とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない














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第1章 『新たなる生活』
第7話
浮狼
「……問いましょう、貴方が大城戸殿の敵ですか?」


「ちっ! 何だこの女!?」


私の前には男がひとり…顔は黒い覆面で覆われており、服装も黒のライダースーツで固めてある。
いわゆる黒尽くめと言う奴ですが、その男は私に銃を向けていた。

ちなみにここはとある場所の地下駐車場…私は、聖様の指示で今回ある重要人物を護衛しています。
その人が、私に向かってこう叫ぶ。


大城戸
「『井石』(いせき)さん! もうすぐ警備隊も駆け付ける!」
「あまり相手を挑発せずに、何とか話し合うんだ!」

浮狼
「いえ、ここで沈黙させます…大城戸殿は隠れてください、敵はあくまで貴方が狙いの様ですので」


そう…今回私が護衛をする対象は、この大城戸殿です。
聖様の会社を実質動かしてくれている、現社長…しかしそれだけに敵も多い様だ。
聖様から聞きましたが、前社長、会長であった聖様のご両親も、暗殺にあって亡くなったと聞く。
聖様の会社は、想像以上に大きな敵と戦っているのでしょう…


暗殺者
「クソッ死ね!」

浮狼
「!!」


私は右手から弱めにビームソードを放ち、銃弾を目の前で蒸発させた。
一瞬の事ですので、傍目には何が起こったかも解らない速度でしょう。
私はその後一気に踏み込み、敵の側まで駆ける。
こういう時、自分の鈍足さを呪いますね…もっとも、その分私が優れている部分も当然あるのですが。


暗殺者
「くっ!?」

浮狼
「とりあえず、これは無力化させてもらいます!」


私はバキベキ!と音をたてて、敵の銃を握り潰した。
それを見て敵は腰を抜かす。
私はすかさず敵の腕を取り、振り回してコンクリートの床に叩き付けた。
男は呻き声をあげ、一時的な呼吸困難に陥る。
そして、この後すぐにこの施設の警備隊が駆け込んで来た…これで、ひとまず安心ですね。


警備隊
「ご協力感謝します!」

浮狼
「…す、すみません、私は英語は」


警備隊の方に感謝されているとは思うのですが、知らない言語で話されていた為、私はついあたふたしてしまう。
すると、歩み寄ってきた大城戸さんが微笑みながら英語でこう話してくれた。


大城戸
「後はそちらにお任せします」
「こちらの女性は、私のボディーガードで井石 浮狼さんと言う方です」


大城戸さんが私の名前を言って、私を紹介する様なポーズを取る。
私はすぐに察し、警備隊の方たちに一礼した。
すると、警備隊の方たちも私たちに敬礼して何かを言っている…大城戸殿はそれを通訳してくれた。


大城戸
「ご協力、感謝します…だそうです」

浮狼
「あ、はいっ! こちらこそ、お勤めご苦労様です!」


私も同じ敬礼をし、そう言ってみるが大城戸さんはクスクス笑っていた。
な、何かおかしかったのでしょうか?


大城戸
「ふふふ、井石さんは素直な方だ…成る程、聖君が推してくれた理由も解ります」



………………………



そう、それは5月4日の休日の時の事。
私は白那様の城の庭園で、聖様と会っていました。


浮狼
「護衛…ですか?」


「はい、近々うちの会社の社長がこっちに来るんですけど、浮狼さんにその人を護衛してほしいんですよ」

浮狼
「分かりました、聖様の命とあらば断る理由はありません」
「それで、私はどうすれば?」


聖様はポケットから封筒を私に渡す、それにはチケットが入っていた。
こういうのは私には全く解らない…確か、旅行する時に使う物だっただろうか?
私はそれを見てやや呆然とするも、聖様はすぐに説明をしてくれる。



「そのチケットで、駅前から高速バスに乗れます」
「それに乗って今度は空港まで行ってください、そしたら明日の昼には社長の大城戸さんと会えるはずですから」
「それと、これも…」

浮狼
「ああ、携帯電話ですね…」


私はいわゆるスマートフォンという機械を渡された。
使い方は解りませんが、とりあえずそれは聖様がレクチャーしてくれる様です。
とりあえず、私は一通りの操作を覚える事になった…



「…とまぁ、そんな感じです」

浮狼
「成る程、とりあえず覚えました…そして、この画像の方が大城戸 行成(ゆきなり)殿ですね?」


聖様は頷き、私はその方の姿を目に焼き付ける。
その方はやや老けた方で、非常に温和な顔をしていた。
しかし頭髪などは艶やかで、まだまだ健康さは感じられる。

ふむ、確かにスマホというのは便利な器具ですね。
こういった写真も無数に保管出来るとは…


浮狼
「それでは、今からすぐに準備致します」


「はい…ここに着替えもありますので、これを着て行ってください」


そう言って聖様が渡した紙袋には、いわゆるスーツが入っていた。
藍色のスーツで、白のネクタイも付いていますね。
ネクタイは首元に引っ掻けるだけの簡単装着タイプだ。
成る程、これなら私ひとりでも着けられる…
流石は聖様、ちゃんと私を気遣ってくださるのですね。

私はその服を持ってすぐに自室(?)に向かった。
ちなみに自室と言うより、あれはテントですが…
私は城の外の大庭園の一角に専用テントを張っており、そこで生活している。
なので、基本的にはそこが自室という扱いになるのです。



………………………



浮狼
「……」


その後、私はテント内で手早く着替え、一緒に入っていた革靴に履き替える。
とりあえず、それで着替えは完了…後は駅前のバス停ですね。

おっと、外出用の薬も飲まないと…今回は泊まりとなるからケースごと持っておきましょうか。



………………………




「それじゃ、よろしくお願いします! 何かあればいつでも連絡をください!」

浮狼
「はい、ここまでありがとうございます…必ず私が大城戸殿をお守りしましょう!」


私は聖様に見送られ、高速バスに乗った。
行き先は空港…到着は、今からですと夜になりますね。
聖様から空港近くのビジネスホテルも予約してもらっていますし、まずはそこで待機です…

なので、私は少し車内で仮眠を取る事にした。
わざわざ私を護衛と送るからには、相当な何かが暗躍していると踏むべき。
少なくとも、人間の護衛では安心出来ないという事なのですから…

私は冷静に状況を予測する…ここはあくまで戦場ではない、人間が平和に暮らす世界だ。
だが、そんな平和な世界でも暗躍する者はいる。
私は、そんな魔の手から必ず大城戸殿を守ってみせましょう!



………………………



大城戸
「貴方が、井石 浮狼さんですね?」

浮狼
「はい、大城戸 行成殿とお見受け致します」
「今回、聖様の命により派遣されました…どうぞよろしくお願いします」


私は頭を下げて礼をする…大城戸殿はそれを見て朗らかに笑い、手を差し出す。
私はすぐに察し、自分も右手を差し出して握手した。
大城戸殿の手はとても優しく、そして温かかった…
大城戸殿の器量が解りますね…きっとお優しい方なのでしょう。


大城戸
「それでは、これから別の機に乗り換えますが…」
「まだ少し時間もありますし、先に昼食でもいかがですか?」

浮狼
「はい、ご同行致します…しかし、他の護衛はいないのですか?」


見ると、私と大城戸殿以外の関係者はいない様だった。
仮にも大会社の社長が、単身で動いているのでしょうか?


大城戸
「今回の遠征は、主に南米のまだ開拓があまり進んでいない地域になります」
「そこの住民たちは警戒心も強く、あまりぞろぞろと物騒な護衛を連れるのはあまりしたくないのですよ」

浮狼
「成る程、それであえて女性かつ、ひとりでも護衛可能な私が選ばれたと…」


大城戸殿はコクリと頷く。
そして、この提案は聖様からなされたとの事。
恐らく、大城戸殿がひとりで行かれるの見越し、危惧なされたのでしょうね…
私たちは、歩きながらいくつか会話をした。
そして、昼食を取る為に空港のレストランに入る事に。


大城戸
「聖君は、ご両親の死がやはり心にあるのでしょう…」
「今回の件も、私はひとりで大丈夫と言いましたが、聖君がどうしてもダメだ、と強く言われまして」

浮狼
「それは、大城戸殿が聖様に信頼されている証拠でしょう」

大城戸
「それもあるでしょうが、今回の遠征は少しキナ臭いのもあります」
「過去に謎の爆発事故で亡くなられた前社長と前会長…」
「その時も護衛は付けておらず、結果はおふたりは亡くなられたのですから…」
「聖君にとっては、似た様な状況のこの遠征が、相当不安なのかもしれませんね…」


私は、聖様の心中を察する。
聖様は、ご両親の死に何かを感じていたのでしょう。
そして、今回も似た様な状況で何かが起これば、それは間違いなく何かの組織が暗躍している可能性が高い…

聖様のご両親は謎の飛行機爆発で亡くなられたという…
恐らく、聖様はそれが何者かの犯行だと危惧されている。
そして、もし同じ事がまた起これば、それは例え私でも危険となる。
それでも聖様があえて送ったという事は、それだけ私を信頼されているという証。

ならば、私は聖様の信頼に答えるまで!
私はそう決心し、やがて昼食を終えて大城戸殿と共に日本を旅立った。
ちなみにパスポートはいつの間にか用意してあったらしく、スーツのポケットに既に入っている。
どうやって用意出来たのかは解りませんが、恐らくは偽造なのでしょうね。



………………………



そして、私たちは南米の空港に辿り着いたのですが、そこの地下駐車場で突然襲われて、今に至る…と。


大城戸
「どうやら、ただの個人での犯行だったみたいですね」

浮狼
「本当にそうでしょうか? むしろ、私には何か計画的な動きを感じます」
「本当に暗殺する気なら、プロに狙撃でもさせた方が確実」
「なのに、今回の暗殺者はどう見ても素人だった」
「それもひとりで動かすなど、あまりに失敗前提の画策」
「だとすれば、これは私たちを安心をさせる為の餌だった可能性が高いでしょう」


私は大城戸さんにそう言って警戒を促す。
もしこれで私たちが安心しきっていれば、警戒を解いた所を狙われる可能性は高い。
ですが、逆にそれすらも前提で作戦が進行しているのであれば、これは相当危険な相手と踏むべきです。


大城戸
「これも、前社長が引きずる呪いか…」

浮狼
「…呪い、ですか?」


大城戸殿は小さく頷く…そして、そこから語られたのは前社長である聖様の父君の話だった。
大城戸殿の顔は厳しげであり、そして悲しげ…
呪いという言葉の意味を、私は何となく想像してしまう…


大城戸
「前社長の准一さんは、まさしく天才でした」
「時代の寵児であり、若くしての成功者」
「ですが、当然その裏では数々の恨みや妬みも、准一さんは背負ってしまった…」
「あの事件は…いわばその末路とも言えます」
「いつの時代も、ああいった天才は早く死んでしまう事が多い…それはまさに、最初から呪われていたかのごとく」

浮狼
「ですが、准一殿は1度も弱音は吐かなかったのでは?」


私の問いに大城戸殿は頷く…ならば、准一殿は呪われていた等とはきっと思わなかったでしょう。
そして後悔もしていない…だからこそ、聖様に遺書を残していたのだ。

恐らく、殺される予感はあったのでしょう…本当に偶然でないならば。
ここで私は半ば確信する…あの飛行機爆発から今に至るまで、この会社を恨む組織が必ずいると。
そして、聖様はそれを内心許していないのだ…だからこそ私は派遣された、聖様に信頼されて。
ならば、私は全力を尽くすと決める。
この一連の事件、必ず大城戸殿を守り通した上で、聖様の為に暴いてみせましょう!!



………………………



それから数日、私は大城戸殿と共に様々な地域を訪れた。
未だ電気もまともに通らぬ南米の地で、私たちは色んな機械を民に見せている。
民はそんな未知の技術に直接触れ、笑ったり驚いたりしていた。
大城戸殿は、そんな民を見てただ嬉しそうに笑っている…


浮狼
(そうだ、私も本当はこんな風に笑いたかった…王としてでなく、ただの村娘として)


もちろん、今の私は王ではない。
今はただのラランテスであり、井石 浮狼というただの女だ。
だからこそ、私は大城戸殿の仕事を見て頬笑んだ…私も、今は笑っても良いのですから。
無理に片意地を張る必要は無い。
あくまで、私は何かあった時の為の存在なのだから。



………………………



浮狼
(移動は小型のジェット機ですか…もし、これが爆発するのでしたら、私たちは生きて帰れない)


私は機内をくまなく調べ、何も無いか確認する。
あくまで私に爆弾を察知する能力は無い。
ですが、私は草タイプでありながら現実においては虫であるカマキリがモデル。
よって、嗅覚は虫並みに良い…本来虫は触角で数キロ先の臭いすら嗅ぎ分けますが、私には触覚の他にも普通に人間の鼻がある。
本物の虫には流石に大きく劣りますが、それでも並の嗅覚ではありません。
少なくとも、火薬の臭いならすぐにでも解るはず。


浮狼
(とはいえ、火薬を使わない電気仕掛けの爆発物だと厄介ですね)


そうなると、発見は難しい。
そもそも、爆発物があるなら隠すのが基本だ。
下手をすればシートの中に仕込んであるかもしれない。
最新技術を駆使すれば、どこを疑っても有り得てしまうのだ…


浮狼
(流石にダメか、手探りではとても見付からない…それとも、本当に何も無い?)


杞憂であればそれで良いのですが…だが、私は何かあると思ってしまう…
しかし、時間ももう無い…これ以上出発を遅らせるわけにはいきません。


大城戸
「それでは、行きましょう…次が最後ですので、もうすぐ帰れますよ」

浮狼
「…分かりました、では」


次の瞬間、私の言葉を遮る様にドォンッ!!と、突如爆発音が響いた。
私はすぐに大城戸殿を抱え、機内のガラスを破って外に出る。
するとそこには、まさかの光景が広がっていた…


隊長
「警告する! 今のは威嚇だ!! 大城戸 行成! 今すぐ投降しろ!!」


突然、日本語での警告…私たちの前にいたのは軍隊、それも一個小隊に相当する数。
全員が銃を構えており、一部バズーカ兵もいる。
先程の爆音はあのバズーカですね…!

流石に機内では逆に嗅ぎ取れなかった…まさか、ここまで堂々と仕掛けて来るとは!


浮狼
「大城戸殿、心当たりは?」

大城戸
「この地域の軍隊ではない…あれは恐らく私設軍隊でしょう」
「巧く偽装している様ですが、恐らくは外からの差し金」
「外人であるはずなのに、隊長の日本語もやけに流暢です、地元の人間からしたら気持ち悪い位でしょうね」


成る程、つまり体よく現地の軍に罪を擦り付けるつもりか…外道め!
私は隊長を睨んで威圧するが、相手は全く動じない…むしろ圧倒的戦力差にせせら笑っている。
私は怒りを抑えるも、状況は芳しくない…戦って勝つ自信はあるが、それは正体をバラすのと同義。

流石にここでソーラーブレードを使えば一掃は出来る。
しかし、それでは大城戸殿に正体をバラすという事でもある…それは出来るだけ避けねばならない。
あくまで私は、腕っぷしが強いだけのボディーガードでなくてはならないのですから。


隊長
「大城戸 行成! 貴様には不正輸出疑惑がかかっている!! 大人しくすれば危害は加えない!」

浮狼
「不正…だと?」

大城戸
「成る程…適当な理由を付けて、私を連行する気なのでしょう」
「これだけの武装しておきながら、単純に私の身柄が目的とは…」


どう考えても罠でしかない。
この大城戸殿が不正輸出など、するとは思えません。
ましてや、威嚇とはいえ既に向こうは引き金を弾いている。
これで穏便に済まそうなどとは、笑止千万ですね。


浮狼
「これは間違いなく何者かの陰謀! そうまでして会社を潰したいのか…!」

大城戸
「ですが、従わないわけにはいきません…流石に井石さんでも軍隊相手には勝てないでしょう」
「貴女が死ねば聖君は悲しみます…ここはどうか堪えてください」


私は怒りに震える…戦って勝つのは簡単だ、だが大城戸殿は何も知らないのだから…
とはいえ、私と言えども肉弾戦だけで、あれらに勝つのは無理だろう…

だが、だからと言って大城戸殿を生け贄にしろと…? この状況で、それを許せと言うのか…!?
私は、ここで結論を出す事にした。
ここで、大城戸殿を失ってはならない。
大城戸殿が暗殺されれば、聖様ですら憎しみを抱きかねない。
私にとって、1番恐ろしいのはそれだ…

戦いに置ける憎しみ程、悲しい物は無い。
あのお優しい聖様が、そんな風になってはならない。
何よりも…家族の皆の為、聖様にはただの少年であってほしいのですから!


浮狼
「大城戸殿、お許しを!」


私は、大城戸殿の耳の裏を手刀で叩き、即座に気絶させた。
そのまま大城戸殿の体をそっと地面に置き、私は敵を睨み付ける。

それを見た司令官は、絶句して驚いた顔をする。
直後に私は、両腕を横凪ぎにその場から振るった…
既にチャージは終えている…この暑い南米の日差しは、草タイプである私の大きな力となる!


浮狼
「我が剣閃、その身に刻め!! ソーラァァァッ! ブレェェェェェドッ!!」


私は剣閃で小隊を真横に両断した。
角度と射程を上手く調整し、やや後方に立っていた隊長のみを残し、私は残りを全滅させる。
そして、突然の事に腰を抜かした隊長に向かい、私はすぐに駆け寄った。
隊長は顔を青くして座り込んでいる…もはや恐れるには値しない!
ですが、この男には聞かねばならない事がある!


浮狼
「まずは、問いましょう…貴方は誰の命令でここに来た!?」

隊長
「し、知らん! 俺は何も知らん!!」


私は、隊長の足の指を靴の先端ごとビームで切り飛ばす。
隊長は絶叫し、その場で転がり回った。
私は無感情に更に言葉を放つ。


浮狼
「悪いですが、時間が惜しい…次は腕を切りますが、まだ何も知らないと言いますか?」

隊長
「ロケット! ロケットコーポレーションからの派遣だ!!」
「ほら、言ったぞ助けてくれ!!」

浮狼
「分かりました、では少し眠っていてもらいましょう…」


私はあっさりと黒幕を吐いた隊長を、大城戸殿と同様の方法で気絶させる。
そして私はスマホを取り、聖様に連絡を取った。



………………………




『ロケットコーポレーション…確か、うちの会社が出来る前のトップ企業だったか』

浮狼
「では、確定と思って良いですね?」


『でしょうね、これはお手柄ですよ!』

浮狼
「いえ、相手の運が無かっただけでしょう…私の力を予想出来ていなかった」
「とりあえず、白那様に連絡を取って貰い、棗様と一緒にこちらに来てもらえる様頼めますか?」


私はそう言って、聖様にこの場所の座標を教えた。
今はGPSと言う物があって便利ですね…今は携帯電話さえあればすぐにでも地球のどこにいるかが解る。
私は少し安心してそれを胸ポケットに仕舞い、少し待った。
そして、数分後…独特のエフェクトを伴い空間が裂けてそこから人がふたり現れる。



………………………



白那
「やぁ、派手にやったみたいだね〜」

浮狼
「申し訳ありません、大城戸殿を守るにはこうするしか…」


私は白那様に頭を下げて謝る。
白那様は軽く息を吐き、死体とそれらが装備していた武装を全て別の空間に跳ばした。
血が付いた地面も削り取り、少々違和感はあるものの、見た目にはほぼ全く問題の無い状態になる。
そして、ついでにバズーカを撃ち込まれた小型機も転送してもらいました。
これでこの場には、この隊長だけが残される事となる。



「…で、この気絶してる男はどうするの?」

浮狼
「その男は捨て置いて構いません…むしろ泳がせます」
「聖様のご両親だけでは飽きたらず、大城戸殿まで狙ったロケットコーポレーション…断じて許すわけにはいきません!」


私は強い怒りを込めて言う。
白那様は少し驚いた顔をし、私にこう言った。


白那
「…やっぱり変わったね、10年前はそんなに荒々しく無かったのに」

浮狼
「私は、自らの世界で地獄を見て来ました…変わりもします」
「ですが、聖様をお慕いしているのは、今も変わりません」
「聖様は、ご両親の顔も覚えていない…それでも、やはりご両親を殺した事件はきっと辛く、1度は憎くも思ったはず」
「私は、そんな聖様のお心を救いたいのです…」
「…聖様が、私を救ってくれた様に!」


私はあの時を思い出し、少し涙する。
全てに絶望し、己の力だけで世界を変えなければならなくなったあの時…
もし聖様が助けてくださらなければ、恐らく私たちは全滅していた…

あのアマージョの狡猾さ、残忍さに、きっと勝つ事は出来なかったでしょう。
だからこそ、無条件で世界ごと助けてくださった聖様には、恩義しかない。

そして私は、聖様に私と同じ苦しみは味わって欲しくないのです…!


浮狼
(目の前で、何も助けられない苦しみを…!)


「…良いんじゃない? 貴女がそうしたいなら」


棗様の言葉を聞き、白那様も何も言わず頷いた。
そして私は白那様に頼み、大城戸殿を南米の空港に転移させてもらう。
その際に、棗様に頼んで大城戸殿の記憶を少しだけ消してもらった。
せめて、先程の争いの事だけでも忘れてくれれば…と、私は思ったのだ。



………………………



大城戸
「そうですか、そんなに眠っていたのですね私は」

浮狼
「はい…ですので、そのまま私がここまで背負ってきました」
「荷物も全てここにあります」


私たちは今、空港の待合所にいる。
ここで大城戸殿の目覚めを待っていたのだ。
大城戸殿は一部記憶を無くしているものの、素直に私の話を信じ、何も疑わずに納得してくれた。

私は荷物を大城戸殿に渡し、ここで別れる事に。
大城戸殿はこれからニューヨークに、私は日本に…護衛としての仕事は、これで終わりです。



………………………



浮狼
「それでは、お元気で」

大城戸
「今回は本当に助かりました…井石さん、聖君によろしく伝えてください」


私は頷き、礼をして大城戸殿を見送る。
さて、次は…本命の方に向かいましょう。
大城戸殿が去った後…私は後ろを振り向き、待ってくれていた白那様たちに向かい合う。


白那
「…どうやら、餌は移動し始めたみたいだね」


私は白那様の携帯電話を覗き見る。
そこには、私の携帯電話がある場所の座標が示されていた。
私は、携帯電話をあの隊長のポケットに突っ込んでおいたのだ。
そして、それが発信しているGPSを白那様の携帯電話で今追跡している。
どうやら、速度的に空輸で運ばれている様ですね…行き先はどこでしょうか?



「…そもそも、ロケットコーポレーションって、日本の企業だそうよ」
「…ここの所、何やっても第2位の成績が定着してて、収益はともかく、一般周りからの評判はイマイチみたいね」
「…要は、マサラITエンジニアリングが相当目の上のたんこぶって訳か」

浮狼
「やはり動機は十分ですか…」

白那
「わざわざ2度も社長を殺そうとしたんだ…相当な恨みなんだろうね」


そう、まさしく恨み妬みの感情でしょう。
そして、それを決して許してはならない…これは明らかな計画的犯行。
組織に隠れ、安全地帯で邪魔物だけを排除すると言う、極めて非人道的な計画です。
私はそれを許すつもりは無い…が、まずは首謀者を暴かなければなりません。
恐らくはトップの誰かが…とは思うのですが。


白那
「とりあえず、1度日本に帰ろう」
「流石に南米からとなると、日本まで搬送されたら時間がかかるし」
「途中で始末されるにしても、対処の為にまずは作戦を練ろう」


私は頷き、白那様の能力で日本に帰還する。
あれから5日経った…時差もあるから、すぐに切り替えなければ。
とりあえず、私たちはまず作戦を練る事に。



………………………



白那
「で、どうするつもりだい?」

浮狼
「まずは首謀者を確かめたいですね…せめて言だけでも取れれば」


「…どっちにしても、まだ移動中ね」
「…それが止まらない限りは仕掛け様も無いけど、案外もう始末されてるんじゃない?」


その可能性は高いですね…しかし、そうならば携帯電話も始末されている可能性は高い。
まだ座標が表示されているという事は、携帯電話が一応無事と言う事…
あらかじめ全ての履歴と登録は消してありますし、発見されても足がつく前には白那様の能力で回収も出来る。


白那
「でも、もし実際に首謀者を始末するとして、どうやるつもり?」

浮狼
「それに関しては非常にシンプルな方法で可能です」
「白那様、1度誰もいなさそうな採石場に転移させてもらえますか?」


白那さんは?を浮かべるも、すぐに移動してくれた。
そして私は周囲を確認し、先程白那様が転移させた軍隊のアサルトライフルをひとつ、ここに転送してもらう。
私はまず、それの使い方を覚えなければなりませんが…
とりあえず、白那様にお尋ねして私はそれの使い方を教わった。


白那
「それは、そう…そう構えて、指をトリガーにかける」
「そして、ロックを外して引き金を弾けば発射だよ…反動には気を付けてね?」


私は採石場で1度試射をし、実際の感触を確かめた。
よし、撃つのは簡単だ…後はターゲットに命中させるだけ。


浮狼
「白那様、私が発砲した弾を任意の座標に送り込めますか?」

白那
「…成る程、それはまさしく暗殺だね」
「でも、相手が止まってないと正確には当たらないかもしれないよ?」


「…だったら、私が未来視である程度場所を予測するわ」
「…少なくとも、どの建物にいるか解れば、その近くからなら私が大体の位置を教えられる」
「…お母さんには、テレパシーで合図を送るわ」


私たちはそれぞれ頷く、とりあえず作戦は決まった。
後は首謀者を突き止めるだけ…私たちは1度その場を離れ、休む事にする。
そして、携帯電話の移動が止まるのを待った…



………………………



白那
「…止まったね」


「…場所は予想通り日本ね」

浮狼
「という事は、行き先はロケットコーポレーションの本社でしょうか?」


私たちはそこから更に転移で近くに移動し、携帯電話を監視する。
あるのはどこかの平地だ…空港ではない?


浮狼
「白那様、後は直接追跡しましょう…私の携帯電話を」


白那様は一瞬で私の携帯電話を手元に転移させる。
私はそれを白那様から受け取り、そして白那様たちと着陸場へ転移した。



………………………




「ご苦労だったな…で、どうなった?」

男B
「それが、担当した部隊の隊長が意味の解らない事を言うんです」
「ビームだの、スーツの女だの、完全に錯乱してて話になりません」
「まず失敗したと思うべきでしょう…そもそもひとりでやるのが間違いだと思うんですけど…」


まず、降りて来た若いスーツの男に、やや中年のスーツ男が話しかける。
そして若い男は何とか説明するも、中年の男は?を浮かべていた。


中年の男
「とりあえず、直接話を聞こうか…」

若い男
「分かりました、こちらです」


そう言って、中年の男は若い男と一緒に機内に入る。
私たちは見えない位置で声だけを聞いていた。
白那様の能力で、声だけを転送してもらっているので、直接近付く必要も無い。


隊長
『俺は聞いていないぞ! あんな化け物がいるなんて!?』
『もうロケットコーポレーションはこれで終わりだ…!』
『これはマサラの呪いだ!!』

中年の男
『まぁ、落ち着きたまえ、君は疲れているんだ』
『そもそも何故君はひとりでやろうとしたんだ? 計画では一個小隊でやる予定だったろう?』


錯乱する隊長に対し、中年の男は冷静に問いただす。
隊長は弱々しい声で、呟く様にこう言った…


隊長
「ひとり…何でだ? 俺の部下の死体があったろう!?」
「大量の血飛沫と共に、俺の部下は一瞬で両断されたんだ!!」

若い男
「だから、そこにはアンタ以外誰もいなかったよ…」
「マサラの社長も今頃は空港でニューヨークだし、本当に何してたのやら…」
「そもそも、本当にそこにマサラの社長はいたのか?」


もはや、何を言っても信じられはしない。
わざわざ全部消しておいたのですから、証拠も何も無い。
つまり、これは隊長の世迷言にしか聞こえないのです。


中年の男
「やれやれ、まさか失敗とはな…仕方あるまい、彼の始末は任せる」
「私は社長に報告してくる…次のプランが必要だと」

隊長
「待て! 待ってくれ!! 俺は嘘は言っていない!!」
「本当にいたんだ、化け…」


ブシュッ!と、くぐもった音が聞こえる。
そして、直後に何かが落ちる音…どうやら、始末された様ですね。
こうもあっさりと人を殺しますか…やはり、奴らに慈悲の心は必要無さそうです。


白那
「多分サイレンサーだね…また、あっさりと人ひとり始末するもんだ」

浮狼
「逆にやりやすいでしょう…それなら、こちらも気兼ねなく力を振るえますので」
「これで、ターゲットは恐らく二択」


「…あの中年の男か、社長ね」


私たちは頷き合い、とりあえず中年の男を追跡する。
中年の男は車に乗り、やがて戻って来た若い男に運転させて移動を始めた。
私は再び携帯電話を転送してもらい、GPSで車の移動先を見極める。



………………………



そして、辿り着いたのは立派な高層ビルだった。
私たちは、ここで中年の男の行方を追跡する。
だが、私たちは普通にはここから入れない…なので、ここは棗様に手伝ってもらう事にした。



「…エレベーターで上に上ってるわね、屋上に転移した方が良いかも」


私たちはすぐに屋上に転移する。
どうやらヘリポートになっている様で、1台のヘリコプターが止まっていた。



「…止まったわね、歩き始めた」
「…恐らく社長室だと思うけど、果たしてどっちが首謀者なのか? それとも両方?」

白那
「声を転送する」


白那様がそう言うと、ヘリポートに男の声が流れ始める。
それに繋がり、別の男の声も聞こえて来た。
どうやら、それこそがロケットコーポレーションの社長の様ですね…


中年の男
『社長、ご報告にあがりました』

社長
『で? やったのか?』


社長の太い声が鳴り響く。
その声はあっさりと言い放ち、この時点で私は確信に似た思いを感じた。
まさか、そこまでの外道とは…


中年の男
『いえ、失敗です…ターゲットは今頃ニューヨークだそうです』

社長
『馬鹿者!! 何故このチャンスを取り逃した!?』
『ああ、忌ま忌ましい! 魔更の奴め…やはりワシを嘲笑っておるのか!?』
『許さん許さん許さん!! 貴様の会社をワシは絶対に許さん!!』
『必ず末代まで呪ってくれる…必ずだ!!』


浮狼
「もう良いでしょう、棗様はここでフォローをお願いします…私と白那様は採石場に」


「…分かったわ、任せておいて」


私は猛る怒りを抑え、白那様と採石場に転移した。
そして、私は地面に置いてあったアサルトライフルを無言で構える。


浮狼
(もはや慈悲は無い! 聖様のご両親だけでなく、大城戸殿や、あまつさえ聖様までも呪うと言った外道め!!)
(その腐った命…聖様の剣である、この浮狼が貰い受ける!!)


私は白那様の合図を待つ…そして、白那様が手を上げて合図を送った瞬間、私は容赦無く引き金を引いた。


ダァァァンッ……ダァァンッ……ダァン……


採石場にライフルの発射音が鳴り響く。
その後、チャリーン!と薬莢が地面に落ち、私は目を瞑って銃を降ろした。


白那
『どう?』


『…バッチリヒット、脳ミソ直撃ね』
『…中年の男が慌てふためいてるわ、すぐに弾丸を回収して』


白那様は無言で親指を立て、成功を示唆した。
私はふぅ…と息を吐く。
そして、私は銃と薬莢を転移させて貰い、証拠を隠滅する。
後は棗様と使った弾丸も回収し、私たちはそのまま家に帰還した…
呆気ない物ですが、これで一連の事件は終わりですね…

最も、聖様が喜ばれるとは思わないのですが…



………………………




「そうですか…とにかく、大城戸さんが無事で良かったです」
「ありがとうございます浮狼さん、危険な目に合わせてしまって、本当にすみませんでした」


聖様は私に頭を下げて謝る。
私はそれを見て思わずあたふたしてしまい、両手を振ってこう言った。


浮狼
「ど、どうかお気になさらず! 私は聖様の為なら、この命など惜しくはありません…!」
「無論、私は聖様の剣…決して、簡単に死にはしませんので!」


「はは…流石浮狼さんですね」
「浮狼さん、もし良ければ、何か欲しい物とかはありますか?」
「報酬ついでに、俺から何かプレゼントをしようかと思うんですけど…」


私はそう言われ、つい考えてしまった…
そして、とりあえずパッと思い付いたのが…


浮狼
「あの…キスとか、構いませんか?」


「キ、キス…ですか?」


私は、はい!と強く答える…これは、私の小さなワガママだ。
無論、聖様程の方であれば、キスのひとつやふたつ、もう誰とでもやっているのでしょう。
ですが、私はまだしてもらっていない…年齢的には結構上なのもありますが、白那様もなさっている事ですし、私とて女だ…愛する方のキスは、受けたい…と思うのです。



「分かりました、じゃあ…良いですか?」

浮狼
「は…はい、いつでも!」


思いの外、聖様は快く引き受けてくださった。
対する私は、始めての体験に思わず体をビクつかせてしまう…

そんな私の反応を見てか、聖様は優しく私の首に手を回し、後頭部をそっと撫で、私の意識を和らげてから体を引き寄せ、ゆっくりと唇を重ねる。
聖様の唇は温かかった、私は目を瞑ってしばし…至高の時間を感じる。

これが、愛する方とのファーストキス…私は今、とても幸せな気持ちになる。
そして、体が紅潮するのを感じました…たった数秒間ですが、私は幸福感に痺れ、意識が飛びそうに。



「…どう、でした?」

浮狼
「はい…とても、幸せです」


私は思わず泣いてしまい、そのまま聖様の胸に体を預けた。
聖様は無言で私の背中に手を回し、優しく抱き締めてくれる。
私は、結局暗殺の事は正直に言えなかった…かける情けは無い相手だったとはいえ、これは私の独断であり、決して聖様が望まれた結果ではない。

ただ、せめてあの呪いを絶ちたかった…
聖様にすら毒牙にかけようとしたあの外道を、私はどうしても許せなかったのです…

私は聖様の胸で声に出さず涙を流す。
こんなに辛いのは初めてだったかもしれない…愛する聖様に、真実を隠さなければならないと言う現実。
その現実は私の心に突き刺さり、真実を知らぬ聖様は、ただ優しく、私を抱き締めてくださったのだ…

せめて、この罪は死ぬまで背負おう。
私は愛する方を欺いてまで、今の立場を保ちたいと欲をかいてしまったのだから…

私も所詮…汚れた女なのかもしれませんね。










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第7話 『渦巻く悪意、魔更を恨む呪い』


To be continued…

Yuki ( 2019/04/21(日) 12:19 )