とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない














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第1章 『新たなる生活』
第3話
光里
「………」


卒業式の日、私は伝説の樹の下で好きな人を待つ。
彼…手紙、見てくれたかな? もしかしたら、見ていないかもしれない…
でも、私は信じて待ってみた。

ドキドキする胸を私は両手で押さえ、俯いて彼の事を想う…
そして、段々ここに近付いて来る足音を私は聞いた。
彼は息を切らしてここまで走って来る。
やがて私の前で止まると、彼はぜぇぜぇ…と肩で息をし、両膝の上に両手をついて息を整えていた。

私は勇気を出し、一歩前に出る。
そして、目を瞑って俯いた顔をしっかりと正面に向け、私は彼の顔を見た……



………………………



光里
「ぐあああああぁぁぁぁぁぁっ!?」


「うわっ!? うっせぇぞ、姉ちゃん!!」


私は、あまりに想像するのもこっ恥ずかしい夢を見て、飛び起きてしまった。
よりにもよって、何でこんな夢見るかなぁ〜?
しかも、伝説の樹って何よ!? そんな物、私の学校には無いし!
あ〜、昨日遅くまで乙女ゲーやってたせいかなぁ…?
っていうか、間違いなくそれが原因でしょ…!


光里
「あー眠い…」


「遅くまでゲームやってるからだろ…さっさと着替えて用意しろよ…」
「でないと、愛しの彼と登校出来ないぞ〜?」

光里
「だあぁぁぁぁぁっ!? 私と彼はそんなんじゃないっての!?」
「何よ…あんたこそ最近、妙なお姉さんと会ってるそうじゃないの!」


「それこそ、何でもねぇよ…大体俺は恋愛とか興味無ぇし」


むぅ、全く生意気なんだから…
私はまずスマホを見ると、時刻はもう7時50分。
とりあえず、重すぎる頭を何とか抱えて立ち上がった。
そして、弟に向かってこう言う。


光里
「ほら、向こう向いててよ…それかトイレにでも入ってなさい!」


「ったく、面倒だよな毎回…別に見られて減るモンでもないだろうに…ああ、見る様な体でもないか…っでぇ!」


私は背中を向けてそう言った弟の後頭部に、空のペットボトルを投げつけた。
そして、弟はそそくさとトイレに逃げ込む。
私は、さっさと制服に着替えて弟に声をかけた。


光里
「もう良いわよ!」


「はぁ、せめて個室が欲しい…」


まぁ、気持ちは解るけどね…
私たちの家はいわゆるワンルームで、むしろアパートと言った方が良い。
四畳半の部屋でふたりが住み、トイレとバスルームは一部屋でセット。
キッチンも玄関通路にあるだけで、非常に狭い。

この様に、明らかにふたりで住むには小さいのだけど、何せ賃貸が安いのだ!
1ヶ月3万円で、光熱費と水道代は自己負担だけど、これならバイト代で何とか賄える。
学費だけは親が出してくれたけど、まだまだ貧乏生活には悩まされそうね…


光里
「あーあ、またスーパー半額で買った期限切れ寸前のパンか…」


「姉ちゃんが料理出来ないのが悪いんだろうが!」
「そもそも、コスプレとか金のかかる趣味をやる方が悪い!」

光里
「何よ〜! これでもあんたにだってちゃんとお小遣いあげてるでしょ〜?」


「今時、月3000円で満足できる小学生がいるかよ!!」


そう、弟は今小学生2年…私とは結構年が離れてる。
実の所、本当は私だけで独り暮らしする予定だったんだけど、親の度重なる転勤生活に嫌気が差したのか、ついに弟は反抗して私の家に転がり込んで来てしまったのだ。

私としては、元々憧れの風路さんと一緒に働きたくてここに留まる事を決めた身だけど…
親も別に何とも思ってない様で、好きにしなさい…と言われたっきり。
弟に関しては、私が了承するなら…って言う条件だった。

まぁ、弟の気持ちも解らなく無かったし…私はとりあえず了承して、今はこうやってふたりで暮らしている。
ちなみに当然だけど、私は親に反抗した以上、学費以外は一切面倒見てもらってない。
私は卒業後に就職予定だからまだ良いけど、弟はこれから小学…中学と生活していかなきゃならない…
今は何とか現状維持出来てるとはいえ、早く正社員になれる様に頑張らないと…!


光里
「まぁ、後1年我慢しなさい…そしたら、ちゃんと働いてもう少し良い生活させてあげるから…」


「はいはい…期待してるよ」
「あーあ…サッカー選手になる道は遠いな〜っていうか、無理だろこれじゃ」
「そもそも、近くに練習する場所すらないし…近くの奴らもどっちかって言うと野球派が多いもんなぁ〜」


弟はワザと聞こえる様に愚痴っていた。
まぁ、野球かサッカーかって言われたら、多分この辺だと野球の方が人気は高いわよね…
ボールひとつあれば出来るし、やりやすいのはサッカーだけど、テレビとかでよく見るのは野球中継。
基本的に日本と言う国では野球の方が優遇されている気はする。


光里
「さってと、パンも食べたし…歯を磨いて学校行かないと…」


「俺はもう行くぞ? 下で友達待ってるし…」

光里
「はいはい、行ってらっしゃい」


私がそう言ってあげると、弟はさっさとひとりで出て行った。
まぁ、何だかんだで友達は出来てるのね…
私なんか未だに聖君しかまともに会話する人いないのに…

弟は私と違って輪の中に入っていくタイプだし、この差は仕方無いか…
そもそも私からしたら、いきなり初対面でコスプレに興味ありますか!?とか聞けるわけ無いし…

結局、3年になって違うクラスになっても誰とも話せなかったんだよね…
はぁ〜本当にどこか養ってくれる王子様いませんかね〜?
うん、あるわけねぇ…
等とバカな事を考えつつ、私はさっさと準備して家を出る事にした…そろそろいつもの場所を聖君が通る頃だ。
彼はほとんど同じ時間にしか行動しないもんね…



………………………



光里
「おっはよー聖君!」


「ああ、おはよう光里ちゃん」


うむ、聖君は今日も眩しい笑顔ね。
っていうか、微妙にいつもより上機嫌?


光里
「聖君、何か良い事あった?」


「ん? あ〜まぁ、あったっちゃああったか…」
「まぁ、そこまで大した事じゃないよ」


ふむ、聖君的には大した事じゃない、か。
でも、最初はやさぐれてた聖君がこんな風になるなんて、本当に驚くわよね。
2年の3学期が始まって、聖君が急に人が変わった様になるのだから、そりゃ驚かないわけはない。

私にとっては2学期からの知り合いだから、そこまででもないんだろうけど…他の人からしたら流石に気になってるはず。
…うん、こういうのはやっぱり考えてても仕方が無い!
本当〜に今更だけど、やっぱり聞いてみる事にしよう!


光里
「聖君、どうして前はあんなにやさぐれてたの?」
「今更だけど、何だかどうしてもそれが気になって…」


「…ゴメン、ちょっと言い難い」
「でも、強いて言うなら…前の俺はただの弱い人間だった」
「だけど今は、少しだけ強くなれた…その理由は言えないけど」
「でも…そりゃ、妙だとは思われるか」
「光里ちゃんたちからしたら、突然人が変わった様に見えるんだもんな…」


そう言って、聖君はやや暗い顔をして俯く。
私はちょっとマズッたかな…?とは思うも、苦笑してこう言った。


光里
「うん、本当に突然だもんね…何で自殺未遂までした人が、こんなに明るくなれたのか?って…」
「でもうん…良いよもう! もう、気にしない!」


「光里ちゃん?」

光里
「今の聖君が本当の聖君! 私は今の聖君の方が好きだから♪」


私は言ってて恥ずかしくなってしまった…
よりにもよって、思春期の同級生に好きだから、は無いでしょ!?
も、もちろん友達としてだからね!?



「聖様が、告白された…?」

光里
「え? って、うおお…っ!」


私が声の方を見ると、そこには黒髪ポニテの巨乳美少女がいた。
身長は聖君と同じ位なのに、阿須那さん以上のサイズですと!?
よもや、こんな大和撫子が同じ学校にいようとは…!!



「うわっ! は、悠和ちゃん!? どうしたの今日は?」

悠和
「は、はい…どうしても、聖様と一緒に登校したくて」


ぐはぁ…この娘、滅茶苦茶可愛いじゃないのよ。
鞄を口元に当ててモジモジするとか、反則かっ!
まるでギャルゲーからそのまま出て来た様なヒロインじゃないのよ〜?


光里
「あ、あの…ちなみにどちら様で?」

悠和
「あ…わ、私…新入生の美代 悠和(みしろ はるか)って言います」
「その…よろしくお願い、します」


聖君が何やら戸惑っている間、美少女は自ら自己紹介する。
そっか…新入生なんだ、それなら知らなくても仕方無いよね。
私は気を取り直し、改めて笑顔で美代さんに自己紹介をする事にした。


光里
「美代さんね、私は新央 光里…聖君とは同級生で、友達なの♪」

悠和
「友達…は、はい」
「新央、先輩…」


ぐふっ! そんな潤んだ瞳で見られたら、お姉さん勘違いしちゃうよ!?
っていうか、この娘いちいち仕草が可愛い!!
もはや私の存在感がかき消えそうね…


悠和
「あ、あの…新央先輩、さっきの…」

光里
「うん?」

悠和
「聖様の事、好きって…」

光里
「うんっ、まず勘違いから直そうね!?」
「あれは、そういう意味じゃないから…ただの、友達として好きってだけだから!」


私がそう言うと、美代さんは少し俯いて考えている様だった。
そして、今度は聖君の方を向いてこう聞く。


悠和
「聖様…新央さんは、私たちと同じ?」


「いや、違う…人間だよ彼女は」


ん? 何か耳元でボソッと呟いたみたいだけど、私にはよく聞こえなかった。
むぅ…何かコソコソしてるけど、何なのかな?
私は気になったものの、とりあえずスマホで時間を確認してふたりにこう言う。


光里
「聖君、そろそろ行かないと遅刻するよ?」


「あっと! 本当だな…行こう悠和ちゃん!」

悠和
「は、はいっ!」


こうして、今日は3人で登校する事になった私たち。
そして、私たちが校門に近付くと、予想通りの事態が発生していた。


ざわざわ…ざわざわ…


別に賭博黙示録ではないのでご安心を。
しかし、やはり美代さんの注目度は高い…
誰もが美代さんに注目している…そしてその美代さんは恥ずかしいのか、聖君の上着の背中を握り、ちょこちょこ隠れる様に歩いていた。
惚れてまうやろ!? 美代さん、それは色々脳天直撃○ガサターンだから止めた方が良いって!!
と、心の中で思うも、私はそれを口に出す勇気はとても無かった…


男子A
「おい、あれか? 今年の新入生で噂の巨乳美少女…」

男子B
「やっべぇモンぶら下げてんな〜うわぁ、目の保養♪」

男子C
「あれ、確か3年の魔更だよな…あの娘の彼氏なのか?」

男子D
「って事は、名実と共に新央はフラれたか…哀れな」


既に私は人生の負け組にされている様だ…
だけど言い返す勇気は無い、てか哀れまれてるし!
私も凄く居心地が悪くなり、思わず顔を手で覆った。
すると聖君が突然…



「お前ら、見せモンじゃねぇぞ!?」
「珍しいからって、変な目で見るんじゃねぇ!!」
「後、この娘は彼女じゃない! 覚えとけ!!」


私たちは沈黙する。
まさか、あの聖君が激昂するなんて…
聖君は静かになった校庭を堂々と闊歩した。
その表情はどこか苛ついた感じで、私はちょっとだけ…以前のやさぐれてた時の聖君をを思い出してしまう。

だけど、私は首を横に振ってそれを払拭する。
今の聖君は、今の!
あの時とは、もう違うんだから…

私は先に歩いて行く聖君たちを後ろから追う。
そして3人で校舎に入って行った…



………………………




「1年は2階の教室だから、ここまでだな」

悠和
「は、はいっ…私は2組ですので、良かったら帰りにでもまた…」


「ああ、何なら終わってから迎えに行くよ…」


聖君はさらりとそんな恥ずかしい約束をした。
っていうか、さっきの件といい、並々ならぬ関係に見えるんですけど…!?
あまりに自然としてるから、逆に気になってしまうわね…


悠和
「新央先輩も、また…」

光里
「あ、うん! またね美代さん♪」


私はやや戸惑いながらも笑顔で返す。
美代さん、良い娘だなぁ〜
あんな可愛い後輩がいると思うと、胸がときめきますな〜♪
とはいえ、私は断じてレズビアンでは無いのでご安心を!
私は単に可愛い物が好きなだけなのだ。
そのまま美代さんと別れた後、私は聖君と一緒に4階まで上がる事にした。



………………………




「じゃ、ここで…そういえば、昼はどうする?」
「前は同じクラスだったから、とりあえず成り行きで一緒に食べてたけど」

光里
「それじゃ、折角だし屋上で食べない?」
「そこならスペースもあるし、今の時期ならそんなに暑くも寒くもないでしょ」


「それもそうだな…じゃあ、昼に屋上で」


私はうんっ、と答えてから1組の教室に入る…聖君もその後自分のクラスに向かった。
私はすぐに自分の席に座り、そのまま担任が来るのを待つ事に…
さて、3年生になっても赤点にはビクつかないといけないし、何とか付いていかないとね〜



………………………



光里
「………」


そして、至極退屈な授業が始まる。
まぁ私は元々頭良くないし、とりあえずノート取ってれば良いやな人間なので、そんなに気にもしないのだけど…
とりあえずギリギリでも補習逃れられれば、私はそれで良いのだ。

授業中、私はチラッと校庭を見下ろした。
3年の教室は4階だから、窓から簡単に見下ろせる。
私の席も窓際の真ん中辺りだし、ここからなら校庭が良く見えた。


悠和
「……!」


下ではあの美代さんが体育をやっている。
普通のランニングみたいだけど、意外に速いなぁ〜
美代さん軽く流してる様にも見えるけど、かなりの速度で走ってた。
っていうか、胸がぶるんぶるん揺れてるよ…物理的にしょうがないよね!

しっかし、目立つなぁ〜美代さん。
これは相当のアイドルになる予感…私はそんな事を思いながらも授業を適当に受けていた。



………………………



光里
「とりあえず、先に着いたけど…誰もいないっと」


私はとりあえず周りを見渡すも、他の人は見当たらなかった。
なので、私はひとりでまずブルーシートを広げる。
こんな事もあろうかと用意していた甲斐があったわね!
私はそのシートの上にひとりで座り、パンの入った袋を近くに置いて聖君を待つ事にした。



「光里ちゃん、遅れてゴメン!」

悠和
「ど、どうもすみません…」

光里
「あれ? 美代さんも連れて来たんだ?」


どうやら、遅れた理由は美代さんを迎えに行っていたかららしい。
私は笑顔で良いよ良いよと言い、シートに座る様促した。
聖君と美代さんはすぐにシートの上に座り、それぞれの弁当箱を開ける。
むぅ…美代さんもお弁当なのね。
もしかして料理とか出来るんだろうか?



「悠和ちゃん、自分で作ってるの?」

悠和
「は、はい…朝早く起きて、自分で調理してます」

光里
「それは出来る女の子の鏡だね〜、私なんか全っ然出来ないし」
「おかげで、今日も期限切れ寸前の半額パンだよ…」


私はそう言ってカレーパンを頬張る。
まぁ、味は悪くない…ただ、良くある味だなだけだ。
そして私は聖君の弁当箱を見て絶句してしまう。
その中身は、以前の物とは明らかに違う気がしたからだ。



「うお…コレはまたボリューム満点だな、流石は愛呂恵さん」

悠和
「愛呂恵さんに作ってもらったんですか?」
「流石ですね…やっぱり綺麗に仕上げてる」

光里
「ん? 愛呂恵さんって誰?」


とりあえず、知らない人物の名前が出てきたので聞いてみる。
すると、聖君は躊躇いながらもこう答えた。



「えっと、家で雇ってるメイドさんなんだけど…」

光里
「メイドとな!? 聖君ってもしかしてお金持ちなの!?」


私は驚いてそう聞くも、聖君は苦笑する。
そして弁当を食べながらも、合間にこう言った。



「まぁ、言うなら一流企業の御曹司だからな」
「もっとも…両親は死んで、今はその遺産でやりくりしてるんだけど」

光里
「あ、そうなんだ…何か、ゴメン」


私は思わず謝ってしまう。
そう言えば、風路さんから聞いた事があったわね…
聖君、産まれてすぐに両親を無くしたって。
しっかし、一流企業とは知らなかった…



「別に良いよ、寂しいと思う事はもう無いし」

悠和
「聖様…」

光里
「そういえば、美代さんは何で聖君の事を様付けで呼ぶの?」
「ちょっと普通じゃないよね…?」


私がそうツッコムも、聖君は特に狼狽える事も無く、あ〜と唸っている。
もしかして気にしてもいなかったの…?
聖君の人間関係って、もしかして相当フツーじゃないんだろうか?



「まぁ、呼び方は自由だろ? 悠和ちゃんは、たまたま俺にはそう言う呼び方をしてるだけだし…」


聖君はソーセージを食べながら軽く答える。
たまたまって…たまたま人を様付けで呼ぶ事は無いと思うんだけど?



「それに、もう癖みたいになってるだろ?」

悠和
「あ、えっと…そうですね」
「もしかして、直した方が良いのでしょうか?」

光里
「うーん、そうだね…学校で聖様!は、ちょ〜っと問題あるかな…」


私は一応そう言っておく。
聖君は良くても、周りからの体裁もあるし、変に思われたら何か嫌な感じになると思うけど…



「まぁ、確かにフツーはそんな呼び方はしないわな…」

悠和
「は、はぁ…それでは、これから学校では聖先輩と呼びますね!」


「ぐふっ…先輩とか初めて呼ばれた!」
「こんなにも心に突き刺さる言葉だったとは…!」


聖君は弁当片手に箸を持った手で頭を抱えた。
うん、何となく気持ちは解るよ…この娘に先輩!って言われたら、そりゃときめくでしょ。
私はそんな事を想像しながらもカレーパンを食べ終え、食事をさっさと終わらせた。
そして、後は3人で雑談しながら、ふたりが食べ終わるのを見ていた…


光里
(楽しそうだな、ふたりとも)


私から見た印象はそれ。
聖君も美代さんも、凄く仲良さそうに会話する。
私…こんな風に自然と聖君と笑い合った事、あったかな…?
何となく、悲しい感じになってしまった。

元々、私と聖君は恋人とかじゃない。
ただの親しい友人だ。
でも、このふたりは何か違う…
まるで恋人同士みたいなやり取り。
美代さんは聖君に話しかけられて、顔を赤くしてモジモジしている…聖君はそんな彼女を見て、優しく笑う。
これって…何なんだろう?


光里
(私…もしかして、嫉妬してる?)


こんな気持ちは、生まれて初めてだった。
そして、それを認めてしまうという事は…



「光里ちゃん、そういえば進路はもう決めてるの?」

光里
「…えっ? あ、うん…私、就職決めてるから」


「決めてるって、内定?」

光里
「う〜ん、内定とまでは行かないけど」
「私、今年からこすぷれ〜んの実習生をやる事になってるから、とりあえずその結果次第で正社員になれるかどうかだね」


私は余計な気持ちを忘れ、笑顔でそう言うと、聖君と悠和ちゃんはへぇ〜と感心してくれた。
そして、聖君はうーん…と唸り、何か悩んでいる。


聖君
「やっぱ、皆それなりに考えてるんだな…」
「俺も当面主夫でもやる予定だし、後はどうするかな…?」
「まぁ、色々学ぶにしても、今からじゃ微妙に遅いしなぁ〜」
「働くのが良いとはいえ、どうするかな?」

光里
「聖君、やってみたい仕事とかは無いの?」


「…まぁ、無いな今の所」
「流石に…会社継ぐ気は無いしな」

悠和
「…? 会社、ですか?」


美代さんが聞くと、聖君は頭を掻きながら少し躊躇いがちに話し始める。
そこから出て来る話は、一般ピーポーの私にはとても理解しがたい話題だった。



「実は、両親の遺書にさ…自分たちが死んだら俺をオーナーにする様に、とか書いてあったんだよ」
「俺、名義上は『マサラITエンジニアリング』の会長、オーナーになってる訳」
「父さんは社長として、会長の母さんと一緒に会社を大きくしていったんだけど…」
「まぁとどのつまり、フツーに考えて両親が亡くなり、なし崩し的に俺がそうなっちゃったって訳」


それは物凄い話だ…そもそもマサラITエンジニアリングって、世界的に有名な大会社じゃない!?
御曹司とは聞いてたけど、そこまで凄いお坊っちゃんだったとは…


悠和
「聖先輩、ご両親の後を継ぐのは、嫌なのですか?」


「そうじゃない…でも、俺が会社経営なんてとても無理だし」
「それに…そんな事になったら、皆とは一緒にいられなくなる」
「俺は、それだけは嫌だ」
「仕事が大事なのは解る…でも、その為に家族を蔑ろにするのは絶対にダメだ」


聖君は、本当に真剣な顔でそう言う。
そして、聖君の言う家族とは、それだけ愛されているんだと思った。
私は、益々嫉妬してしまう…どうして、こんな気持ちになるんだろう。
何だか、とても羨ましい…


光里
「あ、もうそろそろチャイムだね」


「おっと、そうだな…つい、話し込んじゃたな」

悠和
「いえ、楽しかったです」
「これからも、ご一緒させてもらって良いですか?」

光里
「うん、もちろん♪ 3人の方が話も弾むもんね!」


私は可能な限り笑顔を見せた。
美代さんは嬉しそうに笑ってくれる。
私は、その顔を見て罪悪感で心が引き裂かれそうになった…
そして私は凄く自分が嫌になる、私は…自分で最低だと思う。

その後は何事も無く放課後になった…
私は仕事があるので、そのまま商店街に向かわなければならない。
聖君とは昇降口で別れ、私はひとりで走り出す。
聖君は、昇降口で美代さんを待っていた…美代さんは掃除当番だから遅れるそうだ。
私は、また胸が痛くなった。



………………………



勇気
「…? 光里ちゃん、大丈夫?」

光里
「えっ? ど、どうしてですか?」


いつもの仕事前の集会、その後に私は店長にそう言われた。
店長は、いつも最初の挨拶ポージングを見て、店員の体調を見極めるって言ってたけど…
店長はいつになく真剣な顔をし、私に対してこう言う。


勇気
「…貴女、今日は休みなさい」

光里
「えっ!? そ、そんな…大丈夫です!」
「私、働かないと…弟に食べさせてあげなきゃならないんです!!」
「だからお願いします、店長!!」


私は頭を下げて懇願する。
誰が見ても、滑稽な姿だろう。
でも、店長は優しく微笑んでこう言ってくれた。


勇気
「だったら代わりに今日は厨房に入りなさい、それなら許してあげるわ」
「少なくとも今の貴女の顔じゃ、とてもお客さんの前には出せない」
「貴女も、ここでプロを目指すのなら、自分の体調はちゃんとコントロールしなさい」

光里
「は、はい…申し訳ありません」


店長は、やっぱり全部見抜いている。
私が精神的に今正常じゃないって…
やっぱり、店長は凄いな。


風路
「お義父さん、それじゃ今日1日光里ちゃん借りて良い?」

勇気
「ええ、良いわよ…光里ちゃんもそれで良い?」

光里
「は、はいっ!」


私は力強く答える。
そして、私はニコニコ笑顔の風路さんに連れられ、初めて厨房に入る事となった。
そして、私はそこが戦場だと改めて知る事に…



………………………



風路
「とりあえず、いきなり調理とかはやらなくて良いから」
「まずオーダーが来たら、それに必要な食材をすぐに揃えて」
「そして、それを切り分けたり洗ったりするんだけど…包丁握った事、ある?」

光里
「ありません! 調理実習でも味見専門でした!!」


私が言うと、風路さんは苦笑する。
うう…情けない。
やっぱり、料理は出来た方が良いよね〜


風路
「じゃあ、今日は食材出しと皿出しだけで良いわ」
「私が作った料理を、担当の娘に渡したりしてあげて♪」


私は頷き、風路さんの腕前をしっかりと見る事に。
そして、次々に入って来るオーダーに、風路さんと店長は凄まじい速さで料理を作っていく。
私は、まず料理名と食材の照らし合わせが全然ダメだった。
最初だけに、風路さんが全部指示してくれるから良いけど、それにしたって物凄く速い。
やっぱり、この親子は達人ね…!



………………………



風路
「ふぅ…とりあえずピークは過ぎたかな?」

勇気
「お疲れ様、冷蔵庫にアップルジュースがあるから、飲んで良いわよ?」
「光里ちゃんは大丈夫? 初めての事だから大変だったでしょ?」

光里
「は、はい…食材出しと料理持って行くだけで、こんなに動くなんて…」
「いつも、ふたりだけでやってたんですよね?」
「って、去年まで風路さんはコスプレ部隊がメインだったし、実質店長ひとりでほとんどこなしてたのか…」


改めてとんでもない事だと思う。
店長は世界にも通用する凄腕シェフって聞いてたけど、その実力は近くで見れば素人でも感じられる程に凄まじかった。
そして、それに引けを取らないレベルで動いている風路さんもまた凄まじい。
最初はふたりだけで店をやってたそうだけど、本当にどれだけの経験を積んだらこうなれるのか、私には検討もつかなかった。

私がそんな事を考えていると、ふたりはうふふっと楽しそうに笑う。
そして風路さんはウインクし、口元に指を当ててこう言った。


風路
「こんなのは、ある程度なら経験だけで出来るわよ?」
「光里ちゃんは包丁も持った事の無い素人なんだから、最初は戸惑って当たり前…」
「だから、これから少しづつでも覚えていきましょ?」
「料理の出来る女の子は絶対モテるんだから♪」

光里
「は、はいっ! 頑張ります!!」

勇気
「ふふ…そういう風路は、まだ身を固める気は無いの?」


店長がからかう様にそう言うと、風路さんは呆れた様に息を吐いた。
そして冷蔵庫からアップルジュースを取り出し、それをコップにふたつ注ぐ。
そのひとつを私は受け取り、それを一口飲む…うん、ただの市販品じゃ無いのが解る味だ。


風路
「…もうお義父さんったら、知ってて言ってるんでしょ?」


風路さんはジュースを飲み、少しだけ悲しそうな顔をした。
どうしたんだろう? 何か…あったんだろうか?


勇気
「でも、その悩みを全部受け止めてくれる人もいるでしょう?」

風路
「うん…でも、私はいい」
「私は、見守れるだけで…幸せだから♪」


それは風路さんの本心みたいだった。
でも、店長は少し悲しい顔をする。
何やら恋バナみたいだけど、ちょっと気になるな…


光里
「風路さん、もしかして好きな人がいるんですか?」

風路
「うん、そう…かもね」


少し曖昧そうに答えたけど、やっぱりいる様だ。
だったら、そんな消極的なのはダメだ…と私は思ってしまう。
私の尊敬する、風路さんみたいな素晴らしい人が、ただ見守るだけだなんて、私は納得出来ないわ!


光里
「風路さん、そこは告白しましょう!」

風路
「え、えぇ!?」

光里
「こうなりゃ当たって砕けろです!!」
「いっその事、フラれてしまった方がスッキリする事もありますよ!?」


私がそう捲し立てると、風路さんは苦笑してしまう。
店長は逆にニコニコして見守っていた。


風路
「ダ、ダメよ…その人はもう彼女がいるし」
「私が入る余地は無いから…」

光里
「そ、そうなんですか〜!? …そう、ですか」


確かにそれは辛い。
相手に彼女がいるのに告白するなんて、それはかなり危険な橋だ。
例え成功したとしても、それは結果的に誰かを傷付けてしまうし…それは風路さんには絶対辛い事だろう。


光里
「…風路さん、他の人を好きにはならないんですか?」

風路
「うん、私は生涯その人を愛すると決めたから…だから、それでいいの」
「うふふ、それより光里ちゃんの方はどうなの?」
「すっかり聖君と仲良いみたいだけど、光里ちゃんはどう思ってるのかな〜?」


私はそう言われた時、どんな顔をしたのだろう?
きっと、とんでもなく見るに耐えない顔をしたんだと自分でも思う。
店長や風路さんは、明らかに驚いた顔で私を見ていた。

そして、私は…ふたりに今日感じた気持ちを正直に吐露する。
ふたりは、そんな私の為に親身になって話を聞いてくれた…



………………………



勇気
「成る程…そういう事だったのね、道理で今日は顔が曇ってた訳だわ」

光里
「…すみません、どうしても素直に割り切れなくて」

風路
「光里ちゃん、聖君の事が好きなのね?」

光里
「…解らないです」


私は、そう答える。
私の中にあるこの気持ちは、本当に恋なのだろうか?
私にとって、聖君は貴重な友達であり、一緒に笑い合える同級生。
でも、去年まではそんなに聖君と仲良くも無く、むしろ聖君からは避けられていた。

そんな彼に自分から関わっていったのは認めるけど、それは今の私にとって恋へと発展する物だったのだろうか?
私には、全く解りそうに無かった…自分の、事なのにね。


光里
「でも、聖君が他の女の子とあんな幸せそうな顔をしているのを見ると…」
「私、何だか自分が嫌になって来たんです…」


私は今日の事を思い出し、両手で顔を押さえた。
きっと、惨めな顔をしているだろう。
でも、店長はそんな私の背中を優しく撫でてくれる。


勇気
「光里ちゃん、それは紛れもなく恋よ?」
「そして貴女の今感じているその感情は、決して嫉妬じゃないわ」
「むしろ貴女は聖君の事も、その悠和って娘も傷付けたくないだけ」
「貴女は、優しい娘だものね…」

光里
「そんな事、無いです」
「私は貧乏で、弟も育てなくちゃならなくて、だから辛い時も多くて…」
「そしてそんな時でも、一緒に笑ってくれる彼の笑顔が純粋に好きだった」
「でも、今は…きっと私、笑えない…!」


私は思わず涙してしまう…もう我慢が出来なかった。
どうしても、私にはあのふたりを越えられるイメージが沸かない。
あの、聖君の幸せそうな顔が…私は忘れられない。
そんな情けない私の姿を見かねたのか、風路さんは珍しく厳しい顔で私にこう言う。


風路
「光里ちゃん、この際思いきって告白しなさい」

光里
「え、えぇぇぇっ!? こ、告白とか何で!? そんな事出来ませんよ!!」

風路
「お、落ち着いて…何も人前で堂々とやれとは言わないから」


私は泣きながら風路さんに反論した。
いくら何でも、こんな気持ちのまま告白なんて出来る訳ない!
風路さんは苦笑して私を宥めるも、私は頭が混乱するばかりだった…


風路
「聖君とふたりきりになれる様に、私がセッティングしてあげるから、思いきってやってみない?」
「もちろん、無理にとは言わないけど…」

勇気
「光里ちゃん、たまには勇気を出してみるのも良いかもしれないわよ?」
「貴女も自分で言ってたじゃない…いっそフラれた方がスッキリする事もあるって」


うぐ、確かに…自分であんな事言っておいて、自分には出来ません!は、流石に酷いよね。
私は涙を拭き、色んな思いを全部吐き出して、この際開き直る事を決めた。
女は度胸! この際、派手に散ってやるんだから!!


光里
「やります! ドンと来いです!!」

風路
「うん、その意気♪」
「それじゃ、今から聖君呼ぶから待っててね?」


私は固まる…いくら何でも早すぎません?
流石にまだ心の準備が…
しかし、風路さんはニコニコしながら、携帯電話で聖君に電話している…どうやら、私はまさしく不退転となった様だ…
せめて、嫌われない様にだけしよう…orz



………………………



光里
「萌えたわ…萌え尽きた……真っ白な灰にね」


とりあえず、やる前から既に萌え尽きてしまっているが、私は四面楚歌だ。
聖君に告白するという、爆死するのが解りきっている無理ゲーチャレンジモードに私は挫けそうになるが、それでも言った以上やるしかないのもまた事実。
私は、もう覚悟を決めるしかなかった…
っていうか、もうどうにでもなれ!!


勇気
「ふふ…大丈夫よ♪ きっと玉砕したとしても、聖君は貴女の事を大切に思ってくれると思うから」


店長はそう言って仕事を再開する。
そして、連絡を終えた風路さんが私にこう言った。


風路
「聖君、すぐに来るって…だから、着替えて待ちましょう」
「2階のリビングを使って良いから、そこで待っていてね?」
「話が終わるまで、誰も上には上がらない様にさせるから、正真正銘ふたりきりよ?」
「じゃっ、健闘を祈ります♪」


そう言ってポーズを取る風路さんを尻目に、私は更衣室に向かった。
もう、やるしかない…女は度胸! よし、やるぞ!!



………………………



光里
「………」


かつて、これ程恐ろしい待ち時間があっただろうか?
これでも心臓は太い方だと思っていたんだけど、こんなにも緊張するのは経験が無い。
例えコミケで初コスプレやった時でも、ここまでは緊張しなかった。
このプレッシャーはもはや別物だ…そして、ついに静寂は破られる。



「あれ? 光里ちゃん…?」
「俺を呼んだのって、もしかして光里ちゃんなの?」

光里
「…う、うん」


わぁ〜!! もう既に頭が爆発寸前。
こんなんどないすんねん!?
思わず関西弁が出る程にパニクっている…だけど、ここでやらなきゃ女が廃る!!
私はガチガチになりながらも、とりあえずこう話題を始めた。


光里
「さ、聖君…聖君ってさ、優しいよね…」


「は? あ〜まぁ、どうなんだろ? あえて他人と比べた事は無いしな〜」


はい、いきなり選択ミス!
せめてもう少しマシな会話しなさいよ私!?
これ絶対好感度下がったでしょ!?
私は気を取り直し、一気に本題に入る事にした。
これ以上余計な事を言うのは無駄でしかない!


光里
「あのね…今日は、どうしても言いたい事があって…」


「な、何…?」

光里
「ゴメンね、先に謝る…多分、聖君にとっては迷惑な事だと思うから」


私は泣きそうになりながらも、聖君の目を真っ直ぐ見てこう言う。
もう迷いは無い、むしろ本気で言わなきゃただのネタだと思われる!
私の本気の気持ちを、真っ直ぐぶつけないと!!


光里
「聖君、私は貴方が…好きです」
「私、悩んだけど…これ以上自分に嘘吐けない!」
「こんな所で、尊敬する人にお膳立てまでして貰って…一体何を言ってるんだコイツ?とか、思うかもしれないけど…」
「私…聖君の事が、好きになっちゃったみたいだから」


「………」
「……」
「…俺、さ」


それはことのほか長い沈黙だった。
聖君は俯いてしまい、私とは目を合わせずに、小さく呟く。
そして、聖君は泣きながら告白した私を見て、物凄く悲しそうな顔をしていた。
そして…本当に、本っ当にすまなさそうに…彼は小さくこう言う。



「やっぱり…誰かひとりを選ぶなんて、俺には出来ない」
「俺は、例え偽善だと言われても、俺を好きでいてくれる皆を愛すると決めたから…」
「そして、絶対に皆を信じると…」


一体何の事か、私には全く解らなかった。
でも、聖君は私の知らない所で、何か大きな約束をしているのは理解出来た。
そしてそれこそが、きっとあの聖君を変える何かなのだろうと、私には何となく予想出来る。
同時に、私はやっぱり玉砕する以外の道は無かったのだと…確信も出来た。



「俺は、約束したんだ…大好きな皆と、一緒に家族になるって」
「だから、ゴメン…俺の事は恨んでくれても構わない」
「いや、そもそも理解不能だよな? 何なんだよそれ…自分で言っててバカみたいな、最低の理由だ」


聖君は悲しい顔のまま、自虐的に苦笑していた。
きっと、私には言えない秘密があるのだろう。
だからこそ、聖君はこんな言い方をしているのだろうから…
聖君なら、私の事を気遣って言ってくれるはずだから…
だからこそ、私はあえて笑顔でこう言う事にした。


光里
「ううん、良いよ…こうなるのは解ってたし」
「逆に、告白して吹っ切れた!」
「うん、そうだよね…私なんて、とても美代さんみたいな娘には勝てないし!」


「違う!! 光里ちゃんは誰にも劣ってなんかいない!!」


私は、突然の叫びにビクッと体を震わせた。
聖君の顔は真剣その物、まるで自分に対して怒ってるかの様に、聖君は自分の拳を強く握り込んでいた。
私が言葉を詰まらせていると、聖君はそのまま耐える様に静かに呟き始める。



「光里ちゃんも、悠和ちゃんと同じだよ…」
「ただ誰かを好きになって、それで悩んで、こんな風に玉砕覚悟で告白までして…」
「涙まで流して! フラれても笑おうとして…そんな光里ちゃんが、誰かに劣っていたりするものか!!」

光里
「聖、君…」


それは、聖君の正直な気持ちに思えた。
店長の言った通りだ…聖君は例え相手をフッても、その人を大事に想ってくれる。
私もまた、聖君にとっては…



「俺は…光里ちゃんの事、1番大切な友達だと思ってるよ」
「よく、さ…こういう告白で失敗して、今まで仲良かったふたりが疎遠になって…とかドラマとか漫画とかであるだろ?」
「俺、そんなのはただの不幸だと思うから嫌いなんだ…」
「別に、そのふたりは互いの事が嫌いな訳じゃないのに」
「俺は、光里ちゃんとは仲の良い友人でいたいよ…俺にとっては、人間で初めての友達だったんだからだから…」


私は、その言葉を聞いて目が覚めた。
ああ…何で今頃気付いたんだろ?
聖君も、本当は同じ気持ちだったんだ…
でも聖君には多分…自分で決めた何かのルールがあるから、そしてそれを破る事は絶対出来ないから…

そっか、そうだったんだね…


光里
「やっぱり、ゴメンね…私がバカだったよ」
「でも、これで良かったんだ…聖君の正直な気持ちが知れて」
「私は、まだ友達で…良いんだよね?」


「友達だよ…俺には少なくとも、光里ちゃんが1番大切な友達だ」


1番大切、か…ちょっとズルいねそれ。
でも、もう良い…私は風路さんの気持ちが何となく解った気がしたから。
例え相手に愛されなくても、自分が生涯愛せるなら…それは幸せなんだと。

それなら、私もそうなろう…憧れの人と同じ様に。
例え、友達でも…私は聖君の事を愛する。
それは、端から見たら不幸な女なのかもしれない。
でも、私はもう決めた…聖君を誰よりも好きでいると。
別に選ばれなくたって良い…私は、それで幸せになるから。



………………………



風路
「………」

勇気
「光里ちゃん、大丈夫かしら?」

風路
「大丈夫じゃ、無いかもね…でも」
「聖君は、自分からは誰も不幸になんかしたりしない」
「だから…光里ちゃんはきっと、自分で立ち直れるわ」


私は、そう確信していた。
聖君は、あれだけのポケモンと世界を救った。
それなのに、たったひとり…好きでいてくれる人間を、見捨てるわけが無い。
きっと光里ちゃんの事も、聖君は大切に想うだろうから…

ひとりの男性としては、ちょっと問題有りとも言えるけどね…



………………………



光里
「ゴメンね…家まで送ってもらって」


「いや良いさ…もう空も暗くなってるし」


私たちはあれからふたりで一緒に帰り、聖君に私の家まで送ってもらっていた。
あれから、私たちは改めて絆を深められたと思う。
私は結果には一応満足しており、今では笑顔で聖君と楽しく話をしながら、ちゃんと家まで歩いけたのだから…


光里
「ふっふふ〜、これがエロゲーなら上がって行く?とか言うけど…♪」


「勘弁してくれ…俺にそんな勇気は無い」


聖君は笑ってそう言う。
まぁ、そんな気はしてたけど…私はあえてからかってみる事に…
その際、風路さんを真似てウインクもしてみる。
それを見て、聖君は少なからず驚いている様だった。


光里
「別にその気があるなら、私はやぶさかではないよ?」


「ひ、光里ちゃん何か雰囲気変わった?」

光里
「ふっふ〜ん♪ 恋に破れた女は、より強靭になるのだ!」
「ってなわけで! また明日から友達としてよろしくね?」


そう言って、私は部屋まで走る。
聖君は手を振ってくれた…だから私も笑顔で返す。
これで良い…だって私は決めたんだから。
もう迷いは捨てれる、私には他にも大切な物があるんだから…



………………………



光里
「ただいま〜」


「うわっ、何だよその顔!?」
「何かもうぐちゃぐちゃだぞ? とりあえず顔洗えよ!」


おっと、そうか…かなり盛大に泣いたからね。
やれやれ…とりあえずシャワー浴びて夕飯にしましょうかね。
まぁ、インスタントラーメンだけど。

そう、私は貧乏でも弟を守らなきゃならない。
これからちゃんと料理も覚えて、正社員になって、コスプレも楽しむんだから♪

今、私の気持ちは明るかった。
きっとこれからも私は頑張れる。
聖君と一緒に学校に行けるのは、もう3年生の間だけけど、それでも私は全力で楽しむ!
だから飛び越えて行こう、風を切って、もっと高く!
私には、コスプレでトップに立つ夢があるんだから!!










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第3話 『モットモットときめけ光里ちゃん!』


To be continued…

Yuki ( 2019/04/20(土) 10:13 )