とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第9章 『ダウンタウン ポケモン行進曲 それゆけ大運動会』
第3話
サンダース
「言い忘れていたが、次は3人一組で出場するから、2本目も同じメンバーが出場して構わん!」
「精々後の事も考えてオーダーを組む事だ!!」


「………」


俺は楽しそうなサンダースの後に付いて行ってダルそうに歩く。
今の所はただの喧嘩染みた争いだが、ホントに何の悪意も無いのだろうか?
サンダースが何を考えているのか解らない内はあまり信用出来ないが、家族の命は最優先だ。
とにかく、常に目を光らせとかないとな…



………………………



阿須那
「3人一組…ねぇ」

白那
「恐らく相当な戦いになるよ? 2本目の事も考えてオーダーは決めた方が良い」

大愛
「同感だな、1本目でリタイアして2本目に出られないとか笑い話にしかならんぞ?」


全くもってその通りやな…
玉割り…ってからには、3人で分担作業が鉄則やと思うが。
少なくとも自陣の玉を防衛する者、敵の玉を攻撃する者は分けて選らばなアカン。
そして残りひとりは遊撃か…これを2本に分けて分配。
ひとりは司令塔もいるやろ、こっちはその点有利とも言えるな。


阿須那
「ほな、前半は白那はんに司令塔頼みますわ、付くのは櫻桃はんと浮狼はん」

白那
「…成る程、浮狼を防衛、櫻桃は攻撃だね」

櫻桃
「まぁ、疲れはあるけど何とかするよ…」

浮狼
「分かりやすい役目なら何よりです…守りならばお任せを!」


浮狼はんに足は無い、それなら防衛が1番適任や。
幸い戦闘力は高い方やし、そうそうは突破されへんやろ。
櫻桃はんはスピードも高めやし、積極的に攻める分には向いてる。
それらに白那はんの能力が合わされば、攻防どちらにおいても安定した戦力になるやろ。


大愛
「なら2本目はどうする? 最低でもひとりは続投しなければならんぞ?」

阿須那
「2本目は浮狼はんを固定して、残りを交代しますわ」
「ウチが攻撃、大愛はんは遊撃を頼んます」

大愛
「ふん…まぁ良いだろう、少なくとも退屈はしなさそうだ」

浮狼
「連戦となると、1本目の戦い方も考えなければなりませんね」


まさしくそうや。
幸いオーダーは他のチームには公表されへん。
狙い撃ち…とは中々いかんと思うがな。


白那
「とにかく、浮狼は怪我だけはしない様に」

浮狼
「はい、ですが勝利の為ならば、多少の傷は致し方ないと思います」

櫻桃
「まぁ、その辺は白那様が何とかしてくれるさ…」


軽く言うとるが、実にそれが難しい。
ここまでの戦いで、攻撃頻度や道具の使用頻度がポイントになるのはよう解った。
つまり、順位はあくまで最終目標であって、そこに辿り着けへんのやったら、他のポイントを考えて動かなアカンいう訳や。
…他のチームのオーダー次第では、決断も必要やろな。



………………………



華澄
「3人一組…」

舞桜
「どうする? 幸い疲労もダメージもあまり無いから、連戦も選択肢だと思うけど」

水恋
「ちょっとは疲れてるけど、アタシは次も行けるよ!?」

神狩
「水恋と舞桜は休んだ方が良い、1本目は私と悠和で行く」

悠和
「そ、そうですね! 私はここまで何の活躍も有りませんし、最初から全力で行けます!」


全員のやる気は十分。
だとすれば、拙者に出来る事もひとつですな…


華澄
「では、前半は拙者と神狩殿、悠和殿で行きましょう」
「後半はおふたりが舞桜殿、水恋殿と交代、拙者は連続で行きます」

神狩
「…分かった、任せる」

舞桜
「…華澄ちゃん、無理だけはしないでね?」


舞桜殿の顔はやや厳しい顔でした。
思えば、舞桜殿は拙者よりも年上…そしてかつての世界で共に聖殿と旅をした仲間でござるからな。
今は舞桜殿たちも打ち解けていますし、拙者の事も友人の様に呼んでくださる。
なれば、拙者も信用するでござるよ…


華澄
「大丈夫でござる、拙者はそこまで頭は良くないので…大まかな作戦は神狩殿と舞桜殿に委ねます」

神狩
「…良いけど、あまり期待はしないでね?」

華澄
「構いませぬ、拙者は少なくとも遊撃隊として動くつもりですので…攻撃と防衛の指示を下してくだされば、それで」

舞桜
「うん、とにかくやれるだけやるよ! 多分、単純なぶつかり合いだと青組は1番不利だと思うから…」

水恋
「た、確かに…戦闘メンバーってなったら、鐃背さんとか、白那さんとか騰湖ちゃんたちもいるもんね」

悠和
「ですが引くわけにもいきません、私たちは仮にもトップなのですから」


まさにその通り。
逆に言えば、今回は安全策を選ぶのが適解。
最悪、ポイントだけでも稼いで逃げる事も考えなければなりませんな。



………………………



喜久乃
「…最悪ですね、ここで3人一組とか」

騰湖
「どう足掻いてもふたりは連戦せねばならん、まぁ黄組も同じだがな…」


「まぁ俺らは体力有り余ってるし、連戦だろうがやってやるぜ?」


「どうするの? 大将は出れないわけだけど…」


どう考えても司令塔不足ですよ…
私は大きくため息を吐きながら頭を抱える。
幸い、次の競技は戦闘能力がモノをいいそうな内容ですし、そこまで不利とは限らないんですけどね。


喜久乃
「とにかく私が連戦しますんで、後は3人で連戦OKな人だけ手を上げてください」

騰湖
「………」

「………」

「………」


まぁ予想通り穹さん以外は手を上げましたね。
さてと、それなら話は早い。


喜久乃
「なら前半は穹さんと鳴さん、後半は鳴さんと騰湖さんで行きます」
「それで問題ありませんね?」


「俺は構わないぜ?」

騰湖
「好きにしろ、それで良いなら何も言わん」


「…異議無し」


良くも悪くもこの3人任せなんですけどね…
相手の戦力も相当でしょうし、出来れば怪我だけは避けてほしい所ですね。


喜久乃
「とにかく、ポイントの取り方だけは意識してくださいよ?」

騰湖
「さぁな…そこまで頭は回らん、やるなら徹底的に潰すだけだ」


「俺たちは考えるなんて苦手さ、特攻ならいくらでもやるがな!」


「脳筋共乙」


穹さんの毒にも一切ブレませんね…この辺の精神力は素直に尊敬しますよ。
私は確実に疲弊するであろう精神を気遣って頭を抱えた。
2度とリーダーなんてやりたくないですね…



………………………



守連
「…やるしか、ないよね」

鐃背
「うむ、ここは妾と守連を固定してやるしかあるまい!」
「香飛利にも働いてもらうぞ? 使える技は解っておるか?」

香飛利
「あ、あい〜」


「…おふたりにお任せするしかありませんね、愛呂恵さんの離脱はあまりにも大きいですし」


女胤ちゃんのチームもそれは同じ事だ。
とにかく出来る事をやるしかない。
例え我武者羅でも、努力するだけだ!


鐃背
「守りは妾に任せよ、守連はとにかく玉を割る事を考えれば良い!」
「香飛利はとにかく騒いでおればそれで良い!」

香飛利
「あ、あい〜!」


「では前半は香飛利さん、後半は私で行きましょう」
「香飛利さん、無理はしなくても良いですからね?」

香飛利
「う…でも、皆頑張るなら、私も頑張る」


香飛利ちゃんは弱々しくもそう言う。
こういう時の香飛利ちゃんはきっと強い、私は安心した。
そして同時に勇気も貰う…勝とう、皆と一緒に!



………………………



サンダース
「………」


「そう言えば、未来さん自分以外のメンバーは知ってるんですか?」

未来
「いや、知らぬ…小生は何も聞かされていない」


俺たちは例によって教室で待機していた。
男ひとり、巨乳美女ふたりに挟まれているこの光景は、端から見ればどんなエロゲーに見えるのだろうか?
もちろん、そんな展開は無いのだが…

そんな事を思っていると、ガララッ!と勢い良くドアがスライドし、何者かが中に入って来る。
そこから現れたのは、またしても知った顔だった。


舞理愛
「あらぁ? 何処かで見た顔ねぇ?」


「既に記憶が混濁したか、厨ポケは大変だな…最新作にまだ内定してない分際で」(2019年7月19日時点)

舞理愛
「黙りなさい! フライゴンに先を越されただけで、まだ私が出れないとは限らないわ!?」
「そもそも、この私程実力も人気もあるポケモンが選ばれない理由が見当たらないわよ!!」


舞理愛は偉そうにご高説するが、俺は特に何も答えずにため息を吐く。
相変わらずの貧乳を引っ提げての参戦は痛み入るが、色んな意味で意図が読めなくなった。
サンダースはさも当然という様な顔をしており、このゲストも予想通りという感じだった。


サンダース
「よくぞ来た! 歓迎するぞ舞理愛!!」

舞理愛
「ふん…まぁ、面白そうだし参加はしてあげるわよ」
「精々、私の引き立て役になる事ね!」


舞理愛は相変わらずのビックマウスだ。
サンダースも特に機嫌を損なう事なく、微笑して腕を組んでいた。
舞理愛は少しウザそうな顔をしていたが、すぐにそっぽを向いてしまう。
やれやれ…いきなり600族ふたり投入とはやってくれるぜ。
まぁ、家族には680族も跋扈しているわけだから、何も言えんけど…



………………………



ケララッパ
『さぁ、間も無く玉割りサバイバルが開催されます!』
『今回は運動場全域を使ってのサバイバル戦!』
『果たして、最後まで生き残るのはどのチームなのかぁ!?』



(予想はしてたが、やっぱり戦闘重視のメンバーだな)


俺は各チームの面子を見て少し冷や汗を流す。
今回スピードはそこまで重要じゃない、あくまで敵陣の玉を割り、自陣の玉を守るか…
それを四つ巴のサバイバルで争った時、どうなるのか?

少なくとも、全員がかなり真剣な顔をしており、一触即発なのは見て解る位に緊迫していたのが俺には伝わってきた。


白那
(…さて、有る意味予想通りの構成だけど)
櫻桃
(うっわ〜解っちゃいたけど、あんな奴ら相手に玉割れって?)
浮狼
(…さて、私の力がどこまで通用するか? これで連戦となると、ダメージは相当気にしなければなりませんね)


華澄
(やはり、激闘は必至…!)
神狩
(攻めは私がやるしかない、後は華澄と悠和を信じる!)
悠和
(守りを任されてはいるけど、正直どこまでやれるのか…!)


喜久乃
(…これは、相当に面倒ですね)

(鬱陶しい…味方は巻き込まない様にするとか、面倒でしかない)

(へへっ、こりゃ面白そうだ! 腕が鳴るぜ…♪)


守連
(…勝つ! 皆の頑張りを無駄には絶対にしない!!)
鐃背
(何があろうとも、妾がおる限り絶対に玉は割らせぬ!)
香飛利
(うう…! 怖いけど、頑張らなきゃ…)


全員が何を考えているのか?
俺には何となくしか予想出来ないが、とりあえず祈る事だけはしておく。
せめて、どんな結果になっても皆が無事でいられます様に…と。


サンダース
「よしっ! 玉割りサバイバル1本目!! 始めっ!!」


その声と共に、パァンッ!!とスターターピストルが鳴り響く。
そして全員が一斉に動き出し、玉割りサバイバルは開始した。

それぞれの自陣は運動場の各4隅にあり、ほぼ円形のフィールドで戦うと思えば良い。
北西に赤組、北東に青組、南西に緑組、南東に黄組…
それぞれが3人一組で担当を決め、開幕から駆け引きが始まる…!



……………………



ケララッパ
『おっと、まずは攻撃部隊3人が青組に狙いを定める!』
『流石にトップを先に落とすのは定石かぁ!?』


まず櫻桃さん、鳴、守連が当時に青組の玉を狙う。
セオリーではあるが、この場合青組は完全に不利だ。
しかし、サバイバルである以上これはただの争いじゃない。
既に駆け引きは始まっている、このバトルは間違いなく正攻法では終わらない!


ドバババッ!!



ケララッパ
『おっと、ここで超高速の水手裏剣!! 威嚇とはいえ、軽く地面を切り裂く!』
『来るなら来いと言わんばかりのオーラを放っているぞぉ!?』


華澄は攻撃部隊手前の地面に、それぞれ手裏剣をひとつづつ投げていた。
その威力は地面を数cm抉った程度だが、攻撃部隊の3人は足を止める。
そして青組の玉からやや離れた位置で、華澄は手を横にかざした状態のままキッ!と3人を睨み付けた。
その気迫は見る者を軽く恐怖させる程で、まさに場は華澄が支配している様な感じる。


華澄
「トップである以上、狙われるのは必然…」
「ですが、それだけにここを通す訳にはいきませぬ!」

守連
「…華澄ちゃん、本気なんだね?」


守連は華澄の気迫を見て、あえてそう聞いた。
華澄は無言で守連を睨み、更に気迫を高める。
守連は、そんな華澄を見て靴の爪先をトン…トン…と地面に当てる。
華澄の顔から、途端に汗が溢れているのがここからでも見て取れた。
知らない者はいない、守連の力がいくらセーブされてるとはいえ、その速度は間違いなくトップクラス。
『高速移動』を使うまではそれ程のスピードは出ないが、その分守連は攻撃も特攻も高いのが特徴。

そして、あの動作は攻め込む時の予備動作。
いわゆる守連の癖みたいな物だが、それが解っている者程プレッシャーは高まる訳だ。


櫻桃
(こいつは良いね…あのふたりがぶつかり合うなら、それこそ隙が出るってモンだ♪)


(ちっ、横槍を入れるのは得策だが趣味じゃねぇ)
(ここは、様子見ながら他の玉を狙ってみるか…?)


櫻桃さんは不適に笑い、守連と華澄の戦いをやや離れて見ていた。
鳴はキョロキョロと周りを警戒し、何か別の陣地を見ている。
この間でも各遊撃部隊は動いている、そして別の攻撃部隊も今攻めているのだ。



………………………



神狩
(華澄が引き付けてくれてる間に、他の玉を落とす!)
(どれかひとつでも割れば、それだけ華澄も楽になるんだから!)

白那
「さて、それじゃあ月並みだけど、ここは通さない…ってね♪」


神狩さんは『神速』を駆使して赤組に攻め込んでいた。
しかし、それを予想していたのか白那さんが迎撃に出て来る。
白那さんは一瞬真剣な顔で言葉を放つも、すぐに笑顔を見せていた。
神狩さんはそれを見て前傾姿勢になる。
マトモなぶつかり合いだと恐らく話にならない。
ああ見えても白那さんは肉弾戦が得意だ。
体格的には神狩さんの方が良いが、果たして正面突破は通用するか?


神狩
「…退くつもりはない、それに単純な力比べなら…」

白那
「!?」


ドカッ!といきなりのタックル。
神速ではないが、それでも白那さんは一瞬反応出来ていなかった。
神狩さんはそのまま白那さんの脇に両腕を回し、白那さんの体を楽々と持ち上げる。


神狩
「テクニックの類いは…この距離で相殺出来る!」

白那
「くっ…!?」


神狩さんはそのまま白那さんを後方に投げ飛ばす。
バックドロップ気味の投げ方で、白那さんは受け身を取るものの体勢は大きく崩れた。


ケララッパ
『こっちはいきなりの格闘戦! 神狩、伝説のパルキア相手に投げ技で先制だぁ!!』


白那
(痛たた…油断したつもりは無いのに、これも能力制限の影響かね)
(オレの場合は普段から能力への依存が強かったから、いざ無能にされると感覚が狂うね…)

神狩
(このまま進んでも挟撃される恐れがある…それなら、ここで叩ける相手は叩く!)
(最悪…玉は誰が割っても構わない)


神狩さんは更に体を屈め、白那さんの背後を取ろうとする。
神速のPPは少ない、今後の事も考えると無駄使いは厳禁だろう。
しかし、白那さんは果たしてそれを許してくれるかのか?


白那
「!!」
神狩
「!?」


形容し難い音と共に、一瞬で空間が切り裂かれる。
神狩さんは咄嗟にブレーキし、目の前で空間が切り裂かれるのを見て冷や汗をかいていた。
後一瞬遅ければ首を落とされていた…白那さんの事だからワザと外したんだろうが。
ちゃんと神狩さんの反応速度とブレーキのタイミングを予測して技を置いてる…
そう思うと、いかに白那さんの頭脳が凄まじいかを思い知るな。
まぁ、たまたまなのかもしれんが…


神狩
(互いに技の使用回数は最大5回、私は既に2回使ってて後3回…)

白那
(さて、こっちも余裕は無い程度のPPだ…最悪このまま膠着状態に持って行きたい所だね)


互いに一旦動きを止める。
当然だが、この間にも戦いは進行している。
そして、この騒ぎの中に乗じて玉を狙う者がいた。


ヒュンッ! ガコンッ!!


浮狼
「!? なっ、いつの間に!?」

白那
「!? しまった…!」

神狩
(均衡が崩れる…流れが変わる?)


狙われたのは赤組の玉。
それも全く想定もしていない方向から鉄アレイが投げ付けられたのだ。
しかし玉は予想外に硬く、それ1発では割れなかった。
それを確認して、ひとりの家族が舌打ちをする。


喜久乃
(冗談でしょう!? そこまで硬くしてあるんですか…!)


ケララッパ
『何と喜久乃が突然赤組の玉を奇襲!』
『砂煙に紛れていつの間にか接近していたのかぁ!?』


喜久乃の奴、身体中に砂をかけてカモフラージュしてやがる…用意周到だな。
ここはただでさえ白那さんと神狩さんの戦いで目を奪われがちの状況だ。
喜久乃からすれば1発で終わらせたかったんだろうが、これで作戦は崩れたな。


浮狼
「そんな風にして身を隠していたとは、迂闊でした!」
「ですが、いると解れば見えなくとも臭いで私には解る!!」


浮狼さんは両手を握り合わせ、1本のビームソードを作る。
通常の『リーフブレード』に比べると少し大きいか…?
浮狼さんは普段二刀流で戦う事が多いから、威力重視で収束させたって所かな。
しかし、それでも本来の出力はとても出ていないのだと俺には思えた。


喜久乃
(ちっ、流石にバレてますね! 相性最悪なのは仕方無いとしても、基本スペックで勝てるわけないんだから、逃げるが勝ちですよ)


喜久乃はすぐにその場からバックステップして退く。
浮狼さんは流石に玉から離れるわけにはいかず、一旦ブレーキして周りを警戒した。
そして、浮狼さんは近くに落ちていた鉄アレイを発見し、それを拾う。


浮狼
「…確か、これでもポイントにはなるのでしたね!!」


浮狼さんは思いっきり振り被り、鉄アレイを喜久乃に向けて投げる。
かなりの速度で投げられたそれは、容易に喜久乃の位置まで届き、喜久乃は咄嗟にガードするも後ろへ吹き飛んでしまった。


ケララッパ
『喜久乃吹き飛ぶぅ! 浮狼のパワー恐るべし!!』


神狩
(…ダメだ、このままだと流れが変わらない)
(例えスピードで突破出来ても、玉が割れなければ意味が無い)

白那
(このままひとりで進んでも挟撃は確定、ポイント的には動きたいだろうけど、オレはそれを黙って見ているつもりは無い)


再び場は膠着する。
奇しくも喜久乃の動きで流れが変わるかと思ったが、予想外の玉の耐久力にただ驚かされただけだった。
とはいえ、鉄アレイの直撃は確実に玉をへこませている。
あの玉は鉄製か何かなのか、少なくとも風船の類いじゃないのは明白だった。
あれを割るとなると、何度も攻撃を重ねないと厳しそうだな。

そして俺は改めてもうひとつの戦場を見る。
そこでは既に激闘が繰り広げられていた。



………………………



守連
「!!」

華澄
「はあぁっ!!」


守連は目にも止まらぬ速度で駆けるが、華澄はそれに反応して動く。
守連は能力を制限されてるし、電気球も持っていない。
いわば、ただのピカチュウであるわけだが、それでも華澄は苦戦必至の様だった。


守連
(流石に隙が無い…いっそ格闘戦で崩してみる?)

華澄
(電気の使えない守連殿なら対処は出来る、何があろうともここで止める!)

櫻桃
(集中するのは結構だけど、この距離なら玉に届くよ!?)


櫻桃さんはこの状況に乗じて右手に『シャドーボール』を練る。
守連がそれに反応して一気に華澄の懐に飛び込んだ。
華澄はほんの一瞬櫻桃さんの方に目がいってしまい、気が付けば守連は既に真横にいる。
そして華澄は守連が軽く掲げた右手に反応して身を屈めた。
その瞬間、守連の右膝蹴りが華澄の腹にめり込んだ。


華澄
「かはぁっ!?」


悶絶する華澄、そしてその間に櫻桃さんのシャドーボールが青組の玉に向かう。
だが当然それを阻止する者もいた。
玉に着弾する直前、鋭い風が走りボールを霧散させる。
それは悠和ちゃんの『エアスラッシュ』だった。


守連
「ゴメンね、華澄ちゃん…」


グシャァッ!と華澄は怯んでいる間、ジャンプした守連に後頭部を踏み抜かれる。
その衝撃で守連は玉へ向かって斜め一直線に飛び出す。
華澄はその反動で地面に激突し、かなりのダメージを負わされた様だ。
守連にしてはエグいな…それとも本気になった守連は元々あんなんなんだろうか?


守連
「まずは…これで!!」

悠和
(くっ、リロードが間に合わない…! 私の脚力じゃあの高さには…!)


守連は空中で拳を構え、玉へ向けて真っ直ぐ突く。
が、その一撃ではまだ玉が壊れず、玉は僅かにへこんで傾いただけだった。
マジで硬ぇな…いくらハンデモードの守連とはいえ、フツーに耐えるとは。


ケララッパ
『守連、攻撃に成功するも玉の装甲を打ち抜けず!!』
『この玉は対ポケモン様に用意された、特別製の装甲で作られております!』
『いかに、パワー自慢のポケモンでも容易には破壊出来ないぞぉ!?』



「ありゃトンでもねぇな…まぁ、ああでもしないとあっさり決着着きそうだもんな」

サンダース
「ふふふ、前半はあくまで謎の開示」
「それを知った上で尚ポイントも考えて動かなければならん」
「果たして、最後に笑うのはどのチームかな?」


サンダースは腕を組んで笑う。
あくまでどこが勝っても構わないというスタンスなんだろうな。
さて、守連の速攻は微妙な結果で終わっちまったが、これからどう動く?



………………………




「やれやれ、どうやらかなり硬い玉みたいだな」

鐃背
「それが解っていながらあえてここに立つか、鳴よ!」


気が付けば鳴はひとりで黄組の玉に向かっていた。
そこには鐃背さんがひとりいるのみで、香飛利は守連の方に向かってる。
つまり、完全な一対一…鳴の奴、勝算あるのか?



「やっぱ、ゴチャゴチャした作戦は性に合わねぇ!」
「だったら、自分が1番やりたいやり方で俺はやる!」

鐃背
「くはははっ! 相変わらずじゃのぅ〜♪」
「まぁそれもそなたらしさか、好きにすれば良い!」


鐃背さんはいつもの様に笑って両腕を解いてゆらりと構える。
飛行は出来ない分、鐃背さんも確実にパワーダウンはしてるはずだ。
とはいえ、普段から鍛えてる鐃背さんが負けるイメージがまず湧かない。
鐃背さん相手に鳴の脳筋プレイが通用するのかね…?



「とりあえず、様子見とか無しだ! 全力で行く!!」

鐃背
「来い! 妾に後退は有り得ぬ!!」


鳴は全身から帯電するも、尻尾は稼働してない。
やはり特性は完全に抑えられているな…だが電気は使える。
鳴は両手を構えて得意技『クロスサンダー』の体勢に入った。
あれは物理攻撃だが、飛び道具という異様に便利な技だ。
モーションはやや大きいものの、発射速度は抜群に速く見てからかわすのは至難の技。
威力も申し分無く、マトモに食らえば耐えれる奴はそうそういないだろう。



「食らいやがれぇぇ!!」

鐃背
「ふんっ!!」


鳴の両手から発射されたクロスサンダーは十文字の形を取り、そこから回転して球体を作った。
それは直径50cm程の球体で、全力と言う割にはかなり抑えられた威力に思える。
まぁ、能力制限下の中じゃ当然だわな…

鐃背さんはそれを右手で受け止め、左手も右手首に添えてしっかりと踏ん張る。
バチバチバチィ!と電撃が飛び散り、鐃背さんは軽く顔をしかめていた。
流石に効いてはいるのか、すぐに弾けたりはしない様だ。
鳴はそれを見て、すぐに突っ込む。
まだクロスサンダーは鐃背さんが受け止めている。
このままだと、連撃を許す事に…


鐃背
「ふっ!」


「!?」


鐃背さんが気合いを入れると、クロスサンダーは鳴の方に跳ね返された。
鳴は咄嗟に体を捻って回避するも、流石に驚いた様だ。


鐃背
「ふむ、流石にイマイチな様じゃの…本来の威力の半分以下という所か」


「くっそ〜全力でやってもそれかよ…」


鳴は予想外…という程でも無かった様で、あまり気落ちはしてない様だ。
元々技はかなり制限がかかっているし、ふたりとも得意なのは肉弾戦。
鳴は拳と掌を胸の前で打ち付け、気合いを入れてどっしり踏ん張った。
鐃背さんもそれに答え、首をコキコキ鳴らしてズシンッ!と右足を強く地面に踏み込ませる。
軽く地面が抉れた所、パワーは間違いなくある。
やれやれ…鳴の奴ホントに大丈夫だろうか?
わざわざ茨の道を歩まんでも…



「とにかく女は度胸!」

鐃背
「うむっ! 全力で来い!!」


鳴はとにかく体ごとぶつかった。
ショルダータックルで右肩から当たり、鐃背さんは流石に仰け反る。
体重差に関しては圧倒的だからな…力比べなら勝てても、鳴相手に軽くあしらえる程の差は無いって感じか?



「っらぁっ!!」

鐃背
「むんっ!!」


鳴は近距離で拳を放つも、鐃背さんは鳴の懐に密着する程接近し、回避する。
そして鐃背さんは鳴の左脇腹に拳を当て、そのまま全身を連動させて回転力を全て拳に伝える。
そこから放たれる一撃は、鳴を軽く悶絶させる程の打撃だった。


ケララッパ
『こ、こっちでは一対一の格闘戦!?』
『しかし、鳴は返り討ちにあったか、悶絶しているぅ!!』



「…づぅぅぅっ!?」

鐃背
「ほう、流石に1発では沈まんか…ピンポイントに肝臓を叩いたのじゃがな」


それは効くだろう…むしろ肋骨やっててもおかしくない。
鳴は大きく息を吐き出し、歯を食い縛って耐えていた。
だが、露骨に動きが止まったな…これは既に勝負あった感じだ。
やっぱタイマンで鐃背さんと格闘戦仕掛けるのは愚策としか思えん。
後半戦の事もあるから、ダメージは抑えないと後に響くぞ?



(くっそ…たった1発でこれかよ! パワーは互角でも、テクニックの差が段違いだ)

鐃背
「ほれほれどうした〜? 妾はまだ肩で息もしとらんぞ〜?」


鐃背さんは余裕の笑みで挑発する。
もちろんここから進むも退くも鳴次第だが…



(勝負は重要だが、俺のせいでチームに迷惑をかけるわけにはいかない…!)

鐃背
(ふむ、目は死んでおらんの…思ったより冷静な様じゃ)


鳴は強い眼差しで鐃背さんを…ではなく黄組の玉を睨んでいた。
そう、あくまでこの種目は玉割りだ。
相手を倒す事ではない。
鳴もそれは解ってるはず、その上でどんな選択肢を取るのか?

この時点では、俺はまだまだ皆の成長が解っていなかったのかもしれない。
そしてそれはこれから徐々に気付かされる。
俺が想像していたよりも、家族は強くなっているという事を…



………………………



ケララッパ
『ここまでで約5分! 未だに玉はひとつも割れていない!』
『果たしてどの玉が最初に割れるのかぁ!?』



(…さて、ここからどう流れを変えていくかだな)


状況は意外にも膠着している。
各所で動きはあるが、後半も見据えて無理はしたくないって部分もあるだろうからな…


守連
(くっ…まさか一撃で割れないなんて!)
(制限された状態じゃ、やっぱり力が足りない…?)

華澄
(…守連殿に迷いが出た、この状況なら動ける!)


攻撃後、無事に着地した守連だったが玉の固さに顔をしかめる。
そして、頭から血を流しながらも華澄はゆらりと立ち上がり、一瞬守連を見てからすぐに別の方を見た。
そして即座に水手裏剣を大きく作り、それを一直線に1枚だけ投げる。
その方向にいるのは…



………………………



神狩
(動けない…か)

白那
(出来れば仕留めるべきだけど、さて…?)

浮狼
「!? 白那様!!」


風切り音と共に高速回転して、白那さんに迫る水手裏剣。
浮狼さんが叫んだと同時、白那さんは横に回転して尻尾を使い、その手裏剣を弾いて見せた。
手裏剣は横から尻尾で叩かれ、バシャアッ!と音をたてて弾け飛ぶ。
だが、その一瞬を神狩さんは逃さなかった。


神狩
「…!」


神狩さんは神速で即座に距離を詰め、白那さんの背後を取る。
丁度、水手裏剣が白那さんの背後から来ていたから、白那さんはそれを弾いて神狩さんに背中を見せていた為、それは容易に起こってしまった。
華澄は当てる為に水手裏剣を放ったんじゃない、白那さんの隙を作る為にあえて放ったんだ。
そしてそれは最大の好機となる、神狩さんは白那さんの背後を取り、後ろからスリーパーホールドで首を絞めた。
それはほんの一瞬の事で、白那さんはあっさり落とされる。
頸動脈を的確に絞められて意識を失い、膝から地面に落ちてそのまま前のめりに倒れた。
そして神狩さんはすぐに浮狼さんを睨む。


浮狼
(速い! あの一瞬で白那様を絞め落とすとは…)


ケララッパ
『神狩鮮やか! 一瞬の絞め技で白那があっさりダウン!!』
『かなり手慣れた風だが、これは赤組も予想外だったかぁ!?』
『ちなみに、1度ダウン判定を貰った選手はもれなく失格扱いだから、退場だー!』


そうなると一気に赤は不利になるな。
櫻桃さんは攻めあぐねているし、浮狼さんは相性不利。
このままだと赤組が先に脱落する可能性も高い。


櫻桃
(やられてんじゃないっすか!! どうする? このまま攻めて青組を落とす…?)


櫻桃さんは咄嗟に身を捻って水手裏剣をかわす。
華澄は鬼の形相でそれを放ち、すぐに守連に向かって行った。
守連も反応してすぐに動く。
スピードでは高速移動分、守連に分がある。
華澄はダメージもあるし、マトモに戦えば不利なのは明白。
だがそれを見て悠和ちゃんが技を放つ。


悠和
「はあぁぁぁっ!!」


悠和ちゃんは守連の背後に向けてエアスラッシュを放ち、守連の動きを止める。
守連は直撃を避ける為に急ブレーキし、そこから横に飛んだのだ。
しかし、その先には狙い済ました水手裏剣。
3枚に分割されたそれ等は守連の退路を狭めていた。


守連
「!!」


守連は後ろに仰け反り、全ての手裏剣を回避する。
だが仰け反りすぎて地面に後頭部を擦り付け、そのまま地面を滑ってしまった。


櫻桃
「チャンス! このタイミングなら!!」


櫻桃さんはどさくさに紛れてシャドーボールを放つ。
当然ながらそれは一直線に玉へと向かい、青組の玉に当たって弾けた。
玉はグラリと傾き、今にも落ちてきそうな程だった。



「そういや、割れなくても落ちたらどうなるんだ?」

サンダース
「玉を攻撃して落ちたのなら、それは割れたのと同義と扱う」
「だが、支柱を攻撃して落とした場合は無効とし、落ちた後に割らなければならない」


ふむ、つまりはあれで落ちれば青組は失格って訳だ。
逆に支柱を先に破壊すれば、延命も可能…?
もちろん、当の皆はそんな裏ルールは知らない。
そこまで見越して作戦考えてるとは思えんわな…



………………………




(さてと、とりあえず正面突破は無理だ)
(黄組は最下位だし、わざわざリスク犯して攻め落とすメリットは薄すぎる)
(と、なると…主義には反してでも利を取らなきゃならない、か)

鐃背
(明らかに攻める気を捨ておったな、ならば仕方あるまい)
(それもまた間違いではない、この戦いはひとりの戦いではないのじゃから…)


鐃背さんは再び両腕を組んでどっしり構えた。
鳴はそんな鐃背さんを尻目に別の玉を目指す。
流石に諦めたか…まぁ、妥当だろ。
搦め手無しに鐃背さんをタイマンで倒せる家族は、恐らくいないからな。
これはあくまで3人一組のチーム戦、ひとりで頑張る必要は無いんだ…



………………………



神狩
「……」

浮狼
(恐らく、接近されては不利…何とか近付けさせない様に戦うしかない)
(後は櫻桃殿に賭けるしか…!)


浮狼さんは両手にビームを出し、構える。
二刀流で神狩さんを威嚇し、迎え撃つ気の様だ。
神狩さんは前傾姿勢に構え、タックルの体勢に入った。
ここからの神速タックルは恐らく回避不能。
浮狼さんもパワーは相当あるからそこまで不利にはならないと思うけど、神狩さんの近接戦闘能力は相当高いと思われる。
鐃背さん同様、普段から仕事しながら訓練はしてたみたいだし、神狩さんのスタイルはまるで軍人格闘技。
こんなゲリラ的な戦いに置いては、かなりの実力者なのかもしれないな。


ケララッパ
『神狩と浮狼が緊迫した空間で対峙!』
『互いに距離を窺っているのか、どちらもまだ攻めには転じない!』
『しかし、浮狼には守るべき玉がある! この戦いは想像以上に不利か〜!?』


そう、浮狼さんは背後に玉がある為自由には動けない。
下手をすれば華澄の援護も有り得るこの状況、浮狼さんはかなりの窮地に立たされているのだ。
本人もそれは理解している顔…流石に元戦士でもある浮狼さんはそれ程狼狽えてはいない、が。


神狩
(思ったよりも隙が無い…これは一気に攻めても返されるかもしれないわね)

浮狼
(単純な力押しであれば、私にも分は有ります)
(ですが、密着距離での攻防では流石に自信は無い)


ふたりは予想以上に膠着している。
そして、その隙に更に動く者がここにはいた。
対峙しているふたりはその存在を完全に忘れている。
何故なら、その存在は未だにうつ伏せのまま砂にまみれ、距離を置いて安全地帯にいたのだから…


喜久乃
(ここまで、順調すぎる位ですね! 運良く白那さんまで倒してくれるなんて万々歳ですよ!!)


喜久乃は再び鉄アレイを握っていた。
そして今度は思いっきり振り被って勢いを付ける。
だが、それでも恐らくあの玉は割れない。
喜久乃はそれも解っているのか?
とにかく、ここは大きな分岐点だ。


ガコォォンッ!!


浮狼
「!?」
神狩
「!!」


またしても金属の激突音が響く。
それを合図に神狩さんが突っ込む。
神速無しでもかなりのスピードを出しており、基本的な能力の高さをやはり感じさせる動きだった。
浮狼さんは完全に喜久乃の攻撃に気を取られてしまい、神狩さんはその隙を容易に突く事が出来た。



ケララッパ
『神狩、すかさず踏みこんだぁ!! 浮狼は玉に気を取られて反応が遅れる!!』
『しかし赤組の玉は依然無事! 逆に青組の玉はもう限界だー!!』


神狩
「!?」


神狩さんは浮狼さんに組み付くも、後を見る。
その先に広がる光景は、今にも落ちそうになってる青組の玉の姿だった…



………………………



華澄
「くっ! これ以上はぁ!!」

守連
「チャンスはここしかない!!」

櫻桃
「くっそ! 今更退けるか!!」

悠和
「絶対にやらせません!!」


4人は必至に争っていた。
華澄と悠和ちゃんは守連と櫻桃さんの攻撃を連携して防ぐも、全ては防ぎきれず玉は徐々に傾いていったのだ。
そして、この均衡を揺るがす乱入者も現れる。



「とりあえず、チームの勝利優先だ! 悪いが頂くぜ!?」

香飛利
「あうーーーー!!」


そう、ここで鳴と香飛利の乱入によってもはや青組の玉は限界を迎えるのだ。
鳴と香飛利はやや離れた位置からクロスサンダーや『騒ぐ』を放ち、玉を直接狙った。
当たれば間違いなく玉は落ちる。
さて、どうする?


華澄
(ダメだ、ここで防ぐ手段が見付からない! 神狩殿は…間に合わない?)

櫻桃
(とりあえず、青組を落とせばそれで良い! そしたらすかさず戻って一旦防衛だ!)

守連
(ポイントは最優先…だったらやれる事は!)


ケララッパ
『守連、ここで大ジャンプーーー!?』
『そしてクロスサンダーの球体をオーバーヘッドで蹴り返したぁーーー!!』


何と守連は鳴のクロスサンダーを足で蹴って跳ね返した。
パワーがセーブされてるのもあってか、鳴のクロスサンダーはそれ程速度が出ていなかったのもあったが、それでもそこまで遅くない速度のそれを超人的な反射神経で蹴った守連は流石と言える。
そして、クロスサンダーは明後日の方向に飛んで行き、香飛利の音波がフィールドに鳴り響く。
そして振動で揺らされた玉は……


ビキッ! ドッズゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!


ケララッパ
『落ちたぁ!! 青組はこれで全員失格!!』
『遂に、最初の脱落組だぁーーー!!』



(トップの青組が最初に落ちたか…守連はポイントを考えて上手く妨害したな)


香飛利もここはちゃんと役に立った、アイツも立派な戦力だと証明したな。
そして華澄たちはこれで強制退場。
神狩さんも流石に諦めた様だ。



………………………



神狩
「………」

浮狼
(助けられた形ですね…危なかった)

喜久乃
(やれやれ…これじゃ攻め切れないですね)
(一旦退いてまた隙を伺いましょうか…とりあえず鳴さんは十分お手柄ですよ♪)


喜久乃は状況を見て、すぐにその場を離れる。
一旦自陣に避難するつもりか…さて、次に狙われるのは?



………………………



守連
(疲労は相当ある…さっきのがポイントになってくれれば良いんだけど)

櫻桃
(とにかく助かった! すぐに戻って作戦練らないと!!)

悠和
(くっ…私にもっと力があれば!)


櫻桃さんはすぐに走って浮狼さんの元に向かった。
赤組の玉もそれなりに傾いてるからな…守連は息を整えながら状況を見ている。
香飛利は心配そうに守連の元へと歩み寄り、大丈夫かと声をかけていた。
守連は汗を流しながらもニコニコ笑い、大丈夫だとアピール。
多分、そこまで大丈夫じゃないと思うんだがな…



(ちっ、まぁ仕方無いと思っとくか…守連だってノーダメージじゃ無いんだからな)


鳴は軽く舌打ちするも、自陣に一旦戻った。
何気にダメージあるはずなんだが、鳴の奴平気そうだな。
それとも、やせ我慢とかしてるのか?
鐃背さんの1発は尋常じゃない重さだと思うんだが…



(何はともあれ、一旦小休止か…それぞれ作戦を立て直しだな)


ケララッパ
『まずはそれぞれ休憩か? ここで一旦場が止まります』



………………………



櫻桃
「どうするの?」

浮狼
「恐らく狙われるのは確実…ならば全員とはいかずとも何人かにはダメージを与えるのも作戦ですね」


白那様がいなくなった以上、出来る事は限られる。
ポイント的にも、ここは戦う方が良くはあります。


櫻桃
「…棄権するのも選択肢じゃない? ポイントは失うけど、相手に与える事も無いし」

浮狼
「…後半戦の事も考えると、英断ですね」
「私は櫻桃殿の判断に任せます」


櫻桃殿は頭を掻いてため息を吐く。
彼女はこういう時決まって嫌そうな顔をしますからね。
人を率いる能力はあるのに、嫌いだからやらないという性分の方ですから…
その気になれば司令塔でもこなせるはずなのに。


櫻桃
「はぁ〜分かった! ここは棄権する!!」

浮狼
「そうですか、それなら伝えて来ましょう」

櫻桃
「あー! 良いからアンタは動くな! アンタは後半でも戦わなきゃならないんだから、少しでも休みな!」


そう言って櫻桃殿は走ってサンダース殿の所に向かう。
ふふ…櫻桃殿は本当に優しい方ですね。
私は口元に手を当てて、思わず笑ってしまった。
仕事嫌いのメイド長も、今や過去ですかね?



………………………



ケララッパ
『何と赤組ここで棄権を宣言! これにより赤組は失格!』
『つまりここから赤組の玉はポイントにはなりません!』
『実質残り2チームには、得られるポイントの総量が減った事になります!』


サンダース
「ふふ、それもまた戦略! 時には退く勇気も必要だろう!!」


「ポイントだけでなく、休息も取れるからな…」
「後半戦を見据えて、被害を抑える方向で行ったか」


つまり、後半に置いては赤組はほぼ万全の状態で挑める。
対して人数不利の黄と緑…最下位の黄組は是非とも落としたい所だが。



………………………



喜久乃
「…面倒ですね、こっちも棄権します?」


「俺は任せるぜ? 後半もどの道やらなきゃならないしな」


「…暇すぎ、寝てても良い?」


穹さんは完全に木偶の坊でしたからね…
まぁ穹さんの能力を考えたら、近付くバカはそうそういませんが。
だからこそ、こっちも安心して攻め込めたわけですからね。


喜久乃
「どの道、黄組に余計なポイント与えるのは避けたいですし、棄権するのが1番メリット有りますね」


「まあ、チーム戦だしな…それが作戦なら俺は受け入れるよ」


「ふぁ〜ぁ…なら、さっさと休みたい」
「これ終わったらそろそろお昼でしょ? 私はそれまで寝てるから」


穹さんはそう言うと、さっさと歩いて行ってしまった。
マイペースですね…まぁ、そこまで気にもしませんけど。
とにかく、ここは棄権です。
私だってダメージは食らってますし、鳴さんなんて…


喜久乃
「一応聞きますけど、大丈夫なんですよね?」


「何が?」


鳴さんはすっとぼける。
私ははぁ…と深くため息を吐いて項垂れた。
この人は、そういう人柄ですよね…絶対人生損してるタイプです。
多分、肋骨何本かはやってると思うんですよね…
それを感じさせず動く鳴さんも相当ですけど。


喜久乃
「とにかく棄権を伝えてきます、鳴さんは休んでてください」


「分かった、任せるよ…」



………………………



ケララッパ
『おっと、まさか緑組もここで棄権〜!?』
『つまり自動的に黄組がトップ! これはまさかの結果に終わったぁ!!』



………………………



守連
「えっ…?」

鐃背
「…ポイントよりも、リスクを減らすか」
「緑組も人数不利じゃからな、痛み分けと言う所じゃろう」

香飛利
「勝ったの〜?」


とりあえず、残りの組は棄権してしまった。
確かに、このままぶつかり合えば互いに被害は大きい。
ただでさえ、ふたりは連戦しないとならないのだから、ダメージは最小限に抑えるべきだ。


守連
「とにかく、これでポイントはかなり入るはず」

鐃背
「しかし、その分後半戦は熾烈となるぞ?」
「特に赤と青はほぼ万全、何がなんでも勝ちに来るじゃろう」


確かに…でもそうなると、作戦はどうしたら良いのかな?
一応、暫定的にポイントが入ったとして、ここからリスクを負ってまで攻める?
場合によっては、守りに徹するのも有りだと思うけど…


鐃背
「作戦は変わらずじゃ、守連は攻め落とす事だけを考えよ!」
「妾の守りは磐石! いかなる相手も寄せ付けはせぬ!」

香飛利
「あう…でも、怪我はしない方が良い」


香飛利ちゃんは心配そうに鐃背さんを見る。
鐃背さんはガハハッと豪快に笑い、心配するなと香飛利ちゃんに告げた。
でも実際問題、総攻撃を受けたら鐃背さんでも守りきれない可能性は高い。
最低でも、生き残る事を優先に考えないと…



………………………




(結果的に黄組がトップだが、思ったよりもポイントは厳しいかもしれないな)


この運動会のポイント制は色んな要素が噛み合って来る。
一見無駄そうな行動でも、ポイントになったりする事があるのだから。
今回は3チーム棄権で、一見黄組の独壇場に見えるが、実際には与えるポイントを最小限にとどめたとも言える。


サンダース
「…さて、後半戦を見据えた作戦だとは思うが、吉と出るか凶と出るか?」


サンダースは両腕を組み、首を傾げてそう言う。
その顔は微笑であり、期待は込めている顔だ。
コイツはコイツでブレないな。
何を考えているのかは解り辛いが、とにかく戦いたいっていう気持ちは本物みたいだ。
もっとも、その先にある真意は俺には解らない。
未来さんや舞理愛を呼び付けた理由は何とも言えないからな。



(後半戦は間違いなく総力戦になる)
(ポイントも考えて、どういう戦いになるやら…?)


わざわざポイントを捨ててまで棄権を選んだ3チーム。
それは後半戦を見据えての作戦だとは確定的に明らか。
一体、どんな結末になるのか…?
とりあえず、10分の休憩を挟んでの再開だな。



………………………



阿須那
「…まぁ、仕方ありまへんな」

白那
「ゴメンね、侮っていた訳じゃないんだけど…」

大愛
「単純な肉弾戦なら能力の差異は関係無いからな、お前は特に普段から空間操作に依存し過ぎだった…」


白那はんも流石に特技を封印されたら人の子って所か…
神狩はんはかなり手慣れてる様やったし、それを予測出来へんかったのはこっちの落ち度やな。


櫻桃
「とりあえず、次は任せるよ?」

浮狼
「はい、私はダメージも有りませんし、次も全力で防衛に回ります!」


とりあえずウチと大愛はんが今度は前線や。
浮狼はんは継続して防衛担当。
ポイントは考えて作戦考えなな…


白那
「気を付けてね阿須那ちゃん? 予想以上にこの戦いは過酷だ」
「制限された中で動く戦況は、思ってる以上に早く動いている…」

阿須那
「了解ですわ、とりあえず大体のルールは理解しましたし、次は有効に動かせてもらいますわ…」


ウチは色々イメージしながらシミュレーションする。
単純な戦闘能力なら黄組と緑組はダントツ。
それ以外は何とも言えん戦力比や。
つまるとこ、鍵になるのは…


阿須那
「大愛はんは、状況見て攻めるか守るかは決めてくれなはれ」

大愛
「要は遊撃隊か、まぁ良いだろう」


大愛はんの技は白那はん以外に関知出来ん。
つまり、対策は実質不能のチート能力。
これを駆使出来るなら、トップは確実に狙えると思うけどな…
それでも、何らかの対策は練られてる気もする。
安牌…とは言えへんかもしれへんか。



………………………



華澄
「…かたじけない、拙者の力も考えも、足りてはいませんでした」

舞桜
「気にしちゃダメ! 華澄ちゃんは十分にやったわ!」

水恋
「そうだよ! そもそも集中攻撃とかどうにもならないし…!」

神狩
「華澄は、気にしないで…これは皆の失態だから」

悠和
「はいっ、力及びませんでしたけど、後半戦は盛り返しましょう!」


皆の激励を受け、拙者は気を引き締める。
そうだ、拙者にはこの仲間がいる。
恐れる必要は無いのです…常に前を見て!
ダメージは有りますが、それも皆の信頼で帳消しに出来ます。
次は守るだけではありません…勝利の為に全力を尽くしましょう!



………………………



喜久乃
「まぁ、ここは安牌で行きたい所ですね」

騰湖
「…鳴、正直に言え」


「…肋骨は2本折れてる、だけど動くのに問題は無ぇ」


「…面倒、とりあえずこれだけやってあげる」


穹さんは面倒そうな顔をしながらも、鳴さんの脇腹を手の冷気で冷やす。
鳴さんは少し顔をしかめながらも、すぐに笑顔で受けていた。



「へっ、性に合わない事すんなよ…俺は大丈夫さ」


「強がるな馬鹿、ホントは痛い癖に…」

騰湖
「…ふん、ここで嘘を吐かなかったのは誉めてやる」
「だが、戦力外になるならお前はここまでだ」
「その上で聞いてやる、やれるのか?」


騰湖さんは、あくまで心配そうな顔でした。
口は悪いですけど、気遣いはある。
それを聞いた上で、鳴さんは笑っていた。



「…俺は大丈夫さ、心配するなよ」

騰湖
「…嘘は無い、それは解る」
「だが、お前のその理想は我には薄い…それでも尚やるのか?」


「そこまで解ってるなら、言葉はいらないだろ?」


鳴さんは強い瞳で騰湖さんを睨む。
騰湖さんは目を細め、両腕を組んだままそれを睨み返した。
互いに姉妹の様な者、考えてる事の大半は解っているはずですからね…


騰湖
「…まぁ良い、動けるなら動いてもらうだけだ」
「この戦いは確実に、勝つ…それだけは忘れるなよ?」


騰湖さんはそれだけ言って背を向けた。
思う所は有るでしょうけど、今はそこまで考えてる暇は無い。
とにかく、ここは安牌に行くのが鉄則…被害を最小限に抑えるのが最善です。



………………………




「…守連さんの力でも割れないとなると、一撃で割る方法は限られそうですね」

守連
「うん、並の一撃じゃ傾けるのが精一杯だし、支柱ごと叩き折るのがセオリーかも」

鐃背
「逆に言えば、単機で攻め落とすのはそれだけ難しいとも言える」
「場合によっては、背水の陣も選択肢となろう…」


背水…つまり、最悪防御を捨ててでも全員で攻撃に回る、か。
幸い足回りは皆自信があるし、それもひとつの作戦になるのは間違いなさそう。
割られる前に割ってしまえば、敵の数は一気に減らせるのだから…



「とにかく、玉を割るのは私がやります」
「守連さんは、そのフォローを…」

守連
「分かったよ、それなら任せますね」

香飛利
「がんば〜」

鐃背
「守りは一切気にするな! 妾が必ず玉を守ってみせよう!」



………………………




(やれやれ、もうすぐ2本目か…)


時間は迫っていた。
間も無く後半戦の2本目が始まる。
俺はサンダースと共に壇上で場を見守っており、2本目の準備が整えられるのをただ黙って見ていた。
サンダースは変わらず微笑したまま、純粋に楽しんでいるみたいだが…


サンダース
「…そろそろか」


全ての玉が新品に代わり、そして各チームが入場する。
それ等の表情は全員緊迫しており、間違いなく全員やる気に満ちていた。
暫しの静寂に風が吹き、軽く砂煙が舞う。
そんな中、俺の隣で髪を靡かせたサンダースが片手を上げ、そして高らかに声をあげた。



………………………



サンダース
「それでは、2本目始め!!」


サンダースの掛け声と共にスターターピストルが鳴る。
それと同時に4組が動き、それぞれ目的の方向に向かって行った。
この種目は平たく言えば集中攻撃が肝だ。
ある程度の利を無視してでも、敵の数を減らすのが恐らくセオリー。
もちろん、そんな中でもポイントは意識しなければならない。
でないと、勝ったのに負けていた…なんて馬鹿な事も有り得るからな…

今回は、頭の中でどれだけポイントが動いているか解ってなきゃならない。
それぞれの司令塔が持つ能力が鍵になると言っても過言じゃないかもな…



………………………



阿須那
(ポイントはウチ等が恐らく最下位、トップは何とも言えんが青か緑やろ)

大愛
(状況的に狙うなら青だが、緑への妨害も考えた方が良いか)


阿須那たちは互いにある程度の距離を開けてやや中央を目指す。
まずは様子見で他のチームの動きを見てからって所か。
しかし、相変わらず攻め重視だな…防衛は最小限でとどめて基本攻撃。
阿須那らしい作戦だが、果たして?



………………………



華澄
(恐らくターゲットは分かれる、むしろ狙うべきは緑!)

水恋
(とりあえず防衛優先とは聞いてるけど…)

舞桜
(水恋ちゃんが引き付けてくれれば誰も近付けさせはしない!)


ほう…華澄は単独で緑へ向かい、舞桜さんと水恋さんは防衛に回すか。
妥当だろうな、未だに青のポイントはトップ周辺だろうし、ここは華澄単独に動かせた方が無難だ。
逆にふたりで守る分、防衛は相当厚い。
特に舞桜さんの技はかなり有効だからな…



………………………



守連
(華澄ちゃんは緑に向かってる…つまりポイント的にはそっちが正解)


(作戦通りで良さそうですね、守連さんはそのまま青狙い、私は緑を狙います!)


守連たちは相手の動きを見て分散する。
あえて2重取りを狙うのもまた作戦だ。
だがリターンが大きい分、リスクも跳ね上がる。
ふたりとも戦闘力高めとはいえ、吉と出るか…?



………………………



喜久乃
(予想はしてましたよ、なのでここは絶対防衛でいかせてもらいます!)

騰湖
(ふん、面倒だが仕方あるまい)


(3人で守るだけなら楽で良いや…さぁどっからでも来い!)


喜久乃は全身に砂を浴び、うつ伏せになってペラペラモードになる。
って、そういや気になってたんだが喜久乃の奴、技を制限されて何で体型維持出来るんだ?
あれって確か『熱湯』の応用で体内の水分温度を上げられるから維持出来てたはずなのに、熱湯が使えなくても切り替えられるのか?
本人は当たり前の様に使いこなしてるが、これって大丈夫なんだろうか?



「なぁ、その腕輪って技ひとつしか使えなくなるんだよな?」

サンダース
「そうとは限らん、例外も存在する」


俺はポカーンと口を開け、しばらく止まる。
ちょっと待て…例外、だと?
いやまぁ、ある意味理解出来んでもない。
喜久乃とかは熱湯が使えなかったらマトモな戦いにならないし、白那さんや大愛さんは逆に制限強くしないと強すぎるからな…


サンダース
「まぁ、そんな例外は多くはない」
「基本的にひとり技はひとつ…その認識でもほぼ問題は無いからな」


「やれやれ、随分秘密の多い運動会だな…」


俺は呆れながらもボヤいて場を見直す。
気が付けば緑に攻め込む姿は増えている。
華澄、瞳さんに加え阿須那までもが緑に向かっていた。
逆に守連と大愛さんは青狙い…さてどうなる?



………………………



ケララッパ
『さぁ、攻撃部隊が間も無く接敵!』
『今度はどんな攻防が繰り広げられるのかぁ!?』



華澄
(阿須那殿と瞳殿…性格的に阿須那殿は正攻法とは思い難い)
(瞳殿は逆に正攻法過ぎる性格、利用するのであれば…)

阿須那
(まず華澄は様子見やろな…瞳はとりあえず突っ込む気やろ)
(ここは、可能な限り漁夫の利や…ポイントさえ取れれば最初のひとつはくれても構わんからな)


(恐らく、両者共に私を利用するつもりでしょう)
(ですが、それはそれで好都合)
(今回はこちらも全力で行かせてもらいます!)



ケララッパ
『瞳、突出して突っ込む!! 何か作戦があるのかぁ!?』
『対する緑組のディフェンスは、迎撃の構え!』



喜久乃
(真っ正面! 小細工無しに突っ込む気ですか!?)


瞳さんは騰湖と鳴が並ぶ間に真っ直ぐ突っ込んでいた。
マッスグマらしいと言えば、まさにその通りだが、流石にバカ正直すぎる気もする。
瞳さんは決して何も考えずに無謀な行動を選ぶ人じゃない。
勝算があってあのふたりに向かっている…?


騰湖
「舐められたものだな…! ひとりで突出して来るとは!!」


騰湖は軽くイラついた感じで両手を構える。
そこからは炎が巻き上がり、十文字の炎が回転して炎球を作り出した。
得意の『クロスフレイム』だが、想像以上にモーションが大きい。
威力は高くても、あれで当てられるのか?



「!!」


ゴオォォッ!と爆炎の様な音をたててクロスフレイムは発射される。
瞳はそれを見て当たる直前、直角にズレた。
一瞬、消えたかと錯覚する程のタイミングで瞳さんは炎球を左にかわし、右肩を掠めながらもすぐに突進を再会した。



ケララッパ
『瞳、素晴らしい反応速度! 実に無駄の無い動きで一気に敵陣に切り込みます!』



騰湖
「ちぃっ!」


(飛び道具は読まれてる! 瞳相手に大技を当てるのは簡単じゃない!)


騰湖が次弾を撃てない間、鳴が前に出る。
飛び道具は通用しにくいと判断したのか、肉弾戦で止める気だ。
しかし、瞳さんは接近戦のスペシャリスト。
パワーは無くともテクニックは随一!
鳴のスピードで押さえられるか…?


阿須那
(…冷静に見て、瞳の動きは尋常やない)
(強くなっとるとは思っとったけど、想像以上や)
(普段から修行は怠ってへん言うとったし、こらかなりの強敵と見るべきやな)

華澄
(瞳殿は凄まじく目と勘が良い…一対一の状況ならともかく、乱戦に対してはもしや拙者たちをも上回っている?)


阿須那と華澄は遅れて近付くも、その頃には騰湖の次弾が間に合う速度だ。
そしてふたりは互いに散開し、左右に曲がった。
阿須那は左に、華澄は右に…互いに隙を伺って漁夫の利を得るつもりだろう。
瞳さんはそれが解っていながら、ひとりで突っ込んでいる。
それ程に自信があるのか…?



「ここで止めるぜ!?」


「………」


瞳さんは冷静だ。
姿勢を低くして頭から鳴の懐に突っ込んで行く。
鳴は躊躇いなく拳を構え、それを上から振り下ろそうとした。
バカかアイツは…さっきの反応速度を覚えてないのか?
そんなバカ正直な攻撃じゃ瞳さんには掠りも…


バチバチバチィ!!



「!!」


瞳さんが鳴の拳を右にズレて回避し、そのまま鳴の横を通りすぎようとした瞬間、瞳さんの行く手を遮る様に『エレキネット』が放たれる。
間違いなく喜久乃だが、あのタイミング…ここまでの攻防を読んでいたのか?


喜久乃
「鳴さん!」

鳴「よしっ! 捕まえ…」


「!!」


ズッシィィィンッ!!



ケララッパ
「瞳! 鳴に捕まれる瞬間、鳴の手を取って軽く足を払い、鳴を転倒させたぁ!!」
「これは素晴らしい技術! まるで武道の達人を思わせる技だぁ!!」


まぁ、そりゃ実際に拳法の達人だからな。
あれでもれっきとした拳法の師範代。
瞳さんは中老師の教えを守り、今でも修行は続けているのだから…


喜久乃
(冗談! あれだけのパワー差を逆に利用して投げ飛ばすなんて!)


(流石に…さっきのでスピードは落とされました、ですがここが最大のチャンス!)


ビュン!と風切り音がし、メリケンサックが瞳さんの頬を掠める。
瞳さんは軽く首を傾け、わざとギリギリのタイミングで見切ってみせたのだ。
改めてゾッとする反射神経だな…華澄や守連でもあそこまで正確に見切れるだろうか?
しかも瞳さんのは技で見切ってるんじゃなくて、自分の目と体で見切ってるからな…しかも技のスペシャリスト。

ポケモンの技を使わずとも、瞳さんは清山拳の伝承者だ。
清山拳の技の数々は、ほとんどがポケモンの技を使う物ではない。
つまり、実質瞳さんはこの特殊制限ルールにおいてほとんどデメリットが存在しないって事だ。
奥義が使えないのは大きなマイナスだが、そんなのは他の家族のデメリットに比べたら雲泥の差。

ましてや清山拳は元々、多対一を前提にされた拳法。
動きの無駄は最小限に、相手に与える打撃も必要最小限に。


喜久乃
(鳴さんはまだ立てない! 騰湖さんは前のふたりを相手に集中している…)


「ここは…貰います!」


瞳さんはやや遅めの動きで緩急を付け、喜久乃の頭上に飛び上がる。
喜久乃はそれを見てすぐに鉄球を投げたが、瞳さんはそれを読んでいたのかギリギリで体を捻ってかわす。
そして喜久乃の肩に軽く足を乗せ、次の瞬間…弾丸の様な速度で斜め上に飛び上がった。


阿須那
(来たっ! チャンスはここや!!)

華澄
(あの玉を一撃で割るのは困難…パワーの足りない瞳殿であれば尚更でしょう)

阿須那
(となれば、次弾で落とせれば…)

華澄
(ポイントは一気に奪えるはず…!)


後方では阿須那と華澄がそれぞれ技を構える。
やはり漁夫の利を狙っていたか…だが、ここはふたりの選択ミスかもしれないな。
確かにあの玉は固い…が、瞳さんの使える技はよりにもよってあの技だ。
恐らく、瞳さんもその利点が解っているからこの選択を選んだ。
そして自信があると見た。



(私が使えるのは『岩砕き』ひとつ…!)
(これは岩ではありませんが、割るという点においては似た様な物)
(ですので! やってみせます!!)


瞳さんは右拳を引き、呼吸を整えて気を練る。
体内に流れる気を拳に集約させ、本来の性能以上の岩砕きを清山拳の技は実現するのだ!



「清山拳! 『穿孔破(せんこうは)』!!」


瞳さんの拳は真っ直ぐに鉄の玉に突き刺さり、ガキィィィィンッ!!と金属音が響く。
しかし玉はほとんど揺れる事なく、支柱が折れる事すら無かった。
だけど、音が何かおかしい。
フツーならもっと耳に響く甲高い音が出るはずなのに、まるで玉の中で反響するかの様にその音は深く鳴り響いていたのだ。
その後、瞳さんはフツーに着地し息を整える。
そして次の瞬間…玉にはヒビが入り、そこからヒビが全体に広がっていった。
数秒後、玉はガラスが割れる様に爆散する。



ケララッパ
『こ、これは見事!! まさかあの玉を一撃粉砕とは!?』
『緑組は早くも脱落!! こんな結果は誰が予測出来たでしょうかぁ!?』


喜久乃
「あ〜あ、予想はしてましたけど随分あっさりと…」


「…スゲェな、ありゃ」

騰湖
「ちっ、馬鹿馬鹿しい…さっさと退場するぞ」


緑組はそのまま退場して行く。
悔しそうとも言えない、何ともな表情だな…
さて、尺の長さの問題もあるとはいえ、いきなり展開が早くなったがこっからどうなるかな?



………………………



阿須那
(こらアカン…何がなんでも黄組は潰さな)
(仕方あらへんな、リスクは高まるけど多少の無理は通さなアカンわ)

華澄
(これで恐らく黄組はトップ…だとすれば、攻めるよりも守る方にシフトせねば!)


阿須那と華澄はすぐに青組の玉へと向かう。
瞳さんは少し息を整え、その後を追った。
さて、青組はどうなる? いくら全員防御でも攻撃部隊が集中したらヤバイぞ?



………………………



舞桜
「水恋ちゃん!」

水恋
「オッケー!!」


バシャアッ!!と水飛沫を上げ、水恋さんは守連に『アクアジェット』で突撃していた。
流石のスピードに守連もガードするのが精一杯。
そして、その一瞬の隙に舞桜さんは『影縫い』を的確に撃ち込む。
水恋さんはそのまま距離を離し、再び相手の射程外に逃げた。
これが青組の防御だ。
実に効果的で確実性の高い時間稼ぎ。
守連と大愛さんは、このコンビネーションを突き崩す事が出来ず、ひたすら影を縫われていた。


守連
(正面からじゃダメだ! 何回やっても同じ事の繰り返し…)


守連も高速移動で加速しようとするものの、水恋さんの妨害は速く、ギアを上げる前に突っ込まれてしまっている。
こういう時、『電気球』のパワーが無いってのは辛いな。
守連はスピードが速そうに見えるが、実の所高速移動頼み。
守連は良くも悪くも攻撃と特攻に努力値ぶっぱしたネタ構成だからな…
本来なら高速移動でスピードを補って立ち回るんだが、流石に初速で水恋さんのスピードに勝つのは無茶だ。
ましてやアクアジェットは先制技…威力は無くても必ず先手を取れる。
守連の基本パワーがあるから、吹っ飛ばされはしないものの、一流スナイパーの舞桜さんがいてはその強みはほとんど生かせない。


大愛
(ちっ、流石にPPの差が問題だな…)


大愛さんも舌打ちしながら動きは止められていた。
本来なら時を止めてる間に踏み込めるのだが、距離がある内は効果が薄い。
ましてや舞桜さんの影縫いは威力を捨ててる代わりに、ある程度連射可能にした特殊な技だ。
舞桜さんがずっと特訓を続けて、やっと出来る様になった縛る事に特化させた影縫い。
その矢は1本をかわしたとしても、すぐに2の矢3の矢と続けて放たれる。
相手を倒す事は出来ないが確実に動きを止める技…

この矢の前には、大愛さんの遅い足では踏み込む前に動きを止められてしまう。
だからこそ、大愛さんも容易には踏み込めないのだ。


舞桜
(予想通りに緑は先に落ちた…こっちのポイントにはならなかったけど、守りきれるなら勝機はある!)
(華澄ちゃんが戻って来れば、全員を撃退する事も不可能じゃない…それまではこのふたりを釘付けにする!)


舞桜さんは真剣な顔をし、いつでも矢を放てる様に準備する。
やがて華澄が近付いて来て、更に後ろから阿須那が何かを投げ付けた。
それは棍棒で、どうやら大愛さんの足元に投げ付けられていた。
何の意味があるのか解らないが、棍棒は大愛さんの足元に突き刺さり、斜めに立つ。
大愛さんはそれを見て何かを悟ったのか、急に顔を引き締めた。
そして影縫いの効果が消えたと同時、大愛さんは一瞬でその場から消える。
大愛さんがいたであろう場所には次の矢が刺さっており、大愛さんは『時の咆哮』の効果で回避したのだ。



ケララッパ
『大愛、ここで突如方向転換! 阿須那と共に黄組の玉へと向かっています!!』



成る程、さっきのはその為のサインか。
棍棒を使って大愛さんに作戦変更を伝えたんだな。
青組が全員防御となれば突破するのは困難。
だとしたら、別の玉を狙ってポイントを狙った方が良いって訳だ。


守連
(っ…ここで孤立するのは!)


「守連さん、一旦退いてください!!」

華澄
「させませぬ! ここは拙者がお相手致しましょう!!」


華澄は反転し、瞳さんと対峙した。
守連は同じパターンでまた動きを止められる。
舞桜さんは一切の油断をしない…水恋さんもまだまだ余裕がある。
必然的に…瞳さんは一騎討ちを要求されてしまった。



「…仕方ありませんね、でしたら押し通ります!」


瞳さんは清山拳の構えを取り、戦う事を選ぶ。
果たして勝てるのか?
技をほとんど使えない華澄とはいえ、基本性能はトップクラス。
弱点らしい弱点が無いのが華澄の強さでもあるからな…

対して瞳さんは良くも悪くも接近戦特化。
単純な肉弾戦なら華澄を上回る可能性は高い…


華澄
(さて、こうやって瞳殿と戦うのは初めてでござるが、ただならぬ気を放っていますな…)
(例えるなら、高山で岩肌を撫でる優しき風の様…しかしその一撃は時に岩をも砕く)


(華澄さんの実力は良く解っています)
(聖様が特に信頼を置いている家族のひとり…)
(これが全ての技を駆使して戦うポケモンバトルであれば、私に勝ち目は微塵も無いでしょう)

華澄
(この戦いは、互いにひとつの技を持ち、それまで鍛えた己の体を使って戦う競技)
(それは、拙者がほぼ体格の通りの力しか出せぬという事)


(清山拳の教えを試す良い機会です…この力と技が、華澄さんに通用するのか?)

華澄
(果たして、拙者は捌けるのか? あの瞳殿の武術を…)


ふたりは静かに間を詰めて行った。
やがて互いの射程距離に入ろうかという頃、堰を切るかの様に瞳さんは動く。


華澄
「!!」


まずは瞳さんの右拳が華澄の左頬を掠める。
華澄は右手を瞳さんの手首に当て、軌道を僅かにズラしたのだ。
この時点で華澄の細く鋭い目が光る。
華澄は素早く懐に踏み込み、瞳さんの腹に左肘を打ち込む。
瞳さんはそれをマトモに食らい、大きく体をくの字に曲げた。


華澄
(手応えが無い!? 衝撃を流された!)


(流石にスピードでは勝てませんね…ですがパワーでならそこまで差は無い様です)


瞳さんは先程のダメージを感じさせない動きで華澄の首を取る。
いきなりのヘッドロックだが、このままだと絞め落とされる。
華澄はすかさず水手裏剣を練り、瞳さんの腕を狙った。
瞳さんはそれに反応して首を放す。
華澄はそこから水手裏剣を瞳さんに投げようとした。
…が、瞳さんは後方に仰け反りながらも左足で蹴りを放ち、華澄の右手を蹴り上げて手裏剣を真上に飛ばしてしまった。
華澄は1度距離を取り、体勢を整える。
瞳さんも軽やかにバックステップして再び構えた。


華澄
(やはり強い…! 特に反応速度が尋常ではありません)
(まるでこちらの動きを見てから対応している様だ…下手な行動は全てカウンターになりかねない)


(流石に技は厄介ですね…あれひとつあるだけで驚異度が跳ね上がります)
(直撃されれば容易に人体を切断しかねない技…華澄さんの性格からすれば、あまり本気で使いたくは無さそうですが)


華澄はやや冷や汗を、瞳さんは割りと涼しげな様子で軽く息を吐いた。
ここまでの攻防はほぼ互角か?
やはり華澄は接近戦ではやや不利な感じもするが、逆に遠くからでも攻撃出来る技はある。
それをどう使うかで、勝敗は決まるかもしれないな。


守連
(このままじゃマズい! とにかく状況を変えないと!!)


守連は動きを止められ、舞桜さんを凝視する。
後少しで効果は切れると思うが、同じ事の繰り返しじゃ何も変わらない。
どうする、守連?


舞桜
(少なくとも、守連ちゃんさえ止めておけば今は十分)
(問題は瞳ちゃんを踏み込ませない事…ノーマルタイプに影縫いは無効だからね)

水恋
「うっし! なら突撃ーーー!!」


水恋さんはタイミングを見計らってアクアジェットを使う。
超高速で飛び掛かるあの技は反応するのも難しい。
そんな技に対し、守連はノーガードで顔面から喰らう。
思いっきり仰け反るも、守連はそのまま水恋さんの体を掴み、ベアハッグで両腕ごとロックした。


水恋
「ちょっ!?」

守連
「…うぅ!!」

舞桜
「!? 影が…!」


成る程、守連の奴考えたな。
今、守連の影は水恋さんのと重なってる。
体格的には水恋さんの方が大きいから、守連の影はほとんど解らない。
この状態で守連だけの動きを縛るのは難しいだろう。
現に舞桜さんは迷っていた。


舞桜
(あのまま影を撃ったら、ふたりとも止めてしまう…)
(だけど、あのままじゃ水恋ちゃんがやられかねない!)
(だったら悪いけど…守連ちゃんだけを無理矢理縛らせてもらうわ!)


舞桜さんは目を細め、少し横に移動する。
だが影の位置は変わらない、どこから撃っても意味は…


舞桜
「そこっ!!」

守連
「かかった!!」

水恋
「ゲッ!?」


守連は舞桜さんの動きを見てすぐに水恋さんを地面に叩き付ける。
すると、舞桜さんの放った矢は水恋さんの肩に刺さり、水恋さんは呻き声をあげた。
今の矢は、本来の影縫いか…ゴーストタイプの攻撃技。
あの矢に貫かれた者はもれなく交換を封じられる。
ダメージもそれなりにあるからな…影じゃなくて本体を狙ってたって訳だ。
しかも、今ので舞桜さんは次の矢がすぐに撃てなくなってる…技のリロードが発生したな。
本来なら僅かに見えた守連の足だけを狙ったつもりが…


舞桜
(やられた! まさか読まれるなんて!!)

守連
(これで自由になった…! もう2度と当たるつもりは無いよ?)


守連は爪先で地面をトントン…と2回叩き、動く準備をした。
水恋さんも肩を押さえてまだうずくまってる。
さぁ、ここからは反撃だが…?



………………………



阿須那
「クソッタレ! ホンマにバケモンやな!!」

鐃背
「さぁ、どうした? 火遊びはもう終わりか〜♪」



ケララッパ
『やはり鐃背、圧倒的!! 阿須那の炎ですら涼風とばかりに尻尾の一振で弾き飛ばしてしまったぁ!!』



おっと、こっちはこっちで激闘か?
阿須那と大愛さんが鐃背さんの相手をしているみたいだが、流石に一筋縄でも二筋縄でもいかない御方だからな。
だが、流石に大愛さんが加わっているのなら、鐃背さんでもかなりの危険度があると思うが…


大愛
「強いと言っても所詮は肉弾戦のみだろう? なら距離を詰めれば私の世界だ!」

鐃背
(むぅ、確かにあの技は妾に効果抜群のドラゴンタイプじゃからのう〜)
(こっちの技は今ひとつの『画竜点睛』じゃし、相性は最悪じゃな)


大愛さんは飛び道具が無いと確信して真っ直ぐ最短距離で突っ込む。
鐃背さんも不服そうに顔をしかめていた。
大愛さんの能力は1番鐃背さんに相性が良い。
時間さえ止めてしまえれば、玉を割る事は簡単なのだから…


阿須那
「とにかくサポートや! 当たればダメージにはなるやろ!?」


阿須那はそう言ってやや遠くから『炎の渦』の球体を投げる。
しかし、鐃背さんはそれを見もせずに尻尾で弾いた。
さしもの阿須那もワナワナと震えている。
こっちはこっちで相性最悪だな…まぁ炎はドラゴンに今ひとつだし。


鐃背
「とりあえず引っ込んどれ…今はこ奴を何とかするのが大事じゃ!」

大愛
「ふ…だが、もう十分射程距離だ!」


その台詞の後、すぐに金属音が鳴り響く。
気が付けば大愛さんは飛び上がって玉を殴っていた。
しかし流石にただの力技では中々割れない。
大愛さんも舌打ちし、空中でややバランスを崩していた。
それを見て鐃背さんは軽く息を吐く。
そして落ちて来る大愛さんを見て楽しそうに笑った。


鐃背
「ピッチャー第1球投げましたー♪」

大愛
「え…?」

阿須那
「アカン! 大愛はん、すぐに時を…!!」


阿須那が言うも遅い。
大愛さんが地面に着地しようかという瞬間、鐃背さんは思いっきり反動を付けて右回し蹴りを大愛さんの腹に叩き込んだのだ。


鐃背
「かっ! きーーーーーーんっ!!」


そんな叫び声と共に大愛さんは人形の様に吹っ飛ぶ。
まさに痛烈な当たりで、大愛さんは運動場の中央付近まで弧を描いて飛んでいった…



ケララッパ
『ホームラン!! とは行きませんが、鐃背凄まじい蹴りで大愛を吹っ飛ばしたぁ!!』
『玉は傾いているものの健在! さぁ赤組チャンスはあるのかぁ!?』



阿須那
「ふざけとるわ…1発じゃ割れへんと予想してたんか!」

鐃背
「むしろ、そなたの炎の方が玉には厄介じゃからな!」
「さて…大愛は恐らくリタイア、まだ抵抗するかの?」


大愛さんはすぐには起きられず、地面に寝ていた。
結構な高さから落ちたが、生きてるのかむしろ?
鐃背さんも珍しく本気の一撃だったみたいだが、大愛さんが強敵だって認識はあったんだろうな〜


阿須那
(流石にアカン…まさか返り討ちとは)
(やむを得ん、ここはやっぱ青の玉を…)

鐃背
「ピッチャー第2球投げましたー♪」

阿須那
「ぶふうっ!?」


鐃背さんは防御を捨てて阿須那の側に踏み込んだ。
まぁ、敵がいなきゃ守る必要無いもんな…
哀れ阿須那…鐃背さんの尻尾で真上に打ち上げられ、さっきと似た様な状況に陥る。


鐃背
「ぐわぁっきぃーーーーん!!」

阿須那
「今日はこの位で勘弁しといたるわぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!」 (ドップラー効果)


阿須那も思いっきり蹴り飛ばされ、数mは吹っ飛ぶ。
とはいえ流石に手加減はされていた様で、叫び声の割りには距離はそんなに飛んでなかった。
低空だったし、大ケガで済んでるだろ。


ケララッパ
『阿須那憤死ぃぃぃっ!! 鐃背の壮絶なパワーの前に、大愛共々あえなく失格だぁ!!』


ガハハハハハッ!と楽しそうに笑う鐃背さんを尻目に、阿須那と大愛さんが担架で運ばれて行く。
とりあえずこれで驚異は去り、鐃背さんは青組の玉を目指して走って行った。
え…? それってつまり…?



………………………




「ふっ! はっ!」

華澄
「!!」


華澄は瞳さんの相手をするのが精一杯。
流石に舞桜さんをフォローする余裕は無い様だ。
守連はそんな青組の玉に向かって攻撃を仕掛ける。
舞桜さんはギアを上げた守連を捉えるのに困難しており、矢を放てずにいた。


舞桜
(動いてる守連ちゃんを狙うのは難しい! ここは、攻撃後の隙を狙うのよ!!)

守連
(私のパワーじゃ一撃では崩せない、だから!)


守連は近くに落ちていた鉄球を拾う。
そしてそれを思いっきり玉に投げ付け、すぐにその場から加速した。
舞桜さんはタイミングが合わせられず、守連は捉えられない。
矢は地面を刺すだけで、動きは止まらなかった。
青組の玉はガコォンッ!と音がするも、揺れるだけでまだ割れはしない。
若干揺れながら傾いた感じはするが、まだまだ大丈夫そうだった。


守連
(一撃でダメなら、何度でも! とにかく舞桜さんの技だけは食らっちゃダメだ!)

水恋
「このぉ…! まだ動けるんだからね!?」


水恋さんは肩を押さえながらも立ち上がる。
そして高速で走り回る守連に照準を定め、アクアジェットで飛び掛かった。


守連
(ガードはダメ! かわしても矢が刺さる! だったら出来る事は…!?)


守連は足を止めずに迎え撃つ体勢を取る。
だが水恋さんは構わず突っ込む。
舞桜さんはそんな状況を冷静に見定めて矢を構えていた。
当たれば矢が刺さる、同じ手は恐らく通じない。
ならどうする? 策はあるのか?


守連
「!!」


バシャァッ!!という水飛沫と共に、守連の頭が水で弾ける。
何と守連は額で水恋さんのアクアジェットを受けており。
水恋さんの頭を額で受け止めていた。
足を踏ん張り、一歩も退く事なくその場で踏みとどまる。
そして守連はすかさず水恋さんの後頭部を殴り、地面に叩き付けて影を塞ぎ、その場から高速で移動…放たれた影縫いを回避してみせた。
2の矢、3の矢と放たれるそれも全てかわす。
玉からは離れてしまうが、それでも守連は全て回避してみせた。


水恋
「む、無念…!」

舞桜
「くっ…! 鐃背さんが近付いて来る! このままだと手が足りない!!」


そう、この戦場には鐃背さんが近付いて来ているのだ。
つまり、合流されればもう防げない。
水恋さんは流石に今の一撃でダウン宣告…失格となってしまった。
こうなったら黄組の独壇場となってしまう。
青組は完全な危機を向かえている…もはや玉を守るだけの気力もあるわけが無い。


鐃背
「ハッハッハー! さぁ、一気に青組を叩くぞぉ!?」

華澄
「鐃背殿…! こんな時に!!」


「貴女はここで釘付けにします! どこへも行かせません!!」


瞳さんは華澄を執拗に攻める。
ここで背を向けるのは得策では無い、瞳さんには一撃で玉を割る技があるのだから。
しかし、鐃背さんのパワーを持ってすればどうなるか解らない。
華澄からしたら、どちらを選んでも危機的状況でしか無い。
鐃背さんが追い付いた以上、戦況は明白だ。
マトモなぶつかり合いじゃ阿須那たちの二の舞。
しかし、順位を考えるのであれば降参は避けたい。
この状況を変えられるのは……?



ケララッパ
『あ、ああ〜!? 黄組の玉がぁーーー!!』


鐃背
「はぁ…!?」
守連
「あ…?」

「え…?」


ドッズゥゥゥゥンッ!!と大きな音をたて、黄組の玉は地面に落ちる。
その玉は斜めに綺麗に断ち切られ、上半分だけが地上に落ちていた。
そして軽く息を吐いて砂煙の中、腕を払う女性。


浮狼
「…思ったよりも簡単に切れましたね」


そう、赤組の玉をひとり守っていた浮狼さんだ。
当然ながらこっちはこっちでノーリスク。
流石の浮狼さんも、がら空きの玉を見て黙ってはいなかったって事だな…



ケララッパ
『まさか、ここで黄組失格! 残されたのは赤と青だぁ!!』
『あ、いや赤組ここで棄権を宣言!! 流石に2対1は無謀と判断したか!』
『つまりこれで決着!! 最後まで生き残ったのは青組だぁー!!』



とまぁ、こんな結果で玉割りは終わってしまった…
ポイント的には青組が1番美味しい形になってしまったが、まぁそれも仕方無いだろう。
とにかく、これで次は昼休み…とりあえずゆっくり休んで次の種目だな。










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第3話 『激戦! 玉割りサバイバル!!』


To be continued…

Yuki ( 2019/08/05(月) 17:40 )