とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない - 終章 『第七の黙示録』
第2話

「最近、開幕ネタがめっきり無くなって…寂しい、と思う様になったのは、いつからだっただろうか?」

二海
「いや、そんなの知るかっ! つーか、いきなり何なんだ!?」


おのれ…折角今回は何かネタを振ろうかと思ってたのに。
やはり、二海にそれを期待するのは間違いだったという事か。
ちなみに、今俺たちは家にいる。
魔更家のリビングにて、俺と二海…そして二海の旅の仲間である、『ゲノセクト』のジェノがテーブルの向かい側、二海の隣で俯いていた。
その表情は、かなり暗く…相当負けたのが堪えてる様だ。



「ふ…赤いゲノセクトも地に落ちたな」

二海
「追い討ちをかけるなっ!? コイツ荒っぽい性格の割りにメンタル弱いんだから!!」

三海
「ふふ、何だか楽しそうじゃないか?」


二海がツッコミを入れている間に、2階から三海が浮遊しながら降りて来た。
確か守連の部屋で一緒に勉強してたはずだが…
流石に我慢出来ずに飛び出して来たか。
まぁ久し振りの再会だし、姉妹水入らず……



(…とは、いかないか)

ジェノ
「………」


俺はジェノの悲壮な顔を見てそう思う。
戦って負けた相手は、よりにもよって妹だという。
しかも、彼女はその妹を救う為に二海と手を組んで戦っていたらしい。
その戦いに負けたっていうのは、色んな意味でダメージがデカイんだろうな…

二海に関しても他人事では無い。
まさか、幻ポケモン代表のミュウが現れ、母親面して二海を駒にしようとしに来たと言うのだ。
その『ウォディ』と名乗ったミュウは、紛れもなく二海の母親であり、ある意味三海の母でもある。

その性格は傲慢その物であり、自分以外の存在は全てゲームや戦争の駒としてしか見ていないという…
二海の話し方だと解りやすい外道みたいだが、果たしてどんな奴だったのかな?

俺自身、幻のポケモンには何人か会ってる訳だが、皆そこまで極端な悪党って事は無かった。
セレビィの恵里香は時たま悪どそうな事は考えるものの、ネタの範囲でだしそれはギャグで済んでる。

メロエッタのメロディさんは、たまにぶっ飛んでブチキレる事はあれども、真っ直ぐに自分の主張を歌でぶつける良い人だった。

そしてディアンシーのペルフェ…かなり悪寄りではあるものの、その原因は全て人間の悪意が生み出した様な物。
関わった恵里香自身もそれなりに後悔していたし、明確に助けてあげてほしいと頼まれた。
つまり、まだ救いはある悪党ってこったな…
運動会でも、何だかんだで問題は起こさなかったし、きっと救う事は出来ると俺は思っている。



(アルセウスさんに至っては、もう何と言うか神様だからなぁ〜)


あの人は幻扱いで良いのか甚だ疑問なのだが…
まぁ、公式的には伝説とも幻とも言える扱いだし、もうそんなのは全て超越してそうな存在の人だからなぁ〜


三海
「…どうやら、ゴタゴタみたいだね」

二海
「ああ…悪いが、場合によっては一刻を争う」
「聖、お前の力を借りたい…頼めるか?」


「…力を貸すのはやぶさかじゃないが、具体的にどうしたいんだ?」
「俺の雫の力は、願いの難易度が高ければ高い程リスクも増す」
「歴史改変レベルの奇跡を起こそうとすれば、世界その物を壊す可能性もある…って、その辺の仕様はお前には今更か」


二海はため息を吐いて、ああ…と頷く。
二海はかつて三海と一緒に、あの富士と俺の雫を狙っていた。
富士はかつての継承者であり、姉さんの先代に当たる人間だ。

本来、夢見の雫とはポケモンの為にと、アルセウスさんの想いが込められて作られた物。
富士はそんな雫の長い歴史の中で、数少ない人間の継承者って事らしかった。

その富士が二海には雫の仕様を説明していたはず。
まぁ最小限の情報だけで、二海にはデメリットを教えてなかったみたいだが…


二海
「何も歴史を変えたいなんてつもりはない…ただ、ケリを着けたいだけだ」

三海
「お姉ちゃん、ひとりで行く気なのか?」

二海
「…いや、私だけじゃ勝てないのは良く解ってる」
「だから、力を貸してほしいんだ…」


二海はギリ…ッと強く拳を膝の上で握り、俯いて訴える。
あの天下のサイキョーポケモン、ミュウツー様にここまで言わせるとはね。
ウォディ…か、そんなにも強いのか?
ゲーム的には、ミュウとミュウツーじゃ流石にミュウツー有利だと言えそうなんだが。


三海
「甘いぞ聖、二海お姉ちゃんは攻撃に努力値が片寄ってるから、ミュウの『イカサマ』で即死してしまう…」


「そういやそうか…メガXになれば耐性は得られるが、その分弱点増えるしな〜」
「そう考えると、ガン耐久ミュウ相手は分が悪すぎるのか?」

二海
「待て! そもそもウォディは耐久ガン振りする様な偏った努力はしていないぞ多分!?」

ジェノ
「おい…いい加減にしろ」
「話が進まないなら、俺は勝手にやるぞ?」


遂に業を煮やしたのか、ジェノはガタッ!と立ち上がって表情を引き締めていた。
その顔は怒りに満ちている…汚れた顔や服からも荒っぽさは伝わるが。



「協力しないとは言ってないだろ? 慌てるなよ…そもそも相手がどこにいるかも解らないのに」

二海
「その辺は何とかならないのか?」

三海
「いや、そもそも相手は組織だっているのだろう?」
「少人数で攻めて勝てる様な相手なのか?」

ジェノ
「ウォディとか言うのと、ノーマ以外は大した事無ぇ」
「雑兵がいくら出て来ようが、蹴散らすだけだ」


ジェノは軽くそう言うものの、そんな相手に襲撃されて負けてんだから世話は無い。
結局の所、その頭のふたりが倒せなければ話にならないのだ。



(だが、いくらなんでも妙すぎる)


俺はここまで話を聞いて、それしか思えなかった。
前のレヒレの件もそうだが、何で『この世界』でそんな事が起こってる?
今までは『混沌』という世界の形で起こっていた異常が、どうして現実世界に起こっている?

それも、今になって…



(まさか…これが、聖戦(ジハード)の意味なのか?)


それは、恵里香が呟いたキーワード。
フレーズからして、まるで戦争でも起こるかの様な不穏なワードだ。
だが世界は至って平和…今でも、テレビのニュースはいつもの調子で事件やらを語っている。
特に変哲も無く、俺たちにさして影響も無い他県の事件がつらつらと語られているだけだ…

しかし、俺たちの周りでは事件がしっかり起こっている。
レヒレが5年前から潜伏していた可能性。
いや、もっと古く言うなら姉さんがこの世界に来た時点で何かは始まっていたのかもしれない。

その後…アルセウスさんの暴走や、雪さんの来訪。
そして守連たち家族の一斉来訪に、色さんの来訪、大愛さんたちの来訪…
色さんや大愛さんたちの時は、混沌の一環かと思っていたが、実はそうじゃなかったのかもしれない。
後は、ジェノたちの来訪もか…こっちも本当に原因不明だが。



(アルセウスさんは、もしかして全て知っていたのか?)


アルセウスさんは、混沌を予知していた。
そしてその混沌は決して悪意だけでは無いとも。
だからこそ、俺はそこまで悲観して受け止めてはいなかったんだが…

アルセウスさんの世界は、既にギリギリの容量で形を保っている。
それはつまり…



「まさか…消えるはずだった可能性が、現実に漏れ出しているのか?」

三海
「? 何だ…それは?」

二海&ジェノ
「……?」


誰も理解はしていなかった。
そりゃそうだ…これは俺とアルセウスさん、ふたりだけの間で話した事だからな。
家族にはそれを明確には話していないし、喋ったとしてもボカした表現でしか言っていない。

だけど、そろそろ明確に話す時が来たのかもしれない。


悠和
「さ、聖様!! 聖様はいますか!?」


その時、勢い良く玄関の扉が開かれて悠和ちゃんが現れる。
今日は休日だから普段着だけど、えらい慌ててるな?



「これ悠和さんや…そんなミニスカで慌てて走ったら、中身が見えてしまうゾイ?」

悠和
「えっ!? キャアッ! すみません!!」


悠和ちゃんは慌ててミニスカの前を押さえて顔を赤くした。
なお、下着は純白だった…悠和ちゃんらしいな。


三海
「むぅ…聖はアダルティックな黒が好きだと思っていたのに」


そう言って三海さんは自らのミニスカをたくしあげて黒い下着を見せ付ける。
やるじゃない…三海は黒か!
うん、やっぱり黒はエロいよね!?
でも、個人的には白の純粋さが美しいのよ!!
どうせ初めてなら、やっぱり白が良いと俺は思うね!!


二海
「…願望が駄々漏れしてるぞ、エスパータイプの前で堂々と性癖を脳内でさらけ出すな」


「おっとコレは失敬…で、二海さんは何色かな?」


おお、あの二海が珍しく顔を赤くして怯んでいる…
普段から強気なミュウツーらしくどっしり構えているのに、こういう女らしい所はしっかり有るらしい。


三海
「ふっ…私のお姉ちゃんだぞ? 黒に決まっているだろう!」

ジェノ
「いやコイツ実はな…」


ガキィィン!と物凄い金属音がした。
二海が唐突にジェノの頭を殴り飛ばしたのだ。
改造ポケモンとは聞いていたが、本当に某マスクドライダーみたいな体してんのか?
まぁ、当のジェノは全くダメージが無い様だが…

ジェノは頭を軽く擦りながら、呆れた顔でこう言う。


ジェノ
「…ったく、知られたくないならあんなの履くなよ」

二海
「黙れ! コイツにだけは知られたくないんだ!!」


そう言って二海は俺を指差して顔を真っ赤にする。
やれやれ…恥じらいを見せるとはな!
俺の中での好感度をプラスしておいてやらねば!


三海
「くっ!? マインドシールドで心が読めない!?」
「お姉ちゃん、一体何の下着を履いているんだ!?」


「…そこまで知られたくないのか?」


二海は三海の行動を予知していたのか、既に対策を張っていた様だ。
つーか、ちゃんとそういうマインド対策も出来るんだな…


二海
「…三海には後で見せてやるから、聖にだけは絶対に言うなよ!?」

三海
「ま、まさか人には言えない様なエロい奴か!?」
「アレか!? 夜の営み様に、ピー!な部分だけ穴が空いている…」

二海
「違うからな!? そんな機能美に溢れたのは履いてないから!!」


機能美と認めるなよ…まぁ、間違いでも無いが。
ジェノはため息を吐いて頭を掻いていた。
やれやれ…一体何の話をしてたんだっけか?


悠和
「あ、あの…緊急事態なんですけど」


「は? 一体何があったんだ?」


悠和ちゃんはかなりモジモジしながらも、そう言った。
俺は気楽な気分で悠和ちゃんの言葉を待つ。
すると、悠和ちゃんは静かにこう話す…


悠和
「城で、襲撃があって…ジェノさんの妹さんたちが、空間ごと消されたって」


「大事件じゃあねぇかぁ!? 何でもっと早く言わないんだ!?」

ジェノ
「一体どういう事だ!? 妹たちが何で!?」

二海
「落ち着けジェノ! ノーマの言葉を思い出せ!!」


二海がジェノの肩を掴み、そう叫んで落ち着かせる。
すると、ジェノは俯きながらも何か確信を得たのか、目を鋭くして虚空を見定めた。


ジェノ
「…ノーマが拐ったのか?」

二海
「いや、タイミング的に別動隊だろう…」
「だがそれだと厄介だぞ? 敵はウォディとノーマだけじゃない」

悠和
「と、とにかく城に来てください! 白那様も待っていますので!!」


「分かった、すぐに行くよ…三海、守連と一緒に留守番しててくれるか?」
「愛呂恵さんも今日は城にいるし、戻って来れないかもしれないから」


三海はそれを聞いて、分かった…と言って頷く。
そして三海は浮遊しながら守連の部屋に向かった。
俺は改めて二海たちを見る。


二海
「私は付いて行くぞ?」

ジェノ
「俺もだ…妹の事は俺たちでやる!」


「もちろんだ、俺も協力は惜しまない」
「…それに、お前たちだけの問題じゃ無くなりそうだ」


俺はかな〜り不安を感じながらも、悠和ちゃんたちと一緒に靴を履いて玄関を潜った。
すると、すぐに俺たちは城の中にワープする。



「…もう空間を繋いでたのか」

悠和
「は、はい…今は白那様も手が離せないみたいで、とりあえずこの空間だけでも、と」


あの白那さんが、ね…
余程の事態だったと思えるな。
とりあえず、まずは白那さんに会わないと。



………………………



白那
「来たね? 呼び出してすまない…」


「…遅いぞ? 悠和に行かせて何分経ってる?」
「予定より5分はオーバーしてるだろうが…」


「何、悠和ちゃんの下着が白だったのでな…ちなみに三海のは黒だったから、つい論議が熱くなってな」


すると、バンッ!!と藍はテーブルを叩き、ワナワナと震える。
ここはちなみに地下のモニタールームだ。
会議とかにも良く使う場で、主に藍が大体ここで過ごしている。
今は画面に様々なデータが表示されており、その中には見覚えのある物もあった…
どうやら、白那さんは藍と会議をしていた様だな…それで手が離せなかったのか。

だとすると、少々ジョークがくだらなさすぎたな…悪い事を言ってしまった。
ここからは少し気を引き締めねば!
藍も怒りの表情を俺に向けている…おふざけはここからは無しだ。



「バカヤロウが!! 現代に置いて最も支持されているのはセクシー系かプリティー系の2択だ!!」
「特に色で言うなら、ピンクと黒の2強!!」
「あくまで全国アンケート等での結果だが、やや僅差で黒のセクシー系が優勢とも言える!」
「しかし侮るなよ!? ピンクを基本とするプリティー系も人気は絶大だ!」
「大人の魅力を叩き出すセクシー系、子供っぽくても可愛らしさを叩き出すプリティー系の二大派閥は、エロス系ですら足元にも及ばんのだ!!」


藍はクソ真面目な顔でそう力説してくれた。
多分、藍的にはエロい下着を推したいんだろうなぁ〜と、ひしひしと伝わってくる重い言葉に思えた…



「…ちなみに、白那さんの下着は?」

白那
「えっ!? あ、いやオレのは…その、聖君に見せるのはちょっと…」


「可愛いピンク系に決まってるだろうが!? 母さんだぞ!?」
「普段から天然エロオーラ出してても、いざ本番ではあがりまくって恥ずかしさ全開の反則キャラだ!!」
「お前、想像してみろ…? 下着姿の母さんがベッドの上で恥じらう場面を……」


「…いい加減にしなさいっ!」


ドガシャァッ!!と物凄い音がして、藍の顔面がテーブルにめり込んだ。
藍はプルプルとしてたが、しばらくしてぐったりする…
気絶したか…耐久はペラいからな。
ちなみに耐久型のイメージが強いユクシーだが、攻撃種族値はそこそこにはある。
まぁ、アグノムの防御よりかは高いって位には…どっちもどっちだけど。

しかし、藍の後頭部を掴んで腕力で叩き付けるとは…
棗ちゃんは特殊よりも何気に物理が得意なのか?
とても意外な面を見た気がするな…夏翔麗愛ちゃんもどっちかと言うと物理重視だったけど。


白那
「あ、はは…そろそろ、本題に移って良い〜?」


「…全く、これだから藍は」


俺のボケが原因で引き起こしたとは口が裂けても言えないな。
いくらなんでも俺の頭がテーブルに叩き付けられたら、頭部がトマトの様に潰れる事だろう。
ペラいと言っても藍は伝説のアグノムなのだ!
人間とはそもそも体の作りが違う!!

…タブンネ!!


二海
「…で、アレが拐った奴らか?」

ジェノ
「何だありゃ? 緑の毛玉と変な乗り物に乗った水着の女…」


ふたりはモニターの画像を見てそう言った。
どうやら撮影された物の様だが、その形容はある意味正しい。
そして、その片割れを俺は知っている…直接見た事は無いが。


白那
「棗の分析ではあるけど、恐らく『シェイミ』と『カプ・レヒレ』らしい」


「…レヒレに関しては悠和から証言を貰ってるわ、確定で良いわね」


「シェイミィ〜? あの毛玉がかぁ〜?」


俺は表示されている画像の、シェイミ『らしき』毛玉に注目して顔をしかめる。
その姿はどっちかと言うと○リゾーとか○ーモみたいな外見で、その頭頂部に頭が乗っかってるみたいな見た目だ。
そしてその体型はまさしく肥満!
ホントにシェイミかよ…とツッコミを入れたくなるのも当然だろう。
しかし、あの毛玉は服か? それとも地毛?
シェイミならフツー花とか咲くモンじゃないのか?
もう、何かホントに訳が解らない。
身長は隣のレヒレと比較すると、大体120cm位だろうか?
横幅がスゴいが、高さは棗ちゃんよりも少し小さく見えるかな?



「…ぶっちゃけ、確証は何も無い」
「シェイミとしての特性とか技とかそんな物は何ひとつ見られなかったらしいし」


藍は気が付いたのか、顔面を押さえながらもそう説明する。
そのまま藍は様々な画像をモニターに表示させ、順に説明をし始めた。



「まず、奴らはふたり組…現れたのは本当に突然で、突如として城の中に現れやがった」

白那
「転移とかそんな類いの物だとは思う…だけど、オレには何も感じ取れなかった」


「…!」


俺はその言葉に戦慄する。
仮にも空間の神様が、転移を感じ取れなかった…だと!?
それはつまり、空間とかそんなの関係無しに突如現れたってのか?
それか…色さんの様に最初からいた、とか?



「…はっきり言うわ、これは明らかな侵略行為よ」
「…私たちがここに住んでいるのを知った上で、姉妹4人を奪いに来た」


棗ちゃんのその言葉は重い。
何故なら、ここは混沌じゃない…現実世界だ。
そこで、他のポケモン勢力が侵略だって?



「早々に対策が必要だ…だが、相手は神出鬼没ってか」

白那
「…オレの能力で感知出来ない以上、恐らく空間を操作して転移はしてない」
「下手をしたら、現実改変レベルの能力を有しているのかもしれないな」

二海
「現実改変だと…!? そんな無茶苦茶な力、アルセウスでも無ければ……っ!?」


二海は言ってて気付いたみたいだ。
そう、パルキアである白那さんですら転移を感知出来ない。
つまり、それは恐らく白那さんよりも上位者の能力と思われる。
そして、数あるポケモンの中でそれが出来そうなのは…アルセウスさんのみ。

だけど、あのアルセウスさんが俺たちに牙を向く事はもう有り得ない。
俺にも言ってくれた…ただ、この世界で元気に生きてくれる子供たちを見ていたいと。
そんな、そんな皆の母親であるあのアルセウスさんが、こんな侵略行為を命令する訳が無い!

しかし…だとすると、俺たちは最大の敵へとぶつかる可能性があった。



「別の…アルセウス」

白那
「…可能性の話だ」
「他の世界からの侵略…もしそうだとしたら、これはオレたちの手に負えないかもしれない」


あの白那さんがこんな弱音を吐くなんて…
だけど、アルセウスとはいえ倒せない相手では無いはず。
暴走して本来の力が発揮出来てなかったとはいえ、守連たちは4人であのアルセウスさんを打ち倒せたのだから。



「とにかく、事態は予想以上に深刻だ」
「この事はまだ他の家族には伏せておく…パニックになりかねないからな」


「…その方が良いかもしれないわね」
「…特に、ようやくここの生活が慣れて来た所だし」


冷静ではあるが、ふたりもそれなりに不安は強い様だった。
敵の正体もロクに解らない…唐突に現れて唐突に消える。
そんな奴ら相手に、マトモに戦えるのか?


ジェノ
「細けぇ事はもう良い、俺は妹を救いに行く!」

二海
「同感だ、相手が何であれケンカを売られたんだ」
「私にもウォディを倒す理由がある、やられたままじゃ引き下がれない」


「頭を冷やせバカ共…相手がどこにいるかも解らないんだぞ?」
「単細胞が突っ込んでも返り討ちに合うだけだ…コレを見ろ」


藍はそう言って何やら動画を流す。
そこには例のシェイミとレヒレが城に現れた時の物の様だった。
音声は無いが、その時の状況が映されている…

そして櫻桃さん、借音さん、麻亜守ちゃんがたまたま居合わせていた様だ。
その次の瞬間、レヒレは右手をかざして麻亜守ちゃんに『ハイドロポンプ』を放つ。
櫻桃さんはそれを咄嗟に庇い、麻亜守ちゃんを突き飛ばして『ハイドロポンプ』を受け止めていた。
が、その威力に櫻桃さんは押されて吹っ飛ぶ。

シェイミはそんなレヒレと櫻桃さんを見もせずに、真っ直ぐ目の前を見ていた。
そして、何か色々喋っていたが…突然大きく口を開ける。
その後、シェイミの前方に存在した『全て』が、シェイミの口に吸い込まれて行った…


二海
「な、何だコレは?」

ジェノ
「全部、部屋ごと吸い込んだのか!?」

白那
「間違いなく、空間ごと吸い取ったって感じだね」
「だけど、オレの力とは全く異質の能力だ」
「削った空間はそこから自然と元に戻る事は無く、そのまま安定してしまっていた」
「まるで…初めからそこには何も無かったかの様に」


白那さんは険しい表情でそう説明する。
何でもその削られた部屋は虚無の様な物で、空間自体がそもそも存在しないらしい。
白那さんが今は修復して元に戻ってるそうだけど、どうやったらそんな事が出来るのかは白那さんにも全く解らないとの事だ。



「解ったか? こんなバカげた能力を使える相手に正面から攻めて勝てるか…」
「対策を練る必要があるって言ってんだ」


それを聞いて二海とジェノは黙る。
ふたりだって弱い訳は無い、むしろ家族と比べてもかなり強い方だろう。
だけど、今回はそんな単純な強さで勝てる相手じゃ無いって事だな。



「ちなみに、勝算はあるのか?」


「誰に物を言ってる? あの時の絶望ダイヤに比べたら大分マシだ…」


あの時…ね。
守連たちと戦った時の事か。
確かに、その時の状況に比べたら全然希望はあるのか。



「…あの時は相手の戦力が解ってた上で、どうにもならなかった訳だしね」

白那
「はは…あの時はホントに死んだからね〜」


白那さんは笑っているものの、内心は辛い思い出だろう。
俺だってそうだ…今思い出しても、アレだけは2度と体験したくない。
それに比べたら…まだマシ、か。



「こっちには十分な戦力がある…二海たちの話を聞いても、決して倒せない相手じゃ無さそうだ」


「…異常能力があるとはいえ、ポケモンはポケモンよ」
「…レヒレに関しても悠和とはほぼ互角だったみたいだし、こちらの最高戦力を叩き付ければ簡単に勝てると思うけれど」

二海
「問題は、どうやってぶつけるか…か」


相手もそれが解ってる上で、ゲリラ戦を仕掛けて来やがったんだ。
こっちの戦力も把握してそうな雰囲気だが…?


ジェノ
「ちょっと待て、だったらノーマは何で俺の所へ来た?」
「妹を奪うなら、こっちに来るべきじゃ無いのか?」


ジェノはもっともなツッコミを入れる。
もちろんちゃんとした理由は有るだろうけど、ノーマの目的はジェノを倒す事よりも妹たちを奪う事を第1の目的としていた様だし、それなら城に来て直接奪う方が心情的には自然だろう。


白那
「恐らく、あの転移能力は条件が必要だと思われる」
「そしてそれが出来るのは、恐らくあのシェイミの能力…」


「…なら、ノーマやレヒレは単独じゃ飛べないって事か?」


「あくまで推測だ、確証は無い」
「とはいえ、厄介な能力に変わりは無い…探知が全く出来ないんだからな」

ジェノ
「? なら、シェイミとノーマが組めば良いんじゃないのか?」
「わざわざ俺を倒す事を優先する必要は無いだろ?」


確かに不自然だな。
その方が良いのに、そうしなかった。
だとしたら…相手の能力、組織構成、その辺はあんまり万能でも無いのかもしれないな。


二海
「案外、一枚岩とかじゃ無いのかもな…」
「ウォディの性格だと、誰かとつるむって感じはしなさそうだし」

白那
「だとしたら、あくまでシェイミとは限定的に手を組んだとも考えられるか?」


「…仲が悪いのであれば、利害の一致で協力しただけかもしれないわね」
「…となると、益々あの妹さんたちが拐われた理由が解らないけれど」

ジェノ
「ノーマはあくまで妹を返して貰うと言っていた…」
「アイツはアイツで、俺とは違う道で妹たちを救う気の様だった…」


「ちょっと待ってくれ…あまりに気になったんだが、あれ空間ごと吸い込まれたって話だけど、あれで拐ったって言えるのか?」
「むしろ粉微塵になって死んだ!とか、そういう風に見えたんだが…」


「その辺は櫻桃からの証言で判明している」
「アレは間違いなく拐う為に『食った』んだそうだ…」


そういや、櫻桃さんは当事者だったな。
って事は、相手の会話は聞こえてたって事か…
しかし拐う為に食うとか、どんな能力だよ?

とにかく、何もかもが突然始まりかけている。
混沌でもないのに、明確に悪意を持った敵。
恵里香の言っていた聖戦とは…もう始まっているのだろうか?

俺は、何となく嫌な予感はしていた。
だが、それでも俺には皆を守る義務がある。
例えどんな敵が現れようとも、俺は絶対に諦めない。
そして、救えるポケモンは全部救う…この信念だけは、俺は決して曲げはしないのだから。










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第2話 『次第に始まる何か』


To be continued…

Yuki ( 2020/01/19(日) 15:40 )