とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない














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第10章 『過去との決別』
第10話

「………」


皆が既に寝静まった夜、俺はひとり、明かりすら点いていない自室で眠れないでいた。
時刻は既に1時を回っているが、それでも眠れる気がしない。
理由は色々あるが、その中でも特に深刻なのが…


『キミは、狙われていたのかもしれない…』


それは、今日恵里香が放った一言。
先日起こった、隣町での突発イベント。
恐らくは『カプ・レヒレ』が引き起こしたと思われる、あの異空間転送だ。

ぶっちゃけ、未だに謎が多すぎるんだが…それでも後日、悠和ちゃんからレヒレとの関係を聞かされ、俺は愕然とした。



………………………




「…何だって? あのレヒレは、悠和ちゃんたちに便乗してこの世界に来たのか?」

悠和
「…正直、確証はありません」
「ですが…あのレヒレとは間違いなく、互いに記憶のある相手で、アレは危険な存在だと私が思える相手でした」


悠和ちゃんとレヒレは、過去に面識があったらしい。
それも、まだ人化する以前からの関係で、その頃からレヒレとはいざこざがあったと言うのだ。


悠和
「…レヒレは、自分の価値観という物が欠落している存在です」
「あくまで機械の様に、仕掛けに組み込まれたただの歯車の様に、与えられた役目だけを、ただ端的に遂行する存在…」
「その感情の稀薄さは、本当に生きている存在なのかすら怪しいと思える程です」


悠和ちゃんはベッドのシーツをギュッ…と握り締め、当時の事を思い出していた。
今俺たちがいるのは、『旅立ち荘』にある、悠和ちゃんの部屋。
あの戦いの後、悠和ちゃんは翌日学校を休んでおり、俺は放課後、お見舞いがてら話を聞きに来ていたのだ。



「…そんな事が、起こりうるのか?」
「ただ俺を見て、興味を持っただけで、それで5年前のこの世界に紛れるとか…」

悠和
「あくまで、全て私の推測です…裏付ける確証は何ひとつありません」
「ですが…私が抱くこの不安は、聖様に何か悪意が近付いているのではないかと…」


悠和ちゃんは俯いて軽く震える。
俺としても軽く恐怖はある…が、何とも言えない。
あの世界が俺たちを閉じ込める為だったとしたら、何で死人が出て来た?

幽霊と対面とか、そんなイベントが必要だったのか?



「…万丁君や、悠和ちゃんには、死んだ人と再会したいなんて思いも希望も無かったんだよな?」

悠和
「…万丁君の事は何とも言えませんけど、私には特にありませんね」
「聖様から話を聞く限り、意図的に死人と合わせた…としか思えませんが」


「理由が解らない、何でそんな事をした?」
「少なくとも、あれじゃあ逆に感謝される立場だぞ?」


現に、組長さんなんかは相当感謝してるみたいだった。
赤城さんもそうだ、少なくともあの世界での再会は、確実に意味があった。
そしてそれは、憎むべき事件ではなく、むしろ感謝すべき奇跡。
どうやっても、レヒレを憎む事には繋がらない…


悠和
「…聖様のお気持ちは解ります」
「ですが、アレはそんな殊勝な事を考える存在ではありません」
「どんな結果が出ていた所で、アレは目的の為に無感情に動くだけのマシーンなのですから…」


「…何故、そんなレヒレが俺たちにあの出会いを?」


悠和ちゃんは無言で俯いたまま…
そこからはこれ以上の推測も出て来ない様だ。
結局…真意は不明、か。



「レヒレは、過去に何をやったんだ?」
「少なくとも、悠和ちゃんがブチ切れる程の事をやったんなら、相当な事だと思うが…」

悠和
「あれは、白那様たちの戦いが終わった後です…」
「白那様たちが守連さんたちに負け、夢の世界が無くなった後の事…」


俺は思い出して少し、胸元を握り締めた。
あの時の戦い…ただただ悲しい思いしかなかった、あの惨劇。
説明は今更だから割愛するが、詳しくは前作を読んでくれ…だな。

で、その後って事は、悠和ちゃんたちが旅館を経営してた頃か。


悠和
「…私たちが元の世界に戻った後の事ですが」
「その前に、私の事を少し話します…」
「私は、本来人工的に作られたポケモンで、あの世界においては謎の存在でした…」


「謎、か…確かに、冷静に考えたら妙だよな」
「人工的にって、一体誰が悠和ちゃんを造ったんだ?」
「人間のいない…ポケモンだけの世界で?」


それは、悠和ちゃんですら答えられない疑問だった。
素朴な疑問で、答えが解らない疑問。
考えれば誰でも疑問に思う事だが、その答えは全く解らない。
瞳さんは、皆捨て子で白那さんに拾われてたって言ってたが…


悠和
「私は、自分の出生については何も覚えていません」
「ただ、気が付けば野性のポケモンとして生きていて、気が付けば城に招かれていた」
「…そして大災害が起こる際に、当時の白那さんの空間剥離に巻き込まれ、明海さんたちと共に城でメイドをする事になったのです」


何気に初めて聞いたな…つまり、悠和ちゃんは元々同じ世界出身でも、当時明海さんたちとは面識が無かったのか。


悠和
「…当時の私は、野性の獣同様で、誰にも心を許す事無く、白那様たちを困らせる存在でした」
「それでも時間が経つに連れて、私は段々白那様たちの優しさに絆された…」
「時間はかかりましたが、やがて私はメイドとして頑張る様になり、そして初めての生き甲斐を手に入れたんです…」


悠和ちゃんの顔は暗い。
だけど、後悔してる訳じゃない。
ただ当時の自分を思い出して、少し嫌になったんだろう。
誰だって、黒歴史のひとつはあるもんだからな…



「それで、レヒレとは何が?」

悠和
「私は、人化する前にレヒレと既に戦っていました」


俺は絶句する。
つまり、野性の『タイプ:ヌル』として、レヒレと…?
悠和ちゃんは少し顔を上げ、そして何かに耐えるかの様な表情でゆっくりと語り始めた。


悠和
「当時の私は、ただの野性ポケモン」
「しかも出生不明で、レヒレからすればただの異端者」
「そんな私とレヒレがぶつかるのは、ある意味必然でした…」
「ですが、当時赤ん坊にも等しい私が、仮にも神であるレヒレに勝てるはずもなく、私はほぼ一方的に打ちのめされるのみ…」
「何度も、何度も打ちのめされては立ち上がる日々を、私はひとりで生きていました」


俺は息を飲む。
今の優しい悠和ちゃんからは考えられない人生だ。
ましてや、当時の悠和ちゃんは生まれて間もない位。
そんなただの赤子の様な悠和ちゃんが、神と崇められるレヒレに淘汰されていたとは…


悠和
「…実の所、それ自体は問題ではありませんでした」
「当時のレヒレからすれば、ただ部外者の私を追い出そうとしただけでしょうから」


「…なら、何でそこまで悠和ちゃんはレヒレを憎む様になったんだ?」


先日の話を聞いた限り、悠和ちゃんは相当レヒレを憎んでいる様だった。
最悪、道連れにしてでも殺すつもりだったららしいからな…
悠和ちゃんらしからぬ殺意を持っていたのは、確かみたいだった。


悠和
「話を戻しますが、あれは私たちが再び元の世界に戻った後です」
「私は人化したまま元の世界に戻り、再びレヒレと相対しました」


「…そうか、そこまで戻ったんなら、そりゃ同じ様になるわな」


皆そのはずだ。
騰湖や鳴も、過去からやり直して死の運命を変えたと言っていた。
浮狼さんなんかは、ただ弱き人を救いたいが為に、ひたすら戦い続けた。
白那さんたちだって、ただ俺の為にと、それまでロクにしなかった戦闘訓練までやって…

悠和ちゃんもまた、新たなスタートとして自分の運命に抗おうとしたのかもしれない…


悠和
「…今思えば、問題は既にそこから始まっていたんです」


「…何、だって?」


悠和ちゃんの言葉は、酷く重かった。
その緊張感は尋常ではなく、その意味の重さがこちらにも伝わる程。
それ位、悠和ちゃんのその発言は重みが感じられたのだ。


悠和
「当然ですが、レヒレも人化をしていました」


「そりゃ、そうだよな…あの悶々だってそうだったんだし」


基本的に原因不明だが、あの世界は全ポケモンが人化を果たしていた。
もしかしたら、夢見の雫が造った世界の理が影響しているのかもしれない…って、藍たちは予想してたみたいだが。


悠和
「…問題は、レヒレがそのまま私を襲って来た事です」


「…? レヒレからしたら、部外者の排除だろ? 当然なんじゃ…」

悠和
「それは、私が当時彼女のテリトリーを侵したからです」
「当時の私は野性の獣同然、餌を取る為に森を荒らし、他のポケモンを襲ってでも生きようとしていました…」
「それが土地神たるレヒレのルールに触れたからこそ、私は襲われたはずなんです」


俺はそうか…と納得する。
いくらレヒレが機械的でも、ルールを守ってる相手にただ攻撃を仕掛ける程、キラーマシーンという訳でもない。
つまり、城で精神的に成長した悠和ちゃんが、他者を傷付けてまでレヒレの領域を荒らす理由が無いって訳だ。

なのに…レヒレは悠和ちゃんを襲った?



「待ってくれ…じゃあ、何でレヒレは悠和ちゃんを?」

悠和
「…ここからは、あくまで私が身に受けた事からの推測です」


悠和ちゃんは、真っ直ぐ俺の顔を見てそう言った。
その顔は不安に満ち、そして自らの唇を牙で噛んでいる。
そして、耐える様な表情で悠和ちゃんはこう言った。


悠和
「…私たちの世界に訪れた、あの大災害」
「それを起こしたのは、他ならぬレヒレだったんです」


「!? 何…だと?」


それはまさかのカミングアウトだ。
世界のポケモンをほとんど死滅させた大災害が、レヒレの仕業だって…?


悠和
「…確信も無い、あくまで私の推測ですが」


「でも、悠和ちゃんはレヒレが犯人だと思ってるんだろ?」

悠和
「…はい」
「問答無用でレヒレに襲撃された時、私は説得を試みました」
「ですがレヒレは聞く耳を持たず、他のポケモンを巻き込んででも私を排除しようとした」
「私はそんなレヒレに怒りを覚えながらも、説得を諦めて逃亡を決意したんです…」
「恐らく、あのレヒレは暴走しているのだと、当時の私は判断して…」


暴走、か…確かに、自分のテリトリーに住んでる住民を巻き込むってのは、疑問が出るもんな…
悠和ちゃんが敵意を持ってなくても、それでもレヒレは悠和ちゃんを排除しようとした。
その理由は…一体何なんだ?


悠和
「逃亡生活は、大災害の日まで続きました」
「幸い、レヒレは自分のテリトリーの外にまで出る事は無く、そこから逃げる事で私は難を逃れられたのですが…」
「ですが、私はその時見てしまったのです」
「あのレヒレが、テリトリーを全て消滅させて、大災害を引き起こしたのを…」


俺は?をいくつも浮かべた。
唐突過ぎる展開に、俺は頭が追い付かない。
レヒレが自分のテリトリーを消し、大災害が起こった?


悠和
「理由は今を持って不明です」
「ですが言葉通り、レヒレのテリトリーはその時消えました」
「本当に、その大地だけを一瞬で削り取った様に」


「削り…取った? ガオンッ!みたいな感じか?」

悠和
「え、えっと…○波紋の事は解りかねますが」


知ってるじゃん!!
そこまで解ってたら大体通じてるよ!!
まぁ、クリームかザ・ハンドかは解らんがな!


悠和
「と、とにかく…そんなイメージで良いかと思います」
「それが原因と思われ、その後一気に大地震が起き、地殻変動と共に、世界の大地はバラバラになったのです…」


削り取った…か。
それが原因で地殻変動ね…俺はそういった分野の事はよく解らないが、有り得なくも無いって事かね?
まぁ、とにかく…その話を聞く限りじゃ、確かにレヒレが怪しいわけだが。



「…レヒレにそんな事が出来るのか?」

悠和
「問題はそこです…ただのカプ・レヒレに、そんな事が出来るとは思えない」


悠和ちゃんも自分ではそう思ってたのか…
だけど、他に原因も解らないし、理由も解らない。
ただ、悠和ちゃんにとってはレヒレがそうだとしか思えないって、だけ…か。


悠和
「レヒレが神と呼ばれているとはいえ、それでもあくまでポケモンでしかない」
「昨日みたいな、黄泉の世界への入り口は操れるかもしれません…ですが」


「空間ごと削り取った…って言うなら、どっちかって言うとパルキアの能力って感じだな」


そう、近い能力を俺たちは知っている。
空間ポケモンである白那さんがその気になったなら、世界の大地を削る位は出来そうではあるからな…
とはいえ、あくまで一例だ。
あの優しい白那さんが、そんな暴挙を働くとは思えない。


悠和
「…私の推測は、やっぱり間違っているのでしょうか?」


「少し待っててくれ、恵里香に1度聞いてみる」


俺はそう言って、ズボンのポケットからスマホを出す。
そしていつもの様に、俺はそれを耳に当てて連絡を取った。



「お前はレヒレの仕業だと思うか?」

恵里香
『…どうした物かな』


俺はいきなり?を浮かべる。
恵里香の奴、何かを考えている様だったが…
少なくとも、いつもと違ってどこか迷っているかの様な口調にも感じたが。



「…お前は原因を知ってるのか?」

恵里香
『確証は無い…と言っておくよ』
『だけど…それは正直、ボクが知り様も無かった事実でもある』


俺はその言葉の意味を探す。
恵里香は時折、順序を無視して結論から言う癖があるからな…
今回の口振りも、恐らくそれだ。
恵里香の奴、何か確信めいた物が本当はあるんじゃないのか?


恵里香
『聖君、ここと再接続出来たタイミングは覚えているかい?』


「…ん? 確か、富士の世界に巻き込まれた時だな」


懐かしい話だ、実に67話位前の話だぞ。
しかし、それが一体…?


恵里香
『悠和ちゃんの話を聞く限りだと、レヒレが潜伏し始めていたとされるのは、アルセウス浄化後…』


「ああ、そうなる予想だな…だが、それが本当かは……」

恵里香
『どうして、5年も前に転移したと思う?』


「………」


全く解らない。
そうなんだよ…そこがとにかく意味不明なんだ。
そもそも、雫の願いに便乗して来たなら、どうして5年前なんだ?
現代じゃなきゃおかしいだろ?


恵里香
『…出来れば、これから言う事は誰にも言わないでほしい』


「どういう、事だ?」


恵里香の口調は、あまりに緊迫感のある物だった。
それは、今まで俺が感じた事の無い物で、まるで別人の様な恵里香の重圧。
そして恵里香は、淡々とした口調で、やや機械的に言葉を放ち始めた…


恵里香
『キーワードは、聖戦(ジハード)』


「……?」


俺は一瞬口に出しそうになったが、慌てて口を塞ぐ。
悠和ちゃんが不思議そうな顔で見ているが、とりあえず聞かれなかった様だ。
しかし、聖戦って…?


恵里香
『キミは、狙われていたのかもしれない…』
『今言えるのは、それだけだよ…』
『ゴメン、時がくれば…必ず理由は話すから』


恵里香はいつもの様な口調に戻り、そして一方的に通信を切った。
俺はスマホを耳に当てたまま、呆然としてしまう。



(聖戦だと…? 何だそりゃ?)


ジハードつったら、確かイスラムの言葉だっけか?
詳しい事はググってくれ、だが…
それはポケモンたちにとっての、聖戦って事なのか?

俺は想像して嫌な予感しかしてこない。
また、かつてのアルセウスさんの暴走の様な、そんな悲劇が起こるって言うのか?



(恵里香は時が来れば、と言ったが…)


これはつまり、レヒレだけの仕業と決め付けるのは早いのかもしれない。
もしかしたら、他の誰かも共謀して何か計画してるんじゃ?


悠和
「あの、聖様?」


「…悪い、恵里香でも解りかねるそうだ」
「もし、レヒレが先に紛れていたとしたら、それは恵里香が見れる範囲じゃないしな…」


俺は勝手にそう決め付けた。
恵里香には何か秘密がある…だけど、それを明かすわけにはまだいかない。
だったら、俺は信じてやる事にした。
前の阿須那の件もあるし、余計な言葉は混乱を生む。
今は、現状維持で何とかするとしよう。


悠和
「そう、ですか…そうですよね、恵里香さんは5年前からこの世界だけを見てはいないでしょうし」
「となると、レヒレにはもしかして協力者が?」


「可能性は高いな…世界を削り、5年前に跳ばす…」
「そんな事が出来る、規格外の存在がいるのかもしれない…」


あくまで、想像でしかないがな。
しかし、俄にキナ臭くなって来やがった…
もしかして、相当ヤバイ事になってるんじゃなかろうか?
だとしたら、今度はどうなる?

俺は…皆を守れるのか?



(違うな…守るんだ! 俺は、俺らしくあれ…!)


俺は神様の言葉を思い出す。
自分を信じて、正しいと思う事をする!
そうすれば、きっと道は開くさ…今まで通り。



「…そろそろ、戻るよ」

悠和
「あ、はい…明日は私も学校に行きますので」


俺は、ああ…と笑って手を振り、悠和ちゃんを安心させる。
不安になんかさせちゃいけない。
何か、とんでもない事が世界に潜んでいるかもしれないが、何があっても俺は家族を守ってやる!!



………………………



恵里香
「とうとう、その時が来るのか…」


暗い、暗い闇の中…ボクはひとり、孤独のままに歩く。
どこまで歩いても、終わりは無く、そもそも始まらない。
この時空の最果てという、全てが終わった世界では、もう何も始まらないのだから…


恵里香
「聖君、ゴメンね…」


ボクは謝る事しか出来ない。
元はと言えば、ボクのせいでもあるのだから。
だけど、その理由はまだ話せない。
じゃないと、きっと誰も信じられなくなるから…


恵里香
「ペルフェ、メロディ…キミたちは、それで良いのかい?」


私は、ここからでは見えない世界にいるであろう、友の名を呼ぶ。
そして、ふたりも必ず関わる事になる。
それこそが、ボクたちに課せられた咎。

聖戦は近い…その時、ボクは。


恵里香
「…例え、嫌われても良い」
「ボクは、聖君の為なら、何だって出来るんだから…」


それでも、今は何も出来ない。
それこそが、ボクの咎であり、枷…
解っているのに、どうすれば良いのかも知っているのに。
それでも、何も出来ない…いや、違う。


恵里香
「何も、しない…それこそがボクの『怠惰(たいだ)』だ」



………………………




(聖戦、ジハード、狙われていた?)


いくつかのキーワードはある。
ここから察しろって事なんだが、皆目見当がつかない。
カプ・レヒレが俺を狙ってた? それも5年前から?
何で悠和ちゃんを襲った? ただの暴走?



(夢見の雫…まさか、それが狙いとか?)


規格外の何か。
それを考えた時、まず俺はそれが頭に浮かぶ。
神だろうが、悪魔だろうが、その奇跡の前には全てが等しく扱われる。
世界を想像した神が造りたもうた、最大最高のチートアイテム。

だが、それは決して俺だけが使えるという能力でもない。



(もし、俺以外の誰かがそれを奪えば、たちまちに世界は滅ぶ可能性が出て来る)


夢見の雫は、良くも悪くも無邪気な存在だ。
その願いは誰にでも叶えられ、その悪意をそのまま具現化しかねない。
創造主であるアルセウスさんですら、その悪意を浄化しきれずに暴走してしまった事があったのだから…



(俺は、あの時の無邪気な子供じゃない)


もう、アルセウスさんを暴走させたりはしない。
約束もした、俺は神すら救うと。
だからこそ、俺はこの雫を守らなきゃならない。



(最悪、俺の命を絶ってでも)


あくまでこの雫は俺と共にある。
俺が死ねば、雫はランダムに継承者を選ぶ事だろう。
そうなったら、しばらくは誰も手が出せない。
悪意ある相手に奪われる位なら、俺は死んだ方が世界の為って事だな…



(はっ、言っててアホらし…)


俺は眠れそうにないまま、両手を後頭部に当てて暗い天井を見る。
このまま俺は朝まで、ただただ考えるだけだった…



………………そして次の日の朝




「なぁ、素朴な疑問なんだが…」

阿須那
「どないしたんや急に?」


「皆が今まで出会ったポケモンの中で…1番弱いポケモンって…どんなヤツだ?」

女胤
「どんな者であろうと、ポケモンにはそれぞれ、その個性にあった適材適所があります」
「ドレディアにはドレディアの…」
「キュウコンにはキュウコンの…」

阿須那
「つまり、ポケモンにも同様『強い』『弱い』の概念はあらへんな」

愛呂恵
「それが生きるという事ですね」


「質問が悪かった…子供が遊びで話す『ミュウツーとルギアはどっちが強い?』そのレベルで良いよ」

阿須那
「…コイキングやろ、やっぱ?」

女胤
「いえ、最近では『ハイドロポンプ』を習得して、イワークさんを瞬殺可能とすら言われています、一概には言えないかと」

華澄
「とはいえ、イワークには『頑丈』の特性もありますし…耐えられればコイキングも辛いのでは?」

守連
「でも、最近はイワークも『諸刃の頭突き』を使えるって聞くし、『石頭』の特性も有用だよ?」

愛呂恵
「やはり、一概には言えないのでは?」

三海
「ふむ…だったら、めざパ廃止で『悪あがき』しか出来ないアンノーンはどうだ?」
「少なくとも、誰相手にでも4ターン以内に負けれるぞ?」

阿須那
「いや、流石にアンノーン出すならめざパ復活するやろ?」

女胤
「確かに、そうでないと問題ですが…」

華澄
「むぅ…でしたらその時はアンノーンでも新たに習得技を得られるのでは?」

守連
「『サイコキネシス』とかあったら、結構怖いよ〜」

三海
「確かに、特攻種族値は72だから、その辺の耐久ポケ並にはあるな…」


「つーか、そもそもハイポンはタマゴ技だからここは除外だろ」

愛呂恵
「だとすると、トランセルは何も出来ませんが…?」

阿須那
「そうなったらPP的にコイキングの方が有利やな、悪あがき位なら耐えるで?」

女胤
「そもそも、『体当たり』を全弾耐えるのも難しいのでは?」

守連
「急所に当たったら大変だよ〜」

三海
「待て、そもそも最弱を決めるならLv1で議論すべきだ」
「そうなれば、攻撃技の無い奴は他にもいるだろう?」

阿須那
「ハネッコとかラルトスやな…」

守連
「種族値ならヨワシは〜?」

女胤
「ヨワシは『みずでっぽう』があるので、Lv1素組みルールならむしろ強キャラですわ!」

華澄
「Lv1素組みですと、格差も無くなりますからな…」


「つーか、結論出なくね?」

阿須那
「悪あがき合戦になるなら、Lv1やと素早さもほとんど差が無いしな…」

女胤
「つまり、どうやっても運ゲー…」

愛呂恵
「ある意味真理と言えますね…」


どうやら、それが限界の様だ。
つーか、いきなりなにやってんだ俺たちは?
気が付いたら最弱議論で盛り上がっちまったぜ!



「やれやれ、そろそろ学校行かないとな…」

愛呂恵
「はい、お弁当をお忘れなく」


俺は愛呂恵さんから弁当を受け取り、それを鞄に入れて鞄を肩に担いだ。
そして、行ってきま〜す、とだけ言い、俺はひとり外に出て、いつもの様に学校へ向かうのだった……











『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第10話 『謎と疑問…聖戦とは?』

第10章 『過去との決別』




To be continued…

Yuki ( 2019/11/26(火) 10:03 )