とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第10章 『過去との決別』
第4話

「…どういう事だ?」

白那
「何か問題でも?」


俺様は部屋の外から風路と阿須那の戦いをモニターしていた。
あくまで超能力によるモニターで、例によって俺様はタブレットPCで映像を映らせていたのだ。
そして戦いの結果を見た時点で、俺様は疑問を抱いていた。

ちなみに、モニターでの映像は一旦録画してから流しているので、ちゃんと等倍速で流れている。
100倍に時間が加速されてる中じゃ、見ても意味解らんからな…



「…風路が阿須那に勝った」

大愛
「…? それ自体に何の問題がある?」


「問題はあるだろ…仮にもCP差が1.5倍もある相手に、初見でジャイアントキリングか?」
「油断しまくりで舐めプレイの阿須那にも相当問題あるが、それだけでこの結果が出る程、阿須那のレベルは低くない」

白那
「だったら、風路ちゃんのレベルがそれだけ上がったって可能性は?」


俺様は顎に手を当てて考える。
確かに、稀にある事はある。
たった1度の戦闘で一気に成長する奴とか…
だが、風路はそのタイプとは思えない。
俺様の見立てでは、風路がそこまで成長するにしても、もっと段階を踏んでと予測してたんだが…


大愛
「どの道、結果が全てだ…風路は強くなった、それで良いのではないか?」

白那
「…同感だけど、引っ掛かる部分はあるね」


「もう少しモニタリングしたいな…母さん、瞳を呼んでくれ」

白那
「まさか、あえてぶつける気? 瞳ちゃんは格闘戦なら、かなりレベルが高い娘だよ?」


だからこそなんだけどな…
阿須那はあくまで中〜遠距離タイプのポケモンだ。
対して風路は、ガン攻めのインファイター。
それなら、あえて同じ土壌の家族をぶつけてやる方が解る事も多い気がする。

その結果次第じゃ、今後の方針も固まりそうだからな。



「…とにかく、今すぐだ」
「そろそろ中では回復が終わる頃だろ? 阿須那は外に出る様に伝えてくれ」

白那
「…解った、藍がそこまで言うならそうしよう」


母さんはそう言って目を瞑り、『テレパシー』で中の阿須那に説明をする。
そしてすぐに右手を振るい、瞳をこの場に転送させた。
瞳は寝る前だったのか、寝巻き姿で目をパチクリさせている。



「…こ、ここは?」


「急に呼び出して悪いが、命令だ」
「今から、この部屋に入って風路と戦ってもらう」


瞳はかなり驚いた表情で目を見開く。
状況が掴めていない様で、何故そうなるのか理由が欲しい様だった。
俺様は頭を掻き、ため息を吐く。
つい癖だな…何でも伝わってると思い込んで、それ前提で段取りを組むのは俺様のちょっとした欠点だ。

これが愛呂恵なら言う前に理解するんだが…まぁ流石にアイツと比べるのは酷だからな。



「安心しろ、あくまで訓練の一環だ」
「今、中では阿須那と風路が戦い終わった、そろそろ阿須那が出て来るだろう…」
「お前は、それと入れ替わりに入って、風路と戦闘訓練をしてもらう」


「風路さんと…ですか?」


「そうだ…ちなみに、訓練では阿須那に勝ってる」


それを聞いて瞳は更に驚く。
阿須那の強さは瞳もそれなりに解っているだろう。
そして、そのラインの戦闘力がどれだけヤバイかも。
瞳は少なからず気を引き締め、胸に手を当てて目を瞑った。
やる気にはなってるな…



「…了解しました、ですが先に着替えを済ませても?」

白那
「それは中で出来るよ…生活空間は一通り揃えてるから、自由にやると良い」

大愛
「中の空間は時間が100倍に加速している、外の時間は気にするな」
「必要であれば、こちらで強制的に回収する」


それを聞いて瞳は納得し、軽く体を動かした。
さて…これで、どんな結果が出る?
俺様の予想はまた外れるか?



………………………



風路
「う…?」

阿須那
「目覚めはりましたな…」


私は目覚めると、そこには寝室の天井が見えた。
どうやら、あの戦いから気絶したらしい。
記憶がやや曖昧で、何となくしか思い出せない…
結局、どうなったのだろうか?


阿須那
「…とりあえず、ウチはこれであがりますわ」
「風路はんの気迫…しっかりと刻みましたわ」


そう言って、いつの間にか着替えていた阿須那ちゃんは出口の扉を開いて出て行った。
そして、入れ替わりに現れたのは…



「………」


瞳ちゃんだ。
瞳ちゃんはペコリとお辞儀をし、すぐに棚を漁って着替えを探す。
今彼女はパジャマ姿で、緊急で呼び出された…という感じが見て取れた。


風路
「あ…えっと、瞳ちゃんはどうして?」


「…戦闘訓練と聞いています」
「風路さんと戦えと…私は命令を受けています」


私はすぐに頭が切り替わる。
つまりは、刺客…!
私にぶつける為に、瞳ちゃんが選ばれたって事か。

確か、瞳ちゃんは混沌を乗り越えて進化したと聞いている。
その際、かなりのパワーアップを果たしており、その力は家族の中でもかなりのレベルだと聞いた。
果たして、今の私が勝てるだろうか?



「あの阿須那さんを倒したと聞きました…流石は風路さんですね」

風路
「!? あ…い、いやそれは…阿須那ちゃん、きっと油断してたし」


瞳ちゃんは着替えながらも冷静にそう言ってくる。
私はそれに対して目を反らして狼狽えるだけだった。



「例え油断してたとはいえ、阿須那さんを倒すなどそうそう出来る事ではありません」
「私程度でどこまでやれるか解りませんが、全力でお相手させていただきます!」


瞳ちゃんは真剣な顔でこっちを見る。
私は空笑いをするものの、俯いて気持ちを切り替えた。
これは、ある意味チャンスだ。
ポケモンは戦えば戦う程強くなれる。
瞳ちゃんとの戦いで強くなれれば、例え負けてもそれは意味があるのだ。


風路
(やろう…! 私に足りない物は、この場で身に付ける!!)



………………………



風路
「………」


「………」


私たちは無言で相対する。
閉鎖された空間でふたりだけが存在していた。
瞳ちゃんは落ち着いた顔で無造作に立っている。
服は、何故かチャイナドレスを着ていたけど、何か拘りでもあったんだろうか?



「……!」


瞳ちゃんはゆらりと構えを取る。
それはまるで中国拳法の様な構えで、隙など見当たるはずもない。
私は冷や汗を流しながら、両腕を上げてガードを固めた。
多分、スピードじゃ話にならない。
せめて組み付ければ…

しかし、私の予想を遥かに越えて瞳ちゃんの動きは『神速』だった。
瞬きもしない内に、瞳ちゃんは私の懐に踏み込んで拳を握っていたのだ。


ドボォッ!!


風路
「がはっ!?」


「…!」


瞳ちゃんの右拳が私の腹にめり込む。
私は悶絶するも、すぐに歯を食い縛って拳を振り上げる。
この距離は私の距離でもある! 手を出さなきゃ…!!


風路
「!?」


瞬間、私の目の前から瞳ちゃんは消える。
私はそのまま誰もいない空間を殴り抜け、体勢を大きく崩した。
次の瞬間、私の横に回り込んでいた瞳ちゃんが私の足を払って転ばす。
同時に膝で私の顎はカチ上げられ、私は口内を切って血を吐く。

私は、あっさり吹っ飛んでダウンしてしまった。


風路
(は、速い!! 単純に体捌きのレベルが違うの…!?)


瞳ちゃんは単に突っ込んで殴り、私の行動を見てからカウンターを仕込んだだけ。
あまりに単純過ぎる故に、レベルの差が明白だった。



「………」


瞳ちゃんは構えを取り、冷静にこっちを見る。
阿須那ちゃんと違って、全く油断は見当たらない。
それだけに、付け入る隙は皆無だ。
私程度の体術じゃ、多分触れる事も難しい。


風路
(『追い風』でスピードを高める? いやダメだ、お互いに近距離戦闘が望みなら、その差を埋める事は難しい)


追い風はあくまで移動速度を上げるのが目的。
瞳ちゃん程の腕なら、軽く捌かれてしまうだろう。
だとしたらどうする? 遠距離攻撃?
そんな物は牽制にすらならない…一対一のこの状況で、瞳ちゃんの行動を阻害する事も出来ないだろう。

なら、どうする?
どうやって、攻撃をする?


風路
(たった、あれだけの攻防で…ここまで絶望的に思えるの?)


私は良くも悪くも、愚直に攻めるしか無い。
搦め手する技も無ければ、遠距離から攻め立てる技も無い。
ただ突っ込んで、接近戦で拳を交えるだけ。

ただ、今回はそれをやる事がそもそも危険地帯。
瞳ちゃんの本領こそ、その接近戦なのだから…!


風路
(それでも…! 私はやるしかないんだ!!)


私は頭を切り替えた。
もう、出来る出来ないじゃない。
やるかやらないかだ。
私にはどっちにしても選択肢なんか無いんだから。


風路
(とにかく、踏み込む! 踏み込まれても慌てるな!!)


「!!」


私は『電光石火』で真っ直ぐ突っ込む。
瞳ちゃんは構えを解かずにそれを待っていた。
明らかにカウンター狙い、だったら私はこういう戦法を取るだけだ!



「!!」

風路
「!?」


私がタックルで捕まえに行こうとした瞬間、瞳ちゃんはそれを読んだのか体をスライドさせて回避する。
その動きはまるで流水の如く…流れる木の葉が岩を避ける様に、全く無駄の無い動きで私の横に回った。

瞬間、蹴りで私の顎が蹴り上げられる。
上体を完全に起き上がらせられ、私は無防備に怯まされた。
瞳ちゃんは、そんな私に対して拳を振るう。
固く握られたその拳は私の鳩尾へと正確に突き刺さり、私は呼吸困難になって後ろへと吹き飛んだ。

コンクリートの床を転がりながら、私は無様に倒れる。
どうすれば良いの!? こちらから攻めても、待っても返される。
こんな相手に…どう戦う!?


風路
(違う…! 負けるのは、諦めた時だ…!!)


私は大きく息を吐いて立ち上がった。
まだ、幸い体は動く。
瞳ちゃんの一撃は、そこまで重くはない。
意識を刈り取られる可能性はあるけど、そうされなければ、まだチャンスはあるんだ!!



(この気迫…! どんどん増していくプレッシャー…!)
(風路さんは…一体、何を秘めているのですか!?)


私は大きく深呼吸し『羽休み』で体を休める。
羽が無いのに羽休め? こまけぇこたぁ良いのよ!!
こういうのは、気分的な物なんだから!!

私は心に『闘争心』を燃やす。
相手が同じ女の子なら、負けるわけにはいかない!


風路
(とはいえ、触れる事も難しい相手か…)


私はプロレスの様に、両手を前に掲げて相手を見据える。
近付いて組み付く構えだけど、瞳ちゃんもそれは解っているはず。
さぁ…どう出る?



(誘っている…? スピード差は明白ですが、落ち着いて対処すれば捌けない動きではないはず)


瞳ちゃんは不思議と警戒している様だ。
私は何となく笑ってしまう。
何故だろう? こんな状況なのに、余裕があるのはまるで私の様だった。
そして、何となく私は、自分の内にある何かに気付き始める。


風路
(今まで、気にもしなかった…)


ダメージを負っているのに、それを塗り潰す様に力が沸き上がる。
まるで、相手の力を受けて吸収するかの如く、私には力が溢れていた。



(待っているのは解っている…ですが、この圧迫感!)
(まるで…危険生物と同じ檻に放り込まれたかの様な、とでも言えばいいのでしょうか?)

風路
「どうしたの? この状況で怖じ気付いたなんて思えないけど?」


私はあえて挑発する。
もちろん、策なんて何も無い。
ただ、こうなったからには私はただやるだけ。
選択肢は元々少ない、だからその上で1番確率が高そうな行動を選ぶだけよ!



「!!」


瞳ちゃんは真っ直ぐ神速で踏み込む。
私は、それを予測して思いっきり踏ん張った。
両足を木の根の様にイメージし、攻撃を受ける覚悟を決める。
瞳ちゃんは、そのまま正直に拳を振るい、私の腹に右拳を突き立てた。
最初の攻防と同じ構図だけど、そのままの絵にはならない。
私は、その場でピクリとも動かなかったのだから…



「…なっ!?」

風路
「はあああぁぁぁぁっ!!」


私は瞳ちゃんの拳を腹で受け止め、そのままノータイムで瞳ちゃんの腰を両腕で掴んで真上に引っこ抜いた。
そして逆さまになった瞳ちゃんを、私はパワーボムで真下に落としたのだ…


ゴッシャァァァァァァァッ!!


無音の空間の中、コンクリートに突き刺さる音が響き渡る。
瞳ちゃんの頭部は、コンクリートの床にヒビを入れてしまい、そのまま血を噴き出して無造作に倒れた。


風路
「はぁぁ…!」


「……っ!」


瞳ちゃんはそれでも立ち上がった。
かなりのダメージだと思ったけど、それでも立ち上がるのか。
私は構えを取って相手を待つ。
瞳ちゃんは頭から血を流し、意識を朦朧とさせながらも、独特の構えを取って何やらオーラを放ち始めた。
そして、次の瞬間…虹色のオーラに包まれた瞳ちゃんは拳をただ無造作に何も無い前へと突き出した。

私は何が起こるのか想像も出来ず、ただその光景を見ている事しか出来なかった。
目の前の空間は捻れ、遠い拳の先から何かが私に向かって来る。
私はそれに反応する事も出来ず、気が付けば胸が抉られていた。
その衝撃は筆舌に尽くし難く、私は全身が引き裂かれそうになる痛み、絶叫をあげる事すら出来ず、ただ後ろに吹っ飛ぶ。
意識はその瞬間に絶ち切られ、私は敗北を理解する事すらなかった…



………………………




「………」

白那
「…藍?」


俺様は、体が振るえていた。
馬鹿馬鹿しいと頭で思っていても、その意味を理解した時、俺様は恐怖を覚える。
もしかしたら…俺様は、とんでもないものを目覚めさせてしまったんじゃないのか?



「…奴は、敵か? それとも味方か?」

大愛
「…? 何を言っている?」


自分で言いながら、本当に意味不明だ。
ただ、それ位の異常事態だと俺様は理解していた。
風路…アイツは異常だ。
相手の強さに合わせて、まるでそれを乗り越える様にパワーが上がってやがる。
その数値は、正直馬鹿馬鹿しすぎて口にも出したくない。
こんな数値は何かの間違いだ!

一体どうやったらそんな結果が出る?
アイツはただのケンホロウだろうが!?


白那
「一体、何を見たんだい?」


「…俺様が聞きたい、アレは何だ?」
「本当に…アレがただのケンホロウなのか?」


瞳は、確かに勝った。
それ自体は俺様の予想通り。
だが、風路が出した結果は予想を遥かに超える物だ。



(ほんの一瞬だ…数値がバグった)
(CP計算機が振り切れやがったんだ…つまり、その瞬間アイツの数値は10万を超えていた!)


そんな馬鹿げた数値は聞いた事が無い。
いや…あるとすれば、前に話題が上がったジガルデ。
だが、それはあくまで理由があっての数値で、別に不思議でもない。
問題なのは、風路がその数値を一瞬でも計測した事。

些細なバグなのかもしれない。
いや、そうでも思わないとおかしすぎる。
俺様は冷静になった…そうだ、これはバグだ。
計算機がおかしくなったんだろう…そのはずだ。



「…もう良い、訓練は終わりだ」

白那
「…良いの?」


「良いも悪いもない、アイツは合格だよ」
「俺様が保証してやる…アイツは、恐らくバケモンだ」
「今まで、眠っていただけなんだろうさ…」


俺様はそう言ってモニターを終了した。
部屋の中では、もう少し回復に時間がかかるか。
風路も瞳も、かなりダメージが大きいはずだからな。



………………………



風路
「…あれ? また記憶が曖昧…」


「目が覚めましたか…どうですか気分は?」


気が付くと、またベッドの上。
今度は瞳ちゃんが心配そうに私を診てくれていた。
私は頭を抱えるも、少しフラついて立ち上がる。
瞳ちゃんは既にパジャマに着替えており、どうやら訓練は終わったみたいだ。


風路
「あ、はは…ごめんね瞳ちゃん」


「いえ、こちらこそ申し訳ありません…奥義の使用までしてしまうとは」


奥義…? 私は何となく思い出してしまう。
そういえば、最後に思いっきり胸を抉られた気がする。
私は思わず胸を見てみるが、特に外傷は見当たらない。
ホッとするも、どうやら負けたのは確実の様だった。


風路
「はぁ…やっぱり瞳ちゃん、凄かったんだね〜」


「…いえ、これも修行の成果なので」


瞳ちゃんは真面目な顔でそう言う。
うーん、修行か〜やっぱり、それ位しないとダメなのかなぁ?



「…藍様から撤収の命令が出ています、そろそろ戻りましょう」

風路
「あ、うん…分かったわ」


私はフラつく体を瞳ちゃんに支えられながら、部屋を出て行く。
そして、何だか久し振りに外の空気を吸う気がした。



………………………




「…どうだ気分は?」

風路
「え? あ、う〜ん? とりあえず、ちょっと疲れたかも…」


藍ちゃんは開口一番そう聞くが、私は曖昧に答える。
すると、藍ちゃんはやや険しい顔をして俯いた。



「…なら、ゆっくり休め」
「それと、しばらくは来るな」

風路
「え? それって…?」

白那
「合格だってさ…一応、ね」


?を浮かべる私の背中を、白那さんが優しく抱いてくれる。
私は少し恥ずかしくなるも、その言葉を聞いて少し実感した。


風路
(そっか…合格、か)


それは私の実力が認められたという事。
つまり、聖君の力になれると証明されたともいえる。
私は思わず握り拳を作って気持ちを表現した。
うん! これからは、私も頑張るからね!?


白那
「それじゃあ、送るよ…荷物はこれね」

風路
「あ、ありがとうございます! 今夜はありがとうございました♪」


私は白那さんから荷物を受け取り、お辞儀をする。
すると、白那さんは笑顔で手を振って私を家まで転送してくれた。



………………………




「…行ったか」

大愛
「そろそろ教えろ…何を見た?」


「見た…? とは、一体?」


俺様はカリッ!と爪を噛む。
説明するのは正直面倒だ。
例え様の無い事象だからな。



「戦力に違いはない…が、一歩間違えれば家族全滅も有り得る危険な爆弾だ」

白那
「…それは、確信かい?」


俺様は無言で答える。
肯定も否定も出来ねぇな…天才の俺様でもそれは断言し難い。


大愛
「爆弾…か」


「…確かに、風路さんの中には何かが眠っている様にも思えました」
「それが何なのかは解りませんが、私にはそれが悪意とは思えません」


「…直に手を合わせた者のコメントだ、今はそれを信じてやる」


俺様は妥協する。
正直、俺様でも解らねぇんだ…だったら、直接相対した者の方が直感的に何か感じてるだろう。
ただ、何故か姉さんの言葉が頭によぎった。


『私は、早い内に戦力は揃えた方が良い気もするわ』



(戦力…か、確かにアレが戦力なら、一騎当千も良い所だ)


しかし、それはあくまで諸刃の剣…
詰まる所、聖次第って事になりそうだがな。



………………………




「…え? 姉さんの事?」

阿須那
「せや、ケンカが強かったとか、そういうのはあったん?」


俺はとある日の夜、突然阿須那にそう尋ねられた。
俺は記憶から色々呼び起こしてみるが、全くもって記憶に無い。
そもそも、基本おおらかで優しい姉さんがケンカって…
あ、いや…あった気はする。

…俺がやさぐれてる時はいつも盾になってくれたっけか。



「…姉さんが強いかは俺には解らないな」
「ただ、弱くはないと思う…少なくとも、俺を守る為に身を呈してくれる位には勇気がある人だから…」

阿須那
「…ホンマに、それだけか?」


俺は?を浮かべてしまう。
阿須那の顔は真剣で、かなり険しい顔をしていた。
こんな顔の阿須那は滅多に見ない。
一体、何があったんだ?


阿須那
「昨日、風路はんと訓練でやりあったんやが…」


「はぁ!? お前と、姉さんが、か…?」


阿須那は頷く。
ギャグやシャレじゃないのは顔見りゃ解る。
訓練って事は…データ介してやってるその系か?


阿須那
「風路はん、ホンマにケンホロウなんか?」


「…は? 違うのか?」


阿須那は黙ってしまう。
正直、俺にもその辺は全く解らない。
そもそも、姉さんがポケモンだったっていうのもアルセウスさんから聞かされた事だしな…
神様がそう言ったんだから、間違いなくケンホロウだろうよ…



「お前、姉さんに何か疑問があるのか?」

阿須那
「隠すつもりは無いから言うわ、風路はん…相当なバケモンやで」


俺はギョッとなる。
あの阿須那がバケモンって…?
阿須那は少なくともアルセウスさん相手でも臆さずに戦ったキュウコンだぞ?
その阿須那が、バケモンって…


阿須那
「ただのケンホロウが、ウチに勝てるか?」
「そら、油断はしとったわ…せやけど、それ位で格下に一発でやられる程ウチは弱ないつもりやで?」


阿須那の強さはよく知ってる。
だからこそ、その意味は重い。
姉さんは、間違いなく戦闘とは無縁のポケモンだ。
その姉さんが、阿須那に勝つ…? 有り得ないだろ…確かに。
姉さんの実力は確かに未知数だろうけど…


阿須那
「…あくまで、ウチが体感した上での感想や」
「風路はんは、普通のポケモンとは思えん」


阿須那はそう言って立ち去る。
自分の部屋に戻って休むのだろう。
阿須那にとって、姉さんは尊敬する人のはず。
そんな阿須那が、あんな顔をするとはな…



(姉さんが、バケモン…か)


もしかしたら、姉さんも俺に秘密にしている事があるのだろうか?
今まで、ポケモンとして深く聞いた事は無かった。
ただ、1度死にかけたケンホロウであり、夢見の雫を使ってこの世界に現れたんだ。

そして、俺に雫を継承して、姉さんは今に至る。



「…そんな姉さんに、何があるんだ?」

三海
「…それは、信じる事さ」


気が付くと、三海が俺の背後にいた。
俺はギョッっとなるも、振り向いて三海の笑顔を見る。
三海は、まるで全て知っているかの様な顔で、優しくこう言った。


三海
「大丈夫…風路お姉ちゃんは、聖の味方だから」
「でも、その想いは時に誰かを傷付けるかもしれない…」


「え…? 傷付ける…って」

三海
「…大丈夫、聖ならきっと」
「ワタシは信じているよ…聖と風路お姉ちゃんなら、どんな困難も乗り越えられると…」


三海は虚空を見つめてそう笑う。
俺はその笑顔に安心感を覚え、改めて自分の想いを確認する。
信じる…か、そうだな!



「信じる事が、俺の武器だからな…」

三海
「そう…だから、ワタシたちは聖が大好きなんだ♪」


そう言って三海は浮遊して俺に抱き付く。
俺は椅子に座りながらも、その体をしっかり抱き締めてやった。
今の三海でも、まだまだ甘えたい部分はあるのかもしれない。
俺はそう思って、三海の頭を優しく撫でてやった。
すると、三海は目を細めて気持ち良さそうに顔を俺の胸に擦り付ける。
はは…やっぱり、好きなんだな、これ。


三海
「ン〜♪ 聖…大好き♪」


「どうしたんだ? 今日はやけに甘えるじゃないか…」

三海
「…そういう時もあるのさ」
「ワタシだって、アンニュイになる事はある…」


そう言って三海はスヤスヤと寝息を立て始める。
やっぱ、三海は普段からエネルギーを消費しているんだな…
今日も外に出て何かしていた様だし、三海は三海で考えて行動してるのだろう。

運動会でも頑張ってたし、三海の事はこれからもしっかり面倒見てやらないとな…











『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第4話 『風路 VS 瞳! 訓練室に轟く拳光、秘拳! 神破孔山拳!!』


To be continued…

Yuki ( 2019/10/25(金) 20:41 )