とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第1章 『新たなる生活』
第8話

「儲かりまっか〜?」

阿須那
「ボチボチでんな〜って、まだ開店してへんちゅうねん!」


突然現れた聖のに対し、ウチは的確にツッコミを入れる。
ちなみに今はこすぷれ〜ん2号店の店内で、客は誰もおらず、ウチらはまだ絶賛訓練中や。
予定では1週間訓練した後に、とりあえず仮オープン。
新人はそこから実戦で仕事覚えながらの作業になるやろな…



「皆はどうだ?」

阿須那
「まぁまぁやな…思ったよりはマシやけど、やっぱ素人だらけやな」

舞桜
「えっと、こすぷれ〜ん、キラッ☆」

水恋
「けっこう良いんじゃない? 舞桜はもうちょっとダイナミックでも良いと思うけど」


見るとふたりが制服姿でポーズチェックをやっとった。
今日は訓練やし、コスプレの基本のメイド服や…まぁ露出は高めやけど
見た感じ、内気な舞桜もちゃんと頑張ってる様で、それなりに様になってはいる。
せやけど、まだまだやな…流石に違和感はあるわ。


阿須那
「舞桜、もう少し自然にやり! 今のままやったら、作ってるのがバレるで?」

舞桜
「は、はいっ、すみません!」

水恋
「そうそう、アタシみたいに自然にやればいいんだよ〜♪」


そう言って水恋は空中でスピンを決めながらポーズを取る。
まぁ、これも個性やからうるさくは言わんけど、気になる所はツッコム。


阿須那
「水恋は少し動きすぎや…8時間も営業あるんやから、体力の消耗はコントロールせいよ?」
「後半バテましたとか言うたらしばき倒すで?」

水恋
「あい〜気を付けまーす!」


「はは、阿須那も大変そうだな…」


聖は笑いながらそう言うのに対し、ウチは当たり前や…と息を吐いて言う。
いかんせん、経験者がウチしかおらんねんから、しゃあない。
少なくとも、この訓練期間で客の前に出れなアカンねんから…
ウチは他の連中の様子も見る、あそこにおるのは…元旅館組やな。


明海
「ほら、お皿を持つ時はこう!」
「この店だと、片手でお盆を持てないと駄目だから、バランスには気を付けるのよ?」

毬子
「はいっ、よっと!」


「うん、毬子ちゃんは流石にバランス良いね」

教子
「うー、結構キツイ…」


向こうは流石に接客経験組やな、ほとんど言う事は無いわ。
元々社交性もある4人やし、ここでは貴重な戦力になってくれるやろ…
明海と瞳は教えるのも得意やから、場合によってはそっちに回ってもらうかもしれへんな…
毬子と教子も基本さえ覚えれば多分良い感じにやれるやろ…
むしろ問題なんは…あっちのふたりや。



「だぁー! 上手く出来ねぇー!!」

祭花
「李、力入れすぎだよ…もうちょっとリラックス♪」


「お前はお前で足元フラフラじゃねぇか…」

祭花
「いや、だって私普段は飛んでるから…こんなに歩く事無いし」


李はイラつきながら頭を掻く、元々ボサついている短い髪がガサガサと揺れていた。
祭花は足元をフラつかせ、セミロングの髪をダラりと下げて項垂れる。
予想はしてたんやけど、やっぱ不安要素やったか…
とはいえ、李は貴重な男勝り…この属性はかなり貴重や。
祭花は性格もセンスもええのに、致命的にスタミナが無い…
こればっかりは個性で済ませるわけにもいかん…やっぱ何とかせなアカンな。


阿須那
「李、祭花、ふたりともこっち来ぃ! アンタ等には特別講習や!」


ウチはふたりを呼び付ける。
ふたりともやる気は十分の顔つきで、全く腐ってはいない。
まぁ、あんな世紀末世界で揉まれたふたりや、ちょっとやそっとでは挫けんやろ。


阿須那
「李、アンタ聖を客やと思ってポーズを取ってみ?」


「いっ!? 聖様相手に…?」

祭花
「おっ、李頑張れ〜♪」


ウチの指示で俄に注目が集まる。
店内の全員が聖の座ってるテーブルに集中した。
そして、ある意味殺気に満ちた視線も混じってる…


舞桜
(羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい…)

水恋
(怖っ! 目が怖いよ舞桜!?)


とりあえず、アレは無視や…
とにかく李はまずリラックスさせなアカン…その為に聖を利用させてもらう。
李は躊躇いながらも、その場でこすぷれ〜んのシンボルでもある専用ポーズを取った。



「こ、こすぷれ〜ん…」

阿須那
「やり直し! 感情込めぇ! 聖を不幸にする気か!?」


ウチがビシッと言うと、李は顔を引き締める。
ほう、反骨心あるやん…見所あるで?



「聖様…こすぷれ〜ん♪」


今度はしっかり決める…あの李が乳と髪揺らして猫撫で声でポーズを決めよった。
元々見た目は悪ないんや、ちゃんとした服着てちゃんとやれば可愛く見える。
ウチはそれなりに満足し、李に激励を送った。


阿須那
「その感覚忘れるなや!? 今のアンタやったら十分可愛いで! 」


「か、可愛い…アタシが!?」


「可愛かったですよ、実際?」
「これからも、笑顔を忘れずに頑張ってください」


「は、はいぃっ!!」


あらら、流石に聖から直接激励もろたら気力も一気にMAXか…
この手は意外に使えるかもしれんな…


阿須那
「ほな次は祭花! 聖に水乗せたトレー持ってってみぃ!?」

祭花
「は、はいっ!」


祭花は明らかに慣れない手つきでトレーを持つ。
ウチはすぐにそれを矯正させる。


阿須那
「アホッ! トレーはこうやってしっかり指と手首でバランス取るんや!」
「そんな持ち方やったら余計に疲れるで!?」
「実戦ではもっと重い料理運ぶんや! 聖を料理まみれにする気か!?」

祭花
「は、はいっ!!」


予想通り祭花も急に気合いが入る、今なら特殊技能も発動しそうやな…
祭花はその場で一度屈伸し、しっかりと床を踏んだ。
その際にやや胸が揺れ、祭花はすぐに笑顔でトレーを運び直す。


祭花
「聖様、お待たせしました♪」


「はい、ありがとうございます! 祭花さんも可愛いですよ♪」


祭花は顔を真っ赤にしてトレーで顔を隠してしまった。
うーむ、聖ブーストの効果は絶大やな…これはしばらく利用させてもらお♪


阿須那
「よし、ふたりはそれを他のお客さんにも出来る様にせぇよ!?」
「次に聖相手にやりたい奴、名乗りあげぇ!!」

舞桜
「市江戸 舞桜! 吶喊(とっかん)します!!」
「聖様! こすぷれ〜ん♪ キラッ☆」


「うん、大分自然になりましたね…後は他の人にも出来る様になってくださいね?」


舞桜は顔を真っ赤にして喜んでいた。
やれやれ…やる気は認めるんやけど、大丈夫かな?


水恋
「次アタシ! こすぷれ〜ん♪」


「うん、流石水恋さん、笑顔が似合ってる♪」


水恋も大喜びして、飛び上がっていた。
とりあえず名乗りあげたのはふたりだけか…案外少なかったな。
って、そういや、忘れてたな…普通の人間もいる事。
あっちは風路はんが直接見とるから、大丈夫やとは思うんやが…
ウチは気になって風路はんの班を見てみる事にした。


風路
「うん、良い感じ♪ コスプレは経験あるの?」

バイトA
「はいっ! 私、風路さんに憧れて来ました!」
「色んなコスプレもやりましたし、自信もあります!」


風路はんはうんうんと頷いて笑う。
風路はんはウチとは真逆の教え方やな…叱りつけるよりも誉めて上げる。
まぁ、ウチは身内やから遠慮なくやるんやけどな…流石に他人相手ならもうちょっと加減するわ。


バイトB
「私、1号店で風路さんと阿須那さんの姿見て、自分もやりたいと思いました!」
「まだまだ経験不足ですけど、頑張ります!」


おっと、まさかウチに憧れてくれる人もおるとは…これは下手な所は見せられへんな。
とりあえず、流石は風路はんや…人間5人は任せといた方がええな。
ウチやと変に退かれても困るし…とまぁ、とりあえず今日もそんな感じで訓練は無事終わった。



………………………



水恋
「あ〜疲れた〜…」

阿須那
「せやから言うたやろ? ペース配分考えって」


ウチらは訓練終了して店内で話し合ってた。
とりあえずまだまだや…まぁ時間はあるし何とか上達させなな。


舞桜
「でも、慣れてないからそれもまだ解り辛いですよ…?」
「水恋ちゃんも仕事は初めてですし、やっぱり慣れていかないと…」


まぁ、確かにそうやが…とはいえ、仕事は仕事や。
慣れてないからちゅうのは、本番では通用せぇへん…


阿須那
「アンタ等には一言言うとくわ…ちょっと厳しいかもしれへんけど」


全員が一気に沈黙する。そしてウチの言葉を待った。
ウチは一呼吸置いてこう言う。


阿須那
「本番では一切弱音と言い訳はすな! お客さんはウチ等に会う為に来てくれるんや!」
「少しでも変な態度取ったら、お客さんは離れてくで!?」
「ここで仕事する以上、絶対に守らなアカン事を教えたる、よう聞けぇ!!」


ウチが強く言うと、場が一気に緊張する。
ウチは場が静寂したのを確認し、こう言い放った。


阿須那
「ひとつ! 常に自然な笑顔で!! ふたつ! お客様は神様!! みっつ! 仕事は楽しめ!!」
「以上や、心に刻めぇ!!」


ウチの言葉に全員がはいっ!!と強く答える。
ウチは頷き、全員の意志を確認した。
人間の娘もしっかり見てくれてる、これならきっと大丈夫やな。
風路はんも終始ニコニコしていた…何か逆に恥ずかしいな。


風路
「ふふ…阿須那ちゃん、お疲れ様♪」
「今日は、夕飯どうする? 良かったら皆で一緒に食べようかと思うんだけど…」

阿須那
「そうですね…ほな、ウチもご一緒します」
「聖はどうする?」


「俺は帰るよ、愛呂恵さんが作ってくれてると思うし」
「とりあえず、阿須那は食って帰るって伝えとくよ」


ウチはほうか…と答え、聖と別れる。
それを見て、ウチらは皆で更衣室に向かった。



………………………



阿須那
「…ふぅ」

明海
「阿須那さん、お疲れ様です」


明海が先に着替えてウチにそう言う。
ウチは笑顔を見せ、手を上げて答えた。
流石に、教える方も結構しんどいな…風路はんの偉大さが解るわ。



「そう言えば、風路さんが今日は全員分の料理作るって言ってましたけど、ひとりで大丈夫でしょうか…?」

阿須那
「…計15人分か、それはキツイやろ」
「アカンな、ウチも手伝うわ…アンタ等は着替えたら店内で休憩しとき、とりあえず疲れたやろ?」

明海
「いえ、それなら手伝います、食材の切り分け位なら出来ますし」


「はい、簡単な作業なら私も手伝えます」


それは心強いな…旅館でもこのふたりは主力やったみたいやし、期待は出来そうや。
ウチは明海と瞳を連れて厨房に向かった。



………………………



風路
「あれ、どうしたの3人とも?」

阿須那
「ひとりで15人分は無茶でっせ? ウチらも手伝います!」

明海
「とりあえず、指示をください…食材の切り分けは私が担当します!」


「では、私は野菜の皮むきや洗浄を…」


とりあえずこの4人で分担して作業する。
思いの外息はスムーズに合い、みるみる内に料理は出来上がっていった。
そして、出来た料理を皿に盛り、それを明海と瞳が持って行く。
さて、量は十分やな…味は風路はんに限って問題はまずあらへんやろ。



………………………



舞桜
「わ〜凄い、色々あるよ〜?」

水恋
「見た事無い料理も多いね〜うわ、美味しそ〜♪」


「もう食って良いのか!? アタシ我慢出来ね〜!」


既に皆腹ペコモードやな…ウチは風路はんの登場を待つ事なく、とりあえず合図する。


阿須那
「ほな、今日は皆お疲れ様!!」

一同
「お疲れ様でしたー!!」

阿須那
「ほな一斉に…いただきます!!」

一同
「いただきます!!」


こうして、少し早めの夕飯が始まる。
皆、それぞれ料理を食べて幸せそうな顔をしていた。


毬子
「美味しい〜! このパスタ最高〜♪」

教子
「こっちのハンバーグも美味しい!」

祭花
「あ〜冷たいジュースが体に染みる〜♪」


「うめうめ!! もう、いくらでも食えるぜ!!」

舞桜
「水恋ちゃん、これも美味しいよ♪」

水恋
「うんまっ! 風路さんって、ホントに料理上手だよね〜」


皆、ご満悦の様や…風路はんもやっと来たな。
ウチは手招きで風路はんを呼んだ。
風路はんは笑顔でウチと同じテーブル席に座る。


風路
「ごめんね阿須那ちゃん、先に食べてても良かったのに…」

阿須那
「こういう時位、一緒に食べましょうや…まぁ、積もる話もありますし」


風路はんは笑いながらも?を浮かべていた。
まぁ、ウチの個人的な話やからな…


阿須那
「風路はん、聖の事は今はどない思てます? やっぱり、弟みたいなモンのまま?」

風路
「…そうね、そうかも」
「曖昧かもしれないけれど、やっぱり恋愛感情かは何とも言えない」


風路はんはコーンスープをスプーンで掬い、それを一口吸ってからそう答えた。
ウチもサラダにドレッシングをかけ、それを食べる。
そして、それを咀嚼し飲み込んでからホットコーヒーを飲んだ。


阿須那
「…ウチは、聖の事好きでっせ? もちろんひとりの男として」

風路
「うん、知ってる…聖君も、阿須那ちゃんの事大好きだもんね」


風路はんは、沈んだ顔はしてへん。
ただ、悲しそうやった…ウチはそれを見て少し顔をしかめる。
そして、やや強めの口調でこう言うた。


阿須那
「風路はんは、もうちょっと自分に自信持ってくだはれ」
「聖は風路はんの事、絶対好きでっせ?」
「きっと…ひとりの女性としても」

風路
「…そう、だね」
「うん、ゴメンね阿須那ちゃん…何か心配かけたみたいで」


風路はんは微笑んでそう答える…ウチも軽く息を吐き、パスタを食べた。
うん、流石風路はんの味や…単純なペペロンチーノやけど、味付けの細かさが絶妙や。
ウチには到底この味は出せん…流石は勇気はんの跡取りやな。


阿須那
「風路はん、はよ食べましょ? 折角の美味しい料理が冷めてまいます…」


ウチが促すと、風路はんはハッとした顔をして、箸を進めた。
そして、ウチ等はそのまま軽く会話を交わし、食事を楽しく終える。



………………………



そして、その日は全員その場で解散。
それから次の日も、その次の日も訓練は続き、仮オープン1日前には全員それなりのレベルにまでは上がった。
そしてウチ等は、最後の訓練日を迎える。


阿須那
「ほな、全員一緒に!!」

一同
「こすぷれ〜ん♪ ハイッ!!」


その日の最後、こすぷれ〜ん伝統のポーズを全員に取らせ、ウチは見極める。
風路はんも笑顔でそれを見た。
そして、ウチは皆を見渡してからこう言う。


阿須那
「皆、今日までよう頑張った!! 誰ひとり脱落者がおらんかったのは正直予想外や!」
「せやけど、ここまではあくまで訓練!! 明日は休んで、明後日から仮オープンや!!」
「皆、覚悟して挑むんやで!?」

一同
「はいっ!!」


全員、ええ声と顔や…気負いもあらへんし、期待は出来るな。
風路はんもニコニコ顔で前に一歩出る。
そして、全員が静寂する中、静かにこう言い放った。


風路
「皆、決して気負わないでね?」
「来てくれるお客さんはきっと皆良い人だから、最っ高の笑顔を見せてあげて」
「そして、皆で一緒に楽しみましょ!」
「このお店は、皆が幸せになれるコスプレ喫茶なんだから♪」


全員が一斉に沸く。
風路さんの笑顔とポージングに、全てがこもっている様やった。
やっぱ、風路はんは凄いな…皆の心を一発で打ち解かすとは。
風路はんが現役なら、何の問題も無いんやけど…ここからはウチが風路はんの代わりをやるんや!
ウチは自分を奮い立たせ、テンションを高める。
そして、気合いを入れた所で私が言葉を放とうとすると、それを遮るかの様な声が店内に響き渡った。



「おう、コラ! ここの店長はどいつだ!?」

阿須那
「あん? 何やアンタ等…どこのチンピラや?」


店内にズカズカと入って来たのは、あからさまに一般人と思えない服の連中だった。
人数は5人程か…いわゆるヤクザやな。
ウチは怖がる新人を後ろに退げ、代わりに前に出る。
それを見て、前にいたスキンヘッドのヤクザはウチにメンチ切ってこう言うた。


スキンヘッド
「メイド服の姉ちゃん、お前が店長か?」

阿須那
「そうや、何か文句でもあるんか?」

風路
「ちょっ、阿須…」
水恋
「風路さん、抑えて!!」


ウチは嘘を吐く。
風路はんは否定しようとしたけど、水恋がタイミング良く風路はんを引き留めてくれた。
ウチが逆にメンチを切り返すと、スキンヘッドはイラッとした顔でこう言う。


スキンヘッド
「テメェ、誰の断りで勝手に店やってんだ!?」

阿須那
「役所に決まっとるやろ…ちゃんと土地の権利書も、商売の許可も正式にもろとる」
「そんなんも解らんアホかアンタは…?」


ウチは頭を掻き、小バカにした口調で呆れた様にそう言う。
するとスキンヘッドは頭を血走らせ、興奮して言葉を放った。


スキンヘッド
「んなもん知るか!! ここは俺らのシマだ!」
「俺らの許可無く店やってんじゃねぇよ!! しっかりショバ代払えや!?」


予想通りの展開やな…アホらしくて冷めるわ。
コイツらシメるのは簡単やけど、問題起こすと客足に問題あるからな…極力穏便に済ませたい所や。
とはいえ、金払ったらコイツらは図に乗って今後も調子こくやろ…せやったら潰したるのが正解やが。
さて、どないしよかな?


A 問答無用、この場で叩き潰す
B とりあえず話し合う
C 色仕掛けで誤魔化す


阿須那
(個人的にはAやが、店に迷惑はかけられへん…となると二択やが、Bはまず無理やろな…)


と、減算方で選択決定…まぁ、どうにかなるやろ。


阿須那
「ねぇ〜ん、そんな怖い顔せんと…もっと優しくしてぇな♪」


ウチは体をくねらせ、開いた胸元を強調してスキンヘッドに流し目をする。
スキンヘッドはあからさまに狼狽えた顔で少し赤くなっていた。
何や、結構チョロそうやな…他の4人も色めき立ってるし、さて乗って来るかな?


スキンヘッド
「ま、まぁ俺らも鬼じゃねぇ、払うモン払ってくれたら見逃してやらぁ」

阿須那
「ふ〜ん、ほなアンタ等の事務所に連れてって〜な?」
「そこで、お金の代わりにええ事して、ア・ゲ・ル♡」


ウチはスキンヘッドの耳元で甘く囁き、スキンヘッドは鼻息を荒くする。
そして、完全に気を良くして緩んだ顔をしてこう言った。


スキンヘッド
「よっしゃ! なら連れてってやるよ!! お前ら、行くぞ!?」


そう言ってスキンヘッドはウチの肩を勝手に抱いて歩き始める。
とりあえず我慢や…今の内に怒りゲージを境地ゲージに変換せな…
他の部下っぽい4人も後ろから付いて来てる。
さて、とりあえず計画通り…後は上手くやらなな。


風路
「ちょ…」
水恋
「ダメだって!」
「(これ、絶対阿須那さんの作戦だから…)」


水恋は風路はんに耳元で囁き、動きを止めた。
ウチは軽くアイコンタクトし、水恋は頷く。
とりあえず、そっちは任せてええやろ…後はウチが上手くやるだけや。



………………………



10分程歩いた所で、とあるビルに辿り着く。
まぁ、良くある事務所やな…ヤクザの。
ウチは中に連れられ、早速スキンヘッドに抱き寄せられる。


阿須那
「あん、がっついたらアカンで? それより、組長さんに会わせてぇな〜?」
「ウチ、組長さんに最初は抱かれたい♡」

スキンヘッド
「へっ、とんだヤリマンだな…まぁ、良いか」
「来いよ、そこで楽しくやろうぜ♪」


スキンヘッドは簡単に口車に乗り、ウチを2階の組長室に案内した。
ここまで予定通りやと、返ってアホらしくなるな…


スキンヘッド
「親父! 良い女連れて来たぜ!?」


ドアが開かれ、ウチはスキンヘッドと一緒に部屋に入る。
そこには中年のがっしりした体つきの角刈りが座っとった。
顔は傷だらけやな…身長もそこそこで、ウチより遥かにデカイ。


組長
「何や、武蔵(むさし)…偉い別嬪さん引っかけたのぅ?」

阿須那
「アンタが組長はんか…とりあえず初めまして♪」
「ウチ、この街で喫茶店始めた、店長の『不炎 阿須那』(ふえん あすな)って言います」


ウチが体をくねらせ、胸元を強調してそう言うと、組長はんは息を吐き、つまらなさそうにこう言う。


組長
「何や、関西弁かいな…大阪の方の人間か?」

阿須那
「せや、去年の暮れからこっち来てん…それより、組長はん聞いて〜な〜」
「ショバ代目ぇ瞑ってもらえへん?」

スキンヘッド
「おいおい、そりゃ無理だって…だから体で払ってくれんだろう?」


そう言ってスキンヘッドはウチの体に触れ様とする。
ウチはスキンヘッドを軽く睨み付け、そのまま『催眠術』で眠らせた。
その場で倒れるスキンヘッドの体をウチは支え、そっとその場に寝かせる。
当のスキンヘッドはスヤスヤと寝息をたてていた。


組長
「!? な、何しよった!?」

阿須那
「軽い催眠術や…数分したら起きるで」
「さて、ここでもう一度聞くわ…何とかならへん?」

組長
「お前、どこの組のモンや? 少なくともカタギやないやろ…目がちゃうわ」


へぇ、少しは見る目あるんやな…感心したわ。
せやけど勘違いも良い所や、ウチはせせら笑ってこう言う。


阿須那
「勘違いすなや? ウチは正真正銘、コスプレ喫茶の店長や! このメイド服見て解らんか?」


そう言ってウチは、露出多目のメイド服のスカートをフリフリと振って見せた。
すると、組長はんはククク…と不気味に笑う。


組長
「おもろいやっちゃ…喫茶店、な」
「ほな、ワシをお前の店に案内せぇ、そこで直接見てから判断したる…どないや?」


ウチは一瞬考えるも、組長はんの目は真剣やった。
この組長はんは、そこで寝てるハゲとはちゃうな…纏ってる空気が違う。
ウチは肩をすくめてから背中を向け、こう言葉を放った。


阿須那
「ええで着いて来ぃ、ただし来るのはアンタひとりや、構へんか?」


組長はんは、おうと承諾し、立ち上がって付いて来る。
身長は2m位あるか? 結構威圧感あるやん…もしかして相当大物なんか?
ウチはそんな事を考えながら、組長と一緒に事務所を出て行く。
途中、子分共が騒いだけど、組長はんが睨み付けて黙らせた。
どうやら、本気みたいやな…さて、ちょっと予想外やけど、どないなるかな?



………………………



阿須那
「ただいま〜ちょっと客連れて来たわ」

風路
「阿須那ちゃん!? 心配したんだから!!」


風路はんはウチの顔を見るなり、いきなりそう叫ぶ。
ウチは一言謝り、とりあえず後ろを見た。
黙って付いて来た組長はんは、まず店内を見渡す。
そして、ふん…と鼻息を吹き、とりあえず開口一番こう言った。


組長
「とりあえず、オムライス貰おか…飲み物は水でかめへん…」

阿須那
「は? オム…ライス?」


唐突な注文にウチ等は全員絶句する。
そらそうやろ、よりによってヤクザの組長がオムライス頼むんか?
あ、いや、人の好き嫌いを見た目で判断したらアカンけど…


組長
「何や、作れへんのか?」

風路
「いえ、オムライスですね? 分かりました、すぐにお作りします」


そう言って風路はんは厨房へと消える。
ウチらは呆気に取られたまま、カウンターにひとり座る組長はんを見ていた。
ウチは、とりあえずグラスを取り出して氷と水を入れる。
そして、スプーンとフォークの受け皿を組長はんの前に出し、おしぼりも置いた。


組長
「………」


組長はんは黙っておしぼりで手を拭き、水を一口飲む。
そして無言のまま、ただオムライスを待っていた。
その間、凄まじい程の緊張感が場を包む。
ある意味異様やった…威圧感たっぷりのヤクザの組長が、オムライスを黙って待つとは。
やがて、10分かからない位で風路はんはオムライスを持って来た。


風路
「お待たせしました、当店自慢のオムライスです♪」

組長
「………」


組長はんの前に置かれたオムライスは、いわゆるこの店の代表メニューで看板商品や。
湯気の立つ風路はん特製オムライスは相変わらず見た目からして美味そうやった。
一部、店員から喉を鳴らす音まで聞こえる。
組長はんはそのオムライスを黙って見つめ、そしてスプーンを右手に持ち、一口分掬って口に運ぶ。
場は緊張感に包まれる…組長はんは長く味わう様に咀嚼し、一口目を飲み込んだ。
そして、ギロリと風路はんを見つめる…睨むって言ってもエエかもしれへんけど…


組長
「…この店の店長はアンタやな?」

風路
「あ、はい…そうです」

阿須那
「あ…」


ウチはつい声に出してもうた…そういえば風路はんに言うとくの忘れてたわ。
せやけどもう後の祭り…バレたんならしゃああらへん。
組長はんはククク、と笑いオムライスを食べていく。
そして、数分でそれなりの量があるオムライスを完食し、布巾で口元を拭いて水を飲んだ。
そして、風路はんにこう言う。


組長
「ええ味や…隣町の商店街で食うたオムライスによう似とる」

風路
「えっ…もしかしてお義父さんのお店に来た事あるんですか!?」


ウチ等も全員驚く、まさかそんな偶然あるんか…?


組長
「ワシの親父はな、隣町で幅利かせとった」
「せやけど、昔に苧環店長のオムライスを食うてから、親父はカタギになりよったんや…」
「ワシもあの時一緒におったから、あの味はよう覚えとる…あれは心に刺さる味や」
「ほうか…あんさんは苧環店長の娘か、道理で味が似てるわけや」

風路
「そのお父さんは今は…?」

組長
「もうあの世や…最後に、ふたりっきりで苧環店長と会食して、そのまま逝ったらしい」
「ワシはその頃にはこっちの街でやっとったさかいな…直接は知らんかった」


組長はんは思い出す様に天井を見る。
そして、立ち上がって財布を出し、千円札をカウンターに置いて背を向けた。


組長
「釣りはいらん、これからも営業頑張れや…」

阿須那
「組長はん、エライあっさりなんやな…?」

組長
「苧環店長には恩がある…その娘が一人立ちして店やるって言うんや」
「ワシは恩を仇で返す程不義やない、下のモンにはワシから言うとく…安心して営業せい」
「ほなな、美味いオムライスご馳走さん…」


そう言って組長はんは店を出て行く…風路はんはすぐに入り口まで走った。


風路
「ありがとうございました! またのご来店をお待ちしています!!」


風路はんは深々とお辞儀をし、そして組長はんの背中を見る。
心なしか、組長はんの大きな背中は、どこか優しく見えた…


阿須那
「…まさか、親子の世代でこんな縁があるなんてなぁ〜」

風路
「ふふ、本当ね…私も驚いちゃった♪」
「やっぱり、お義父さんって凄いなぁ…あんな怖そうな人相手でも、ただ料理だけを武器に勝っちゃうんだから」


確かに容易に想像出来るわ…勇気はんやったら笑顔でヤクザ相手にもオムライス作るやろ。
改めてウチにはそんな度胸無いわ…最悪力ずくのつもりやったからな。
やっぱ風路はんも凄いな…オムライス一品であの組長はんを納得させるんやから。


風路
「さぁ、皆今日はこれでお仕舞い! 明日は1日休んで、そして本番よ!?」


最後に全員に気合いを入れ、ウチらは解散する。
そしてしっかりと1日英気を養い、ついに仮オープンの日がやって来た。



………………………



明海
「うわ…もう列出来てる〜!?」


「開店1時間前からあの調子ね…これは相当辛そうよ?」

毬子
「うー出来るかな?」

教子
「でも、もう本番だから!」

舞桜
「緊張する〜」

水恋
「ハイハイ、深呼吸深呼吸〜」


「うっし、気合い十分!!」

祭花
「うん、楽しみだね♪」


今回は仮オープンやから早朝と夜の部は無し、とりあえず1ヶ月はコスプレオンリーで研修や!
ウチ等は思い思いを胸に、開店を準備して待つ。
そして、開店時間と共にウチ等は一斉に入って来るお客さんに向かい、とびきりの笑顔でこう言った…


一同
「喫茶こすぷれ〜ん2号店へようこそ! こすぷれ〜ん♪ ハイッ!!」










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第8話 『ヤクザとオムライス』


To be continued…

Yuki ( 2019/04/21(日) 17:55 )