とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第10章 『過去との決別』
第1話
風路
「え? 休めって、どうして?」

阿須那
「いや、風路はん開店からほとんど休んでへんやないですか…」


それはとある日の会話。
夜の営業時間も終わり、私は阿須那ちゃんとふたりで厨房の掃除をしていた。
それもそろそろ終わりそうになった辺りで、阿須那ちゃんが唐突に私に仕事を休め…と言ったのだ。

阿須那ちゃんは、はぁ…と深いため息を吐き、呆れた様な顔で私を見る。


阿須那
「…あの親あってこの子やわな」
「やっぱ風路はんには休んでもらいます!」

風路
「い、いやいや! いきなり無理だってば!!」
「それに、私がいなかったら料理どうするの?」

阿須那
「それはウチがやります! そら風路はんには遠く及ばへんけど、それでもお客さんの舌を満足させるモンは出してみせます!」


阿須那ちゃんは胸を張ってそう言ってくる。
確かに阿須那ちゃんの料理は十分水準を満たしているけど、それでも今のタイミングで任せるには…


風路
「…やっぱりダメよ、お客さんの事を考えたら、まだそれは」

阿須那
「なら逆に聞きます、それで万が一風路はんが倒れたら、どないする気なんでっか?」


私は少し言葉に詰まる。
それは、過去にお義父さんに言われた事のある言葉でもあったからだ。
そして、私が過去にお義父さんに対して言った言葉でもある。
その時のお義父さんの答えは…


『風路がいるなら、確かに安心ね♪』


風路
「………」


あの時と状況は違う。
私は、安心出来るのだろうか?
ううん、それは多分違う…


風路
(私は、信用してないのかもしれない…)


そして、それは裏切りだと思ってしまう。
ここまでやって来れたのは、間違いなく皆のお陰。
私ひとりの力じゃとても出来なかった。
それなら…もっと信頼するのが仲間という物のはず。


阿須那
「……風路はん?」

風路
「ごめんね…だったら、少し休ませてもらおうかな?」

阿須那
「あ…も、もちろんですわ! 任しといてください!」
「風路はんがおらん間は、絶対にウチ等で店を守りますから!!」


阿須那ちゃんはガッツポーズを取って笑う。
自信はある顔だ、それなら私は信じよう。
きっと、聖君もそうするだろうから…



………………………



風路
「………」


掃除も片付けも終わり、私は入浴して自室にいた。
とりあえず明日は月曜日で、いきなり休みになっちゃったけど…


風路
「…何したら良いんだろ?」


今はコスプレも引退してしまったし、改めて服を作るっていうのも違う気がするし…
かといって、ボーッと時間を潰すのも勿体無い。
改めて、私は何を考えるにしても、コスプレか料理だったっていうのを理解した。
それ以外の趣味とかも、ほとんど無かったわね…


風路
「…平日だとイベントの類いも無いしなぁ〜」


私はスマホで色々調べてみるけど、特に目に付く様なイベントは見付からない。
っていうか、当たり前だよね…平日にイベントとか普通は無いし。


風路
「…はぁ、とりあえずお義父さんに会いに行こうかな?」


正直それ位しか思い付かなかった。
後は聖君の家に寄って、少しゆっくりさせてもらおうかな?
守連ちゃんたちが来てから、ほとんどそっちには行ってないし、たまには良いよね?

私はそう決めると、とりあえず部屋の電気を消してベッドに寝転ぶ。
もう気温もすっかり下がって来てるし、エアコンの設定も見直しておかないと…

季節は秋…今は10月で、台風の多い季節。
前の台風はかなり強かったし、これからも注意はしないとね…



………………………



風路
「…ただいま〜」

勇気
「あら風路! 珍しいわね?」
「どうかしたの? 平日に訪ねて来るなんて…」


私は朝8時に実家へ戻っていた。
お義父さんは厨房で軽い料理を作っており、今はそんなに忙しくも無いみたいだ。
私は少し苦笑しながらも昨日の事をお義父さんに話す。

すると、お義父さんは吹き出して笑ってしまった…


勇気
「あっはは! 貴女らしいというか、何というか…」
「やっぱり、私の娘ね♪ 同じ事を言われるなんて」

風路
「うん…自分がお義父さんに言った事でもあるし、反論も出来なかったよ」


今頃、阿須那ちゃんは厨房でてんてこ舞いだろう。
前もって私が仕込みはしておいたから、そこまで焦る事も無いと思うけど…


勇気
「繁盛はしてるみたいだし、疲れも溜まってるんじゃないの?」

風路
「うん…あんまり自覚は無いけど」
「でも、改めて休みをもらったら、やっぱり疲れてるんだなって思う」


私はあはは…と苦笑しながら言った。
するとお義父さんはうんうん…と頷きながら笑う。
そして、口元に人差し指を当ててウインクしてから私にこう言った。


勇気
「だったら、今日1日はしっかり休みなさい!」
「たまには聖君にも顔を見せてあげないと♪」
「…あの子にとっては、貴女は特別な存在なんだから」

風路
「…そう、かな?」


私は、少し不安だった。
私はあくまで親代わりで、本当の家族じゃない。
今の聖君には、私よりも信頼出来る家族がいるし、私の存在はもう、そんなに大きくは無いと思うのだ。


勇気
「…良い事を教えてあげるわ」
「聖君の事が異性として好きなら、1度思いっきり踏み込んでみなさい?」

風路
「!? ふ、踏み込むって…?」

勇気
「言葉通りよ? 貴女は少し遠慮が過ぎるみたいだから…」
「良い機会だから、そろそろ聖君の親代わりを卒業しなさい」
「今の聖君は高校卒業も控えているし、今後の事もあるわ」
「もし聖君が卒業したら、その時貴女はどうする気?」


私は…考えてみる。
聖君が高校を卒業…その後、私はどうする?
多分、普通におめでとうと言って終わりだろう。
きっと、家族の皆が聖君を祝福してくれるし、そこに私が入り込む余地は無い。
混沌の事もある、聖君はきっと戦い続けるはずだ。
私も、その時は戦わなきゃならない。
聖君の為なら、私はいつでもこの身を投げ捨てられるのだから。


風路
「…私は、変わらないと思う」
「今のままで、私は幸せになっちゃったから」

勇気
「それは、本音?」

風路
「もちろん」


私は笑顔で即答する。
これが嘘ならすぐにバレる…私のお義父さんだもの。
だからこそなのか、お義父さんは珍しく悲しい顔をした。


勇気
「…風路、貴女がそう言うのなら、アタシはそれ以上何も言わない」
「だけど、これだけは覚えておいて…」
「アタシが1番大切なのは、貴女の幸せだって事を」

風路
「……!」


その言葉に私は胸を打たれる。
私だってそこまでバカじゃない、意味は理解出来た。
お義父さんが本当に望んでいるのは、私の幸せ。
その幸せとは、私が口に出せる程度の幸せじゃない。

本当の意味で、幸せと呼べる状態。
それは私には叶えられない、夢の様な物。


風路
(ごめんなさい、お義父さん…私は、親不孝物だね)


私はお義父さんの仕事を少し眺めてから背を向ける。
本当は一緒に並んで手伝ってあげたい。
でも、今の私じゃきっと足手まといになるから…



………………………



風路
「………」

茫栗
「何だい辛気臭い顔して? 他の客に迷惑だから、そんな顔するじゃないよ!」


お店のカウンター席で座っていた私に対し、茫栗さんが突然そう告げる。
茫栗さんの姿は可愛らしいウエイトレス姿で、それは以前に私がデザインした服でもあった。
歩く度にヒラヒラ揺れるのがポイントで、ちょっと歩き難くなるけど、躍動感が増すから見た目が良いのよね〜

ちなみに偽装薬は飲んでいるのか、見た目は普通の黒髪美人だ。


風路
「あ、はは…ごめんなさい」
「茫栗さん、ここで働いてたんですね…?」

茫栗
「はん、タダ飯食わせてもらってんだ、ちょっと位はやるさ」
「ほらよ、店長オススメのカフェラテだよ」


そう言って茫栗さんはトレーに乗せていたカップを私の前に置く。
それには雉の絵がラテアートで描かれており、私はその絵に懐かしさを思い出す。
そういえば、昔は良く作ってもらったっけ…
自分でやっても中々上手くいかないから、何度も何度も練習したのを覚えてる。


風路
「お義父さん、ホントに子煩悩なんだから…」

茫栗
「そんだけ心配かけてんだろ? ならちょっとは親孝行しな」


茫栗さんは私たちの会話を知ってか知らずか、そう言ってから他のテーブル席に向かった。
今はまだコスプレ無しの時間帯だし、お客さんはいつもの固定客だけだ。
茫栗さんの接客もそれ程問題は無いのか、お客さんからは笑顔で迎えられている。

茫栗さんって、ぶっきらぼうだけどそのままの性格だから、返って受けが良いのかも…
下手に作り笑いとかされるより、あっちの方が嘘偽り無い分、常連さんには良いのかな?


茫栗
「はいよ、トーストセットだ」

お婆ちゃん
「ありがとね〜♪ いつも楽しみなのよコレ」

お爺ちゃん
「茫栗ちゃん、コーヒーを貰えるか〜?」

茫栗
「ああ、少し待ってな…すぐに淹れてやるよ」


茫栗さん、やっぱり口が悪いだけなんだ…
端から見たら接客悪すぎる言葉遣いなんだけど、それでもお客さんの反応は笑顔。
元々、朝の時間はご老人が多い事もあって、そんなに気にする人もいないのかもしれないわね。


風路
(茫栗さん自身も、ちゃんと仕事は出来てるし)


見た目の良さもあってか、茫栗さんって佇まいから気品を感じるのよね…
見る者に何か影響を与えるっていうか…
一言で言うなら、恐れ多い?
とにかく、そういう雰囲気にさせられる何かだ。


茫栗
「風路、9時までにはそれ飲んで1度出な」

風路
「あ、はい…分かりました」


茫栗さんはすれ違いざまにそう告げてコーヒーを淹れに行く。
私は懐かしのカフェラテをゆっくり飲んで少し温まった。
もう、朝は結構冷えるわね〜



………………………



風路
「お店、やっぱりお客さんは減ったなぁ〜」


時刻は9時過ぎ…私は外からお店を見ていたが、やっぱりお客さんは目に見えて減っていた。
朝イチから並ぶ人も疎らで、常に行列が出来ていた以前とは全く違う。
それでもテーブルはほぼ満席で、売り上げ的には問題無さそうだ。
店員のレベルも更に上がってるし、服のデザインも一新してる。
1号店は1号店の特色がしっかり現れてるし、これもお義父さんの力なんだろうな…


茫栗
「やれやれ、ホントに毎日飽きもせずに集まるもんだね…」

風路
「あ、茫栗さんもうあがりですか?」

茫栗
「ああ、アタシは朝と夜しかやらないからね」


気が付くと、普段着に着替えていた茫栗さんが私の側に寄って来る。
長袖のシャツに、動きやすそうなズボン、靴は何気にブランド物のスニーカーだ。
肩にはショルダーバッグをかけており、どこに向かうのだろうか?


風路
「茫栗さん、今からどこかに?」

茫栗
「ああ、今からスパーリングでね…城まで行ってくる」
「アンタはどうするんだい?」

風路
「それなら…私も一緒に行きます」
「聖君の家に行こうと思ってましたし、そこまで一緒に行きましょう♪」


私がそう言うと、茫栗さんはそうかい…とだけ言って先に歩き出す。
私はそれに付いて歩き、並んで商店街を歩いて行った。


風路
「やっぱり、茫栗さん位の身長だと絵になりますよね〜」

茫栗
「そうかい? まぁ殴り合いならリーチはある方が助かるしねぇ」


私は苦笑する…殴り合い前提で考えるんだ。
茫栗さんって毎日トレーニングして鍛えてるらしいけど、ホントにスタイル良いなぁ…
筋肉の付き方も理想的だし、初めて会った時に比べたら見違える程鍛えられてる。


風路
「元々、体は鍛えてたんですよね?」

茫栗
「そうさね、昔は生きる為に必至だったからね」


生きる為に…か。
確か、茫栗さんが元いた世界は弱肉強食の荒廃世界。
そこでは力の有る者だけが生き残り、弱者は奪われ、淘汰される世界。
そんな世界で、茫栗さんは暴君となってまで頂点に君臨したのだと言う。

その力は紛れもなく世界の覇者で、茫栗さんの持っている力だと言うのが私にも解る。
ただ、それでも茫栗さんは浮狼ちゃんに負けて全てを失ってしまったんだとか…


風路
「…あれから、浮狼さんとはまだ?」

茫栗
「ああ…勝率は5分だけどね」
「もっとも、格闘戦に限るなら今はアタシの方が上さ」
「だから、今は色んなタイプの連中とスパーリングをしてる」


努力家だなぁ〜
やっぱり貪欲さって格闘家とかには重要なんだろうなぁ…
茫栗さんは浮狼ちゃんに勝ってもそこで満足せず、更に上を目指してるんだから。


風路
「ちなみに、今日の相手は?」

茫栗
「鐃背だよ」


私は一瞬固まる。
そして表情ひとつ変えず、サラリと言い放った茫栗さんを見て苦笑した。
勇敢というか、無謀というか…いやいや、もしかしたら想像以上に茫栗さんが強くなってるのかもしれないし!


茫栗
「…今、絶対負けると思ったろ?」

風路
「…ご想像にお任せします」

茫栗
「ちっ…解ってんだよ、勝てないって位は」


茫栗さんは顔をしかめながらもそう認めた。
プライドの高そうな茫栗さんらしくない…
でも、それは茫栗さんが精神的にも成長している証だ。
負けると解っていても、得られる物はある。
だからこそ茫栗さんは、それでも戦いたいと思ったんだろう。


茫栗
「鐃背は、今の所格闘戦においては最強だ」
「だったら、吸収出来る経験値は多いはず」

風路
「うーん、でも戦闘スタイルは大分違うし、種族としての力差が桁違いですけど?」

茫栗
「その辺はどうでも良いのさ…要は強くなれりゃ良い」
「アンタも解ってんだろ? アタシたちポケモンは、戦う度に強くなれるって…」


私は、言葉に詰まる。
その意味は解ってる…それが私たちポケモンとしての共通能力。
RPGで言う所の、レベルアップ。

特に私たちは、そのレベルに上限が設けられていない。
つまり、際限無くレベルは上がっていく。
もちろん、上がるスピードは個人差が大きいけど、それでも確実に強くなれる。

茫栗さんは、その高みに上る為に鐃背さんと戦う気なのだ。


風路
「…茫栗さんは、それ以上強くなってどうするんですか?」

茫栗
「さてねぇ〜また世界征服でもしてみようかね?」


茫栗さんは微笑んで冗談交じりにそう言う。
もちろん、冗談だろう。
この世界の情勢を知っていれば、そんなのは無理だと解るはずだから…


茫栗
「まぁ、どうするかは天辺に立ってから決めるさ…」

風路
「遠い道ですけどね…」

茫栗
「だからこそ目指す意味がある」


茫栗さんは全くブレない。
改めて凄いと思った。
私とは全然違う…今のままで満足してない。

私は…どうだろ?


風路
(満足してしまってる…だからお義父さんにあんな顔をさせたんだ)


私は、今の立場に満足して幸せだと言った。
そしてそれは、成長の放棄。
今のままで良いと勝手に満足し、足を止めてしまったんだ。


茫栗
「………」


私が足を止めても、茫栗さんは歩き続けた。
気付いていないのかもしれないけど、それは気に留める必要も無いからだろう。
私は、ゆっくりと足を前に出す。

怖かった…その先を見るのが。
かつて、ここまで怖いと思った事は1度しかない。


風路
(聖君が自殺しようとした、あの時以来)


私はあの時、何も出来なかった。
聖君の苦しみも理解出来ず、ただ当たり前の様に家族顔していた。

私は、また嘆くのか?
神にすがって、また勝手に絶望するのか?


風路
(違う…! そうじゃ、ないんだ)


私は、前に進まないといけない。
聖君が歩いている場所は、私の場所よりも遥か先。
だから…


風路
(追い付かなきゃ…その場所まで!)



………………………



ピンポーーーン!


守連
「はーい! あ、風路さ〜ん♪」

風路
「久し振り♪ たまの休みだから、ちょっと来ちゃった♪」


インターホンを鳴らすと、まずは守連ちゃんが顔を見せてくれる。
阿須那ちゃんは仕事だし、確か女胤ちゃんもそうだったはず。


守連
「とりあえず、上がってください♪」

風路
「うん、お邪魔します♪」


私は玄関で靴を脱ぎ、スリッパを仕舞っているケースを見た。
そして、そこにまだ残されている空色のスリッパを私は手に取る。


風路
「…これ、残しててくれたんだ」

守連
「あ…うん、聖さんがそれは大事な物だからって」


これは、私が使っていたスリッパ。
それなりに年季はこもっており、あまり状態は良くない。
ただ、それでも好きな色のこれは私のお気に入りだった。


風路
「……」

守連
「どうか、しました?」

風路
「ううん、ちょっと懐かしかったから…」


私は苦笑してそのスリッパを久し振りに履く。
春以来…か、これを履くのも。
もう、そんなに来てないんだね。


愛呂恵
「風路さん…今日は何か?」

風路
「おはよう愛呂恵ちゃん♪ 今日は休みを貰ったから…」

愛呂恵
「そうでしたか、それではリビングでお休みください」
「すぐにカフェラテをご用意致します」


そう言って素早く愛呂恵さんはキッチンに向かう。
しかもカフェラテって…私の好きな飲み物知ってたんだ。
既にお店で飲んでるけど、まぁいっか。



………………………



風路
「…うん、流石は愛呂恵ちゃん、良い香りだね♪」

愛呂恵
「お褒めに預かり光栄です」


愛呂恵ちゃんはペコリとお辞儀をする。
うーん、やっぱりメイドさんって凄い。
でも、メイド服は着てないんだよね〜?
やっぱり、現実的には着ない物なんだろうか?


風路
「そういえば、守連ちゃんゲーム好きなんだね?」

守連
「うんっ♪ 今は新しいのにチャレンジだよ!」


新しい…と言ってはいるものの、テレビ画面に映っているのは古いゲームの画面だった。
ハードは某○天堂の最新ハードで、守連ちゃんはワイヤレスの専用コントローラで、必至にプレイしている。
う〜ん、何だか懐かしいなぁ〜


守連
「う〜! ここ敵も強いし大変だよ〜」

風路
「そこ、『だいちのかぎ』を使った方が速いわよ?」

守連
「えっ!? あれって戦闘で使えるの?」


守連ちゃんは驚いた顔で私を見る。
私は過去の記憶を便りに守連ちゃんへ助言をした。
ちなみに、やっているのはどうやらSFCの○レスオブファイアで、今は○ーマの塔を攻略している。
この辺りは小ネタで楽になる部分も多いのよね〜


守連
「うわっ!? 全体に30もダメージ出る!!」

風路
「ちなみに何度使っても無くならないから、アイテム欄の1番上に置いておくと効率的よ♪」


守連ちゃんは感動したのか、雑魚敵を一掃しながら楽しそうに進んで行く。
この時点ならほとんどこれだけで進めるからね〜


風路
「あ、後その先の宝箱にセイバーが入ってるから」

守連
「…えっと、あれ〜? これ攻撃力低いよ〜?」

風路
「それは全体攻撃出来る武器だから」
「仲間が増えたら、鍵とセットで序盤は大分楽になるわよ?」

守連
「あ、そうなんだ〜♪ へぇ〜数値しか見れないから細かい部分は解らないね…」

風路
「とにかく、そのゲームは隠しアイテムとか謎の仕様が多いから気を付けた方が良いかもね〜」
「特にアイテムコンプとか狙う気なら、計画的にやらないと最初からやり直す羽目になるから…」

守連
「うえっ!? そうなの!?」

風路
「うん、どうしても気にするなら攻略情報は調べた方が良いかもね…」
「私もそこまで詳しい訳じゃないし…」


守連ちゃんは少しビビりながらもとりあえずゲームを進めて行く。
ボス戦に入ったけど、鍵連打で楽勝だからほとんどアドバイスの必要も無いね…


愛呂恵
「風路さん、もしよろしければ、料理を見ていただけませんか?」

風路
「え? でも、私が教えられる事なんて無いと思うけど…」

愛呂恵
「いえ、味見をしていただければそれで構いません」
「出来れば、聖様の舌を前提にしていただければ…」


成る程、聖君がどう反応するか解らない料理って事か。
それなら、確かにちょっとは助言出来るかも。
聖君って好き嫌いは少ないけど、それでも好みの味付けは有るものね…



………………………



風路
「…うん、これだと少し薄いかな?」

愛呂恵
「薄い…ですか」


私はきのこ汁の味見をしてそう言った。
基本的な部分は文句無し、味も大衆を意識するなら、これが1番無難かな?
でも今回はあくまで聖君が飲む物。
その前提で言うなら、もう少し変えても良い部分はあるわね…


風路
「…聖君はもう少し濃い方が好みだと思うから、分量はこっちの方が」

愛呂恵
「成る程…それでしたらこちらで代用しましょう、こちらの方が栄養バランスを維持出来ます」

風路
「そうね、それなら良いかも…だったらこれを添えておくと風味と香りが増すわよ?」

愛呂恵
「流石は風路さん、味だけでなく見た目も意識していますね」
「ありがとうございます、これなら聖様も満足していただけるでしょう」


私たちは、それからも互いの意見を交換しながら楽しく過ごす。
何だか、久し振りに料理で盛り上がった気がするなぁ〜



………………………



三海
「ン…? これは風路お姉ちゃん、お久し振りだね♪」

風路
「あ、三海ちゃん元気そうだね♪」


私が2階で聖君の部屋に向かおうとした所で、ふと三海ちゃんに出会う。
この時間は昼まで部屋で勉強しているみたいで、今は休憩時間なのだろう。


三海
「ほう…聖の部屋を物色とは、敵情視察かな?」

風路
「物色って…何言ってるのよ〜」


私は苦笑しながらそう反応する。
多分、心を読まれたのだろうけど、三海ちゃんに悪意は無い。
クスクス笑ってはいるけど、何を読み取って笑うのか?


三海
「風路お姉ちゃんはホントに欲が無いね…」
「これが女胤お姉ちゃんなら、ハァハァ言って感情を高ぶらせるのに」

風路
「そ、そうなんだ…大変だね、聖君」


私は色々と想像しながら、部屋に入るのを止めた。
何だか覗いちゃいけない気がする。
聖君も年頃の男の子だしね!


三海
「ふふ…安心すると良い、聖はまだ誰とも肉体関係は持っていないよ?」

風路
「あ、はは…それは解ってるよ」
「聖君の事だから、誰も選ばないって頑なに言ってるでしょ?」

三海
「………」


私の言葉に、三海ちゃんは少し沈黙してしまう。
意外…という感じじゃなさそうだね。


三海
「…やはり、聖の事を1番理解しているのは貴女か」

風路
「三海…ちゃん?」

三海
「すまない、今から出かけて来る」
「聖は学校だから、帰るのもその位だ」
「…出来れば、会ってあげてくれ」


そう言って三海ちゃんはその場から『テレポート』する。
何処へ行くのだろう? そんな疑問があったけど、それはもう聞く事も出来ない。
私は聖君の部屋の前で立ち尽くし、どうする事も出来ずにその場を立ち去った。



………………………



風路
「はぁ…」

華澄
「風路殿? 来ておられたのですか…」


私が庭で佇んでいると、華澄ちゃんから声をかけられる。
全く接近に気が付かなかったよ…流石は忍びポケモン。


風路
「久し振り華澄ちゃん…聞いたわよ? 前の混沌では大活躍だったって♪」

華澄
「こ、これはお恥ずかしい…拙者は拙者に出来る事をやったまでで」
「結果を出したのは、協力してくれた皆のお陰でござる」


華澄ちゃんはやっぱり謙虚だ。
でも、きっと本当に凄い活躍をしたのだろう。
阿須那ちゃんは実際そう言っていたし、きっとそれが真実。
でも、華澄ちゃんはそれを決して自分の成果とは言わない。

こういう所は…私もあるかな。


華澄
「…風路殿、何か心配事でも?」

風路
「うん…華澄ちゃん、私って弱いかな?」

華澄
「弱い…ですか?」


私は華澄ちゃんから顔を逸らして空を見る。
今日は曇りで、あまり良い天気じゃない。
それでも、雲の上にはきっと澄み渡る青空があるんだ。


華澄
「…風路殿は、強いと思いますが」

風路
「それは、ポケモンの能力として?」

華澄
「はい、少なくとも拙者たちと比べてもそこまで劣っている様には思えませぬ」
「もちろん、実際の戦闘はほとんど見た事ありませんし、ただの勘でござるが…」


華澄ちゃんは少し俯いてそう言う。
あくまで私の能力を予想して言ったのだろう。
実際、戦えばそこそこはやれるのかもしれない。
…その気になって戦った事なんて無いけど。

それでも、私は知るべきなのかもしれない。
自分の限界を…そして。


風路
(私が、本当に聖君を助けられるのかを!)











『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第10章 『過去との決別』

第1話 『風路はヒロインになれるのか?』


To be continued…

Yuki ( 2019/10/14(月) 13:41 )