とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第2章 『初めての混沌』
第4話
確かに、お前も私も、既に存在しているポケモン同士だ。
この出来事は誰も知らない方がいいのかもしれない。
忘れた方がいいのかもしれない。


「皆、どこへ行くの?」

「我々は生まれた、生きている、生き続ける、この世界のどこかで」



『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲より引用』



………………………



ミュウツー
「……っ」


「…? どうかしたのか?」


俺たちは結局、中華料理店の仮眠室で朝まで休んでいた。
幸いエアコンは機能しており、4人でも寒さに凍える事は無い。
布団はひとつしか無かったのでこれはミュウスリーにかけてやった。
とはいえ、当のミュウスリーは俺に抱き付いて離れない。
なので、俺はミュウスリーに抱き付かれたまま布団に一緒に入っていたのだ。


ミュウツー
「…夢を見た」


「その様子だと、あまり良い夢じゃないな」


ミュウツーは肯定も否定もしなかった。
ただ、右手で頭を押さえ、何かを複雑そうな顔で考えている様だった。



「…これで、ミュウスリーの残り時間は12時間か」

ミュウツー
「そんなに寝ていたのか…もう時間が無いな」


「富士の居場所は特定出来るのか?」

ミュウツー
「私の索敵範囲に入れば、識別は出来る」
「アイツからは特殊な何かを感じるからな」


とはいえ、その範囲内に入らなければ意味は無い。
駅前と言う区画はここも該当するが、ここからで解らないならどうなんだ?



「そもそも、お前の索敵範囲はどの位だ?」

ミュウツー
「半径500m程だな…その位が限界だろう」


すると、恵里香の半分程度か。
恵里香が問題無ければ索敵は任せられるんだが、もし世界送りに干渉してるって事は、逆探知されかねないとも言える。
フツーなら有り得ないが、夢見の雫が関わってるなら何でも有りと思うべきだ。
とにかく、慎重に行動しないと。


ミュウスリー
「ン…ウー?」


「ミュウスリー…おはよう」

ミュウスリー
「おは、よ〜?」


ミュウスリーはよく解ってない様だった。
もう残り半日…それまでに富士を見つけて真相を暴かないと。
この世界を救う条件は何だ? もし富士を殺す事だとしたら…?
考えると俺は恐ろしくなる。もしそんな条件がルールなら…俺は。


ミュウスリー
「さと、し…ど、した?」


「大丈夫、俺がお前を救うから…」


俺はしっかりとミュウスリーの体を両腕で抱き締めた。
端から見れば、まるで恋人同士の抱擁。
ミュウスリーも気持ち良さそうに俺に抱き付く。
俺は覚悟は決める…もし必要なら、俺が引き金を引く。
俺は懐に忍ばせてある拳銃を思い出す。
昨日、どさくさに紛れて拝借した奴だ。
一般的なハンドガンの様で、残弾は4発。
最悪の場合は、俺が富士を撃つ…!
銃なんて使った事無いけど、ロック外して引き金を引く位なら何とかなるだろ。


悠和
「聖様、朝食の準備が出来ました」

ミュウスリー
「ごは、ンー!」


「わわっ!? 俺ごと移動するな!!」


ミュウスリーは朝飯と聞いてすぐに飛んで行った。
俺を超能力で持ち上げ抱き締めたまま移動したのだ…


ミュウツー
「やれやれ…朝から慌ただしいな」

悠和
「ふふ…ミュウスリーにとっては自分の死期は関係ないのかもしれない」
「ミュウスリーは精一杯生きてる…例え短い寿命でも」

ミュウツー
「ミュウスリーは死なない、何をしてでも私が救う」

悠和
「大丈夫、聖様は絶対にミュウスリーを見捨てない」
「聖様は私たちとの約束を破った事は、1度も無い」


悠和ちゃんは俺を信じきった瞳でそう言った。
ミュウツーも覚悟は決めていた様だった。
ちなみに、俺は1度約束を破っているが、最終的にちゃんと守ったので、それはノーカンで!



………………………



ミュウスリー
「豚…まん?」


「おう、まずはこの下に付いてる奴を外してだな…」
「後はそのままかぶりつけ!」


ミュウスリーは俺の手本を真似て豚まんを食べる。
するともはや定例と化したリアクションでミュウスリーはバクバク豚まんを平らげていった…


ミュウツー
「やれやれ…朝位落ち着いて食え」

悠和
「ふふ、元気な内はまだ良いと思う」
「…その方が、私たちも暗くならずに済むし」


悠和ちゃんとミュウツーはそれ以降無言で食事を取った。
結局、豚まんの山はミュウスリーがほとんど食べ尽くし、俺たちは店を後にした。



………………………




「ミュウツー、どうだ?」

ミュウツー
「敵がちらほらいるな」
「纏まった部隊じゃない…哨戒部隊か」
「全ての目から逃げるのは難しい…要所要所沈黙させるしかないな」


俺たちはモール外に出るも、敵の哨戒に悩まされていた。
数は纏まってないものの、広い範囲に散っている為、見つかる可能性は高い。
だが、ミュウツーはそこに1ヶ所穴を開ける。
一番近くにいた兵士をミュウツーは遠くから超能力一発で昏倒させたのだ。
そして倒れた兵士に近付き、物色する。



「…ん、無線か?」

ミュウツー
「ああ、定時連絡があるはずだ、それに答えないとここが怪しまれる」


「声でバレないのか?」

ミュウツー
「これはそんなにクリーンな音声は出ない、幸いコイツは女性の様だし、十分私の声で騙せるだろ」


そう言ってミュウツーは無線を使って連絡を取る。
どうやら最初から隊長にチャンネルが合っていた様で、ミュウツーは隊長と通信していた。


隊長
『どうしたNo.16! 何かあったのか!?』

ミュウツー
「はい! 正体不明の何かを見つけました!!」
「富士博士に見せた方が良いと思うのですが、どうしましょう!?」

隊長
『よし、お前はそれを地下にいる富士博士に持って行け!』
『我々は引き続き哨戒する! 以上!』

ミュウツー
『了解!』


見事な物だ…演技まで迫真だったな。
っていうか、過去にやってた事あるのだろうか?
戦闘用に改造されたって言ってたし、元々はクローン兵と共闘していたのかもしれないな。
ミュウツーは無線を持ったまま、移動を始める。
まずは地下か…っても。



「この街で地下なんて地下鉄位だぞ? そこにいるのか…」

ミュウツー
「とにかく、侵入経路は?」


「全壊した駅まで行くしかないな…多分どこかの出入口が無事なんだろ」


俺たちはミュウツーの索敵を生かして何とか敵兵をすり抜けて行く。
駅まではそこまで距離は無い…メインの部隊も戻って来てない様で、今の駅前は哨戒部隊しかいない様だった。



………………………



ミュウツー
「妙だな…本当に敵がいないのか?」


「あっさり過ぎるか? 敵もミュウツーの能力は知っているはずだもんな」
「ここまで楽にすり抜けられるなんて…」

悠和
「罠…ですかね?」

ミュウスリー
「ンー…?」


俺たちは不安を抱きながらも駅に辿り着いた。
地下への入り口は…あった、あそこだ。
俺は全壊した駅から少し離れた、交差点の先を指差す。
どうやら無事な入り口の様で、俺たちはそこから地下へと入って行く。


ミュウツー
「ここはどういう所なんだ?」


「地下鉄だよ、駅だからな」
「でもそんなに大きな駅じゃないし、改札とホームがある位だけど」

悠和
「では、事務室が怪しいですね」


俺は納得し、駅事務室を目指す。
確か改札の側にあるはずだ。
俺たちは階段を降りきり、切符売り場の側にある事務室に向かった。



「ここだな…さて、覚悟は良いか?」

ミュウツー
「間違いなくいる…さっさと入るぞ」

悠和
「…行きましょう」

ミュウスリー
「アー…ウー…!」


皆、覚悟は良い様だ。
俺は事務室のドアを開ける。
すると、狭い部屋の中にひとりの老人がいた。
顔は髪と髭でほとんど覆われており、目元が少し見える程度。
後ろ髪も肩の下位まで長く、その全てが白髪だった。
体は小さめの160cm程度で白衣を身に纏っている。
右手には杖を持っており、腰は少し曲がっていた。
だが、その目は精気に溢れている。
真っ直ぐにこちらを睨み、僅かに俺を見て微笑んだ。


富士
「ようこそ、夢見の雫」


「アンタ、一体何者だ!? まさか本当に先々代なのか!?」


俺がそう聞くと、富士はほう…と感心した様に声をあげる。
そして軽く笑いながら言葉を放った。


富士
「自力でそこまで辿り着いていたのか…それとも、神の入れ知恵か?」


「一体、この世界は何だ!? 何でアンタは生きてる!?」
「アンタは世界を滅ぼしたんじゃないのか!?」


俺の叫びに富士はククク…と不気味に笑う。
余程嬉しいらしい…そんな顔をしていた。
そして、富士は真相を語り始める。


富士
「本体のワシは、既に死んでおる」
「夢見の雫の暴走によって、世界ごと存在を抹消された」
「今のワシはクローンに過ぎない…本当の名前さえももう捨てた」


「待てよクローンにしたって、もう雫は無いはずだろ!?」
「どうやったら、世界を重ねたりコピペしたり出来るんだ!?」

富士
「まどろっこしいな…正直に考えを言え」
「正体は解っておるのだろう?」


そう言って富士は真っ黒な球体を出す。
俺は理解する…アレが、アレこそが元凶なのだと…!



「夢見の、雫!?」

富士
「これはレプリカに過ぎない、だがワシの最高傑作だ」
「本家の様に歴史を改変する程の力は無いが、世界間転送程度なら、ノーデメリットで可能とした」


世界間転送…それをノーデメリットだと!?
しかもレプリカって、どうやって造った!?
俺の予想は当たっていた、コイツはよりにもよって夢見の雫をコピーしたんだ!
そして、ミュウツーたちの世界からクローン軍団を呼び出し、俺を狙わせた…


富士
「ワシはこの日を待っていた…世界線が交わる唯一の時間」
「同一時間軸の並行世界で、唯一世界と世界が傘なり合う瞬間をワシは偶然発見した!」
「そして、ワシはそれまでに長きに渡ってクローンを造り、自分自身すら造り続けた」
「もう何百回繰り返したか解らない程の数を造り、ワシはついに夢見の雫の力を一部コピーし、この日を迎えたのだ!!」



「お前、それをどうやって造った!?」
「その黒さは、邪悪に満ちている気がするぞ…!?」


俺が聞くと、富士は肩を震わせて笑う。
そして、そのままこう言葉を放った。


富士
「聞きたいか? ミュウツーから、何百ものクローンを造り、その脳髄をかき集めた話を?」


ミュウスリー以外の全員が固まる、
そして俺は理解する、コイツは絶対に許しちゃいけない外道だと!


富士
「ふははっ! ミュウツーの強力なサイコパワーはかき集めれば空間すらねじ曲げる事をワシは証明した」
「そして、それを応用する事でこのレプリカは長い実験の末に完成したのだ!」
「だが、これではワシの本当の目的は果たせん!!」
「ワシの本当の目的、ワシのいた世界をもう一度甦らせる為に、その雫の力を使わせてもらうぞ!?」
「何、貴様の脳髄を抜き取るだけの簡単な作業だ…貴様は永遠に夢見の雫の器としてワシの力となるが良い!!」


狂ってやがる…コイツはマジモンのマッドサイエンティストだ。
俺は理解する、コイツは生きていてはいけないと。
そして、俺がやらねばならないのだと。


ジャキィ!!


富士
「!?」


「お前は、俺が殺す!」
「雫の継承者として、お前の暴挙を許すわけにはいかない!!」


俺は右手でハンドガンを構え、セーフティロックを外す。
そして、富士の心臓に狙いをつける…


悠和
「聖様ダメぇ!!」


悠和ちゃんが力ずくで俺の腕を押さえる。
俺は暴発を恐れ、慌ててロックをしなおした。
悠和ちゃんはそのまま俺を抱いて後ろに退がる。
富士はそれを見てクククと笑った。


富士
「愚かな娘よ、今のは千載一遇のチャンスじゃった」
「ワシがここで何故、ひとりでいたと思う?」
「兵隊など、いつでも呼べるからよ…ほれこの様に」


富士は漆黒の雫を輝かせ、空間に穴を開けた。
そして、そこからこの狭い部屋に何人もの武装した兵が現れたのだ。
これが、レプリカの能力かっ!?


ミュウツー
「ちっ! やるぞミュウスリー!!」

ミュウスリー
「ンー! さと、し…護、る!」


ミュウスリーたちは兵士の武器を破壊し、気絶させていく。
幸い部屋が狭いだけにそこまでの数は同時投入出来ていない。
ただ、倒された先から新しく無限沸きしてやがる!
このままだとまたPP切れに追い詰められる!!



「悠和ちゃん、離すんだ! ここでやらないと取り返しのつかない事になる!!」

悠和
「ダメです!! 聖様が人を殺すなんてダメぇ!!」


悠和ちゃんは一向に離してくれない。
富士は嬉しそうに笑っていた…勝ち誇った目だ。
俺は、このままではダメだと確信する。
ミュウスリーたちは肉の壁に阻まれて富士まで届かない、ましてや俺を護る為に奮闘している。
何か案は無いのか!? 策は!? どうすればアレを止められる!?



(俺は…俺らしく、あれ…?)


俺はふとその言葉を思い出した。
必ず見ていると…神様は言った。
俺が正しい道を歩むなら、いつでも背中を押すと。
俺は、俺らしくなかったのか…?
そうだな…殺すだなんて、俺らしくなかったのか。
俺は、銃を捨てる。
そして、それを見て悠和ちゃんの腕が緩む。
俺は、悠和ちゃんを振り払って真っ直ぐに駆け抜けた。
距離は短い、数歩で踏み込める!
俺の目の前の兵士はミュウスリーたちが横に凪ぎ払い、俺は真っ直ぐに富士を見据えた。
そして、全力で拳を振りかぶる。
後は思いっきり殴り抜けた。


メキャアッ!!



「うおおおおおおぉぉぉっ!!」

富士
「!? ぐばぁっ!!」


富士は事務室の壁に強く叩きつけられ、口から血を吐いた。
俺はすぐに宙に浮いている黒い雫を握り込んだ。
そして、感じる…コイツの邪悪性に。
俺は、皆を信じる!! だから、頼む力を貸してくれ!!



「夢見の雫よ、浄化を!!」


俺は自分の透明な雫にコイツの邪気を吸わせる。
所詮は紛い物、俺の雫の容量を持ってすれば、全部納める事も出来るはずだ!!
黒い雫はどんどん俺の雫に力を奪い取られ、やがてヒビが入った。
そして、最後の一滴まで吸い付くされ、ソイツは粉々に崩れ去った…



「…賭けは、俺たちの勝ちだ!!」


そう、まさしくギャンブルだった。
成功するかどうかも解らない完全な分の悪い賭け。
だけど、俺たちは勝った。
神様に背中を押してもらった…そして力を貸してもらった。
俺は感謝する…今もきっと見てくれているであろう、神様に。



「富士、これでもうアンタは無力だ」
「レプリカの消滅により、恐らくこの世界はもうすぐ消える」
「俺たちは、正しい世界に帰るんだ…」

富士
「正しい、か…ワシにとって、正しい世界などもう無い」
「この結末は予想外じゃったよ…思えば、ミュウスリーを造った時点でワシは失敗していたのかもしれん」


富士は口から血を滴らせながら、静かに呟く。
そして、悔やむ様に、憎悪する様に、俺たちを見た。


富士
「ミュウツーが反逆するのは予測していた」
「だが、ミュウスリーがただの人間に懐くなど、ワシには予想出来なかった!」
「結果、本来貴様をミュウツーに捕らえさせる作戦は失敗し、ミュウスリー共々ワシに反逆した…」

ミュウツー
「お前は私たちを利用しようとしただけだ!」
「私も、ミュウスリーも…今を生きてるのにだ!!」

富士
「ククク…戦う為にお前たちは造られたのだ」
「そして、ワシの最後の切り札を見せてやる!!」


富士は何やらリモコンの様な物をポケットから出した。
そして、それを富士は迷わず押し、突如ミュウスリーが苦しみだした。


ミュウスリー
「アアアアアアァァァッ!?」

ミュウツー
「ミュウスリー!? どうしたんだ!?」

悠和
「い、今のは何のスイッチ!?」


「富士ぃ!! 今すぐスイッチを切れ!!」

富士
「無駄だ、一度起動すればもう止まらん!!」
「さぁミュウスリーよ、自爆してこの場を吹き飛ばせ!!」
「計画が失敗なら、何も必要無い!! 世界と一緒に消えて無くなるがいい!!」


富士は狂った様に笑っていた。
同時に、世界は段々光の粒子に変わって行く…
世界が消える予兆だ…でも、俺はまだ大切な家族を救ってない!!


ミュウスリー
「アアァッ!? アァッ!! アーーーーーー!!」

ミュウツー
「止めろミュウスリー!! 自爆なんてするんじゃない!!」
「こんなの、こんなの私は認めない!!」
「聖…聖! ミュウスリーを助けてくれぇ!!」


ミュウスリーは自爆命令を強制され、涙を流して抗う。
凄まじい痛みがあるのか、ミュウスリーの絶叫は俺の心を貫く辛さだった。
また、ミュウツーもそんなミュウスリーに抱き付いて涙を流す。
もうどうしようもないと解っていても、ミュウツーは泣き叫んで懇願した。

俺はミュウスリーたちの涙を見て、即座に雫の力を行使する。
こんな悲しい事はあっちゃいけない。
ふたりにはまだ生きててほしい。
だから、俺は夢見の雫にこう願う。



(どうか、あのふたりを救ってくれ…)
(もう戦わなくても良い、ずっと平和な世界に、長く生きていける様に…)
(その為に、俺の命を使ってくれて良いから…)
(そして、皆を正しい世界に…!)


俺の雫は灰色に濁っていた。
黒い雫の邪気を吸収した為に濁ってしまったのだ。
この状態で願いを叶えればどうなるのかは解らない。
だけど、俺は即断した…約束を護る為に。
俺は最後に富士を見る、富士は本物の夢見の雫の輝きに何故か涙していた。
そして、何かを悟った様に、富士は拳銃を懐から取り出し、それをこめかみに当てて引き金を引いた。


パァンッ!


乾いた音が事務室に鳴り響く。
富士は最後には自決し、自ら幕を下ろした…
最後の胸中には何を思っていたのか…それは誰も解らない。
俺たちは雫の輝きに包まれる。
そして、俺は最後にミュウスリーたちに微笑んでやった。
ミュウスリーは、痛みが和らいだのか、泣きながら顔をクシャクシャにして俺を見ている。
そして、ミュウツーに抱き締められながら、ミュウスリーは右手を伸ばして俺に触れようとしていた。
俺はそんなミュウスリーの手を、最後に優しく取ってやる。
この瞬間、俺の体は光の粒子となって消えた…
続いて悠和ちゃんも消え、最後にミュウツーとミュウスリーだけが遅れて粒子に変わって行く…

そして、ミュウスリーはただ一言、こう叫んだ。



ミュウスリー
「ヤ、ダ…聖ーーーーー!! 聖、聖ーーーーー!!」


その声は、聖には届かなかったが、ミュウスリーはハッキリと聖の名前を正確に叫んでいた。
そして、ミュウツーは知る…これが救いなのだと。
聖は約束を守ったのだと…
ミュウスリーを救う為に、この選択を選んだのだと…


ミュウツー
「ミュウスリー! 信じろ、聖を…!」

ミュウスリー
「ミュウ、ツー…?」


ミュウツーは強い口調で涙を流すミュウスリーに言う。
そして、今にも消え行くミュウスリーを優しく抱き締めてこう続けた。


ミュウツー
「大丈夫だ、聖にはまた会える」

ミュウスリー
「ほん、と?」

ミュウツー
「ああ、だから…生きようふたりで、また」

ミュウスリー
「ミュウ、ツー…ワタ、シ…生きて、イイノ?」


ミュウツーは当たり前だ!と最後に強く言った。
そして、ミュウスリーは最後に満面の笑顔を見せて頷く。
やがて、ふたりも光の粒子となり、新たな世界へと旅立って行った……



………………………




「…雨、か」


俺はひとり放課後の教室で窓を眺めていた。
そこでは雨が降り、窓を濡らしていく…予報は当たったな。
そして、どうやら今回も俺は何とか生きてるらしい…改めて運の良いこって。
俺は大きく息を吐き、教室を後にする。
そして、一年生の教室がある2階で俺は大切な後輩を見付けた。


悠和
「聖先輩、ちょっと待っててくださいね? 今日は掃除当番なので」


「ああ、昇降口で待ってるよ」


俺は一年生の楽しそうな姿を見て頬笑む。
良かった、こっちの世界は何ともない様だ。
俺はちゃんと世界が正しく回っているのを理解する。
どうやら、あの世界の出来事は俺たちの体にとっては無かった事になったらしい…
体は一切の傷も無く、服も元通り。
時間ですら巻き戻った様で、俺の記憶以外にはあの事件はもう残ってないのかもしれないな…
俺は少し寂しく思う…あの出逢いを、無かった事にしてしまうのが。
だが、これも俺と雫が選んだ選択だ。
俺は昇降口に向かって廊下を歩きながら、スマホを耳に当て、電源も入れずにこう呟く。



「愛って…何だ?」

恵里香
『躊躇わない事さ!』


「…それは、大変だな」


恵里香はクスクス笑っていた。
どうやら、何か手違いがあったらしい…何で恵里香と繋がる?



「おい、まさかもう次の混沌に巻き込まれてるのか!?」

恵里香
『と、言うより…世界がそれを選んだ様だね』
『今はしっかりと、キミの世界が最果てから見えるよ…だから、久し振り』


「…ああ、そうだな」
「お帰り…って言うのも、おかしいか?」


奇妙な会話だ、端から聞いたら電波会話にも聞こえるかもしれない。
だけど、俺は笑っていた…恵里香も笑っていた。
そして、俺は2階の窓から見える裏庭の樹にひとりの少女を見つける…俺はそれを見て驚愕した。
彼女は綺麗なピンクのワンピースを着て俺を見て笑う。
雨の中だというのに、彼女はひとつも濡れておらず、全て超能力で弾いている様だ。
そして、迷わずに空を飛んで俺の方に突っ込んで来る。
俺はそれを咄嗟に受け止め様とするが…


ビターーーン!!


と、彼女は窓に遮られた…って、感動の再会がコレかよ!?
俺はすぐに窓を開放し、大切な家族を抱き締めた。
顔を押さえて痛がってるな…窓が割れなくて良かった。(゚Д゚;)



「ミュウスリー! お前、こっちの世界に来ちまったのか!?」
「何だよ…平和な世界って指定はしたけど、まさかこの世界だなんて」

ミュウスリー
「聖! 会いたかった!! ワタシ、言葉上手くなった!」
「もう、離れない! ずっと…ずっと一緒♪」


気が付けば、ミュウスリーは言葉をしっかり話していた。
まだ少々片言だが、それでもスゴい進歩だ。
ミュウスリーは俺の首に両手を回し、そして唇を俺の唇に重ねた。
俺は顔を真っ赤にして固まってしまう。
そして、その姿を見た野次馬が…


男子A
「ヤロウ廊下で堂々と接吻か!? しかも可愛い!!」

女子A
「うわ、だいたーん♪」

男子B
「くっそ、巨乳じゃねぇか!! リア充死すべし!!」

女子B
「外国人かしら…薄紫の髪」

女子C
「って言うかあんな髪飾り見たこと無いね〜?」


ヤバ…まさかミュウスリーがこんな大胆な行動に出るとは!?
俺はモテない男たちが嫉妬の炎を燃やしているのを感じ、思わずミュウスリーを抱き締めて駆け抜けた。


男子A
「待ちやがれ、俺にも抱っこさせろ!!」
男子B
「生かして返さん!!」
男子C
「貴様の死に場所はここだぁぁっ!!」


「ざぁけぇぇんなぁぁぁっ!!」


俺はしっと団を蹴り倒しながら昇降口へと走る。
後ろから悠和ちゃんの応援する声が聞こえて来た…チクショウ、悠和ちゃんも忘れてなかったのな!!
俺はミュウスリーを優しく抱き締め、ミュウスリーは幸せそうに笑う。
そして、俺は確信した…これから、また大変になるな、と…
それでも、俺は前を見る。
俺の選択が間違ってなかったなら、きっと神様は許してくれる。
だから、俺は大事にしよう…この新しい家族との絆を。


ミュウスリー
「聖、大スキ♪」










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第2章 『初めての混沌』 完

第4話 『新しい家族、ミュウスリーはココニ在り』


To be continued…

Yuki ( 2019/04/22(月) 14:52 )