とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第9章 『ダウンタウン ポケモン行進曲 それゆけ大運動会』
第4話
阿須那
「あーこらアカン! 今回はほとんど良いとこ無いで…」

白那
「まぁ仕方無いね…色んな意味で今回は不利だったと思うし」

大愛
「…やはり、身体能力を鍛えている連中が厄介だな」

櫻桃
「ですよね〜単純な殴り合いだったら、やっぱり愛呂恵や鐃背さんは一抜けてますし」

浮狼
「瞳殿もかなりの実力者でした…改めて黄組のレベルの高さを見せ付けられましたね」


とりあえず反省点だらけや…あんだけのレベルで集団戦やったらこうなるってのがよう解ったな。
最後の種目が何になるか解らへんけど、ポイントは最悪やろな…



………………………



華澄
「ある意味、運にも助けられましたな」

舞桜
「でも、これは大きいよ? トップになってる可能性は高いと思う」

水恋
「後はどうやって勝ち抜くかだね…」

神狩
「余力も考えた方が良い…最後には黒組との決戦もあるんだから」

悠和
「そ、そうでしたね…危うく忘れる所でした」


そう、この戦いはあくまで黒組への挑戦権を賭けた争い。
最悪、潰し合いは避けなけなければならない…
勝ったチームが半壊していては、元も子も無いのですから。



………………………



女胤
「とりあえず、不利な状況で耐えていただいて助かりました」

喜久乃
「やっぱり、リーダー不在はたまりませんよ…」

騰湖
「とにかく、今回はほとんどポイントになっていない」
「どうやって次で取り返すかだ」

女胤
「ところで鳴さんは?」


「…医務室、アバラ何本かやったみたいだから」


それを聞いて私は少し焦る。
ですが、これも自分が巻いた種。
鳴さんの頑張りに答えなければなりませんね…



………………………



鐃背
「はっはっは! してやられてしもうたわ!!」

守連
「あ、はは…」


「仕方無いでしょう、あの玉を一撃で切断されては」

愛呂恵
「とりあえず、ポイントは大量に稼げたと予想します」
「後は、どれだけの差が埋まったか…ですね」

香飛利
「う〜お腹空いた〜…」


言われると私も物凄くお腹空いたよ…
そろそろお昼みたいだし、一旦休憩を挟むのかな?



………………………



サンダース
「さて、次は一旦昼休みとするが、まずはその前に経過報告だ!」
「まず1位! 青組56P!! 2位! 緑組49P!! 3位! 黄組46P!! 最下位! 赤組38P!!」


阿須那
(予想通り…か、こら面倒な事になったな)

華澄
(この差は大きい…ですが、一瞬で覆る可能性もあるだけに、楽観視は全く出来ませんな)

女胤
(思った以上に健闘してくれましたね…これならまだまだ1位は射程距離と言えます)

守連
(よしっ、まだ3位だけど全然追い付いた! これなら…)


サンダース
「以上で後は昼休みとするが、食堂を解放しておくのでそこで好きに食べると良い!」
「持ち出しも許可するが、食堂とトイレ以外への校舎内侵入は厳罰を処すので注意しておけ!!」
「次の種目発表は13時からだ! 5分前には集合しておけ!!」
「それでは、一旦解散!!」


「やれやれ、とりあえず昼飯か…何があるのかねぇ?」

サンダース
「貴方は黒組の教室だ、食事はそこで出す」


そう言われて、俺はサンダースに手を握られて引っ張られる。
思ったよりも力あるよな…やっぱコイツも鍛えてんのかね?
まぁ、何はともあれ昼休みは始まる事となった。



………………………



守連
「ハムハムハムッ!」

香飛利
「ングングングッ!」

鐃背
「ははは! ふたりは相変わらずじゃのう♪」

愛呂恵
「思ったよりもしっかりした食事ですね」
「バランスも考えられていますし、それなりの料理人が貴方作っているのだと予想出来ます」


「確かに雑な感じはしませんね、味付けも悪くありませんし」


私たちは食堂で固まってテーブルを囲んでいた。
それぞれ好きなメニューを注文し、好きなだけ食べられる。
料金もタダでなので私的にはとても助かるサービスだ。


鐃背
「とりあえず、しっかりと食事は取っておけよ?」
「ここから先、どんな種目が待っているか解らんからの…」

愛呂恵
「そうですね、動きが鈍らない程度に消化を考えていただきましょう」


「はい、了解です」



………………………



阿須那
「どんだけ食ってもタダなんやな…」

櫻桃
「サービスって奴なんじゃない? まぁ後の事考えると食い過ぎるのは問題だけど」

白那
「そうだね、オレも腹八分目にとどめておこう」

大愛
「同感だな、タダとはいえ食い過ぎて動けませんでは笑い話だ」

浮狼
「ここまで、それなりに激戦でしたからね…今後も激化する可能性は高いと思います」


とりあえず皆やや控え目に食事は取ってる。
守連たちは相変わらずバクバク食っとるけど、あれで腹叩かれても大丈夫なんやから凄まじいよな…
殴り合いはこれからもあるやろし、とにかく効率的に動ける範囲で取らなな。



………………………



華澄
「それでは皆さん…いただきます」

舞桜&水恋&神狩&悠和
「いただきます」


拙者たちは静かに食事を取り始める。
もっとも、拙者の場合は少食ですので皆さんに比べると明らかに量が少ないですが。


舞桜
「とりあえず、全部タダってスゴいよね〜」

水恋
「それなりに美味しいし、お腹空いてたから助かるな〜♪」

神狩
「…とにかく栄養補給、でも過剰に取っちゃダメよ?」

悠和
「タダってなると、つい頼みすぎちゃう事ありますもんね」
「作り手からすると、残されるのはちょっとショックなんですよね…」


そんな感じでそれぞれ会話を交えながら食事を進めていく。
拙者も時折会話に参加しながら、ゆっくりと塩魚を摘まんでいった…



………………………



女胤
「ふぅ…とりあえずは皆さん、ここまでお疲れ様です」

喜久乃
「このメンバーで何とか2位ですか…」

騰湖
「1位にならなければ最下位と変わらん、あくまで目的は聖殿の救出だ」


「まぁなるようになるさ…今はとにかく飯だ!」


「ボリボリ…まぁまぁかな」


穹さんはパスタを凍らせてボリボリかじっていた。
まるでスナック菓子の様に1枚の皿状で固まったそれを手掴みで食べている。
端から見ると異様な光景ですが、穹さんの食事としてはこれが普通なんですよね…
バーベキューの時も冷凍して食べてましたし…


騰湖
「お前は本当にそれが好きだな…それで味が解るのか?」


「問題無い、こっちの方が好きだし早く食べられる」


「そういや、何気に穹は早食いだよな…」


確かに穹さんの食事は早いですね…それなりの量があったカルボナーラがもう半分以上も無くなっています。
喜久乃さんは呆れながらカツサンドを食べていますね…


女胤
「喜久乃さんはそれで足りるのですか?」

喜久乃
「むしろこれ以上食べたら集中力が落ちますんで」
「腹は満たされない位でとどめておかないと…」


成る程、喜久乃さんもちゃんと考えているのですね…
その辺は素直に感心します。



………………………




「何じゃこりゃあ…」

サンダース
「何だも何も、昼食だ」
「この私が栄養『だけ』を考えて特別に作ったコンバットレーションだ」
「素早く最大限の栄養が得られる、これに勝る効率的な食事は無い!」

未来
「ふむ、味は薄いが悪くはないな」

舞理愛
「ちょっと待ちなさいよ!? もう少しマトモな料理は無いの!?」


おっと、流石に舞理愛がツッコンだな。
まぁ、こんなモン味もヘッタクレも無い戦闘糧食だからな。
つーか、軍人かよアイツ…確かにどことなく口調からそんな感じはしてたが。


サンダース
「文句を言わずにさっさと食え、次の種目が終わればようやく我々の戦いだからな!」


その言葉に全員が目を細める。
そうか、もうすぐ黒組がお披露目って訳だな…



「つーか、人数的には後ふたりはいるんだよな?」

サンダース
「無論だ…貴方もメンバーだが、必要が無ければ参加させるつもりは無い」
「それに、3人目のゲストはもう来ている…」


俺がギョッとすると、ガララッ!と教室の扉が開く。
そこに立っていたのは、見た事も無い少女だった。
いや、種族はすぐに解る、それ位解りやすい特徴と服。
だけど俺の知ってるそのポケモンとは、まるで色合いが違っていたのだ。

少女はダイヤの様に煌めく髪を長く靡かし、額にはダイヤの様な宝石が埋め込まれている。
後頭部には頭飾りを付けており、それもダイヤと同様の輝きが放たれていた。
そして、種族の特徴とも思える衣装のドレス。
俺は一言…こう呟いた。



「ディ…アン、シー…!?」

ディアンシー
「…ふざけた招待をしてくれたわね?」

サンダース
「来てくれて何よりだ、話は聞いているな?」


ディアンシーは軽く舌打ちし、釣り上がった目を細める。
端から見れば悪党面と言っても過言でではないであろうその顔は、おおよそ味方とは思い難い風だった。
ちなみに、ディアンシーとは言ったものの、彼女のその基本色はいわばブラックダイヤ。
そう、本来のディアンシーとは違い、彼女は黒い色で統一された姿なのだ。
ドレスさえもその黒さで、それこそが彼女固有の特徴。
色違い…と言うには、その黒さはあまりにもドス黒い物だろう。



「まさか…お前が『ペルフェ』か?」

ペルフェ
「だったら何? 前の混沌で勝った気になってるなら、笑いぐさだわ」


やはり、コイツがあの悪意をバラ蒔いた張本人。
しかも反省してる気配は無い、こんなのを混ぜるとか何考えてやがる…!


サンダース
「とにかくお前にも働いて貰う」
「黒組の勝利の為にな…」

ペルフェ
「…くだらないわ、さっさと終わらせて帰らせてもらうから」


ペルフェはそう言って離れた席に座る。
協調性はマイナス振り切ってそうだな…だが、腕輪は付けてるしちゃんと制限はされてるみたいだ。


サンダース
「ああそうそう、とりあえずお前も戦闘服に着替えて貰うぞ?」

ペルフェ
「………」
「……」
「…は?」



………………………



その後、ペルフェが暴れるに暴れたが、未来さんと舞理愛ちゃんによってあっさり拘束され、サンダースの手によって無理矢理着替えさせられた…
ちなみに戦闘服と言っていたが、当然体操服とブルマだ。
意外に似合ってるじゃないか。
同じ幻でもペルフェは結構胸あるな…恵里香とは違うらしい。
まぁ、ディアンシーはそれ程小さな幻でもないけどな。
メロディさんなんかは立派に巨乳だったし、やっぱり個体差なんだろう。


ペルフェ
「くっ、殺せ!!」


「まさかの姫騎士!? あ、いや姫って所は合ってるのか…」


ペルフェは顔を真っ赤にしながら体を縮こまらせていた。
むぅ…目付きは悪いが素体が良い分可愛いな。
とはいえ、あくまでコイツの目的は俺たちとは真逆。
詳しい事はあまり聞いてないが、恵里香とは犬猿の仲みたいだし、気を許さない方が良いのは確かだろう。


ペルフェ
「くそ…こんなくだらない混沌で、こんな恥辱を味わうなんて…!」
「覚えてなさい!? いつか地獄に叩き落としてやるから!!」


そう言ってペルフェは俺を指差し、そう宣言する。
いや、これ俺のせいじゃねぇっつーのに。
何この嫌がらせ? 俺今回マスコット枠よ?
それが何でいきなり理不尽に恨まれなきゃならんのか…

…いや、まぁ恨まれる原因はあるにはあったんだが。
直接俺がどうこうした訳じゃないし、どっちかって言うとあれはメロディさんと恵里香が直接の要因だしな。


舞理愛
「まったく、私を差し置いてドレスで登場なんて不愉快だわ」


「気にする所なのかそれ…?」


とりあえず俺は不味いレーションを食いながら、ツッコンだ。
こんなチームでマトモに動けるのか?
絶対にどっかで空中分解する気が…
つーか、ここまで600族3人とかブッ込み過ぎてんじゃねぇのか?
最後のひとりは誰になるのやら…?



………………………



サンダース
「さぁ、次が最後の種目、『勝ち抜き格闘』だ!!」


「勝ち抜き…ねぇ」


全員が息を飲む。
格闘…と言うからには、まさしく殴り合いなんだろうが。
しかし勝ち抜きってのは気になるな…


サンダース
「今回は全員参加の5本勝負!!」
「今目の前にあるバトルフィールドで、各チームひとりづつ参加して争ってもらう!」
「基本的にはバトルロイヤルと思えば良いだろう!」


既に運動場に配置されていたバトルフィールドはいわゆる円形で、高さ1m程はある舞台だ。
直径はおよそ50m程で、4人で戦うには少し狭く感じるかもしれないな。


サンダース
「基本ルールは単純明快! 最後まで立っていた奴が1位だ!」
「リングアウトは失格で、KO扱いとする!!」


ふむ、だとすると積極的にリングアウトを狙うのは効果ありそうだな。
パワーに自信が無い家族でもちゃんと勝てる可能性はある。


サンダース
「フィールドにはいくつか凶器も置いておくから、
自由に使って構わない!」
「以上で説明は終了だ! それでは10分後にオーダー表を回収する!」



………………………



阿須那
「5人全員参加か…」

白那
「考えて順番は決めた方が良いよ? タイプ相性もあるし」

大愛
「相手の戦力も考慮しなければ、下手すると連敗も有り得るからな」

櫻桃
「確かに…明らかに戦力差が出る組み合わせも有るだろうからね」

浮狼
「しかし、あえて馬鹿正直に決めてしまうのも裏をかけるかもしれません」


とりあえず、各ブレインの性格から予想してみるか…

青組…華澄の性格なら正攻法、と見せかけて逆にする可能性もある。
基本戦力は恐らく1番低い、レベルで言うなら事実上華澄のワンマンと言えるやろ。

緑組…女胤は流石に読めん。
強いて狙うなら中堅辺りに戦力を集中やろか…?
こっちはかなりレベルの高いメンバーや。
直接的なぶつかり合いでは黄組に並んで優勝候補やな。

黄組…守連なら正攻法やろ。
鐃背はんもおるし、小細工するとは思えん。
しかし、戦闘力は高いメンバーばっかりや…当たりを引かな最悪の結果になるかもな。


阿須那
(こっちも戦力は悪くないんやけど、良くも悪くも相性差は出るって所か)


特に、タイプ相性と言うかキャラ相性的なウエイトがかなり大きい。
この際…運に任せてみるか?


白那
「…オレは阿須那ちゃんに委ねるよ、結果には文句を言わない」

大愛
「ふん、最終的には好きにしろ」

櫻桃
「当たるも八卦当たらぬも八卦」

浮狼
「我々は全力を尽くすだけです」


皆の思いはひとつ…ほんならあえてストレートに行こか。
恨み辛みは無しや。



………………………



華澄
「…これでいかがですか?」

舞桜
「ある意味大胆な選択だね…」

水恋
「でも、個々の戦力考えたら1番不利なんだし、割り切るしかないよ?」

神狩
「任せる…私は戦うだけ」

悠和
「それで行きましょう、後は信じるだけです」


全員の意志は一切ブレない。
ならば、迷う必要も無いでしょう。
拙者たちに出来る事をやるだけです。



………………………



女胤
「…いかがですか?」

喜久乃
「…異論はありませんよ」

騰湖
「我はやるからには勝つだけだ」


「同じく、脳筋だろうが突っ込むだけだ!」


「…ふぁ〜好きにすれば?」


ある意味愚直。
ですが個々の単位で見れば、期待感は高いメンバーです。
後は…運否天賦、ギャンブルなら何とかなる気もしますわね。



………………………



守連
「どうするんですか?」

愛呂恵
「深く考える必要は無いでしょう、そんな柔軟な対応に期待出来るメンバーでもありませんし」

鐃背
「がははっ! その通りじゃな!! 当たって砕けろじゃ!!」


「はい、ここは素直に行きましょう!」

香飛利
「あい〜」


良くも悪くも、考えるのは苦手なメンバーだ。
だったら愛呂恵さんの言う通り深く考える必要は無い。
正面からぶつかろう…例え馬鹿だと思われても。



………………………



サンダース
「…どうした? 不安か?」


「そりゃな、単純なバトルとなれば間違いなく怪我人も出る」
「家族が傷付く姿をお前は涼しい顔して見ていられるのか?」


俺の言葉にサンダースは少し目を細めた。
相変わらず両腕を胸の下で組んでいたが、思う所はあるらしい。


ペルフェ
「くだらないわね、家族とか」
「戦いにおいて、有るのは生きるか死ぬか…全ては憎しみの苗床でしかない」

未来
「…確かに、小生もかつてはそう思っていた」
「だが、そこの聖殿はそんな考えの小生を打ち破ってみせた」
「その時点で、小生の考えは否定された…それだけが、力では無いのだと」
「小生にも、変わる事は出来るのだと…」


俺は未来さんの言葉を聞いて泣きそうになった。
あの未来さんが、そんな事を言ってくれたのだ。
改めて、俺は良かったと思った。
俺がやった事は、未来さんを否定したかもしれない。
それでも未来さんは変わる事を選んでくれた。


舞理愛
「くだらないのは否定しないけれど、私は勝つのが好きよ?」
「負ける事にも意味がある…それは思い知らされた」
「だけど、最後に勝つのは私…そこに憎しみとかどうでも良いわ」
「弱いのは自分が悪い、勝ちたいならそれだけの努力はする」

ペルフェ
「…本当にくだらないわ」
「人間なんて所詮欲望の塊! 憎しみや悪意しか持っていない!」


「お前はそれだけ人間の悪意を受け止めたのか…可哀想にな」


俺の哀れむ声にペルフェは反応して睨み付ける。
まるで俺を睨み殺す…と言わんばかりの視線を向けていた。俺は疑問に思う。
何故ペルフェはそこまで俺を憎む?
ペルフェの過去に凄惨な何かがあったのは予想出来る。
だが、その根源は何だ?


ペルフェ
「私を哀れむんじゃないわよ…!」
「あんたなんかにねぇ! 私の受けた悪意を理解出来るものですか!!」


「…そうだな、解らねぇよ」
「でも、言われなきゃそんなのは他人と同じだ」
「救えるなら俺は救うぞ? お前がもし救ってほしいなら」
「例え誰が否定しても、俺がお前は救ってみせる」


俺の言葉を受けて、ペルフェは首を横に振る。
まるで信じられない…そんな顔だな。
まぁ、信じてもらえるとも思ってないが。
コイツは、良くも悪くもあの惨事を引き起こしたド悪党だ。
俺からしても、恨み言のひとつは言いたくなる。
だが、俺は人を憎まない。
俺は俺らしくあれ…それこそが魔更 聖なのだから。


ペルフェ
「話にならないわ…どいつもこいつも頭がお花畑」
「貴方たちは欲望の深さを知らない、人間が持つ無限の欲望!!」
「欲望には誰も抗えない! 全ては欲望に屈する!」
「どれだけ綺麗事を並べようが、貴方も欲望には勝てないのよ!?」


「…そうかもしれない」

未来
「聖殿…?」

舞理愛
「………」


「だけど、俺の欲望はもっと深いぞ?」
「救えるなら全部救う…そこに悪も正義も無い」
「ただ、俺が救いたいから救う!」
「お前がどうしても拒むなら、無理矢理救ってやろうか…?」

ペルフェ
「!? や、止めなさい…私は貴方なんかいらない!」
「欲望まみれの癖に、私に上から口を利くな!!」


ペルフェはあくまで拒否した。
だがそれも仕方無い、お互いに譲れない部分はあるんだろうから。
だけど、俺は少し興味を持った。
ペルフェの憎しみを、少しでも和らげられるなら。
この戦いには…意味があるのかもしれない、と。


サンダース
「親交はもう良いか?」
「最後の種目は間も無く始まる…聖以外は待機していろ」
「さぁ、行くぞ聖…見届けにな」


「…ああ」


俺は真剣な顔をしてサンダースに付いて行く。
とにもかくにも、俺が望むのは家族の無事。
頼むから、程ほどにしてくれよ…?



………………………



サンダース
「それでは、今から最終種目! 勝ち抜き格闘の組み合わせを発表する!!」


「………」


その声に全員が息を飲む。
間違いなく今回は怪我人が出るだろう。
何せ、 ガチンコの乱闘バトルロイヤル。
基本的には何をやっても反則にはならない。
一部の過激派は何をしでかすか解らんからな…


サンダース
「まずは赤組から! 先鋒櫻桃! 次鋒浮狼! 中堅大愛! 副将白那! 大将阿須那!!」


成る程、あえてストレートに決めて来たか…
全体的にバランスは良いメンバーだし、そんなに不利にはならないかな?


サンダース
「続いて青組! 先鋒華澄! 次鋒悠和! 中堅神狩! 副将水恋! 大将舞桜!!」


何と青組は華澄自らが切り込み役。
中堅に安定感のある神狩さんを置いて、妨害特化の舞桜さんをあえて大将に据えるとは…
これは確実に先手を取って逃げ切るスタイルか…?
ある意味博打だが、面白いかもしれない。


サンダース
「次は緑組! 先鋒騰湖! 次鋒鳴! 中堅穹! 副将喜久乃! 大将女胤!!」


ここもどちらかと言うと前半に比重を置いてるな。
禁伝3連発は何気にストロングだ、ポイント的にも有利ではあるからな…


サンダース
「最後に黄組! 先鋒香飛利! 次鋒瞳! 中堅鐃背! 副将守連! 大将愛呂恵!!」


順当…と思わせてまさかの順番。
あえて中堅に最強候補の鐃背さんを置き、守連が副将で大将に愛呂恵さんとは…!
ある意味思い切ったオーダーだが、やはり予想は出来そうに無いな。
荒れるのは間違いない…が。


サンダース
「以上だ! それでは早速先鋒戦を開始する!」
「先鋒の4人はフィールドに上がれ!!」


まずは先鋒の4人がフィールドに上がる。
フィールドには予めいくつか凶器が置いてあり、使用は自由。
フィールドから外に出たらその場で失格で、ダウンと同じ判定。
そして最後まで生き残った者が1番多くポイントを貰える。



………………………



櫻桃
(やれやれ、先鋒が1番楽だと踏んでたんだけどねぇ〜)

華澄
(ここは確実に貰うでござる…皆様お覚悟を!)

騰湖
(勝つのは我だ…この辺りで聖殿へアピールもしておかんとな♪)

香飛利
「あう〜…」


かったるそうに頭を掻く櫻桃さんに、冷静な華澄。
どこか邪な感情を抱いてそうな騰湖にビビりまくってる香飛利か…
何ともビミョーなメンツだ…マトモな勝負になるのかこれ?
下手したら、華澄さんが各個撃破して終わりそうな雰囲気だが…


サンダース
「では1本目開始!!」


ケララッパ
『さぁ、いよいよ最終種目!! 最後に笑うのはどのチームかぁ!?』
『まず最初に動いたのは華澄と香飛利だぁー!!』



香飛利
「あいーーーー!!!」

騰湖
「ぐぅっ!?」
櫻桃
「うっせ〜」
華澄
(くっ! いきなり出鼻を挫かれるとは…!)


予想外に香飛利は先制の『騒ぐ』で華澄を攻撃する。
正確には、あの技は本来対象を選べない技だから狙うのはあくまでひとり。
だがあれは眠りの状態以上を解除出来る程の音波だ。
つまり音は振動、最低でも音を聞いた奴はそれなりの衝撃を受ける。



ケララッパ
『突然の騒ぐに華澄が吹っ飛ばされる! その音波は出鱈目に放たれ、騰湖をも襲っています!!』


騰湖
「ちっ! 威力もそこそこあるな…!」

櫻桃
「こりゃ良いや♪ こちとらノーマル無効だし、便乗させて貰うよ!」


櫻桃さんは微笑して足元の棍棒を拾う。
それを右手に持ち、左手で『シャドーボール』を作り出した。
そしてまずはシャドーボールで華澄を狙う。


華澄
「くっ!」


華澄はすぐに側転し、ボールをかわす。
だがその先には棍棒が飛んで来ていた。
華澄は反応してそれを蹴り上げるも、目の前には何と『クロスフレイム』が迫っている。
これには華澄も目を見開き、すぐに『水手裏剣』を1枚大きく作って、 炎球を切り裂…けない!?


華澄
(流石に水量が足りぬ! 騰湖殿の炎は拙者の水よりも強い!!)


華澄はそれでも水を両手に集めて炎球を受け止める。
ジュワァァァァァァァァァァ!!と凄まじい音で水は蒸発していき、華澄は苦悶の表情をしていた。
しかし華澄は何とか横にズレ、炎球を受け流す。
爆発しなかったのは幸いで、ダメージはそこまででもなかった様だ。


華澄
(迂闊…! まさか3人から攻撃を受けるとは!)

櫻桃
「解ってんだろ〜? 華澄ちゃんはあくまでトップ、最優先で狙われるのは自明の理だよね?」

騰湖
「この中で1番危険なのも貴女だからな…まずは脱落して貰おうか!?」


騰湖は再びクロスフレイムを練り上げる。
が…今度はその瞬間に水手裏剣が騰湖の右頬を切り裂いた。


華澄
「確かに…少々迂闊でござった、反省するでござるよ」
「ですが、来るのが解っているなら対処は容易」
「ここからは拙者も本気になりましょう…」


相も変わらずの殺気を放つ華澄。
どうせワザとビビらせる為に放ってるんだろうがな。
じゃなきゃさっきの手裏剣で騰湖の首はオサラバしている。
華澄さんは本来、虫も殺さない位優しい人だからな…
その分、怒らせると地獄の鬼も逃げ出す位怖いんだが…


櫻桃
(騰湖ちゃんは反応出来てない…! 流石にスピードじゃ勝てないし、やっぱふたりがかりでもこりゃキツいわ〜)

騰湖
(速いな…だが、威力はそこまででも無い)
(こちらも無傷で倒そう等と虫の良い話は考えてないぞ?)


予想外に騰湖は臆してない。
むしろ両手の熱量を更に高め、炎の色が変わって行く。
推定でも相当な温度だろう…騰湖の周りは蜃気楼が発生している。
櫻桃さんは警戒してすぐにその場から距離を取った。
華澄は身を屈め、右手に手裏剣を練る。
正面から技をぶつけたのでは華澄に勝ち目は無い。
だが華澄の顔に曇りは無い、細い目でしっかりと相手を睨んでいた。



ケララッパ
『なおも騒ぎ続ける香飛利を無視し、騰湖と櫻桃が華澄を狙う!』
『しかしながら、華澄は一切臆さず迎え撃つ体勢です!!』


華澄
「………」

騰湖
「ふっ…」


突然騰湖は笑う。
そして騰湖は炎球をゆっくり前に放ち、その場でしゃがんだ。
炎球に隠れ、華澄は騰湖を一瞬見失ったはずだ。
だけど華澄は動じずに左回りで回避行動に走る。
あんなスローすぎてあくびが出るクロスフレイムではハエも殺せんぞ!?
と、俺は心の中でツッコムものの、これが伏線なのは解っていた。


華澄
「!? 死角に…!」


そう、騰湖は華澄の移動に合わせて炎球に隠れ、死角を作っていた。
華澄は炎球に隠れる騰湖を狙う事が出来ず、隙を見せた時点で目の前にはシャドーボール。
櫻桃さんは既に距離を詰めており、華澄に攻撃を仕掛けていた。


華澄
「ちぃっ!」


華澄は小さな手裏剣でボールを切り裂くも、爆風で怯んでしまう。
ダメージは小さいが、この隙は大きい。
櫻桃さんは華澄の目の前に踏み込み、華澄の意識を自分に向けさせた。
そして、櫻桃さんが微笑すると突然の音波。
それは香飛利が訳も解らず出鱈目に放ったもので、たまたま櫻桃さんに向かっていったもの。
ゴーストタイプである櫻桃さんには当然無効で、それは櫻桃さんの体をすり抜けて華澄に直撃した。
華澄はかはっ!と血を少し吐き、確実なダメージがあったのが見て取れる。
そして櫻桃さんは笑いながら思いっきり華澄を蹴り飛ばした。



ケララッパ
『ここでまさかの同時攻撃ーーー!!』
『華澄は吹っ飛ばされ、場外に落ちるーーー!!』


華澄
「ぐぅぅっ!!」


華澄はそれでもフィールドの端にしがみ付いて落ちなかった。
流石の根性だが、今回ばかりは運が無い。
櫻桃さんはすぐにその場から逃げていた。
何故ならば、しがみ付く華澄にゆっくりと迫る炎球があったからだ…
あれは騰湖がさっき作ったもの…騰湖は炎球に隠れて移動し、同時に炎球の軌道をコントロールしていた。
玉転がしの様に炎球を軌道修正し、それを華澄に向けていたのだ。
地味ながらこれは功を奏した。
櫻桃さんは香飛利を利用し、華澄を追い詰める。
そして騰湖はそれらを利用して華澄にトドメを刺そうとしているのだ…



ケララッパ
『華澄絶体絶命ー!! これはもうどうにもならない!!』


騰湖
「仕上げだ! 落ちろ!!」


騰湖は勝ちを確信し、炎球を思いっきり押す。
炎球は加速して一気に華澄に迫った。
そして華澄は炎の下敷きに……ん? 下敷き…?
騰湖と櫻桃さんは笑っているが、俺は状況が見えていなかった。
俺が見ている角度からでは、華澄の位置はビミョーに見えず、どうなったのか解らない。
ただ、炎球はフィールドの外に飛んでいき、そのまま謎の外壁に当たって大炎上。
クロスフレイムは役目を終えた…
ちなみにこの見えない透明の外壁は安全装置で、観客を守る為の都合の良いバリアだ。


騰湖
「さて、後はうるさい香飛利を先に倒すか…」

櫻桃
「あ…!?」


櫻桃さんはゾッとした顔で華澄のいた場所を見てしまった。
これには俺もゾッとした。
まさか…まさか華澄が落ちてなかったとは!!

ゴッ!!とすぐに鈍い音。
それは鉄アレイで、正確に騰湖の後頭部を襲った。
騰湖はかなりの衝撃で前のめりに吹っ飛び、フィールドのマットに顔面からキスをする。
そして、そのまま華澄はすぐに櫻桃さんに目を付けた。


櫻桃
「な、何で落ちてないんだよ!?」

華澄
「拙者は蛙ですので…これでも指先だけで垂直の壁に張り付く位は出来ますぞ!?」


そりゃ忘れてたわ…華澄さんはゲッコウガだもんな。
華澄の場合体重も軽いし、それ位はやってのけるか。


華澄
「お覚悟を!」

櫻桃
「くっそ! タダでやられるか!!」


櫻桃さんは迎撃に入る。
あくまで逃げながら迎え撃つスタイルで、華澄の接近を拒んだ。
華澄は飛んで来る攻撃を正確に捌き、徐々に間を詰めて行く。
しかし、華澄は段々息を荒くしていた。
やはりダメージは積み重なっている…?


華澄
(内蔵にダメージが大きい…香飛利殿の技は、想像以上に効きましたな)
(加えて掌の火傷…無理矢理壁に張り付いたせいで、もはや感覚も無い)

櫻桃
「は、はははっ! どうやら限界が見えて来たね!?」


櫻桃さんは笑うも油断は一切しなかった。
華澄の目は死んでいない、むしろ強く櫻桃さんを睨んでいる。
櫻桃さんは逃げ続けた、華澄が限界を向かえるまで…
そして、ここで再び騰湖が動く。


騰湖
「この程度でぇ…! 負けるものかぁー!!」


騰湖は後ろ髪を真っ赤に染め、出血の多さを見せ付けた。
純白の美しい後髪は深紅に染まり、騰湖は怒りの形相をしている。
騰湖も騰湖で執念だな…ありゃ相当ダメージ大きいだろうに。


騰湖
「聖殿は我が救う! 誰にもこの気持ちで負けるものかぁーーー!!」

香飛利
「あいーーーーーん!!!」


折角騰湖が格好良いセリフを言ったのに…!
香飛利は全く! 空気が! 読めず!
無情にも…騰湖を場外まで、吹っ飛ばしてしまった…!



ケララッパ
『騰湖無惨!! 執念で立ち上がったものの、香飛利の追撃でリングアウトだぁーーー!!』


櫻桃
「……!?」


ビュウオゥッ!!と風切り音。
気が付けば櫻桃さんの側に華澄が踏み込んでいた。
櫻桃さんは辛うじて身を捻り、華澄の蹴りをかわす。
しかし、華澄は櫻桃さんの右手を左手で掴み、逃がさない様にしていた。
遂に捕まえた…! 流石に接近戦なら華澄の方が強いはず。


華澄
「はぁ…! はぁ…!!」

櫻桃
「ちっ…! 無理しちゃってさ、華澄ちゃんも騰湖ちゃんも…」


櫻桃さんは舌打ちするも、割りと冷静だった。
華澄は完全に息があがっているが、目は死んでいない。
右拳を固く握り、その手からは血が滴っている。
よく見ると火傷が酷い…! あんな手で壁に張り付いていたのか?
櫻桃さんもそれが解ってしまったのか、複雑な顔をしている。
これでは、華澄が有利とはとても言えない。
恐らく手があんなんじゃ、もう水手裏剣も正確にコントロール出来ないんだろう。
だけどそれでも、華澄は諦めていなかった。


櫻桃
「タップ(降参)したまえ」

華澄
「馬鹿はそんな言葉知りませんな…」


本当に大馬鹿ですよ華澄さん!!
つーか、何でここでネタの神様が!?
ま、まさかこれは…本当にやる気なのか!?


櫻桃
「ゴメンね〜アタシはゴーストタイプだから♪」

華澄
「!? くっ…!!」


櫻桃さんはガシッ!と華澄を羽交い締めにして拘束する。
そして当然対象がこのふたりしかいない以上、香飛利はここに騒ぐを撃ち込むしかない。
しかし櫻桃さんはゴーストタイプで無効!
これは完全に終わ……


香飛利
「あれ〜? これ何でここに〜? まっ、いっか〜」


それは、本当に偶然だったのだろうか?
いや否! 絶対にワザと配置したんだ!!
香飛利は、たまたま騒ぐの効果が切れて、たまたま足元を見ていた。
するとそこには…あ〜らビックリ『香飛利Z』のクリスタルが!!
香飛利は少し疑問に思ったものの、3歩歩いてしまったのでもはや疑問などあろうはずが無かった。
そして、当然の様にオーラ放出。
香飛利は思いっきり体を反らし、大きく息を吸い込む。
その場だけ異様な空気となり、香飛利は全力技を櫻桃さんの背中に向けて放った。


香飛利
「焼肉定食ーーーーーーーーーーー!!!!」


○ロディウスのメガホンネタかよ!?
えらく無難なの選んだな!!
とはいえ、焼肉定食の四文字熟語は物理的に櫻桃さんの背中にぶつかり、華澄ごと吹っ飛ばした。
その威力は流石にヤケクソ威力のZ技。
見事にふたりともリングアウトだ…



ケララッパ
『な、何とここで香飛利の必殺技が炸裂ぅ!!』
『華澄、櫻桃と順に場外となり、最後まで生き残ったのは何と香飛利だぁーーー!!』



「何つーメチャクチャな…結局固定砲台が生き残るとか」

サンダース
「香飛利は自分の役目に忠実だった…結果的に他の連中は利用するつもりが手を噛まれたという事だな」


って、香飛利は飼い犬かよ!
そこまで賢く無いんだからね!?
とはいえ、香飛利にしてはよく頑張った。
普段から争い事が嫌いな奴だから無理だと思ってたのに、随分成長したものだな。



………………………



サンダース
「それでは続いて次鋒戦!」

浮浪
(…2位スタートならばまずは上々、櫻桃殿はよくやってくれました)

悠和
(はっきり言って、私が多分1番弱い…)
(でもだからこそ、何か隙を見付けないと!)


(騰湖が最下位とか、本当に運がねぇなアイツ…)
(とりあえず油断は無しだ、ここは最低でも最下位は逃れる!)


(基本的に接近戦主体のメンバー…でしたら、私としては望む所ですね)


(単純な予想なら瞳さんは有利だろ…スペックならダントツで鳴だが)
(浮浪さんは経験豊富だし、やっぱり冷静だな…勝機はあるって顔だ)
(逆に悠和ちゃんは辛そうだな…仕方無いとはいえ青組は基本的にスペックが不足してるから)
(華澄の3位はかなり痛いと言えるだろうな…)


とにかく、今回はある意味解りやすい構図だ。
基本的に接近戦…勝つのはパワーかスピードかタクティクスか?
それとも…運、か?


サンダース
「それでは2本目開始!!」


ケララッパ
『さぁ2本目開始だぁ! 全員がほぼ同時に構え、まずは臨戦態勢!!』



想像以上に静かな立ち上がりだ。
全員が隙を窺っている。
浮浪さんと悠和ちゃんは剣を出して、警戒している…
鳴は相変わらずガードを上げない攻撃型の構え。
瞳さんは基本の型で迎撃って所か。



(ちっ、出来れば先に動きたくないんだけどな…)

悠和
(基本的にスペックが違う以上、自分から動くのは得策じゃない)

浮浪
(さて、このまま動かなければ制限時間で全員失格となりますが?)


(考えは同じですか…ですが、リスクを犯す必要はありませんね)


ケララッパ
『全員動かない! このままではいずれ制限時間で全員失格になってしまうぞ〜?』


サンダース
「ふっ、だがただ待つだけの連中でもあるまい」


「そりゃそうだ…そんな平和的な終わり方出来るなら最初からやってる」


堰を切る様に、まずはひとりが動く。
バチバチバチィッ!!と両手から電気を放ち、鳴がまず動いた。
両手を構え、手始めに瞳さんを『クロスサンダー』で攻撃する。
騰湖の技と酷似した電気の球体は鳴の腕から放たれ、かなりのスピードで瞳さんに迫っていく。
しかし瞳さんは動じる事無く、その場から横に移動し、ギリギリでクロスサンダーを回避した。
それを見て鳴は息を吐く。



「やっぱ無理だな…なら仕方ねぇか〜」


ズシィィィンッ!!と唐突にマットを右足で踏み鳴らす鳴。
その衝撃でマットは大きく揺れ、全員が一瞬怯む。
そして鳴は遅い足で瞳さんに向かって行った。



(流石にパワーは桁違いですね! ですが、当たらなければ意味はありません)


瞳さんは冷静に迎撃の体勢を取る。
鳴は構わず突進し、拳を固めた。
それを見て、浮浪さんも移動を開始する。
両手に『リーフブレード』のビームを出し、二刀流で鳴の背中をゆっくり追った。
悠和ちゃんはそれとは別方向、フィールドの外周ギリギリまで移動し、外周に沿って接近する。
果たしてどうなる? まずは鳴の攻撃だ!



(下手な攻撃はカウンター貰うだけだ、だったらゴチャゴチャ考えても仕方無い!)


(何も考えずに踏み込んで来る…?)
(手の届く距離で、拳を振ってこない…!)


瞳さんは何かに恐怖を感じたのか、すぐに1歩退く。
が、その先はフィールドの端。
それ以上は退けない。



(プレッシャーに負ける様なら、ここで潰れるぜ!?)


再びズシィィィンッ!!と力強い踏み込み。
再びマットが揺れ、端側にいた悠和ちゃんは場外に落ちそうになってしまう。
瞳さんはどっしりと構え、同じくズダァンッ!とマットを揺らして右にサイドステップした。



「!?」


…が、瞳さんの行く手を遮る鳴の腕。
鳴は両手を広げ、既に瞳さんの退路を腕で塞いでいた。
あれでは左右に逃げる事は出来ない…正面から至近距離でやり合うしかない!


浮浪
(…ここで水を差すのは無粋ですね、ならば見せてもらいましょう)

悠和
(最悪、共倒れにでもなってくれれば良いんだけど…)


この緊迫した空間で、浮浪さんは冷静に数歩退いた。
悠和ちゃんも傍観する気の様で、剣を消して足を止める。
どうやら、タイマンが成立したらしい…もっとも、当のふたりは既に目の前しか見えてないだろうが。



(左右の動きを封じられましたが、上には動ける)
(ですが、鳴さんの動きは鈍くとも反応は速い…)
(やはり、正面から打ち崩すしか無いでしょう)


「………」


鳴は冷静に瞳さんを見ていた。
手には僅かに電気を走らせ、いつでも動ける体勢。
瞳さんは覚悟を決めたのか、少し前屈みになってガードを下げる。
互いに防御を捨てる気か…?
パワー差は明白、あの距離ではテクニックもほとんど殺される。
瞳さんの技が、果たして通用するか…?



「はっ!」


「!!」


まず瞳さんが踏み込んで、鳴の鳩尾に右の掌底を叩き込む。
鳴は呼吸を一瞬止められ、動きを止めるものの瞬時に瞳さんに覆い被さって腰をロックした。
そして鳴はそこから瞳さんを逆さまに引っこ抜き、高く上げる。



ケララッパ
『何とノーガードで瞳の攻撃を急所に受けたのに、構わず引っこ抜いたぁ!!』
『何というパワーか!! これでは瞳も逃げられない!!』



「くっ!!」


瞳さんは逆さまの状態で両足を鳴の首に絡める。
そして足だけで鳴の首を絞めた。



「…!!」


「!?」


ズッシィィィィンッ!!と大きくマットが揺れる。
何と鳴は首を絞められたままジャンプし、瞳さんの後頭部をマットに叩き付けたのだ。
まさに力技…! あれじゃ瞳さんでも…


ケララッパ
『まるでフライングパワーボム!! 瞳の頭部に全体重がのし掛かったぁ!!』




「……!」


「へっ…」


何と瞳さんはそれでも立ち上がろうとする。
だけど鳴はそんな瞳さんに掴みかかった。
既に意識が朦朧としているのか、瞳さんは口から血を流して目の焦点が合っていない。
鳴はそんな瞳さんの腕を取り、力任せに振り回して投げ捨てた。
まるで人形の様に飛んで行った瞳さんは、フィールドのバリアまで飛ばされ、リングアウトとなる…



ケララッパ
『恐るべし鳴! 凄まじい剛力で技をねじ伏せたぁ!!』



「さ〜て、お次はどっちだ?」

浮浪
(流石と言うべきですね、やはり正面衝突は無謀)
(フィールドの広さも計算に入れて瞳殿を追い詰めるとは…)

悠和
(一対一じゃ絶対に勝てない! ましてや私の技は今ひとつ…!)


鳴は余裕を持ってフィールド中央に歩いて行く。
それを見て浮浪さんは構える。
二刀のビームを一刀に集中させ、それを両手でしっかりと構えた。
あの剣は人体でも容易に切断する。
いくら鳴でも、マトモに食らったらヤバイぞ?



「…なら、これはどうする!?」


鳴はクロスサンダーを浮浪さんに放つ。
浮浪さんはすぐにそれを斬るものの、浮浪さんは呻き声をあげて体を震わした。
クロスサンダーの電力が直接感電したんだな…
リーフブレードは一応接触技だし。


浮浪
「くっ…! やはり、一筋縄ではいきませんか」


「近付かなきゃ俺は斬れない、ましてやお互い足も速くないしな…」

浮浪
「確かに…この距離では踏み込めませんね」
「でしたら、こうするまで!!」


浮浪さんは近くに落ちていた鉄球を右手に握る。
鳴はクロスサンダーの構えに入るが、今度は浮浪さんの方が速かった。
浮浪さんはサイドスローで鉄球を投げ、それは一直線に鳴の顔面を狙う。
鳴は反応出来ず、それを額でモロに受けた。
かなりの衝撃に血が飛び散り、鳴は額を割られる。
首は思いっきり仰け反り、鳴は後ろにたたらを踏んだ。
だが倒れる事はせず、顔面を血で染めながらクロスサンダーを正面に放つ。
凄まじい電気を走らせながら電気の球は発射された。
だが悲しいかな…鳴の技は誰もいない方向を攻撃しただけで、浮浪さんは既に走っていた。
恐らく鳴は血で目が見えていない。
額の血は派手に出血するからな…


浮浪
「その気迫は見事…! ですが、これも勝負です!」


「く…そっ、たれがぁ!!」


鳴は右拳を握り、近付いて来る音を頼りに相手を狙う。
だがそれも空しく空を切り、浮浪さんは鳴の側まで辿り着く。
そして、浮浪さんは鳴の背後に周り、後頭部を思いっきり殴り付けた。
三半規管を思いっきり揺さぶられ、鳴の意識は…断たれる。
ガクッ!と、鳴は糸が切れた人形の様に両膝をマットに落とし、そのまま前のめりに沈んだ。



ケララッパ
『鳴、ここでダウン!! これで残ったのは浮浪と悠和だけだぁ!!』


浮浪
「ふぅ…技を使うと相手を殺しかねないのは問題ですね」

悠和
「浮浪さん…!」


悠和ちゃんは勇気を持って両手から風の剣『エアスラッシュ』を作り出す。
それを見て浮浪さんもリーフブレードを1本だし、余裕の笑みでこう言った。


浮浪
「少し、指南しましょうか?」
「悠和殿も、少しは成長しているでしょうし…」

悠和
「…よろしくお願いします」


よくよく考えれば、悠和ちゃんと浮浪さんは城で一緒に働いていた仲間だったな。
互いにそこまで面識があったのかは知らないけど、悠和ちゃんからしたら上司に近い存在だったんだろうか?


浮浪
「いつでもどうぞ、悠和殿…」

悠和
「はい…!」


悠和ちゃんは自分から斬りかかる。
浮浪さんは右腕の剣1本で風の剣を力任せに吹き飛ばす。
本来相性悪いはずなのに、無理矢理風圧で飛ばした感じだな。


浮浪
「思い切りは良い、ですが迷いが見えます」
「それでは容易に踏み込める!!」


ブォンッ!!と浮浪さんの剣は悠和ちゃんの首手前で止まる。
ワザと止めたわけだが、悠和ちゃんは今の踏み込みにまるで反応出来てなかったな。


悠和
「ま、参りました…!」

浮浪
「それも悠和殿の優しさだとは思いますが、剣を振るうのであれば、迷いは消す事です」
「甘さと優しさは別物と覚えておきなさい」

悠和
「は、はいっ」


結局、最後はそのまま浮浪さんが勝ってしまった。
最後は訓練みたいな形になっちまったけど、まぁふたりが納得してるんなら良いんだろう。
とりあえず、これで2本目も終了だ。



………………………



サンダース
「次! 中堅戦だ!!」


(ここまでは割りと接戦だな…ポイント的には赤と黄が優勢って感じか?)


とにもかくにも、ここからがある意味本番。
基本的に戦闘を前提としたメンバーが名を連ねて来る。
一筋縄でも二筋縄でもいかない戦いになるだろうな…



………………………



大愛
(やれやれ…鬱陶しい戦いになりそうだな)

神狩
(全員が伝説のポケモンとはね…でも、負けるつもりは無い)


(面倒…)

鐃背
(さて、遅れを取るつもりは無いが…簡単にはいかんじゃろうな)



ケララッパ
『まさに圧巻のフィールド上! かの伝説と呼ばれるポケモンが揃い踏みです!!』



まぁ、神狩さんだけ浮いてるけどな!
とはいえ、単純な格闘術なら意味が違ってくるし、大きな能力制限がかかってるこのルールじゃ基本が物を言う。
素人目で解る程、この組み合わせは単純じゃ無いはず。


サンダース
「よし、3本目始め!!」


ケララッパ
『試合開始だぁ! 全員がまずは構え、隙を窺っている!!』



開幕は誰も踏み込まず、様子を見る。
ただでさえ、一瞬の駆け引きが全てを覆す可能性がある戦いだ。
接近戦主体のメンバーじゃ簡単に踏み込めないだろう。



「………」


ケララッパ
『おっと、穹が徐々に冷気を放出し始める!』
『お得意の冷凍法で、牽制かぁ〜!?』



穹の冷気は自身を中心に円形に広がる。
その範囲は1m程だが、あれが穹が敷いたデッドラインなんだろう。
範囲に入れば一瞬で凍らされる、これはあからさまな警告だ。
残り3人もそれを見て、警戒心を高めた。


神狩
(あの冷気に抵抗があるのは、炎タイプの私だけ…)

大愛
(時を止めれば踏み込めるが、穹も承知の上)
(反撃を食らうのは目に見えるな…)

鐃背
(ふふ…面白い! あれは絶対の自信の表れ!)
(倒せるものならやってみろと言うわけか)


神狩さんと大愛さんは顔を引き締めるも、踏み込む様子は無い。
ただひとり鐃背さんだけが微笑していた。
そして鐃背さんは組んでいた両腕を解き、言葉を放つ。


鐃背
「このまま見合いをしてても仕方無かろう!?」
「勇気ある者は踏み込んでみるが良い!!」


鐃背さんはあえてフィールド中央に歩いて、手招きする。
明らかな挑発だが、あれもまさに自信の表れ。
鐃背さんは楽しめればそれで良い。
そこに、リスクの高さや勝率等と言う無粋な物は存在しない。
ただ、全力を持って戦いを楽しむ…それこそが鐃背さんの真理なのだから…



ケララッパ
『鐃背不敵!! 明らかに集中攻撃でも構わぬ!と言わんばかりの態度で挑発しております!!』


大愛
(ちっ…最悪、制限時間ギリギリまでは動かんつもりだが)

神狩
(鐃背さんの性格で動かないは有り得ない…いずれ勝手に動き出すはず)
(でも、そうなると黄組に一方的なポイントが入りかねない…!)


大愛さんと神狩さんは更に表情を引き締める。
黄組は恐らくポイント有利の状況だ、下手に鐃背さんを放置すれば不利になるのは明白。
やれるなら、ここで鐃背さんを仕留めるのはセオリーとも言える。
動かないのももちろん選択肢だが、果たしてそれが正解と言えるのだろうか?


鐃背
「…ふむ、動かぬのか動けぬのかは知らぬが」
「その気になれぬなら仕方あるまい…ならばやる気のある者とやるだけよ!」


そう言って鐃背さんは穹の方に向かって走る。
穹は特に驚く事も無く、冷静に鐃背さんの接近を見ている。
端から見れば勝負にならないタイプ相性だ。
レックウザは氷に弱い…ましてや接近戦しか今は出来ないのに、それでもあえて行くのか?


神狩
(ここしかない! 鐃背さんと穹さんの接点!)

大愛
(焦らした結果は良好だが…さて、どうなるかな?)


神狩さんと大愛さんもほぼ同時に動き出す。
鐃背さんに追い付かない様にゆっくりと接近し、まずは鐃背さんと穹の激突を見るつもりの様だ。
それはつまり、漁夫の利…互いが消耗した所で一気に叩く。
実に解りやすい作戦だが効果も高い。
鐃背さんとマトモにやり合うのは無謀だと判断した結果とも言えるな…



ケララッパ
『鐃背、穹に高速接近! 冷気のサークル手前まで一気に走り抜ける!!』



「マヌケ…あっさりかかった」

鐃背
「む…?」


穹は右手を前に翳して『凍える世界』を発動する。
その範囲はサークルの範囲をあっさりと塗り潰し、サークル外の鐃背さんを一気に襲った。
鐃背さんの体はすぐに凍り始め、明らかに動きを鈍くする。
だけど、鐃背さんの顔は笑っている。
目を細め、鐃背さんの体は突如発光。
そして次の瞬間……



ケララッパ
『あ、ああーーー!? 鐃背、あの状況の中、一瞬で間合いを詰めて穹の腹に拳を突き立てたぁーー!!』



そう、 まさに一瞬。
鐃背さんはリスク度外視で『画竜点睛』を使い、冷凍されかけながらも踏み込んでみせたのだ。
しかし、その代償はあまりに大きい…!!


鐃背
「くっ…吹っ飛ばすつもりだったんじゃがな」


「…ごぼっ!」


穹は血を吐き、鐃背さんの頭にそれがかかる。
同時にそれすらも凍り、鐃背さんの体は完全に凍っていく。
この賭けは…穹の勝ちだ!


大愛
「良い結果だ! そのダメージならそこから動けまい!!」


「…ぐ!!」


穹は接近する大愛さんを見て冷気を強める。
大愛さんは笑いながら鉄球を投げ、そこで姿を消した。
『時の咆哮』による時間停止。
大愛さんは穹の横に瞬間移動し、そこから拳を握る。
時間差で鉄球が迫っており、かわせない穹はどうしようも無い状態だった。
大愛さんが凍る前に穹には触れられる、触れられれば穹はそこで終わりだ。
だからと言って、下手に迎撃しても鉄球に当たる…当たればそこで終わる!


神狩
「ここまでは予想通り…時間停止は出来ても、それは僅か」

大愛
「な、何っ!?」


ここで神狩さんが『神速』の速度で、大愛さんの側に踏み込む。
大愛さんは予想していなかったのか、神狩さんの接近に驚いている。
神狩さんはここまで予想通りと言い、そのまま大愛さんにショルダータックルを敢行した。
かなりの勢いでぶつかられた大愛さんは、交通事故にあったかの様な勢いでフィールド外に吹っ飛んでしまった。
神狩さんはそのまま穹に狙いを定め、続けて『神速』の体勢に入る。



「調子に…! 乗るなぁぁぁぁっ!!」


珍しい穹の叫び声と共に、その場は極寒地獄となった。
その冷気は穹を中心に1m程の範囲で氷の山が出来上がる。
神狩さんはそれに巻き込まれ、氷の牢に囚われてしまった。
そして、パキパキ…!と音をたてて氷を割り、穹はフィールド中央に向かって息を荒らげながら歩く。
だがその体力もそれ程持たず、やがて血を吐いて前のめりに倒れた。



ケララッパ
『な、何と全員ダウン!? 僅か数分の惨劇で、フィールドには勝者すら残らなかったぁ!!』
『状況判断が難しいですが、ここはサンダース会長に判断を委ねられます!!』



「…お前、会長だったの?」

サンダース
「今回だけだがな…あくまでこの運動会の運営会長と言うだけだ」


成る程な…一時的、ね。
やれやれ…まさか全員ダウンとか、とんでもない結果になったな。


サンダース
「会長権限による判定を下す! 1位緑組! 2位青組! 3位赤組! 4位黄組だ!!」


妥当な所か…完全に凍った時点で鐃背さんは動けなくなってたし、大愛さんはリングアウトで失格。
最後は神狩さんも全力で凍らされたからな…炎タイプと言っても、炎技が封印されてたら溶かす事も出来ないもんな…



ケララッパ
『以上が3本目の結果となります! それではフィールドの清掃に入りますので、4本目はしばしお待ちを!!』



何人かのスタッフがフィールドに上がり、氷山を溶かしにかかる。
そして倒れている穹を担架で回収し、鐃背さんと神狩さんも救出された。
改めてキュレムの冷気は凄まじかったな…あれでも制御されてるから弱まってるはずなのに。
恐らく効果範囲を狭める事で、力を集約させたんだろうな…
穹の疲れ具合も相当だったし、技その物に全体力を注いだって所か…
穹は変に負けず嫌いな所があるみたいだったけど、あそこまでムキになったのは初めて見たな。



………………………



阿須那
「まさかあそこでああなるとはなぁ〜」

大愛
「…侮っていたか、まさかこちらが狙いだったとはな」

白那
「まぁ、ポイント的にはまだ有利な方だと思うし、最下位でも無かったからね」

櫻桃
「そうそう、まだ後2本あるんだし」

浮浪
「白那様も、阿須那殿も頑張ってください」


残すは2本…後はなる様になれやな。
ここまでやったんなら、全力尽くすだけや。



………………………



華澄
「神狩殿は?」

舞桜
「とりあえず医務室…炎タイプだし、大事には至らないと思うけど」

水恋
「とにかく後はアタシたちが気張らないと!」

悠和
「でも、無理はしないでくださいね? 大怪我をしての勝利だなんて、聖様は望んでいないんですから…」


確かに、悠和殿の言う通りですな。
勝利は大事ですが、先程の様な結果はあまり望まれる結果ではござらぬ。
実に難しいですが、例え負けても皆が無事である方が聖殿は喜ばれるのですから…



………………………



守連
「…鐃背さん」

愛呂恵
「結果は残念でしたが、鐃背さんの覚悟と勇気は見習うべきでしょう」


「はい…例え不利と解っていても、自ら道を切り開こうとするあの姿は、とても立派でした」

香飛利
「あぅ…」


香飛利ちゃんは泣きそうになるも我慢していた。
香飛利ちゃん、鐃背さんにとっても懐いてたから、悲しいんだね…
でも、負けは負け…後は、私たちがどうにかするしかない。
結果はどうなっても仕方無いと思うけど、それでもやれる内はトコトンやってみよう。
きっと、聖さんもそう言ってくれる気がするから…



………………………



ケララッパ
『さぁ、ようやくフィールドの調整が終わり、遂に4本目!』
『残るは2本、いよいよ副将戦です!!』


白那
(果たして、オレの力でどこまでやれるか…?)

水恋
(アタシが1番不利なのは解ってる…それでも、何もせずに負けなんか絶対認めない!)

喜久乃
(本音は適度にポイント稼いで降参したい所ですね…)

守連
(やるよ…絶対に1位を取る!)


良くも悪くも、今回は読めない。
実力だけなら守連はダントツだろうが、白那さんの能力もフツーじゃないからな。
逆に水恋さんと喜久乃は浮いてる…実力が無い訳じゃないが。
やや入れ込み過ぎな水恋さんに、やる気の無さそうな喜久乃。
こりゃ、思った以上にワンサイドゲームになるか…?


サンダース
「4本目、始め!!」


ケララッパ
『さぁ副将戦開始だぁ!! まずは意気揚々と守連がステップを踏む!!』
『ここから一気に加速して攻めるのが守連の得意戦術だぁー!!』



守連は早速『高速移動』のモーションに入る。
だが、それよりも速く突撃して来る者がいた。



ケララッパ
『おっとここで水恋が先制攻撃!! まずは守連の動きを止めたぁ!!』


水恋
「させないよ!! 先に動けるのはアタシだ!!」

守連
「くっ…! パワー負けする…!?」


予想外に水恋さんは守連を力で押し込んでいた。
『アクアジェット』の推力で頭から守連に突っ込み、守連は両腕でガードしてそれを止めていた。
しかし、返す事も出来ずに守連は苦い顔をする。
あくまで電気球も電撃も没収されてる守連は、ただ体を鍛えているだけの規格外ピカチュウだ。
そんな守連は、ぶっちゃけ水恋さんとそこまでパワー差は無い。
むしろフローゼルは意外に攻撃が高い種族だからな。


喜久乃
(良い展開じゃないですか…♪ 猪突猛進はむしろご褒美ですよ!)

白那
(やはり…喜久乃ちゃんは初めから勝ちを狙ってない)
(あくまでポイントだけを狙った行動…さて、そうなるとどうするべきかな?)


守連と水恋さんがぶつかってる間、喜久乃は近くに落ちてる鉄アレイを拾いに行った。
白那さんはそれを見て、軽く腕を振る。
すると、喜久乃が取ろうとした鉄アレイは一瞬で削り取られた…空間ごと。


喜久乃
「んげっ!? 何するんですかぁ!?」

白那
「道具を使う事がポイントになるのはもう知ってる、だからイタズラにポイントを渡す気は無いよ?」


白那さんはあえて喜久乃の動きに集中していた。
ポイント的にも不利な緑の動きをわざわざ牽制するなんて…


喜久乃
(こりゃ参りましたね…乱闘は望まない質なんですけど)

白那
(道具が使えなければ、技を使うしかない)
(だけど、それはこっちも同じ事、同じ事をやれば必然的に効果の高い方にポイントは比重が置かれる)


喜久乃は周囲を見渡し、凶器を探す。
今落ちてるのは鉄球と棍棒、メリケンサックだな。
1番近いのは、棍棒だがそれは白那さんの側にある。
残りふたつは守連たちの方角だ…どっちにしてもタダでは取れそうにない。


守連
「くっ…!」

水恋
「素のスピードとパワーなら、アタシの方が上みたいだね!?」


水恋さんは近距離で格闘戦に挑み、守連を攻め立てる。
守連は退く事なく応戦しているが、やはりパワーとスピードの差は純粋に辛い様だった。


守連
(単純だけど、面倒だね…でも、そろそろ慣れて来た)

水恋
「はぁっ!!」


水恋さんは体当たりで肩から守連にぶつかる。
体重差も守連には不利だ、下手すりゃ吹っ飛ば……


守連
「来るのが解ってれば踏ん張れるよ! 後、そろそろ反撃させてもらうから…」

水恋
「この…! まだ……」


水恋さんの拳は空を切る。
守連がいた場所には何も無く、水恋さんは思いっきりバランスを崩してしまう。
守連は単純に『高速移動』で後ろに回っただけ…
一瞬の隙を見切ってそれを実行した守連は流石と言えるな。



ケララッパ
『守連、瞬時に高速移動! 地味に見えるこの技ですが、こと格闘戦においては恐怖の技とも言えます!!』


水恋
「まだ1回なら…!」

守連
「遅いよ…これで5ギア!!」


守連は一瞬で懐に踏み込み、水恋さんの腹に右膝を突き立てる。
水恋さんの体はくの字に曲がり、悶絶する。
こうなったらもう手に終えるレベルじゃない…華澄ですら手に余る性能だからな。
守連はああ見えて戦闘センスも抜群だ。
元々、戦う事位しか出来なかった規格外ピカチュウ。
初めて会った時から、アイツは自分を鍛える事しかやってなかったからな…
人化しても、アイツはひたすら俺の為に強くなった。
何度負けても、アイツは諦めずに強くなろうとした。

結果、アイツは誰にも負けない位の規格外ピカチュウに成長したんだ。
その努力は、ただ電気球に甘えてるだけのピカチュウじゃあない。
守連を支えているのは、絶対的な努力。
守連の自信は決して慢心じゃない…失敗も敗北も、何度も経験して悔しい思いをしたからアイツは強くなれたんだ。



ケララッパ
『守連、圧倒的! もはや水恋はサンドバッグに等しい!!』
『これが黄組の大将の本領発揮かぁ!?』


喜久乃
(ヤバイですね…このままじゃ黄組に大量得点が入ってしまう!)
(白那さんはこっちを常に見てる…下手な行動は全部裏目に出る)


喜久乃はダッシュし、守連たちの方に向かう。
水恋さんは既にボロボロ、まだ倒れていないものの、ダウン寸前だ。
守連はそんな喜久乃の接近を背中で感じ取り、更に集中力を高めていた。
喜久乃は構わず両手を構えて『エレキネット』を放つ。
守連はそれを瞬時に回避し、電気の網は棒立ちの水恋さんにヒットした。
水恋さんは苦しみ、効果抜群の技に倒れる。
喜久乃はニヤリと笑い、作戦通りって感じの顔をしていた。
間違いなくこれは緑にポイントが入る…が、かなり危険な橋だぞ?


守連
「!!」

喜久乃
「づぅっ…!!」


守連は容赦無く喜久乃の横っ面に拳をめり込ませる。
だが、来るのが解っていたのか、喜久乃は吹き飛ばずに耐えていた。
しっかりと守連を睨み、逆に守連が驚いている。
ここまで喜久乃は想定済み、そして喜久乃は両手を構えて数歩後ろに退いた。
守連は一瞬反応が遅れるものの、その隙に踏み込もうとする。
喜久乃はそれに対して、足元にあった鉄球を拾おうと屈んだ。
そして、その行動を見て後方の白那さんが反射的に『亜空切断』の体勢に入る。
恐らく鉄球を消す気だ…赤組はポイント的に有利だし、白那さんがリスクを犯す必要は無い。
むしろ凶器でポイントを得られる方が不利だからな。

しかし、喜久乃の顔は笑っていた。
まさにここまで予想通りと、そんなしたり顔。
喜久乃は全て読みきったという顔で、すぐにその場から反転して逆方向に走る。
既に踏み込んでいる守連は状況がまるで解ってない。
そして白那さんの右手が鉄球を正確に削り取る。
が、これが導く結果は、白那さんも恐らく計算に入れてなかったのであろう結果を導いてしまった。


守連
「!?」

喜久乃
「かかった! 大金星ですね!!」


それは誰もが予想外の展開。
鉄球が空間ごと削られたと同時、守連と喜久乃の居場所が入れ替わっていたのだ。
恐らく、これは白那さんも計算してなかった。
あまりに守連の踏み込みが速すぎたせいで、守連の体は亜空切断に巻き込まれたのだ。
直接切断はされなかったものの、守連の体は切断された空間が修復する際の修正に巻き込まれ、場所を入れ換えられた。
喜久乃はこの結果を読んでいたからこそ、効果範囲から逃れていたのだ。
そして、それを読みきっていた喜久乃はエレキネットを守連の背中に放つ。
完全に不意を突かれた守連は、反応出来ずにモロに貰ってしまった。



ケララッパ
『な、何が起こったんだーーー!?』
『気が付いたら、守連が攻撃を受けているーーー!!』


守連
「…っ!!」

喜久乃
(これで十分ですね! 後は精々潰し合ってくださいよ!!)


喜久乃はその場からペラペラモードに変化し、素早く後ろに逃げた。
白那さんはそれに対して移動しようとする。
対して守連の目は、単純に白那さんを見ていた。


守連
(喜久乃ちゃんにやられたのは仕方無い…でも、ポイントは赤組がきっと多い)
(それなら、こっちが優先だよね…!)

白那
(ここまでがシナリオって訳か…! やってくれたね喜久乃ちゃん!!)


今の白那さんは空間移動が出来ない。
ダメージを負ったとはいえ、所詮効果今ひとつの小技。
少々素早さが落ちても、今の守連がスピードで遅れる要素は無い!


守連
「…!!」

白那
「くぅっ!!」


守連はジャンプキックで白那さんの顔面を狙う。
白那さんはガードを上げて防ぐも、体勢を崩して後ろによろける。
守連は着地と同時に踏み込み、拳を振るう。
が、白那さんはそれに合わせて右のケンカキックを合わせた。
カウンターで顔面に貰った守連は思いっきり後ろに吹っ飛ぶ。
タイミングだけでアレを合わせるとは…流石は白那さんだな。


守連
(流石に、ただ正面から攻めても返される…!)
(白那さんの予測はスピードもパワーも計算されてる、あの時と、同じだ)

白那
(流石に、パワーは落ちてるね…あの時程の圧倒的なプレッシャーは今は無い)
(それなら、冷静に対処も出来るさ…)


今度は互いに膠着する。
距離を取れば亜空切断の餌食、詰めても馬力で守連は勝てない。
スピードだけ上回っていても、白那さんには勝てないのだから…


喜久乃
(このままじゃ守連さんが不利ですかね…? とはいえ、下手に手を出すのは得策じゃない…)


喜久乃はペラペラモードのまま、ゆっくり移動を始める。
その先にあるのは、メリケンサックだった。
アイツめ…どこまでもズル賢い奴だ。
しかし、それも実力差を埋める要因だからな…この場合はそこまで読めない方が悪いと言える。


守連
「!!」
白那
「!!」


守連の踏み込みに、白那さんは正確に蹴りを合わせる。
守連はガードをしながら踏み込んでおり、吹っ飛ぶ事はせずに踏ん張ってみせた。
白那さんはそれに対して右手を構えている。
守連は反応してすぐに反時計回りに回り込んで死角に入った。
だが、白那さんはそれをも読んでおり、逆に左手を軽く振って空間を削る。
守連の反応の速さを逆に利用している!
守連は削られた空間の修復に巻き込まれ、白那さんの射程に引き込まれた。


守連
「がはっ!?」

白那
「悪いけど、今ならオレが勝つよ? 降参を推奨するけど…」


守連は引き込まれた瞬間に蹴りを腹に貰うが、白那さんの言葉を遮って拳を顎に叩き込む。
白那さんは予想外の反撃に怯むも、すぐに蹴りを返して守連を吹き飛ばす。
白那さんは今ので口の中を切ったのか、ペッ!と血を吐き出していた。


白那
「やれやれ…そういう所は結構変わったよね?」
「前だったら、無理に争う事はしない娘だったのに…」

守連
「…私がしっかりしないと、聖さんが笑ってくれないから」
「ただ、一歩退いて笑ってるだけじゃ、聖さんは悲しんでしまうから…!」


守連の奴…前のデートの事、気にしてたんだな。
いつも優しく笑って、何があっても一歩退いて。
戦う時は、いつも自分が最前線に出て1番傷付く。
俺はそれでも笑い続ける守連を見ていられなかった。
でも、今の守連を見て俺は少し安心する。
今のアイツなら、何も心配無い。
自分に自信を持って、素直になる。
それだけで、アイツは前よりも更に強くなれるんだから…


白那
「そっか…なら、オレもその気にならないとね!」


白那さんはそう言ってやや大きなモーションで右手を振るう。
すると、空間が削れて近くの棍棒を自分の元に引き寄せた。
そして、それを拾って白那さんはブンッ!と試し振りする。


白那
「悪いけど、聖君の事に関してはオレも退かないよ?」
「守連ちゃんは最大のライバルだからね、今回は勝たせてもらう!」

守連
「悪いですけど、今回も私が勝ちます…!」


守連は体勢を低くしながら突撃するタイミングを見計らう。
真っ直ぐ行っても回り込んでも全て読まれる。
あの読みを越えるには、それ以上のスピードを叩き出すしかない…!


守連
(ここまでで6ギア…! 後1ギア上げられれば!)

白那
(まだ守連ちゃんは最高速じゃない…トップギアに入ってオレが反応出来るか?)

守連
「…行くよ、トップギア!!」


守連は瞬間移動と思える速度で白那さんの背後に回り込む。
白那さんは振り向く事もなく、左手を振る。
守連の目の前が削られ、その空間が修復される力が守連に…


守連
「!!」

白那
「ぐぅっ!?」


守連は引き寄せられるのを予測してジャンプしていた。
そして、あらかじめ蹴りを放つ体勢に入っており、引き寄せられたと同時に白那さんの横腹に蹴りを浴びせる。
白那さんはカウンターに失敗してしまったが、それでも棍棒の先端で守連の脛(すね)を思いっきり突く。
守連は呻き声をあげ、そのままマットに落ちてしまった。


白那
「!!」

守連
「くっ!!」


白那さんの棍棒は容赦無く守連を狙う。
守連はマットを転がりながら避け、すぐに立ち上がろうとするが、右足が怪しいのか動きが鈍かった。


白那
(辛うじて足は潰せた…でも亜空切断のPPはきっちり0だよ)

守連
(どうしよう…? この足じゃもうスピードは出せない)
(せめて、電撃が使えたら…ううん、無い物をねだっても仕方無い)
(後は…全部出し切るだけだ! その結果負けても、それは仕方無い)


守連の顔は諦めていなかった。
だけど覚悟した顔だな…やるだけやる気か。
白那さんも冷静に棍棒を持って威嚇する。
スピードが出せないなら、もう踏み込めない。
リーチも負けている中、勝負はもう決したも同然だが…?


白那
「!!」


白那さんは反転して棍棒を振る。
カキィン!と金属音が響き、メリケンサックが跳ね返った。
そしてその後、電気の網が白那さんを襲う。
白那さんはそれを回避出来ずにモロに食らってしまった。


白那
(ここで動くか…! 意外に積極的だったね!)

喜久乃
「ご苦労様です…美味しい所は貰いますよ?」


喜久乃はここで動く。
勝ちを確信したのか、それとも慢心か?
とにかくここで遂に三つ巴が発生…どうなる?


喜久乃
「既にPP切れの白那さんには悪いですけど、電撃地獄に落ちて貰います!!」


バチバチバチィ!と再び白那さんをエレキネットが襲う。
白那さんは歯を食い縛りダメージに耐えている。
喜久乃の奴、相変わらずドSだな…嬲り殺しにする気か。
性格の悪さは抜け目の無さでもあるが、少し後で絞ってやらねばならんな。


守連
「…白那さん、ゴメンなさい」

白那
「!?」


守連は片足だけの力で白那さんの右肩にジャンプして乗る。
そして、そのまま思いっきり左足で喜久乃に向かって突撃する。
白那さんの体は守連の土台にされた為、守連の射出の反動でマットに思いっきり後頭部からめり込んだ。
その衝撃で白那さんは気絶したのか、そのままぐったりダウンする。
守連は凄まじい勢いで喜久乃に突撃…右膝を喜久乃の顔面にめり込ませた。
…が、あまりの勢いで突っ込んだせいで、守連はそのまま前方へのベクトルに対し、着地も出来ずに場外まで吹っ飛んで行ってしまう。
喜久乃はマットに沈んだものの、まだ気は失っておらず、ヨロヨロと立ち上がって周りを見た。
そして、遂に決着は着いたのだ…


サンダース
「そこまで!! 1位緑組! 2位黄組! 3位赤組! 4位青組!」


「…何だかんだで、緑が連勝かよ」


ポイント的にはかなり美味しいだろうな…
ラストでどう転ぶか解らんが、こりゃどこが勝ってもおかしくないのかもしれない。
まぁとにかく…無事に終わって良かった。



………………………



阿須那
「………」
舞桜
「………」
女胤
「………」
愛呂恵
「………」


既に、大将戦は緊迫状態。
全員が無言で今か今かと待ち構えている。
表情からは細かい事は読めないが、泣いても笑ってもこれが最後。
この結果によって黒組への挑戦権が決まるのだから…


阿須那
(ある程度予想はしとったが、相性ならやや有利か)
(せやけど、ただでは終わらんわな、このメンツなら)

舞桜
(そうそうたるメンバーだよね…でも、任された以上私は勝つよ)
(レベルの差は、技術と度胸で埋めてみせる!!)

女胤
(皆さんの期待には答えなければなりません)
(最後だからこそ、勝って皆さんと祝いましょう!!)

愛呂恵
(思えば、あまり家族とこうやって争う事はありませんでした)
(正直、絆という意味では私は1番細いと言わざるを得ません)
(ですが、応えましょう…私の想いが、決して負けていないのだと言う事を)


サンダース
「それでは、大将戦…最終戦開始だ!!」


サンダースの掛け声と共に全員が構える。
そしてまず真っ先に動いたのは、やはり愛呂恵さんだった。



ケララッパ
『愛呂恵速攻ーーー!! まずは対角線の阿須那に狙いを定めたーー!!』



愛呂恵さんはショートジャンプの連続で一気に間合いを詰める。
阿須那はそれに反応して『炎の渦』を手前に着弾させた。
愛呂恵さんの目の前は強烈な炎の渦が巻き起こり、視界を封じられる。
阿須那はそこから左に移動し、まずは射線から離れた。
が、その瞬間阿須那の影に一筋の矢が刺さる。


阿須那
「!? ちっ!!」


ケララッパ
『いきなりの攻防! 愛呂恵と阿須那の激突かと思いきや、舞桜の横槍がしっかり刺さる!!』



舞桜さんは冷静に『影縫い』で阿須那の影を縛り、フィールドの端に沿う様にして時計回りに移動する。
まさにスナイパーのお手本だな…撃ったら即移動。
基本的に相手の死角を意識しているのが解る…今は愛呂恵さんの背後に位置し、炎の渦に隠れる角度で阿須那の死角にも入ってる。
女胤は今の所移動しかしておらず、全体を良く見渡している様だ。


愛呂恵
(チャンスには違いありませんね…ならば)


愛呂恵さんは一瞬屈んだと同時に、炎の渦を突き破る。
ショートジャンプの射出速度が速い為、愛呂恵さんはほとんど熱さも感じる事無く阿須那の正面に飛び出した。
そしてそのまま右膝で阿須那の顔面を狙う。


阿須那
「クソッタレ…!!」

愛呂恵
「!?」


阿須那もタダでは転ばなかった。
愛呂恵さんの『飛び膝蹴り』を左腕1本でガードし、残る右手で炎の渦の2発目を作る。
そして思いっきりガードごと仰け反らされるも、しっかりと宙の愛呂恵さんに炎の渦を着弾させた。


ドゴァァァァァァァァァッ!!



ケララッパ
『阿須那ここで死に物狂いの反撃ぃ!! 攻撃後の愛呂恵はかわす事も出来ない!!』



愛呂恵さんに着弾した炎の渦は愛呂恵さんの動きを確実に止める。
制御されてるとはいえ、その威力は長く焼かれて無事な代物ではない。
愛呂恵さんはやや苦悶の表情をしながらも、着地してからすぐ、冷静に高速回転ジャンプする。
それも炎の渦の回転とは逆方向に…すると、炎の渦は瞬時に消えた。


阿須那
「マジか!? ○ッドスラッシュタイフーンかいな!!」

愛呂恵
「急場凌ぎの方法でしたが、上手く行きましたね…」
「ですが、無傷とはいきませんでした…流石は阿須那さんです」


愛呂恵さんはやや呼吸を荒くしている。
そして長い耳で体をパンパンと払い、燃えカスを消していた。
良く見ると虫食いみたいに愛呂恵さんの服が穴空きになってる…下手すりゃ真っ裸にされてたのか、阿須那の炎恐るべし。


阿須那
(とりあえず動ける! もう2度と食らわんで舞桜!?)

舞桜
(流石に警戒されてる…でもこの位置なら優先的に攻撃は受けない)
(女胤ちゃんは愛呂恵さんの背面? 武器を使う気かしら?)


阿須那は一瞬舞桜ちゃんを睨み付け、そしてすぐにバックステップで距離を取る。
愛呂恵さんはダメージがあるのか、すぐには追わなかった。
いや、むしろ背後にいる変態を警戒しているのだ!
愛呂恵さんの服は既に小破! ここで更に攻撃を受ければイヤーン♪な大破グラに変化してしまうだろう。
…愛呂恵さんだったら、それでも構わず戦いそうだが。
いや、流石に大破進撃はダメ! 絶対!!


女胤
(ここまで全員道具の使用は無し…となればここでまずはポイントを貰うべきですね)


女胤は足元の鉄球を広い、それを愛呂恵さんに投げ付ける。
およそ攻撃の為とは思えない程テキトーな投げ方で、ゆっくり山なりに愛呂恵さんへと襲いかかっていた。
同時に女胤は時計回りに走る…あくまで舞桜さんとは距離を離す方針の様だ。
逆に舞桜さんはそれに対して同じ感覚で時計回りに動く。
ややこしいが、一応解説すると、現在位置はフィールド北側に女胤、東側に阿須那、中央やや北西寄りに愛呂恵さん、そしてやや南西側の端に舞桜さんだ。

愛呂恵さん以外は全員フィールドの端を移動しており、まるで近付こうという気配が感じられない。
この戦いにおいて、完全に近距離で戦うのは愛呂恵さんのみ。
阿須那は中距離、女胤は中〜近距離、舞桜さんは遠距離。
それぞれ得意とする距離が全く違う。
しかし、ただ逃げているだけじゃ時間切れで失格。
そんな決着を望む4人じゃないだろ。

つまり、誰かがこの均衡を破らないといけない。
そして、常にそれを率先してやろうとする者が……



ケララッパ
『ここで再び愛呂恵が動く! 飛んでくる鉄球を両耳で軽くキャッチ!』
『そして、その場から振りかぶって思いっきり投げたぁ!!』


愛呂恵さんは全身のバネを使い、耳で掴んだ鉄球を全力で投げた。
それは一直線に阿須那の方へと向かい、まさに豪速球!
阿須那は辛うじて身を捻って回避するものの、突然の攻撃にバランスを崩してしまった。
そして、それはまさに均衡を崩す一撃となる。


ドシュゥッ!!


阿須那
「がはぁっ!?」


バランスを崩した阿須那の腹に容赦無く刺さる黒の矢。
それは動きを封じる為だけの矢ではなく、相手を射殺す為の矢。
まさしく攻撃技としての影縫い…! ここで舞桜さんはそれを撃ったのだ!
幸い急所は外しているのか、阿須那は苦しみはしても血を流す事はしてない。
ゴーストタイプの技だし、物理技とはいえ物質による衝撃じゃ無いからな…
とはいえ、刺さってはいるんだから相当痛いだろアレは…?



ケララッパ
『一瞬の隙を突いて舞桜の矢が突き刺さる!!』
『阿須那、度重なる攻撃でまたしても動きを止められたぁ!!』



阿須那は悶絶しながらも炎の渦を作る。
そして、自分の足元付近にそれを着弾させ、自分の身を炎の陰に隠した。
そのままヨロヨロと阿須那は移動を開始する…完全に足止めする訳じゃ無いのか? それとも効果がそれ程薄いのか…?


舞桜
(想像以上に束縛時間が短い…! 影を狙わずに射貫いたから、仕方無いか…)
(でもこれで阿須那さんはほとんど虫の息! 後は逃げ回りながら牽制していくだけ…)


舞桜さんは阿須那の状況を瞬時に察したのか、すぐに移動する。
愛呂恵さんや女胤の動きを警戒しながら、あくまでクレバーに。
こういう時の舞桜さんは本当にプロの顔をする…普段は恥ずかしがり屋で、あまり自分から前に出る人じゃ無いんだけどな。
2号店での仕事もプラスになってるんだろう、あれから明るくなったもんな…


阿須那
(マズイな…流石にこれはヤバイ)
(せやけど、タダでやられる気は無いで?)
(この状況や、必ずアイツは来る! こうなったら…死なばもろともや!!)


阿須那は胸元から爆弾を取り出していた。
そういや、開始直後のどさくさで拾ってた奴だな。
いつの間にか胸元に仕込んであったとは…
そして、そんな阿須那に向かって忍び寄る変態の影。
そう、ヤツはこの時を待っていた…安全に阿須那を自分の手で仕留められるこの時を!


女胤
(ふふふふふ…! 予想以上に早く阿須那さんが脱落しそうですね!)
(やはり聖様は私を望んでいる! 黒組は緑組と戦いたがっているのですわ!!)


女胤は邪な笑みで笑い、『タネマシンガン』の体勢に入る。
愛呂恵さんも近付いて来ており、あくまで阿須那を先に倒すつもりの様だ。
だけど、愛呂恵さんも女胤も爆弾には気付いていない、このままじゃまとめて…?


阿須那
「今や…! 食らい…やがれぇぇぇっ!!」

女胤
「なっ!?」

愛呂恵
「…!?」


阿須那は右手で爆弾を投げ、左手で炎の渦を同時に放つ。
すると、爆弾と炎の渦が宙でぶつかり合い、それは一気に誘爆する。
瞬間、凄まじい轟音と共に3人が吹き飛んでしまった。
阿須那はそのままリングアウト、女胤は辛うじて落ちはしてない。
愛呂恵さんは…中央付近まで吹っ飛んで前のめりに倒れていた。



ケララッパ
『ここでまさかの自爆戦術!! 阿須那、自らの炎と爆弾で愛呂恵と女胤を道連れにしたぁ!!』
『阿須那はこの時点で最下位確定! 他のふたりは無事なのかぁ!?』


女胤
「…く、危なかったですね」


女胤はここで立ち上がる。
そして周りをグルリと見渡し、すぐに横にステップした。
すると、カツン!という音と共に女胤の足元に矢が刺さる。
舞桜さんの攻撃を瞬時に把握するとは…こういう読みは何だで女胤の良い所だよな。


舞桜
(流石に距離が有りすぎる…! それに、思ったよりもダメージは負ってない?)

女胤
(…冷静な判断です、常に死角に移動し、最良の位置から一方的に攻撃を放つ)
(ですが、一対一で障害物の無いこのフィールドでなら、対処の方法はいくらでも有ります!)


女胤はゆっくりとステップを踏みながら舞桜さんの方に向かって行く。
左右不規則に体を揺らし、的を絞らせない動き。
女胤は、確実に舞桜さんだけに焦点を絞っている様だった。


愛呂恵
(…く、まだ動けますね、思った以上に爆弾の威力が増幅されましたが)
(体が動く内は…戦います!)

女胤
「…やはり動けましたね、ですが」


女胤は突如タネマシンガンで愛呂恵さんを攻撃する。
愛呂恵さんは立ち上がろうとした直後で、まだ状況が把握出来ていなかったのか、さりげなく移動して中央に近付いていた女胤の接近に気付かなかった様だ。
ショットガン状のタネマシンガンは、全弾愛呂恵さんの背中に命中し、愛呂恵さんは呻き声をあげる事も無く気絶させられた。
本来の威力なら肉を抉り取るレベルだからな…制御されててもあの距離なら、十分痛みで意識は持っていけるか。

そして、これで完全に一対一だ。



ケララッパ
『女胤容赦無し! 起き上がろうとした愛呂恵の背中に向けて一斉掃射!!』
『戦場に置いて情けは無用!とばかりの無情な攻撃に愛呂恵ダウンだぁ!!』


女胤
「さて…それでは決着を着けましょうか?」

舞桜
(…あの動きに当てるのは難しくない)
(でも、影を縛って移動した所で倒すには至らない)
(このまま時間切れを待つ…? でも、それじゃポイントにならない)

女胤
(悩んでいますね…冷静に判断はしている様ですが、この戦いはあくまでポイント性)
(例え1位を取れなくとも、ポイントでリードしていれば勝ちなのですから!!)


女胤は一気に速度をあげて距離を詰める。
舞桜さんは冷静にその動きに対して距離を取る。
だが、外周を移動する舞桜さんに対して、中央から間を詰める女胤の方が移動距離が短い。
つまり、同じ距離を移動しても女胤の方がより近付いてしまうのだ。
このままじゃ、いずれ舞桜さんは捕まる!


女胤
「ちなみに、こちらも攻撃は出来るんですよ?」

舞桜
「くっ!!」


女胤はある程度の距離でタネマシンガンを掃射する。
一気に扇状の範囲で放たれるそれは、とても全弾かわせる物でなく、舞桜さんは何発か被弾してしまった。
そして当たった箇所の服に穴が空く。
舞桜さんは気にせずに矢を構える。
動きを止める為の矢じゃない、相手を射貫く為の矢。
あくまで移動を続けながら、女胤の動きを良く見て狙いを定める。
距離は数m…高速で射出される矢は女胤でもかわせはしないだろう。


女胤
「もう遅い! この距離なら相打ちでも私が勝ちます!」
「貴女の攻撃に一撃必殺の驚異は有りません!」

舞桜
「…そうね、でもこれならどう!?」


女胤は目を見開いて唖然とする。
タネマシンガンの構えに入ったまま、女胤は舞桜さんの体から放たれるオーラに驚愕していた。
どうやらまたしても『偶然』にZクリスタルが落ちてた様で、舞桜さんはいつのまにかそれを拾っていたのだ。
だからこそ、舞桜さんは勝ちを確信している。
そして女胤の敗北がこの時点でほぼ確定した瞬間だった。


女胤
「そ、そんな馬鹿な!?」

舞桜
「これが私の全力…! 『シャドーアローズストライク』!!」


女胤は構わずタネマシンガンを発射する。
が、舞桜さんのオーラはそれ等を弾き返してしまった。
舞桜さんはそのまま両腕を広げて突進する。
流石に飛ぶ事は出来ないから仕方無いか…
とはいえ、しっかりと多数の矢は舞桜さんを追従しており、ちゃんとZ技っぽくはなってる…何か地味だけど。


舞桜
「撃ち抜く! 全弾持って行けぇぇっ!!」

女胤
「オ・ノーレ!!」


舞桜さんは踏み込んで女胤の腹にアッパーをかます。
女胤の体は軽く持ち上がり、舞桜さんの頭上まで上がってしまった。
そして悶絶しながら多数の黒い矢が女胤を撃ち抜いていく。
そのまま女胤の体はゆっくりと浮き上がり、そのままゆっくりと落ちていった。


舞桜
「これが私の…切り札よ!!」


舞桜さんは女胤に背を向けてポーズを取る。
まさにどこぞの鉄屑さんの必殺技みたいになったが、まぁネタとして割り切ろう!
とりあえず悪は滅びた…これで世に平和が訪れる。
ちなみに爆発はしないのでご安心を。



………………………



サンダース
「以上で、全種目終了だ!! これより、総合成績発表に入る!!」


全てが終わり、俺たちは運動場でサンダースの言葉を聞いていた。
とりあえず全員無事(?)に終わって良かったな…
結果がどうなるかは解らんが、ラストは黒組との決戦。
果たしてどのチームが優勝するのか…?


サンダース
「と、その前に…まずは個人賞を発表する!!」


「FC版だと全く意味無いアレな」

サンダース
「こちらではしっかりとチーム点に加算するから安心しろ!!」


「ちなみにGB版とDS版なら加算されるぞ?」

サンダース
「それではまず敢闘賞…守連!! 10P!」


結構大きいな…下手すると、順位変動も大きいんじゃ?
まぁ、細かい所は俺には解らないけど。


サンダース
「次は最優秀選手賞…舞桜!! 20P!」


おお、最後も活躍したし、出る種目全部で良い活躍してたからな〜
有る意味妥当だろ。


サンダース
「次は舐めてる奴で賞…騰湖!! -15P!」


ああ…まぁ、騰湖は運も無かったよな。
結局ロクな活躍出来てなかったし、仕方無い所か。


サンダース
「次はポケモン学園賞…穹!! 10P!」


ふむ、何だで活躍はしてたもんな。
どういう基準で付けてるのかは解らんが。


サンダース
「次はイーブイグループ特別賞…鳴!! 25P!」


うお…これまたデカイな。
騰湖のマイナスをチャラにしてお釣りが来るポイントだぞ?
こりゃ一体どこが勝ったんだか…?


サンダース
「そして最後に、魔更 聖の君に決めたで賞!」


「は…? 何だそりゃ?」


全員がざわめく。
そりゃ完全に注目の的にされてるんだから仕方無いわけだが…


サンダース
「この賞は聖から各組にポイントを分配する!」
「そして、そのポイントは順位性で、聖が分け与えたいと思った順番で、より多くポイントが入るという賞だ!!」


「何じゃそりゃ!? 最後は俺任せかよ!」


全員が息を飲んで俺に注目する…
うーむ、退くに退けねぇわな。
仕方無い、ここは覚悟決めてやるか。



「要は、俺が個人的に順位付けたら、その順位に応じて分配されるんだよな?」

サンダース
「そうだ…後になればその分、分配は減る」


ぶっちゃけ、俺の匙加減で完全に決まるわけか…
うーむ…悩むな。



「…じゃ、とりあえず個人賞無かった赤組が1番な」

阿須那
「やった! 流石聖、愛してる!!」


女胤が露骨にブーイングしてるな、アイツは全く…
とりあえず無視して俺は次を決める。



「次は黄組、何となくポイント不利だろ」

守連
「あはは…何となく、なんだ」


守連は何とも言えない顔をしていた。
まぁ、アイツはアイツでやるだけやったし、結果に悔いは無いだろうが。



「次は青組! 皆良く頑張ってたし」

華澄
「有り難き幸せ…その気持ちだけでも嬉しいでござる」


華澄も割り切ってるよな…悔しくないわけじゃないんだろうけど。
普段から争い事には加わりたがらない人だからな。



「で、最後は緑組! 何て言うか、色々アウト!」

女胤
「何故に!? 私たちも体を張って頑張りましたのに!!」


「とにかくお前らはやりすぎた! やりすぎたのだ!!」

女胤
「Oh My God!!」


何かと反則行為染みた行動が目立ってたからな…
その癖ポイント的にはかなり稼いでたみたいだし、やっぱりそれはどうかと思うのよ俺は?


サンダース
「それでは、最終成績を発表する!! まずは最下位からだ!!」
「赤組! 109P!!」

阿須那
「ぐは…聖の恩恵もろてもこの結果か!」

白那
「あっはは…まぁ、仕方無いね」

大愛
「ふん、負けたならそれまでだ」

櫻桃
「あーあ、何かくたびれ儲けだなぁ〜」

浮狼
「ですが、良い経験にはなりました」


とりあえず阿須那はがっくりしてるものの、他のメンバーは割りと明るかった。
俺は心の中で激励を送ってやる。
お疲れ様、と。


サンダース
「続いて3位! 黄組111P!!」

守連
「あ〜やっぱりダメだった〜」

愛呂恵
「仕方有りません、私たちの力不足でしょう」

鐃背
「わははっ! しかし楽しかったぞ!!」


「まだまだ、修行が必要だと気付かされましたね…」

香飛利
「あう…お腹空いた〜」


守連は耳をダランと垂れ下げて項垂れていた。
何だで勝負事になったらアイツも全力だもんな…
しかしちゃんと悔しがる所は何気に重要だ。
守連も、ちゃんと成長してるな…


サンダース
「そして2位! 緑組118P!!」

女胤
「ガクッ!! 後一歩及ばず…!!」

喜久乃
「完全にやり損ですね…これなら寝てた方が良かったですよ」

騰湖
「納得出来ん…! 再戦を要求したい所だ」


「まぁまぁ落ち着けって…どうせやっても結果は変わらないと思うぜ?」


「…とりあえず色々飽きた、まだ帰れないの?」


もうやる気からしてねぇな!!
一応ここから黒組との決戦有るのよ!?
既にガヤモードに入ってんじゃねぇか!!


サンダース
「さぁ、もう言わなくても明白だが! 栄光の1位に輝いたのは…」
「青組122P!! お前たちが優勝だーーー!!」

華澄
「おお…やりましたな皆さん!」

舞桜
「うん! 頑張った甲斐があったね♪」

水恋
「やったやった! アタシたちでもやれるんじゃん!!」

神狩
「うん…やれば出来る」

悠和
「私はあまり役に立てませんでしたけど…それでも良かったです♪」


何て言うか、ここは明るいよな。
基本的に仲が良いし、皆が皆でカバーしてるって気がする。
色々不利な部分もあったろうに、最後は結局勝っちまったな。


サンダース
「さて、これでいよいよ我ら黒組との決戦が決定したわけだが…」
「始めるのは、明日の朝9時からとする!」
「その時にこちらのメンバーも公開だ!!」
「後、最後の特別処置として、メンバー交代も3人まで許す!」
「ただし条件付きだ! 交代出来るのは大将以外のメンバーのみ!」
「そしてあくまで大将同士の交渉の元、同意があった場合のみ許可する!」
「ちなみに、各組からはひとりのみ交換可能だ! 同じ組からふたり以上は禁止とする!!」


成る程、あくまで大将の華澄は固定だが、他3人までは各チームからひとりまで交換可能って事か。



「要はPCE版ドッヂボール部のメンバーチェンジか」
「あっちだと逆にモブと大将しか交換出来ないが」

サンダース
「まぁその辺はバランスも考慮してだ…」


「こっちで大将が雁首並べたら、いつものメンバーになっちまうからな…」


まぁメタな話だが。
とにかく、交代は手だろ…黒組のメンバーも相当な連中だからな。


サンダース
「とりあえず、最終メンバーが決まったら明日提出しろ!」
「交渉は今からやっておけよ? それでは解散!!」



こうして、青組の優勝として1日目は幕を閉じた。
後は黒組との決戦…果たして、最後のメンバーは誰になるのか?
サンダースの目的は、ただ競い合いたいだけなのか?
俺には、まだ予想も出来そうに無かった…










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第4話 『死闘! 勝ち抜き格闘!!』


To be continued…

Yuki ( 2019/08/17(土) 00:23 )