とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない














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第1章 『新たなる生活』
第10話

「ん〜? 間違ったかな…?」


「お前は長く生きすぎた…」


「いや、良いから結果教えろって!」


俺たちは白那さんの城に赴き、藍に会っていた。
そして鳴の身体を藍に調べてもらい、藍からの回答を待っていたのだ。
ちなみに城の地下には藍の研究施設があり、ここには医療器具等もあって、検査は割と簡単に終わってしまった…

何で医療器具が?と思うだろうが、藍が城に保管されてる大量の金塊と引き換えにわざわざ購入したそうだ。
大学でやるより、こっちでやった方が良いっていうのが本音なのだろう…

藍はとりあえず腕を組み、やや俯き気味に考えながら言葉を放つ。



「…まぁ、ぶっちゃけ身体構造は人間とほぼ変わらないと言っておく」


「それじゃ、交配可能って事か?」


「焦るな…あくまで内蔵の構造が同じってだけだ」
「確かに、人間とほぼ同じ子宮も卵巣も存在はする…だが、交配可能かは解らない」
「この辺は、実際にヤってみて確かめるしかないな…」


とりあえず、ポケモン娘は身体構造に関しては人間とほぼ変わらないという事は解った。
だけど、交配するとなると疑問は出るって事か…
遺伝子とかの問題もあるだろうし、そもそも生まれてくる子供は人間になるのか、ポケモンになるのかも解らない。

ゲーム的には♀のポケモンに依存するから、鳴の場合はポケモン確定にでもなるのだろうか…?
その場合、男か女かは解らない所だが…



「正直、遺伝子レベルでなら可能とは思われる」
「だが、あくまで俺様の推測だ…実際に出来るかは、本当に試してみない事には解らない」


「でも、試すって…」


鳴は顔を赤くして恥ずかしがる。
そりゃ…試すってんなら、セクロスするしかないからな…
俺は流石にそれはまだ遠慮させてもらうが。



「…とりあえず、聖にその気が無いなら、どうしようもないな」
「お前だって聖以外の男とヤりたくはないだろう?」


「当たり前だ! そりゃ、作るなら聖と作りたい…」


鳴は恥ずかしそうにそう言う。
聞いてる俺まで恥ずかしくなる内容だな…
とはいえ、俺は在学中の内に子供を作る気は無い。
そもそも、出来るかどうかも解らないときてるしな。

…想像すると頭が痛くなる。
マジで卒業と同時に何人かが雪崩れこんで来そうで…



「まっ、俺様に言える事のはここまでだ…そろそろ学校に行くから、またな」


「ああ、悪かったな寝起きに突然」


藍は、別に構わねぇよ…と、手を振りながら欠伸をして言った。
流石に眠いのか、目を擦りながら浮遊して部屋を出て行く。
さて、とりあえず俺も戻って寝るかな…
そう思い、俺は不安そうに俯いている鳴を横目でチラッと見た。



「………」


鳴は、やはり悩んでいる様だった。
そりゃそうか…結局確証は得られなかったからな。
本当に鳴は子供を産めるのか? この疑問に答えてくれる人は、結局何処にもいない。
だからこそ、俺が本来は先駆けてやらなきゃいけないんだが…



(俺には、その勇気は無い…)


…勇気というか、無謀な気もするが。
こういうのは、ひとり許したら全員OKになるのがテンプレだ。
というか、下手すりゃ家族間で戦争でも起きかねない。
女胤や騰湖は間違いなく先陣に立つだろうし。

改めて頭を抱えたくなる…本当に迂闊過ぎる事を言ったものだ。
数時間前の俺をダッシュアッパーで打ち上げて、そのまま空中コンボでシメてやりたいわっ。



「…ゴメン聖、何か迷惑かけたみたいで」
「解んないなら、仕方ないもんな…ははっ」


そう言うも、明らかに空笑いだった…それも痛々しい位の。
俺はそんな鳴を見かねて、抱き締めてやる。
もちろん鳴の方が体が大きい為、俺は鳴の首辺りに埋もれる形になったが。
ぐ…これだと俺が甘えている様に見えてしまうな。
だが、俺は気にせず鳴にこう言った。



「迷惑だなんて言うな、俺は鳴も家族だと思ってるからな?」


「え…?」


「鳴の気持ちは解る…だから、せめて待っててほしい」
「もし、その時が来たら…俺は絶対、鳴の為に頑張るから…」


俺は、約束をする事にした。
こうでもしなければ、俺は勇気を出せない…
そして覚悟する…本当にその時が来た時、それがどんな結果になっても、俺は鳴を優しく抱き締めてやると。



「うん…分かった、なら待ってるよ」
「ありがとう聖…俺、やっぱり聖を好きになって良かった♪」


鳴も俺の背中に手を回し、俺たちは互いに抱き合う。
端から見たら、間違いなく恋人同士だろう。
こんな研究施設じゃ、ムードも何も無いけど。

そして、今度こそ迂闊じゃ済まない発言をしたのだと俺は確信する。
もう後には退けん…俺に後退は無いのだ!!

だが…そんな中、退かねばならない程のオーラを纏った女が俺たちに迫り来る。


騰湖
「鳴…良い度胸だな〜? 我に内緒で聖殿と密会とは…」


「げっ!? 騰湖!?」


「何ぃっ!?」


俺は鳴の叫びを聞き、鳴から離れて後ろを振り向く。
するとそこには、鬼の形相でドアを占拠している騰湖の姿があった。
騰湖が触れているドアの枠がボコボコと沸騰している…
鉄製の枠が融解してんのか!?

この時点で、俺は頭の中で緊急事態のサイレンを鳴らした。
これはヒジョーにマズイ。
下手したら部屋ごと吹き飛ぶ可能性も…!

それ位やりそうな程に、今の騰湖は鬼気迫る顔をしている。
しかし騰湖とはいえ、そこまでの無法には及ばないと思うのだが…


騰湖
「こっちは脳内で必至に聖殿と子作りしていると言うのに…」
「ヤるなら我も混ぜろこの愚か者!? さぁ、レッツ子作り!!」


「アホかっ!! 別に約束しただけでまだヤる気は無いわ!!」


「よせ聖! 今の騰湖には、何を言ってもエロワードに強制変換されるぞ!?」


何じゃそりゃーーー!?と、俺は叫ぶ。
そして、騰湖はうふふふ…と不気味な笑い方をしながら、ゆらりゆらりと体を左右に揺らして近付いて来た。
その際、瞳は蒼く輝き、その異常性を俺は感じる。


騰湖
「ああ…もう疼きが限界突破! 私の渇きを癒せ!!」
「聖殿! 今犯ろうすぐ犯ろう生で犯ろう!!」
「聖殿の熱〜い精液で我の子宮を満たして…♪」


騰湖は服を一瞬で脱ぎ捨て、即下着の状態に。
俺は本格的に危機を感じた。
この状況では流石に逃げられん…出口はよりにもよって騰湖側。

回り込むのも無理だ…この狭い研究施設では機材が邪魔すぎて動きも取れない。
鳴も下手に電気は使えないし、そもそも出来る限り争いは避けたい。

しかし、説得は不可能…俺の言葉はどういう訳か全てエロワードに強制変換されるらしいし。
どうする俺!? どうする○イフル!?
何か策は無いのか!? この状況を華麗に突破出来る様な策はよー!?


騰湖
「!? はら…?」


突然、騰湖がフラッと身体を揺らした。
そして、そのままドサッと前のめりに倒れ込む。
俺たちは?を浮かべ、ドアの先を見ると目を開いた棗ちゃんがいたのに気付く。
そして、その目はヒジョーに不機嫌そうであり、ある意味先程の騰湖よりもよっぽど怖く感じた…



「…こんな夜中に何やってるのよ?」
「…全く、明日も学校なんだから休ませてよ」


「あ、サーセン…」


「た、助かった…」


とりあえず、棗ちゃんが騰湖を眠らせてくれた様だ…欠伸をしてるって事はそれが直接の原因か。
後はついでに記憶も消したって所だな…目覚めて暴れられても困るし。
とりあえず危機は去った…俺の童貞は守られた様だ。

鳴は深いため息を吐き、騰湖を部屋まで連れて行くよ…と言って騰湖を担いで行った。
俺はそれを見届け、改めて棗ちゃんに礼を言ってからその場を後にする…



………………………




「…子供、か」


俺は真っ暗な自室のベッドに寝転びながら、ひとりそう呟く。
何気に重いテーマだな…人類としては繁栄に必須。
誰でも大人になれば、いずれその問題に辿り着く…はず。

まぁメタな話、今は結婚率も低下傾向だし、誰もが子供を作る訳じゃない。
全体で言えば、そんな関係を持ってる奴らの方が多いのに、だ。

俺は、どうなんだろうな?
正直ピンと来ない…俺は親を知らない人間だし。
親を知らないのに、どうやって親になる?
それとも、それはもっと自然な事なんだろうか?
その答えはどこからも返っては来ない…俺は静かに目を瞑り、眠りに着く事にした。

そして、俺は夢を見る…今ではもう、会う事の出来ない家族に会う為に。



………………………




『また、来てくれたんだね…』


俺は夢を見ていた。
そして、未だ忘れる事の出来ない家族の声を聞く。
俺には、今はこれが限界だった…例え夢見の雫を使っても、この声を聞く事しか出来ないのだ。
こちらから声をかける事も出来ない…俺はただ、彼女の声を聞く事しか出来ない。



『もう、何度目だろうね…?』
『ボクの事は、もう忘れてくれて良かったのに…』


彼女はそれでも笑った様に言う。
まるで自分など初めからいないのだと…そう彼女は笑って言っている様だった。
俺は何も言えない…それでも彼女を想った。

何故、彼女はそこに閉じ込められてしまったのか…
そして、何故あらゆる力が全て届かないのか…
彼女を…救う事は出来ないのか?



『キミは、今でも変わらないんだね』
『キミは絶対に諦めない…救うと決めたら全員救う』
『そして、誰かひとりを選ぶ事はしない…選ぶ時は必ず全員と言う』
『例え選択肢を提示されても、キミは自分で選択肢を勝手に増やす』
『そうやって…キミは皆を救ったんだもんね』


そうだ。俺は絶対に諦めない。
全員を救うと決めた…でも、ひとりだけ救えなかった。
いや、実際には救えたのかもしれない…何故なら、この結果が彼女の悲願だったのだから。



『聖君、もう良いんだよ…ボクの事を忘れても』
『ボクはキミの嫁になりたかったけど、それはもう叶わないから…』
『だから、ありがとう聖君…皆の世界を、ボクの世界を救ってくれて…』


彼女の声は、次第に遠退いていく。
もう雫の力が持たない…このままだと雫は大きく濁ってしまうだろう。
俺はすぐに回線を切断し、元の夢に戻る…今日は、せめて幸せな夢を見せてほしい。
俺は、何故か…そう思った。



………………………




『あれ…何か、今日の夢は変にリアルだな?』


俺は曖昧な意識の中で、何故か近所の公園で休んでいるのを理解する。
座っているベンチに触れてみるが、感触は曖昧だ…やはりこれは夢だろう。

だけど体は動かせるし、音も聞こえる。
俺はその場で、ただベンチに座ってボーッとしていた…すると、いつの間にか俺の隣に座っている女性がいる事に驚く。
何故なら、 その人はまさかの神様だったからだ。


アルセウス
『久しいな…人の子よ、いや…聖よ』


『アルセウスさん!? ど、どうして…って、夢だからおかしくもないのか?』
『って、何であえてアルセウスさんなんだ? うーむ、自分の夢に悩むのもバカらしいが…』

アルセウス
『ふふ…ここはそなたの夢であり、夢では無いぞ?』


アルセウスさんは小さく微笑み、そう言う。
俺はドキッとした…素直に綺麗だと思ったからだ。
改めて見ても、アルセウスさんは間違いなく美女だろう。
白く長い髪が風で優しくなびき、俺は風を曖昧に感じる。

アルセウスさんはしばらく黙り、その風を何となく楽しんでいる様だった。
そして、やや間を置いてから、アルセウスさんは呟く様に言葉を放つ。

その声は無感情でありながらも、まるで全てを包み込むかの様な優しい声であり、暴走していたあの時とは明らかに違うのだと、俺は改めて思った。


アルセウス
『ここはそなたの夢であり、我の夢でもある』


『え…って事は、夢を共有しちゃってるんですか?』
『もしかして夢見の雫が…?』


俺は試しに雫を出してみる。
夢にも関わらず、ちゃんと雫を出す事は出来た。
だが、その色は若干濁っており、俺は考えてしまう。
このまま濁り続ければ、いずれ俺は世界を滅ぼしてしてしまうのだろうか?と…

ただ、それでも救いたい家族がいる。
例えギリギリになっても、俺は諦めたくなかった…
最終的に、雫が使用不可になろうとも…


アルセウス
『やはり…無理を、しているな』


『やっぱり、解りますか?』


流石はアルセウスさん…雫を見て、すぐに察した様だ。
今の雫の濁りは、やや美しいとは言い難い。
茶褐色の濁りが球体である雫の内部で渦巻いており、それは多少の危険性を匂わせていた。

小学生だった頃に比べると、今の俺は心に邪気が増えているのかもしれないな…
昔は何回使っても、こんな色はしてなかった気がするし。

俺がそう考えていると、アルセウスさんは雫に向けて手をかざす。
そして、アルセウスさんの手から何か光の粒子の様な白い何かを放っていた。
俺はそれを見て驚く。


アルセウス
『………』


『ア、アルセウスさん!?』


その後、アルセウスさんは雫の濁りを手で吸い込んだ。
やがて、雫は再び美しい透明の輝きに変わる。
俺はアルセウスさんを見る…アルセウスさんは少し息を吐き、疲れた様に呼吸を荒らげている様だった。

だけど、すぐにアルセウスさんは胸に手を当て息を整える。
俺はそんなアルセウスさんを心配し、アルセウスさんの肩を支えてこう聞いた。



『だ、大丈夫なんですか!? あんな、汚い俺の邪気を…』

アルセウス
『問題は無い…元々、今回我はこの為に来たのだ』
『この位であれば、我が邪気に囚われる事は無い…時間をかければ、じきに消えて無くなる』


アルセウスさんは息を整え、俺が彼女に触れている手の上に自分の手を乗せてそう言った。
俺はそれを聞いて安心する。
もう、あの時の様な地獄はゴメンだ…これからはもう少し気を付けないとな。

そんな俺の内心を全て見抜いているのか、アルセウスさんは優しく微笑み、まるで親が子供を諭すかの様に優しく言葉を続ける。


アルセウス
『そなたが、決して諦めない人間だというのは、この身が知っている』
『そして、そなたが夢見の雫を無理に行使しているのだと…我は感じ、予測した』
『そして、間に合って良かった…これからは、我が定期的に雫を浄化しに来よう』


『良いんですか? これは、俺のエゴで濁ったんですよ?』

アルセウス
『だが、それもそなたの愛情であろう?』
『我はそなたを気に入っている…そして、信じてもいる』
『そなたは、決して継承者として間違った使い方はしないと…』


俺は心が痛かった…夢の中にも関わらず、だ。
アルセウスさんは優しく言ってくれるが、それは純粋に俺を気に入ってくれているからなのだろう。
俺はその優しさにつけ込んででも、彼女を助けたいのか?
それは、許されざる暴挙だ…まさに神を冒涜している行為。
それでも、俺は諦めたくなかった…こんな自分が嫌になるな。

俺はアルセウスさんから手を離し、足元を見て俯く。
そして両手を組み、それをギュッ…と強く握り締めた。
そのまま、軽く歯軋りし…俺は振り絞るかの様な小さい声でこう神様に訪ねた。



『…俺は、諦めた方が良いんでしょうか?』

アルセウス
『…らしくないのだな? そなたの口から、まさかそんな言葉を聞くとは、思わなかったぞ…』


アルセウスさんは、意外にも少々厳しめの表情で言う。
俺は少し驚いた…アルセウスさんは、まるで子供を優しく叱りつける様に言ってくれるのだ。

なら…俺は、どうすれば良いんだろう?
アルセウスさんを利用してでも、続けるべきなのか…?
彼女は言った…忘れてくれと。
だけど…俺は諦めたくない、救える可能性があるなら、全部試したい。


アルセウス
『…そなたは、そなたらしくあれ』


『アルセウス…さん?』


アルセウスさんは空を見て微笑み、そう呟く。
俺も同じ様に見てみるが、空は綺麗な蒼空だった。
夢の中の物であるはずだが、空には雲もあり、それらが自由気ままにゆっくりと流れている。

アルセウスさんは、それを見ながら、全てを悟った様な声で言葉を続けた。


アルセウス
『我は、そなたが正しい道を歩む限り、必ずそなたの背中を押そう』
『だから、そなたはそなたらしくあれ…それが正しい道なのだから』


何故、この神様はこうも俺に優しいのだろうか?
俺に、もし母親がいたら…こんな風に優しい言葉をかけてくれるのだろうか?

アルセウスさんの言葉は、何かと俺の心に訴えかけてくる気がした。
神様の言葉だけに、神の加護が本当にあるんじゃないか?と信じたくなる程だ。
だけど、本当に俺はそれに甘えてしまっても良いのだろうか?

もしかしたら、また同じ過ちを繰り返すかもしれない。
だけど、俺はもう1度神様の言葉を思い出し、迷いを払拭する。
そして、俺は決意を胸にこう答えた。



『俺は、俺らしくあれ…ですか』
『分かりました…なら、俺は決して諦めません』
『その為に、俺は貴女を利用するかもしれない…それでも、構いませんか?』


アルセウスさんは優しく微笑むだけ…
それは肯定であり、お許しなのだろう。
そして、アルセウスさんは静かに言葉を放つ…それはまさに、神の啓示の様に。


アルセウス
『我が、自らの意志でそうするのだ…故に、そなたはそれで良い』
『どうか正しくあれ…聖よ、我がそなたを見ている』
『だから信じているぞ…? この先の混沌にも、決して負けぬと』


『え…混、沌?』


それは、俺が初めて耳にするワードだった。
混沌…いわゆるカオスって奴だろうが…ここでのそれは、一体何を意味する言葉なんだ?

この神様が言う言葉だけに、とてつもなく重い意味にも感じられるが…
そんな、若干の戸惑いを見せる俺を見てか、アルセウスさんはまるで俺を力付けるかの様な優しい声で、こう続けてくれた…


アルセウス
『恐らく…近い未来に、そなたの世界は少なからず混沌に巻き込まれる』
『だが…それは、決して地獄の様な物ではない…あくまで、世界にとって必要な混沌だ』


世界に必要な混沌…?
何だか、メチャクチャなイメージがあるんだけど…
まぁ、世界を創った神様がそう言うんだ、それならどうにかするしかない。

どの道…俺が巻き込まれるのは確定っぽいし。
すると、それを肯定するかの様に、アルセウスさんは俺の手をそっと握ってこう言った。


アルセウス
『そなたは、それら混沌の中心に常にいる…特異点として』
『故に、決して忘れるなかれ…そなたには、全てを救う事も出来る、力があるのだと』


アルセウスさんは、最後にそう言うと消えてしまっていた。
同時に、俺は考える間も無く、意識がまどろむ。
夢の中なのに、まどろむというのもおかしいが…まぁ、そういう表現がピッタリだった。

そして、俺は深い眠りに落ちて行く…



………………………




「…朝、か」


俺はやや重い頭を抱え、身体を起こす。
そして夢見の雫を取り出し、色を見た。
それは透き通った無色透明…どうやら、あのリアルな夢はマジらしい。

だったら、俺は改めて礼を言わなきゃならない…
俺はそう思い、きっと何処かで聞いてくれるであろう神様に向かって、虚空を見つめながらこう言った…



「アルセウスさん…感謝します」
「そして、俺は絶対に諦めません…必ず彼女を救うと」


俺はそう呟き、ベッドに置いてあったスマホを持って電源を入れずに、耳に当てる。
そして、俺はただこう宣言した…



「…俺は、必ず救うぞ?」
「何を言われ様が、もう聞く耳は持たない」
「これが、俺の選んだ選択肢だ…例え神の力を利用してでも、必ず救う」
「だから、待っていろ…恵里香」


もちろん、答え等は帰って来ない。
だが、もし見ているなら聞こえてるはずだ。
それすらも出来ないなら、俺はさぞ滑稽だろうな…

俺はため息をひとつ吐き、スマホをベッドに置いてさっさと立ち上がる。
そして、すぐに制服に着替えて鞄を取った。
さて、まずは朝食だ。



………………………




「おはよう皆」

守連
「あ、おはよ〜♪」

阿須那
「おはようさん♪」

華澄
「おはようございます」

女胤
「おはようございます聖様」

愛呂恵
「おはようございます…聖様、朝食をどうぞ」


俺は皆と挨拶を交わし、鞄をソファーに置いてから食卓の椅子に座る。
そして今日の朝食を見て俺は軽く微笑んだ…



「今日は焼鮭か、美味そうだな♪」


俺はそう言ってから手を合わせ、いただきます…と言う。
そして箸を取って、まずは漬物と白米を食べ始めた。

そのままテレビに視線を向け、今日の天気予報を見る。
予報は雨か…今は降ってないが、傘は持ってた方が良さそうだな。


守連
「雨だね〜…今日は洗濯物、部屋干しにしないと」

愛呂恵
「そうですね、後で準備をしておきましょう」

阿須那
「一応、傘はいるやろな…聖も折り畳みあるさかい、忘れんと持って行きや?」


俺はああ、と頷き食事を続ける。
うん、やっぱり美味い…鮭にも塩がよく効いてる。
流石は愛呂恵さん、やっぱり俺の好きな味の濃さを理解してくれてるな♪

そう思いながら、俺は朝食を美味しくいただき、やがて学校に向かう事にした。



………………………



悠和
「あ、聖様…おはようございます♪」


「うん、おはよう悠和ちゃん…ところで傘は持ってる?」
「今日は雨が降る予定だぞ?」


玄関前で悠和ちゃんと出会い、まず挨拶を交わしてから俺がそう言うと、悠和ちゃんは少し驚いた顔をする。
そして、傘は持ってないと言って項垂れた。

それなら…と、俺は1度家に戻って傘をひとつ取り、そしてそれを悠和ちゃんに渡す。
悠和ちゃんは笑顔でそれを受け取った。


悠和
「ありがとうございます! 大切に使わせてもらいますね♪」
「ですが、聖様の傘は…?」


「俺は折り畳みのを鞄に入れてるから」


今は別に降ってないしな…もし降らなかったら、フツーの傘はかさばるだけだし。
とはいえ、予報は降るって言ってる以上、やっぱり備えあれば憂い無しだ。
折り畳みはそういう時、鞄に気軽に入れられるから便利で良い。


悠和
「そうでしたか…私も折り畳みのを買おうかな?」


「1本位はあった方が便利だよ? 今度一緒に店を見てみようか?」


俺が言うと、悠和ちゃんは嬉しそうにモジモジして赤くなる。
そんなに嬉しかったのか…? まぁ、ある意味悠和ちゃんらしいが。


悠和
「さ、聖様から、デートのお誘いを…!」


「…おっと、そう来たか」


確かに、そういう見方も出来るな…迂闊だったわ。
あまりにも自然にそういう事を言うから、俺は色々と爆死するんだろうな…
確かに、端から見たら今のはデートのお誘いに見えるのだろう。
俺からしたら、家族と一緒に出かける位の感覚だが。

まぁ、正直悠和ちゃん程可愛い娘なら、いくらでもデートに誘わせていただくがね!
結局、そのまま悠和ちゃんは四六時中モジモジしながら登校する事になってしまった…よっぽど楽しみらしい。

それなら、俺もしっかりと悠和ちゃんをエスコートしてやらんとな♪
そして、俺たちはそのままいつもの道を歩いて行く…



………………………



光里
「おっはよ〜おふたりさん! 今日も熱々だね〜♪」


「光里ちゃん…相変わらず元気だね」


いつもの場所で、光里ちゃんは元気に突撃して来た。
前に告白の件があってからというもの、光里ちゃんは呆れる程に元気だ。

それこそ、まるで無理に自分を奮い立たせてる様にも見える程に。
だが、俺はあえて何も言わなかった。
光里ちゃんは光里ちゃんの意志で、こうやって友達でいてくれるのだから…
俺は、その意志を汲んであげたかった。


光里
「あははっ、私はこれ位しか取り柄が無いからね!」

悠和
「…光里先輩、何か無理してないですか?」


光里ちゃんは、悠和ちゃんの言葉を聞いて苦笑いし、言葉を詰める。
やっぱり、無理はしてるのか…露骨に表情を変えたな。
だが、今の悠和ちゃんは少し軽率だったかもしれない。
光里ちゃん、気にしすぎないと良いが…


光里
「あ、はは…まぁ、無理はしてるかもねっ」
「でも、私は大丈夫! …今は割り切ってるから」
「私は、聖君や悠和ちゃんの友達なんだから!」


それでも、光里ちゃんは笑った。
確かに無理はしているかもしれない…それでも彼女は笑っていたのだ。
悠和ちゃんも少し、複雑そうな顔をする。
そんな中、俺はあえて光里ちゃんにこう言った。



「光里ちゃん、辛いなら辛いって言ってくれ」
「俺は、光里ちゃんの事も大切に思ってる」
「だから、本当に辛いなら、いつでも頼ってくれよ?」


光里
「…ゴメン、そうだよね」
「でも、大丈夫…私は聖君の事が好きだから♪」
「だから、無理でも私は笑うよ…聖君の為に」


光里ちゃんは、ただ真剣だった。
俺も悠和ちゃんも、それを真面目に受け取る。
光里ちゃんは自分でその道を選んだのだ。
なら、俺はその背中を押そう…
神様が、俺の背中を押してくれた様に。

光里ちゃんは自分で自分の道を決めたなら、それを俺は応援するべきなのだから…



「分かった、それなら俺はもう何も言わない」
「…でも、何かあったらいつでも言ってくれ、俺は必ず力になるから」

悠和
「私も、その時は協力します」
「例え、聖先輩を奪い合う関係でも、私は光里先輩の事も好きですから♪」
「だから、正々堂々戦いましょう…聖先輩の1番になる為に」


悠和ちゃんも真剣な顔で光里ちゃんにそう言う。
光里ちゃんは驚いた顔で悠和ちゃんを見ていた。
そして、何かを決意した様に目を瞑り、光里ちゃんは笑う。
その顔に迷いは見えない。


光里
「うん、良いよ…なら私も負けない!」
「聖君の1番になれるなら、私もまだまだ頑張れる!」
「悠和ちゃんはとっても可愛いけど、絶対に負けないからね!?」
「私だって、聖君が大好きだから!!」


聞いてる俺が1番恥ずかしくなる会話だな…
よりにもよって、ふたりは俺を奪い合うみたいな会話を道端で交わしているのだ。
そして、俺はそれを無言で受け止めている。

それも、彼女たちが選んだ選択肢…
なら、俺はそれを受け入れよう…俺は、もっと強くなろう。
ふたりの決意に相応しい男になるために、俺はより強くそう想う。
俺を好きでいてくれる娘の為に、俺は強くならなければならないのだから…

そして、俺は空を見上げて心に決意する。
例えどんな困難があろうとも、俺は絶対に諦めない。
必ず、恵里香も俺は救! 例えこの先、どんな障害があろうとも…!!










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第1章 『新たなる生活』 完

第10話 『神様との約束、聖の決意』


To be continued…

Yuki ( 2019/04/21(日) 20:04 )