とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない














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第3章 『混沌だからって、悪意ばかりじゃない』
第2話

「で、さっさと今日の授業も終わったわけですが…」


今は既に6月…いわゆる梅雨時期だな。
なので外は絶賛の雨…俺は何か嫌な予感がするも、今の所違和感は別に無い。
そもそも、どの位の頻度で混沌が発生するかも解らんし、あまり頻繁に来られても、アルセウスさんに負担がかかってしまうだろう。
出来れば、このまま何事も無いのが1番なのだが…



「今時、これはねぇわ…」


そう…俺は放課後の下駄箱で頭を抱えていた。
俺の下駄箱には、もはや化石レベルと思われる程のレア度である、果たし状が入っていたのだ。
心当たりは何ひとつ無いし、どう考えても無視するのが基本だが、下手に刺激しても後々面倒な事になりそうだし、さてどうするかね?


悠和
「聖先輩、どうかしたんですか?」


俺が頭を掻いて考えていると、悠和ちゃんが後からやって来る。
手には以前一緒に買いに行った黒の傘を持っており、ちゃんと使ってくれてる様だ。

俺はため息をひとつ吐き、とりあえず悠和ちゃんにはこう言っておく。



「悠和ちゃん、悪いけど先に帰っててくれるか?」
「ちょっと俺、用事出来ちまったから…」


俺はそう言って靴を履き替え、悠和ちゃんに見られない様に果たし状をポケットに突っ込み、その場から離れた。
とりあえず、現状絶賛雨の中、その上で体育館裏とは面倒すぎる指定だ…
悠和ちゃんは?を浮かべ、目をぱちくりさせながら俺の背中を見送ってくれた。



………………………




「やれやれ、どこのバカだ? わざわざ雨の日に果たし状出すアホは…」


「よく来たな! お前が魔更か!?」


俺が体育館裏に辿り着くと同時、そんな威勢の良い声が聞こえた。
そこには雨だというのに傘も差さず、両腕を組んで俺を睨み付けるリーゼント頭のヤンキーがいる。

服はどう見ても改造しており、見た目はまさに昭和の番長スタイルだ。
うわ、化石だろコレ…? 今時こんなコテコテの奴見た事ねぇよ。
っていうか、ホントに同じ学校か?

つーか、この学校はブレザー指定のはずだが、学ラン来てても問題無いのか…?
いや、よく見たらブレザーの名残がギリギリ残ってるか…?
ありゃ、学ラン風に改造されたブレザーみたいだ。
何つー面倒な事を…


リーゼント
「とりあえず、仲間も連れねぇで来たのは誉めてやる…」
「ここはタイマンだ! ステゴロで勝負しようじゃねぇか!!」


「アホか、帰るわ…天気考えろバカ」


俺はあっさりそう言ってやる。
コイツは多分相当のアホだ。
色々と間違ってるだろ…まず天気を考えろ。

何が楽しくてパンピーの俺が、雨の中泥臭く男と殴り合わねばならんのだ?
可愛い女の子が助けて!とでも言うなら無言で殴り倒してやるが、よりにもよって俺にはメリットが何も無い。
よってやる気は0以下でマイナスに傾いている…むしろさっさと帰りたいんだがな?


リーゼント
「誰がアホだ誰が!? 天気なんぞ知るか!! 俺は今日やると決めていたんだ!!」


「大体俺に理由が無い…基本的に俺は平和に生きたいんだよ」


俺の言葉を聞いてリーゼント男はワナワナと震え、こめかみに血管を血走らせる。
やれやれ短気な奴だ…こちとらやる気が無いと言うのに。


リーゼント
「テメェには売られた喧嘩を買う度胸も無ぇのか!?」


「無い、俺にそんな泥臭いシチュエーションは、全くもって必要無い」
「大体、お前こそ何だ? こんな雨の中呼び付けやがって…」
「シンプルに果たし状と書いて、ここに来いと書くだけでも相当のバカなのに、頭の中身は真性のドアホかっ!!」


俺はそう言って、ポケットから出した果たし状の紙を顔の近くで振る。
そして俺はそれを片手で丸め、リーゼント男に投げ付けてやった。
すると慌ててソイツはそれをキャッチする。


リーゼント
「うおっ!? こらゴミをポイ捨てするな!!」


「ゴミと認めるなよ! 後、無駄に真面目だなオイ!!」


俺はツッコミを入れつつも、呆れてため息を吐く。
そろそろ理由を言ってほしいモンなんだがな…
俺がイラつきながら頭を掻いて目を細めると、リーゼント男は舌打ちしながらこっちにメンチを切る。

だが当然それにビビる俺ではない。
こちとら並の人間に恐怖する程肝は小さくないのだ。


リーゼント
「ちっ、ホントにテメェはこの学校で1番強ぇのか?」


「アホか…そんなの解るわけねぇだろ?」
「大体どこからの情報だ? いつの間に俺が番長ポジになってるんだよ…ただの迷惑行為だぞ」


少なくとも意味も理由も根拠も解らん。
何故俺が学園最強の人物となっているのか…?
この学校でも不良はそれなりにいるし、中には腕自慢の奴もいるだろう。
なのに、何故ソイツ等を差し置いて俺が最強という事になってるのか…?

そういうのはヤンキー漫画でやってくれ…この作品の作風にはまるでマッチしていない。


リーゼント
「モヒカン野郎から聞いたぞ? この学校はテメェがシメてるって!?」


「あんのバカ野郎!! 完全に嫌がらせじゃねぇか!?」
「思いっきり騙されてるよお前! 勘違いだよ、遊ばれてるよ!!」


あのモヒカン、いい加減な事言いやがって! 今度こそ本気でシメとくか?
もう高校3年になって、卒業も考えなければならないというのに、いい加減人様に迷惑をかける様な事は止めろと言うのに…!
リーゼント男もポカンとして?浮かべてるよ…


リーゼント
「何だと…? じゃあ、アレはガセネタだったのか?」


「120%なっ! とりあえず、恨むならモヒカンを恨め」

リーゼント
「ざけやがって!! あのモヒカン野郎、よくも担ぎやがったな!?」


リーゼント男は拳をぷるぷるさせながら、眉間にしわを寄せて怒っていた。
そして雨の中、そのまま一気に走り出す。
中々の健脚だな、見た目以上に体は強そうだ。
身長も180cmはあったし、完全に体育会系か…


悠和
「あれ? 今の万丁(ばんちょう)君じゃ…?」


「あれ、悠和ちゃんどうしてここに?」


気が付くと、傘を差して俺の方に駆け寄って来たのは悠和ちゃんだった。
先に帰る様に言っておいたのに、心配してくれたのかな?
しかし、万丁って…中々挑戦的な名前だな。


悠和
「…聖先輩こそ、どうしてここに? 何か万丁君と話してたみたいですけど…」


「ああ、タチの悪いイタズラだよ…からかわれたんだろ、その万丁君とかが」


俺がそう言うと、悠和ちゃんは?を浮かべる。
とりあえず、俺は彼の事を聞いてみる事にした。



「そういや、何で悠和ちゃんアイツの事知ってたの?」

悠和
「クラスメートですから、一応」


1年だったのかよ!! かなり生意気な奴だったな…
しかし、道理で見た事無い奴だと思ったわ。
あんなに目立つ奴なら、3年で有名になってるはずだからな…


悠和
「結構、凄いんですよ万丁君? 入試の成績第3位らしいですし、中学の時も皆勤賞で生徒会長やってたらしいです」


「インテリだなオイ!! どんだけレベル高ぇヤンキーだよ!?」
「つか、何でヤンキーなんかやってんだ!?」


思わずツッコマずにはいられなかった。
フツー成績優秀の生徒会長があんなヤンキーやらないだろ!?
今時高校生デビューか!? やっぱ出る作品間違えただろ!?


悠和
「詳しくは知らないんですけど、あの格好は高校生になってから始めたらしいですよ?」
「何だか大きな野望があるとかで…」


「野望ねぇ…そんなインテリ生徒会長が何故その道に?」
「っていうか、結構詳しいんだな…もしかして仲良いの?」

悠和
「そうですね…席が隣ですし、よく話しかけられます」


成る程、定番のポジションだな…狙われてるんじゃないのか悠和ちゃん?
何気に全校男子生徒の憧れの的らしいからな〜、悠和ちゃんは。



「やれやれ、さっさと帰るか…」

悠和
「はい、帰りましょう♪」


悠和ちゃんは傘を持ちながら笑顔でそう言う。
本当に嬉しそうだな…悠和ちゃんもすっかり人見知りは減ったみたいだし、学校生活がちゃんと良い方向に働いてるみたいだ。

ちょっと前だったら、もっとモジモジしてたろうに…
とりあえず、俺たちはふたりで仲良く雑談でもしながら、楽しく帰路に着いた。
6月といえば体育祭か…悠和ちゃんには一応手加減する様には言っておくかな。
あんまり目立つと、非人間かと疑われるかもしれんからな…



………………………




「ただいま〜」

悠和
「お邪魔します…」


俺たちは一緒に家に入る。
今日は悠和ちゃんが勉強を見てほしいと言う事で、家に招き入れたのだ。
俺たちは傘立てに傘を立て、そのままリビングに向かう。
すると、俺たちに気付いて丁寧にお辞儀をする、タンクトップ&ジーンズ姿のメイドさんが現れた。


愛呂恵
「お帰りなさいませ聖様…悠和さん、お疲れ様です」


「ただいま愛呂恵さん」

悠和
「どうも、こんにちは…」


悠和ちゃんは笑顔で愛呂恵さんにお辞儀する。
やっぱ、メイド時代の癖なのかな? 愛呂恵さんはかなり格上のメイドだったみたいだし、悠和ちゃんにとっては料理の師匠だからな。



「とりあえず、部屋に行こうか…?」

悠和
「は、はいっ! ど、どうか…お手柔らかに」


悠和ちゃんは、顔を赤らめてモジモジしながらそう言う。
うん、とりあえず勘違いされそうだから、もっとリラックスしよ!?
愛呂恵さんが何気にガン見してるから! 多分冷静に分析してるよ!?


愛呂恵
「それでは、すぐに避妊具の準備を…」


「うん、勘違いだから!! そんな事しないから信じて!?」

悠和
「…わ、私は聖様とでしたら(///∇///)」


悠和ちゃんも、とりあえず冷静になろう!?
これ勉強見るだけだから! 断じてエロゲーみたいにはならないから!!


愛呂恵
「やはり念には念を入れておいた方が良いかと…聖様、コンドームをどうぞ」
「10連発位ならこれで持ちます」


「いや、いりませんって! 信じてくれません!?」

愛呂恵
「もちろん信じてはいます…ですが、万が一もあるでしょう」
「年頃の男女が、雨の中ふたりっきりで帰り、男の部屋で密談…」
「間違いが起こる可能性は高いかと」


真面目に分析される。
愛呂恵さんの場合は本気で言ってるからな…
とりあえず、俺は無言でコンドームを一箱受け取り、頭を抱えて2階に上がった。
悠和ちゃんは完全に赤面して後ろから付いて来る。
俺はすぐに頭を仏陀モードに切り替え、雑念を捨て去った…



………………………




「とりあえず、クッションはこれね…」
「ちょっと狭いけど、そこは我慢してくれ」

悠和
「は、はいっ! こ、ここが憧れの聖様の部屋…!」


悠和ちゃんは嬉しそうに部屋をグルリと見て、それからクッションに座る。
そして鞄から教科書とノートを出した。
俺は悠和ちゃんの向かいに座り、とりあえず今日の宿題を鞄から出す。



「とりあえず、解らない所があったら聞いて」
「俺も自分の宿題進めるけど、遠慮無く言ってくれていいから」

悠和
「は、はいっ…とりあえず、まずは自力で頑張ってみます」


悠和ちゃんは、ことのほか真面目に取り組んでいる。
入試にはちゃんと合格してるんだし、それなりに学力はありそうなんだけど、それでもやっぱり難しい所も多いのかね?
俺は、とりあえずハイペース気味に宿題を進めた。
いつでも悠和ちゃんのフォローが出来る様にしておこう…



………………………



悠和
「あの、聖様…ここなんですけど」


「ん? どれどれ…英語か」


悠和ちゃんは英語の教科書の、ある部分を指差して俺に聞く。
俺はその問題を簡単に解説し、悠和ちゃんに解る様何とか工夫して教えた。
そういえば、何気にこうやって人に勉強教えるとか初めてだな俺…


悠和
「成る程、その文を訳す時はその方が良いんですね…」


「教師によっては解釈が微妙に異なる事もあるから、翻訳の場合は言葉使いとかも意識すると良いよ」


俺のアドバイスで、悠和ちゃんは真面目に取り組む。
うん、やっぱり元々努力家なのだろうし、悠和ちゃんはすぐにでも成長していきそうだ。
さて、俺の方もすぐに終わりそうだし、後は悠和ちゃんのフォローに徹するかな…


コンコン…



「どうぞ〜」

愛呂恵
「お飲み物をお持ちしました」

悠和
「ありがとうございます、愛呂恵さん」


愛呂恵さんはトレーに乗せた飲み物をふたつテーブルに置く。
俺にはコーラ、悠和ちゃんには麦茶だった。


悠和
「あ…覚えててくれたんですか?」

愛呂恵
「当然です…貴女は基本的に麦茶が1番好きでしたから」


成る程、それであえての麦茶だったのか。
しっかし、流石は愛呂恵さんだな…ちゃんと悠和ちゃんの好みも把握して出すんだから。
麦茶なんて、あまり家じゃ出さないし、ストックとかよくあったな…



「んぐっ…そう言えば、三海は?」

愛呂恵
「守連さんと部屋で勉強中です、もうすぐ終わると思いますが、何か伝言でも?」


「いや、気になっただけだから…そっか、ちゃんと勉強してるんだな」


あれから、三海は守連と一緒に白那さんに師事している様だった。
守連も大概スゴいみたいだが、三海は更に別格であり、すぐにでも大学レベルの問題とか解けるレベルになれるらしい。
言葉使いもメキメキ成長してるし、後は思考が大人になっていけば、大分立派に見えるだろうな。


悠和
「三海ちゃん、頑張ってるんですね」


「ああ、もう見違える位物を覚え始めたからな」
「子供っぽい所は変わってないけど、凄い成長力で理解力が桁違いだ…」

愛呂恵
「それでは、私はこれで…悠和さん、くれぐれも避妊具の着用は厳守を」


悠和ちゃんは顔を真っ赤に染めて俯く。
だからしないっての!? 間違いも起こらない!!
てか何で愛呂恵さん、急にこんな風に気にし始めたんだ?
今までだったら特に何も言わずに、むしろどうぞ! みたいな感じだったのに。

愛呂恵さんも思う所があるのかな?
やっぱり身近な家族になったんだし、愛呂恵さんにも心境の変化はあるのかもしれない。
そういう所も、俺はキッチリ見てあげないといけないのかも…


悠和
「…聖様、私でしたら、いつでも覚悟は出来てますんでっ」


「よし、落ち着こうか…今日は勉強だからね!?」
「そっち方面は一切期待しなくて良いからね!?」


俺は強めに言葉を放ち、改めて勉強を見てあげる。
悠和ちゃんは時折モジモジしながらも、頑張って勉強に集中した。
時間にして約2時間程、終わる頃にはもう日が沈みかけている位だ。



………………………



悠和
「えっと…これは」

愛呂恵
「………」


私は聖様との勉強の後、愛呂恵さんに直接料理を教わっていた。
あれから自分で色々作ってはいたものの、どうしても納得いかない部分があったので、直接愛呂恵さんに教えてもらいたかったのだ。


悠和
「赤5・黒1・白4…ですか?」

愛呂恵
「違います、赤5・黒2・白3ですよ」
「惜しいですが、まだ完璧には当てられませんね…」


私は答えを聞いて項垂れる。
今回私が教わっているのは、スパイスの配分。
とりあえず愛呂恵さんが配合したスパイスの比率を当ててみなさいと言われたので、挑戦してみたのだけど…

その内容は、テーブルに並べられている5色あるスパイスの中から、どれをどの比率で使っているか…という問題。
事前に一口だけ味見は許されており、私は5色全てを味見したのだけれど…


悠和
(ペッパー系の味の方が強かったの…? もっと甘味があると思ったのに…)


やっぱり、愛呂恵さんの配分を一口で当てるのは難しい。
でも、これは私には良い経験だ。
何としてでも、愛呂恵さんの味を越えられる様に頑張らないと!


愛呂恵
「…そこまで悲観する事はありませんよ?」

悠和
「…え?」


唐突に、愛呂恵さんはそう言葉を放つ。
予想外の所で話しかけられたので、私はかなり戸惑ってしまい、ポカーンとしてしまっていた。

愛呂恵さんはそのまま特に表情も変えず、言葉をこう続ける。


愛呂恵
「このテストは、少し意地悪なスパイスを使っていますので」
「むしろ、この程度の誤差で当てられたのは評価に値します」


私は愛呂恵さんに、そう言われて?を浮かべる。
意地悪なスパイス…?
私が理解出来ずにいると、愛呂恵さんは更に補足してくれる。


愛呂恵
「言うなれば、良く似た味のスパイスで既存の味を再現している配合です」
「熟練の舌を持つ方でも、そうそう解らない配分ですよ?」
「この5種はどれも、混ぜると急に味が変わったかの様に感じるスパイスですので」


そ、そうなんだ…そんなに難しいテストだったなんて。
でも、それならまだマシな結果って事…?


愛呂恵
「とはいえ、これが解らない様であれば、細かい味の変化に対する理解はまだ難しいと言えるでしょう」
「今回は、これらのスパイスを使ってケーキを作りますよ?」

悠和
「えっ!? ケーキにスパイスを…?」


少なくともこれらはほとんど香辛料…それらをケーキにとなると。
私は洋菓子はあまり経験が無いから、ちょっと想像が付かない。


愛呂恵
「スパイスケーキは、この世界においてはアメリカ等で食べられている物です」
「今回はややベターですが、人参を豊富に使ったキャロットケーキにしましょう」


に、人参のスパイスケーキ…そういうのもあるんだ。
でも、これは勉強になる…この機会にケーキも練習しないと!
私は意気込み、愛呂恵さんのケーキ作りを学ぶ。
その手法を全て見逃さない様に、私はしっかりと記憶。

肝心のスパイスも配合から見せてもらった。
そして、愛呂恵さんと一緒に私も追って作っていく…
その出来映えは…



………………………



守連
「わぁ〜ケーキだ〜♪」

三海
「ン〜? あまり甘くない…むしろ辛い」


「へぇーキャロットケーキか、初めて食べるな」


俺たちは、夕飯前に少しだけケーキをいただく事になった。
守連と三海も今日は勉強が終わり、白那さんと一緒にリビングに降りている。


白那
「懐かしいね、愛呂恵が城にいた頃はよく作ってたっけ…」

愛呂恵
「はい、私としても少々久し振りとなりました」

悠和
「そ、そんなに前から作ってたんですか? 私、今日初めて見たんですけど…?」


悠和ちゃんも城で一緒に働いていたのに、作ってたの知らなかったのか?
っていうか実質弟子なのに…まさか秘伝?


白那
「あはは…あれは実質、藍専用だったからね」

愛呂恵
「はい、人参嫌いを克服させるべく編み出しましたので」


「そういや、アイツ野菜の好き嫌い多いよな…」


当時の藍の食事風景が目に浮かぶな…
人参やらピーマンやら残しまくってたんだろうな〜


悠和
「成る程…藍さん専用だったなら、見てなかったのも納得かも」
「担当が違うから、時間が合わなかったのね…」
「でも、それでも1度も見なかったなんて…」


よく作ってたんだから、フツーに考えたら1度は見るわな…
それとも、わざと見せない様にしてたのか?


愛呂恵
「あえて隠してはいました…人参が入っているとバレたら、藍さんが逃げかねなかったので」

白那
「あ、あはは…多分今でも勘違いしたままだと思うよ?」


成る程、材料偽って食わせてたのか。
好き嫌い対策には定石だよな…
結果的に食えてるし、後からバラしても良いはずだが、藍の奴そんなに人参に恨みがあるのか?


悠和
「櫻桃さんも、それが原因でカレー特化になったんですよね…」
「カレーに入ってる野菜なら藍さんでも食べられるから…」

白那
「それに関しては、麻亜守ちゃんも例外じゃなかったからみたいだけど…」


「やれやれ、子供の野菜嫌いはどこでも一緒か…」
「そして何故かカレーでなら食べられるんだから、これも神秘だよな〜」


というか、カレーなら大概何でも合うんだから本当に優れた料理だ。
子供でも食べやすいし、野菜も大量に入れられる。
とりあえず苦手な野菜を克服させるなら、カレーは結構良いよな…


守連
「ん〜美味しい♪ スパイスが丁度良く効いて絶妙〜♪」

三海
「ご馳走さまでした」


おやおや、三海はもう食べ終わったか。
そういえば、同じ子供扱いだが三海は全く好き嫌い無いな…
元々悲惨な食事事情だったから、何でも食べたい性分なんだろうか?
まぁ、家では愛呂恵さんの料理がメインだから、そんなに食べにくい物は出ないだろうけど…


愛呂恵
「やはり、苦手な物でも食べてもらえる料理にするのが、腕の見せ所でしょう」

悠和
「そうですね、そしてそれを為すのも料理次第…」
「うーん…これも勉強です」


悠和ちゃんも、ケーキを食べ比べながら味の違いを確かめていた。
俺たちが食ってるのは愛呂恵さんのケーキだが、悠和ちゃんのはどんなのなんだろ?



「悠和ちゃん、一口貰って良い?」

悠和
「えっ!? あっ…!」


俺は思わず止まるが、既にフォークで一欠片取っていた。
な、何かマズかったのだろうか?


悠和
「か、間接キス…!!」


おっと…定番の恥じらいだな。
俺はあんまり気にしない方だけど、やっぱり女の子的には気にするのか?
まぁ今更だし、俺は気にせずとりあえずケーキを口に入れる事に…
露骨に悠和ちゃんが赤くなってしまったが、まぁ仕方無い。



「うん…悠和ちゃんのもそんなには変わらないな」
「強いて言うなら辛い? 微妙な差だけど…」

悠和
「あう…!」


悠和ちゃんは顔を押さえてモジモジする。
おのれ…可愛いなコヤツ! 思わず抱き締めたくなるが、流石にそれは自重する。
俺は体裁を弁える男なのだ…


愛呂恵
「………」ゴゴゴゴゴゴゴゴ…


ひぃっ!? な、何か愛呂恵さんの視線が怖い!!
無表情だけど、異様なプレッシャー放ってる! 突然何事!?


愛呂恵
「聖様…由々しき問題です」


「な、何が!?」


愛呂恵さんの声はいつになく重圧に満ちていた。
悠和ちゃんもすぐに状況を理解し、思わず後ずさる。
そして、愛呂恵さんは静かにこう言い放った。


愛呂恵
「私は…家族でありながら、まだ1度もキスしていただいておりません!」


「は、はいっ!?」


キ、ス…?
俺は記憶を辿ってみるも…確かに愛呂恵さんとは覚えが無い。
経験上、守連から女胤までキスは遂行済みだが、それ以外では白那さん、櫻桃さん、浮狼さん、後三海とだが…
確かに…間接キス含めて良いなら、この場で未経験なのは…愛呂恵さんだけかっ。


愛呂恵
「聖様…ひとつだけ、我が儘を言ってもよろしいでしょうか?」


「…許すっ!」


思わず反応してしまったが、さて…?
まぁ、キス位なら今更だし。
とはいえ、愛呂恵さん的には見られてても構わないタイプなのだろうか?
白那さんと守連なんてニコニコしてるし。
三海はボーッとしている。
悠和ちゃんは、真っ赤になってモジモジしていた。



「あの…もしかしてこの場で?」

愛呂恵
「ベッドで…と言うのでしたら、むしろ大歓迎ですが?」


「この場でやりましょう! 流石にベッドで理性が持つとは思えん!!」


俺は即決する、今の愛呂恵さんはことのほかテンパっている。
このままふたりきりなったら、そのまま押し倒されかねん…!
俺はとりあえず覚悟を決めた、何…守連たちにもやった事だ…

それに、愛呂恵さんだけ未経験なのは確かにちょっと不公平だし。
俺はとりあえず愛呂恵さんの側に近付き、愛呂恵さんの両肩を押さえる。
愛呂恵さんは一瞬ビクッとなり耳をビンッと立てるが、すぐに力を抜いて俺に体を委ねた。
そして、愛呂恵さんは目を瞑り、顎を突き出す。
俺はその唇にゆっくりと自分の唇を重ねた…


愛呂恵
「……ん」


人参の匂いが凄かった…後スパイス!
あのケーキ食った後だから当然なんだが…
しかし、愛呂恵さんの息づかいは静かだった。
俺は数秒後に唇を離し、愛呂恵さんの顔を見る。
少しだけ、目が潤んでいた…そ、そんなに嬉しかったのだろうか?
こ、こんな愛呂恵さん初めて見たな…


愛呂恵
「…ありがとうございます聖様」
「我が儘を言ってしまい、申し訳ありませんでした」


そう言って愛呂恵さんは一歩退がり、深くお辞儀して謝る。
俺は、そんな愛呂恵さんに対し、頬を掻きながらこう告げた。



「その…こちらこそスミマセン、気が利かなくて」
「まさか、愛呂恵さんがそこまで気にしてたとは…」

愛呂恵
「…私は聖様のメイドです、本来なら我が儘は許されません」
「ですが、時折寂しくはなります…皆さんと、同じでは無いのだと…」


愛呂恵さんは目を潤ませてそう言う。
その姿は、本当に寂しそうだった。
いつもなら、愛呂恵さん自身が置いているであろう距離感。
そんな距離を、愛呂恵さんは自ら寂しいと称したのだ。

俺は考えを改める、愛呂恵さんはメイドでも家族だ。
もっと、距離を近付けても良いのかもしれない。
愛呂恵さんはきっと、自分からは決して言わないし、近付かない。
だから、俺がしっかりと手を差し伸べてあげないと…


白那
「良かったね愛呂恵、聖君に求めてもらえて♪」

愛呂恵
「…はい、安心しました」

悠和
「はぅ…羨ましくない羨ましくない羨ましくない…!」


悠和ちゃんは顔を押さえて悶々としている。
もはや呪詛の様になってるぞ…大丈夫か?
とはいえ、いずれ悠和ちゃんからも何かあるかもしれんな…


守連
「ふふ…愛呂恵さん、とっても嬉しそう♪」

三海
「ン〜愛呂恵さん、嬉しい?」

守連
「うんっ、きっとそうだよ〜♪」


守連はまるで自分の事の様に喜んでいた、三海は?を浮かべるも、少しだけ微笑む。
とりあえず、気持ちだけは伝わったらしい。
やれやれ…とんだイベントだったな。
まさか、愛呂恵さんが寂しさのあまり嫉妬するとは…



(でもまぁ、それだけ愛されてるって事か…)


愛呂恵さんのファーストキスは、人参とスパイスの味…
これも貴重な思い出だな…後で日記に付けておこう。
もうあれから半年…毎日の日記も大分溜まってきた。

混沌世界とか、別時間軸の並行世界とか、妙な事も色々あったけど、俺たちはこうやって幸せに生きてる。
俺はこの生活には満足しているし、尊くも思う。

そして、本当に大事にしようと思った、この幸せな毎日を…










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第2話 『ウサギは寂しいと死んじまうって、有名ドラマで言われてたが…すまん、ありゃ嘘だ』


To be continued…

Yuki ( 2019/04/22(月) 21:58 )