とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない - 終章 『第七の黙示録』
最終話
ペルフェ
「…妙ね、静かすぎるわ」


私は拠点の廊下をひとり歩いていたけれど、そこに違和感を感じた。
普段なら誰かしらの気配を感じるはずなのに、今はほとんど感じない。
特異点の奪取に、それ程躍起になっているとは思えないのだけれどね?


ペルフェ
(…いるのはカルラだけ? いや、新参者もいるわね)


私は脳波を広げて探査してみる…すると、ふたりの該当者が確認出来た。
エスパー程の探知は出来ないけれど、ここ位の狭さなら私でもある程度は探知出来る…
まぁ、七幻獣はそれなりに相互干渉出来るんだけどね。


ペルフェ
(カルラはあの性格だし、自分から動こうとはまずしないでしょうね)


後は新参者の…ノーマとか言ったっけ? あのゲノセクトの事は良く解らない。
自室を貰ってからずっとそこに籠っている様だけど、一体何を考えているのか…?


ペルフェ
「…確かスカアが先に出て行ったと記憶してるけれど」


あれからもう何日も経っている。
彼女の性格と気性でそれ程時間が経っているという事は、失敗したのは明白。
最悪返り討ちにあって死んだか、それともあの特異点に懐柔されたか…

どっちにしても最悪でしょうね…やれやれ、ウォディが頭を抱えるのが目に浮かぶわ♪


ペルフェ
(とはいえ、そのウォディは裏切り者の始末に向かったと聞いたわね)


それも私の先代であり、元強欲のフーパ…今は名も変えて世界を放浪してると聞いてるけど、それが何故今更になって?

先代は、今までこちらにちょっかいをかけてくる事は無かったはずだけど…
それとも、まさか恵里香やメロディと内通でもしてるのかしら?
だとしたら、いずれやり合う事にはなりそうね。

もっとも、私が先代に負ける要素なんて無いんだけど♪


ペルフェ
(真姫は…まぁどうでも良いか)


アイツはとにかく気に入らない。
自己中心的だし、人の話は聞かないし、年中盛ってるビッチだし!
あんなのを特異点に会わせたら、この作品が18禁に指定されてしまうわ!(言い過ぎ)

…コホンッ!って、別に特異点がどうなろうが私には知った事じゃないんだけど!


ペルフェ
(とはいえ、殺すなら私の手で殺さないと気が済まない)


恵里香やメロディに絶望を叩き付けるには、それが1番なのだから♪
前の運動会ではやむ無く協力したけど、本来は殺す対象に過ぎない…

今回は、王が連れて来いと命令してるからそれに従うけれど…
用済みになったら私の手で殺してあげるわ♪
私が微笑みながらそう考えていると、あまりに珍しい光景に驚く。
私の視界に現れたのは、あの怠惰のカルラだったのだ…


ペルフェ
「…? 珍しいわね、貴女が動くなんて」

カルラ
「……王が、動いた」


私は、その小さな一言を聞いて驚愕する。
王が、動いた?
そんなバカな事があるの? だって、王を世界に降臨させる為にあの雫が必要だったんでしょう?
なのに、どうして王が動く…? いや、どうやって動いた!?

私は意味不明に?を浮かべ、ただゆっくり歩くカルラの背中を見る。
カルラはあの性格だ…自ら動くという事は、それこそ王が本当に動いたという証。

なら、特異点はどうなったの?
もう、特異点は既に王へと献上されたって事?


ペルフェ
「待ちなさいカルラ! 特異点の方はどうなっているの!?」

カルラ
「……さぁ?」


カルラは背中越しに首を傾げ、歩き続ける。
聞いた私がバカだったわ! 彼女の事だから、本能的に動いてるだけね!
しかし、そうなると私も動かなきゃならないけど…


ペルフェ
(ちっ…一応、新入りにも話しておきましょうか)


私はそう思って、ノーマの部屋に向かう事にした。
とりあえず、話だけでもね。



………………………



ペルフェ
「新入り、入るわよ?」


私はノーマの部屋をノックし、そう断ってからドアノブに手をかける。
…が、開かない。
鍵がかかってる…とかそういうのじゃない。
ドアノブが固定されて回らない?
どうなってるのよコレ!?


ノーマ
『…何の用だ?』


ドアの向こうからは、そうやって低い声が聞こえてくる。
声から感情を読み取る事は出来なかったが、どこか弱々しい口調にも思えた。


ペルフェ
「王が動いたわ! 貴女も王の眷属であるなら、自分で考えて動きなさい!」
「話はそれだけ…私は先に行くわ」


とにかく、これでもう良いでしょ…どうするかは本人の自由だし。

別に、直接王自らが命令を下したわけでもない。
今の所、強制力は無いのだから。
私もとりあえずは動く事にする、他のメンバーが誰ひとりいないのは気にかかるけど、既に王の元に集っているのかもしれないしね…



………………………



それは…西暦20xx年12月24日の出来事だった。
現代的なビル郡が建ち並ぶ、日本の中心都市の一角。
その街において、最も高い場所にそれは佇んでいた…



「………」


その姿は漆黒の身なりであり、ひとりのポケモン娘…
身長は約150cm程と、やや子供の様な体系であるが、それが持つ特異な風格は何者をも寄せ付けない気を放っていた。

露出度の高い水着の様な服に、黒いローブを纏っただけのその姿は、明らかに冬の気候には合っていない。
しかし彼女は一切の冷気を感じず、微動だにしないまま日本で最も高い電波塔の登頂部に立っていた。

そしてつまらなさそうな顔をして、眼下に広がる世界をただ見てこう呟く。



「…つまらぬ世界だな、ただ与えられた平和を享受するだけの世界とは」


それは、やや低い声で呟いた。
あくまで子供の声帯的に低い…という程度だが。
しかし、それが放つ意味は重い。

何故ならば、彼女はこの世界においてあまりにも異端であり、絶対的な力の持ち主。
彼女が望めば世界は火に包まれ、全ては吹き飛び、全てを海に沈める事すら出来る。

それ程の絶対的な力を彼女は持っており、そして今その力がこの世界に振るわれようとしているのだ。



「…どこにいる? ここにはいないのか?」


彼女はグルリと世界を見渡す。
彼女の目を持ってすれば、地球上の何処にいても見通す事は出来る。
しかしそれは、まるでかくれんぼの鬼がターゲットを探す様な感じにも思える物だった。

そして、とある方角を見つめて彼女はうっすらと笑みを溢す。
見付けたのだ…探していた存在を。



「ククク…あんな所にいたのか」
「という事は、私の存在も既に認識していよう」
「ならば、これが最期だ…せめて祈るが良い」
「お前の役目は…もう終わりだ」


それは、そう呟いて一気に飛び立つ。
その飛行速度は目に見えるレベルではなく、ほんの一瞬…何かが光った様にしか見えないレベルの物。

そんな全てを超越した速度を持って、彼女はとある小さな公園へと舞い降りた。



「ふん…寂れた公園だな、ここを墓場に選んだか」
「もっとも、埋葬する趣味はないがな♪」


軽く冗談を口にし、彼女は右手を前にかざして力を放つ。
形容しがたいエフェクトを放ったその力は、空間に容易くヒビを入れた。
そして、そこへ手を捩じ込んで無理矢理空間を開く。
強いて言うなら、割れたガラス窓に手を突っ込んで、枠ごと変形させて開く…という感じか。

とにかく、そんな風に空間を開き、彼女はその公園に存在する『別の世界』へと容易く侵入した。



………………………




「…ふん、随分力を失ってる様だな?」

アルセウス
「やはり来たか、『混沌の王』…もうひとりのアルセウスよ」


そう、そこにいたのはこの世界を造った創造神。
かつて世界を滅ぼす未来を見せ、全てを闇に包んだ事もある絶対的な存在。
だが、あるひとりの少年がその世界を救い、そしてこの創造神すらも救ってみせた。
それ故に、今この世界はまだ存在を許されていたのだが…

それを許さぬ神も、またここに存在していた。
それこそが混沌の王であり、もうひとりのアルセウスだったのだ。
よく見れば、王の特徴はこの世界のアルセウスと一致する。
強いて言うなら白い部分が全て黒であり、色を反転させた様な形。

白髪のアルセウスに対し、黒髪のアルセウス…
白い服に対し、黒い服…
だが、体格に関しては歴然の差があり、それに関しては大人と子供の関係にも思えた…



「もう満足したろう? そろそろ閉館の時間だ」

アルセウス
「…それは出来ぬ、この世界にはまだ我の子供たちが生きている」


創造神はそう言って、公園のベンチに座ったまま静かに答える。
王はため息をひとつ吐くも、特に気にした風もなくこう言い放った。



「貴様の世界はもう限界だ…出来損ないの子供のせいでな?」

アルセウス
「…それは、違う」


王の辛辣な言葉に対し、冷静な口調のまま創造神は反論する。
出来損ないの子供…その意味を創造神は知っているからこそだった。


アルセウス
「あれは…ただ己が心のままに動き、そして全てを救おうと奔走した」
「それは全て我の子供の成長であり、そしてその将来を守るのが母たる我の役目だ」


「だが、それはもう限界だ…そして私が来たという事は終わりの証」
「聖戦は既に始まっている…お前も嫌なら、少しは抵抗してみせろ」


そう言って王は、ゆっくりと創造神に歩み寄る。
創造神はその場から動こうとはせず、抵抗の意志すら見せなかった。
いや、もう既に理解しているからだろう。
今の創造神には、混沌の王に対抗する術は無い。
だからこそ、創造神はただ悲しい顔を浮かべた。



「力の象徴たるプレートすら失い、世界を留める器すらもう中身が溢れている」
「そんな状態の世界を貴様に残し続ける事は、何のメリットも無い」

アルセウス
「…それでも、だ」
「それでも、我は子供の為にこの世界を留めるのだ」


創造神は頑なだった。
それこそ、まるで子供の様に…
見た目は大人なのに、彼女はまるで子供が駄々をこねる様に反論する。
そんな哀れな神の末路を見て、見た目が子供の王はこう言った。



「…もうこれ以上の問答は必要無い」
「大分時間はズレたが、第7の黙示録は発動する」
「貴様の消滅をもってな…」


王は右手で創造神の首を絞め、そこから力を流し込んでいく。
それを受け、創造神はダラリと腕を垂らし、力無く全てを受け入れるしかなかった。

同じアルセウスでありながら、その力は歴然。
それもそのはず、創造神には力の象徴たるプレートが全て無く、もはや神としての力は最小限しか振るえないのだ。

それに対し、全てのプレートを背中に浮かべ、自由に全力を出せる王…
王は不適に笑い、嬉しそうに創造神の首を絞めて上に持ち上げた。

やがて創造神の体は光に包まれ、それらが粒子化していく。
今、この世界の神が消えようとしていた。
そして同時に、それは世界の終焉を意味する。
世界の器を保っていた神は消え、そしてそこに収まっていた中身は全て混沌の世界へと流れ出るのだ…



「ククク…呆気無い最期だな、ならせめて祈るがいい」
「新たな世界で、混沌と共に子供たちが生きられる様にな!」

アルセウス
(すまぬ、子供たちよ……我にはこれが限界だ)


やがて創造神は完全に消え、公園には王だけが佇む。
そして世界はすぐに揺れ始め、黙示録の始まりを予見した。
王はすぐにその場から飛び立ち、遥か上空まで飛び上がると世界の行く末を上から見下ろす。

世界中にまるでヒビが入った様になり、そこから光の粒子が溢れ出していく…
世界に住む人々はそれにすら気付かず、黙示録に巻き込まれて消えていくしかなかった…

やがて世界は全て消え去り、そこから今度は闇が広がる。
王はその中にひとり佇み、やがて笑い始めた。



「クッククク! アッハハハハハハハハハハ!!」
「さぁ、新たなる世界の始まりだ!!」
「我こそは、混沌の支配者(カオスルーラー)! この世界に君臨する新たな神だ!!」
「精々、楽しませろ…ククク! クハハハハハハハ!!」



………………………



彼岸女
「…!! 終わった、か」


「…終わったって、まさか!?」


俺は嫌な予感がした。
このタイミングで、その彼岸女のセリフ。
考えたくもないが、恐らく例の黙示録とかが…!


彼岸女
「聖戦は終わった…そして黙示録は発動」
「これで、本当に帰る場所は無くなってしまったね」


「…ふざけんなよ」


おかしくおどけてそう言う彼岸女に対し、俺は流石にブチ切れそうになった。
あまりにも世界を軽く扱う彼岸女のその態度は、俺にとっては侮辱もいい所だからだ。
今まであの世界で育って来た俺や家族の皆にとって、それを軽々しくリセットだ何だとテキトーに扱いやがって…!



「いい加減にしろ!! もう沢山だ!!」
「終わったんなら、俺をさっさと家族の所に帰せよ!?」
「何が帰る場所は無くなっただ!?」
「そんなモン、俺の雫で元に戻してやる!!」

彼岸女
「だから、もうその家族もいないんだって…」
「何なら今から見に行く? 君自身が雫を使ってさ?」


そう言って、彼岸女はリングから雫を出す。
そしてそれを俺に渡し、俺はすぐにそれに願った。
俺を元の世界に戻してくれ…と。



………………………




「……え?」


そこは、何も無い暗闇だった。
俺は周りを見渡すも、広がるのはただの闇。
俺は、この光景を見た事がある。
それは、あの世界に酷似していた。



「嘘だろ……? ここは、時空の最果て…?」

彼岸女
「だ〜から、言ったでしょ? もう、世界は無いって」


彼岸女は突然リングを潜って現れ、俺からまた雫を奪う。
そしてそれをさっさとリングに納め、また俺から引き離してしまった。

彼岸女
「あっぶないあっぶない…後少し遅かったら消えてたよ」


「消える…って」


俺は思い出す。
そして、同時に絶望した。
雫が消える…その意味はひとつしかない。
つまり、アルセウスさんが…死んだ?
だから世界は闇に包まれ、もう消えてしまったのか?

俺はガタガタと震え、その場で膝を着く。
感覚も良く解らない…まさにこの世界は最果てと同じだ。
世界は全ての可能性を消されてしまったのか…?


彼岸女
「…心配しなくても、これから新たな世界は造られるよ」
「もっとも、混沌の王による世界だから…どんな混沌世界になるやら解らないけど」


「家族も消えたのか…?」

彼岸女
「消えたよ…そして本来あるべき場所に帰った」
「慰めにはならないかもしれないけど、君の家族は死んだ訳じゃないから」


死んだ訳じゃない…か。
だったら、また会えれば思い出す可能性はある。
希望は…0じゃ無いって訳だ。


彼岸女
「さぁ、もう行こう? ここにいたら新たな世界の創造に巻き込まれる」
「そうなったら、存在その物が…」


「それは好都合ねぇ?」


彼岸女はバッ!と、体を翻す。
すると、そこから無数の散弾が飛び交った。
俺は何事かと思うも、それを放った人物を見て驚く。
そこにいたのは、いつものドレスを着ていたペルフェだったのだ。


彼岸女
「君は…今の『強欲』か」

ペルフェ
「初めまして先代? それとありがとう♪」
「ここなら特異点を殺して、その存在を完全に抹消出来る!」


「? ここは最果てと同じ世界じゃないのか? 殺す事なんて出来るはずが…」


ペルフェは軽く尖った岩を飛ばし、俺の太ももに突き刺す。
あまりのスピードに俺は反応出来ず、その場で痛みに踞った。



「がっ!? こ、これは……!?」

彼岸女
「お前ぇぇ!? 聖君に何をするんだぁぁ!!」


彼岸女は怒り狂い、リングをふたつ広げて突進する。
ペルフェはほくそ笑み、その場で何やら強烈な気を放ち始めた。
ドス黒いその気は、以前に見た事がある。
確か、バトルフロンティアで世界を狂わせた、あの!


彼岸女
「うぐあっ!? こ、これ…はぁ!?」

ペルフェ
「クククク! 貴女バカでしょ!?」
「同じ強欲なら、その枷を強める事も思いのままなのよ!?」


そいつは初耳だ…つまり、彼岸女は裏切って強欲の枷を背負ってるから、現強欲であるペルフェはその枷を自由に強めたり出来るって事か!?
そして、その効果は絶大…彼岸女は完全に踞り、呼吸困難に陥って首を押さえていたのだ。

彼岸女は涎を撒き散らし、無様に踞るものの、キッ!とした強い瞳でペルフェを見上げる。
それを見て、ペルフェは馬鹿馬鹿しそうに笑った。


ペルフェ
「アハハハッ!! 大きな口を叩いていても、所詮は首輪を付けられた犬!」
「たまたま特異点の反応を追いかけて来てみれば、まさか貴女まで釣れるなんてね!」
「こんな運の良い事は無いわ〜♪」


そう言って、ペルフェはこちらを向く。
その狂ったかの様な笑みは、まさに狂人。
ペルフェの人間に対する憎しみは、それだけ深いのだろう。
俺は足をやられている為、そこから動く事はほとんど出来ない。
仮に動けたとしても、ペルフェから逃げるのは無理だ。

つまり…絶体絶命!!



「ま、待て! 話せば解る!!」

ペルフェ
「解りたくもないわね、貴女はここで殺すわ」


「きょ、今日は俺の負けにしといてやる!!」

ペルフェ
「そのまま死ね!!」


「み、見逃してくれたらこの飴玉をやろう!!」

ペルフェ
「え、本当に!?」


食い付いた!! ただののど飴なのに!!
しかしこれは良い傾向だ! このまま物で釣れればあるいは…


ペルフェ
「って、ぬなモンで釣られるかドアホーーー!!」


「ですよねーーーー!?」


ペルフェの放った『岩雪崩』が容赦なく俺を襲う。
チクショウ! 直撃したらフツーに死ぬじゃねぇか!?
俺はゴロゴロと無様に転がりながらも何とか全弾回避した。

くっそ〜あるいはネタで乗りきれるかと思ったが、やはり上手くはいかないな!


彼岸女
「ぐ…っ! がぁぁぁぁっ!!」

ペルフェ
「ふん…鬱陶しいわね、なら貴女から始末してあげるわ!」


もがく彼岸女に対し、ペルフェは右手に力を集めて彼岸女に近付いていく。
このままじゃ彼岸女はやられる…かといって俺にはどうしようもない。
自業自得といえば自業自得だ。
彼岸女にも非が無い訳じゃない、ここでやられるのはある意味運命…なんだが。



(本当に、それで…良い、のか?)


ここで彼岸女がやられたら、どうせ俺も死ぬ。
どの道、今の俺には何も出来ないのだから…
だけど、だからといってどうする?
彼岸女を助けるにしても、どうやって?

雫は彼岸女が持っている、もし彼岸女が死んだらそれはどうなるんだ?
雫は…俺の元に戻るのか?



(バカな事を考えるな! そんな確証も無い事に、人の命を天秤にかけられるか!!)


そう思った瞬間、俺は全力で走っていた。
回り込む様に移動し、彼岸女の横から割り込む様に俺は走る。
ペルフェは当然気付いている、その上で彼岸女を殺す気だ。
作戦なんて何も無い、でも可能性があるなら賭けるしかない!
彼岸女が持ってる雫を俺が受け取れば、あるいは!!



「彼岸女ーーー! 雫を返せ!!」

彼岸女
「!? っ…!!」


彼岸女は全力で首を横に振って嫌がる。
下手をしたら、雫は消えてしまうのだろう…だけどそれじゃ誰も助からない!!


ペルフェ
「愚かね…最期まで自分の欲には抗えない、か」


ペルフェは右手を構えて力を放つ。
ダイヤの輝きと共に放たれるその散弾は、まさに『ダイヤストーム』。
マトモに食らえば人体など容易にミンチへと変えられるであろうそれは、彼岸女に向けて一気に放たれた。

もう、どうしようもない…
俺に出来るのは、コレしかない!
自分勝手な理由付けて、目の前で苦しんでる女の子を見捨てるなんて、俺には出来ないんだ!!



「クソッタレがぁぁぁぁぁぁっ!!」

彼岸女
「…やぁ、め!!」


俺は彼岸女を庇う様に体を盾にした。
そして俺の体は無数のダイヤに貫かれ、一瞬で意識を持っていかれそうになる。
辛うじて意識はまだ残っていたものの、あまりの激痛に思考が追い付かない。

やがて、俺の視界は赤いカーテンで覆われ、真っ暗な世界で更に視界を悪くした。
微かに目の前に映る彼岸女らしき姿を見て、俺は思わず安堵してしまう。

そのまま俺の意識は途切れ、そこで記憶も途切れた。
まさか…こんな終わり方をするとは、きっと俺自身も予想はしてなかっただろう。



………………………



彼岸女
「…っぁ!? ぁ…ぁぁっ!?」

ペルフェ
「………」


それは、余りにも呆気無い幕切れだった。
物言わぬ死体と成り果てた特異点の体は、彼岸女の腕に抱かれたまま光の粒子へと変わる。
その粒子は、暗い…暗い闇の中を昇っていき、そのまま余韻も残さずに消滅した。

私は自分の手を見る。
何一つ汚れてもいないこの手だが、確かに特異点を始末した。
そう、終わったのだ…とりあえずひとつの目的が。

これで恵里香やメロディに目に物を見せてやれた。
きっと今頃は泣き崩れ、絶望に打ちひしがれているだろう。
私はそれを想像し、段々と笑いが込み上げて来る。


ペルフェ
「ク…クククククッ!! アッハッハッハッハ!!」
「殺した! 死んだ!! 終わった!!」
「特異点は消えた!! 私の勝ちよ!!」
「見なさい恵里香! メロディ!」
「貴女たちが大事にしてた特異点は、消滅したのよ!?」
「泣きなさい! 悔しがりなさい! 憎みなさい!!」
「私の復讐は、これで……!」


これで…どうなるのだろうか?
私は、急に気持ちが冷め始めてきたのを理解する。
何だろう? 目的は達成してしまった…それも、こんなにあっさりと。

私はふと彼岸女を見る。
彼岸女は声も出せずに泣き叫ぼうとしていた。
踞り、体を抱いて首を振っている。
涙で顔はグチャグチャになり、もう今にも死んでしまいそうな位弱く見えた。


ペルフェ
「………」


私は右手を彼岸女に向ける。
このまま技を放てば容易に殺せるだろう。
だけど、何だか全く興味を持てない。
理由は解らない、だけどつまらない。
私は無言で手を下げ、泣きじゃくる彼岸女を見てため息を吐く。

そして世界の創造が始まるのを予期し、私は彼岸女に背を向けた。
後、最期に…これだけ言っておく事にした。


ペルフェ
「…憎いなら、いつでも殺しに来なさい」

彼岸女
「…!?」


私は、そのまま世界の壁を越える。
もう、何も興味が湧かなかった…
何も欲しくない、何もいらない…
なら、私は一体……何なんだろう?



………………………



彼岸女
「…ぁ、ぁぁ」


全ては、失われた…
本来守りたかった存在も守れず、ただそれは泣く事しか出来なかった…

やがて絶望に苛まれ、新たな世界が創造されてしまう。
もう、何も残っていない…計画も、何もかも。

全ては…世界と共に、終わりを迎えた。










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



最終話 『世界の消滅、新世界創造』


…THE END

Yuki ( 2020/04/12(日) 15:13 )