とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第2章 『初めての混沌』
第3話
この世で別の命を作り出せるのは、神と人間だけだ。
お前は人間に作られたポケモンだ。
他に何の価値がある?



『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲より引用』



………………………




「とりあえず、全部聞かせて貰うぞ?」

ミュウツー
「…ああ」


俺たちはこすぷれ〜んに戻り、昼食を取ってからリビングで話し合っていた。
ミュウスリーはお腹一杯になって眠くなったのか、今は俺の膝の上でスヤスヤ寝息を立てている。


ミュウツー
「こんな寝顔…初めて見たな」
「そもそも、あの痩せこけてたのがこんなんになるんだ…余程幸せなんだろうな」


「でも、一体誰がミュウスリーを造ったんだ?」

ミュウツー
「人間だよ…もうひとりの特異点」
「奴は私からクローンを造った…ミュウスリーは私のクローンだ」


俺たちは衝撃を受ける。
てっきり、ミュウの細胞から造られたと思ったが、まさかミュウツーから造られたとは。


悠和
「ですが、ミュウツーにしてはミュウスリーは特徴が違いすぎませんか?」
「ミュウスリーは角が繋がってるし、尻尾もありません」

ミュウツー
「そりゃそうだ…ミュウスリーはメガ進化してるんだからな」
「脳にメガストーンを埋め込まれ、ミュウスリーは常時メガ進化状態を維持出来る様に改造された」
「当然、強力だがそのデメリットは凄まじい」
「ミュウスリーは体から常に維持する為のエネルギーを放出しなければならない」
「造られてすぐ体は痩せ細った…どの道使い捨てだからと、ロクな栄養も与えられなかったからな」


俺は聞いてて虫酸が走る。
同じ人間として許せる事じゃない!
人間とポケモンが共存する世界で、何でそんな悲劇が起こるんだ?
何で、誰も助けてはくれなかったんだ…


ミュウツー
「私たちが産み出された世界は地獄だった…」
「人間は人同士の交配を捨て、全てを自分たちの手で造り出す」
「世界はクローン人間に支配され、ポケモンたちも全て支配された…」
「私が産まれた時は、既にディストピアは完成」
「私はただ遺伝子改造を施され、戦闘兵器として育てられた」
「例えクローン世界でも戦いは絶えなかったからな…」


「内乱…か」


ミュウツーはああ、と言って無気力な顔をした。
思い出すのも空しい…そんな顔だな。


ミュウツー
「馬鹿げた話だよ…クローン人間の私利私欲の為に私は戦い続けた」
「母体のはずのミュウも世界を見限った…私をひとり残して」
「母にすら捨てられた私は存在意義を失った」
「そして、遂にミュウスリーは造られてしまった…」
「ミュウスリーは心が成長しないまま改造で体を無理矢理急成長」
「あまりの無茶な改造に寿命は著しく低下…」
「ミュウスリーもまたただの実験体で使い捨て」
「戦闘能力はそれなりに高く、訓練無しでも暴れさせるだけで戦果はあげられた」


悠和
「酷い…私も、人に造られたポケモンですけど、決して私を造ってくれた人は悪人ではなかったのに」


「そ、そうか…悠和ちゃんも、人に造られたんだったな」


悠和ちゃんは人造ポケモン…ある意味ミュウスリーとは近しい存在なのかもしれない。


ミュウツー
「私は、ミュウスリーを見ていられなかった」
「ミュウスリーを連れ出し、私は反逆した」
「向かって来る敵を全て殺し、私は逃げ続けた…」
「どうせ死ぬなら、もっと安らかに死なせてやりたい」
「そんな、小さな希望にすがって私は逃げ続けた…」


「で、このハリボテの世界に来たってのか…」


ミュウツーは頷く…そして、この世界ですぐにミュウスリーを造った人間に会ったらしい。
ソイツがもうひとりの特異点。


ミュウツー
「私たちはこの世界で人間になっていた…こんな現象は初めてで戸惑ったものの、すぐに慣れたが」


成る程…と言う事は元の世界ではちゃんとポケモンの姿だったんだな。
それで、また例によって俺との関わりで人化した、と…
やれやれ、これも混沌か…厄介な現象だよなホント。
まぁ、もうすっかり慣れてしまったが。
俺にとっちゃ、救うと決めたポケモン娘は皆家族だ、そこだけは絶対に曲げない。


悠和
「それで、そのもうひとりの特異点は何者なんですか?」

ミュウツー
「詳しい事は知らない…ただ、ミュウスリーを救いたければ特異点を連れて来いと言われた」
「夢見の雫があれば救えると…」
「私はある程度詳細を聞いて、ミュウスリーと一緒にお前を探した」
「携帯電話を渡され、そこには何故かお前と繋がる番号が登録されていたよ…どういう事なのか」


俺はギョッとする…何で俺の番号知ってたんだ?
夢見の雫の事と良い、まさか俺の顔見知りなのか!?



「ソイツ、名前は? 後、どんな姿を?」

ミュウツー
「名前は…富士(ふじ)とか言ってたな。かなり年老いた老人の男だ」
「恐らくは誰かのクローンだと思うが、何か解るのか?」


富士、ね…奇しくもゲームでのミュウツー発見者と同じ名前か。
流石に何か作為的な繋がりも感じるが、それだけで俺を知る理由にはならない。
何故なんだ…? どうして雫の事を……



「…っ!? ま、まさか…継承者なのか?」
「確か、先々代の継承者は暴走させて世界を滅ぼしたって…」
「まさか、先々代は生きていたのか!? それで、俺の雫に目をつけて…!」

悠和
「で、ですが…それで聖様の電話番号を知る事は」


「…そもそも、ここじゃ圏外で本来電話なんて出来ない」
「でも、ちゃんと通話は出来た…つまり」

ミュウツー
「そもそもこの番号はデタラメで構わなかったって事か」


俺はミュウツーのガラケーに表示されている番号を見て頷く。
それはデタラメに入力された数字で何の意味も無い。
どうやら、とんでもない意志が渦巻いているのかもしれない様だ…
もし本当に先々代なら、雫をどうするつもりなんだろうか?
そもそも、ミュウスリーを使い捨てとして造った時点で外道なのは間違いない。
会ってみたい所だが、嫌な予感がプンプンしやがる。


ミュウツー
「この世界はまさに混沌だ…私たちの世界からクローン兵団が無尽蔵に送り込まれて来てる」
「奴らの狙いは解らないが、私たちを皆殺しにする事が目的の様にも感じる」
「多分、そこに富士は絡んでる…奴は何かしらの転送技術があるんだ」


「夢見の雫…か」
「まさか、な……」

悠和
「聖様、何か?」


俺は馬鹿馬鹿しいにも程がある考えを抱いた。
有り得ない、有り得ちゃいけない…そんな、馬鹿みたいな事。
俺は払拭しようとするが、それでも記憶の片隅から抜けない。
俺の頭が覚えておけと命令する…その考えを捨てるなと。



「もし、夢見の雫がもうひとつあったら、全部辻褄が合うな」


場が一瞬静寂する。
空気が固体化した様な一瞬だった。
言ってる俺が信じられない…夢見の雫は一子相伝。
常にひとつだけしか存在しないはずのチートアイテム。
ましてや使用制限付きだ、おいそれと連発は出来ない。
だが、現実に敵は無尽蔵に転送されてる…それも使い捨てのクローン軍団が。
何か違いがあるのか…? そもそも、俺の考えている様な雫ではないのか?



「ミュウツー、そのクローン技術、生物以外にも使われてるのか?」

ミュウツー
「生物以外…いや、聞いた事は無いな」
「そもそも、生物以外でクローンとはおかしな話だろう?」
「機械や銃器なら普通に量産すれば良い話だからな」


確かにその通りだ、だが俺は予感が消えなかった。
もしかしたら、夢見の雫はコピーされたんじゃないか、と。
そんな事は有り得ないとは思うも、俺はやはり危惧してしまう。
そして、やはり真相を確かめるには富士に会うしかない。
かなり危険な賭けだが、ここは虎穴に入るしかないか。



「ミュウツー、俺を富士の所に連れて行ってくれ」

ミュウツー
「…どの道そのつもりだ、ミュウスリーの寿命は後25時間位しか残されていないんだから」

悠和
「ですが、どこにいるんですか?」
「もし距離があるのでしたら、時間も重要になります」

ミュウツー
「心配しなくても、この街にいる」
「というより、この街からは出られない」


ミュウツーはそんな事を言い出す。
そして俺は納得する…この世界はあくまでハリボテだ。
コピペしたってんなら、その範囲は限られてるって訳だ。
逆に言えばこっちも逃げ様が無い…気を引き締めないとな。



「…恵里香、聞こえるか?」

恵里香
『どうにかね、ただその世界は酷く曖昧だ』
『ボクの世界送り(ワールドメール)が時々遮断される』
『何か大きな力がかけられているのかもしれない』


恵里香の世界送りに干渉だと…?
それで恵里香から急に切断されたのか…
だが、妙だな…それはつまり世界送りで恵里香が声のみ送り込んでいるのを理解したと言う事だ。
まるで、神様の様に全てを見られている気がしてきたな…


恵里香
『とにかく気を付けて…その世界は色々おかしい』
『多分、今までキミが体験した事の無い、謎の理がある』
『下手をしたら、消えるかもしれない…』


俺は心臓がドクンッと高鳴るのを感じる。
消える…か。クソッタレの理…
この世界にも、何かトリガーあるのか?
だがそれで消えるかは恵里香も確証は無い。
あくまで、最悪の場合だ…想定はした方がいいな。
少なくとも話をしてミュウツーたちが消える様子は無い。
そもそも、そんな罰ゲームじみたルールとは俺は思えなかった。

恵里香
『く…ダメだ、やっぱり持たない』


「悪いな恵里香、無理をせずに切れ」
「後はこっちで何とかする!」


俺はスマホから耳を離し、それをポケットに仕舞った。
俺の側ではミュウスリーが安らかに寝息を立てている。
胸がムニュッと俺の腹に辺り、俺は改めてミュウスリーのスペックを実感した…もはや残念おっぱいとは呼べんな!
ミュウツーも結構な巨乳だし、ミュウもスゴいんだろうか?
とはいえ恵里香の例を見るにそこまでの物は無さそうだな…
って言うか、やっぱおっぱいも改造されてるんだろうか?
いや、それはロマンが無いな、うん。


ミュウツー
「…しかしこの服は何だ? 異様に露出が多いが、防御力等欠片も感じないぞ」


ミュウツーはミュウスリーのメイド服を見てそう言う。
一度戦闘した事もあってか、ミュウスリーの服はまた少しボロってしまっていた。
着替えも同じタイプとなるとあまりストックは無いらしく、他のは少し動きにくそうとの事だ。


悠和
「機能美無視のコスプレ服ですからね…流石に防御力は無いかと」

ミュウツー
「他に服は無いのか? どこかの店から取れば良いだろ」


「さらりと犯罪発言か…まぁコピー品だから良いんだろうけど」
「まぁ別に良いじゃん、可愛いし」
「流石にもっと破れたら問題だが…」


今ならまだ小破と言った所だ、流石に中大破するとおっぱいぷるんの可能性があるから自重せねばならないが。
とりあえず、今は無理に着替える事も無いだろ。


ミュウツー
「人間の思考は理解出来んな…それともお前が特別なのか?」


「さてね…世の思春期の少年なら、こんな可愛い娘見たら放っておけないって事さ」

悠和
「ふふ、聖様は優しいからですよ」
「ですから、造られた私たちの事でも家族にしてくれるんです」


悠和ちゃんに微笑まれて俺は頬を掻く。
まぁ、今更ではあるのだが、やはり恥ずかしいのは恥ずかしいな。
ミュウツーはこんなやりとりを呆れた顔で聞いていた。


ミュウツー
「やれやれ、呑気な奴らだ…そろそろここも安全じゃ無くなりそうなんだがな」


ミュウツーは急にそんな事を言い出す。
何か気配を感じ取ったのだろうか?
悠和ちゃんを見るが悠和ちゃんは何も解らない様だった。



「敵か?」

ミュウツー
「だろうな…まだ近くにはいないが、いずれここを嗅ぎ付けられるかもしれん」

悠和
「では、ギリギリまでは休みましょう…ミュウスリーもまだ寝ていますし」


俺は頷く。
ミュウツーもとりあえず警戒しながら休む事にしていた。
そして、それから1時間…敵は現れずに俺たちは外に出る事にした。



………………………



俺たちは駅前を目指していた。
そこに富士がいる可能性があるらしい。
俺たちは商店街を駆け抜け、誰もいない道路を駆け抜けていた。


ミュウスリー
「ふぁ〜…」


「ミュウスリーも気を付けろよ? 油断してたらいきなりズキューン!ってされるかもしれんぞ?」

ミュウツー
「恐ろしい事を言うな…狙撃など私が許すか」
「射程に入った時点でこちらから吹き飛ばす…」

悠和
「でも、出来るだけ殺さない様にして」
「聖様は、クローンと言えども殺す事は望んで無い」


ミュウツーは舌打ちする。
だが否定もしなかった、とりあえずは従うって顔だな。


ミュウツー
「そろそろ戦闘区域に入るぞ…!」

悠和
「聖様は3人の輪の中に!」

ミュウスリー
「ン…さと、し…護、る!」


皆は俺を中心にトライアングルフォーメーションでそれぞれ構える。
とりあえずどこから来ても俺は皆に護られる寸法だ。
悠和ちゃんは今回、鋼タイプに変わっている。
あくまで防御重視、鉄壁も使えるからまさに盾だ。
対してミュウツーとミュウスリーは超能力の壁で完全防護。
ただでさえ規格外のふたりだ、いかにマシンガンの掃射でも貫く事は出来ない。


敵兵
「目標発見! 攻撃開始!!」


敵は四方八方から銃を構えて現れる。
流石に軍用クローンだな、隊列もスムーズだ!
だがこっちも無抵抗じゃない…全武器無力化すれば何も出来ないだろ。


ドパパパパパパパパッ!!


各方面からマシンガンの掃射が開始された。
だがその銃弾は届く事無く、全てが空中で停止してアスファルトに落ちる。
そして次の瞬間、敵兵たちの銃が次々と破砕されていく。
ミュウスリーの超能力で銃器は無理矢理ねじ曲げられ、引き裂かれる様に破砕していった。
まるで粘土を千切るみたいに簡単にやってしまうのだから恐ろしいもんだ。


敵兵
「クソッ! 第二部隊と交代だ!!」

ミュウツー
「悪いが寝ててもらうぞ!」


ミュウツーは武器を全て破砕したのを確認すると敵兵を次々に気絶させていく。
だが人数は多く、全てを倒すには至らなかった…


悠和
「そうか…エスパーならそう言う使い方も出来るんですね」
「だったら私は…!」


悠和ちゃんはメモリを切り替え、飛行タイプに変化する。
そして、得意技の『エアスラッシュ』を真空波の様に放ち、周りの敵を的確に気絶させていった。
何気に悠和ちゃんも応用力は高いよな…


ミュウスリー
「ンー…手加減、難し、い」


「ミュウスリーは無理するな、万が一失敗して殺したら、それだけ辛くなるぞ?」


ミュウスリーは少し悲しそうだった。
本人的には役に立ちたいんだろうな…とはいえ、クローンと言えども人は人。
その手を自ら汚す事は無いんだ…


ミュウツー
「ちっ…第二波が来るぞ!」


直後、俺たちの近くで大爆発。
俺は悠和ちゃんに支えられ何とか吹き飛ばされずにすんだ。
俺は何事かと思って前を見る、するとそこには驚愕の兵器が立ちはだかっていた…



「せ…戦車だとーーー!?」


そう、それは紛れもなく戦車だった。
それもいかにも最新式です、みたいな見た目の銀色の装甲。
そいつの砲身がこちらを向いていた。


ミュウツー
「やれやれ、マシンガンの次は戦車か…つくづくどうしようもねぇ連中だな」


ミュウツーは戦車の前に立ち、顔をしかめる。
どうやらやる気らしい…流石はミュウツーよ。
戦車は問答無用で砲弾を放つ。
だが、ミュウツーの目の前でそれは止まり、空中で制止する。
そして砲弾は逆に戦車に向かい戦車のキャタピラに直撃して脚を潰した。
そのまま超能力で砲身をねじ曲げ、機銃も破壊する。
見事なまでに無力化したな…ミュウツーは戦車よりも強い!



「男なら拳ひとつで勝負せんかい!!」

ミュウツー
「まぁこちとら女だがな…」

ミュウスリー
「勝、ち〜♪」

悠和
「あ、あはは…」(^_^;)


悠和ちゃんは呆気に取られていた。
悠和ちゃんでもやろうと思えば戦車位壊せるとは思うが、流石にミュウツーと比べるのは酷か…
さて、まだまだ敵兵は多い、今度はバズーカやロケットランチャーまで携行してやがる…対人兵器と考えたらやりすぎだぜ。
まぁ、もはやミュウツー>戦車>その他になってるから怖いもん無いが。


ミュウスリー
「ンー!」

悠和
「はぁ!」


悠和ちゃんとミュウスリーは的確に武器を破壊していく。
ミュウツーは皆を超能力の壁で護り、サポートしていた。
しっかし、多いな数が…もう30人以上は無力化してるのに。
俺は少し焦る…いくらなんでもこっちはPPがある、いずれは限界が来る。
対して相手は下手すりゃ青天井の兵隊数。
もしかして、敵は初めから無理と解ってて消耗戦仕掛けてるんじゃないのか?
これだけやって勝てないなら、戦うのは無謀だとフツーは気付く。
なのに敵兵は何も恐れずに攻撃してくる…俺はミュウツーを見てこう言った。



「ミュウツー! PPは大丈夫か!?」

ミュウツー
「あまり余裕は無いな…やはりそれが目的か」
「しばらく現れなかった分、蓄えてやがったな…!」

ミュウスリー
「ンー…敵、まだまだ…い、る」

悠和
「くっ…! こっちもいずれPPが切れる…別の技で代用しないと!」


やはり悠和ちゃんが先にそうなったか。
とはいえ、シルヴァディは多彩な技を使える、悠和ちゃんはまだ戦う事は出来るはずだ。


ミュウツー
「ちっ、マズイな…一旦テレポートで逃げるぞ!?」


「ああ、頼む!」


俺たちはテレポートで逃走した。
今回はこっちの作戦ミスだ…正面突破は無理がありすぎた。
作戦を練り直さないと。



………………………




「くそ…あんなに数を投入してくるなんて」

ミュウツー
「全員殺して良いなら少ないPPで全滅させる事も出来るんだぞ?」


「…ダメだ、それを許すわけにはいかない」
「俺はお前たちにそんな業を背負わせたくない!」


ミュウツーは深いため息を吐く。
そして顔に手を当てて不機嫌そうにこう言った。


ミュウツー
「どの道、私たちはもう過去に何百人も殺してる…」
「今更だぞ? それでもお前はそんな温い事を言うのか?」


「そうだ、俺は無益な殺生は望まない!」

ミュウスリー
「ワタシ…さと、し…スキ」
「だ、から…頑、張るぅ〜」


そう言ってミュウスリーは俺に抱き付いて来た。
それを見て悠和ちゃんは笑い、ミュウツーはため息を吐く。
俺はミュウスリーの頭を撫でてやった。


ミュウツー
「時間が惜しいって言うのに…」

悠和
「でも、休まないと回復は出来ない」


「とりあえず移動しよう…もうこすぷれ〜ん内は安全とは思えない」


俺は皆と一緒に慎重に外に出た。
そして敵に出会わない様、ミュウツーのナビで移動して行く。
俺たちはデパートを目指していた、駅前側だが潜伏するなら好都合だと踏む。
幸い、ミュウツーが敵を関知出来る為迂回するのは容易だった。
とはいえ、時間は倍以上かかる。
俺はミュウスリーの超能力で持ち上げられ、高速で街を移動していた。
少なくとも車の制限速度は軽く越えてる速度だ…スピード違反で捕まるラインだな。


ミュウツー
「よし、こっちだ!」


「このまま裏側に回ろう! 敵は近くにいるか?」

ミュウツー
「いや、大丈夫だ…多分位置はバレてない」
「今頃は商店街を中心に捜索してるだろうな」


とりあえず、俺たちは安全と思われるデパートに辿り着いた。
ここはモールショップの形態だから、凄まじく広い。
内装や商品もコピーされてるなら食事も取れるはずだ。
ミュウスリーも少し疲れ始めてる…相当燃費が悪いみたいだからな。



「とりあえずミュウツーは索敵を頼む、まずは食事を取れそうな店に入ろう」

悠和
「色々ありますね…どこにします?」


俺はとりあえずなるべく外から見えにくそうな場所を選ぶ事にした。
ふと目に入ったのは小さな料理店。
どうやら中華系の店の様で、店全体が暗めの色合いで中の様子が解りにくくなってる。
これなら簡単には見つからないだろう。



「よし、入ろう…鍵は開いてるな」

悠和
「恐らく、営業中にコピーされたのでは?」
「でも、そうなると食材が放置されてるかも…」


悠和ちゃんはさらりと怖い事を言う。
だが、予想に反して中は特に不快な臭いはしなかった。
テーブルはいくつかあるが、何も乗ってないな…客がいなかったのか?
それとも、コピペには何か条件があって作られるんだろうか…?
少なくとも、完全コピーとは思えなくなって来たな。


ミュウスリー
「おな、か…空い、た」


「ああ、ちょっと待てよ? すぐに作ってやるから!」
「悠和ちゃん、中華は大丈夫? 何なら手伝うけど…」

悠和
「大丈夫です、基本はちゃんと押さえてありますので、ひとりでも平気です」
「聖様はミュウスリーを見ててあげてください」


そう言って悠和ちゃんは厨房に向かった。
俺はグラスを見つけて冷水機から水を注ぐ。
そしてそれをミュウスリーたちに渡してやった。


ミュウスリー
「んくっ! んくっ!」

ミュウツー
「…この世界だと、水は簡単に出せるんだな」


「そっちの世界は水も貴重だったのか?」


俺が聞くとミュウツーはいや…と否定した。
別に貴重ではないのか…


ミュウツー
「貴重と言うわけではないが、水は全て管理されていた」
「私たちポケモンは許可無く水を飲む事は禁止されている」
「水源も全てが管理され、迂闊に近付く事も難しかった…」


ミュウツーは思い出して俯く。
相当辛かったんだろうな…ミュウツーとはいえ生き物だ、水を飲む事だって重要だろうに。
ミュウスリーは既にグラスの水を飲み干していたが…コイツも少し痩せて来たのか…?
若干頬の辺りが痩せ始めている様に見えるな…



「待ってろ、先に軽く食べられる物を持って来てやる」


俺はそう思って厨房に入る。
悠和ちゃんは大きな中華鍋を振り、炒飯を炒めていた。
これならすぐ出来そうだな…俺はとりあえず冷蔵庫を見る。
おっ、キムチ発見♪ ジュースもあるな…とりあえず漬け物をいくつか俺は拝借し、皿を見つけてトレーに乗せた。
箸もとりあえず3本…よし、これで良いか。


ミュウスリー
「…ンー? これ、どう…する?」


「今から教えてやるよ…まずこうな」


俺はミュウスリーの背中に回り、ミュウスリーの右手に箸を持たせる。
そして、正しい持ち方を覚えさせ、俺はその手を握ったまま漬け物をひとつ摘まんで見せた。
そしてそれをミュウスリーの口元に持って行く…ミュウスリーはそれをポリポリと食べた。



「解ったか? 今度は自分でやってみな」

ミュウスリー
「ン…ウ〜」


ミュウスリーはプルプルしながらも拙い箸捌きでキムチを摘まんだ。
そして、それをゆっくり口元に持っていって食べる。


ミュウスリー
「〜〜!? 辛、い…」
「でも、美味…し、い♪」


ミュウスリーはキムチを気に入ったのか少しづつ食べていった。
合間にオレンジジュースを飲み、それも幸せそうに飲んでいた。
ミュウスリーにとっては、食べる事は純粋に幸せなんだろうな。


ミュウツー
「む…確かに辛いな」
「しかし、箸とは便利だな…こういう細かい食材を取りやすい」


ミュウツーはあっさりと箸を使いこなしていた。
この辺は何気なくやるんだもんな…ミュウスリーも覚えるのはスゴく速いけど。
ミュウツーは見ただけで簡単に模倣出来るんだから、やっぱ天才系って感じはするな…


ミュウツー
「成る程、人間はこんな食べ物も食っているんだな」


「口には合ったか?」

ミュウツー
「ああ、悪くない…野菜は食い慣れてるしな」

ミュウスリー
「ンー…無く、なった」

悠和
「お待たせっ! とりあえず炒飯です!」


悠和ちゃんが、炒飯を完成させて持って来た。
かなり大きめの皿に山盛り炒飯が乗っており、一体何人前あるのか解らなかった。
ミュウスリーは目をキラキラさせて涎を垂らしている。
うむ、これは良い匂いだ…間違いなく美味いな。
悠和ちゃんは別の取り皿を俺たちに渡し、全員にレンゲを配った。
そして予想通りミュウスリーが固まる。



「ほら、こうやって救うんだ…で、皿に乗っける」


俺は手本として取り皿に炒飯をある程度乗せる。
それを見てミュウスリーは炒飯の山を崩していく。
かなり多目に盛り、ミュウスリーはそれをパクリと一口。
そして例によって顔を幸せそうにする…見てて飽きないなホント。



「ほら、ミュウツーも早く取らないと無くなるぞ?」

ミュウツー
「あ、ああ…」


ミュウツーもミュウスリーの食いっ振りにはタジタジだな…
昼でも一度見てただろうに、やはり慣れてないとそう言う反応するわな…
まぁ、こちとら守連で訓練されてるからこれ位は朝飯前だ。
ミュウスリーは燃費の悪さが大問題だが…



「ミュウツーはそこまでは食べないよな?」

ミュウツー
「それはそうだろう…体に入る分しか食えないんだから」


そりゃごもっともだ…とはいえ世のフードファイターは胃が改造されてるからな。
本来入りそうにない量が平気で入っていくんだから凄まじいものだ…
結局、俺とミュウツーはそこそこに炒飯を食べ、ミュウスリーはペロリとあの山を平らげてしまった。
もうすっかり顔もふっくらしてきたな…燃費が悪い分すぐに腹が減るのは悩み所だが。


悠和
「餃子出来ました! 拉麺もすぐにいけます!」


悠和ちゃんは大忙しだ…炒飯がそれ程時間稼ぎにならなかったからな。
俺は今度は餃子の食べ方をミュウスリーたちに教えた。
例によってミュウスリーはこれも大満足。
ミュウツーも文句は無い様で、それなりに美味そうな顔をしていた。
そのまま、悠和ちゃんは大忙しのまま夕飯は終了する。
結局悠和ちゃんは最後にひとりで黙々と食べていた…



………………………



ミュウスリー
「す〜……す〜……」


「ホント、食ったらすぐ寝るよな…」

ミュウツー
「元々、大量のエネルギーを常に消費して体を維持してるからな」
「私たちにとって眠る事は力を蓄えるのと同義だ」
「普段から燃費の悪いミュウスリーは極端に活動時間が短くなるからな…」


そして、その残り時間ももう22時間程か…
富士が駅前にいるなら何とか明日には合わないと…



「よく考えたら、ミュウスリーってメガ進化してるんだよな?」

ミュウツー
「ああ、そうだ…どうした今更?」


「…何で不眠なのに眠れるんだ?」

ミュウツー
「………」
「…考えた事無かったな」


あまりにもちょっとした疑問だった…
とはいえ、人間なんだしやっぱり睡眠はいるって事だろうな。


ミュウツー
「そういえば、人化前は寝てなかった気もするな」
「人化した事で特性に変化でも現れたのか?」


「人間は必ず睡眠を取らなきゃ生きていけない種だからな」
「何日かは徹夜出来たとしても、やがて脳の機能が低下して倒れてしまう」
「いかに不眠の特性でも、自然に眠る欲求には逆らえないのかもな」


恐らく、技としての睡眠は効かないのだろう。
でも人間の体な以上必ず睡眠は取る。
自己再生だって無限には使えない、それで睡眠を削るのは無理だろう。


ミュウツー
「思えばPPと言う概念も謎が多いな」
「時間が経てば回復するわけでもなく、ちゃんとこうやって睡眠を取る事で回復する」


「ゲームでもそうだもんな…ポケモンセンターでもあれば即回復も出来るんだろうけど」
「基本的にはゆっくり眠って休む事が回復になるもんな…」

悠和
「これも、私たちに課せられた人としての機能なのでしょう」
「私は、そう思います」


俺もそうだな、と呟く。
ポケモン娘は謎が多い…考えれば考える程疑問が出て来る。
だけど、それも確かに彼女たちの機能なんだ。
人間として生きていく為に、皆は人の機能を得た…
ポケモンとしての特徴もある程度保持したまま、だ。
そして、ここで最大の疑問点が繁殖能力。
藍は限りなく人間に近いと言った。
だけど本来生殖能力を持たない種族はどうなる?
それこそ、ミュウツーたちの様にクローンを作ってやらなきゃダメなんだろうか?
だけど、そんなの悲しい…もちろん、現実に子供を作れなくて嘆いている人もいる。
そんな人の為に、クローン人間の技術は生まれたのかもしれないのだから…
だが、そのクローン技術で人間を作る事は法律で禁止されている。
それは、許されざる暴挙…か。

俺は、安らかに眠るミュウスリーの頭を撫でてやる。
すると、ミュウスリーは俺の体をギュッ…と強く握った。
俺は思う…子供ってきっとこうなんだろうな、と。
俺は、親は知らない…でも、親にはなれるのかもしれない。
俺は、この娘の父親になってやれるのだろうか?
かつて、勇気さんが姉さんをそうした様に…
言ってて、少しおかしかった…流石に実年齢はともかく、見た目しっかり中高生位の少女にパパと呼ばせるのは犯罪だろ…と。
やっぱり、家族で良いよな…血の繋がりは無くても良い。
俺はこの娘の家族になってやるんだ…愛情を持って。



『ミュウスリーの残寿命、残り22時間』










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第3話 『もうひとりの特異点、狙われる夢見の雫』


To be continued…


Yuki ( 2019/04/21(日) 22:20 )