とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない














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終章 『第七の黙示録』
第1話
二海
「これで…あとひとりか」

ジェノ
「ああ…ようやく、ここまで来たな」


私たちは現在オーストラリアにいた。
あれから南アメリカでイナズマを倒し、ジェノの妹は残りふたりとなる。
そしてここオーストラリアで更にもうひとり、フリーズをも救ったのだ。


二海
「…しかし、結局アクア以外は目を覚ます事すら無かったか」

ジェノ
「仕方無いさ…だが、それは時間がきっと解決してくれる」
「どうせ俺たちは年も取らない…メンテさえしてれば永久に動けるからな」


それは、改造人間の悲哀…某ライダーとかと同じ悩みなんだろう。
本当に時間が解決してくれれば良いんだが、どれだけの時間がかかるか…?


二海
「残りは、ノーマだけか」

ジェノ
「ああ…だが、反応は感じられない」
「この国にはいないんだろうな…」


私たちは野生の動物たちも多いこのオーストラリアの地を、ふたりだけで歩く。
自然に溢れるこの大地はとても平和で、争いが起こる事自体がおかしくも思える。
だが、ここでフリーズと戦ったのはその傷痕が語っていた…

私は振り向き、昨日戦場になっていた大地を見る。
所々が抉れたりしており、ジェノたちの戦いがそれだけ激しかった証だ。

ジェノの妹たちは、あれから白那さんの城で保護してもらっている。
フリーズも戦闘後すぐに白那さんに保護してもらった。
流石に、動けないアイツ等を連れては移動出来ないからな。

そして後ひとり…だが、その行方は解らない…か。
私の探知範囲よりも、ジェノの探知の方が広いみたいだからな。
最も、ジェノは同族以外の探知は出来ないんだが…


二海
「…アメリカ、オーストラリア、次は何処へ行く?」

ジェノ
「東南アジア…中国、ロシア…探す所はまだまだあるな」


ジェノはため息を吐きながらも顔は笑っていた。
時間はいくらでもある、見付かるまで探し続ける…か。
いや、相手もジェノの事を探している…その内、向こうから現れるかもな。


二海
(三海…もう少しだけ待っててくれ)


私は青い空を見上げてそう思う。
この一件が終わったら、1度顔を出すつもりだ。
そして、改めて聖に願いたい…ジェノたちを、救ってほしいと。
いくら時間が解決すると言っても、それだけの間ジェノはひとりで苦しまなければならない。
いくら何でも、そんなのは辛すぎる。

ジェノはそれだけの努力をしたと思いたい…
救う為とはいえ、戦いたくもない妹たちと戦い続けたのだから。

その努力は、実ったって良いはずだ。


二海
「ジェノ、ノーマを救ったらどうするつもりだ?」

ジェノ
「…何処かで静かに暮らすさ」
「こんな体の俺たちに、安らぎが許されるのかは知らないがな」


ジェノは皮肉を込めて笑った。
そしてふたりで綺麗な空を見る。
時間は昼過ぎで、雲も少なく快晴。
何よりも風が気持ち良い。
もう11月だが、ここの気温は20℃を越えている…上着すらいらない位の気温だな。

私は半袖のTシャツ1枚だけだが、それでも汗は出て来ており、それをタオルで拭うが、ジェノは相変わらず分厚いローブで全身を覆っていた。
ジェノは感じる体感温度も私たちとは大きく違い、汗のひとつもかいていなかった。
いや、かく事も出来ないのかもしれないが…


二海
「なぁジェノ…もし良かったら、私と一緒に日本で住まないか?」
「そこには私の恩人や妹もいる…きっとお前たち姉妹も……」

ジェノ
「!? 二海ーーー!!」


ジェノが突然私に抱き付いて横に跳ぶ。
すると、私たちがいた場所からは炎の渦が巻き起こり、私は状況を理解した。


二海
(敵!? だが、何の反応もしなかったんだぞ!?)

ジェノ
「気を付けろ二海! 複数いやがる!!」


私は超能力で宙に浮き、ジェノと一緒に後方へ飛ぶ。
そして瞬時に私は全てを理解し、敵の相対位置と配置、人数を把握して最適な位置を割り出した。


二海
「敵数3! タイプは炎と鋼と、電気・飛行!」

ジェノ
「なら各個撃破だ! 俺は鋼をやる!!」

二海
「なら私は炎からだ!!」


私たちは互いに弾け飛ぶ様に散開する。
そして、互いが目標と定めた『敵』と相対した。


炎ポケモン
「むぅ!?」

二海
「悪いが、ここから先は一方通行だ!! 売られたケンカは買う主義でな!!」

鋼ポケモン
「ちっ!?」

ジェノ
「不意打ちするなんざ、タイマンに自信が無い証拠だぜ!?」

電気ポケモン
「おい!? 俺は無視かっ!?」


とりあえず私は炎タイプのポケモン男を見る。
その姿はやや中年と言った感じの顔付きで、髪は茶髪で顔には金の額当てを付けていた。
その額当ては逆T字の形をしており、私はその時点で相手の種族を予測する。


二海
「ほう、『エンテイ』か…思ったよりも大物だな」

エンテイ
「我が正体を瞬時に見破るか! 流石はウォディ様が一目置くミュウツーよ!!」


私はそれを聞いて?を浮かべる。
ウォディ…? 聞いた事の無い名だな。
ポケモンだとしても、そんな種族は聞いた事が無い。
が、今はどうでも良い…か。

私はニヤリと笑い、すぐに両手で超能力を練る。
それを見てエンテイは腰に差していた鞘から西洋剣を抜き、それに炎を纏わせた。
服装はどこぞの西洋騎士みたいな風貌だが、甲冑は着ていない。
赤いマントがヒラリと靡き、エンテイは剣を大きく振り被って構える。

私は呆れながらもため息を吐き、相手の動きを待っていた。


エンテイ
「我が一刀!! その身で受けるが良いぃっ!!」

二海
「御託は良い…さっさとやれ」


エンテイは目を光らせ、横薙ぎに剣を薙ぐ。
私はそれに対して右手で前髪をかき上げ、左手1本で軽く剣を止めてみせた。

ブォワァァァァァァッ!!と激しい熱風が巻き起こるが、私は超能力でそれから体を防護する。
私の服や皮膚は焼かれる事すら無く、技を放ち終わった剣を左手1本で受け切った。


エンテイ
「バ、バカな……!?」

二海
「やれやれ…温い炎だな?」
「私の知り合いには、お前の数倍は火力の高い奴がいるぞ?」


私はそう言ってそのまま左手から『サイコブレイク』を放ち、エンテイの体を大きく吹き飛ばす。
一撃か…大した事は無かったな。
さて、ジェノはどうしてるかな?


鋼ポケモン
「…こ、この、脳筋野郎〜!」

ジェノ
「やかましい! こちとらどっちかってーと肉体派なんだ!!」


ジェノは既に鋼ポケモンを足蹴にして勝ち誇っていた。
両腕を組んでマフラーが風に靡かれている…間違いなく圧倒したな。
相手の体はブスブスと焦げており、容赦無く炎を貰った様だった。
しかし、あの鋼ポケモン…やたら妙なアーマーを着込んだ少年だな。
だがあのアーマーはある意味種族の特徴でもある。
銀と黒のツートンカラーで胴体は黒く、点字の様な文字が胸に描かれていた。
あれは間違いなく『レジスチル』だな…


二海
「と、なると…あそこのは『サンダー』か?」

サンダー
「くっそ…まさかここまで強いとは!」
「こんな時にフーリアのバカはいないし…どうすんだよ!?」


何だかサンダーは頭を抱えて唸っていた。
既に戦意喪失と言って良さそうだ…やれやれ、何しに来たんだか?


ジェノ
「おい、ガキ…? 一体俺たちに何の用だ?」

レジスチル
「くっ…全てはウォディ様の意志だ!」

二海
「ウォディ…一体誰だそれは?」


「やれやれ…無能な部下を持つのも考え物だな」


私は突然現れた気配に伏せろガバッ!と振り向く。
すると、そこには変哲も無い洋服に身を包んだ小さな少女が現れた。
身長は140cm程、ピンクのショートヘアーで私のに酷似した長い尻尾を伸ばしている。
そして、私はその姿を見て震える。
見間違えるはずもない…コイツは、コイツはぁぁぁ!?


二海
「何しに来やがったぁぁぁぁぁぁっ!?」


私は問答無用で右手をかざし、『サイコブレイク』を全力で放つ。
しかし、ソイツはそれを右手をかざし、超能力で相殺してみせた。
間違いない! やっぱりコイツは…!!



「やれやれ…相変わらず短気な様だな?」
「これだから嫌なんだ…本当に我が娘とは思えない」

二海
「黙れ『ミュウ』!! 私はお前を母とは認めない!!」

ジェノ
「母…だと!? 二海の…っ!?」

ミュウ
「ふん…私とて貴様を娘とは思っていない」
「だが、血は血だ…お前は計画の役に立つ」


そう言ってミュウは妖しく笑う。
私は既に怒り心頭だ。
あの笑みは、相手を完全に見下している笑み。
他者の事など、ただの駒としか思っていない、外道の笑みだ!


二海
「私を以前の私だと思うなよ…!? 私は、お前に抗ってみせる!!」

ミュウ
「好きにしろ、お前の意志などどうでも良い」
「私は『傲慢』でな…力ずくで従わせるのが主義だ♪」

サンダー
「ウォディ様、 気を付けて!! ソイツ等は並みじゃない!!」


ウォディ、ね…自分で名を名乗ったのか。
傲慢な奴らしい…人に名付けられるのは絶対に許さないだろうからな。
言ってて私は腹が立つ…私自身も名は自分で名付けたからな。
変な所で似ている部分があるのが、私はとにかく気に入らない!!


ウォディ
「ソール、ストゥルフとロッキーを連れて撤退しろ」
「ここは私だけで十分だ…」

ソール
「は、はいっ!」


言われてソールと呼ばれたサンダーはまずエンテイを回収する。
謎の力を使ったのか、一瞬でその場から消えてしまった。
転送の類い…?


ジェノ
「うおっ!?」


ジェノが踏み付けていたレジスチルも一瞬で消えた。
そのまま、ソールはジェノの攻撃を受ける前に消えてしまう。
最初から逃げられる算段はあったって訳か…
つまり、私たちの実力を測ってた訳だ!


二海
「はっ…! 成る程な!!」
「随分北欧神話が好きな様だが、その中で神を名乗るとはな!」
「傲慢なお前らしいじゃねぇか!?」

ウォディ
「否定はしないさ…だが、私にはその力がある」
「我が力は『傲慢』! 何人たりとも、我が威光の前に跪く!!」


ウォディはそう言って地面を揺らす。
凄まじい念動力だ…だが、絶対に負ける訳にはいかない!!
私は全身を揺さぶられるも、対抗して念動力で押し返す。
ウォディは表情を少しも変えず、涼しげな顔でそれを受け止めていた。


ウォディ
「ほう…? 確かに言うだけはあるな…以前とは比較にならない力だ」

二海
「舐めるなよ…!? もう私は、お前には負けない!!」


私は更に力を込めて踏み込む。
地面はゴゴゴ…!と地響きを起こし、互いの力のぶつかり合いで地面がめくれ上がっていた。
ウォディにはまだまだ余裕がある…対してこっちは全力全開!

まだ…まだ足りないのか!?
私の今の力でも…アイツには勝てないのか!?


ジェノ
「ちっ! 野郎ーーー!!」


痺れを切らしたのか、ジェノがウォディに向かって突撃する。
だが、その瞬間にジェノは横から誰かに蹴り抜かれる。
それはさっきの3人じゃない…!?
ソイツは…まさかの相手だった!


ジェノ
「がっ…!?」


「悪いが邪魔はさせない…貴女の相手は私だ」

二海
「紫の…ゲノセクト!?」

ウォディ
「その程度で集中を乱すな…だからお前は無能なんだ」


私は今の気の弛みで一気に押されてしまう。
踏ん張ろうとしてももう遅い、ウォディの念動力はあっさりと私を吹き飛ばした。


二海
「がぁぁぁぁぁぁっ!?」

ウォディ
「そのまま少し寝ていろ、今回お前はただの副菜だ」


そう言ってウォディは両腕を組み、ジェノと紫のゲノセクトを見る。
私は今の一撃で全身をボロボロにされ、意識が朦朧とする中でそれを遠目に見ていた。
背中を地面に預けながらも、顔だけ上げてジェノを見る。
そのジェノは、全身から闘志を燃やしていた。


ジェノ
「ノーマァァァァ!!」

ノーマ
「ジェノ…妹は返して貰う」


熱くなるジェノに対し、クールなノーマ。
見た目はほとんど同じだが、髪型と色が違う。
ノーマはショートヘアーで紫の髪だった。
そんなノーマは正面からジェノの『ブレイズキック』を受け止める。

ガード越しにズザザザザザッと後ろに吹き飛ぶも、ノーマはすぐに足を払って攻勢に出た。
ノーマは右拳を振るい、ジェノの胸を殴打する。
だが、ジェノは構わずに自らも右拳を振るった。

ガキィ!!と金属音。
ジェノのパンチはノーマの顔面に当たるが、ノーマはお構い無しにジェノに回し蹴りを見舞う。
それを食らってジェノは吹き飛んだ。
何だ…!? 何故こうもパワー差がある!?
ジェノは妹の上位互換のはずなのに…ノーマはそれを超えるというのか!?


ジェノ
「ぐぅ…!?」

ノーマ
「どうだ…? これが私の力だ!!」


ジェノはサンドバッグの様に棒立ちで殴られ続ける。
ノーマのパワー、スピードは明らかにジェノを超えている!
一体、何があったと言うんだ!?
どうしてノーマはこれ程の戦闘力を?


ジェノ
「がぁぁぁぁぁ!!」

ノーマ
「無駄だ! もうお前の技は通用しない!!」


ノーマはカウンターでジェノのパンチに蹴りを入れる。
ジェノは更に吹き飛び、物凄い勢いで後方の大岩に叩き付けられた。
ノーマはそれを猛スピードで追い、ジェノのマフラーを掴んで自分の方に引き寄せる。

そしてそのまま拳を乱暴に振るい、ノーマはジェノを一方的に叩きのめしていた。


ジェノ
「ノ、ノーマ……」

ノーマ
「妹たちを返せ!! 妹を救えるのは私だけだ!!」


ノーマは悲痛な顔をしていた。
その顔は、まるで妹と戦うジェノと瓜二つ。
どうして、ノーマまであんな顔をして戦うんだ?


ノーマ
「貴女には妹は救えない! 私にすら勝てない貴女には!!」

ジェノ
「ぐぅぅぅぅっ!?」


ジェノは反撃するも、ノーマは軽くカウンターを決める。
全て見切られている…ジェノはこのままでは!!


ノーマ
「貴女は弱い!! 自惚れるな!!」

ジェノ
「俺は…ただ、お前たちを救いたくて……!」

ノーマ
「それがエゴなのよ!? 貴女に何が出来る!?」
「妹たちを物言えぬ人形にして、何が救うだ!!」


ジェノは殴られながらも泣きそうな顔になっていた。
いや、そもそも涙は流せないのだ。
ただ、それでもアイツは本気で妹を救いたいんだ。
それは、ノーマの事も同じなのに…


ノーマ
「貴女のやり方じゃ妹は救えない!」
「だから私が代わりに救う! そして桃源郷を創る!!」

ジェノ
「救えない…? 俺には…?」


ノーマの容赦無い殴打はやがてジェノの意識を奪う。
流石のジェノも、何10発と貰ったパンチの前にはもう抵抗する力も残っていない様だった。
いや、それだけじゃない…ジェノは今、心を折られた。


ノーマ
「妹は返して貰うわ…そして、貴女は必要無い」

ジェノ
「………」

二海
「ジェ……ノォォォォ!!」


私は痛む体を突き動かして立ち上がる。
そして、全力でノーマに『サイコキネシス』を放つ。
が、それはあっさりとウォディの力で消し飛ばされた。


ウォディ
「邪魔をするな…お前は無力だ」
「だが、安心しろ…テストは合格だ、これからは私の駒として使ってやる」

二海
「誰が…っ!? お前なんかのぉ、駒になるかぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


私はふと三海の事を想う。
大事な、大事な妹。
私はもう、アイツを悲しませたり、苦しませたりしない!
だが、その為にはアイツを超えなきゃならない!
それには力がいる! 今のままじゃダメなんだ!!
すぐに強くなる方法なんて有るわけ無いけど…
だけど!! それでも譲れないんだ!!


二海
「私は守ってみせる!! 家族も、友達もぉ!!」

ウォディ
「!? この、光は…!?」


私の胸元から浮き上がるひとつの石。
それは今まで何の反応もしなかったネックレスの石だ。
それにはとてつもない力が眠っているのは解っていた。
だが、同時に私には使える力じゃないとも思っていた。
それが、今遂に反応した。
そして、それは私に…新たな力をくれる!!

私の体は虹色の輝きに包まれ、胸の前に謎の紋章が現れる。
同時に私は姿を変え、更なる力を得た。


ウォディ
「…!? まさか、メガ進化だと!?」

二海
「私は…! お前を超えてみせる!!」


私は新たな姿になり、全身の筋肉量が増える。
特に腕と脚が顕著にパンプアップし、独特のアーマーが両肩に付いていた。
角もやや尖った様になり、改めて変化を感じる。
この時点で私は全て理解した。
この姿なら、私は今までに無い『力』が振るえるのだと!


二海
「ウォディ!! もう好きにはさせん!!」

ウォディ
「ちっ! だが、その姿では耐性を犠牲にするぞ!?」


私は理解していた。
今の私は格闘タイプ…つまり、エスパーへの耐性を捨てているのだ。
しかも、格闘はエスパーに半減…結果として、やや不利になったとも言える。
が…そんな物は。


二海
「気合いでカバーするだけだぁぁぁ!!」


私は全身の筋肉を使い、高速でサイドステップする。
その速度にウォディは面を食らい、狙いを絞れずにいた。
今までは空中をメインとした機動だったからな…いきなりの地上機動はまだ慣れて無いか!?


ウォディ
「おのれ…! 舐めるなっ!!」


それでもウォディは私に『サイコキネシス』を当てる。
空間が捻れ、全身が引き千切られそうになるも、私は同時に『自己再生』をしてダメージを相殺する。

そしてそのまま、私はウォディの懐に飛び込んで拳を振るった。
それはただの『八つ当たり』…だが、効果はある!


ウォディ
「がふっ!? こ、このパワーは…!」

二海
「さぁ、どっちが先に倒れるか…相討ち上等で試してみるかぁ!?」


私はただ乱暴なだけの拳をウォディに振るった。
小さな体のウォディは大きく吹き飛び、段々と体を痛めていく。
私は容赦無くそれに追い討ちをかけていった。


ウォディ
「おのれぇぇ!!」

二海
「!? がぁっ!!」


私は吹き飛ぶ。
ウォディが更に力を込めた『サイコキネシス』で、私は後ろに吹き飛ばされてしまったのだ。
流石に今のは効いた…まだ、あんな力を出せるのか!?


ノーマ
「くっ…! ウォディ、任務は完了だ!!」
「これ以上の戦闘は必要無いだろう!?」

ウォディ
「黙れ! 私に命令するな!!」
「気に入らない気に入らない気に入らない!!」
「だが…! あの力は気に入った!」
「待っていろ二海? その内貴様の力は私の駒にしてやる!!」

二海
「!?」


ふたりはそのまま宙に浮き、その場から消えてしまった。
結局、私たちはそのまま放置され、言い知れぬ心情に包まれた。


ジェノ
「………」

二海
「ジェノ…」


私はメガ進化が解け、ボロボロになった体を押してジェノの所に向かう。
ジェノは焦燥しきった顔をしており、もはや生きてる様にすら見えなかった。


二海
「…ジェノ」

ジェノ
「……俺、救えないって」


私はジェノの両肩を掴んでガタガタ揺らす。
こんなのはジェノじゃない! アイツはもっと力強かった!


二海
「しっかりしろジェノ!! 妹を救うんだろう!?」

ジェノ
「でも……俺には救えないって」

二海
「違うだろ!? 何があっても救うんだ!!」
「ノーマに負けたからって何だ!? 次は勝てば良いだろう!?」

ジェノ
「二海……何で、俺なんかの為に」

二海
「…っ! 友達だからに決まってんだろうがぁ!!」


私は思いっきりジェノの横っ面を殴り飛ばした。
かなり右手が痛い…コイツ、本当に固てぇ!!


ジェノ
「そっか…友達、か」
「なら、今度は…友達の為に、強くなるかぁ〜」


ジェノは目に光を取り戻し。
ユラリと立ち上がった。
私も立ち上がって隣に並ぶ。
互いに、今回は心が折られかけた…
だけど、まだ負けちゃいない。


二海
「ジェノ…日本へ行こう」

ジェノ
「そこに、何かあるのか?」

二海
「切り札だ…もう、なりふり構ってられない」
「頼るのは最終手段だったが、今がその時だ!」


私は空を見上げ、海の向こうにいるであろう恩人を想う。
そして、待っているであろう大事な妹を。
ジェノの妹たちもそこにいるしな…1度顔は出した方が良いだろう。
今回ばかりは、私たちだけじゃどうしようも無い…



………………………



白那
「…な!?」


「…冗談じゃないわね、何があったの?」

櫻桃
「つつつ…本当に冗談じゃないよ」

借音
「ゴメンなさい櫻桃さん…! 私たちのせいで!」


オレは棗と一緒にとある部屋の前にいて驚いていた。
その部屋は…ジェノちゃんの妹たちが寝ていた大部屋だったんだけど。
まさか、空間ごと削り取られてるなんてね。


白那
「…オレの力とは全くベクトルが違う、どうやってこんな削り方をしたんだ?」


「…何か違いがあるの?」


棗には解らない様だった。
だが、空間を操る者として、この削り方は異常だ。
オレは削られた断面を触りながら分析する。
そしてゆっくり立ち上がり、周りを見てこう言った。


白那
「強いて言うなら、無理矢理空間を吸い取ったかの様な…」
「オレが削るなら、対象だけを正確に削るんだけど」


「…成る程、射線上に有る物は全部消えてるって訳ね」
「…だから吸い取った、か」

櫻桃
「訳が解らなかったっすよ…突然現れて、突然襲いかかって来て」


櫻桃の服はボロボロだった。
まるで爆発か何かでも食らったみたいだけど…火傷の類いは無いね。


麻亜守
「うう…っ! うぇぇ〜!!」

櫻桃
「こら、もう泣くな…アタシは大丈夫だから!」


麻亜守ちゃんは大泣きして櫻桃に抱き付いている。
どうやら、櫻桃は麻亜守ちゃんと借音ちゃんを守って戦ったんだろうね。
しかし…櫻桃を正面から撃退出来る相手が来たって言うのか?
だとしたら、相当な実力者という事になるけど…



「…狙いはゲノセクトか」

櫻桃
「でしょうね…妙なふたり組でしたよ?」
「ひとりは水着みたいな青い女、もうひとりは小太りした緑の少女だったっす」

白那
「水着みたいな…?」


「…成る程、『カプ・レヒレ』ね」


棗は目を開き、櫻桃の頭に手をかざして記憶を読み取る。
そして、櫻桃の記憶に映っていたであろう相手を読み取ってそう言った。



「…もうひとりは、確信は無いけど多分『シェイミ』」

櫻桃
「シェイミ〜? それって、幻のポケモンっすよね?」
「あんな太ったのが、それなんすか?」


棗ですら、確信が無いと言ったからね…それ程、イメージ出来ない姿だったって訳だ。
しかし、レヒレにシェイミ?
何故…あのゲノセクト姉妹を狙った?

まさか、二海ちゃんたちに何かあったのか?
つい先日、4人目を保護したばかりなのに…どうしてこのタイミングで?


白那
「まさか…集まるタイミングを狙って?」


「…可能性はあるわね」
「…後、確実に緊急事態」
「…藍が帰り次第、聖さんも交えて会議を開くべきだわ」


オレは頭を抱えながらも同意する。
そして傷付いた櫻桃を借音ちゃんに任せ、敵のイメージを固めた。
今の所、解らない事が多すぎる。
一体何故急にこんな…?
まさか…何か嫌な事でも起ころうとしてるのか?


白那
「…混沌ですら、無いのにか」


「…それこそが、真相かもしれないわね」


棗は何か予想している様だった。
いや、未来を予知していたのかもしれない。
だけど、その未来に確証が持てなかった…って所か。
どっちにしても、これはマズイ事態だ。
聖君は家に帰っているはずだし、すぐに話をするべきだろう。


白那
(何故だ…? 物凄く嫌な予感がする)


それは言い知れない不安だった。
こんな不安は…まるで、あの時の。
守連ちゃんたちと戦う前の時の様な、そんな絶望感が。
オレは…また失うのか?
いや、そんな事はもうさせない!
オレは…絶対に皆を守ってみせる!!

今は、自分にそう言い聞かせて自らを鼓舞した。
そして何かが、静かに動き始めていく…











『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



終章 『第七の黙示録』

第1話 『狙われたゲノセクト』


To be continued…

Yuki ( 2020/01/14(火) 07:36 )