!」


ああ…やっぱりそうだったのか。
まぁ、そりゃ俺が覚えてるわけ無ぇわな…あのやさぐれ時代だと。
光里ちゃんはそんなやり取りを見て空笑いしていた。


光里
「あ、はは…一応、改めて紹介しようか?」
「この娘は私の『数少ない』友達の『赤城 沙譚』(あかぎ さたん)ちゃん」
「去年同じクラスだったんだけど、よく考えたらサーたんと聖君、ふたり共クラスに馴染もうとしないから、接点があるはずなんかなかったよ…」
「…あの時以外は」


ん? 何か光里ちゃんの顔が曇ったな。
何か嫌な思い出でも思い出したのか?
…って、あん時の俺に関わったらどんな目に遭うのかは、想像に難くない、か…

俺は思い出して吐き気がしてくる。
あの時の俺は誰の言葉も聞かず、差し伸べてくれる手も全て振り払っていた。
その結果、俺に関わって姿を見なくなった学生も何人かいる。
俺は、その人たちにもいつか謝らなければならないだろう…
まぁ、とりあえず赤城さんね…今度は忘れない様にしようか。


沙譚
「ちっ、さっさと行くよ…時間が惜しい」

悠和
「そうですね、グズグズしてるとチャイムがなってしまいます…」


俺たちは頷き、早足で歩き始めた。
赤城さんは先頭を歩き、鞄を肩に担いでドカドカと歩く。
典型的な不良だな…スケ番と言われても違和感無い。
とはいえ進級は出来てるんだし、意外に何とかなってるのか?



「ちなみに赤城さんって、進学するの?」

沙譚
「あん? まぁ、進学っちゃあ進学かな…」
「アタシはプロレーサー志望だから、卒業したら養成学校に行くつもりだ」

悠和
「プロレーサー…車ですか?」

光里
「ううん、バイクなんだって! 凄いよね、モータースポーツとか♪」


俺はヒジョーに感心する。
想像以上に、赤城さんはちゃんと将来を考えてたんだな…
よくあるヤンキーとかは、暴走族とかで学生終わらせるのも多いらしいし、こういった明確な夢は案外眩しく映る。



「ちなみに、赤城さん暴走族とかやってた?」

沙譚
「舐めんな、アタシをあんなのと同列にするな」
「アタシは初めからプロ志望だ、ただの趣味やツッパリで走ってる奴等とは違うんだよ」


成る程、プライドは高そうだ。
でもまぁ、レーサーみたいに秒単位を競う様な仕事はその位の方が良いのかもな…

しかし、そうなると何故この人はこんなにも態度がアレなのか…?
天然で不良気質なら相当な気もするな…
そんな事を考えている俺を見て、赤城さんは何故か舌打ちをした。


沙譚
「…ちっ、随分マトモになったモンだね」


「ん? 何が…って、俺の事か」


俺は言いかけて、すぐに察する。
元クラスメートなら、俺の印象は以前とは真逆に写るわな…
今の俺は、良くも悪くも去年とはキャラが違う。
事情を知らないフツーの人間が見たら、仕方の無い所か。


沙譚
「テメェは本当に魔更か? アタシには別人に思えるな…」


「俺は俺だよ、むしろコレが本当の俺」
「去年の俺は、ただやさぐれてて無能だっただけだ…」


俺が軽く言ってやると、赤城さんはまた舌打ちし、ズカズカ前を進む。
ビミョ〜に気に入られてないのかどうなのか、何とも言えん所だな…
とりあえず、もう学校はすぐそこ…会話はここまでだな。



………………………



そして昼休み。
俺はいつもの様に、悠和ちゃんと光里ちゃんで屋上に向かっていたのだが…


沙譚
「…何でアタシを誘う?」

光里
「え〜? 折角なんだし一緒に食べようよ〜!」
「今まで1度も来てくれなかったじゃ〜ん!」


光里ちゃんは、途中で運良く(?)出会った赤城さんを、ここぞとばかりに誘っていた。
どうやら過去にも何度も誘ってはいた様だが、赤城さんは頑なに拒んでいた様だ。
今回も、露骨に嫌そうな顔で断ろうとしているみたいだが…


沙譚
「アタシはひとりで食う、アンタ等はアンタ等で仲良くやれよ」

光里
「だーかーらー! サーたんも一緒に来るの!!」
「一匹狼はもう時代遅れ! 今は友達とのランチタイムがトレンドなんだよ!?」


ホントにトレンドかどうかは俺には判断しかねるが…
とりあえず、光里ちゃんは無理矢理にでも引っ張ろうとするが、赤城さんはため息を吐いてそれを振り払った。

凄い…光里ちゃんの3倍はパワーゲインがある!
ってか、何気に赤城さん力あるな…光里ちゃんもそんなにひ弱というわけでもなかろうに。

しかし、それでも尚食らい付こうとする光里ちゃんに嫌気が差したのか、彼女は深い深いため息を吐いて遂に折れた。


沙譚
「もういい…一緒に食えば良いんだろ」

光里
「やった〜! フラグ成立〜♪」


何か今不穏なワードが聞こえたぞ?
フラグって誰に対するフラグだよ…?
とりあえず、赤城さんは渋々承諾し、俺たちは4人で屋上に向かう事になった。



………………………



光里
「わ、サーたんそれ自分で作ってるの?」

沙譚
「違うよ、アニキが作ってんだ…昔っから所帯染みててね」


「へぇ、凄いな何気に…栄養とかちゃんと考えられてるな」


赤城さんの弁当は、まさに栄養機能食品と言える様な弁当だった。
バランスも考えられており、運動する事を前提に考えられてるかの様なおかず達…
よっぽどそのお兄さんは、赤城さんの事を考えてるんだろうな。


悠和
「確かに凄いですね、見た目からしてかなりの腕だと思います」

沙譚
「はん…食えるなら文句は言わないさ、それでたまたま味が良いなら儲け物ってだけで」


赤城さんはそう言い、特に感情も込めずに弁当を食い始めた。
俺たちもすぐに食事を始める。


光里
「良いなぁ…私もちゃんと練習しないと」


「あ、料理学んでるの?」

光里
「うん、一応社員で働くなら必須になるらしいし、最低限のスキルは店長から少しづつ教わってるの♪」


光里ちゃんは、笑顔でその時の事を話してくれた。
勇気さんなら教え方もプロだし、光里ちゃんもすぐに上達するだろう。
あの姉さんの腕も勇気さん譲りだし、光里ちゃんは何だで姉さんに近付いているんだろうな…


沙譚
「結局、あのコスプレ喫茶に就職するのか?」

光里
「うん! やっぱり夢だったし、私には今の所コスプレしかないから、行ける所まで行きたいの」


光里ちゃんも真っ直ぐに未来を見てる…
だから努力を惜しまないし、その為の情熱も人以上だ。
姉さんだって、こすぷれ〜んを立ち上げた時は情熱に溢れていたんだろうしな…


悠和
「先輩たちは、明確に卒業後のビジョンを捉えているんですね…」

沙譚
「アンタは新入生だろ? だったら無理に今から考える事は無いだろ」

光里
「そうそう! 悠和ちゃんは学校生活をエンジョイしなきゃ勿体無いよ?」


悠和ちゃんは、はい…と少し控え目に答えていた。
内心は結構悩んでるんだろうな。
悠和ちゃん、この世界に来てから悩む事が多くなったみたいだし…

混沌の事もある…俺の近い位置にいるならそれだけ巻き込まれる危険性も高いだろう。



「まぁ、悠和ちゃんなら大丈夫だろ」
「人当たりも良いし、成績も悪くない」
「俺たちが卒業しても、きっとその時はもっとスゴくなってるよ」

悠和
「は、はいっ! 聖先輩の為にも、頑張ります!」

光里
「ふふ、悠和ちゃん聖君の事となると張り切るよね〜♪」


言われて、悠和ちゃんは顔を赤くしてモジモジしてしまう。
何か久し振りに見た気がするな。
まぁ、俺の事が好きなのは誰から見ても明白だろうし、勘違い野郎がいなければ良いんだが…


沙譚
「…お前ら、付き合ってんの?」


「んなわきゃない…全校男子生徒と喧嘩する勇気は俺には無いよ」


もちろん、理由があるなら迷わずやってやるがな。
とりあえず、高校生の内に俺は誰かと付き合う気は無い。
恋愛シミュレーションで言うなら、俺は攻略不可能のモブ生徒だからな。
どれだけ愛情注がれても、バッドエンド確定だ。


沙譚
「…そういや、お前光里の事振ったらしいが、別に好きな奴がいるからなのか?」


「…そうだよ、まぁ卒業するまでは仲を進展させる気は無いがな」


俺が淡泊に言うと、赤城さんはやや睨んでくる。
っていうか、光里ちゃん赤城さんに告白の事話してたのか…
それだけ信頼してるんだな、だから赤城さんは気にしてるんだ。
成る程…良い人なんだな、赤城さんは。


沙譚
「何だよ、急に笑いやがって…?」


「べっつに…赤城さんの事、少し好きになれそうだと思ったからだよ」


俺はタコさんウインナーを頬張ってそう言う。
すると赤城さんは、はぁ!?と言って狼狽えていた。
やれやれ、別に深い意味は無いんだがな…
俺が下手に言うとフラグが立ちますか、そうですか。


光里
「あははっ、良かったねサーたん♪」

悠和
「ふふ、聖先輩は優しい方ですから♪」

沙譚
「…アンタ等、いっつもこんな調子なのか? おかしいと思わないのか?」


赤城さんはよっぽどこの状況が納得出来ないらしい。
まぁ、ある意味異常かもな…俺たちは平常運転だが。
光里ちゃんも慣れたもんだ…俺の事を好きでいてくれるなら、ある意味当然だろうが。


光里
「聖君は、いつも大真面目に変な事言うからね〜」

悠和
「そうですね、唐突に理解不能の言葉が出る時ありますし」


「オーケーふたり共、まずはネタと言うのを理解しようか!」


俺は色々間違った方向に突入しようとしている、この状況を止めにかかった。
赤城さんはポカンと呆れて弁当を食っている。
やれやれ、まさかここでネタの事を弄られるとは。
日頃の行いが祟ったか!



………………………



結局、そのまま色々話ながらも楽しく昼食は終わった。
そして、俺たちはそれぞれ別れ、自分の教室に戻って行く。
ちなみに赤城さんは2組だそうで、放課後は基本的にすぐに帰ってバイクを走らせているんだそうだ。



「あーあ、月曜は流石に頭が働かねぇな…」


俺はそんな事を呟きながらチャイムの音を聴いた。
さて、後2限…しっかりと受けますか。
次は担任の授業だ、とりあえず数学っと…


担任
「よーし、授業始めるぞー?と、その前にまずは魔更!」


「あん? 何で俺を名指し?」


担任は、教室に入っていきなり俺を指名する。
一体何だと言うのか? 俺を公開処刑にでもしようと言うのか?
少なくとも、心当たりは無いのだが…



(いや、待てよ!?)


俺はその時ピキーンと来た。
考えてもみれば、今の今まで俺は悠和ちゃんと仲良くしすぎていたのだ。
だとすれば、勘違い野郎共がこぞって俺の命を狙う可能性はヒジョーに高い!

それはこの担任とて、例外では無かったのだ!


担任
「お前、前の中間で成績100位以内に入ったからな、とりあえず誉めてやる、良くやった!」
「何気にこのクラスでは貴重だぞ? 上位陣はほとんど1、2組だからな〜」


…と、極めてフツーの事だった。
いやまぁ、当り前っちゃあ当たり前か。
流石にカップル多めのこの学校において、わざわざ俺の命を狙うバカはそうそういないというこった…

しかし、マジか…俺が100位以内て?
俺はフツーに授業受けて、フツーに宿題やって、フツーに予習復習してるだけなのに…
皆、踏み込みが足りてないんじゃないのか?
そんなんだから、エリート兵ごときに○ァンネル切り払われるんだよ!


担任
「とりあえず、その調子で期末も頑張れよ? よし、授業始めるぞ!!」

担任はそう言って上機嫌だった。
やれやれ…とりあえず目立ってしまったな。
俺は進学なんて考えてないから、成績表とか見てなかったんだが、まさかランカー入りとは…

これで変なフラグ立ってなきゃ良いが。
こういうイベントで急にときめき度が上昇するのは基本だからな…



………………………



とまぁ、特に何のイベントも無くフツーに放課後…
光里ちゃんも、今年は就職活動でほとんど一緒には帰れなくなったんだよな…
となると、必然的に悠和ちゃんと一緒に帰るんだが…


万丁
「あ、魔更先輩じゃねぇすか! ウチのクラスに何か用すか?」


「何だ、前と違ってちゃんと礼儀が解ってるじゃないか」


俺がそう笑ってツッコンでやると、万丁君は、う…と顔をしかめて申し訳なさそうな顔をした。
やれやれ、元は真面目な生徒会長が今や高校生デビューでコレとはね…
何やら野望があるらしいが、まぁその辺は事情もあるだろうし、あえて聞かねぇけど。


万丁
「前はスンマセンでした、勘違いしちまって…」
「まさか、美代さんの想い人とは露知らず、失礼を許してください!!」


万丁君は大袈裟に頭を下げ、自慢のリーゼントが揺れる。
やれやれ、やっぱり悠和ちゃんに何かしら惚れてるのか…露骨に意識してるみたいだな?



「で、悠和ちゃんは?」

悠和
「あ、聖先輩♪ ちょっと待っててください、今日は掃除当番なので」


俺は成る程、と理解して待つ事にした。
万丁君も俺に一礼し、掃除を始める。
何だ、万丁君も掃除当番なのか。
俺はとりあえず、そのまま教室の外から掃除風景を見守る事にした。


悠和
「万丁君、そっちの塵取りお願い」

万丁
「おうよ! 任しとけ!!」


うわ、ホントに真面目だな。
口調はヤンキーなのに、行動は完全に優等生。
ここまでギャップのあるヤンキーは類い稀だろうな…
本当に、何で急にヤンキーになってしまったのか…?



………………………



悠和
「お待たせしました聖先輩♪」


「ん、じゃあ帰るか」


俺たちは笑いあって帰路に着く。
万丁君は少し名残惜しそうな顔をしたものの、特に俺たちに関わる事は無かった。
さしづめ弁えてるって所か…赤城さんもそうだったけど、俺と悠和ちゃんは端から見たら恋人にしか見えないらしい。
実際にはそんなんじゃないんだが、こう毎日一緒だと、確かに勘違いされるのはやはり必然。

もう少し、考えた方が良いのかもしれない…



………………………




「…悠和ちゃん、変な噂とかされてない?」

悠和
「え? 何の…でしょうか?」


俺は帰り道の途中、思いきって悠和ちゃんに聞いてみた。
が、当の悠和ちゃんは良く解っていない様だ。
いやまぁ、気にしてないならそれで良いんだけど…



「その…俺と恋人同士なんじゃないか?とか」

悠和
「あ…そ、そうですね…」
「その、私はそうじゃない…とは、一応言ってるんですが」
「どうも、あまり信じてはもらえてない様で…」


まぁ、仕方無いか…こんな風に親しくしてちゃな。
とはいえ、俺にとっては悠和ちゃんは家族…妹みたいなもんだ。
それに対して、他の目はそう見てくれない。
事情を知らない連中は、そんな深い絆の事は見えていないのだから…



「…やっぱり、あまり大っぴらに一緒にはいない方が良いのかもな」

悠和
「…聖様は、お嫌ですか?」


「嫌なわけない…でも、これから悠和ちゃんは3年間も学生を続けなきゃならないのに、下手に勘違いされてたら…」


俺はあくまで悠和ちゃんの事を考えて発言した。
だけど、悠和ちゃんにとっては、少し辛い言葉だったのかもしれない。


悠和
「…勘違い、ですか」
「私が聖様を愛しているのは、真実なのに…」


そう、そうなのだ…
悠和ちゃんにとっては、それは紛れもない真実。
俺も悠和ちゃんの事は家族として好きだし、一緒にいたいのは本音だ。
だけど、他の目はそれを勘違いしてしまう。
そして、悠和ちゃんはそれでも俺の事を愛してくれている。

詰まる所、悪いのは全部俺だ。



「ゴメンな、俺がこんな選択を選んだから、悠和ちゃんは逆に苦しんでしまってる…」

悠和
「あ、そ、そんな事…! 私は、その…あ、うう…!」


悠和ちゃんはあからさまに狼狽えていた。
気持ちは解ってる、悠和ちゃんは本当は素直でいたいのだ。
でも、俺が皆を等しく愛すると決めたから、悠和ちゃんは逆に苦しんでいる。
悠和ちゃんだって、本当は俺を独り占めしたいはずなのに…
でも俺はそれを許さない、俺はあくまで皆を愛しているのだから。

だからこそ、俺は悪いと思いつつもこう決断した。



「…悠和ちゃん、悪いけど少し距離を置こうか」

悠和
「…は、はい」


悠和ちゃんも理由は解ってる。
だからこそ悩んでもいるのだ…今なら、悠和ちゃんは自分が1番俺に近付いているのだろうから。

故に、同時に葛藤もしてる…そんな反則みたいな近付き方、他の家族に対して卑怯なのだとも理解しているはずだから。



………………………



それからはあまり会話も無く、俺たちは、ややフツーに家へと辿り着いた。
悠和ちゃんはそのまま一礼して城に。
俺は笑って手を振り、何も言わずに家へ入った。



「…ただいま」

愛呂恵
「…聖様、何かお悩み事でも?」


流石は愛呂恵さん、一目で気付かれたか…
とはいえ、俺は苦笑しながらも、大丈夫だと伝える。
愛呂恵さんもそれ以上は深く追求せず、一礼して自分の作業に戻った。

今は、夕飯の支度か…今日も良い匂いがしてる。
俺はとりあえず自室に戻る事にした。
宿題、やらないとな…



………………………




(…絆、か)


俺は考えていた。
俺はあくまで皆を家族として救ったのに、その中で亀裂が生まれてしまっている。
皆、本当はワガママになりたいのだ。
俺というひとりの人間の為に、皆は誰もが1番になりたいと思ってるはず。
いや、まぁ例外はいると思うが、それはそれで!



「とはいえ、俺は考えを変える気は無いからな…」

そう呟きながら、俺は宿題を終えた。
良くも悪くも俺は頑固だ。
これはある意味、勇気さん譲りでもあり、同時に姉さん譲りでもある。

もっと深く言えば、俺の父親もそうだったらしいし…
ただ、結果として俺は皆に不幸を撒きかねないのかもしれない。
俺は、やっぱり死んだら地獄行きだろう。
それだけは、何故か確信出来る気がした。



(もっとも、地獄の裁判官がアルセウスさんだったら、許されそうな気もしてしまうが…)


まぁ、それもその時だ。
俺は基本的に今しか見ない…その内そうは言っていられなくなるのかもしれないが、やはりそれはその時だ。

俺は俺らしくあるしかない…そう、決めてるからな。



「やれやれ…折角成績上位に入れたのに、憂鬱なモンだな」


俺はそう呟き、椅子の背もたれにもたれ掛かりながら、また考える。
そして、俺はある意味追い詰められているのだと理解する事にした。
このまま皆に良い顔をしているだけじゃ、その内取り返しの着かない不和を生み出すのかもしれない…と。



「だったら…この際、俺がしっかり言わなきゃならないわな」


今が、あまり良い状況じゃないのは解ってる。
だけど皆が皆、守連たちみたいに全て察してくれる訳じゃないんだ…
時には、家族に対して厳しい言葉も必要なのかもしれない…



………………………



阿須那
「…何や聖、何かあったんか?」


「まぁ、な…ちょっと、悠和ちゃんとの関係が周りに、な…」


晩御飯の時間、帰って来て食卓に着いた阿須那が、すぐに俺の状態を察してくれた。
やっぱ解るわな…守連や三海も言葉にはしないけど、解ってるみたいだし。


女胤
「…人の目が、気になりますか?」


「…いや、今までは気にならなかったけど」

華澄
「それなら、それで良いと拙者は思いますが…?」


「でも、それはお前たちだからだよ」
「いつも一緒に暮らしてるお前たちだから、そう言ってくれるし、信じられる」
「だからこそ、悩みもしなかったんだが…」


それだけに、この家のメンバーは信頼が厚い。
もちろん、城の家族たちにその資格が無い訳では決して無い。
もし希望があるなら、全員は無理でも、入れ替りで何人かは交代してくれても良いと俺は思ってる。

それ位、俺は皆を大事に思ってるからな…


愛呂恵
「つまり…悠和さんの態度が、やや露骨とでも言うのでしょうか?」
「毎日一緒に登校する以上、彼女との関係は1番人の目につきますからね」


まさに、愛呂恵さんの言う通りだ。
俺と悠和ちゃんは、何も考えずに近付きすぎた。
俺が周りの目を無視して、そうし続けたのが悪かったのだ…
初めからちゃんと注意しておけば、そこまで悠和ちゃんが落ち込む事も無かったはず。


守連
「…でも、悠和ちゃんが聖さんにどれだけ近付いてても、私たちは全然気にしないよ?」


「それも分かってる、だから俺は悩んでるんだ」

女胤
「…誰もが、同じ気持ちでは無いという事ですか」


俺は頷く…まさにそうだ。
やはり、微妙に1部の家族とは信頼感に齟齬がある。
俺に対しての想いも、その欲求も、やはり守連たちの様には割り切れないはず。

ましてや悠和ちゃんは、俺の事を信じて進化までしてくれた程の娘だ。
その想いが相当な物なのは、俺自身がよく解っている。
だけど…彼女の今後も考えると、もしひとりになって正体でもバレてしまったら、その時はどうなる?

その引き金が、俺との関係から家族を疑われたら、俺はどうすれば良い?
そんな、最悪の結末だけは…考えたくも無い。


阿須那
「まぁ、確かに難しい問題やな…ウチ等は気にせぇへんでも、悠和たちはちゃうっちゅう訳か」

華澄
「皆、聖殿が好きなのは同じでござるのに…」

愛呂恵
「ですが、独占欲は誰にしもあるでしょう」
「その想いが強いのであれば、自分こそが聖様の1番に…とは必ず思うはず」


そして、それは愛呂恵さんも例外じゃないんだろう。
恐らく、守連ですら例外じゃない…


三海
「ン〜…ワタシも、聖が1番好き〜♪」


三海は逆に1番解りやすいよな…同時に1番純粋でもある。
三海はなまじ相手の心情が直接理解出来てしまうから、人一倍悩む事もきっとあるはず。
こういう所も、俺はしっかりとケアしていかないといけないのに…



「やっぱり、俺はあえて宣言しようと思う」
「俺は皆が好きであり、決してその内の誰かひとりは選ばないと」

女胤
「…そうですね、その方が良いかもしれません」

華澄
「むぅ…ですが、皆納得するでしょうか?」

阿須那
「そらするやろ…聖は皆にとってある意味、神に等しい存在や」
「あの嫉妬深そうな騰湖でも、それが聖の本音なら従うやろ?」

女胤
「…確かに、聖様がそう仰られるなら」


俺も、とりあえずはそれに期待している。
どっちにしても、コレは早めに伝えた方が良さそうだ。
次の混沌もいつ来るか解らないし、まずは皆の不和を取り除かないと。
いや、不和をとは言えないか…あくまで楔を打つだけだ。
俺は皆が好きで、皆を信頼している。
それに対して、俺は更にその信頼を強くしなきゃならない。
さて、それにはどうすれば良いか…?










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第4章 『新たなる再会』

第1話 『皆の想い、聖の選択』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/01(水) 15:09 )