とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第2章 『初めての混沌』
第1話
………此処は何処だ? 私は誰だ?
誰が生めと頼んだ?
誰が造ってくれと願った?
私は私を生んだ全てを恨む。
だからこれは攻撃でもなく宣戦布告でもなく
私を生み出したお前達への………

逆襲だ。



『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲より引用』



………………………




「…何だ、今のは?」


俺は放課後に突然妙な感覚を覚える。
まるで、意識を乗っ取られるかの様な感覚…
だが、今は何ともない…俺は、無事だ。



「…混沌、か」


俺はアルセウスさんの言葉を思い出す。
これから始まるであろう混沌…それはこの世界に必要な物であり、超えるべき物。
俺はそれに決して負けてはならない…


ブブブブブッ!!



「ん? 着信か…」


俺はポケットから震えるスマホを取り出す。
着信の様だが非通知だな…さて、どうするか?
妙な事になってもアレだが、とりあえず出るだけ出るか。



「…もしもし?」


『ザ…ザザッ! いと…ザザ……える……ザッ』


それは、酷くノイズ混じりで全く理解出来なかった。
どうやら相当通信悪い様だな…やれやれ、誰だ一体?
聞いた感じ女性の様だが、誰かは全く解らない。
だが、何だか焦っている様にも感じる。



「もしもし、誰なんだ!?」


『にげ…ザザッ……こは…ザザ…ん…ザザザ』


なおもノイズだらけの声。
断片的に何か聞こえるが解り辛すぎるだろ…
だが、次の瞬間俺は何か奇妙な感覚に襲われる。


ドクンッ!


俺は心臓の高鳴りを感じる。
そして、一瞬意識が飛ぶ感覚。
だが次の瞬間には、俺は何とも無くなっていた。
もう、通話も切れている。
俺はスマホをポケットに仕舞い、周りを見渡した。



「…何だったんだ今のは? それに、音が消えた?」


俺は現実に違和感を覚える。
そして、放課後の喧騒がかき消えたのに違和感を覚えた。
まるで、別の現実に空間移動したみたいな…


ガシャァァァァンッ!!


突然、廊下のガラスが一斉に砕け散る。
俺はその場から飛び退き、何ともなかったがガラスは見事に全て無くなっていた。
俺は窓から外を見るが何も見えない。
どうなってるんだ…? 一体何が起きてる!?



「とりあえず、悠和ちゃんを迎えに行こう!」
「もしかしたら何かに巻き込まれているかもしれない!」


俺は階段を駆け抜け、1年の教室を目指す。
俺はここでも違和感を感じる。
誰ひとり生徒がいないのだ…これは明らかにおかしい。
まだ放課後のごちゃごちゃした時間帯…誰もいないとか、音も無いとか有り得ない!!
まるで、この世界には俺しかいない様な…!



「悠和ちゃん!?」

悠和
「さ、聖様!?」


俺は悠和ちゃんの姿を見て安心する。
どうやら、何ともない様だ…でも、やっぱり他には誰もいない。
一体、どうなってるんだ?


悠和
「聖様…突然、クラスメートが全員消えてしまいました」
「一緒に掃除をしていた娘も、箒ごと消えてしまって…」


「何なんだそれ…? こっちもここまで誰とも会えなかったんだぞ?」
「廊下のガラスは砕け散るし、これは何かの干渉か?」


どうやら悠和ちゃんも俺と似た様な状況らしい。
今、この場にいるのは俺たちだけ…他の生徒は消えてしまっている。
まさか…これが混沌なのか?



(非通知の着信…もしかして、これが何かあるのか?)


俺は一か八かかかってきた着信にこちらからかけてみる事にした。
意味は解らないが、かかってきた以上何か意味があるはずだ。


トゥルルルル…トゥルルルル……


少なくとも発信は出来てるな…だが、出ないか?
俺は少し焦りながらも、スマホを耳に当てたまま周りを見渡す。
特に何かあるわけでもない、俺はしばらく発信音を聞き続けていた。
そして、数秒後にようやく相手に繋がった。



「もしもし、聞こえるか!?」


『ああ、聞こえる…お前が特異点か?』


俺はギョッとする。
相手は事もあろうに、俺を特異点と言いやがった…
つまり、明らかに何かしらの関係者…つまりは、これが混沌…?



『どうやら当たりの様だな…で、何か用か?』
『こっちも忙しいんでな…用件は早く言え』


女の様な声色の相手はやや鬱陶しそうにそう言う。
そして、次に突然銃声の様な音が多数聞こえた。
何なんだ…? この日本で銃撃戦だと…!?



「おい、お前は誰なんだ!? 一体何が起こってる!?」


『叫ぶな鬱陶しい…私はミュウツーだ』


俺はまたギョッとする。
ここでミュウツーだと…!?
設定上ではミュウの子供で遺伝子改造を施された最強のポケモン…
その能力は戦闘面に関してはオリジナルを上回る性能…
気性も基本荒く、大概の場合人とは敵対している存在だ。
そのミュウツーが何で俺に電話を…?


ミュウツー
『話は後だ、今は切るぞ』


「待て、お前はどこにいる!?」

ミュウツー
『さっさとそこを離れろ…殺されるぞ?』


その言葉を最後にミュウツーは通話を切る。
待てよ…殺されるだと?
一体、何が起きてるんだ…!?


ガシャァァァァンッ!!


悠和
「聖様っ!!」


突然何者かが教室のガラスを破って入って来た。
俺は悠和ちゃんに抱えられ、距離を離される。
俺たちは入って来た何者かを凝視した。
その姿はボロ布で覆われており、姿は解らない。
身長は…150cm位だな、もしかして子供か?
僅かに見える手足は細く、相当痩身なのかと予想出来た。
そして、ボロ布の隙間から俺は相手の目を見る。
赤く光るその目は、まるで狂気に満ちた輝きを放っており、嬉しそうに俺を見て目を細める。
俺は全身を総毛立たせた。
アレは危険だ…俺は一気に頭の危険信号を点灯させる。
そして、そう思ったと同時に悠和ちゃんが前に出た。
呼応するかの様にボロ布は一瞬屈んで悠和ちゃんに飛びかかる。
悠和ちゃんは手に風の剣を作り、それを容赦なく相手の首元に振るう。
かなりのスピードだったが、その剣を相手は触れる事なく消滅させた。
そして、悠和ちゃんの首を右腕で掴み、ブンッ!と外に放り出してしまった。



「悠和ちゃん!?」


俺は叫ぶ、2階とはいえ生身の人間が放り出されたら死ぬ!
だが、俺はその場から動けず、ボロ布に睨まれた。
全身の汗が冷や汗に変わるのを感じる。
これが恐怖か…俺は今心臓を握られている状態だ。
ミュウツーは殺されるぞ?と言った…これがその結果なのか?
俺は最悪のケースを想定する。
一か八か夢見の雫で願うしかない…何かを犠牲するが、死ぬよりかはマシだ。
世界移動じゃなく、同一世界での場所移動だけなら負担も少ないかもしれない…そんな使い方はした事無いが。
とにかく、この状況は絶体絶命だ…!
ボロ布はまた前傾姿勢になって一瞬屈む。
俺は覚悟を決めた…ここで死ぬわけにはいかない!!

だが、俺は目測を誤った。



「ぐあああああっ!?」


突然の頭痛。それも無理やり頭蓋を歪められる様な激痛。
俺はその場で泡を吹いて両膝を着く…意識ごと持っていかれた。
俺は気絶し、その場でうつ伏せに倒れる。




「…特異、点」
「やっと、ミツケタ…これ、で……」

悠和
「聖様に、触るなぁ!!」


「!?」


女性と思われる声を発したボロ布。
そして、床に倒れる聖に触れ様とした瞬間、何者かの攻撃を背中に受け、前に吹っ飛んでガラスをぶち破る。
そのまま廊下を突き抜けて外にまで吹っ飛ばされてしまった。


悠和
「……!」


悠和は何とか2階の高さから無事に生還し、再び教室に飛び込んで来たのだ。
それと同時に悠和は空中で『エアスラッシュ』を放ち、飛行の風エネルギーでボロ布を吹き飛ばした。
そして悠和の左手には青い『フライングメモリ』が握られている。
それは一般的にミニCDと呼ばれる位のサイズで、悠和はそれに触れる事によってタイプを自在に変える事が可能なのだ。
これこそが『ARシステム』の特性だった。


悠和
「聖様!! しっかりしてください聖様ぁ!!」


悠和は倒れて動かない聖の体を揺らし悲しく叫ぶ。
だが聖は意識を取り戻す事なく、その場でピクリとも動かなかった。
幸いにも心臓は動いている…悠和はそれを確認して少し冷静さを取り戻した様だ。
そして、悠和は胸元の服のボタンを外し、上乳をさらけ出す。
それから左手に持っているフライングメモリを自分の胸の谷間に押し込んだ。
これによって悠和は飛行タイプとして動き回れる。
聖の体と鞄を同時に抱え、悠和はその場から飛び立った。



………………………




「特異、点…どこ?」
「ワタ、シ…は、どこ?」


ボロ布が取れ、姿を露にしていたのは、痩せ細った少女だった。
ボロボロのシャツとズボンを身に付けており、余程壮絶な生き方をしてきたのだと予想させる位のボロさだった。
おおよそマトモな生き方をして来たとは思えず、彼女の姿は一般人が見たらホームレスにでも見えたかもしれない。
だが、彼女には人と明らかに違う角があった。
角は後頭部の辺りでリングの様に角同士を連結しており、明らかに人間でないのだと解る。
そう、彼女もまた…ポケモン娘だったのだ。

少女は地面に背を預け天を見上げる。
既に夕方になろうかと言う時刻で、彼女はただひとりの男の顔を思い浮かべていた。
そして、次に憎悪する…何故自分がここにいるのかと。
乱雑に伸びた薄紫のロングヘアーが怪しく蠢く。
そして、彼女を中心に強力な力場が生まれた。
超能力とそれは呼ばれる物だ。
だが、その強さは一般的なエスパーの比ではない。
彼女は手足を動かす事なく立ち上り、体を浮遊させていた。
同時に足元がクレーター状に抉れる。
奮迅が天高く巻き上がり、彼女は動き始めた。



………………………



悠和
「くっ、一体何が起きて…!」


気が付けば、私たちは人間に追われていた。
それも一般人では無い、明らかな武装集団。
街中だと言うのに遠慮も何もなく発砲し、私たちはとてつもなく危険な状況だった。
だけど腑に落ちない…何故他の住民は誰もいないのか?
ここまで私は何とか逃げ延びたが、追っ手以外に人は見ていない。
少なくとも夕方前の帰宅ラッシュ…いつもなら学校周辺は人で溢れていたのに。


ダダダダダタダダッ!!


後ろからマシンガンの掃射が始まる。
もう手当たり次第だ…周りの事なんか何も考えてない!
このままじゃ聖様が危険に…


悠和
「ダメよ悠和…人を殺すなんてしてはダメ!」
「聖様はそれを望まない…なら、どうやってここを切り抜ける?」


私は自問自答する。
敵を殺して切り抜けるのは難しくない…私はシルヴァディだ。
でも、その力は聖様を守る為の物…人殺しの道具じゃない!
私は胸元からメモリを引抜き、腰に装備しているポーチから別のメモリを取り出してタイプを切り替える。
それを胸元に差込み、私のポニーテールと尾ビレの色が変色した。
これで、私は今鋼タイプになった…体を硬質化出来るので銃弾でも弾けるはず。
だけど、気を付けないと硬質化は維持出来ない。
何せ私もメモリを使うのはこれが初めてなのだ。
特に鋼タイプの特性を理解出来てない内は、銃弾の雨に飛び込むわけにはいかないだろう。
ましてや聖様は無防備…何としても私が護らないと!!


悠和
「聖様…どうか死なないで」


私は未だに気絶して動かない聖様の体をギュッと抱き締める。
まずは聖様の家に向かおう…そうしたら誰かいるはず。
私はそう思い、全速力で逃げる。
背中から何発か銃弾が飛んで来たが、私は背中から『鋼の翼』を硬質化させて生み出し、それを弾いた。
服は破れてしまうが気にしてられない!
私は公園を通り過ぎて聖様の家に到着する。
だけど、そこには絶望しかなかった。


悠和
「う、そ……!?」


私の目の前にあるのは無惨に全壊した魔更宅。
私は目を疑い足元を見るが、そこには砕け散ったネームプレートが…
間違いなく、ここが聖様の家だと理解する。
私は顔を青くしながらも物置小屋に向かった。


悠和
「そんな…城への空間も繋がってない」


私は絶望する。
今、私たちの味方はひとりもいない…
周りは人間すら殺意を持ってる…何で、こんな理不尽が?
私は足音を察知し、ガバッと振り向く。
そこには見た事も無い、痩せ細った少女がいた。


少女
「特、異…点」
「ヨコ、セ…ワタ、シ…の……」

悠和
「貴女、まさか学校での!?」


少女は嬉しそうに赤い目を細める。
ボロボロの服がゆらりと風も無いのに蠢く。
私は一瞬で相手のタイプを理解し、即座にメモリを切り替えた。


ドギュゥゥンッ!!


そんな、何か空間をねじ曲げるかの様な恐ろしい力が私を襲う。
私は聖様を後ろに回していたで聖様は無事だ。
そして、私も服をボロボロにされただけで無傷。
それもそのはず、今の私は悪タイプなのだから。
悪タイプにエスパーは無効…これはポケモンのタイプの鉄則です。


悠和
「覚悟してください! 手加減はしませんよ!?」


私は両手に力を集める。
悪タイプのエネルギーが集まり、私はそれを少女に向かって全力で放つ。
私の『マルチアタック』はメモリによってタイプを変える。
悪エネルギーが収束し、それは嵐の様に吹き荒れ、私の拳が少女を襲った。
少女は苦しがり、ボロボロの服が更に破れる。
肋骨が浮いているのが解る…彼女の体はまるで栄養を取っていないかの様だ。


少女
「ア、ア…アッ!!」


少女は怒り狂い、私に更に強力な念動力をぶつける。
だけど、私には無効…服は破れるものの、体に傷は無い。
少女は訳も解らずに出鱈目に超能力を振るう。
私は疑問に感じた…何故効かない技ばかりを放つの?
こんなの、まるで野生のポケモン…


悠和
「ま、まさか…野生なの!? それとも、生まれたばかりとか?」

少女
「アアッ! アー!!」


少女は子供の駄々っ子の様に手を振り回して超能力を放つ。
その力は強力だが出鱈目…そして尚も通用しないのが解っていない。
私は考える…この娘は何者なのか?と…
彼女は何故こうも闘争心が剥き出しなのか?と…
それには理由がある気がした…彼女は何かを恐れてる。
聖様を狙っているのは間違いない。
そして、特異点…それは過去に私たちも聖様をそう呼んだ事がある。
つまり、彼女は聖様に何かを求めている?
でも、その方法は荒々しいなんて物じゃない…暴力的と言うより、ただ怒り狂っている。
感情のままに力をぶつけて相手を倒そうとする様は、まさに子供の様だった。


悠和
「もう止めなさい! 貴女の力は通用しないわ!!」

少女
「アアー!!」


彼女は聞く耳も持ってくれない。
尚も無駄に技を振るい、やがてPPが尽きたのか、その場で息を荒くして両膝を地面に着いてしまった。
私はゆっくりと彼女に近付く…警戒されているけど、私は構わず手の届く範囲に入った。
危険かもしれない…でも、私はあえて無防備の状態で屈み込み、彼女の顔を覗き込んだ。


少女
「ウウ…!」

悠和
「大丈夫、怖くないよ…ほら、これをあげるから」


私はポケットに入っていた紫の飴玉を彼女にあげる。
彼女は?を浮かべ、まるで理解していない様だった。
私はもうひとつ飴玉を出し、その包装を開いて飴玉をむき出しにして見せた。
彼女はそれを興味深そうに眺め、自分も同じ様にやってみせる。
私はそれを見て頬笑む、彼女は不思議そうに私の顔を見ていたが、私は飴玉を口に入れて舐めた。
うん、メロン味が甘くて美味しい♪
私は美味しそうにそれを舐める事で彼女の興味を引く。
すると、彼女は自分の飴玉を自分の口に入れた。


少女
「〜〜〜!?」

悠和
「どう、美味しい?」


彼女は頬を手で覆い、目を輝かせる。
そして目を細めて飴玉の味を堪能していた。
良かった…やっぱりこの娘は計画的に暴れていたんじゃない。
ただ、聖様に惹かれていただけなのだ…それも触れ合う方法も知らないままに。
誰が彼女をこんなにしたのかは解らない…だけど彼女は聖様を求めていた。
もしかして、何者かが聖様を狙っているの…?


悠和
「そう言えば、貴女は誰なの?」

少女
「♪〜♪ ウ?」


聞こえてなかった様だ…よっぽど飴が気に入ったのね。
私は改めて名前を聞く。
すると、彼女は思い出す様に天を見上げる。
そして、小さく拙い話し方でこう答えた。


少女
「ワタ、シ…ミュ〜スリ〜…」

悠和
「…え?」


私は聞き間違いかと思った。
でも彼女は確かにこう言った…ミュウ、スリーと。



………………………




「う…こ、ここ…は?」


「ウー…」


俺は目を開くと目の前に赤い瞳の少女の顔があった。
俺は思いっきり絶句し、何事かと周りを見る。
どうやらどこかの家の中らしく、俺は布団で寝かせられていた。
あれ? ここ、どこかで…


悠和
「聖様、起きられましたか!?」
「って、えぇっ!?」


突然悠和ちゃんが現れ突然驚く。
と言うか退いたな…俺は何事かとよく状況を確認した。
そして、エライ事に気付く…どうやら俺は謎の少女に裸で跨がられているのだ。
どう見ても端からみたら今から子作りですね解ります、位のショックだろう。
だが、そこは歴戦の戦士たる俺…この程度でもはや狼狽えはしない。
俺は体をゆっくり起こし、少女と対面する。
む…凄まじい程に痩せてるな、ちゃんと飯食ってるのか?
胸も大きめだが栄養が明らかに足りてないのが解る…これでは残念おっぱいだぞ!

少女は俺の顔を見て首を傾げていた。
自分で何をやっているか理解してないな…これでは俺の息子も勃つはずが……



「ふ…しかし人間とは残念な生き物よ」
「俺の息子は朝勃ち状態で全力全開とはな!」


しっかり俺の息子はいきり勃っていた。
それも、謎の少女の素股に重なる形で…無論布団越しだが。
やれやれ…これはとりあえず言い逃れが出来んな。



「とりあえずいい加減どこう!?」
「もしかしてそのまま俺を辱しめる気か!?」
「俺初対面で名前も知らない少女から逆レイプとかマニアック過ぎるだろ!!」

悠和
「ああ、もう…脅かさないでよ〜、ほらミュウスリー、服新しいのあったから着替えて」

ミュウスリー
「ア〜!」


「ミュ、ミュウスリ〜〜?」
「何なんだ、そのどこぞのNTクローンみたいな名前は」
「つか、そんなポケモンいたっけか!?」


とりあえず悠和ちゃんはミュウスリーとやらを連れて部屋を出て行く。
俺はひとりになり、やや痛む頭を抱えて周りを見た。
やっぱり…ここ、姉さんの家だ。
って事は店の2階か…確かリビングだな。



「あれからどうなったんだ? 後ミュウスリーって何だ?」


俺はとりあえずスマホを探す。
解らんなら聞けば良いだろ…本物がいるなら。
俺はポケットからスマホを取り出し、もう一度電話をかける事にした…が、繋がらない。
どうやら、電波の届かない所にいるか、電源が切れているらしい。
やれやれ…まぁ、着信を待つか。
俺は重い体を動かして布団から出る。
くそ…体がフラつくな。相当頭も痛い。
そういえば、あのボロ布は誰だったんだ?
かなり強烈な攻撃食らっちまったが…よく生きてたモンだな。



「はぁ…こりゃ当分辛そうだ」


俺は痛む頭を抱えてその場を離れる。
そして、ふたりがいると思われる1階に向かった。



………………………




「姉さんも勇気さんもいない…どうなってんだ?」


時刻はまだ17時半…少なくともいつもなら中は客でごった返してる。
それがこんなに静かなのだ…不気味すぎる。
一体、ここは何なんだ?
俺は簡単に疑問に辿り着いた…この世界は良く似ているが俺たちの世界じゃない。
アルセウスさんは必要な混沌だと言っていた…そして、それに負けぬ様にと。



「俺は…試されているのか?」


何となくそう思う。
アルセウスさんは少なくとも常に見ていると言ってくれた。
それはこんな世界ででも見えるのだろうか?
俺は、思わずスマホを耳に当てる。
そして電源も入れずにこう言った。



「ぶっちゃけ、朝勃ちは生理現象なんで欲情はしてないと思いますがどうでしょうか?」

恵里香
『はいアウト〜朝勃ちでももし膣内に入っちゃったら責任取れるの〜?』
『睡姦されて妊娠させたのに、意識無かったからノーカンなんて外道でしょ?』


「ではさっきのは事故と言う事で…入ってませんし!」

恵里香
『ハイダメ〜ボクの了承なく裸の新キャラ抱こうとした時点で許せません』


「抱こうとしてねぇ!! 体をおっきしようと思っただけだ!!」

恵里香
『もう良いよ別に…それで、本当は何の用?』


「この世界は何だ? お前に繋がるって事は…終わる予定の世界なのか?」


俺は途端に真剣な声でそう聞く。
半ば冗談半分だったんだが、まさか本当に繋がるとはな…
しかし、これで多くの疑問は解決するはずだ…恵里香なら何か解るはず。


恵里香
『一言で言うと、世界線の移動だね』


「世界線の…移動?」

恵里香
『それも、かなり滅茶苦茶だね…本来繋がらないボクに繋がるんだから』
『少なくとも、このままなら滅びに向かうのかもしれない』


俺は冷や汗が出るのを感じる。
また、あの地獄の様な戦いが起こるかもしれないのか?
アルセウスさんは地獄ではないと言ったが、どういう意味なんだ?


恵里香
『キミなら救えるよ、この世界も』
『いや、キミじゃなきゃ救えない…この世界は不安定だ』
『きっとこれも夢見の雫の継承者としての試練なんだと思う』


「試練…か。まさかアルセウスさんはそれを見越して浄化を?」


考えれば辻褄は合う…アルセウスさんは間に合って良かったと言っていた。
もし、あの時浄化してもらえなかったら、この世界で俺は暴走していたかもしれないのか…
改めてゾッとする…俺はこの世界を救う為に雫を使わなければならないのだ。
下手な意志じゃ濁りは強くなる。
俺は思い出す、アルセウスさんの啓示を。
俺は俺らしくあれ…そして、強くあれ。


恵里香
『とりあえず端的に説明するよ、この世界は今別の同時刻の世界と重なりあってる』
『平たく言えば並行世界と重なっている状態だ』


「それで、どうして人が消える?」

恵里香
『キミの世界の住民は多分何事もなく生きてるよ』
『今この世界には恐らくキミと悠和ちゃんしかいない』
『他の娘がいないとは限らないけど、世界が重なった時点でキミたちは世界を移動してしまった…』
『だから、その世界は似ているけど別の世界…』
『恐らく、その街には元々人は残ってないのかもしれない』


「だったら、建物は何故ある? ほとんどコピペされたかの様な感じだぞ?」

恵里香
『まさにその通りだよ…その世界はいわばハリボテだ』
『原因も理由も解らないけど、何故かその世界はキミの世界をコピーしてペーストされたんだ、キミの世界の上に』


俺は絶句する。そして事態の大きさを認識する。
成る程な…そりゃカオスだわ。
間違いなくこれは混沌だ…混ざりあって訳解らない事になってる。
どっちにしても俺は特異点で中心点…必ず原因は俺を中心に蠢いているはずだ。
俺は気を引き締める。そして心を強く持つ。
必ず俺が救ってみせる! ただ滅ぶだけの世界なんてあっちゃいけない!!


恵里香
『ゴメン…どうやら力の限界みたい』
『しばらく通信できなくなるけど、気を付けて』


その言葉を最後に恵里香は一方的に切断した。
力の限界…? 今までそんな事は1度も無かったのに。
それとも、最果てで何かが起きてるのか?
恵里香の身に何か起こってるのか!?
だが、それを考えている余裕は無い。
俺は確実に何かに狙われている…あのボロ布もそうだろう。
とりあえず、悠和ちゃんに聞いてみないとな…



………………………




「悠和ちゃん…っていないのか」

ミュウスリー
「はる、か…何か、作る……って」


ミュウスリーと呼ばれた少女は、拙い話し方でそう説明する。
あれからちゃんと着替えた様で、可愛い紫のメイド服を着ていた。
って、あれコスプレ衣装だよな…それしか無かったのか。
俺は改めてミュウスリーを眺める。
かなり痩せ細った体に地面まで到達しそうな長い髪。
髪は先端付近をリボンで括ってあり、動く度にそれはゆらゆら揺れていた。
胸は身長に対してはかなりあるものの、あまりに痩身過ぎて形は崩れてたんだよな…勿体無い。
そして、側頭部の少し上に角がツンと真上に立っており、その角は角同士でリングの様に繋がっていた。
俺はこの時点で妙だと思う。



「お前、ミュウスリーって呼ばれてたけど、新種なのか?」

ミュウスリー
「…新、種?」


ダメだ解ってない…もしかしてこの娘生まれたばっかとかか?
とりあえず歳聞いてみるか?



「お前何歳なんだ? 解るか? 年齢、歳」

ミュウスリー
「アー…? ウー…ワカラ、ナイ」
「ワタシ、まだ造られた、ばかり…」


何気に衝撃発言だな…造られたと来たか。
つまり、ミュウスリーは0歳の赤子だ。
見た目は少女だが中身は赤子。
でも、造られたってミュウの細胞からクローンみたいに造られたのか?
そもそも、ミュウスリーはそんなに簡単に造れる者なのか?
考えても何も結論は出ない。
そもそも、遺伝子工学なんて専門外もいい所だ…藍がいてくれれば説明も出来たんだろうが。


悠和
「あ、聖様…今食事の用意が出来ましたよ?」
「少し時間は早いですが、夕飯にしましょう」


「ああ、ありがとう悠和ちゃん♪」


悠和ちゃんも気が付いたらメイド服に着替えていた。
白黒の定番タイプで露出は多い…胸元が眩しすぎるな。
そして手には大きな皿を持っていた。


ミュウスリー
「ウー…? 何、ソレ?」


ミュウスリーは悠和ちゃんが持って来た皿に注目していた。
悠和ちゃんが作ったのはパスタだな、色的にナポリタンか。
美味しそうな匂いを発するそれは俺の食欲も刺激してくれた。


悠和
「待っててね? 取り皿とフォークを持って来るから」


悠和ちゃんはそう言って一旦離れる。
そしてミュウスリーは素手でナポリタンに手を出そうとした。



「こら、ちゃんと待つ! お行儀が悪いぞ?」

ミュウスリー
「ンー…お腹、空いた」


ミュウスリーは至極腹が減っている様で、大きな音で腹を鳴らしていた。
まぁ、これだけ痩せてるんだからよっぽどマトモに食事なんて与えられなかったんだろうな…
俺は改めて造った奴をクソだと思う…造ったんならちゃんと愛情を注いでやれよ。
こんな痩せ細って、まだ全然言葉も上手く話せてない。
この娘には間違いなく愛情が必要だ。
俺は無言でミュウスリーの頭を撫でてやった。
角があるので後頭部を擦る事になったが、ミュウスリーは気持ち良さそうに目を細めた。
思えば、あの時のボロ布はミュウスリーだったのかもしれない。
この赤い瞳と細い指先…確かに良く似ている。
身長も確かこの位だ、多分間違いない。


悠和
「お待たせミュウスリー…はい、今から教えてあげるから」

ミュウスリー
「ン〜…?」


ミュウスリーはフォークを握るも使い方が解っていない。
悠和ちゃんは優しく自分でフォークを握り、まずは正しいフォークの握り方を教えた。
ミュウスリーは拙いながらも、それをきっちり真似する。
まるでトレースしている様にも見える。
ミュウスリーは悠和ちゃんの真似事でナポリタンを取り皿に乗せていく。
そして、ミュウスリーはナポリタンを食べた。


ミュウスリー
「〜〜!?」


ミュウスリーはよっぽど美味しかったのか、全力ですすり始めた。
みるみる内にナポリタンはミュウスリーの胃に収まっていき、俺たちは結局少ししか食べられなかった。
俺たちは苦笑しつつもミュウスリーの嬉しそうな顔を見て何だか幸せな気持ちになった。


悠和
「ふふ…ほら服が汚れちゃう」
「ちゃんとナプキンで綺麗にして」

ミュウスリー
「ン…」


ミュウスリーは悠和ちゃんに顔を拭いてもらった。
最初は嫌そうだったが、すぐに慣れた様で特に抵抗はしなかった。
悠和ちゃんは微笑み、皿を片付ける。
そしてとりあえず追加を作ると言って厨房に入って行った。



「はは…お前にとっては何でも初めてだらけか」

ミュウスリー
「ウ〜?」


ミュウスリーは足をパタパタ動かし虚空を見つめていた。
一体、ミュウスリーは何で俺の所に来たんだ?
最初は殺されるかと思った…だけど今は全然怖くない。
ミュウスリーは何か命令を受けていたのか?



「ミュウスリー、お前は誰かの命令で俺の所に来たのか?」

ミュウスリー
「…? 何の、事…?」


理解出来てないのか…?
それとも本能的に襲いかかって来たのか?
とりあえずミュウスリーから直接何かを聞くのは無理そうだな…


ミュウスリー
「特異、点…コロセ、と言われた」


「え…?」


ミュウスリーは無感情にそう言う。
多分、意味は解ってないな…だが、殺せね。
つまりは俺を邪魔だと思ってる誰かが命令したって事だ…
クソッタレ…こんな産まれたばかりの様な娘を利用しやがるなんて。


ミュウスリー
「特異、点…さと、し」
「コロセ、って…なぁに?」
「ワタ、シ…さと、しの、事…スキ」
「さと、し…撫でて、くれた…そんな、事された、の…ハジメテ」
「とても、キモチ…良かった」


俺はまた無言でミュウスリーの頭を撫でてやった。
するとミュウスリーはとても気持ち良さそうに目を細める。
俺は少し親の気持ちが解った気がした。
そうなんだ…親はきっと子供が幸せになるのが、一番嬉しいんだ。
ミュウスリーには親はいないのかもしれない。
でも、生きているんだ…それなら、幸せになる権利はきっとある。
俺はミュウスリーを護ろうと思った。
そしてこの世界を救う…どうやればいいのかは解らないが。



(今までの定番ならボス討伐だが…)


俺は最悪のケースを想像するもすぐに改める。
ミュウスリーがボスだなんて、俺は思いたくない!
もしそうなったら、俺はどんな気持ちでこの娘を殺せば良いんだ?
出来るわけ無い…もうミュウスリーは俺が護ると誓った。
きっと別の方法があるはずだ…そもそも、これはあくまで必要な混沌。
ただ敵を倒す事が目的とは思いがたい。
さて、とはいえどうすりゃ良いか…?
俺は考えるも何も浮かばなかった。
そして、暇になったのかミュウスリーは俺に突然抱き着いて来る。
そして、大きな欠伸をしてミュウスリーは眠ってしまった。
俺はミュウスリーを優しく抱き締め、安らかに眠れる様に頭を撫でてやる。
俺は確信する…この娘は決して敵ではないと。
ただ、無邪気なだけなのだ…何も教えられず、何も与えられず。
ただ、戦う為に造られた…まさに、それはミュウツーの悲劇でもある。
俺はその悲劇には決してしない。
必ずミュウスリーを護って愛情を注いでやる。
きっとその方がこの娘には幸せなはずだから…










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第2章 『初めての混沌』

第1話 『赤い瞳の少女、ミュウスリー』


To be continued…

Yuki ( 2019/04/21(日) 21:43 )