とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない














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終章 『第七の黙示録』
第3話
それは、二海たちがウォディたちと戦っている間に起こった出来事…
白那たちが住む城に、突如として起こった…事件の詳細である。



………………………



櫻桃
「ほ〜ら、少しは新しい技も使える様になれよ〜?」

麻亜守
「む〜! 舐めてるな櫻桃お姉ちゃん!?」
「この麻亜守は日々成長しているのだ! その証拠にコレを見よー!!」


櫻桃と麻亜守はふたりで、城の1階にある広間で遊んでいた。
そこからやや離れた場所にはソファーがあり、そこには借音が微笑んで見守っている。
その姿はまさに母親というべき姿であり、元気に育っている麻亜守を優しく見守っていたのだ。


麻亜守
「秘技!! 瞬間移動ー!!」

櫻桃
「おっ!?」


麻亜守はさながら古い変身ヒーローの様に大袈裟なポーズを取り、その場から消えてしまう。
そして、一瞬にして櫻桃の背後に『テレポート』し、麻亜守はそこから『念力』を練り始めた。

櫻桃は驚いていたものの、そこは流石に年上の貫禄。
いかに奇襲のテレポートを使った所で、その後の攻撃が遅すぎる。
特に、勘に優れる櫻桃に対してそれは隙でしかなく、櫻桃は解った上であえて振り向かずにふふふ…と笑っていた。


麻亜守
「貰ったー! 当たれば効果抜群!!」

櫻桃
「当たればな!」


麻亜守は右手をかざして念力を放つ。
しかし、櫻桃は後ろも見ずに横にステップして軽くかわしてみせた。
そして、ステップからの着地と同時に『影打ち』を背後の麻亜守に放つ。
その速度はまさに瞬速であり、ほぼ着地と同時に影からの1撃が麻亜守を吹き飛ばした。
とはいえ、それはあくまで麻亜守を軽く押し倒す程度の力であり、櫻桃はちゃんと手加減も解っていた様だ。

それがヒットしたのを確信し、櫻桃は笑いながらゆっくり振り向く。
そして腰に手を当て、ふふん!と鼻で笑ってみせた。
それを見て、尻餅を着いた麻亜守はむー!と顔を膨らませる。


麻亜守
「折角新技出したのにー! 何で!?」

櫻桃
「なら、アンタの最大の弱点というのをアタシが教えてやろうか?」


櫻桃がそう言うと、麻亜守はハッ!?とした顔でオーバーに退いてみせ、ま…まさか!?と顔を青くする。
そして櫻桃はふふん!と大袈裟に鼻で笑い、目を瞑って両腕を組み、そして静かにこう言った…


櫻桃
「アンタが技を使う時……良く喋る」

麻亜守
「な、何ですとーーー!?」

借音
「うふふふ…♪」


遠目に見ている借音は楽しそうだった。
良くも悪くも、麻亜守は成長している。
そして櫻桃がそれを優しく守ってくれていた…
借音にとって、この生活に不自由もあるものの、それでも幸せだったのだ。
かつて全てに絶望した櫻桃が、今は笑ってくれる。
家族の事を認め、麻亜守や自分を大切にしてくれる。
そんな…そんな当たり前の幸せが、ただ借音には嬉しかった。

…あえて、もうひとつ欲があるとしたら。


借音
(聖さんがここにいてくれれば…どれだけ、幸せなのかしらね)


解ってはいる事だった。
それは絶対に叶えられない願いだと。
自分の欲望でしかない…そしてそれは家族の絆にヒビを入れかねない願い。
借音は優しい女性である。
恐らく数多い家族の中でも、一際優しい女性だろう。
サーナイトという種族自体がそうであるとも言えるが、それでも借音は優しいと誰もが言うはず。

だからこそ…誰よりも聖を大事に想えるが故、借音は誰よりも聖と距離を置いてしまうのだ。
しかし、母親としての観点で見れば、やはり父親の存在は欲しいのである。

麻亜守はまだ育ち盛り…しかし、その側に父親の姿は無い。
今は櫻桃が父親代わりをしてくれてるとはいえ、麻亜守からすればそれをどう見ているのか?

本当に血の繋がった親子でないが故に、借音は悩んでいた…


借音
(私には…麻亜守の本音は解らない)
(読心する事は出来ても、それが麻亜守の本音かは私には解らないのだから…)


奇しくもふたりは同じ種族。
ラルトスは、ゆくゆくサーナイトになるであろうポケモンである。
それだけに、麻亜守は既に心の中では無意識にフィルターをかけているかもしれないのだ。
そうされると、流石の借音といえども麻亜守の心底には踏み込めない。
いや、踏み込もうと思えば踏み込めるのだが…しかし、それは借音の心が許さない。

例え親子であっても、相手の心の奥底に秘められた秘密を暴くのは…タブーだ、と借音は思っているのだから。


櫻桃
「ほらほら、バトルフロンティアで特訓したんだろ〜?」
「なら、そろそろアンタも進化しても良い頃だ!」
「この辺りでレベルアップして、キルリアになってみな!?」

麻亜守
「もちろんなのだ!! 私だって、お母さんみたいに綺麗で優しいサーナイトになって、そしてメガ進化してみせるんだから!!」


麻亜守は純粋にそう言って笑った。
あまりにも真っ直ぐなその気持ちに、櫻桃は笑いが込み上げる。
嬉しいのだ…そうやって何の疑問も無く、健やかに成長してくれる姿は。
だからこそ、櫻桃は厳しくもある。
麻亜守がちゃんと立派なサーナイトになれる様、体も心も櫻桃が面倒を見てやりたいと、本当に思っているのだから…

しかしそれは、あまりに唐突にやって来てしまった…


麻亜守
「再びテレポート!!」

櫻桃
「おっ、今度は正面か!? だがどう……っ!?」


櫻桃は麻亜守を見てからすぐに驚く。
いや、驚いたのは麻亜守にではない。
その更に後ろにいる、訳の解らないふたり組の誰かに、だ。

ひとりは、パッと見で形容しがたい緑の毛玉。
身長は低いがかなりの肥満体型で、顔もブクブクに膨れている。
どう見ても人間では無いだろうが、果たしてポケモンなのかも櫻桃には判別出来なかった。

そしてその隣にいるのは、青い貝殻を模した何かに入って浮いてる水着の女性。
表情はどことなく愛呂恵を彷彿とさせる無表情さで、機械的な印象を受ける。
櫻桃は知らないが、この女性こそが『カプ・レヒレ』であり、以前悠和と死闘を繰り広げた相手であった。


レヒレ
「目標発見、対放射線状に障害物、いかがいたしますかマスター?」

毛玉
「めんどくさいでしゅ〜」

レヒレ
「了解、ただちに排除します」


一体何が了解なのか?
だが、櫻桃は既に明確な敵意を感じ取り、すぐにその場から動く。
そしてレヒレが右手をかざしたと同時に、櫻桃は麻亜守を横に突き飛ばした。
その瞬間、レヒレの右手から太い水柱が発射される。
それは『ハイドロポンプ』であり、明確な攻撃。
櫻桃はやや不安定な体勢ながらも、それを左腕でガードして止めてみせた。

が…流石に麻亜守を庇っての体勢では踏ん張りが効かず、強烈な圧力で櫻桃は吹っ飛ばされる。
そのまま床に2度3度と激突し、バウンドしながら壁まで吹っ飛ばされた。
その衝撃で服をボロボロにされるも、櫻桃は左腕を押さえて立ち上がる。

そして櫻桃はレヒレをキッ!と睨み付け、メンチを切ってこう叫んだ。


櫻桃
「テメェ〜! 何モンだー!?」

レヒレ
「障害物排除完了、どうぞマスター」

毛玉
「全く、面倒は嫌いでしゅよ〜」


レヒレは櫻桃を無視して、マスターと呼ぶ毛玉を促す。
そして、かなりかったるそうにしていた毛玉は大きく、あんぐりと口を開けた。
そして次の瞬間…その毛玉の前方、一直線上の物体は全て毛玉の口に吸い込まれる。
明らかに口に入らないであろうサイズの家具や、人でさえもあっさりと…


借音
「!? アクアさんたち全員を、部屋ごと吸い込んだ!?」

櫻桃
「な…!? ど、どうなってんだ…!?」


あまりの事に、ただ驚く借音と櫻桃。
しかし毛玉とレヒレは一切それを気にせず、ただ仕事が終わった様に佇んでいた。


毛玉
「げふっ…やれやれでしゅ〜! 何で一々『拐わないと』いけないでしゅかね〜?」

レヒレ
「それがウォディ様の指示です、ゲノセクトの姉妹を必ず『拐え』…と」


それを聞いて、毛玉は目を細めてため息を吐く。
この仕事にはそれ程乗り気で無かったのか、ただただダルそうにしていた。


毛玉
「…もう良いでしゅ、さっさと帰るでしゅよ『ポリア』?」

レヒレ
「了解です…では、お願い致します」


ポリア…と呼ばれたレヒレは毛玉に何かを頼む。
すると毛玉はまた口をあんぐりと開け、今度はポリアを吸い込んでしまった。
そして、そのまま口を中心に毛玉自身の体をも吸い込んでしまう。
まるで自分の口に頭から吸い込まれて行き…気が付けば、その場にはもうふたりの姿は無かった。


櫻桃
「あ…? あ……」

借音
「テレポートの類いじゃない…でも、もう何の気配も感じ取れない!?」


ふたりは呆然としている。
今の短い間に何があったのか?
何故ゲノセクトの姉妹は拐われたのか?
あのふたりは、何者だったのか?
全てがあまりに突然すぎて、ふたりはただ呆然と無くなった空間を見ている事しか出来なかった…

ただそんな中、ひとり泣き叫ぶ少女の姿がある。
櫻桃はすぐにその声で我に返った。
解らない事を考えていても仕方無い。
今は、ちゃんと助けられる者を助けなければ!と、櫻桃はすぐに気持ちを切り替えていく。
櫻桃は浮遊して、すぐに麻亜守の元に向かおうとした。
その先には削られた空間があったが、勘の良い櫻桃はそれに触れない様にあえて高く飛び、麻亜守の元に降り立つ。
そして左腕が動かない為、右腕だけで麻亜守を優しく抱き締めた。
麻亜守はそんな櫻桃の胸にしがみ付いて、泣き叫んだ。


櫻桃
「ほら! そんなに泣くな〜!?」
「お前は怪我してないだろ?」


麻亜守はそれでも泣き止まない。
むしろ、櫻桃はおかしいと思った。
今の麻亜守は簡単に泣く娘ではない。
いくら訳の解らない相手に襲われたとしても、ここまで泣き叫ぶなんて有り得ない…と、櫻桃は思ったのだ。
すると、その答えを伝えるかのごとく、麻亜守は泣き叫んでこう言った。


麻亜守
「うわぁぁぁぁんっ!! ゲノセクトの…ゲノセクトお姉ちゃんたちが!!」
「怖いよー!! 真っ黒なバケモノが襲いかかって来るーー!!」

櫻桃
「真っ黒な…バケモノ?」

借音
「麻亜守…一体何を見たの?」


借音はそれを探る為、あえて麻亜守の頭に触れようとした。
しかし麻亜守の角に指先が触れた瞬間、借音は吐き気を催しその場で跪いてしまう。
口を手で押さえ、顔を青くして嘔吐感に耐える。
櫻桃は意味が解らなくなり、心配そうな顔で借音を見た。


櫻桃
「借音どうした!? お前まで、一体何を…?」

借音
「ダメェ!! 行ってはダメ!!」
「聖さんが、このままじゃ聖さんが死んでしまう!?」


櫻桃は借音の肩を右手だけで掴み、体を揺らして正気を取り戻させようとした
すると、借音はハッ!?となり、ガクガク震えて櫻桃の胸で震えている。
まるで、とても恐ろしい未来を見た…そんな風に櫻桃は解釈していた。
麻亜守も借音のスカートを掴み、もはや声も出せない様だ。
櫻桃はこの状況に疑問を持ちながらも、冷静に頭を冷やす。
すると、突如空間が開いてひとりの女性が側に現れた…


白那
「…な!?」


それは、城主の白那だった。
異常事態に気が付いた白那は、空間を超えて櫻桃たちの元に現れたのだ。
しかし事態は既に終息しており、白那は異常事態に驚くものの、周りを見てすぐに顔をしかめた。

白那にとっては家に土足で踏み込まれた挙げ句、客人を拐われてしまったのだ。
その内心は、計り知れない程の悔しさがあるであろう。
しかし、悔やんだ所で奪われた者は戻って来ない。
今は、起こった問題に対しての対策を練らねばと白那は考えていたのだ。
そして白那はすぐに空間を操作し、娘の棗を呼び寄せる。



「…冗談じゃないわね、何があったの?」


それが、この日起こった事件の詳細…
未知の敵に対し、白那たちは衝撃受けていた…
しかし、事態は待ってはくれない。
明確に…敵は動いていているのだから。



………………………



ウォディ
「…ふん、まだ誰も来ていないのか?」

ストゥルフ
「の、様です…全く、ウォディ様が直々にお越しになられたというのに!」


そこは、謎の空間。
そんな空間にひとつの部屋があり、入り口と思われるドアが3つある。
そのひとつのドアを開き、部屋の中へふたりのポケモンが入って来た。
先頭を浮遊しているのは、ミュウの『ウォディ』…そしてその後ろを歩くのはエンテイの『ストゥルフ』だ。

ストゥルフはまだ誰も来ていないのが気に入らなかったのか、不機嫌そうに鼻で息を吐く。
ウォディは特に何も気にせず、冷静にひとつの椅子に座った。
部屋の中には大きな円卓テーブルが設置されてあり、椅子の数は7つ…
その内のひとつにウォディは座り、誰かが来るのを静かに待っている様だった。

そして、しばらく待っていると誰かが扉を開く。
ギィィ…と軋む音を響かせ、無音の空間にひとりの女が入って来た。
その女は全身黒寄りの灰色。
髪はポニーテールの長髪であり、頭の斜め上には団子の様に丸めた前髪が付いていて、それが種族の特徴を示している。
首には髪や服と全く同じ色のマフラーを巻いており、その見た目は酷く単色…

服はワンピース型のドレスの様な物を着ており、スカートの丈は膝上辺りで切れていた。
更に、足元にはまるで影に引きずられるかの様な何かが伸びている。
身長およそ150cm程の女は、ウェーブがかった前髪で目元を隠し、やや俯き加減でゆっくりと歩いていた。
やがて、数10秒かけて椅子に辿り着き、彼女は椅子に座る。
そしてテーブルに両肘を着き、ガタガタと貧乏揺すりをして震えていた。
その姿を見て、ウォディはふぅ…と息を吐き、こう喋る。


ウォディ
「お前が最初か…『スカア』」


ウォディはやや睨み付ける様な鋭い目で、その女を見た。
だが、『スカア』と呼ばれた女は何ひとつ応える事も無く、ただ震えながらガチガチと唇を震わせ、右手の親指を噛んでいる。

それを見て、ウォディは更にため息を吐いた…
どうやらいつもの事の様で、ウォディは前髪を右手で書き上げ、やれやれ…と呟いている。

そして、更に扉は開かれる。
次に現れたのは、屈強な体と思われる体を暗い赤色の全身鎧で身を包んだポケモン。
身長は180cm程の巨体であり、背中から真上の方向に輪っかの様な物が付いていて、それが種族の特徴。
輪っかにはいくつか穴が空いており、そこから蒸気の様な物を噴出している。
そして、ガシャガシャと音をたてながら歩き、そのまま無言で椅子に座った。
見た目は男か女かも解らず、顔も赤と黄色の配色のフルフェイスで覆っており、見た目で解らない。
だが、ウォディはその者を睨み付け、知った風にこう話しかけた。


ウォディ
「…『カルラ』か、久し振りだな?」

カルラ
「………」


カルラと呼ばれたポケモンも、言葉は発しない。
立て続けに無視を決め込まれ、ウォディは少しイラッとはしながらも、冷静に頭を抱えて落ち着こうとしていた。
この時点で多くの者は予想出来ただろうが、このメンバーの仲は悪い。
ウォディはかなり傲慢なポケモンであるが、それでもかなり譲歩した上で話しかけていた。
しかし、そんな些細な気遣いが伝わる訳もなく、スカアとカルラはただ他のメンバーが来るのを待っていたのだ…

そんな中、ウォディの側で立っていた側近のストゥルフはこう呟く。


ストゥルフ
「…何と失礼な態度か」

ウォディ
「黙っていろストゥルフ…元々こういう奴らだ」
「この場に来ただけでもまだマシだ…気に入らんがな」


ウォディは肩肘をテーブルの上に着き、顎に手を当てて足を組む。
そしてもう少し待つとまた扉は開き、今度は美しい女性が現れた。
身長は160cm程だが、異様にボディラインが強調されており、巨乳なのが傍目に解る程。
服は漆黒のハイレグだけを着込んでおり、首周りには赤い首輪を着けている。
目はつり目であり、髪は白髪の長髪。
髪は腰の辺りまで伸びる程で、サラリとした美しい毛並みは見る者を見とれさせるだろう。
そしてその女性は妖艶な笑みを見せ、ウォディたちを流し見する。
そのまま、ふっ…と鼻で笑い、いかにもな歩き方で椅子まで歩いて堂々と座った。


ウォディ
「来たか『真姫』(しんき)…」

真姫
「まぁ、たまにはね〜」
「わざわざ全員呼び出す以上、それなりの理由があるんでしょ〜?」


真姫…と呼ばれた女は妖艶に笑って答える。
だが、あまり乗り気でもないのか、真姫はそれ以上何も言わなかった。
ウォディもまた、無駄だと思ったのかそれ以上は何も言わない。
むしろ、ちゃんと答えただけ真姫の方が大分マシだ…とウォディは思った事だろう。
そしてその後すぐに別の扉が開き、また別のポケモンが姿を表す…


ペルフェ
「…何よ、もう4人も集まってたの?」
「意外に真面目じゃないの…ワザと遅れて来たのが馬鹿馬鹿しいわね」

真姫
「あら、こっちはそれなりに真剣なのよ?」
「お前みたいに堕落して生きてはいないんだから…」


真姫はあからさまにペルフェを挑発していた。
ペルフェは相当気に障ったのか、真姫を横目で睨み付ける。
しかし真姫は笑うだけで全く意に介していなかった。
そう…もうお気付きだろうが、この集まりはペルフェを含んだとある一味の集まり。
かつて聖たちに危害を加えたペルフェは、この組織の幹部のひとりとして存在していたのだ。


ウォディ
「さっさと座れペルフェ…後は『チキ』だけだ」


ウォディは冷静にそう促す。
それを聞いてペルフェは、不満そうにしながらも椅子に座った。
そして、そこから無言の時間がただ流れる。
ウォディの言っていたチキという者は、まだ現れない様だ。
そんな中、真姫が業を煮やしたのかこう呟く。


真姫
「…来ないんじゃないの〜?」
「チキの事だから、今頃食って寝てるんでしょ?」

ウォディ
「…否定はしないが、今回だけは特別だ」
「必ず来る……はずだ!」


ウォディは冷や汗を流しながらも、目を細めていた。
確信など何も無い…そもそも、組織とはいえ仲間意識など微塵も無いのだから。
しかし、そんな心配を他所に突如空間が捻れて穴が開く。
そこから現れたのは、ふたりの女性だった。


チキ
「ん〜? もう全員いたのでしゅか〜?」

ポリア
「…正確には全員ではありません」
「『憤怒』のメロディ様は、もはや帰っては来ませんので」


現れたのは、白那城を強襲したシェイミとカプ・レヒレ。
それぞれ、チキ、ポリアと名を持ち、この組織の一員だと言うのは雰囲気的に誰にでも解る事だった。
チキはかなり重そうな体を動かしながらも、椅子へと向かって何とか座る。
椅子はギシッ!とあからさまに軋み、いつ壊れるか解らない位の音をたてて悲鳴をあげていた。


真姫
「…お前、また太ったの?」

チキ
「失礼な! こんなプリチーなレディを捕まえて太ったとか!!」

ポリア
「体重は100sを少し上回る程度です…まだ問題にはなりません」

チキ
「ポリア!? それは機密事項でしゅよ!?」

ポリア
「申し訳ございません」


ポリアは無表情に答える。
それを聞いて真姫は、アッハハハ!と高らかに笑った。
それを見ながらも、ウォディはひとり冷静にため息を吐いてバンッ!とテーブルを叩く。
その音に全員が驚き、場は静寂に包まれた。
そしてウォディは静かにこう話し始める。


ウォディ
「無駄口はそれまでだ…今回集まってもらったのは他でもない」
「新たな『憤怒』が見付かった…それをまず紹介する」


ウォディがそう言うと、全員が俄に注目する。
そして、タイミングを見計らって指をパチンと鳴らし、その後中央の扉が開いてひとりの女性が現れた。
紫のスーツに身を包み、ジェノとは色違いの様な対比のゲノセクト。
しかし、その色は本来のゲノセクトの色でもある。
そして、彼女こそが新たな『憤怒』だというのである。


ウォディ
「憤怒のゲノセクト、『ノーマ』だ…おい、自己紹介しろ」


ウォディが偉そうにそう言うも、ノーマは特に気にした風もなく、椅子に座りすらせずに6人を眺めてこう言う。


ノーマ
「ノーマだ…だが、馴れ合う気は無い」
「私は私の目的の為にここにいる」
「私は誰の命令も聞かない…協力はするが、好きにやらせてもらうぞ?」

ウォディ
「好きにしろ…妹たちは別室に保管してある」
「仕事があればその時に言う…」


ノーマはそれを聞いて、無言で部屋を出て行った。
妹たちのいる場所に向かったのだろう…
彼女は確かにウォディたちの組織に与した。
しかし、彼女の目的はあくまで家族の為。
ジェノとは違う…ノーマはノーマのやり方で妹たちを救うと決めたのだから。


真姫
「…へぇ、格好良いじゃない♪」

ペルフェ
「あら、『色欲』のダークライともあろうお方がレズビアンに?」

真姫
「…冗談じゃないわ、私は美少年にしか興味無いわよ?」
「ただ…ああいう格好つけが絶望する時は、どんな顔するのかしらねぇ〜?」


真姫は妖しく笑う。
その顔はただ自分の楽しみだけしか興味が無い目だった。
そう、彼女は『色欲』…
ダークライであり、対象の夢を貪り色欲を満たす悪魔。
そんな彼女の目は、ただ別の何かを見ている様でペルフェは気分が悪くなっていた。


ペルフェ
「ふん…もう話は終わりでしょ? 私は行くわよ?」

ウォディ
「待てペルフェ…話は終わってない」


立ち上がるペルフェに対し、ウォディは制止する。
するとペルフェはイラついた顔でウォディを睨み、言葉を待った。


ウォディ
「特異点の回収はどうなってる? お前は失敗したと聞いたが?」

ペルフェ
「うるさいわね…そっちこそ別の特異点に負けたって聞いたわよ?」
「無様すぎるんじゃないの? 傲慢のミュウともあろう者が、ただの無能な人間に負けるなんてね〜?」


ペルフェは勝ち誇ったかの様な顔で、ワザとらしく笑って言う。
それを見て、ウォディは明らかに顔をしかめた。
しかしウォディが何かを言う前に、側近のストゥルフが腰の剣に手を当てる。


ストゥルフ
「いかにペルフェ様であろうと、ウォディ様への侮辱は許せませぬぞ!?」

ペルフェ
「へぇ〜? ならどうする気?」
「ただの無能な側近が、この『強欲』のディアンシーたる私に何が出来ると?」


ペルフェは肩を竦め、余裕を持って立ち振る舞う。
ストゥルフは剣を握り、それを抜こうとするが…ウォディに即座に睨まれて顔を青くし、手を止める。


ウォディ
「黙れと言ったのが聞こえなかったのか?」
「無能は無能なりに、主人の命令位聞いてみろよ?」

ストゥルフ
「!?」


ストゥルフはすぐに1歩後ろに退き、無言で頭を下げた。
ウォディの放った殺気はストゥルフを明らかに怯えさせたのだ。
ペルフェはそんな光景を見て、ハッ!と笑った。


ペルフェ
「で? 特異点の捕獲だっけ?」

ウォディ
「そうだ、『王』はアレを望んでいる…貴様といえど、その命令は絶対だぞ?」

ペルフェ
「…そうね、『王』の命令なら従うけど」


ペルフェたちが言う王とは…?
それは、彼女たちの組織に君臨するトップであり、今は詳しく語れぬ存在である。


真姫
「ねぇ…その特異点、私が貰っても良いかしら〜?」

ウォディ
「お前がか? 別に構わんが……」


その瞬間、ブチィッ!と何か肉を引き千切る様な音が会話を途切れさせた。
その音は、『マーシャドー』のスカアが自分の親指を噛み千切った音だ。
ボトボト…とスカアの右親指から血が滴り、テーブルを赤く染める。
そして、嫉妬深そうな目でスカアはダミ声でこう呟いた。


スカア
「…ずるい! 私も…特異点拐いたい!!」

真姫
「あら嫉妬〜? うふふ…お前は『嫉妬』のマーシャドーだものねぇ〜?」

ウォディ
「どっちでも良い…特異点を捕獲出来るなら好きにしろ」

真姫
「あら、そ〜う? ならここは私が……」

スカア
「私がやりたい!! 私も良い男欲しい!!」

ペルフェ
「…話にならないわね、もう行くわよ?」

ウォディ
「…ああ、お前にはもう期待してない」
「だが忘れるなよ? 王は黙示録を望んでいる」

ペルフェ
「…ええ、それは理解してるわよ」


ペルフェは呆れた様な顔でドアを潜り、部屋を出た。
残された者は各々の考えで席を立ち、そのまま部屋を出ようとする。


ウォディ
「カルラ、お前はどうする?」

カルラ
『…何もしたくない、俺は『怠惰』のボルケニオンだから』


カルラは鉄仮面越しにそう言って、ゆっくり部屋を出て行く。
ウォディはそれを眺めながらも、ため息を吐くだけだった。
怠惰のボルケニオン…カルラは一切の興味を示さない。
王の命令があれば渋々やるだろうが、率先してやろうとする存在ではないのだ。


チキ
「ふ〜…ミーたちもさっさと行くでしゅよ?」

ポリア
「了解です、すぐにお食事のご用意を致します」

ウォディ
「待てチキ…お前が本来は特異点を拐う適任者だろう?」

チキ
「嫌ですぅ〜もう仕事はしたですぅ〜」

ポリア
「マスターは既に任務を全う致しました…これ以上のご指示を聞く必要はございません」


そう言ってチキは口を開け、さっさと自分たちを吸い込んで転移する。
ポリアも一緒にその場から吸い込まれ、一瞬にしていなくなった。
ウォディはため息を吐き、残ったふたりを見る。


ウォディ
「で? どうするんだ?」

真姫
「もう良いわ〜、そんなにやりたけりゃスカアがやれば?」

スカア
「うふ…うふふふふふふふっ!! 楽しみ…! 特異点…! 良い、男だと良いなぁ〜♪」


真姫はさっさと諦める。
そしてスカアは嬉しそうに笑っていた。
その姿は不気味の一言。


ウォディ
「ふぅ…なら任せる」

真姫
「私はもう行くわ…欲求不満だし」

スカア
「うふふふふっ!! 特異点は私の物!!」


特異点…その存在は狙われている。
そして、事態は更に動き出していた。
聖戦…黙示録……そして特異点。
果たして…一体これから何が起こると言うのか?
それは…神ですら知る由も無い。










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第3話 『謎の勢力』


To be continued…

Yuki ( 2020/01/26(日) 02:02 )