とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第3章 『混沌だからって、悪意ばかりじゃない』
第2話

「で、さっさと今日の授業も終わったわけですが…」


今は既に6月…いわゆる梅雨時期だ。
なので外は絶賛の雨…俺は何か嫌な予感はするも、今の所違和感は無い。
そもそも、どの位の頻度で混沌が発生するかも解らんし、あまり来すぎてもアルセウスさんに負担がかかってしまうだろう。
出来ればこのまま何事も無いのが一番なのだが…



「今時これはねぇわ…」


そう、俺は下駄箱で今時有り得そうにない、果たし状が入っていたのだ。
無視するのが基本だが、下手に刺激しても面倒な事になりそうだし、さてどうするかね?


悠和
「聖先輩、どうかしたんですか?」


俺が頭を掻いて考えていると、悠和ちゃんがやって来る。
手には以前一緒に買いに行った黒の傘を持っており、ちゃんと使ってくれて様だ。



「悠和ちゃん、悪いけど先に帰っててくれる?」
「ちょっと俺、用事出来ちまったから…」


俺はそう言ってその場から離れる。
とりあえず雨の中、体育館裏とは面倒すぎるな…
悠和ちゃんは?を浮かべ、俺の背中を見送っていた。



………………………




「やれやれ、どこのバカだ? わざわざ雨の日に果たし状出す阿呆は…」


「よく来たな! お前が魔更か!?」


俺が体育館裏に辿り着くと同時、そんな威勢の良い声が聞こえる。
そこには雨だというのに傘も差さず、両腕を組んで俺を睨み付けるリーゼント頭のヤンキーがいた。
服は改造しており、見た目はまさに昭和の番長スタイル。
うわ、化石だろこれ…今時こんなコテコテの奴見た事ねぇよ。
っていうか、ホントに同じ学校か?


リーゼント
「とりあえず、仲間も連れねぇで来たのは誉めてやる…」
「ここはタイマンだ! ステゴロで勝負しようじゃねぇか!!」


「アホか、断るわ…天気考えろバカ」


俺はあっさりそう言ってやる。
コイツは多分相当のアホだ。
色々と間違ってる…まず天気を考えろ。
何が楽しくてパンピーの俺が雨の中泥臭く殴り合わねばならんのだ?
可愛い女の子が助けて!とでも言うなら無言で殴り倒してやるが、よりにもよって俺にはメリットが何も無い。
よってやる気は0だ…むしろさっさと帰りたい。


リーゼント
「誰がアホだ誰が!? 天気なんぞ知るか!! 俺は今日やると決めていたんだ!!」


「大体俺には理由が無い…基本的に俺は平和に生きたいんだ」


俺の言葉を聞いてリーゼント男はワナワナと震え、こめかみに血管を血走らせる。
やれやれ短気な奴だ…こちとらやる気が無いと言うのに。


リーゼント
「テメェには売られた喧嘩を買う度胸もねぇのか!?」


「無い、俺にそんな泥臭いシチュエーションは全くもって必要無い」
「大体、お前こそなんだ? こんな雨の中呼びつけやがって…」
「シンプルに果たし状と書いて、ここに来いと書くだけでも相当のバカなのに、頭の中身はアホか!」


俺はそう言って果たし状の紙を振る。
そして俺はそれを片手で丸めてリーゼント男に投げ付けてやった。


リーゼント
「うおっ!? こらゴミをポイ捨てするな!!」


「ゴミと認めるなよ! 後、無駄に真面目だなオイ!!」


俺はツッコミを入れつつも、呆れてため息を吐く。
そろそろ理由を言ってほしいもんなんだがな…


リーゼント
「ちっ、テメェはこの学校で1番強ぇんだろ?」


「アホか…そんなの解るわけねぇだろ」
「大体どこからの情報だ? いつの間に俺が番長ポジになってるんだ…」


少なくとも意味が解らない。何故俺が最強の人物となっているのか…
この学校でも不良はそれなりにいるし、腕自慢の奴もいるだろう。
なのに何故それらを差し置いて俺が最強になってるのか…?


リーゼント
「モヒカン野郎から聞いたぞ? この学校はテメェがシメてるって!」


「あんのバカ野郎!! 完全に嫌がらせじゃねぇか!!」
「思いっきり騙されてるよお前! 勘違いだよ、遊ばれてるよ!!」


あのモヒカン、いい加減な事言いやがって! 今度こそ本気でシメとくか?
いい加減人様に迷惑をかけるのは止めろと言うのに…!
リーゼント男もポカンとして?浮かべてるよ…


リーゼント
「何だと…? じゃあガセネタだったのか?」


「100%なっ! とりあえず恨むならモヒカンを恨め」

リーゼント
「ざけやがって!! あのモヒカン野郎、よくも担ぎやがったな!!」


リーゼント男は拳をぷるぷるさせながら眉間をしわよせて怒っていた。
そして、そのまま一気に走り出す。
中々の健脚だな、見た目以上に体は強そうだ。
身長も180cmはあったし、完全に体育会系か…


悠和
「あれ? 今の万丁(ばんちょう)君じゃ…?」


「あれ、悠和ちゃんどうしてここに?」


気が付くと、傘を差して俺の方に駆け寄って来たのは悠和ちゃんだった。
先に帰る様に言っておいたのに、心配してくれたのかな?
しかし、万丁って…中々挑戦的な名前だな。


悠和
「…聖先輩、どうしてここに? 万丁君と話してたみたいですけど…」


「ああ、ちょっとしたイタズラだよ。からかわれたんだろ、その万丁君とかが」


俺がそう言うと、悠和ちゃんは?を浮かべる。
とりあえず俺は彼の事を聞いてみる事にした。



「そういや、何で悠和ちゃんアイツの事知ってたの?」

悠和
「クラスメートですから、一応」


1年だったのかよ!! かなり生意気な奴だったな…
しかし、道理で見た事無い奴だと思ったわ。
あんなに目立つ奴なら3年で有名になってるはずだからな…


悠和
「結構、凄いんですよ万丁君? 入試の成績第3位らしいですし、中学の時も皆勤賞で生徒会長やってたらしいです」


「インテリだなオイ!! どんだけレベル高ぇヤンキーだよ!?」
「つか、何でヤンキーやってんだ!?」


思わずツッコマずにはいられなかった。
フツー成績優秀の生徒会長があんなヤンキーやらないだろ!!


悠和
「詳しくは知らないんですけど、あの格好は高校生になってから始めたらしいですよ?」
「何だか大きな野望があるとかで…」


「野望ねぇ…インテリ生徒会長が何故その道に?」
「っていうか、結構詳しいんだな…仲良いの?」

悠和
「そうですね…席が隣ですし、よく話しかけられます」


成る程、定番のポジションだな…狙われてるんじゃないのか悠和ちゃん?
何気に全校男子生徒の憧れの的らしいからな悠和ちゃん。



「やれやれ、帰るか…」

悠和
「はい、帰りましょう♪」


悠和ちゃんは笑顔でそう言う。
本当に嬉しそうだな…悠和ちゃんもすっかり人見知りは減ったみたいだし、学校生活がちゃんと良い方向に働いてるみたいだ。
ちょっと前だったら、もっとモジモジしてたろうに…
とりあえず、俺たちはふたりで仲良く雑談でもしながら帰路に着いた。
6月といえば体育祭だ…悠和ちゃんには一応手加減する様には言っておく。
あんまり目立つと非人間かと疑われるかもしれんからな…



………………………




「ただいま〜」

悠和
「お邪魔します…」


俺たちは一緒に家に入る。
今日は悠和ちゃんが勉強を見てほしいと言う事で、家に招き入れたのだ。
俺たちは傘立てに傘を立て、そのままリビングに向かう。
すると、俺たちに気付いて丁寧にお辞儀をするタンクトップ&ジーンズ姿のメイドさんが現れる。


愛呂恵
「お帰りなさいませ聖様…悠和さん、お疲れ様です」


「ただいま愛呂恵さん」

悠和
「どうも、こんにちは…」


悠和ちゃんは笑顔で愛呂恵さんにお辞儀する。
やっぱ、メイド時代の癖なのかな? 愛呂恵さんはかなり格上のメイドだったみたいだし、悠和ちゃんにとっては料理の師匠だからな。



「とりあえず、部屋に行こうか…?」

悠和
「は、はいっ! ど、どうか…お手柔らかに」


悠和ちゃんは、顔を赤らめてモジモジしながらそう言う。
うん、とりあえず勘違いされそうだからもっとリラックスしよ!?
愛呂恵さんが何気にガン見してるから! 多分冷静に分析してるよ!!


愛呂恵
「それでは、すぐに避妊具の準備を…」


「うん、勘違いだから!! そんな事しないから信じて!?」

悠和
「…わ、私は聖様とでしたら(///∇///)」


悠和ちゃんもとりあえず冷静になろう!?
これ勉強見るだけだから! 断じてエロゲーみたいにはならないから!!


愛呂恵
「やはり念には念を入れておいた方が良いかと…聖様、コンドームをどうぞ」
「10連発位ならこれで持ちます」


「いや、いりませんって! 信じてくれません!?」

愛呂恵
「もちろん信じてはいます…ですが、万が一もあります」
「年頃の男女が雨の中ふたりで帰って部屋で密談…」
「間違いが起こる可能性は高いかと」


真面目に分析される。
愛呂恵さんの場合は本気で言ってるからな…
とりあえず俺は無言でコンドームを一箱受け取り、頭を抱えて2階に上がった。
悠和ちゃんは完全に赤面して後ろから付いて来る。
俺はすぐに頭を仏陀モードに切り替え、雑念を捨て去った…



………………………




「とりあえず、クッションはこれね…」
「ちょっと狭いけど我慢してくれ」

悠和
「は、はいっ! こ、ここが憧れの聖様の部屋…!」


悠和ちゃんは嬉しそうに部屋をぐるりと見てクッションに座る。
そして鞄から教科書とノートを出した。
俺は悠和ちゃんの向かいに座り、とりあえず今日の宿題を鞄から出す。



「とりあえず、解らない所があったら聞いて」
「俺も自分の宿題進めるけど、遠慮無く言ってくれていいから」

悠和
「は、はいっ…とりあえず、まずは自力で頑張ってみます」


悠和ちゃんは殊の外真面目に取り組んでいる。
入試にはちゃんと合格してるんだし、それなりに学力はありそうなんだけど、それでもやっぱり難しい所も多いのかな?
俺はとりあえずハイペース気味に宿題を進める。
いつでも悠和ちゃんのフォローが出来る様にしておこう…



………………………



悠和
「あの、聖様…ここなんですけど」


「ん? どれどれ…英語か」


悠和ちゃんは英語の教科書のある部分を指差して俺に聞く。
俺はその問題を簡単に解説し、悠和ちゃんに解る様に何とか工夫して教えた。
そういえば、何気にこうやって人に勉強教えるとか初めてだな俺…


悠和
「成る程、その文を訳す時はその方が良いんですね…」


「教師によっては解釈が微妙に異なる事もあるから、翻訳の場合は言葉使いとかも意識すると良いよ」


俺のアドバイスで、悠和ちゃんは真面目に取り組む。
うん、やっぱり元々努力家なのだろうし、悠和ちゃんはすぐにでも成長していきそうだ。
さて、俺の方もすぐに終わりそうだし、後は悠和ちゃんのフォローに徹するかな…


コンコン…



「どうぞ〜」

愛呂恵
「お飲み物をお持ちしました」

悠和
「ありがとうございます、愛呂恵さん」


愛呂恵さんはトレーに乗せた飲み物をふたつテーブルに置く。
俺にはコーラ、悠和ちゃんには麦茶だった。


悠和
「あ…覚えててくれたんですか?」

愛呂恵
「当然です…貴女は基本的に麦茶が1番好きでしたから」


成る程、それであえての麦茶だったのか。
しっかし、流石は愛呂恵さんだな…ちゃんと悠和ちゃんの好みも把握して出すんだから。
麦茶なんて、あまり家じゃ出さないしストックとかよくあったな…



「んぐっ…そう言えば、三海は?」

愛呂恵
「守連さんと部屋で勉強中です、もうすぐ終わると思いますが、何か伝言でも?」


「いや、気になっただけだから…そっか、ちゃんと勉強してるんだな」


あれから三海は守連と一緒に白那さんに師事している様だった。
守連も大概凄いみたいだが、三海は更に別格ですぐにでも大学レベルの問題とか解けるレベルになれるらしい。
言葉使いもメキメキ成長してるし、後は思考が大人になっていけば立派に見えるだろうな。


悠和
「三海ちゃん、頑張ってるんですね」


「ああ、もう見違える位物を覚え始めたからな」
「子供っぽい所は変わってないけど、凄い成長力で理解力が桁違いだ…」

愛呂恵
「それでは、私はこれで…悠和さん、くれぐれも避妊具の着用は厳守を」


悠和ちゃんは顔を真っ赤に染めて俯く。
だからしないっての! 間違いは起こらない!!
てか何で愛呂恵さん、急にこんな風に気にし始めたんだろ?
今までだったら特に何も言わずに、むしろどうぞ! みたいな感じだったのに。
愛呂恵さんも思う所があるのかな?
やっぱり身近な家族になったんだし、愛呂恵さんにも心境の変化はあるのかもしれない。
そういう所も、俺はキッチリ見てあげないとな…


悠和
「…聖様、私でしたら、いつでも覚悟は出来てますんで…」


「よし、落ち着こうか…今日は勉強だからね!?」
「そっち方面は一切期待しなくて良いからね!?」


俺は強めに言葉を放って勉強を見てあげる。
悠和ちゃんは時折モジモジしながら頑張って勉強をした。



………………………



悠和
「えっと…これは」

愛呂恵
「………」


私は勉強の後、愛呂恵さんに直接料理を教わる事にした。
あれから自分で色々作ってはいたものの、どうしても納得いかない部分があったのだ…


悠和
「赤5・黒1・白4…ですか?」

愛呂恵
「違います、赤5・黒2・白3ですよ」
「惜しいですが、まだ完璧には当てられませんね…」


私は答えを聞いて項垂れる。
今回私が教わっているのはスパイスの配分。
とりあえず愛呂恵さんが配合したスパイスの比率を当ててみなさいと言われたので、挑戦してみたのだけど…

その内容は、テーブルに並べられている5色あるスパイスの中から、どれをどの比率で使っているか…と言う物。
事前に一口だけ味見は許されており、私は5色全てを味見したのだけれど…


悠和
(ペッパー系の味の方が強かったの…? もっと甘味があると思ったのに…)


やっぱり、愛呂恵さんの配分を一口で当てるのは難しい。
でも、これは私には良い経験だ。
何としてでも、愛呂恵さんの味を越えられる様に頑張らないと!


愛呂恵
「…そこまで悲観する事はありませんよ?」

悠和
「…え?」

愛呂恵
「このテストは、少し意地悪なスパイスを使っていますので」
「むしろ、この程度の誤差で当てられたのは評価に値します」


私は愛呂恵さんに、そう言われて?を浮かべる。
意地悪なスパイス…?


愛呂恵
「言うならば、良く似た味のスパイスで既存の味を再現している配合です」
「熟練の舌を持つ方でもそうそうは解らない配分ですよ?」
「この5種はどれも、混ぜると急に味が変わったかの様に感じるスパイスですので」


そ、そうなんだ…そんなに難しいテストだったなんて。
でも、それならまだマシな結果って事…?


愛呂恵
「とはいえ、これが解らない様であれば、細かい味の変化に対する理解は難しいでしょう」
「今回はこれらのスパイスを使ってケーキを作りますよ?」

悠和
「えっ!? ケーキにスパイスを…?」


少なくともこれらはほとんど香辛料…それらをケーキにとなると。
私は洋菓子はあまり経験が無いから、ちょっと想像つかない。


愛呂恵
「スパイスケーキはアメリカ等で食べられている物です」
「今回はややベターですが人参を豊富に使ったキャロットケーキにします」


に、人参のスパイスケーキ…そういうのもあるんだ。
でも、これは勉強になる…この機会にケーキも練習しないと!
私は意気込んで愛呂恵さんのケーキ作りを学ぶ。
その手法を全て見逃さない様に私はしっかり記憶。
肝心のスパイスも配合から見せてもらった。
そして、愛呂恵さんと一緒に私も追って作っていく…
その出来映えは…



………………………



守連
「わぁ〜ケーキだ〜♪」

三海
「ン〜? あまり甘くない…むしろ辛い」


「へぇーキャロットケーキか、初めて食べるな」


俺たちは3時のおやつにケーキをいただく。
守連と三海も休憩で一緒にリビングに来ていた。


白那
「懐かしいね、愛呂恵が城にいた頃はよく作ってたっけ…」

愛呂恵
「はい、私としても少々久し振りとなりました」

悠和
「そ、そんなに作ってたんですか? 私初めて見たんですけど…?」


悠和ちゃんも城で一緒に働いていたのに知らなかったのか?
っていうか実質弟子なのに…秘伝だったのか?


白那
「あはは…あれは実質、藍専用だったからね」

愛呂恵
「はい、人参嫌いを克服させるべく編み出しましたので」


「そういや、アイツ野菜の好き嫌い多いよな…」


当時の藍の食事風景が目に浮かぶな…
人参やらピーマンやら残しまくってたんだろうな〜


悠和
「成る程…藍さん専用だったなら見てなかったのも納得かも」
「担当が違うから、時間が合わなかったのね…」
「でも、それでも1度も見なかったなんて…」


フツーに考えたら1度は見るわな…
それとも、わざと見せない様にしてたのか?


愛呂恵
「あえて隠してはいました…人参が入っているとバレたら藍さんが逃げかねませんので」

白那
「あ、あはは…多分今でも勘違いしたままだと思うよ?」


成る程、材料偽って食わせてたのか。
好き嫌い対策には定石だよな…
結果的に食えてるし、後からバラしても良いはずだが、藍の奴そんなに人参に恨みがあるのか?


悠和
「櫻桃さんもそれが原因でカレー特化になったんですよね…」
「カレーに入ってる野菜なら藍さんでも食べられるから…」

白那
「それに関しては麻亜守ちゃんも例外じゃなかったからみたいだけど…」


「やれやれ、子供の野菜嫌いはどこでも一緒か…」
「そして何故かカレーでなら食べられるから、これも神秘だよな〜」


というか、カレーなら大概何でも合うんだから本当に優れた料理だ。
子供でも食べやすいし、野菜も大量に入れられる。
とりあえず苦手な野菜を克服させるならカレーは結構良いよな…


守連
「ん〜美味しい♪ スパイスが丁度良く効いて絶妙〜♪」

三海
「ご馳走さまでした」


おやおや、三海はもう食べ終わったか。
そういえば、同じ子供扱いだが三海は全く好き嫌い無いな…
元々悲惨な食事事情だったから、何でも食べたい性分なんだろうか?
まぁ、家では愛呂恵さんの料理がメインだからそんなに食べにくい物は出ないだろうけど…


愛呂恵
「やはり、苦手な物でも食べてもらえる料理にするのが腕の見せ所でしょう」

悠和
「そうですね、そしてそれを為すのも料理次第…」
「うーん…これも勉強です」


悠和ちゃんもケーキを食べ比べながら味の違いを確かめていた。
俺たちが食ってるのは愛呂恵さんのケーキだが、悠和ちゃんのはどんなのなんだろ?



「悠和ちゃん、一口貰って良い?」

悠和
「えっ!? あっ…!」


俺は思わず止まるが、既にフォークで一欠片取っていた。
な、何かマズかったのだろうか?


悠和
「か、間接キス…!!」


おっと…定番の恥じらいだな。
俺はあんまり気にしない方だけど、やっぱり女の子的には気にするのか。
まぁ、今更だし俺はとりあえずケーキを口に入れる。
露骨に悠和ちゃんが赤くなってしまったが、まぁ仕方ない。



「うん…悠和ちゃんのもそんなには変わらないな」
「強いて言うなら辛い? 微妙な差だけど…」

悠和
「あう…間接キスしてしまった!」


悠和ちゃんは顔を押さえてモジモジする。
おのれ…可愛いなコヤツ! 思わず抱き締めたくなるが、流石にそれは自重する。
俺は体裁を弁える男なのだ…


愛呂恵
「………」ゴゴゴゴゴゴゴゴ…


ひぃっ!? な、何か愛呂恵さんの視線が怖い!!
無表情だけど異様なプレッシャー放ってる! 一体何事!?


愛呂恵
「聖様…由々しき問題です」


「な、何が!?」


愛呂恵さんの声はいつになく重圧に満ちていた。
悠和ちゃんもすぐに状況を理解して後ずさる。
そして、愛呂恵さんは静かにこう言い放った。


愛呂恵
「私は…家族でありながら、まだ1度もキスしていただいておりません!」


「は、はいっ!?」


キ、ス…?
俺は記憶を辿ってみるも…確かに覚えが無い。
経験上、守連から女胤までキスは遂行済みだが、それ以外では白那さん、櫻桃さん、浮狼さん、後三海とだが…
確かに…間接キス含めて良いならこの場で未経験なのは愛呂恵さんだけかっ。


愛呂恵
「聖様…ひとつだけ、我が儘を言ってもよろしいでしょうか?」


「…許すっ!」


思わず反応してしまったが、さて…?
まぁ、キス位なら今更だし。
とはいえ、愛呂恵さん的には見られてても構わないタイプなのだろうか?
白那さんと守連なんてニコニコしてるし。
三海はボーッとしている。
悠和ちゃんは、真っ赤になってモジモジしていた。



「あの…もしかしてこの場で?」

愛呂恵
「ベッドで、と言うのでしたらむしろ大歓迎です!」


「この場でやりましょう! 流石にベッドで理性が持つとは思えん!!」


俺は即決する、今の愛呂恵さんはことのほかテンパっている。
このままふたりきりなったら押し倒されかねん…!
俺はとりあえず覚悟を決めた、何…守連たちにもやった事だ…
それに愛呂恵さんだけ未経験なのは確かにちょっと不公平だし。
俺はとりあえず愛呂恵さんの側に近づき、愛呂恵さんの両肩を押さえる。
愛呂恵さんは一瞬ビクッとなり耳をビンッと立てるが、すぐに力を抜いて俺に体を委ねた。
そして、愛呂恵さんは目を瞑り、顎を突き出す。
俺はその唇にゆっくりと自分の唇を重ねた…


愛呂恵
「……ん」


人参の匂いが凄かった…後スパイス!
あのケーキ食った後だから当然なんだが…
愛呂恵さんの息づかいは静かだった。
俺は数秒後に唇を離し、愛呂恵さんの顔を見る。
少しだけ、目が潤んでいた…そ、そんなに嬉しかったのだろうか?
こ、こんな愛呂恵さん初めて見たな…


愛呂恵
「…ありがとうございます聖様」
「我が儘を言ってしまい、申し訳ありませんでした」


そう言って愛呂恵さんは一歩退がり、お辞儀して謝る。
俺はそんな愛呂恵さんにこう告げた。



「その…こちらこそスミマセン、気が利かなくて」
「まさか、愛呂恵さんがそこまで気にしてたとは…」

愛呂恵
「…私は聖様のメイドです、本来なら我が儘は許されません」
「ですが、寂しくはなります…皆さんと、同じでないのだと…」


愛呂恵さんは目を潤ませてそう言う
その姿は、本当に寂しそうだった。
いつもなら、愛呂恵さん自身が置いているであろう距離感。
そんな距離を、愛呂恵さんは自ら寂しいと称した。
俺は考えを改める、愛呂恵さんはメイドでも家族だ。
もっと、距離を近付けても良いのかもしれない。
愛呂恵さんはきっと、自分からは決して言わないし、近付かない。
だから、俺がしっかりと手を差し伸べてあげないと…


白那
「良かったね愛呂恵、聖君に求めてもらえて♪」

愛呂恵
「…はい、安心しました」

悠和
「はぅ…羨ましくない羨ましくない羨ましくない…!」


悠和ちゃんは顔を押さえて悶々としていた。
もはや呪詛の様になってるぞ…大丈夫か?


守連
「ふふ…愛呂恵さん、とっても嬉しそう♪」

三海
「ン〜愛呂恵さん、嬉しい?」

守連
「うんっ、きっとそうだよ〜♪」


守連は自分の事の様に喜んでいた、三海は?を浮かべるも、少し微笑む。
とりあえず気持ちは伝わったらしい。
やれやれ…とんだイベントだったな。
まさか愛呂恵さんが嫉妬するとは…



(でもまぁ、それだけ愛されてるって事か…)


愛呂恵さんのファーストキスは、人参とスパイスの味…
これも貴重な思い出だな…後で日記につけておこう。
もうあれから半年…毎日の日記も大分溜まってきたな…
混沌世界とか、別時間軸の並行世界とか、妙な事も色々あったけど、俺たちはこうやって幸せに生きてる。
俺はそんな生活に満足していた。そして尊くも思う。
大事にしよう、この毎日を…










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第2話 『ウサギは寂しいと死んじまうって、有名ドラマで言われてたが…すまん、ありゃ嘘だ』


To be continued…

Yuki ( 2019/04/22(月) 21:58 )