とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第1章 『新たなる生活』
第1話

「という訳で本編開始!!」


何気に再編の際に結構変更点あったから色々大変だったわ…
改めて見直すとかなり不自然な点も散見されたし、まだまだ設定が曖昧だったのを実感する…
と、メタな話はここまで…とりあえず今は4月で、俺は現在高校3年生として登校中だ。
とりあえずあれから体もそれなりに鍛えられ、もはや以前のもやしではない!
今の俺はモヒカンに屈する種モミではないのだ!



「あ、聖君おはよ〜♪」


「あ、おはよう…光里ちゃん」


そして、いつもの様に登校途中で挨拶してくる女学生の声。
序章では割愛してしまったが、ここで改めて紹介しよう!
この娘は『新央 光里』(しんおう ひかり)
俺の元クラスメートで、去年ウチの学校に来た転入生。
知り合ったのは2学期で、たまたま俺が他の学生からカツアゲ食らって倒れてた時に助けてもらったのが何気にキッカケだ。

とはいえ、あの時の俺は相当やさぐれてて、他人とは誰とも話そうとしなかったし、信用もしなかった。
それでも光里ちゃんは、姉さん同様に俺の事を色々心配してくれてたんだ…
ちなみに彼女は姉さんの家でバイトをやってて、コスプレ喫茶店で働いている。
仕事振りは何度か見てみたが、現実世界でも光里ちゃんはスタイル悪くないし、元気にやっていたので安心した。


光里
「もう3年生か〜、何だかあっという間だったね…」


「…ホントにゴメンな、以前の俺はとにかくバカだったから」


俺が俯いてそう謝ると、光里ちゃんは首を横にフルフル振って良いよ♪と、笑顔で答えてくれた。
もう何度か似た様なやり取りはしてきたけど、何だかんだで今はこうやってふたり一緒に登校する仲なんだから、縁ってのは大事だよな…と本当に思う。



………………………




「さってと、今日から高校3年…次のクラスはっと〜?」

光里
「あ、私1組だ〜聖君は…流石にいないか、残念」


光里ちゃんは露骨に残念そうな顔をする。
まぁ、光里ちゃん他の友達少ないみたいだからな…
趣味の問題もあるだろうし、俺という友人は大事なのだろうな…



「ん、3組にて俺の名発見…さて、新しい学生生活の始まりだな」

光里
「うんっ! クラスは違うけど、これからも仲良くしてね♪」


俺はああ…と笑顔で手を上げて返し、ふたりで歩き始める。
ちなみに、懸命な読者なら解ってるとは思うんだが、別に俺たちは恋人じゃない。
あくまで親しい友人程度なのであしからず。
そもそも、3年になってクラスが別になるとか好感度足りてない証拠だ。
ここからはようやく平日に能力上げても新キャラは出て来ないからな…隠しキャラ狙いじゃないならキッチリ努力する必要がある。
とまぁ、冗談はさておき…俺にとっては特に代わり映えの無いであろう、新たな学校生活を堪能する事にする。



………………………



不良
「よう、聖く〜ん♪ ちょっとお小遣いくんない?」


と、こんな始業式にも関わらず、俺に絡むバカが現れる…と。
そろそろHRだってのに、暇な奴だ…ちなみにクラスは違うのにわざわざ来るんだから、意外に律儀なのかもしれない。
とりあえず俺はため息を吐きながらこう言う。



「出たよモヒカン…もう世紀末は過ぎてるってのに」
「つか、いい加減諦めろよ…俺はもうお前に負ける気しないぞ?」


当然ながら、俺はあの事件から毎日トレーニングを繰り返し、体を鍛えに鍛えた。
もちろんその中でも勉強は最低限こなし、俺は無難にテストもこなしてる。
そして、3学期の終わり際の時点で、コイツは既に1度返り討ちにしているのだが…
そこは悲しいかなやはりモヒカン…学習能力が無い。
なお、便宜上ネタみたいにモヒカンと言っているが、コイツはホントにモヒカンヘアーだ。
マジに誇張でなく、○斗の拳で良く見るあのモヒカンヘアーだ。
ちなみに同級生だが名前は覚えてない…良く絡まれていたのだが、全く気にもしなかったからな…


モヒカン
「へっ、こちとらコレに命賭けてんだ! 負けたら明日はねぇんだよ!!」


「いや、フツーにバイトでもしろよ!!」
「あんまり俺に絡むと、その内ロクな目に遭わなくなるぞ!?」


俺はツッコミながらも呆れてそう言う。
一応、家族には学校に来るなと釘は指しているが、俺の身に事が及んだらその限りではない。
まぁ、流石にこの程度で手を出したりはしないと思うが…

チャッ!と音を立ててモヒカンは何と光り物を出して来た。
モヒカンは自信満々の笑みでナイフを向けて笑う。


モヒカン
「へっ! 今日はひと味違うぜ!?」


「おいおい…刃物とは本気かよ?」


俺は別にビビらずに軽く言ってやる。
こちとら全身凶器の化け物とやりあった事もあるんだ…あんなモン、別に何の怖さも無い。
ちなみに、これまでの間に俺は愛呂恵さんや鐃背に師事して簡単な格闘技術は学んでいる。
そんなハイレベルのポケモン娘に比べりゃ、モヒカンのスピードなんてスローすぎてあくびが出るレベルだし、さてどうするかな?


モヒカン
「ヒャッハー死にやがれ!!」


「ぐふ…!」


俺は不意打ちで腹をグサリと刺され、その場で前のめりに倒れる。
そしてモヒカンは勝利を確信し、俺を指差してこう言った。


モヒカン
「勝った! 新シリーズ完!!」


「ほぉ〜それじゃ一体誰がこの作品の主人公をやるってんだ?」
「まさか、テメーじゃあねーだろうな?」

モヒカン
「げっ!?」


俺は何事も無かったかの様に笑って立ち上がる。
明らかに驚いているモヒカンに対し俺は笑いながらこう言った。



「次のテメーの台詞は、コイツ何で腹刺されて平気なんだ!?だ…」

モヒカン
「コイツ何で腹刺されて平気なんだ!?」
「…はっ!?」


俺はニヤニヤ笑い、腹に刺さったナイフを抜いて足元に捨てる。
そして、腹に仕込んでおいた雑誌を奴らに見せつけてやった。


モヒカン
「しゅ、週刊少年○ャンプ!?」


「コイツがなければ死んでいた…」
「しっかし、週刊少年○ャンプも貫けねー様じゃまだまだだな…」
「おっと○ャンプ放送局まで来てんじゃねーか、結構危なかったな…」


およそ後数ページでやられていた…今の週刊少年○ャンプはそこそこ分厚いと言うのに…
俺はそれも投げ捨て、改めて上着を脱ぐ。
もう4月だし、動き回るには暑いからな。
ちなみに、これは威嚇の意味もある。
今の俺の筋肉はそこそこあるぞ? たった3ヶ月のトレーニングだったが、俺の筋肉量は5s程上昇してる。
これも愛呂恵さんの考えてくれた栄養満点の食事と、鐃背さんが教えてくれたトレーニングが良かったからだ。
俺は首をコキコキ鳴らしながら、とりあえず威圧感を込めてこう言ってやる。



「おら、来るなら来い…今ならオラオラで許してやる」

モヒカン
「お、覚えてやがれ〜!?」


あらら…さっさと逃げちまった。
やれやれ、3年になってまでこんな事になるとは…
まぁ、今まで俺がヘタレでお小遣いあげまくってたからなんだが…
習慣も染み付いたら当たり前になる…というのは俺の持論だ。
俺は足元に落ちていたナイフをこれまた落ちていた雑誌に挟み、近くのゴミ箱に捨てた。
そして、投げた上着を拾ってさっさと教室に戻る…後はHRだけだし、すぐ終わるだろ。



………………………



担任
「よし、本日はこれで終了!」
「お前ら、帰宅組は寄り道せずに帰れよ?」
「後、魔更! お前はちょっと職員室来い!」


「あん? 何で俺だけ…?」


俺はとりあえず担任に呼ばれてしまったので、鞄を持って担任と一緒に職員室に向かった。
別に叱られる様な雰囲気じゃないな…何か呼び出される要素あったっけ?
俺は疑問に思いながらも、とりあえず黙って職員室まで辿り着いた。



………………………



担任
「魔更、お前またやられたのか?」


「はい? やられたって何をです?」


担任は俺の反応を見て呆れる。
奇しくもこの担任は去年と同じ担任で、俺の事はよく知っている担任でもある。
まぁこの人の事だ、どうせさっきのケンカの話でも聞いたんだろうな。


担任
「お前、ずっと不良に絡まれてたろ?」
「あげく、自殺未遂なんてしやがって…あの時はどんだけ心配したと思ってたんだ?」


「別に今はどうって事無いですよ…まぁ、心配かけたのは謝りますけど」
「っていうか、自殺の件は既に3学期開始で謝ったでしょうが!」


俺がそう言うと、少し気を楽にしたのか担任は微笑する。
この人はいわゆる体育会系の担任だが、気さくで良い人だ。
生徒に対して親身になって話をしてくれるし、今もこうやって俺の事を気にかけてくれてる。
苛められてた俺を、よく励ましてくれてたっけか…


担任
「とりあえず、今はそれは良い」
「一応、聞いておくが…お前進路どうするんだ?」
「お前だけだぞ? 3月から未記入のままなの…」


おっと、それは完全に忘れてた。
そういえば何だかんだゴタゴタだらけで、進路用紙は白紙のままだったな…
とはいえ、何も考えてはいないんだが…



「とりあえず、進学する気は無いんで」
「金に困る事もそろそろ無くなるし、卒業したら結婚でもして専業主夫やりますよ♪」


俺は冗談混じりにそう言って笑ってみせた。
まぁ、実際にそうなっても俺は良いんだがな…家族が養ってくれるなら。


担任
「はぁ…まぁ、とりあえず就職活動という方向で進めとくから」
「何かやりたい事あるなら、いつでも相談しろよ?」
「後、結婚とかまず相手を見付けてから言え…それとももう新央とはそんな仲なのか?」


「まさか…彼女はただの友人ですよ」


それは間違いない…てか、仲は良いがフラグは無いだろ。
それとも、他の目から見たらそう見られるのか?
俺からしたらネタ交わしながら登下校する、変な人間関係にしか見えんと思うが。
とりあえず、担任はふむ…と微笑して次にこう言った。


担任
「…成る程、と言う事は苧環か?」
「お前とは小さな頃からずっと一緒だったらしいからな…うむうむ」
「お前とは結構年の差あるが、何だで家族みたいなもんだし、ようやくお前もそういう気になったのか…」


「あ、いや…姉さんとは断じてそう言うわけでは」


まさかの展開に俺が軽く慌てると、担任は、はっはっは!と面白そうに笑った。
ちなみにこの担任、風路姉さんの先輩で中学校が一緒だったらしい。
風路姉さんは中学卒業して家の仕事を継いでるから、担任とはそれっきりだとは言ってたが。


担任
「まぁ、誰が相手かは知らんが、苧環ももうそれなりの歳だ」
「アイツも案外お前の卒業待ってるのかもしれんし、本気ならちゃんと考えてやれよ?」


「…はい、そう…ですね」


改めて、俺は風路姉さんの事を考える。
風路姉さんは、まさかのケンホロウで、20年前に人化を果たしたポケモン娘。
死にかけていた所を、今の養父である勇気さんに拾われ、姉さんは養子となった。
本来は背中に翼があったそうだが、人間社会でちゃんと生活する為にと、すぐに切除したそうだ。
俺は翼を見た事は無いけど、今でも傷は残っているんだろうな…


担任
「よし、とりあえずもう良いぞ! 気を付けて帰れよ?」


「はい、失礼します」


俺は礼をして職員室を出て行く。
そして、そのまま昇降口に向かい、俺は帰路に着く。
特にそこからはトラブルも無かった…



………………………




「はぁ〜、さてと今日辺りでやっと決着か」


俺は帰りながらそんな事を考えていた。
ちなみに決着とは裁判の事だ。
俺は俺の遺産を無断で横領した親族を、弁護士通して訴えた。
で、今日がその最終審理。
証拠もゴロゴロ出てるから、本当に楽勝で勝つだろ。
俺は心の中でほくそ笑んで家の扉を開けた。


守連
「あ、お帰り〜♪」


「おう、皆は?」


俺は中に入ると、リビングには誰もいない様だった。
守連は掃除機を手にしている所を見ると、掃除中の様だ。
阿須那と女胤は仕事してるだろうし、愛呂恵さんはタイミング的に買い物かな?
華澄はこの時間だとまだ寝てるか…


守連
「とりあえず、いつもと同じだね…愛呂恵さんは買い物だよ」


「そうか…まぁ、夕方になったら阿須那と女胤が帰って来るだろ」


華澄は今日は朝だけの仕事の予定だし、阿須那と女胤も勤務は夕方までだからな。
ふたりとも17時前後にはいつも帰って来るし、そこは大体変わらないだろ。
とりあえず、今日の裁判で勝訴すれば大量の遺産が返還されるはずだから、実の所そこまで無理に働く必要は無いのだが…
まぁ、働く事に意味はある…それも社会勉強だからな。



「さて、じゃあ俺は着替えたら裁判所行って来るから…飯は待っててくれな?」

守連
「うん、分かったよ〜♪」


守連はそう言って笑い、そのまま掃除を続ける様だった。
俺はすぐに部屋に戻り、着替えて支度をする。



………………………



風路
「いよいよ決着ね…ホント、聖君の親戚なのに酷い事するんだから!」


俺は風路姉さんの車で裁判所に向かっていた。
ちなみに、車種はトヨタのセリカ GT-FOURだ。
中古車で100万円位のをローンで買ったそうで、姉さんのお気に入りらしい。
俺が退院した時に乗った車もコレだ。



「まっ、両親は家族から望まれた結婚じゃ無かったそうだしね…」
「親戚からは良い目で見られてなかったみたいだし…」

風路
「それでも、まだ小さい頃の聖君に黙って、ちゃんと相続されてる遺産を保護者が無断で横領するなんて!」
「しかも聖君が物心ついたら、後は捨てる様に放置するなんて、私は今でも許してないんだから!」


珍しく温厚な姉さんが本気で怒っていた。
実の所、この真相も姉さんは今年の始めに知ったばかりで、今まで姉さんはそれを知らなかったらしい。
一応、当時の俺には最低限の仕送りは送られており、別段ひとりなら生活苦になる事は無かった。
当然、小さな子供の俺に遺産とか何の理解も無いから、それが当たり前だと思ってたしな。
だけど、現実世界に戻って来て色々調べてみたら、実際には莫大な金額が俺に相続されている事を知った。
そして、その金の9割以上が親戚に奪われていた事も…

当然ながら今の俺はもう以前と違う。
俺はクソ親戚をソッコーで訴える事にし、向こうもまさかの徹底抗戦。
俺は弁護士に頼んで調査を依頼した訳だが…
調査の結果、証拠が出てくる出てくる…向こうもまさか訴えられるなんて思ってなかったんだろうな…何の隠蔽もしてやがらなかった。
と、いうわけで…今夜は99%祝勝会の予定だ。
既に場所も予約してあるという準備の良さで、俺は勝訴を確信していた。



………………………




「勝訴」

風路
「解ってたけど、本当に簡単終わっちゃったわね…」


詳細はカットしたが、とりあえず予定通りの完全勝訴。
ここまで粘るだけ粘られたが、流石に誰がどう見ても俺の勝ちは明らかだった。
こうして俺は見事に遺産を取り返し、ようやく新たなスタートラインを切る事に成功する。
風路姉さんも大きくため息を吐き、とりあえず溜飲を下げた様だ。
クソ親戚には悪いが、しばらく檻の中で大人しくしてもらおう。



………………………



風路
「そういえば、祝勝会ってどこでやるの?」


「沖縄のリゾートホテル貸し切った…次の土日はそこでゆっくりするつもり」

風路
「土日で? 流石に沖縄だとしんどくない?」


俺は全然…と首を横に振る。
まぁ、一応理由もあるからな…
姉さんはわけも解らず、そのまま不思議そうな顔で車を運転していた…
そして、それからは特に何もなく平常運転。
次の土日までは時間がすっ飛ぶ…と



………………………



風路
「お邪魔しま〜す」


「あ、来た来た…待ってたよ姉さん」
「白那さん…とりあえず皆います?」

白那
「うん、4人ともリビングにいるよ? じゃあ、すぐに行く?」


俺ははいと答え、とりあえず姉さんを一旦外に出して家にいる全員を玄関先に集めた。
そして、確認の為に俺は点呼を取る。



「じゃあ、点呼!」

守連
「1!」

阿須那
「2!」

華澄
「3!」

女胤
「4!」

愛呂恵
「5」

白那
「6♪」

風路
「7…って、まさか電車とか飛行機で今から行く気?」


俺はとりあえず姉さんをまぁまぁ…と抑え、白那さんに頼む。
既にホテルには残りの皆はいるはずだから、とりあえずまずは移動だ。
ちなみに姉さん以外のポケモンは皆偽装薬を飲んでいる。
これなら人間に見られても全く問題は無いからな…
そして俺と姉さんは対抗薬を飲んでいる、これで俺と姉さんは偽装が見えなくなるのだ。


白那
「じゃ、そろそろ行こうか…」


白那さんのその言葉と共に、俺たちは海の見えるリゾートホテルに一瞬で到着した。
ホテルだけでなく、ビーチも貸しきってあるのでぶっちゃけ他の客は誰もいない。
金の問題も大体解決したし、今日明日は遊び尽くす予定だ♪
なお、タイミングの問題はあるので、今回だけは白那さんに代金は前借りさせてもらってる。
勿論、後で全額返金する予定だ。


風路
「え、 えぇっ!?」

白那
「はい、到着…もう皆会場にいると思うよ?」


「ありがとうございます、白那さん」


相変わらず白那さんの空間転移は便利極まりない。
この能力があれば地球の裏側でも一瞬で移動出来るからな。
既に夜とはいえ、流石は沖縄…気温はチト高い。
俺は未だに驚いている姉さんの手を引き、ホテルに入って行った。
そして受付でチェックインを済ませ、次は宴会の会場に。



………………………




「それじゃあ皆さん! 勝利と新たなスタートを祝して!!」

一同
「乾杯!!」


俺は会場のお立ち台で、そう言って司会を勤めた。
そして、乾杯の合図と共に、皆の食事が始まる…


守連
「ハムハムハム!! もう、お腹空いてたまんない!!」

愛呂恵
「守連さん、お飲み物もどうぞ…」

鐃背
「ぎゃっはっは!! どんどん酒持って来ーーーい!!」

香飛利
「これ美味し〜い♪ もう、どんどん食べれる!」


守連班は凄まじい勢いで飲み食いしていた。
守連と香飛利は相変わらずの食いっ振りだな…大食いは守連の方が流石に上みたいだが。
鐃背さんは、一升瓶片手に紹興酒一気飲みしてる…これで潰れないんだから大したモンだよな〜
愛呂恵さんは既に食べ終えたのか、皆のフォローをしているみたいだった。
そんな愛呂恵さんは俺の姿に気付き、椅子へと促してくれる。


愛呂恵
「聖様、よろしければどうぞ…」


「あ、ゴメン愛呂恵さん…先に皆に挨拶するから」


俺はそう言って手を振り、次の班に向かう。
愛呂恵さんはペコリとお辞儀をし、送り出してくれた。
他のメンバーはもはや俺が見えていなかった様だな…



………………………




阿須那
「へ〜…こんな酒もあるんやな」

白那
「どう? 日本酒も良いけど、こういうのも良いでしょ?」


どうやら阿須那も今日は珍しく飲んでいる様だ。
白那さんに何かを薦められてる様で、ショットグラスで無色透明の酒を飲んでいた。
流石に見た目では何の酒かは解らんな…


夏翔麗愛
「聖お父さん〜♪」


「おっと、夏翔麗愛ちゃんも食べてるか?」


夏翔麗愛ちゃんはうんっ!と力強く返事する。
テーブルを見ると確かにかなり食べている様で、やはり夏翔麗愛ちゃんも中々のファイターの様だった。



「よっ、いい加減誰か孕ませたか?」


「お前も変わらないな…そういえばお前、今は大学行ってるんだってな?」


俺がそう言ってやると、藍はケラケラ笑う。
コイツ、何気に天才なのはマジみたいで、義務教育すっ飛ばして大学に入学したらしい。
しかもアメリカのハーバード大学…文句無しの主席合格で、流石のアメリカも藍の入学を認めたらしい。
当然、そんな藍が放っとかれるわけなく…何かと話題に事欠かない様だが…



「まっ、お前ら凡人とは頭の出来が違うからな」


「おのれ…ピーマンも食えんお子様の癖に!」
「つーか、お前大学って、何を研究してるんだよ?」


「厳密に言えば、性科学だが…まぁ遺伝子学もついでに研究してる」
「特に、俺様たちポケモンが、本当に人間と交配出来るのか?とか…また、生まれてくるなら子供はどうなるのか?とか、その辺を個人的に研究してる」
「当然だが、ポケモンとか世間一般に知られてるわけはない」
「だから、学会ではあくまで人間と近縁種の交配は可能なのか?というテーマで通してあるんだがな…」


アカン…想像以上に真面目な話だった。
こりゃ、長くなりそうだからこの辺で切ろう。
流石に俺の理解力が限界越えてヤバい…



「…藍、その辺にしてそろそろピーマンを食べなさい」
「…でないと、怖いお姉さんが遠くから睨んでるわよ?」


棗ちゃんがそう言うと、藍は顔を青くして即座に皿に残していたピーマンを食べ始めた。
やれやれ…泣く程怖いなら好き嫌い直せば良いのに…
俺は棗ちゃんたちに手を振り、次の班へ。



………………………



華澄
「そうですか…何とかやっている様で何よりです」

舞桜
「はい、一応面接だけでも頑張って見ようかなって…」

水恋
「でも、大変じゃない? 外で働くにしたって人間関係もあるし…」

神狩
「逆に水恋はダラけ過ぎ…」


どうやら、4人はそれぞれの現状を話している様だ。
俺はとりあえず声をかける。
すると、華澄と舞桜さんが嬉しそうに笑いかけてくれた。
あ〜癒されるわ〜このふたり。
やっぱり、たまにはこういうフツーの笑顔が欲しい時あるのよ!!


華澄
「聖殿もこちらで?」


「いや、まだ皆に挨拶してないから…」

舞桜
「そうでしたか、それじゃ引き留めたら悪いですね」

水恋
「しっかし、酒は20歳からか〜…アタシもうちょっとなんだけどな〜」

神狩
「とりあえず、まだダメ…これは私の」


神狩さんはそう言ってウイスキーをラッパ飲みする。
ストレートで行くとは…あれ結構度数高いだろうに。
前にも見たけど、鐃背さんと神狩さんは相当酒強いんだな…
俺はそんな事を考えながら、とりあえず次の班に向かう事にした…



………………………




女胤
「成る程…そういうのもありますか」

騰湖
「ああ…悪くないと思うが?」


ん? 何やら真剣な顔で桃色脳ミソふたりが話し合ってるな。
鳴は喜久乃の皿に料理を取ってやっている。
むぅ…鳴の奴、中々気遣いの出来る女だな…よし好感度を しておこう。
とりあえず俺の存在に気付いた女胤が声をかけてきた。


女胤
「あら、聖様…丁度良かったですわ」

騰湖
「うむ…聖殿の意見も聞いておきたいしな」


ふたりは真剣な顔で俺を見る。
俺は?を浮かべ、ふたりの言葉を待った。
かなりマジな表情だな…一体どんな話だ?


女胤
「聖様は、正常位と後背位ではどちらが好みですか?」
「ちなみに私的にはやはり、正常位で抱き締められながらのベロチューで子宮に種付けプレスが最高なのですが…」

騰湖
「我としては、騎乗位か座位が好みだな…対面背面どちらもやはり興奮する!」
「密着して互いに絶頂出来れば最高だろう!!」


「…お前らにマトモな話を期待した俺がアホだった!」


つーか、コイツら何読んでんのかと思ったら、セクロス体位48手の説明書じゃねぇか!!
いくら身内だけだからって堂々とテーブルに広げて読むなよ!
喜久乃がドン引きしてるぞ!!


女胤
「やはりスタンダードな物も良いですが、あえてアクロバティックな技に挑戦するのも良いですよね…」

騰湖
「ああ…我としてもこの菊一文字をやってみたいな」
「聖殿、試してもらえませんか?」


「遠慮しておく…勘弁してくれ」


俺は最後に鳴たちに手を振ってその場を去った。
鳴の奴は何気に冷静だな…もう慣れたのだろうか?
あんな桃色脳ミソと一緒だと慣れてしまう物なのか?
ちなみに、俺はどの体位でも構わないが、強いて言うなら相手に合わせるのが正しいマナーだと思ってる。
セクロスは互いに気持ち良くならないと…って未成年に言わせるなよ恥ずかしい…



………………………



櫻桃
「おっ、来たね主賓♪」

借音
「聖さん、今夜はどうも…♪」

麻亜守
「こんばん〜」


櫻桃さんたちも楽しく食事していた様だ。
流石に櫻桃さんたちは酒は飲んでないな…まぁ、麻亜守ちゃんがいたらしょうがないか。



「そう言えば、麻亜守ちゃんは学校とかどうするつもりなんですか?」

借音
「今の所は、櫻桃さんに任せっきりですね…」
「問題も多いでしょうし、人間社会にひとり置いておくにはちょっと…」


確かに、不安の方が多いわな…
とはいえ、このままひとりっきりだと、それはそれで可哀想だけど。
やっぱり、同年代の友達とかいた方が良いとは思うんだよな〜
棗ちゃんや夏翔麗愛ちゃんは小学校に行くらしいが、麻亜守ちゃんはまだ悩ましい所か。


櫻桃
「まっ、おいおいその辺は何とかしていきゃ良いだろ…」
「とりあえず、アンタは早く他の奴らに挨拶に行きな…」


「あ、そうですね…それじゃすみません!」


俺はそう言って次に回る。
櫻桃さんも、元気そうで何よりだな。



………………………



ペンドラー
「あははっ! 酒も料理も美味し〜い♪」

クワガノン
「城の料理も良かったが、これも中々良いな…」

アブリボン
「浮狼様、ちゃんと食べてますか?」

浮狼
「ああ、私は大丈夫…あ、ライトとレフトたちもまだあるぞ?」
「ケケンカニ、酒はいけるか?」

ホイーガ姉妹
「美味い美味い〜♪」

ケケンカニ
「ありがとよ大将!」


「ここは賑やかですね…」


俺が声をかけると、皆一斉におー!と叫ぶ。
浮狼さんだけは苦笑していたが、何だで楽しそうだった。


浮狼
「ありがとうございます、聖様…裁判お疲れ様でした」


「いえ、あんなの勝って当たり前の裁判ですし、楽勝ですよ♪」
「それより、浮狼さんと一緒に戦ったあの戦争の方が何百倍もキツかったです」

浮狼
「…そう、ですね」


浮狼さんは少し悲しい顔をした。
俺はしまった…と思うももう遅い。
浮狼さんとしては、出来れば忘れたかったのかもしれないな…
あの世界に住むポケモンたちは、今も元気に過ごしているのだろうか?
それとも、もう滅んでしまったのか?
浮狼さんにはもう確かめようもない、それが浮狼さんには辛いのかもしれないな…



「すみません浮狼さん、まだ挨拶があるんでっ」

浮狼
「はい、また…」


俺は半ば無理矢理話を切って次の班に向かった。
俺も、もう少し気を遣わないとな…


明海
「やっぱり、人間社会って言っても、食べる物は案外変わらないね?」


「そうね…普段食べない料理もあるのは参考になるけれど」

毬子
「美味しければそれで良いんじゃないですか?」

教子
「あはは〜♪」

悠和
「あ…聖様」


こっちの皆も、相変わらずの様だった。
明海さんたちも、とりあえずメイドとして城で頑張っている様だが…
今は流石に普段着でメイド服ではないな…まぁ愛呂恵さんも家ではほとんど普段着でメイド服は見なくなったが。
やっぱあのデザインは色々と問題なのだろう…



「そういえば、聞いたよ…悠和ちゃんウチの学校に入学したんだって?」

悠和
「は、はいっ! どうしても…聖様と同じ学校に行ってみたくて」


悠和ちゃんは例によってモジモジしてしまう。
そんな彼女が俺は愛おしくなり、思わず悠和ちゃんの頭を撫でた。
すると、悠和ちゃんは物凄い熱を頭から出す。
あらら…沸騰したみたいになったな。
華澄さんと似た様な反応だが、こっちはもっと重症かな?
俺はとりあえず、その場から一旦離れ、最後のテーブルに向かう…



………………………



風路
「貴女たちの居る場所は既に……私が20年前に通過した場所だッッッ」


「ど、どしたの姉さん?」


まさかあの姉さんがネタをかますとは…
心なしかちょっと怖い顔をしてたが、すぐにいつもの優しい姉さんに戻った。
俺は姉さんの向かい側の席に座り、久し振りに姉弟水入らずを楽しむ事にする。


風路
「凄いね…あれ全部知り合いのポケモン?」
「伝説のポケモンまでちらほらいる…あれレシラムとゼクロムよね?」


姉さんは本当に珍しそうに皆を見ていた。
正式に紹介したのは守連たち自宅組だけだったからな…
俺はまだ食事に手を付けていない姉さんにとりあえず食事を促す。



「姉さん、今はとりあえず食事を取ろう」
「折角、ふたりでこうやって食事出来る機会が生まれたんだし…」

風路
「…うん、でも良いの?」


姉さんは、水を一口飲んでそう言う。
俺は、ご飯を片手におかずを選び、こう答える。



「良いって、何が?」

風路
「だって…私よりも、もっと若い娘が沢山いるし、聖君も年代合う方が良いんじゃない?」


姉さんは一瞬寂しそうな顔をし、そんな事を言う。
俺はとりあえず春巻をかじって、こう答えた。



「俺は今、姉さんと一緒にいたいんだ」
「…長い間、こんな機会無かったから」


俺たちはふたり黙ってしまう。
結局、俺がこっちに戻ってから、姉さんとは中々時間も合わず、ふたりでこうやってゆっくり話す機会は無かった。
だから、俺はあえてこの日をセッティングし、改めて姉さんと話そうと思ったんだ。


風路
「…聖君、強くなったよね」


「…かもしれない、でもそんなには強くない」


俺は確かに強くなったろう。
昔に比べたらケンカも勝てる様になったし、ちょっとやそっとじゃ動じなくなった。
今じゃナイフ突きつけられても平然と出来る位だし。
正直、もうフツーの高校生とは言えないのかもな…


風路
「ふふ…聖君、本当にあれだけの女の子を救ったんだね」


「俺だけじゃない、皆が望んだからこの結果になったんだ」
「俺は、皆との約束を守っただけさ…」


本来なら、俺は死ぬはずだった…薬物中毒で死んで、全て終わる。
でも、俺はアルセウスさんから最後の希望を貰った。
それは、たった1度だけの…創造の力。
俺はそれを行使し、皆を現実の俺の世界に呼び寄せた。
そして俺は生きる道を選択し、今や後遺症ひとつ残さずにこうやって元気に生きている。
この結果は、全部皆との絆が生んだ物だ。
俺は、それを何よりも大切にしたい。


風路
「阿須那ちゃんも、聖君の事大好きなんだよね…」
「一緒に住んでてどう? やっぱり良いお姉さん?」


「そうだね…良いお姉さんだよ」
「むしろおかんな位だけど…いっつも家族の事心配してる、良いお姉さんだ」


実際、今更だが阿須那は流石だよな…
働いて、飯作って、皆の事考えて。
やっぱり阿須那は家の大黒柱だ。
阿須那がいるから、皆も安心して家に帰れるんだろ…


風路
「…で、誰が本命なの?」


「…誰も、強いて言うなら全員だけど」


俺が真面目にそう言うと、姉さんはふふふ…と笑った。
何だか楽しそうだな…くっそ、これは遊ばれてるな?
俺は少し反撃する事にする。



「姉さんだって浮いた話無いの? もう24歳だし、結婚考えても良いんじゃ?」

風路
「…ダメだよ、私ポケモンだから」
「きっと、ダメ…だよ」


姉さんは笑いながらも、一気に顔を暗くする。
俺はしまった…と思うがやはり遅い。
忘れていたが、姉さんはケンホロウだ。
もし仮に結婚したとしても、子供も作れるか解らない。
それに、自分を人間だと偽って生きてきた姉さんにとっては、それを隠したまま結婚なんて到底出来ないのかもしれない。

…残酷だな、何か。
思えば、皆にも同じ事は言える。
もし、俺以外の人を好きになったら、彼女たちはどうするのだろうか…?
俺は試しに一部想像してみる事にした……



………………………




鐃背
「んなもん、取っ捕まえて即ヤっちまえば良かろう!」
騰湖
「自分嘘見抜けますし、まず円満確定!」

「とりあえず殴りあったら良いだろ!!」
白那
「とりあえず、子供愛してくれるなら♪」


人選ミスな気がしないでもない…
つか、白那さん以外マトモな答えになってねぇ!
流石に禁止伝説前提に考えるのはダメだ!
せめてここは大人の判断が出来る人たちに…


阿須那
「アホッ、聖以外好きになるかっ!」
愛呂恵
「愚問です、あり得ません、確率0です」
神狩
「…他の男に興味無い」
櫻桃
「どうでもいい」
浮狼
「私の剣は貴方だけの物です」


役に立たねぇ〜…つーか、そもそも俺以外の奴好きになる要素が皆無過ぎるな。
流石に大人は頭固くなるからダメか…だとしたらここは純情系で?


華澄
「いえ、あの…拙者にはもう心に決めた方が」
舞桜
「ごめんなさい…私にはもう好きな人がいるの」
悠和
「聖様じゃなきゃ…ダメです」


ぐわぁ!? 想像して後悔した〜!
こんなん惚れてまうやろ!! つか、誰が他人に渡すか!!
おっといかんいかん…危うく告白大会になる所だった。
どうせならここはギャグで済ませられる娘の方が良いだろ…


女胤
「聖様聖様聖様聖様聖様!!」
喜久乃
「まっ…ぎょっ」
香飛利
「えっと、誰でしたっけ?」

「とりあえず、寝言は寝て言え」


もはや意味解らない!!
何よこの人選!! ホントにギャグにしかならない!!
つかコイツらに恋とか無理だ!←結構失礼
後は珍獣枠の守連たち位だからな…もう無理だ。



………………………



風路
「…どうかしたの?」


「いや、何でもない…」
「姉さん、何なら俺が貰ってあげようか?」


俺がそう言うと、姉さんはガシャン!と茶碗をテーブルに落とす。
慌ててそれを取り直し、姉さんは顔を真っ赤にして食事を取り直した。
そして、やや焦りながらも平静を装ってこう言う。


風路
「…聖君〜? 大人をからかったら後が怖いよ?」


「でも、相手いないんでしょ? どうする気?」

風路
「別に…良いわよ」
「私は、もう幸せだから♪」


その顔はしっかりした表情だった。
俺はそれ以上は何も言えなくなる。
幸せ…か。
まぁ、本心でそう言っているなら仕方ない。
その後は、他愛ない話をしながら、俺は姉さんと仲良く食事を続けた。



………………………



阿須那
「むぅ…」

華澄
「阿須那殿、今日だけは…」

阿須那
「分かっとるよ…せやけど、やっぱ腑に落ちん」


ウチらは遠目に聖と風路はんの会話を見ていた。
ふたりとも実に楽しそうで、ちゃんとした家族っていう感じがする。
せやけど、その仲の良さはやっぱりウチには疑問やった。


阿須那
「あれだけ仲ええふたりが、何であの夢の世界では他人やったんや?」

華澄
「…言われてみれば、気になりますな」
「確かに、あの夢の世界では店長殿も風路殿も、優しい方ではありましたが、聖殿とはただの他人でありました…」

女胤
「…それも、夢見の雫の選択なのでしょう」
「あの世界を造った時、聖様は深い絶望に苛まれていた為、ロクな世界設定をしてなかったと言っていましたし」
「あくまで、私たちと出逢った後の来訪者ではない風路はさんは、ヒロイン候補としてはノーカウントだったのでしょう」


女胤が話に割り込んでそう推測する。
確かに、それが正解っぽい…せやけど。


阿須那
「…もし、風路はんがカウントに入ってたら、女胤が弾かれとったわけか」

女胤
「か、考えると怖いですわね…私が白那さんたちの様に皆さんを殺してでもすり代わると?」

華澄
「無い、とは言い切れません…か」

阿須那
「あくまで例えの話や…実際には風路はんはただのモブ扱いやった…雫にとっては」
「せやけど、あの聖の顔見てると、ホンマに幸せそうや…」
「逆に思うねん…何で、風路はんだけ…フライングしたんやろ…って」


ウチの言葉を聞いてふたりは黙る。
そして、その意味を考える。
フライング…それは、間違いなくそう言える行為や。
せやけど、それはあくまで偶然で悪意は無い。
ウチも風路はんの事は好きやし、風路はんなら幸せになってほしいと思う…
せやけど、それに聖が絡むなら…ウチは。
ウチは自分で自分の考えを払拭する。
そんなん、聖が1番可哀想や!
聖は…皆の事愛してくれてるのに…



………………………




「じゃあ、俺は部屋こっちだから」

風路
「うん、今日はありがとね♪」


俺はそう言って別れる。
姉さんも楽しんでくれた様で何より…さて、ここは個室にバスルームもあるし…今度は混浴に悩まされる必要も無い。
とりあえず、たまにはひとりでゆったりして過ごすとしよう。
家族サービスは明日回しだ。
俺はうーんと背伸びして部屋に向かった。



………………………



かぽーんと音がしそうだが、実際にはそんなにしないのが定説。
とはいえ、今回は女だらけのお風呂会。
はてさて、皆さんはどう過ごしているのか…?



Aグループ『大人組』


白那
「いや〜癒されるね♪」

愛呂恵
「白那様も、お疲れ様です」

阿須那
「何や、ここは成人軍団か…?」

櫻桃
「みたいだよ…20歳以上のグループで纏められてるね」

借音
「あ、そうなんですね…麻亜守、大丈夫かしら?」

神狩
「…ぷぅ、お湯が気持ち良い」

鐃背
「あ〜良い湯じゃ〜♪」

浮狼
「こんな大浴場は城以来ですね…」

ペンドラー
「ホントホント! でもこっち来てから泥まみれになる事も無いし、基本清潔ですよね!」

クワガノン
「確かに…まぁ、平和なのは良い事だからな」


それぞれが思い思いを胸に体を洗って湯船に浸かる。
そして、その一部の光景は圧巻の物だった。


愛呂恵
「………」
白那
「〜〜♪」
浮狼
「…ふぅ」
神狩
「………」
ペンドラー
「ふぃ〜」

阿須那
(くっ…よもやここまでの巨乳艦隊とは!)
(身長比もあるしウチかて負けてはおらんのやが…)
(愛呂恵とペンドラーはんが飛び抜けとるな…浮狼はんも中々侮れへん)
(白那はんと神狩はんは高身長やし、むしろ適正のサイズやろ)
(やはり一番バランス取れてるのはウチのはずや!)


阿須那はひとりでそう思い、勝手に勝ち誇る。
当然の様にそんな事を考えているのは阿須那だけで、皆普通に風呂を楽しんでいた。


櫻桃
「ったく、巨乳どもが雁首揃えて並ぶと圧巻だな」

借音
「ふふふ、櫻桃さんは気にする方だった?」

櫻桃
「うんにゃ別に…アタシは小さいの気にしてないし」
「まぁ、聖的にはデカイ方が好きなんだろうけど、別に小さくても不利には感じないね…」


櫻桃の言葉に何人かが色めき立つ。
そして、櫻桃もそれを流す様に余裕を見せていた。
櫻桃は白那、鐃背に続いての高年齢組故に、精神的余裕があるのだ。


阿須那
「何や櫻桃はん…それって聖的には巨乳好きやけど貧乳でもイケるって事?」

櫻桃
「まぁ、そうでしょ? 聖は胸で恋人決める様な奴じゃないし、最終的には中身だろ?」

浮狼
「成る程、納得です…確かに聖様なら胸だけで我々を判断しない」

白那
「そうだね…それだったら愛呂恵か華澄ちゃんが1番になっちゃうし」

愛呂恵
「それならば、悠和さんも侮れません」
「聖様の信頼もある様ですし、かなりの強敵かと」


全員が悠和を想像し色々考えている様だった。
そんな中ひとりの女性が遅れて入って来る。
その者は丁寧に体を洗い、その後湯船に近付いて行った。
そして、やや控え目に皆に声をかける。


風路
「あ、入っても大丈夫ですか?」

愛呂恵
「はい、どうぞ風路さん」

阿須那
「そっか…風路はんも大人やもんな」

浮狼
「風路殿、こちらへどうぞ…空いております」


浮狼の案内を受け、風路は湯船に浸かる。
そして、揺ったりとした顔で体を休めていた。


阿須那
「…そう言えば、翼って切ってもうたから無いねんな」

浮狼
「切った…何故です?」

風路
「うーん…私はもう人間として戸籍作っちゃってるから」
「人間に、翼とか尻尾は無いでしょ?」
「私はちゃんと学校とか行ける様に、お義父さんに手配して貰ったから」

クワガノン
「翼か…私にも羽はあるが、むしろ角の方が目立つからな」

ペンドラー
「虫タイプは見た目が不利だよね〜妹たちもホイーガってだけで見た目損してるし」


ペンドラーとクワガノンは自分たちの見た目を気にしている様だった。
確かに虫タイプはその特徴を維持するが故に人間とはかけ離れた特徴を有する者もいる。
クワガノンは特に顕著で、飛ぶ為の羽、電気を集約する腹、そして発射口の角と、ある意味一番見た目で損をしているタイプだろう。


白那
「でも、クワガノンちゃんとか顔は綺麗だし、髪型も良いと思うけどな〜」

クワガノン
「そ、そうですか…? あまり意識した事無かったが」

浮狼
「我々は、戦いの中だけで生きてきましたからね…」
「そこに見た目の問題等些細な事でした」

ペンドラー
「そうですよね〜むしろクワガノンなんか戦闘能力高くて評価されたんだし…」


やはり、基本的に戦士としての自分が抜け切っていないのだろう。
過去に庭師として生きた浮狼はともかく、ペンドラーとクワガノンはまだまだ戦いの気質が強いのかもしれない。


風路
「そっか…皆、やっぱり苦労してたんだね」

愛呂恵
「ですが、その苦労もあって今ここにいます」

櫻桃
「確かに…それには感謝しかないね」

借音
「はい、以前の世界も愛着はありますが、平和なこの世界も好きになれると良いですね♪」


全員がそれを聞いて笑う。
そして、皆が聖に感謝をする。
ひとりを除いて、誰もが聖に感謝していた…


風路
「皆、羨ましいな…」

阿須那
「羨ましいって何でですん?」

風路
「皆、聖君に強い思い入れを持ってる」
「でも、私にはそれが無い」
「私も聖君は大切だけど、それでも皆の様には…」


風路は悲しくなって俯いてしまう。
そんな姿を見て、白那が風路の体を背中から抱き締めた。
風路は驚くが、別に悪い気はしてない様だ。


白那
「風路ちゃん、聖君の事好き?」

風路
「えっ!? い、いやでも…ほとんど姉弟だし」

白那
「違うよ、本音が聞きたいんだ」


白那は優しい声でそう聞く。
慌てていた風路だが、しばらく考えた後…こう答える。


風路
「…好きなのかも、しれません」

阿須那
「ほな、ウチ等と同じですやん…」
「皆、聖が好きでここにおるんや…」
「風路はんかて、そうなら一緒や…羨ましがる事何もありまへん」

白那
「うん、そうだね…」
「風路ちゃんも一緒なら、羨ましがる事は無い」
「むしろ、オレたちの方が羨ましいと思う事があるよ?」
「聖君の、子供時代を知っているんだから…」

阿須那
「あっ! それ聞きたい! 風路はん、教えてぇな?」


全員がそこに食いついてくる。
流石に風路は苦笑しながらこう答えた。


風路
「それじゃ、ちょっと長くなりますけど良いですか?」


全員が黙って頷く。
そして風路は思い出す様に1度、目を瞑って俯き…すぐに目を開いて天井を見た。
そこから、風路は過去を話し始める。



………………………



それは、ただの祈りだった。
降りしきる雨に打たれ、私は死にかけていた。
でも、どうしようも無かった。
例えここにいなくても、私はどの道殺されていたのだから…


ケンホロウ
「………」


誰もいない路地裏で、私は横たわっていた。
雨が降り、私の全身を打ち付けて体力を奪っていく。
既に意識を失いかけている私は、死に行く自分の命を感じていた。
もう動く事も出来ない…結局、祈りは届かなかったのだろう。
私は全てを諦め、死を受け入れる事にした。



「!? あ、貴女! こんな所で何してるの!?」
「こんなに体を冷やして…! ダメよ! 死んじゃダメッ!!」
「必ず! 必ず助ける!! アタシはもう、絶対に見捨てたりなんてしないわっ!!」


それが、今の養父である『苧環 勇気』との出会いだった。
今から20年前、私はこの世界に辿り着いて人化を果たす。
それまでの生活を捨て、私は新たなスタートを切るのだ。



………………………




ケンホロウ
「…何、これ?」

勇気
「お粥よ…貴女、相当体を冷やしてたから、それを食べて暖まると良いわ」


器に入った、お粥と言う食べ物を私はマジマジと見る。
触るとかなり熱く、とても食べられそうになかった。
そんな私を見て、勇気さんという人は苦笑する。


勇気
「スプーンも使った事無いのね…」
「じゃあ、手伝ってあげる…こうするのよ?」


勇気さんは私の手を優しく握り、スプーンと言う物を握らせる。
勇気さんの大きな手が私の小さな手に重なり、スプーンと言う物で器の中身を掬った。
勇気さんはそれにふーふーと息を吹き掛け、熱を少し冷ます。
そして、ゆっくりとそれを私の口に近付けた。
私は口を開け、それが入って来るのを待つ。
やがてスプーンは口に入り、私は口を閉じて中身を吸った。


ケンホロウ
「!! 熱い…!」

勇気
「あらあら! ゴメンなさい…もう少し冷ました方が良かったかしら…?」

ケンホロウ
「でも…美味しい」


私がそう言うと、勇気さんは笑う。
私は、その顔を見て不思議に思った。
何故、この人は私を助けてくれるのだろう?
私は…ポケモンなのに。


勇気
「さっ、ゆっくりでもいいから…食べましょう」
「貴女の事を聞くのは、ちゃんと元気になってから」
「その間は、アタシが面倒見てあげるから♪」


こうして、私は勇気さんのお陰で一命をとりとめた。
そして、これから私の辛い人間生活が始まる。



………………………



勇気
「そう、貴女…ケンホロウって言うのね」

ケンホロウ
「………」


私は無言で頷く。
勇気さんは真剣な表情で考え、私にこう聞いた。


勇気
「貴女、行く所は無いんでしょ?」

ケンホロウ
「………」


私はコクリと頷く、すると勇気さんは苦笑していた。
そして何かを決意する様に真剣な顔をする。


勇気
「…何も覚えてなく、行く宛も無く、あんな所で死にかけていた」
「きっと、神様が私と引き合わせてくれたのね…」


神様…それは、私が願ったから?
ただ、私は生きたかった…幸せに、なりたかった…


勇気
「良いわ、もし貴女が良ければ…これから一緒に暮らしましょ?」
「貴女の事、アタシが生涯賭けて面倒見てあげる」
「だから、どう?」


差し出された大きな手を見て、私は無言でそれを手に取った。
私には選択肢は浮かばない。
だったら、この人と一緒に生きてみたい。
そう…思った。
そして、この日私は『苧環 風路』となる。



………………………



それから3年経った…私は自身の翼と尾を捨て、今では小学校に通っている。
幸いにも、皆とは上手くやれており、友達も出来ておよそ充実した生活だった。


友達
「風路ちゃん! さよなら〜!」

風路
「うんっ、また明日ね!」


私は友達と別れ、家に帰る。
家は喫茶店なので、入る時は裏口から。
私は家に入り、ただいまと言う。
だけど、声は返って来ない…知ってる、お義父さんは厨房で忙しいから気付かない。
私はとりあえず洗面所で手と顔を洗い、部屋で着替えてから厨房に入った。


勇気
「あら、風路…お帰りなさい♪」

風路
「私も手伝う」


そう言って、私は材料等を取り出し、それらを切り分けていく。
お義父さんには直々に指導を受けてるから、私はそれなりに出来てる。
お義父さんも私が手伝うのは嬉しい様で、いつもニコニコしてやり方を教えてくれた。



………………………



男性
「あ! 苧環さん!!」

勇気
「あら、准一(じゅんいち)ちゃん!」
「幸子(ゆきこ)ちゃんも…随分久し振りじゃない?」

幸子
「はい、出産の事もあったので…こっちに戻って来てたんです」


私は初めて見るお客さんを不思議そうに眺めた。
お義父さんは嬉しそうに笑ってるから、きっと親しい人なんだろう。
そして、私は女性に抱き抱えられている赤ちゃんに興味を持った。


風路
「…赤ちゃん」

赤ちゃん
「…あ〜」

幸子
「あら、この娘は?」

勇気
「私の娘よ…養女だけどね」


夫婦はそれを聞いて驚く。
そして、笑って私に挨拶をしてくれた。
私もペコリと頭を下げ、キチンとお辞儀をする。
そして、私は食い入る様に赤ちゃんを見た。


勇気
「名前は何て言うの?」

幸子
「『聖』って…名付けました」
「清らかな優しい子に育ちます様にって…想いを込めて」


私はその名前を覚えた。
そして、これこそが私と聖君との出逢い。
まさに、フライングの出逢い。
私は、優しく聖君の指を握ってあげる。
そして、声をかけてあげた。


風路
「こんばんわ…聖君」


「あ〜」

風路
「私、苧環 風路」
「これから、よろしくね♪」


私は笑顔で語りかけるが、聖君は小さく唸るだけだった。
かなり眠いのか、瞼を落としかけている。
私が優しく聖君の頬を撫でてあげると、聖君は気持ち良さそうにして眠りについた様だった。


幸子
「あらあら…私が抱いてても結構グズついちゃうのに」

准一
「ははっ、風路ちゃんの事が気に入ったのかもな!」

勇気
「ふふふ…良かったわね、風路?」

風路
「…うん」


私たちは小さく笑っていた。
静かに眠る聖君を起こさない様に気を付ける。
店には今丁度他の客はおらず、店内は静かな物だった。


勇気
「また、夫婦揃って海外に?」

准一
「はい、仕事ですから…社長としてこればかりは」

幸子
「私も付いて行かないといけないんですけど…そうなると聖が」

准一
「出来れば、聖にはこんな行ったり来たりの生活はさせたくない」
「聖には、日本でしっかりと強く生きてほしいんです」


だけど、それでは聖君に親代わりがいる。
本当の両親が一緒にいられないなら、誰かが助けてあげないと…


勇気
「じゃあ、親戚に当たるの?」

准一
「とんでもない…あんな親戚に任せてはおけない!」

幸子
「それに、もうそんなに交流はありませんし…最悪、保母さんでも雇って何とかしようかと思います」


どうやら、親戚は信用出来ないらしい。
保母さんを雇うと言っていたけど、それでもただの他人だ。
私は子供ながらに決心してこう言ってみる事にした。


風路
「私、聖君のお世話してあげたい!」

勇気
「えっ!? でも、貴女も学校とかあるでしょ?」

風路
「それでもやりたい! 聖君、じゃないと可哀想…」


私が泣きそうな顔でそう言うと、幸子さんが私の頭を撫でてくれる。
そして、笑顔で私に何かの鍵を渡した。
その鍵には、可愛いイーブイのキーホルダーが付いている。


幸子
「その合鍵、風路ちゃんにあげるわ」
「だから、聖の事お願いして良い?」

勇気
「幸子ちゃん!?」

准一
「じゃあ、私からもお願いするよ…基本的には保母さんにお願いしておくから、風路ちゃんは自分の好きな時に、聖の側にいておいてあげてくれ」

風路
「はいっ、ありがとうございます!」


私は合鍵を強く握り締める。
そして、幸子さんたちは笑ってくれた。


准一
「苧環さん…実は今回来たのは、この事を苧環さんにお願いしようかと思ってたんです」
「頼れる身内がいないわけではないんですが、それでも先の事を考えると不安があって…」

勇気
「そうだったの…なら、断るわけにもいかないわね♪」
「風路、それは貴女が大事に持っていなさい」
「今度、アタシが聖君の家に連れて行ってあげるわ」
「准一君、家の場所は変わってないんでしょ?」


お義父さんが聞くと、准一さんはコクリと笑顔で頷く。
そして、改めて准一さんはお義父さんに頭を下げた。


准一
「本当にすみません…苧環さん」
「以前から、何度も助けていただいて…このご恩は必ず」

勇気
「何度でも、助けるわよ?」
「これはアタシが勝手に決めた事…だから貴方たちが、気にする事じゃないわ」
「まだ、経営者としては駆け出しだったアタシに、この店をプレゼントしてくれた恩こそ、アタシはまだ返せてない」

准一
「そう言ってもらえると、気が楽になります…」
「あの店を、こんなに素敵にしてくれた…」
「私は、感謝しています…この店があったから、妻にも出逢えた」

幸子
「そうね…この店が無ければ、聖はこの世に生を受けなかったかもしれない」


後から知った事だけど、聖君の両親はお義父さんの店でたまたま出逢い、そこから恋愛に発展したらしい。
これは本当に偶然の出逢いで、互いに仕事で飛び回るふたりが出逢ったのは奇跡と言って良い位だそうだ。


准一
「じゃあ、よろしくお願いします」
「多分、次に会うのは何年も後になると思いますので、これを預かっててもらえませんか?」

勇気
「これは…手紙?」

准一
「もし、聖が物心つくまでに私たちが戻れなかったら、渡してほしいんです」
「まぁ、いわゆる遺書みたいな物ですが…」


それを聞いてお義父さんは酷く顔を青くした。
そして、震える声でお義父さんは聞く。


勇気
「貴方…まさか」

准一
「すみません…酷な事をお願いします」
「それじゃ、そろそろ…」

幸子
「苧環さん、ありがとうございます…」
「風路ちゃん、明日家で待ってるから…来てね♪」

風路
「はい!」


私は元気に答える。
そして、私は新しい生き甲斐を見付けた。
私は、お義父さんが助けてくれた様に、誰かを助けて生きたい…
だから、聖君の事が心配で助けたかった…



………………………



風路
「飛べない鳥ポケモンに、意味はあるのでしょうか?」

幸子
「 …?」

風路
「ごめんなさい、気にしないでください」


私は天から電波を受け取るも、誰も理解はしてくれなかった。
なので、あえてスルーしてもらう事にする。
とりあえず、今私は聖君の家で幸子さんから色々説明を受けていた。
というか、回想シーンでネタをねじ込むのは無理があると思う…


幸子
「どう、解った?」

風路
「はい! 覚えました!」

勇気
「ふふ、無理はしちゃダメよ?」
「何か解らない事があったら、すぐに電話なさい」


私はうんっと頷く。そして、私は早速聖君の為にミルクを作ってあげる事にした。
最初だからあまり上手くは出来なかったかもしれない。
でも、聖君はちゃんと飲んでくれる。
そんな聖君の可愛い姿を見て、私は嬉しかった。
そして、こんな私でも聖君を助けてあげられるんだと、私は実感する。

だけど、悲劇はすぐに起きた…



………………………



勇気
「……っ!」

風路
「…どうして?」


「………」


私たちは、今葬式会場にいる。
そこはかなり大きな会場で、100人以上の参列者が並んでいる。
私たちはその中で先頭を歩き、やがて、棺桶の前に立たされた。
だけど、その中には何も入っていない…そもそも、遺体は残らなかったからだ。


勇気
「…准一君、幸子ちゃん」


お義父さんは涙を流し、顔を押さえて俯く。
私は意味が解らなく、ただ聖君を抱いて呆然と立ち尽くしていた。
そのまま葬式は淡々と進み、私は涙ひとつ流す事も出来ず、ただ聖君の体を優しく抱いてあげる事だけを考えていく。
聖君もまた、一切泣く事はなく、葬式は粛々と終わりを告げた。

聖君の両親は、飛行機事故にあったと後に聞いた。
たまたま紛争地帯での仕事だったらしく、聖君の両親を乗せた飛行機は、何者かによって爆破されたらしい。
詳細は一切不明だけど、狙われたという説もあれば、たまたまだったという説もあり、それは何ひとつ確証の無い、ただの理不尽な事故だった。
遺留品のひとつも存在せず、聖君には何も届きはしない…



………………………



聖君
「…うー」

風路
「大丈夫だからね?」


葬式が終わり、外に出て私は優しく言う。
聖君は、私の声を聞いて安心してくれる。
私は優しく笑い、聖君に歌を聞かせてあげた。
それは、とあるゲームの歌で、たまたまインターネットで聞いて覚えた歌だ。
そして、その歌詞は儚くも、どこか優しい。
私はその歌詞と悲しげなメロディに心を打たれたのだ。
それを私は下手くそながらも口ずさむ。
聖君は、それを聞いて少しだけ頬を緩めた。
やがて、私が歌い終わる頃には…


風路
「もう…知っていた〜……」

聖君
「………」


聖君は安らかに寝息をたてている。
私は安心して微笑んだ。
そして、お義父さんがゆっくりとこちらに歩み寄って来る。
誰かと話していたみたいだけど、どうやら終わったらしい。
だけど、お義父さんの顔はとても暗かった。


勇気
「風路、聖君を親戚の方に渡してあげて」

風路
「え?」


私は訳が解らなくなる。
でも、今考えればそれは当然でもあった。
肉親でも無い私が、両親のいなくなった聖君を引き取る事など出来ないのだから…



………………………



それから、聖君の生活環境は酷い物だった。
元々、聖君の親戚は聖君の両親を疎んでいたらしく、聖君の事もただ親戚だから引き取っただけ。
実質、聖君には家族などおらず、いつも、ただひとり家で泣いていたのだ。



「あー! あーー!!」

風路
「ごめんね…もう、大丈夫だよ」


私はそれでも聖君の側にいる事を選んだ。
あれから聖君はひとり保育所に送られ、誰にも懐かず、ただ泣き続ける日々を過ごす。
そんな聖君の環境を知って、私はいても立ってもいられず、真っ先に聖君の元に駆け付けた。
そして、私を見ると聖君は泣き止んでくれる。
この時、私は決心した…聖君は私が絶対に面倒を見ると。
こんな小さな聖君を、私は絶対に見捨てない!
例え、小さな小学2年の私でも、この子を助けたいと心から思ったのだ。



………………………



やがて3年程経ち、聖君は少し物心つく様になる。
相変わらず親戚からは放置され、保育所に預けられたままの毎日。
私も10歳になり、今では料理も掃除もちゃんとひとりで出来る様になった。
学校が終わると、私は聖君を保育所から引き取り、聖君の家に連れて行く。
そして、聖君のご飯を作って、聖君をお風呂に入れて、聖君が眠るまで話をしてあげた。
最初は知っていた保母さんがいたけど、気が付くといなくなってしまっていた。
多分、契約が切れたのだろう…聖君の親戚は、私の存在すらどうでも良いのだ。
恐らく、聖君の親戚は私の事を無料のベビーシッター位にしか思って無かったはずだから…
少なくとも、赤の他人が合鍵持って家に出入りしてるのに、放置だなんて普通はあり得ないと思うのに、ね。



「…風路お姉ちゃん」

風路
「なぁに?」


「風路お姉ちゃんは、どうして僕のお姉ちゃんなの?」


それは、ただの純粋な子供心の疑問だったのだろう。
聖君にとっては、私はお姉ちゃんというよりも、お母さんといった方が良い位なのだから…
私は聖君が赤ちゃんの頃からずっと一緒にいる。
聖君にとっても、私の存在はそれなりに大きいはずだろう…
私は、ここで少しはぐらかす様に別の話をする。


風路
「聖君、お姉ちゃんはね…本当は空を飛べたんだよ?」

聖君
「ホントッ!?」


聖君は心底驚いた様に反応する。
これで、もうさっきの疑問も忘れてしまっただろう。
私は苦笑して話を続けた。


風路
「でも、お姉ちゃんは飛ぶ事を止めたの」

聖君
「どうして?」

風路
「私の翼はね、聖君の翼になったからだよ…」


そう言って優しく聖君の頭を撫でてあげる。
そうすると、聖君は嬉しそうに笑った。
私は、この顔が1番大好きだ。
私は思う…私は、きっと聖君に逢う為にこの世界に来たのだと。
全てを失うであろう、救われない聖君の為に、私は翼を捨ててここにいるのだ。
そして飛ぶ事の出来ない聖君の為に、私は聖君の翼になる。
聖君が、ちゃんと世界に羽ばたいて行ける様な強い翼に。



「お姉ちゃん…ありがと♪」

風路
「良いの…だって、私は聖君のお姉ちゃんだもん」
「聖君の為なら、お姉ちゃんは何だって出来る」


この時、私の中で何かが煌めいた気がした。
そして、それを私は無意識に行使する。


風路
「だから、私が神様にお願いしてあげるね…」
「聖君が、幸せになります様に…」
「そして、聖君の事をずっと守ってあげてください…って」


私はこの時までその奇跡の力を知らなかった。
まさか、私の中にそんな力があったなんて…
そして、私はそれに無意識に願ってしまった。
この時、私は謎の声を聞く。


『夢見の雫の継承者よ…ありがとう』


その瞬間、それはこの日を持って私の体を離れた。
そこで私は夢見の雫という言葉を耳にする。
それはきっと、私をここまで導いた神様の奇跡。
それならばと私はなお願う…もし私の中に神様がいるなら、代わりにこの子を守ってくださいと。

『夢見の雫』…それが何故私の中にあったのかは解らない。
でも、これがあったからこそ、私は聖君に出逢えたのだと思った。
そして、これからはきっと聖君を守ってくれる。
この雫は、きっと誰かの幸せの為に存在するはずなのだから…



………………………



それから、更に月日は経つ。
聖君は12歳になり、小学6年。
私は、自分が提案して立ち上げたコスプレ喫茶のリーダーをやっている。
聖君も、今や自分で料理も掃除も出来る様になり、小さいながらも立派に成長していた。
だけど、この頃辺りから聖君の様子が段々おかしくなっていく…


風路
「聖君、学校どうだった?」


「つまんない…俺、家でゲームしてる方が良い」


聖君は誰ひとり友達を作れなかった。
勉強はちゃんと出来てるし、宿題も忘れた事はない。
遅刻だってした事無いし、別に態度が悪いわけでもない。
でも、聖君は友達を作れなかった。


風路
「聖君、友達と一緒に遊ばないの?」

聖君
「いらない、俺にはポケモンがいるもん」


そう、この頃からだ…聖君の記憶が曖昧になっていくのは。
この日を境に、聖君は度々何かを忘れていた。
だけど、その顔は幸せに満ち溢れており、とても不幸には見えなかったのだ。
だけど、私にはもう…笑いかけてくれる事は、無くなった。



………………………



やがて、いつの日か聖君は完全に笑わなくなる。
そして、それから聖君の生活はどんどん酷くなった。
中学から苛めを受け、お金も不良に取り上げられる。
普通に生きているのに、聖君の周りはそれを許さなかった。
私はそんな聖君を可能な限り側で守ろうとする。
でも、聖君はもう私の事を、お姉ちゃんと呼ぶ事すら無かった…

私は神様に祈る…聖君をどうか助けてくださいと。
だけど、もうその祈りは届かないと私は知っている…それでも願ったのだ。
しかし…その後、私は絶望のドン底に落とされた…



………………………



風路
「何、これ…?」


私は、聖君の家のリビングで遺書を発見した。
その中身を見て、私は絶句する。
きっと誰が見ても血の気が引いている様に見えた事だろう…
そして、その内容はこうだ……



もう、生きている事に疲れた
何をやっても、誰も救えなかった
好きな女の子ひとり救えず、俺は逃げた
約束も破った、俺は最低だ
だから、俺はもうこの世界を捨てる
そして、神様にお願いする

どうか、次は幸せな世界に生まれ変われます様に、と



風路
「聖君っ!!」


私は泣き叫ぶ。
そして階段を一足跳びして、すぐに聖君の部屋に向かう。
そのままドアを乱暴に開け放ち、私は部屋の中を見て全身を震わせ、更に涙を流す。
私の見た光景は、安らかな顔で倒れている聖君の姿だった。
足元には薬瓶が落ちており、睡眠薬と書いてある。
中身は全て空になっており、それが複数個あった。
間違いなく自殺現場だ…私はガタガタと震え、その現場を直視出来なくなる。
そして、両膝を床に着いて、私は大声で泣き叫んだ。


風路
「どうしてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
「何で! 何で助けてくれなかったのぉ!?」
「こんなの…こんなの酷すぎるよぉぉぉぉっ!!」


私は即座に聖君の体を抱え、窓を開け放ってそこから跳び立つ。
翼は無くとも私はケンホロウ。
いちいち救急車なんて待ってられない!
私は窓から向かい側の屋根に跳び乗り、そのまま一直線に病院を目指した。
人の目なんて気にしてられない!
私はただ、聖君を救ってあげたかっただけだ。
ただ、それだけなんだ…!



………………………



風路
「で、何とか無事に聖君は生き延びました…って、こんな話で良かったのかな?」

阿須那
「うっ…くっ!」

風路
「わわわっ! 阿須那ちゃん大丈夫!?」


気が付くと阿須那ちゃんが顔を抑えて泣いていた。
いや、阿須那ちゃんだけじゃない…


白那
「ゴメン…ちょ〜っとお母さん泣いちゃう」

借音
「ぐすん…辛い出来事でしたね」

鐃背
「くぅ〜泣かせるのぉ〜!」


あらら、まぁ確かにちょっと暗すぎる話だったかな…
改めて、聖君よく立ち直れたと思うよ…( ; ゚Д゚)
詳細はちゃんと聞いていたけど、聖君はホントに強くなったんだと私は安心していた。


浮狼
「成る程、聖様はそれ程までに追い詰められていたのですね…」

阿須那
「聖から話は聞いとったけど…そこまで不幸やったんか〜」

櫻桃
「そうだね…確かに不幸かもね」
「だけどそんな中、聖は戦い抜いたんだ…アタシたちみたいな、報われないポケモンを救う為に」


改めて、聖君はスゴい冒険をして来たのだと私は思った。
小学生の頃から、夢見の雫を使って阿須那ちゃんたちと色んな世界を救ってたのだ。
結果的に、今が良ければ全て良しだと、本人は思っているのかもしれない…


愛呂恵
「…そうですね、確かに聖様がいなければ、私たちは抗う事すら出来ずに消えていたでしょう」

白那
「うん、オレもそう思うよ…聖君がいたからこそ、オレたちはここにいられるんだから」「あの時を思い出すと、本当に絶望しかなかった…オレだって何度死にたいと思った事か…」

浮狼
「し、白那様…どうか落ち着いて」


白那さんはまだ泣いていた…涙もろい人なんだなぁ〜
そして、冷静な愛呂恵ちゃんと櫻桃さんか…
ペンドラーちゃんとクワガノンちゃんも割と真面目に共感してくれている。。
神狩ちゃんは…無言過ぎて解らない…( ; ゚Д゚)


櫻桃
「まっ、結局アタシらじゃ風路の代わりにはなれないってのはよく解ったな…」

阿須那
「…悔しいけどその通りやな」

白那
「まぁ、仕方ないよね〜」

愛呂恵
「ですが、これから育めば良いのです」
「私は、これからもずっと聖様の側にいますので」


愛呂恵ちゃん強いなぁ〜これは聖君もメロメロになりそう。
う〜ん…これだと、もう私の役目も無くなりそうかな?
私は思う…こんなに沢山の人に愛されているのだから、もう私は聖君を支えなくても良いのかもしれない、と。
私がいなくても、聖君はきっと幸せになれるのだから…


神狩
「でも、風路さんはやっぱり必要」

風路
「えっ?」

阿須那
「せやな…風路はんがおるから聖はあんなに笑えるんや」
「ウチらと夢の世界におった頃は、あんな自然な笑い方せんかった…」
「流石は風路はんやで…」

ペンドラー
「だけど、風路さんってそんなに凄いのか?」
「言っちゃアレだけど、そんなに強そうには見えないし…」


おっとと、まぁ私見た目人間だし、確かに見てくれじゃそう思われても仕方ないよね…
って、何でここに来て強さ論議!?
今までそんな話してなかったよね!?


鐃背
「人を見た目で判断すると痛い目を見るぞ?」
「守連なんて、あんな人畜無害ななりでも、アルセウス殴り倒す丈夫(ますらお)じゃし…」

クワガノン
「そりゃそうだ…ポケモンを見た目で判断するのは愚の骨頂だな」

ペンドラー
「うーん、まぁそれもそうだけど…」

阿須那
「つーか、風路はんはホンマに凄いと思うで?」
「ぶっちゃけ、戦闘能力でもトップクラスと違うかな?」


何か阿須那ちゃんがフォローしてるし!
私、阿須那ちゃんには軽く技見せただけで、絶対スゴくないから!
私はこの妙な流れを断ち切る為、こう言葉を放つ。


風路
「いやいやいや、流石にそこまで大した事無いから!」
「私なんてマイナー中のマイナーのケンホロウだし、そんな皆みたいには…」


実際に自信は全く無い。
確かに人間とは身体能力違うだろうけど、実戦なんかやった事無いし…
趣味でプロレスとかかじった事あるけど、そんなの本格的でもないから…


櫻桃
「マイナーさは関係ないでしょ? 要は強いか弱いかなんだから…」
「試しにさ、腕相撲でもしてみたら?」


ペンドラー
「あ、面白そう! じゃあ1番手アタシ!!」

風路
「腕相撲か…懐かしいな、コミケでやって以来かも」


しかもあの時はイベントだから、私手加減してワザと負けたしね〜
まぁ、相手が同じポケモン娘ならその心配もないだろうけど。
とりあえず、腕相撲位なら…と私は思い、ペンドラーちゃんと一緒に湯船から上がった。

そして、お互いタイル張りの床でうつ伏せになり、互いに手を合わせて開始の合図を待つ。


白那
「それじゃ、良いかい…?」


白那さんが審判を勤めてくれる。
私は自然とテンションが上がってきた。
集中力が高まり、五感が研ぎ澄まされて、相手の筋肉音が耳で解る。
今、私の目は冷静に目の前のペンドラーちゃんの目を見ていた。


白那
「レディ…ファイッ!」


バァンッ!と、一瞬で決着は着く。
私はペンドラーちゃんが動く前に最速のタイミングで腕をタイルに押し倒した。


ペンドラー
「うわっ!? 強ぇ!」

風路
「あはは…ゴメンね、大丈夫?」


私はペンドラーちゃんを気遣う。
ペンドラーちゃんは豪快に笑っていた…随分楽しそうだ。
その笑顔を見て、私も何となく気分が高揚してくる…こんな気分は、生まれて初めてかもしれない。


阿須那
(こ、これは修羅の目や…アカン何か火点いとる)

神狩
「じゃあ、次は私…」


今度は神狩ちゃんが相手になる。
私は神狩ちゃんの手を取り、互いに目を合わせた。
う…これは、相当強いかも。
ウインディともなると、力も瞬発力もある…最初が肝心ね。


神狩
「………」
風路
「………」


もはや、私は相手の筋肉の音しか聞いてない。
予想通り、かなり強靭な腕だ。
だけど、私も結構力には自信がある。
問題は瞬発力で勝てない可能性が高い…だったら、相手よりも素早い反応で先制するしかない。
最低でもコンマ1秒先に動ければ後は力勝負だ。


白那
「…ファイッ!」

風路
「!!」
神狩
「!?」


今度はすぐに決着は着かない。
私は辛うじて遅れる事は無く、神狩ちゃんの速度よりも早く力を込められたのだ。
私は『闘争心』を燃やす。
女同士の勝負事なら、退くわけにはいかない!


クワガノン
「スゲェな…互いに動かない」

ペンドラー
「ああ、根比べだね…」

櫻桃
「いや、風路が押してきた…神狩の奴、スタミナ負けしてるな」


バンッ!と私は神狩ちゃんの腕を何とか押し込む。
これで2連勝! 何だ、私も結構やれるじゃない♪
とはいえ、流石に2連戦は疲れた…これ以上はもう。


鐃背
「よろしく…」

風路
「いやいやいや! 流石にこれは無理でしょ!?」


どう考えてもレックウザが相手じゃ勝負にならない!
これはいくらなんでも無謀だ。


阿須那
「まぁ、やるだけやってみたらエエんちゃいます?」
「流石の鐃背はんでも、無茶はせんでっしゃろ…」


どうやら、やる流れの様だ。
私は仕方ないと、鐃背さんの手を取る。
不思議にも恐怖はすぐに消えた。
逆に集中力が最大限に高まり、絶対に負けたくないという気持ちが燃え始める。


鐃背
「くふふ…これは楽しみになってきたわ♪」
(これ程の丈夫、そうそう出会えぬ!)

風路
「………」


鐃背さんは楽しそうに笑っていた。
私は既に頭が切り替わっており、感覚を研ぎ澄まして意志を奮い立てる。
もう、鐃背さんしか私には見えていない。
そして、白那さんの声を聞いた瞬間、私は全力で右腕を傾けた。


鐃背
「ぬぅ…!!」
風路
「…ぐっ!!」


私は先制で傾けるも、鐃背さんは物凄い力でそれを止める。
そして、徐々にそこから盛り返して来た。


鐃背
「ふっ…」
風路
「!!」

鐃背さんにはまだ余裕がある…!
私は更に力を込めて押し込もうとする。
結構傾いているせいか、流石の鐃背さんも力が入り難い様だ。
後は私の体力が持つかどうか…!!


ペンドラー
「これ、どっちが勝つ?」

クワガノン
「風路さんも気合い入ってるな…」

櫻桃
「だけど、体力が足りない…このままじゃいつか根負けする」

借音
「諦めたら、その場で終わりますね…」



風路
(くっそ…全然倒れない!)

鐃背
「くふふ…! これ程楽しめるとは思わなかった!」
「じゃがここまでよ!」


私の腕は一気に逆側に倒される。
最後まで諦める事はせずに私は抵抗を続けたが、健闘空しく倒されてしまった。


風路
「あーん、やっぱ無理〜」

鐃背
「がはははっ! 妾は楽しめたぞ、大満足じゃ!!」


鐃背さんは腕を組んで大笑いしていた。
皆も楽しそうに笑っている。
私も、何だか楽しくなった。
そして、皆の絆を感じる。
この時…私はこの輪に入って良いのだと…そう思えた。



………………………



Bグループ 『15〜19歳組』


華澄
「ふむ、学校ですか…」

悠和
「はい、何とかテストには受かったので…」
「1年だけですけど、聖様と一緒の高校に通いたくて」

女胤
「それでしたら、私も共にしたかったですね…」
「とはいえ財政面の事もありましたし、仕方ありませんか」


確かに、女胤殿なら高校2年生…下級生としてですが、不可能では無いでござるな。
しかし、女胤殿は自分で仕事の道を選びました、そこに後悔はありますまい。

舞桜
「私も、とりあえず面接だけでも受けないと…」

水恋
「どこで仕事するかもう決めたの?」

舞桜
「うん、阿須那さんと同じ職場でやってみようかなって…」

アブリボン
「阿須那さんかぁ確かにコスプレとかいうのをやってるのよね?」

華澄
「はい、そしてお客様に対して笑顔で接客するのです」
「想像以上に過酷な職場ですが、頑張ってくだされ舞桜殿」


拙者はそう言って舞桜殿を応援する。
舞桜殿は真剣な顔をしながらも、やはり不安はある様でした。
やった事の無い仕事をするというのは、それなりに恐怖がある物。
特に拙者たちポケモンにとって、人間社会の仕事は未知の領域。
改めて、すぐにでも馴染んでしまった阿須那殿はスゴいとしか言い様がありませぬ…


ケケンカニ
「仕事か…アタシもやってみようかな? どうせならやった事無いのをやってみたいし♪」

アブリボン
「良いわね…私も興味あるわ♪ いっその事、皆で受けてみる?」

ホイーガ姉妹
「面白そ〜♪ お姉ちゃんにも聞いてみよ〜♪」


ふふ、こちらは逞しい事ですな。
話に聞けば、彼女たちはずっと戦場で戦い続けていたとの事。
平和なこの世界で、彼女たちは新たな生活を見付けなければなりませんからな。


騰湖
「しかし、我らの様に翼も尻尾も大きいと難しいな」


「確かに…狭い所とか通れねぇし、迂闊に人混みには入れねぇもんな〜」

舞桜
「流石に、それは注意するしかないですよね…」

明海
「伝説のポケモン的な悩みよね〜レシラムなんかはその翼が美しいんだし、ゼクロムは逆に逞しい」


「どうしても、種族の特徴はあるものね…」


確かに、騰湖殿や鳴殿はその特徴的な翼と尻尾はあまりに大きく、日本の様な都市ではとても歩く事は出来ない。
もっと広い土地ならばともかく、おふたりにとって辛い現実ですな…


毬子
「見た目って言ったら、喜久乃ちゃんとかスゴいよね…」

教子
「お湯が無いと人型になれないんだよね…本当にどうなってるんだろ?」


確かに、それもまたポケモンの神秘でござるな…
それとも、それこそがトラップポケモンたる意味なのでしょうか?


華澄
「しかし、このグループは大所帯でござるな…」

女胤
「年代的に固まってますからね…特に華澄さんと同い年が1番多い様ですし…」


拙者は改めて見るが、本当によくこれだけの絆が生まれたものだと感心する。
ひとえに聖殿の人望でござるな…
結局、その後は皆会話もそこそこにして、風呂から上がる事となった…



………………………



Cグループ 『子供組』


麻亜守
「食らうのだ!」

夏翔麗愛
「むぅ〜! お返しなのです!!」
「○プラッシュ! マウンテン!!」

香飛利
「おおっ急降下〜!」


「うむ、まっ逆さまだな」


夏翔麗愛ちゃんと麻亜守ちゃんは意気投合して遊びまくっていた。
幸いにも、このお風呂はかなり広く、余裕は相当ある。
皆、とりあえず楽しそうで良かった。


守連
「それよりも、喜久乃ちゃんの体って不思議だよね〜」

喜久乃
「原理は解らないですけど、インスタントラーメンみたいなモンだと藍に言われましたね…」
「とにかく、一定のお湯さえあれば人の姿は維持出来るみたいです」


「…本当に理解不能だけど、仮にも魚系だし、陸上だと干からびてああなってるのかしら…?」
「…でも、骨格まであんなに変わるなんて…」


棗ちゃんはひとりでひたすらに考えていた。
知識の神的に理解出来ないのは許せないらしい。


麻亜守
「おのれ必殺○ロノスチェーンジ!!」

夏翔麗愛
「ぬぅ!? これはぁ!?」


麻亜守ちゃんは夏翔麗愛ちゃんにヘッドロックされていたものの、テレポートを使って逆に技を返した。
今度は夏翔麗愛ちゃんがヘッドロックを食らう。


夏翔麗愛
「ふっふっふ…中々やりますが、夏翔麗愛はお姉ちゃん!」
「このまま海老ぞりで水面に叩き付けてくれる〜!!」


夏翔麗愛ちゃんは思いっきり仰け反って麻亜守ちゃんにヘッドロックされたままズバシャァンッ!!と水飛沫を上げた。
そして、ふたりして大笑いしまた掴み合う。
夏翔麗愛ちゃんも凄く楽しそう…麻亜守ちゃんとは気持ちが合うんだね♪



「やれやれ…夏翔麗愛の奴すっかり意気投合してるな」

香飛利
「でも、楽しそう〜♪ 私はゆったりしたいけど〜…」


香飛利ちゃんはそう言ってゆったり湯船に顎まで浸かる。
本当に気持ち良さそうで、見ているこちらも気持ち良くなる笑顔だ。



「しっかし、香飛利を除いてここは貧乳軍団だな…」
「致し方ないとはいえ、由々しき事態だぞこれは」

守連
「あ、あはは…そう?」


私が苦笑すると、藍ちゃんは当たり前だ!と強く言う。
そして、腕を組んでこう解説した。



「良いか? 女の胸は男にとっても重要な興奮材だ」
「これの相性いかんで体の相性が決まると言ってもいい」
「特に、聖はあからさまな巨乳好きだ!」
「現状、アイツの眼鏡に叶いそうなのは3人程だが、その中でも華澄は別格!」
「アイツのあの低身長であのサイズ…そして童顔でそれなりにお姉さんポジと、作者に優遇されているにも程がある!」
「しかし、そこで俺様はピーンと来た…アイツはロリ巨乳が好きなんだと!」
「だが、この定義は非常に曖昧だ…そもそも、ロリとはどこまでがロリだ?」
「むしろ既に18歳は結婚可能年齢だし、華澄は名目共に合法ロリとも言える!!」

香飛利
「合法ロリって何〜?」

喜久乃
「エッチな事しても法律に触れないロリの事ですよ…同意の上ならですが」


だから合法なんだね…って言うか喜久乃ちゃん何でそんな知識あるの?
後、藍ちゃんが暴走気味で論議が終わらない…
もはやひとりで熱く語っており、誰も付いていけてないよ…


夏翔麗愛
「そもそも、藍お姉ちゃんは肉体年齢の割に中々の巨乳なのです!」


「うわぁっ!? 急に背後から乳揉むな!?」
「俺様はこれでも、牛乳は飲んでるんだ! 意識してんだよ!!」


夏翔麗愛ちゃんは藍ちゃんの胸をグリグリしていた。
とりあえず、色々とマズイ絵面だけど、私は諦めた様にニコニコしていた…
流石に藍ちゃんも堪忍袋の緒が切れたのか、夏翔麗愛ちゃんを『念力』で引き剥がした。



「ったく! いい加減にしろこのバカ!」

夏翔麗愛
「むぅ〜いつかお姉ちゃんよりも大っきくなって見返してやるのです!」


「…やれやれね、体格的にも私たちは低身長だし、今の世間では小さすぎる位だと思うけど?」


「んな事はない、姉さんの身長120でバスト67なら十分デカイ方だ、ちなみにCカップだぞ?」
「後、現代の10〜11歳の平均身長は今だと大分高いから、身長比で言うならそこそこの巨乳だ」


私は聞いてて、へぇ〜と思う。
自分ではあまり気にした事無かったけど、そうなんだね…
と、こんな感じで色々話しながら、楽しい時間は過ぎていった。



………………………




「よし、これで今日の課題も終わり!」


俺はホテルの部屋で机に向かって勉強していた。
始業式だからってサボって良い理由にはならない、宿題が無いなら予習を少しでもやるのが俺流だ。
そして宿題が終われば、次は筋トレ。
これから先何があるのかも解らないし、体は鍛えておいて損が無いだろう。
俺はこうやって、普段通りに1日を締め括っていく…
さぁ、明日は本格的に遊ぶぞ!!










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第1章 『新たなる生活』

第1話 『風路と聖、受け継がれし願い』


To be continued…

Yuki ( 2019/04/20(土) 06:57 )