とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない














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第2章 『初めての混沌』
第1話
………此処は何処だ? 私は誰だ?

誰が生めと頼んだ?

誰が造ってくれと願った?

私は私を生んだ全てを恨む

だからこれは攻撃でもなく宣戦布告でもなく

私を生み出したお前達への………



逆襲だ





『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲より引用』










………………………




「…何だ、今のは?」


授業も全て終わり、放課後になって俺はひとり教室を出た。
その瞬間、俺は突然妙な感覚を覚える。
教室のドアを潜った瞬間、まるで意識を乗っ取られるかの様な違和感を覚えたのだ…

だが、別に今は何ともなかった…
体も自由に動くし、感覚も正常…極めてフツーだ。
とはいえ、俺は夢の中で聞いたあの言葉を何となく思い出す…



「…混沌、か」


それは、神様であるアルセウスさんの言葉。
これから始まるであろう混沌…それはこの世界に必要な物だという。
そして俺は、それに決して屈してはならない…


ブブブブブッ!!



「ん? 着信か…」


俺はポケットで震えるスマホに気付き、それを取り出す。
着信の様だが、非通知だな…?
さて、どうするか? 妙な事になってもアレだが、とりあえず出るだけ出てみるか…

俺はそう思い、若干の不安を残しつつも応答ボタンを押しスマホを耳に当てる。



「…もしもし?」


『ザ…ザザッ! いと…ザザ……える……ザッ』


それは酷くノイズ混じりで、全く内容が理解出来なかった。
どうやら、相当通信が悪い様だな…やれやれ、誰だ一体?
聞いた感じ女性の声の様だが、誰かは全く解らない。
だが、何だか焦っている様にも感じたな。

俺はそう思い、こちらからも会話を試みた。



「もしもし、誰なんだ!?」


『にげ…ザザッ……こは…ザザ…ん…ザザザ』


なおもノイズだらけの声。
断片的に何か聞こえるが、いくら何でも解り辛すぎる。
だが次の瞬間、俺は何か奇妙な感覚に襲われた。


ドクンッ!


俺は心臓の高鳴りを感じる。
そして、一瞬意識が飛ぶ感覚。
だが次の瞬間には、俺は何とも無くなっていた。

気が付くと、電話の通話も切れている。
俺はスマホをポケットに仕舞い、まずは周りを見渡した。



「…何だったんだ今のは? それに、音が消えた?」


俺は、現実に違和感を覚える。
そして、放課後の喧騒がかき消えたのに違和感を覚えた。
下校中であるはずの他の生徒も、ひとりとして見当たらない。
まるで、俺だけいつの間にか別の世界に空間移動したみたいな…


ガシャァァァァンッ!!


そう思った直後、廊下のガラスが一斉に砕け散る。
俺は慌ててその場から飛び退き、幸い何ともなかったが、廊下のガラスは見事に全て無くなっていた。
俺は窓から外を見るが、何も見えない。
どうなってるんだ…? 一体何が起きてる!?



「…悠和ちゃんを迎えに行こう!」
「もしかしたら、何かに巻き込まれているかもしれない!」


俺は嫌な予感をひしひしと感じ、階段を駆け抜けて1年の教室を目指す。
やはり誰ひとり生徒がいない…これは明らかにおかしい!

本来なら、放課後のごちゃごちゃした時間帯…誰もいないとか、ましてや音も無いとか有り得ない!!
まるで、この世界には俺しかいない様な…!?



「悠和ちゃん!?」

悠和
「さ、聖様!?」


俺は悠和ちゃんの姿を見て安心する。
どうやら、彼女は何ともない様だ…でも、やっぱり他には誰もいない?
一体、どうなってるんだ…?


悠和
「聖様…突然、クラスメートが全員消えてしまいました」
「一緒に掃除をしていた娘も、持っていた箒ごと消えてしまって…」


「何なんだそれ…? こっちもここまで誰とも会えなかったんだぞ?」
「廊下のガラスは突然砕け散るし、これは何かからの干渉か?」


どうやら悠和ちゃんも俺と似た様な状況らしい。
そして今、この場にいるのは俺たちだけ…他の生徒は消えてしまっている。
まさか…これがアルセウスさんの言っていた混沌なのか?



(非通知の着信…もしかして、これが何かあるのか?)


俺は一か八か、かかって来た着信にこちらからかけてみる事にした。
意味は解らないが、かかってきた以上何か意味があるはずだ。


トゥルルルル…トゥルルルル……


少なくとも発信は出来てるな…だが、出ないか?
俺は少し焦りながらも、スマホを耳に当てたまま周りを見渡す。
特に何かあるわけでもない、俺はしばらく発信音を聞き続けていた。
そして、数秒後…ようやく相手に繋がった。



「もしもし、聞こえるか!?」


『ああ、聞こえる…お前が特異点か?』


俺はギョッとする。
相手は事もあろうに、俺を特異点と言いやがった…
俺の事を特異点と言ったのは、過去に夢の世界で藍たちが俺を呼称した物…
そして、ついこの前にあの神様であるアルセウスさんが俺を特異点と言った…

それはつまり、電話の相手は明らかに家族以外での関係者…?
つまりは、これが本当に混沌…?



『どうやら当たりの様だな…で、何か用か?』
『こっちも忙しいんでな…用件は早く言え』


低音だが、女の様な声色の相手は、やや鬱陶しそうにそう言った。
そして、次に突然銃声の様な音が多数聞こえる。
何なんだ…? この日本で銃撃戦だとでも…!?



「おい、お前は誰なんだ!? 一体そこでは何が起こってる!?」


『叫ぶな鬱陶しい…私は、ミュウツーだ』


俺はまたギョッとした。
ここで、あのミュウツーだと…!?
ゲームの設定上では、ミュウの子供であり、遺伝子改造を施された最強のポケモン…

その能力は戦闘面に関してのみ言えば、オリジナルを上回る性能…
気性も基本荒く、大概の場合人とは敵対している設定の存在だ。
そのミュウツーが、何で俺に電話を…?


ミュウツー
『話は後だ、今は切るぞ』


「待て、お前はどこにいる!?」

ミュウツー
『さっさとそこを離れろ…さもないと殺されるぞ?』


その言葉を最後に、ミュウツーは一方的に通話を切った。
待てよ…殺されるだと?
一体、この世界で何が起きてるんだ…!?


ガシャァァァァンッ!!


悠和
「聖様っ!?」


突然、何者かが教室のガラスを破って廊下に入って来た。
俺は咄嗟に悠和ちゃんに抱えられ、それから距離を離される。
俺たちは、入って来た何者かを凝視して確認した。

その姿はボロ布で覆われており、姿は解らない。
身長は…150cm位だな、もしかして子供か?
僅かに見える手足は酷く細く、相当痩身なのかと予想出来る。
そして、ボロ布の隙間から俺は相手の目を見た…

赤く光るその目は、まるで狂気に満ちた輝きを放っており、そして嬉しそうに俺を見て目を細める。
瞬間、俺は全身を総毛立たせた。

アレは危険だ…俺はそう感じ、一気に頭の危険信号を点灯させる。
そして、そう思ったと同時に悠和ちゃんが前に出た。
それに呼応するかの様に、ボロ布の何者かは一瞬屈み、すぐに悠和ちゃんへと飛びかかる。

悠和ちゃんは一瞬で手に風の剣を作り、それを容赦無く相手の首元に振るった。
それはかなりのスピードだったはずだが、相手はその剣を触れる事もなく、何か空間を歪めて消滅させてしまう。
そして悠和ちゃんの首を右腕1本で掴み、ブンッ!と力任せに廊下から外へと放り出してしまった。

あの細い腕で、あの怪力だと!?
仮にも悠和ちゃんはシルヴァディだぞ!?
純粋なポケモンとしてのスペックは、伝説のポケモンに匹敵する力だというのに…

もちろん、伝説並みとはいえレベルが足りてなければコイキング以下なんてのはザラにはあるが…
少なくともあの悠和ちゃんはそこまでレベルも低くはないはず…!
それを容易く…かっ!?



「悠和ちゃん!?」


俺は叫ぶ…2階とはいえ、生身の人間が放り出されたら地面との激突で大怪我だ!
だが、俺はその場から動けず、ボロ布に睨まれた。

全身の汗が冷や汗に変わるのを感じる。
これが恐怖か…? 俺は今、心臓を握られている状態なのかもしれない。
ミュウツーは殺されるぞ?と言った…これが、その結果なのか?

俺は最悪のケースを想定する。
一か八か夢見の雫で願うしかない…何かを犠牲するが、死ぬよりかはマシだ。
世界移動じゃなく、同一世界での場所移動だけなら負担も少ないかもしれない…そんな使い方はした事無いが。

とにかく、この状況は絶体絶命だ…!
ボロ布はまた前傾姿勢になって一瞬屈む。
俺は覚悟を決めた…ここで死ぬわけにはいかない!!

だが、俺は目測を誤っていた。



「ぐあああああっ!?」


突然の頭痛…それも、無理やり頭蓋を歪められるかの様な激痛だった。
俺はその場で泡を吹いて両膝を着き、そのまま意識ごと持っていかれる。
俺は気絶し、その場でうつ伏せに倒れた。



………………………




「…特異、点」
「やっと、ミツケタ…これ、で……」

悠和
「聖様に、触るなぁ!!」


「!?」


女性と思われる声を発したボロ布。
そして、床に倒れる聖に触れ様とした瞬間、悠和の技を受けて吹っ飛び、そのまま教室を突き抜けて、その外にまで吹っ飛ばされて行った。


悠和
「……!」


悠和は何とか2階の高さから無事に生還し、再び廊下に飛び込んで来たのだ。
それと同時に悠和は空中で『エアスラッシュ』を放ち、飛行の風エネルギーでボロ布を吹き飛ばした。

そして悠和の左手には青い『フライングメモリ』が握られている。
それは一般的にミニCDと呼ばれる位のサイズで、悠和はそれに触れる事によってタイプを自在に変える事が可能なのだ。
そう、これこそがシルヴァディの特性、『ARシステム』だった。


悠和
「聖様!! しっかりしてください聖様ぁ!!」


悠和は倒れて動かない聖の体を揺らし、悲しく叫ぶ。
だが聖は意識を取り戻す事無く、その場でピクリとも動かなかった。
幸いにも心臓は動いている…悠和はそれを確認して少し冷静さを取り戻した様だ。

そして、悠和は胸元の服のボタンを外し、上乳をさらけ出す。
それから左手に持っているフライングメモリを自分の胸の谷間に押し込んだ。
今の悠和は飛行タイプとして自由に空を動き回れる。
そのまま聖の体と鞄を同時に抱え、悠和はその場から飛び立った。



………………………




「特異、点…どこ?」
「ワタ、シ…は、どこ?」


被っていたボロ布が取れ、姿を露にしていたのは痩せ細った少女。
ボロボロのシャツとズボンを身に付けており、余程壮絶な生き方をしてきたのだと予想させる位のボロさだった。

おおよそまともな生き方をして来たとは思えず、彼女の姿は一般人が見たらホームレスにでも見えたかもしれない。
だが、彼女には人と明らかに違う角があった。
角は後頭部の辺りでリングの様に角同士を連結しており、明らかに人間でないのだと解る。
そう、彼女もまた…ポケモン娘だったのだ。

少女は地面に背を預け天を見上げる。
既に夕方になろうかと言う時刻で、彼女はただひとりの男の顔を思い浮かべていた。
そして、次に憎悪する…何故自分がここにいるのかと。
乱雑に伸びた、薄紫のロングヘアーが怪しく蠢く。
そして、彼女を中心に強力な力場が生まれた。

それは、一般的には超能力とそれは呼ばれる物だ。
だが、その強さは一般的なエスパーポケモンの比ではない。
彼女は手足を動かす事なく立ち上り、体を浮遊させていた。
同時に足元がクレーター状に抉れる。
そして奮迅が天高く巻き上がり、彼女は高速で動き始めた。



………………………



悠和
「くっ、一体何が起きて…!?」


気が付けば、私たちは人間に追われていた。
それも一般人では無い、明らかな武装集団。
街中だというのに、遠慮も何も無く発砲し、私たちはとてつもなく危険な状況だった。

だけど腑に落ちない…何故他の住民は誰もいないのか?
ここまで私は何とか逃げ延びたが、追っ手以外に人は見ていない。
少なくとも夕方前の帰宅ラッシュ…いつもなら学校周辺は人で溢れていたのに。
住宅街からも人の気配は一切感じられない、本当に私たちだけが隔離されたかの様な…


ダダダダダタダダッ!!


後ろからマシンガンの掃射が始まる。
もう手当たり次第だ…周りの事なんか何も考えてない!
このままじゃ聖様が危険に…!


悠和
「ダメよ悠和…人を殺すなんてしてはダメ!」
「聖様はそれを望まない…なら、どうやってここを切り抜ける?」


私は必至に冷静を保ちながら、自問自答する。
敵を殺して切り抜けるのは難しくない…私はシルヴァディだ。
でも、その力は聖様を守る為の物…決して人殺しの道具じゃない!

そう思った私は、胸元からメモリを引抜き、腰に装備しているポーチから別のメモリを取り出してタイプを切り替えた。
そしてメモリを胸元に挟み込み、私のポニーテールと尾ビレの色が灰色に変色する。

これで、私は今鋼タイプになった…こうなれば体を硬質化出来るので銃弾でも多少は弾けるはず。
だけど、気を付けないと硬質化はそこまで維持出来ない。
何せ私もメモリを戦闘で使うのはこれが初めてなのだ。
特に鋼タイプの特性を理解出来てない内は、銃弾の雨に飛び込むわけにはいかないだろう。
ましてや聖様は無防備…何としても私が護らないと!!


悠和
「聖様…どうか死なないで」


私は、未だに気絶して動かない聖様の体をギュッと抱き締める。
まずは聖様の家に向かおう…そうしたら誰かいるかもしれない。
私はそう思い、全速力で逃げた。
背中から何発か銃弾が飛んで来たが、私は背中から『鋼の翼』を硬質化させて生み出し、それ等を弾く。
その際に服はいくらか破れてしまうが、気にしてられない!
私は公園を通り過ぎて聖様の家に到着する。
だけど、そこには絶望しかなかった。



………………………



悠和
「う、そ……!?」


私の目の前にあるのは、無惨に全壊した魔更宅。
私は目を疑い足元を見るが、そこには砕け散ったネームプレートが…
間違いなく、ここが聖様の家だと理解する。
私は顔を青くしながらも物置小屋に向かった。


悠和
「そんな…城への空間も繋がってない」


私は絶望する。
今、私たちの味方はひとりもいないのかもしれない…
周りは人間すら殺意を持ってる…何で、こんな理不尽が?
その瞬間、私は足音を察知して、ガバッと振り向く。
そこには見た事も無い、痩せ細った少女がいた。

いや、見た事はある!
アレは、あの時の…!?


少女
「特、異…点」
「ヨコ、セ…ワタ、シ…の……」

悠和
「貴女、まさか学校での!?」


少女はこちらを見て、嬉しそうに赤い目を細めた。
そしてボロボロの服が、ゆらり…と風も無いのに蠢く。
私はその一瞬で相手のタイプを理解し、即座にメモリを切り替えた。


ドギュゥゥンッ!!


そんな形容しがたい音をたて、空間をねじ曲げるかの様な恐ろしい力が私を襲う。
だけど、私は聖様を自分の背後に回しており、聖様は無事だった。
そして、私も服を少しボロボロにされただけで、体は無傷。
それもそのはず、今の私は悪タイプなのだから。
悪タイプにエスパー技は無効…これはポケモンのタイプの鉄則よ!


悠和
「覚悟しなさい! 手加減はしないわよ!?」


私は両手に力を集める。
悪タイプのエネルギーが集まり、私は突進してそれを少女に向かって全力で放つ。
私の『マルチアタック』は、メモリによってタイプを変える。

今は悪エネルギーが収束し、それは嵐の様に吹き荒れ、私の拳が少女を襲った。
少女はそれを無防備に受け、苦しがる。
ただでさえボロボロの服が、更に破れてもはや裸に近くなっていった。
その際、彼女の肋骨が明らかに浮いているのが解る…彼女の体は、まるで栄養を取っていないかの様だ。


少女
「ア、ア…アッ!!」


少女は怒り狂い、私に更に強力な念動力をぶつける。
だけど、私には無効…服は破れるものの、体に傷は無い。
少女は訳も解らずに、そのまま出鱈目に超能力を振るった。
私は疑問に感じる…何故効かない技ばかりを放つの?
こんなの、まるで野生のポケモンじゃ…?


悠和
「ま、まさか…本当に野生なの!? それとも、産まれたばかりとか?」

少女
「アアッ! アー!!」


少女は子供の駄々っ子の様に手を振り回し、強力な超能力を放つ。
その力は地面を軽く抉り、周りの建物を軽く吹き飛ばす程の威力だが、明らかに出鱈目…
そして、それでも通用しないのが本人には恐らく解っていない。

私は考える…この娘は本当に何者なのか?と…
彼女はら何故こうも闘争心だけがが剥き出しなのか?と…
それにはきっと、理由がある気がした…彼女は多分、何かを恐れている。

確かに、聖様を狙っているのは間違いない。
そして特異点…それは、過去に私たちも聖様をそう呼んだ事がある呼称だ。

つまり、彼女は聖様に何かを求めている?
でも、その方法は荒々しいなんて物じゃない…暴力的と言うより、ただ野性的に怒り狂っているだけ。
感情のままに力をぶつけて相手を倒そうとする様は、まさに子供の様だった。


悠和
「もう止めなさい! 貴女の力は通用しないわ!!」

少女
「アアーーーッ!?」


彼女は聞く耳も持ってくれない。
尚も無駄に技を振るい、やがてPPが尽きたのか、その場で息を荒くして両膝を地面に着いてしまった。
私はゆっくりと彼女に近付く…警戒されているけど、私は構わず手の届く範囲に入った。
危険かもしれない…でも、私はあえて無防備の状態で屈み込み、彼女の顔を覗き込む。

そこから見える少女の瞳は、本当に野生の獣の様に、理性すら感じられない物だった…


少女
「ウウ…ッ!!」

悠和
「大丈夫、怖くないよ…ほら、これ食べる?」


私はポケットに入っていた、紫色の包装に包まれた飴玉を彼女にあげる。
彼女は?を浮かべ、まるで理解していない様だった。

私は、すかさずもうひとつ飴玉をポケットから出し、その包装を開いて飴玉をむき出しにして見せる。
彼女はそれを興味深そうに眺め、自分も同じ様にやってみせた。

私はそれを見て頬笑み、彼女は不思議そうに私の顔を見ていたが、私は飴玉を口に入れて舐める…
うん、メロン味が甘くて美味しい♪

私は美味しそうにそれを舐める事で、彼女の興味を引こうとした。
すると、彼女は自分の飴玉を自分の口に入れる…


少女
「〜〜〜!?」

悠和
「どう、美味しい?」


彼女は頬を手で覆い、目を輝かせた。
そして、目を細めて飴玉の味を堪能している。
良かった…やっぱりこの娘は、計画的に暴れていたんじゃない。
ただ、聖様に惹かれていただけなのだ…それも、触れ合う方法も知らないままに。

誰が彼女をこんなにしたのかは解らない…だけど彼女は、本能的に聖様を求めていた。
もしかして…この娘を利用して、何者かが聖様を狙っているの…?


悠和
「そう言えば、貴女は誰なの?」

少女
「♪〜♪ ウ?」


聞こえてなかった様だ…よっぽど飴が気に入ったのね。
私は苦笑し、改めて名前を聞く。
すると、彼女は思い出す様に天を見上げた。
そして…小さく、拙い話し方でこう答える。


少女
「ワタ、シ…ミュ〜スリ〜…」

悠和
「…え?」


私は聞き間違いかと思った。
でも彼女は確かにこう言った様に聞こえた…ミュウ、スリーと。



………………………




「う…こ、ここ…は?」


「ウー…」


俺は目を開くと、目の前に赤い瞳の少女の顔があった。
俺は思いっきり絶句し、何事かと周りを見る。
どうやらどこかの家の中らしく、俺は布団で寝かせられていた。
あれ? ここ、どこかで…?


悠和
「聖様、起きられましたか!?」
「って、えぇっ!?」


突然悠和ちゃんが現れ、突然驚く。
っていうか、あからさまに退いたな…?
俺は何事かと思い、よく状況を確認した。
そしてエライ事に気付く…どうやら、俺は謎の少女に裸で跨がられているのだ。
どう見ても、端からみたら今から子作りですね解ります!位のショックだろう。
だが、そこは歴戦の戦士たるこの俺…この程度では、もはや狼狽えはしない!

俺は体をゆっくり起こし、少女と対面した。
む…凄まじい程に痩せてるな、ちゃんと飯食ってるのか?
胸は大きめだが栄養が明らかに足りてないのが解る…これでは残念おっぱいだぞ!

少女は俺の顔を見て、首を傾げていた。
自分で何をやっているか理解してないな…これでは俺の息子も勃つはずが…

と、俺は自分の股間の膨らみを感じ、思わず悟ってしまった…



「ふ…しかし人間とは残念な生き物よ」
「俺の息子は、寝起きの朝勃ち状態で全力全開とはな!!」


しっかり俺の息子はいきり勃っていたのだ。
それも、謎の少女の素股に重なる形で…無論布団越しだが。
やれやれ…これはとりあえず言い逃れが出来んな。



「とりあえず、いい加減どこう!?」
「もしかして、そのまま俺を辱しめる気か!?」
「初対面で名前も知らない少女から逆レイプとか、マニアック過ぎんだろ!?」

悠和
「ああ、もう…脅かさないでよ〜、ほらミュウスリー、服新しいのあったから着替えて」

ミュウスリー
「ア〜!」


「ミュ、ミュウスリ〜〜?」
「何なんだ、そのどこぞのNTクローンみたいな名前は」
「つか、そんなポケモンいたっけか!?」


いや、どこぞのギャグ漫画にはいた気もするが…そんなモンは論外として…

とりあえず、悠和ちゃんはそのミュウスリーとやらを連れ、部屋を出て行った。
俺は部屋でひとりになり、やや痛む頭を抱えて周りを見る。
やっぱり…ここ、姉さんの家だな?
って事は1号店の2階か…確かリビングだな。



「あれからどうなったんだ? 後ミュウスリーって何だ?」


俺は、とりあえずスマホを探す。
解らんなら聞けば良いだろ…本物がいるなら。
俺はポケットからスマホを取り出し、もう1度電話をかける事にした…が、繋がらない。

どうやら、電波の届かない所にいるか、電源が切れているらしい。
やれやれ…まぁ、それなら着信を待つか。
俺は重い体を動かし、そのまま布団から出る。
くそ…体がフラつくな? 相当頭も痛い…
そういえば、あのボロ布は誰だったんだ?
かなり強烈な攻撃食らっちまったが…よく生きてたモンだな。



「はぁ…こりゃ当分辛そうだ」


俺は痛む頭を抱え、その場を離れる。
そして、ふたりがいると思われる1階に向かった。



………………………




「姉さんも勇気さんもいない…どうなってんだ?」


時刻はまだ17時半…少なくとも、いつもなら店内は客でごった返してるはずだが…?
それが、何でこんなに静かなんだ…? 不気味すぎるぞ。
一体、この世界は何なんだ?

そして俺は簡単に疑問に辿り着けた…この世界は、良く似ているが多分俺たちの世界じゃない。
アルセウスさんはあの時、世界に必要な混沌だと言っていた…そして、それに負けぬ様にと。



「なら、もしかして俺は…試されているのか?」


何となくそう思う。
アルセウスさんは、少なくとも常に見ていると言ってくれた。
それは、こんな世界ででも見えているという事なのだろうか?
俺は、思わずスマホを耳に当てる。
そして、電源も入れずにただ…こう言った。



「ぶっちゃけ、朝勃ちは生理現象なんで欲情はしてないと思いますが、その辺はどうでしょうか?」

恵里香
『はいアウト〜! 朝勃ちでも、もし膣内に入っちゃってたら責任取れるの〜?』
『睡姦されて妊娠させたのに、意識無かったからノーカンなんて外道でしょ?』


「では、さっきのは事故と言う事で…入ってませんし!」

恵里香
『ハイダメ〜! ボクの了承なくら裸の新キャラ抱こうとした時点で許せません』


「抱こうとはしてねぇ!? 体をおっきしようと思っただけだ!!」

恵里香
『もう良いよ別に…それで、本当は何の用?』


「この世界は何だ? お前に繋がるって事は…終わる予定の世界なのか?」


俺は途端に真剣な声でそう聞く。
半ば冗談半分だったんだが、まさか本当に繋がるとはな…
しかし、これで多くの疑問は解決するはずだ…恵里香なら何か解るはず。
繋がったりゆうについては、この際後回しだ!!


恵里香
『一言で言うと、世界線の移動だね』


「世界線の…移動?」

恵里香
『それも、かなり滅茶苦茶だね…本来繋がらないはずの世界線に繋がるんだから』
『少なくとも、このままならこの世界は滅びに向かうのかもしれないね』


俺は冷や汗が出るのを感じる。
また、あの地獄の様な戦いが起こるかもしれないのか?
アルセウスさんは地獄では無いと言ったが、厳密にはどういう意味なんだ?


恵里香
『キミなら救えるよ、きっとこの世界も』
『いや、でもキミじゃなきゃ救えない…この世界はそれだけ不安定だ』
『きっと、これも夢見の雫の継承者としての試練なんだと思うよ?』


「試練…か、まさかアルセウスさんはそれを見越して浄化を?」


考えれば辻褄は合う…アルセウスさんは間に合って良かったと言っていた。
もし、あの時浄化してもらえなかったら、この世界で俺は暴走していたかもしれないのか…?

そう考えると、改めてゾッとする…俺はこの世界を救う為に雫を使わなければならないからだ。
下手な意志じゃ、きっと濁りは強くなる。
俺は思い出す、アルセウスさんの啓示を。
俺は俺らしくあれ…そして、もっと強く。


恵里香
『とりあえず端的に説明するよ、この世界は今別の同時刻の世界と重なりあってる』
『平たく言えば、現実世界と並行世界か重なっている状態だね』


「それで、どうして他の人が消える?」

恵里香
『キミの世界の住民は、多分何事もなく生きてるよ?』
『今この世界だと、現実の世界からの来訪者は、恐らくキミと悠和ちゃんしかいない』
『他の娘がいないとも限らないけど…世界が重なった時点で、キミたちは世界を移動してしまった』
『だから、その世界は似ているけど別の世界…』
『恐らく、その街に元々人は残ってないのかもしれないね』


恵里香は淡々とそう説明する。
恵里香は最果てにいるであれば、ある程度の未来や過去を見通せるはずだが…
その恵里香がやや曖昧な言葉で言うって事は、それだけ異常事態なのか?



「なら、この世界の建物とかは何故変わらない状態なんだ? パッと見、ほとんど現実からコピペされたかの様な感じだぞ?」

恵里香
『まさにその通りだよ…その世界はいわばハリボテだ』
『原因も理由も解らないけど、何故かその世界は、キミの世界をコピーしてペーストされたんだ、キミの世界の上に』


俺は絶句する…そして事態の大きさを認識した。
成る程な…そりゃカオスだわ。
間違いなくこれは混沌なんだろう…混ざりあって、訳解らない事になってるんだ。

どっちにしても、俺は特異点でその世界の中心点…なら、必ず原因は俺を中心に蠢いているはずだ。
俺は気を引き締める…そして心を強く持つ。

そして改めて決心した…何があろうとも、必ず俺が救ってみせる! ただ滅ぶだけの世界なんて、絶対にあっちゃいけない!!


恵里香
『ゴメン…どうやら力の限界みたいだ』
『しばらく通信できなくなるけど、とりあえず気を付けて』


その言葉を最後に、恵里香は一方的に切断した。
力の限界…? 今までそんな事は1度も無かったのに?
それとも、最果てで何かが起きてるのか?

まさか、恵里香の身に何か起こってるのか!?
だが、それを考えている余裕は多分無い。
俺は確実に何かに狙われているのだから…あのボロ布も、きっと俺が狙いなんだろう。
とりあえず、まずは悠和ちゃんに話を聞いてみないとな…



………………………




「悠和ちゃん…って、いないのか?」

ミュウスリー
「はる、か…何か、作る……って」


俺が店内を歩いていると、カウンター席で座っていたミュウスリーと呼ばれる少女が、拙い話し方でそう説明した。
あれからちゃんと着替えた様で、可愛い紫のメイド服を着ている。
って、あれコスプレ衣装だよな…? ここにはそれしか無かったのか。

俺は改めてミュウスリーを眺めた。
かなり痩せ細った体に、地面まで到達しそうな程長い髪。
髪は先端付近をリボンで括ってあり、動く度にそれはゆらゆらと揺れている。

胸は身長に対してはかなりあるものの、あまりに痩身過ぎて形は崩れてたんだよな…勿体無い。
そして、側頭部の少し上に角がツンと真上に立っており、その角は左右の角同士でリングの様に繋がっていた。
俺はこの時点で妙だと思う。



「お前、ミュウスリーって呼ばれてたけど、新種なのか?」

ミュウスリー
「…新、種?」


ダメだ解ってない…もしかしてこの娘産まれたばっかとかか?
とりあえずダメ元で歳聞いてみるか?



「お前何歳なんだ? 解るか? 年齢、歳」

ミュウスリー
「アー…? ウー…ワカラ、ナイ」
「ワタシ、まだ造られた、ばかり…」


何気に衝撃発言だな…造られたと来たか。
つまり、ミュウスリーは多分0歳の赤子だ。
見た目は少女だが、中身は赤子。
でも、造られたって…ミュウの細胞からクローンみたいに造られたのか?
そもそも、ミュウスリーはそんなに簡単に造れるモノなのか?
考えても、何も結論は出ない。
そもそも、遺伝子工学なんて専門外もいい所だ…藍がいてくれれば説明も出来たんだろうが。


悠和
「あ、聖様…今、食事の用意が出来ましたよ?」
「少し時間は早いですが、夕飯にしましょう」


「ああ、ありがとう悠和ちゃん♪」


悠和ちゃんも、気が付いたらメイド服に着替えている。
白黒の定番タイプで、露出も多い…胸元が眩しすぎるな。
そして手には大きな皿を持っていた。
傍目からしたら、店員かと思える程似合ってるな。


ミュウスリー
「ウー…? 何、ソレ?」


ミュウスリーは、悠和ちゃんが持って来た皿に注目していた。
悠和ちゃんが作ったのはパスタだな、色的にはナポリタンか。
美味しそうな匂いを発するそれは、ついでに俺の食欲も刺激してくれた。


悠和
「待っててね? 取り皿とフォークを持って来るから」


悠和ちゃんはそう言って皿をカウンターに置き、一旦離れる。
そしてミュウスリーは素手でナポリタンに手を出そうとした。
俺はそれを見てミュウスリーの手をペシッと叩く。



「こら、ちゃんと待つ! お行儀が悪いぞ?」

ミュウスリー
「ンー…お腹、空いた」


ミュウスリーは至極腹が減っている様で、大きな音で腹を鳴らしていた。
まぁ、これだけ痩せてるんだから、よっぽどマトモな食事なんて与えられなかったんだろうな…
俺は改めて造った奴をクソだと思う…造ったんならちゃんと愛情を注いでやれよ。

こんな痩せ細って、まだ全然言葉も上手く話せてない。
この娘には、間違いなく愛情が不足している。
なので、俺は無言でミュウスリーの頭を撫でてやった。
特徴的な角が邪魔なので、後頭部を擦る事になったが、ミュウスリーは気持ち良さそうに目を細めた。

思えば、あの時のボロ布はミュウスリーだったのかもしれない。
この赤い瞳と細い指先…確かに良く似ている。
身長も確かこの位だ、多分間違いない。


悠和
「お待たせミュウスリー…はい、今から食べ方を教えてあげるからね?」

ミュウスリー
「ン〜…?」


ミュウスリーはフォークを握るも、使い方が解っていなかった。
悠和ちゃんは優しく自分でフォークを握り、まずは正しいフォークの握り方を教える。

ミュウスリーは拙いながらも、それを見てきっちり真似をした。
まるで、トレースしている様にも見えるな。
ミュウスリーは悠和ちゃんの真似事で、ナポリタンを取り皿に乗せていく。
そして、ミュウスリーはそのままナポリタンを口に運び、食べた。


ミュウスリー
「〜〜!?」


ミュウスリーはよっぽど美味しかったのか、体を震わせて驚き、そのまま全力ですすり始める。
みるみる内にナポリタンはミュウスリーの胃に収まっていき、気が付けば俺たちの分まで無くなりつつあった。

俺たちは苦笑しつつも、ミュウスリーの嬉しそうな顔を見て、何だか幸せな気持ちになる。
何て言うか…幸せそうで良いな♪


悠和
「ふふ…ほら、服が汚れちゃう」
「ちゃんとナプキンで綺麗にして?」

ミュウスリー
「ン…」


ミュウスリーは、悠和ちゃんに顔を拭いてもらう。
最初は嫌そうだったが、すぐに慣れた様で、それから特に抵抗はしなかった。
悠和ちゃんは優しく微笑み、食べ終わった皿を片付ける。
そして、とりあえず追加を作ると言って、再び厨房に入って行った。

その背中を嬉しそうに見つめるミュウスリーを見て、俺は思わず笑みが零れてしまった。



「はは…お前にとっては、何でも初めてだらけか?」

ミュウスリー
「ウ〜?」


ミュウスリーは足をパタパタ動かし、虚空を見つめていた。
一体、ミュウスリーは何で俺の所に来たんだ?
最初は殺されるかと思った…だけど今は全然怖くない。
ミュウスリーは、何か命令でも受けていたのだろうか?



「ミュウスリー、お前は誰かの命令で俺の所に来たのか?」

ミュウスリー
「…? 何の、事…?」


理解出来てないのか…?
それとも、前は本能的に襲いかかって来たのか?
とりあえず、このミュウスリーから直接何かを聞くのは無理そうだな…
が、ミュウスリーは何かを察したのか、小さくこう呟いた…


ミュウスリー
「特異、点…コロセ、と言われた」


「え…?」


ミュウスリーは無感情にそう言う。
多分、意味は解ってないな…だが、殺せね。
つまりは俺を邪魔だと思ってる誰かが命令したって事だ…
クソッタレ…こんな産まれたばかりの様な娘を利用しやがるなんて。

俺は思わず歯軋りし、怒りを溜め込む。
ミュウスリーは、やっぱりただ利用されてるだけだ。
そして、それを利用するクソヤロウがこのせかいにはいるって事だ!


ミュウスリー
「特異、点…さと、し」
「コロセ、って…なぁに?」
「ワタ、シ…さと、しの、事…スキ」
「さと、し…撫でて、くれた…そんな、事された、の…ハジメテ」
「とても、キモチ…良かった」


それを聞き、俺はまた無言でミュウスリーの頭を撫でてやった。
すると…ミュウスリーはまた、とても気持ち良さそうに目を細める。
俺は、少し親の気持ちが解った気がした。
そうなんだ…親はきっと子供が幸せになるのが、1番嬉しいんだ。
ミュウスリーには、もしかしたら親はいないのかもしれない。
でも、この娘は生きているんだ…それなら、幸せになる権利はきっとある。

だから、俺はミュウスリーを護ろうと思った。
そしてこの世界も救う…どうやればいいのかは、まだ解らないが。



(今までの定番なら、ボス討伐だが…)


俺は最悪のケースを想像するも、すぐに改める。
ミュウスリーがボスだなんて、俺は思いたくない!
もしそうなったら、俺はどんな気持ちでこの娘を倒せば良いんだ?
そんな事、出来るわけ無い…もう、ミュウスリーは俺が護ると誓ったのだから。

きっと別の方法があるはずだ…そもそも、これはあくまで必要な混沌。
ただ敵を倒す事が目的とも思いがたい。
さて…とはいえ、それら、どうすりゃ良い…?
俺は考えるも、結局何も浮かばなかった。

そして、暇になったのかミュウスリーは俺に突然抱き着いて来る。
そのまま大きな欠伸をし、ミュウスリーは俺に抱き着きながら眠ってしまった。
俺は微笑んでミュウスリーを優しく抱き締めてやり、安らかに眠れる様に頭を撫でてやる。

俺は確信した…この娘は決して敵ではないと。
ただ、無邪気なだけなのだ…何も教えられず、何も与えられず。
ただ戦う為に造られた…それはまさに、ミュウツーの悲劇でもあるのかもしれない。

だけど、俺はその悲劇には決してしない。
必ずミュウスリーを護って愛情を注いでやる。
きっと、その方がこの娘には幸せなはずだから…










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第2章 『初めての混沌』

第1話 『赤い瞳の少女、ミュウスリー』


To be continued…

Yuki ( 2019/04/21(日) 21:43 )