とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第9章 『ダウンタウン ポケモン行進曲 それゆけ大運動会』
第1話

「…一体、これは何なんだ?」

恵里香
『どうやら、混沌の様だね…それも、危機感0の』


俺は開幕から恵里香に相談していた。
そう、俺は既に混沌に巻き込まれている。
学校から下校中に巻き込まれた為、今俺は制服姿で鞄も持ったままだ。
ちなみに、今いる場所はかなり大きな運動場で、どうやら運動会みたいな飾り付けがされているのが理解出来た。



「おいおい、まさかここで運動会に参加しろってか?」

恵里香
『だろうね…またそれなりの家族が巻き込まれてるみたいだし、どうなる事やら…』


恵里香はかったるそうな声でそう言う。
まぁ、危機感0の混沌って事だし、要はそういうタイプなんだろうが…



「これより、チーム分けを発表する!!」


それは運動場の一際目立つ位置の壇上で宣言される。
そこにいたのは見た事の無いポケモン娘で、体操服にブルマで巨乳と中々の美少女だ。
額には黒の鉢巻をしており、グループの色でも表しているのだろうか?
とりあえず、ソイツの見た目は身長160p程度、胸は88程でかなりの巨乳。
髪は腰の上位まで伸びる長さでポニーテール、色は金髪。
しかし髪の先端はツンツンと刺々しく立っており、どことなく電気タイプ臭いと俺は思った。
尻からは特徴的な尻尾も生えており、耳は頭から出ている。
そしてそれらの特徴から俺は彼女の種族を推測した。



「ありゃ…『サンダース』か?」

恵里香
『ぽいね、結構気は強そうだけど、今回の混沌の中心かな?』

サンダース
「まず、魔更 聖!! お前は我々黒組に所属してもらう!!」


俺はキョトン?とする…何で俺を名指し?
つーか、俺の事知ってるのか!?
そして、運動場に集結している全ての目がこちらに向いた。
俺は舌打ちをし、とりあえずスマホをズボンのポケットに入れる。
とりあえず、ご指名なら行くとしますかね…


女胤
「聖様!? これは罠かもしれませんよ!?」

騰湖
「そうだ! 易々と敵の手に渡るなど…!!」

サンダース
「黙れマイナー共! 聖はあくまでこの運動会の主役だ!」
「よって、選択権は無い! 貴様等は文句があるならチームとして勝ってみせろ!!」
「もっとも、聖が配する黒チームに勝てるのなら…だがな!」


サンダース娘はそう言ってニヤリと笑う。
かなり自信があるみたいだが、コイツは何者だ?
とりあえず実力はあるみたいだし、侮れなさそうだが…



「まぁ、良いさ…家族に危害が無い内は目を瞑ってやる」
「だが、家族に何かあるなら…俺は容赦をしないぜ?」

サンダース
「構わん、 むしろそれでこそ魔更 聖だ!」
「だが、安心しろ…この運動会はあくまでスポーツマンシップに則った、健全な運動会!!」
「暴力あり、乱闘あり、凶器あり!! 力こそが正義の運動会だからな!!」


「バカヤロウ!! どこが健全だよ!? 完全に○クノス式ルールじゃあねぇかぁ!!」


俺は嫌な予感がアリアリになる。
と言うかさっさとアリーヴェデルチしたい。
もう、色々と最悪だよ! 何で俺が敵と思われるチームの主役なんだよ!!
つーかルール無用の残虐ファイト相手に俺は役に立たんだろうが!!


サンダース
「とりあえず、チーム分けだ!! まずは赤組、大将は阿須那!!」

阿須那
「はぁ!? ウチが大将かいな!? つーか、ウチに運動会とかやらせるんか…?」


ほう、今や21歳の阿須那に体操服とブルマを穿かせると…許せるっ!!
俺は色々と想像しながらニヤけてしまう。
むぅ、これはもしかして色々と目の保養になるのかも…?
ちなみに阿須那は今の時点でスチュワーデスの服を着ており、コスプレ中だったのがモロバレていた。


サンダース
「ポケモン娘に年齢制限は無い! 次に配属メンバー!!」
「白那、櫻桃、浮狼、大愛!!」


レベル高ぇメンバーだなおい!?
禁伝ふたりとか、大丈夫なのかバランス!?
つーか全員大人で、ある意味ブルマは破壊力高いだろ!?
ちなみに白那さんたちはフツーの普段着だな。


サンダース
「次々行くぞ!? 青組! 大将は華澄!!」
「配属メンバーは舞桜、水恋、神狩、悠和!!」


こ、こっちはこっちで微妙なバランスだな…タイプの分け方は良いものの、戦力的にはかなり厳しいのでは?
とはいえ、華澄はかなりの実力だと思うし、貢献度で言うならそこまで悪くもないのか?
舞桜さんと水恋さんは阿須那と似た様な服だな、まぁ同じ職場なんだから当然か…
神狩さんは探検家みたいな服で、今日もボランティア活動をしていたんだろう。
悠和ちゃんは当然制服、俺と同じ学校だからな。


サンダース
「次は緑組! 大将は女胤!!」
「配属メンバーは騰湖、鳴、喜久乃、穹!!」


ゲェッ!? ここは禁伝3人!? 明らかに女胤と喜久乃が浮いてるぞ!?
しかし、レベル的には劣る部分もあるし、一概にぶっ壊れてるとも言えない…か?
服は女胤がゲーセン店員の制服、他4人は普段着だな。


サンダース
「最後は黄組! 大将は守連!!」
「配属メンバーは香飛利、愛呂恵、鐃背、瞳だ!!」


こっちはこっちでノーマル多し!
しかし、鐃背さんがいるし、レベル的には1番高そうに思える。
守連はやれば出来る娘だし、ダークホース的なチームになるかもしれないな…
こちらは瞳さんだけがコスプレで他普段着…ここまで見ても皆の生活スタイルが何となく解る気がした…


サンダース
「以上4チーム! お前たちはそれぞれの種目で争ってもらう!!」
「そして、優勝チームは私たち黒組と決戦だ!!」
「聖は最終的に勝利したチームの物となる! だがそれまでは我らが黒組の一員!!」
「大将は私だが、配属メンバーはまだ秘密とする!!」
「第1種目の公開は30分後だ! 精々作戦会議をするんだな!!」


そう言ってサンダースは俺の手を引いて歩き出す。
俺は素直にそれに従い、とりあえず付いて行く事にした。
家族は暴動こそ起こさなかったものの、かな〜りヤル気にはなっている様だった。


阿須那
「上等やんけ…チーム戦でこのメンバーなら負ける気せぇへんわ!」

白那
「…だけど、楽観視はしない方が良い」

大愛
「ああ、私たちが意図的に組まされたと言うなら、対策があると見るべきだろう」

櫻桃
「伝説のパルキアとディアルガが揃い踏みで、対策ねぇ…」

浮狼
「とにかく、何があっても油断だけはしない様にしましょう」
「家族同士で争う以上、何が起こっても不思議ではありませんし…」



………………………



華澄
「…とにかく、やるしかありませんな」

舞桜
「でも、このメンバーで勝てるの?」

水恋
「やってみなきゃ解んないって! アタシたちだって、秀でた所はあるんだから!」

神狩
「うん、タイプ相性だってあるし、きっと皆で頑張れば何とかなる」

悠和
「はいっ、ここは皆で一丸になって頑張りましょう!」
「力を合わせれば、きっと結果は付いて来ます!」



………………………



女胤
「…ある意味、露骨な気もしますね」

喜久乃
「確かに、ドラゴン3人とか…弱点が被りまくってますし」
「氷に弱いのが3人、地面に弱いのが3人、色々と不安ですね…」

騰湖
「ふん、要は勝てば良いのだろう? ならば問題など無い!」
「全てを焼き尽くしてでも、聖殿は手に入れてみせる!!」


「それが不安なんだよな…ただパワーがありゃ良いとは思えねぇけど?」


「…どうでも良い、でもやるなら容赦はしない」

女胤
「…チームワークは」

喜久乃
「皆無でしょうね…はぁ」



………………………



守連
「…これって、どうすれば良いの?」

鐃背
「要は運動会なのじゃろう? なら全力で相手をするのが礼儀じゃ!」

愛呂恵
「その通りですね…守連さんは純粋に競えば良いと思いますよ?」


「そうですね…混沌であるとはいえ、これは運動会…あくまで最低限のルールはあるのでしょうし」

香飛利
「うう…何で私が〜?」

守連
「大丈夫だよ、香飛利ちゃん♪ これは運動会だから、全力を出して頑張れば聖さんは喜んでくれるよ♪」

鐃背
「カッカッカ! まさにその通りじゃな!!」

愛呂恵
「はい、恐らく聖様も期待しておられるでしょう…私たちが、頑張る姿を」



………………………




「…やれやれだな」

サンダース
「ふふふ、面白くなって来た…! 果たしてどこが黒組の相手になるのか?」


俺たちはぶっちゃけ教室で待機していた。
俺は一応体操服に着替えさせられ、黒の鉢巻を締めさせられている。
サンダースは口元に手を当てながら笑っており、かなりの自信もあるみたいだ。
しかし、他のメンバーは誰ひとりおらず、ここには俺とサンダースのふたりのみ。
誰もいない教室で、ふたりの男女がひっそり会合…と、どこぞのエロゲーなら即ズッコンバッコンな展開を予想させるが、現実はんなわきゃない。
とりあえず、俺はかったるくしながらも椅子に座ってテキトーにしていた。



「そういや、何でお前は俺の家族を知ってるんだよ?」
「どっかで会ったっけか?」

サンダース
「出来の悪い姉に名を与えたのは貴方だろう?」


「は? 出来の悪い姉?」


言われて何の事か解らない。
サンダースの姉で、出来が悪くて、俺が名を与えた…で、この立派なおっぱいから推測すると…



「まさか、そのおっぱい! 唯ちゃんの妹かっ!?」

サンダース
「どこで判断してる!? って言うか、それで解るの!?」


サンダースは胸を隠してそう叫ぶ。
まぁ、半分冗談だが。
とりあえず、イーブイ系列で俺が名付けしたのは唯ちゃんだけだからな…
おっぱいに関してはただの勘だ…サンダースの方がサイズは上みたいだが。



「へぇ〜唯ちゃんに妹がいたのか…しかし出来の悪い、ね」

サンダース
「力は有りながら、それを上手く扱えない…その上性格も内気で、引っ込み思案」
「はっきり言って、ポケモンバトルでは無能と言っても過言で無い程の愚姉!」


「そうかねぇ〜? 唯ちゃんはそんな周りの環境に押さえられて力が出せなかったんじゃないのか?」


俺が言うと、サンダースは少し黙る。
そして目を細めて俺を睨み、腕を胸の下で組んで不気味に笑う。
唯ちゃんと違ってつり目なんだよな…あまり可愛げが無い。


サンダース
「どちらにせよ、あの姉に結果を出させたのは貴方が原因だろう?」


「さてな…俺はあの娘の背中を少し押しただけだよ」
「結果が出たのは、彼女が強かったからだ」

サンダース
「…まぁ、それは別に良い」
「愚姉の事は今関係無し! 今回は貴方たちを試す為に、この世界に呼び寄せたのだから!!」


「呼び寄せた、だと…? この混沌は、お前が作ったのか?」


俺が驚いて聞くと、サンダースはクスリと笑い背を向ける。
そして時計を見ると、そろそろプログラム開始の時刻だった。


サンダース
「詳しい事は後で! まずは見せてもらう!!」
「貴方方家族が、どれ程の絆を持っているかを!!」



………………………









第9章
『ダウンタウン ポケモン行進曲 それゆけ大運動会』









サンダース
「さぁ、まずは第1種目の始まりだ! 最初にやるのは、クロスカントリー!!」


「元ネタそのまんまだな…色々大丈夫か?」

サンダース
「心配はいらん! これはパロディだからな!!」


まぁ色々グレーゾーンか…こういった無茶なネタをぶち込むのも作者の病気だからな。
最近SAN値溜まってたみたいだし、こういうはっちゃけた企画をやりたかったんだろうなぁ。


サンダース
「一応ルール説明をする! この種目は要するに長距離走!」
「この運動場から外に出て、グルリと1周回って帰ってくればゴール!!」
「途中にはちゃんとルートを示す看板があるので、正しい道順で進む様に!」
「コースアウトは即失格とする!」


とりあえず皆理解はしている様だ。
って言うか、家族で巻き込まれてるのは何気にあの4チームだけか?
他はこの世界の観客っぽいのばっかだし、参加者では無さそう。
人間、ポケモンと双方入り交じってるし、とりあえずそういう世界みたいだが…


サンダース
「とりあえず走者をふたり選べ! この種目は2回やるからな!?」
「同じ種目に、2度同じ選手は参加不可だ!」


「そこは何気に改編するのな…まぁ、最強キャラ連続でおkとか言われても困るから妥当か」

サンダース
「そして最後に、参加者全員には指定の腕輪を付けてもらう!」


サンダースがそう言うと、チーム全員に謎の黒い腕輪が渡された。
サンダース自信もそれを身に付け、それに習って皆も装着する。
どうやら、選手の証とかそういうのみたいだが、やけに近未来的なデザインだな?
機械的と言うべきか? そんな感じのイメージがする腕輪だ


サンダース
「それでは、10分後に開始! まずは第1走者を決めろ!!」



………………………



阿須那
「…何やろこの腕輪?」

白那
「…これは、相当マズイ代物だね」

大愛
「成る程、相手が自信満々な訳だな」

櫻桃
「あれ!? 何か浮遊出来なくなってる!?」

浮狼
「これは…まさか我々の力を封じる腕輪!?」


ウチはそれを聞いてゲッ…となる。
成る程なぁ…つまりはこういう事か。


阿須那
「やるからには、己の肉体だけでやれ言う事か…」

白那
「どうする? こうなったらオレはマトモな空間操作が出来ない…足は遅く無いつもりだけど」

大愛
「こっちはパスだな…無能で走って勝てる気はしない」

浮狼
「私も、走るのは苦手です…」

櫻桃
「まぁ、やってやれなくは無いけど…感覚に戸惑いそうだなぁ」


とりあえず、マトモに走れそうなんはウチと白那はんと櫻桃はんか。
何があるかも解らん中、適当に決めるのは絶対にマズイ。
暴力有り、乱闘有り、凶器有りのクロスカントリーやからな…
相手のチームも考えて選出せぇへんと…



………………………



華澄
「とりあえず、拙者と神狩殿で行きましょう…スピードの拙者に、スタミナの神狩殿」
「ただ走るだけなら、最良かと」

神狩
「異論は無い、任せる…」

舞桜
「私もそれで良いと思います…能力が封じられていたら、単純な身体能力勝負になりますし」

水恋
「アタシは長丁場になったら無理そうだし、任せる!」

悠和
「私もお任せします…」


皆さんに異存は無い様で安心しました。
とにかく、黒組が何を考えているか解らぬ以上、チームへのダメージは最小に留めなければ…



………………………



女胤
「…長距離走、ですか」


「足に期待するなよ? 力勝負なら貢献してやるが…」

騰湖
「同感だな…走る等、我には合わない」


「ぶふー! 鈍足共め!!」

喜久乃
「いや、貴女もあまり速くは無いでしょう? まぁ、私より圧倒的にマシだとは思いますけど…」


こっちは既に進退極まっていた。
どうやってもスピードに自信の無いチーム!
私もこの腕輪を付けていては、ほぼ全ての技が使えない以上、そこまでの足は出せないでしょう。
しかし、この腕輪も完全に能力を封じる訳ではないらしく、ひとつ位なら技を使えるみたいです。
この事を他の皆さんが気付いていないなら、勝機はあると見ますわ!


女胤
「とりあえず、順当に私と穹さんで挑みましょう…穹さん、使えそうな技は何か解りますか?」


「ん〜『凍える世界』だけなら、多分使える…威力は相当落ちるみたいだけど」


成る程、それならかなりの武器になりますね!
穹さんの力はこの種目に恐らく向いている…まずは先手で出端を挫いてやりますわ!



………………………



守連
「とりあえず、走れば良いんだよね?」

愛呂恵
「はい、しかしポケモンとしての能力は著しく制限される様ですね」

鐃背
「とりあえず、飛べなくなるのは厄介じゃな…香飛利とか、ほとんど役に立てんぞ?」

香飛利
「あい〜…」


「と、なると…ここは守連さんを中心に、誰を添えるかですか?」


全員がとりあえず、悩む。
とりあえず、私は確定みたいだけど…まぁ走るのは得意だし、多分大丈夫だろう。


愛呂恵
「順当なら私が行くべきですが…」

鐃背
「それなら任せるぞ? 妾はメガ進化せんと速度はそこまでではないからな…」


「愛呂恵さんが出られるのなら、私はお任せします」

香飛利
「私は無理〜…」


ほとんど強制みたいだった。
とはいえ、私と愛呂恵さんなら速度はかなりの物だと思うし、走るだけなら大丈夫…だと思う!


愛呂恵
「…不安は有りますが、四の五のは言っていられませんね」
「守連さん、先発はお任せしてよろしいですか?」

守連
「えっ? う、うん良いけど…何かあるの?」

愛呂恵
「逆です、何かあるから守連さんに頼むのです」

鐃背
「成る程のぅ…あえて大将の守連を偵察に回すか」

香飛利
「???」


「確かに、守連さんなら余程の事が無い限りアドリブで対処出来ますからね」


うーん、要はそれって…特攻して来いって、事だよね…?
う、うん…でも、ここは私が頑張らないとやっぱりいけない気はするもんね!


守連
「わ、解ったよ! まずは私が何とか1勝してみせるね!」

愛呂恵
「はい、よろしくお願いします…2番手は私にお任せを!」

鐃背
(軽いのぅ〜)


(ノリ易いというか…守連さんらしいというか)

香飛利
(お腹空いた〜…)



………………………



実況
『さぁ、いよいよクロスカントリーの開始です!』
『実況は、ケララッパの私が空中からさせていただきます!!』


そう言って、体操服ブルマのケララッパ娘は空を飛んでメガホンを構えている。
とりあえず、運動場の正門で待機している4人が準備運動していた。
全員が体操服にブルマと眼福の光景だ…!


阿須那
「……!」

華澄
「………」


「………」

守連
「…!」


(しかし、開幕からそうそうたるメンバーだな…! これでクロスカントリーかよ!?)


俺は間違いなく荒れると思った。
華澄や守連は真面目にやるだろうが、明らかに速度で劣る阿須那と穹…
間違いなく開幕から荒れると俺は予想出来た。
阿須那や女胤が策も無しに戦うとは思えない! 間違いなく対策があると思うのが自然だ。



(…だが、俺には結果は予想出来ない! このメンバーでクロスカントリーとか、一体どうなるんだ…!?)

サンダース
「さぁ、始めるぞ!? クロスカントリー1本目、開始!!」


サンダースの言葉を合図にパァン!と、スターターピストルが鳴る。
そして一斉に4人が走り始めた。
スタートダッシュは華澄がトップ。
続いて守連が何とか続き、阿須那、穹と続いてスタートする。
実に順当だが、この時点で既に罠は仕掛けられていたのを俺は理解する。
1番後ろの穹が突然冷気を放っているのだ。
俺はギョッとするも、サンダースは笑っていた。


サンダース
「ほう! 既に自分が使える技を把握してるとは!」
「これは中々侮れない、実に楽しくなってきた!!」


「まさか、あの腕輪は全ての技を封じるわけじゃないのか!?」


現に穹は『凍える世界』を発動させ、瞬時に周りを凍り付かせる。
これにより、先頭を走っていた華澄と守連は顔を歪めた。
しかし華澄はそれでも気合いで走る。
その足は間違いなく遅い。
守連は逆に加速する、どうやら守連は『高速移動』が使えるみたいだ。
その加速は他の追随を許さない…と思われたが、そこで走る炎が場を戦慄させる。


阿須那
「これはええわ!! この程度の冷気やったら、ウチは天下やな!!」


ここで守連に追い付こうとしてるのは阿須那だった。
阿須那は炎タイプらしく、『炎の渦』を足元に放って突っ込んで行く。
確かにあれなら冷気は関係無い! 阿須那は守連をそのまま抜き去ろうとしたその時…

ドガァッ!と鈍い音がする。
それは調子に乗ってる阿須那の横っ面を『棍棒』で殴り抜ける穹の姿だった。
そりゃそうか…技を使ってる本人は影響無いんだから、阿須那だけが有利なわけないモンな…
しかし、早速凶器攻撃とは恐れ入る!
どうやら道中には色々あんな凶器が落ちているらしい…


阿須那
「ぶっ!?」


「邪魔…! 後、皆凍れ…!!」


穹は阿須那を吹き飛ばし、後方から更に凍える世界を発動させる。
あの技はキュレム専用で、敵全体に攻撃しながら素早さを下げる技だ!
あまりにもこのルールに噛み合いすぎてる、これじゃ穹の独壇場になってしまうぞ!?


ケララッパ
『これは凄まじい! 流石は伝説の境界ポケモン!!』
『まさにここから先は自分の境界だと主張せんばかりの冷凍世界だ!!』


華澄
「…! 成る程、それならば!!」


華澄はいきなり『水手裏剣』を3枚右手に作る。
そしてそれを後方の穹に放ってみせた。
それは普段よりも弱々しい威力の水手裏剣だが、穹は驚いた顔で立ち止まってしまう。
華澄の水手裏剣は穹を襲う事無く、地面を容易く切り裂いただけだった。
しかし、その威力は恐ろしい…パワーダウンしていても、それはまさしく凶器なのだ!


守連
「今の内に!」

華澄
「くっ! 速度は勝てませんか…!!」

阿須那
「クソッタレ! 行かせるかいな!!」


阿須那はすぐに『炎の渦』を守連たちの前方に放ち、動きを止めてしまう。
流石の守連と華澄もこの技を食らえば、動きを止められてしまうのだ。
そして、阿須那は笑いながら悠々と前に進んで行く、その後を穹が追っていた。



(相性が悪すぎる! 阿須那に凍える世界はほとんど効果が無い)

阿須那
(穹の技はウチに効果が薄い! 素早さは多少下がるけど、穹の速度に追い付かれる程でもない…!)

守連
(私が使えるのは、高速移動だけ…!)

華澄
(このままではマズイ! 水手裏剣だけでは速度を補えない!)


ことのほか場は拮抗していた。
4人全員が、ただひとつ使える技を駆使して先頭を維持しようとする。
まだ数10m程だと言うのに、駆け引きは最高潮。
そして、その中でなお先頭を維持するのは守連だった。


守連
「これで、最速ギア!!」


ケララッパ
『守連速い! 早くも高速移動連打でトップギアだぁ!!』


阿須那
(クソッタレ! この状況でも、あの速さかいな!?)

華澄
(速すぎる! 守連さんの足は想像を遥かに越えている!)


(ウザイ…! 射程距離外まで一気に駆け抜けてる!)


守連はひたすらに全力疾走で走り抜ける。
だが、このクロスカントリーは長距離走だ、守連は持つのか…?
守連にスタミナが無いのは皆解っているはず、阿須那や華澄は気付いているだろうし、このまま行けるのか?


守連
(行ける…! 訓練を欠かした事はほとんど無いし、体力はまだ余裕がある!)

阿須那
(守連は体力が少ない、後半になればペースは落ちるはずや!)

華澄
(スタミナなら拙者が上、隙を見れば必ず勝機はある!)


(ウザイ…技が続く内は差が縮まるけど、基本的な足は勝ち目が無い!)


そこからは割りとフツーの競争だった。
守連が先頭を維持し、華澄と阿須那が追う。
阿須那は凶器を投げ付けたりして守連を妨害し、そこに華澄が付け入って守連と争っていた。
そして穹は1番後ろで定期的に冷気を放ち、全員の足を制限している。
このクロスカントリーは思ったより複雑な地形を走る種目だ。
道だけではなく、時にはマンションの天井や、民家の中、下水道まで通り抜けたりする。
サンダースによれば許可は取っているとの事だが、本当に良いのだろうか?とは思ってしまう。
しかし、そんな中で遂にゴールは見えて来た。

ちなみに、俺たち観客はテレビモニターで様子を見ていた。
各所にカメラが設置されており、容易に監視は出来ているという訳だ。



………………………



守連
「…!!」


ゴールが見えた時点で最初に姿を見せたのは守連だった。
しかし、守連の顔は既に酸欠で青く、確実に弱っているのが解っている顔だ。
それなりに傷だらけで、かなりやられてるみたいだな…
そのせいか、後ろとはそれ程の差は無く、華澄と阿須那がこれまた傷だらけで守連を追っていた。
更に後ろからはあまりダメージを負っていない穹が目を細めながら機を伺っている。
そして、ゴール目前でそれは仕掛けられた…



「これでラスト…今度こそ全部凍れ!!」

阿須那
「!? この規模の、冷気…!?」

華澄
「今まで、力を抑えていたのですか…!?」

守連
「!? か、体が…そんな、ここで…!!」


ケララッパ
『まさかここで今までに無い範囲の凍える世界!?』
『ここに来て前方3人が凍り付いたぁ!!』
『しかし、穹のスタミナも限界か、もはや足が走れていない!!』



まさかのゴール前で穹は全力の『凍える世界』を放つ。
その圧倒的な冷気は今度こそ全員を包み、周囲全てが凍り付いた。
穹自身もかなりの疲労を見せていたが、ここに来て穹は遂に先頭に立ち、笑いながらゴールを見て歩く。

しかし、当然それに抵抗する者もいた。
阿須那は全身の熱量を一瞬で高め、右手から『炎の渦』を生み出し、穹に放つ。
穹は反応し、冷気を高めてそれを防ぐも、制限された中では通じず、炎の渦に囚われて動きを止められてしまった。
既にPP切れと思われる穹にこれ以上の抵抗は出来ないのだろう。
そしてその隙に守連と華澄が動く。
奇しくも、阿須那の熱量がふたりの冷凍をも溶かしてしまったのだ。


守連
「うああぁぁぁっ!!」

華澄
「守連殿、御免!!」


守連が踏み込む前に、華澄は背後から守連の後頭部を手刀で殴る。
まさかの一撃に守連は意識を断ち切られ、膝を付いて前のめりに倒れてしまった。


ケララッパ
『守連無残! 華澄の奇襲にてダウンだぁ!!』


阿須那
「行かせるかいなぁ!!」


阿須那は更に炎の渦を練ってゴール前に投げ付ける。
阿須那が投げた球体型の炎の渦の種は地面に着弾し、すぐに竜巻状に巻き上がる。
これが阿須那の炎の渦の特徴だ。
マトモに食らえばソイツはしばらく動けなくなる。
華澄は急ブレーキをかけるも、すぐに水手裏剣を大きく1枚練ってそれを炎の渦の着弾点に投げ、炎を消してみせた。
だが、この時点で阿須那は前に駆けている。
それは華澄よりも速く、阿須那は消えかけていた炎の渦を突っ切ってゴールまで走ったのだ。
華澄はそれを追って最速で駆け抜ける。
そして水手裏剣を1枚だけ練って阿須那の足を狙った。
ゴール前の阿須那はそれを予想してジャンプ回避、再び炎の渦を練って華澄を狙う…のではなく、それを真下に放って目眩ましとする。
華澄はその一瞬の炎による目眩ましで視界を封じられ、次弾の狙いが定められなかった。
そして阿須那は悠々と着地し、そのままゴールテープを切る。
第1走を制したのは…阿須那だ!


ケララッパ
『ゴーーーーールゥッ!! まず1番を取ったのは赤組だぁ!!』
『続いて青組、やや遅れて緑組、そして気絶している黄組は失格!!』
『しかし、まだまだ戦いは始まったばかり! 次の第2走はどうなるのかぁ!?』



………………………




(こりゃ、想像以上に過酷だな…開幕から3チームが大将投入で勝負に出るとは)


そして、ひとり笑う緑の変態…どうやらここまでの結果は概ね想定通りだった様だ。
穹は3位とはいえビリではない。
むしろ、あの面子の中でこの位置なら称賛に値する。
しかも、穹はさほどダメージを受けていないからな。

失格した守連は、やや甘かったと言わざるを得ないが…いや、あれは華澄の覚悟を誉めるべきか。
守連からしたら、華澄が背後から手を出してくるとは思ってなかったろうし…


サンダース
「ふふふ…! 流石に素晴らしい!! こうでなくては我々の相手に相応しくない!!」
「楽しみになってきた! これならばどこが勝ち上がっても不服無しと見る!!」


サンダースは楽しそうに笑っていた。
やや高圧的な所があるけど、コイツは単純に強い相手と戦いたいだけなのかもしれないな…
唯ちゃんとはまるで似てないが、本当に姉妹なのかね〜?
俺はそんな事を思いながら、これから先のプログラムを想像してため息を吐く。
まっ、制限された能力の中でならそこまで物騒な事にはならないと思うべきか…



………………………



サンダース
『さぁクロスカントリー第2走、 次の走者は誰かな?』


「………」


激戦が終わった第1走、次は第2走者の出場だ。
この時点で既にかなりの均衡が予想されてるが、果たしてどうなるやら…?
少なくとも、ただのスポーツで終わるとはとても思えなかった。



………………………



阿須那
「…流石に、疲れたわ」

白那
「お疲れ様、かなりギリギリだったね…」

大愛
「…成る程な、この腕輪は技ひとつなら使用出来る程度の制限というわけか」

櫻桃
「へぇ〜…だったら、アタシは何使えるんだろ?」

浮狼
「…私なら、『リーフブレード』が使える様ですね」


浮狼はんはそう言って右手から短くビームを出してみせる。
あんなんでも草エネルギーが込められた立派なリーフブレードや。
出力は抑えられとるけど、な…

とりあえず、制限に関しては何となく解った。
ウチが使えたんは『炎の渦』…切り札系と言うよりかは、どっちかって言うと使用頻度の高い技や。
華澄が水手裏剣、守連が高速移動、穹が凍える世界…
どれも使用頻度は高い技やろな。


白那
「…俺に出来そうなのは『亜空切断』か、それもかなり弱めの」

大愛
「となると、私が使えるのは『時の咆哮』だな…どこまで有効かは置いておいて」

阿須那
「ほな、次は白那はんに頼みましょか…」

白那
「分かった、だけどあまり期待はしないでね?」


白那さんは苦笑しながらそう言う。
まぁ、白那はんは普段から体鍛えとるイメージは無いからな…
それでも体付きは悪ぅないし、殴り合いでも全然やれるとは思う。
何より、頭がええのは評価点や…
他のモンにそうそう遅れは取らんやろ。



………………………



華澄
「申し訳ありません、少し届きませんでした…」

水恋
「いやいや! あのメンツ相手に2位なら上出来だってば!!」

舞桜
「確かに…私だったら瞬殺されてたかも」

悠和
「ですが、使える技によっては全然違う結果になるかもしれませんね」

神狩
「…私が使えるのは『神速』、でもほとんど短距離ダッシュにしか使えなさそう」


神狩殿はそう言って爪先をトントンと、地面に付ける。
とりあえず後は神狩殿にお任せしましょう。
同じコースを走るのであれば、問題は無いと踏みます。


華澄
「神狩殿、水場にだけはお気を付けて」

神狩
「…分かってる、とにかく最善を尽くすわ」



………………………



女胤
「穹さん、お疲れ様です…十分な働きでしたわ」


「むぅ…改めてアイツ等バケモノ」

喜久乃
「…女胤さんの予想通りでしたね、何も考えずにやってたら完全に最下位でしたよ」


概ね、展開は予想通り。
皆さんのチームと大将の性格を考慮して穹さんを送りましたが、見事に的中しました。
穹さんは他の大将3人に対し、見事にダメージを与えながら3位という立派な結果。
正直、最下位でも構わないと私は思ってましたからね。


騰湖
「…しかし、次はどうする? 我等の足が遅いのは変わらんぞ?」


「確かに、コース見ても足が物を言うのは解ってるしな…」

女胤
「ご安心を、次は私が行きます」


私は笑ってそう言う。
コースも把握しましたし、後は相手の選手次第。
注意するのは、神狩さんや愛呂恵さんでしょうね。



………………………



愛呂恵
「早くも大将がやられましたね…」

鐃背
「ぬぅ…最下位スタートは予想外じゃな」


「どうしますか? 少なくとも、同じ選手は出て来れないルールですが…」

香飛利
「あう〜…」


守連さんは今、治療室に送られています。
華澄さんの事ですから手加減しているとは思いますが、ダメージは有りますからね。
この大会のルールでは、治療を受けるのには許可が必要らしく、明確に戦闘不能判定されない限りは受けられない様です。
つまり、多少のダメージは引きずらなければ続けられないという事…
守連さんはそこまで酷くないとは思いますが、どこまで回復するか…


愛呂恵
「とにかく、次は私が行きます」

鐃背
「うむっ、任せるぞ!」


「愛呂恵さん、お願いします」

香飛利
「ガンバ〜」



………………………



ケララッパ
『さぁ、第2走者も出揃った! クロスカントリー2本目、一体どうなる!?』


白那
「………」
神狩
「………」
女胤
「………」
愛呂恵
「………」


4人はそれぞれ意識を高めて準備運動をしている。
今回は凄まじいまでの爆乳艦隊だが、女胤が逆に小さく見えてしまうな…
決してアイツも小さくないはずなのだが。


女胤
(ふふふ、聖様の視線を感じます! お任せください、私が必ずお助けしてみせますわ!!)


やれやれ、女胤の奴調子に乗らなきゃ良いが…アイツは普段から油断の塊だからな。
最低でも舐めてる奴で賞の有力候補だけに、期待はしたい所だが…



(アイツが使える技で有効な物が有るかだわな…)

サンダース
「ふふ、さぁ始めるぞ!? クロスカントリー2本目、開始!!」


サンダースは壇上で手を振り下ろし、そう叫ぶ。
そしてスターターピストルがパァンッ!となり、全員が走り出す。
まず最初に戦闘に立ったのは…


ケララッパ
「まずは愛呂恵が抜ける! やや遅れて白那、神狩と続く!! 女胤は完全に出遅れたぁ!!」


とりあえず、素早さ種族値通りの順位だ。
しかし、レベルや努力の差でそれ等は覆る。
開幕から仕掛けるのは…?


女胤
「まずはこれでいかがです!?」


女胤は後方から両手をかざし、得意技の『種マシンガン』を散弾銃の様にバラまく。
まだ距離がそれ程開いていない状況だから、これは3人とも貰う位置だ!


神狩
「!!」

白那
「くっ!?」
愛呂恵
「!?」


神狩さんは『神速』を発動させ、一瞬で愛呂恵さんの前に踊り出る。
ついでに白那さんに体当たりして吹き飛ばしており、まさに一石二鳥。
あまり距離は稼げてないが、戦闘に立ってそのまま射程外まで駆け抜けたので、十分な効果だろう。
そして白那さんと愛呂恵さんは種マシンガンを何発か受けてしまう。
咄嗟にガードはしたものの、かなりの痛みに顔を歪めていた。
いつも程の威力じゃないが、それでもかなり痛そうだ。
普段なら軽く肉を抉り取る程の威力だからな…


女胤
「ふふ、これはまだ序の口です…!」

愛呂恵
「……!」


愛呂恵さんは背を向けたまま思いっきり地面を蹴る。
アスファルトが軽く抉れる程の踏み込みで蹴った愛呂恵さんは、その勢いで前に跳び退いた。
白那さんは女胤を一瞥するも、背を向けて全力で走る。
ふたり共、所々服が破れてるな…って言うか。



「あ、あのヤロウ、まさかそれが狙いか!?」

サンダース
「まぁ反則ではないし、裸になっても続行は許すぞ?」
「もちろん、羞恥心が許すのなら…だがな!」


女胤は邪な笑みで笑っていた。
愛呂恵さんはすぐに理解して跳んだんだな…白那さんは何とも言えない所だが。
これは想像以上に面倒そうな事になっているぞ…女胤の変態性がこんな邪悪な作戦に辿り着くとは!


女胤
「アハハハハッ! どんどんいきますわよ!?」

白那
「悪いけど、2度目は無いよ!」


そう言って、白那さんは右手を軽く振る。
女胤は調子に乗らず、すぐに体をズラして反応していた。
今のはかなり軽い亜空切断…だが、女胤の肩口をしっかりと切り裂き、女胤は血を流して顔を歪めている。
白那さんもそれを見て目を細めた。
今ので威力を確かめたな…あんなんでも急所に当たれば多分死ぬからな。
まぁ、ゲーム的には急所に当たりやすい技なんだが…


女胤
(流石は白那さん! 反応が遅れていたら私の方がポロリしていましたわ!)

白那
(射程はかなり制限されてる…範囲も相当劣悪だね、こりゃ考えて使わないと残り4回じゃ女胤ちゃんの攻撃を捌ききれないな)


白那さんは愛呂恵さんと神狩さんを追う。
愛呂恵さんは安全圏に入っており、そのまま前を向き直して高速で走っていた。
愛呂恵さんはまだ技を見せていないけど、一体何なんだろうか?
…予想するに、あまりクロスカントリーで有効そうな技じゃ無いみたいだけど。



………………………



神狩
「………」

愛呂恵
(スタミナ勝負となれば私に勝ち目は薄い…やはり、ここで突き放さなければ!)

白那
「!?」


愛呂恵さんはマンションを上る際に、思いっきりジャンプして一気に跳び上がる。
流石に脚力が自慢のミミロップ、そのジャンプ力は他には真似出来ない距離を稼いでしまった。


神狩
「くっ…! 流石に地道に上るしかない!」

白那
「やれやれ…これは苦戦しそうだ」


神狩さんと白那さんは地道に上って行く。
ここは壁に取っ手が付けられており、通常はそれを使ってボルダリングの様に上っていくのだ。
しかし、さっきの愛呂恵さんの様にジャンプしてしまえば、大幅にショートカットとなる。
そして気付いたが、あの腕輪は技や特性、種族固有の能力などは制限するが、身体能力に関してはほとんど制限されてない。
つまり、ただの殴り合いとかになれば、格闘タイプ並の動きが出来る愛呂恵さんは相当な実力者って事だ。


女胤
(やはり愛呂恵さんは強敵ですね…ですが、それも折り込み済みです)
(要は、全体ポイントでトップになれれば良いのですから!)


女胤は後ろから加速して来る。
ここまでは様子見だったのか、上り始めている白那さんたちに一気に近付いた。
そして、まずは1発種マシンガンで斜め上を狙う。
両手が塞がっている白那さんたちはまずかわせない!

ドババババッ!っと音がし、白那さんたちは背中を攻撃される。
しかし、女胤の作戦はそれが目的では無かった…


ケララッパ
「おっとー!? 女胤の種マシンガンで取っ手が破壊! これでは上れなくなってしまうぞー!?」


女胤
「アッハハハッ!! そしてこうですわ!!」

白那
「なっ!?」

神狩
「…私たちを足場に!?」


何と女胤は全力でジャンプし、白那さんたちの頭を踏んで更に高く跳んだ。
その際に白那さんたちは下に落ちてしまい、大きく遅れてしまう。
女胤は高笑いしながら警戒に取っ手を足場にして高速で上って行く。
改めて、アイツの身体能力を甘く見てたな…
あんなんでも、家族ではトップクラスの強さだ…基本スペックは十分高い!
愛呂恵さんの様にジャンプ力があるわけじゃないが、体重が低い分身軽さでは上を行く。
取っ手は小さな物で、踏んで上るのはかなり愚行だが、それでも女胤はやり遂げてしまった。
これは一気に有利になるぞ…?


神狩
「…くっ、諦めるわけには、いかない!!」


神狩さんは全力で上り、取っ手が壊れた所を握って強度を確かめる。
そして行けると踏んだら、そのまま思いっきり手を伸ばして無事な取っ手を掴んでみせた。
後はそのまま愚直に進んで行く。
白那さんはそれを見ながら、後追いで追いかけて行った。
この時点でかなりの差が付いてるけど、まだ解らないな…



………………………



愛呂恵
(…後ろからは女胤さんですか、どうやら何かあった様ですね)

女胤
(流石に速い! 単純な足で追い付くのは無理ですね…)


現在位置は下水道。
愛呂恵さんは梯子のある段差を軽々とジャンプで乗り越える。
女胤は流石にここは梯子を上って上に上がっていた。
やはり、愛呂恵さんに追い付くのは無理があるみたいだ。
そして、かなり遅れて後方から神狩さんが猛スピードで追いかけて来る。
そのスピードは女胤を軽く越えており、徐々に神狩さんは追い付き始めていた。



(…? 白那さんが、いない?)


少なくともモニターには見えていない。
確か下水道に入る前は神狩さんの後ろを付いていたはずだけど…


女胤
(このままでは追い付かれますか…ならば!)

神狩
「!?」


女胤は梯子を上ると同時、上から鉄球を落とす。
神狩さんは咄嗟にバックステップし、それを回避する…が、女胤はそれ見て笑う。
神狩さんは一瞬戸惑うも、それは完全に罠だった。
そう、女胤が投げた鉄球は鉄球にあらず。
それは、導火線の付いた鉄球(?)だったのだ。
ちなみに、着火はスイッチひとつで行える簡単操作。
火が点いたら数秒後にドンッ!だ。


チュドォォォォォンッ!!



ケララッパ
『これは非情! 女胤、ここで落ちていた爆弾を神狩に投げ付け、吹き飛ばしてしまったぁ!!』
『そして勢い余って神狩は下水に落下!! 炎タイプの神狩、水は大丈夫なのかぁ!?』


神狩
「…っ!!」


神狩さんは何とか泳ぐも、かなり辛そうだった。
爆弾のダメージも大きい様で、動きが確実に鈍っている。
これは、絶望的かもしれない…


神狩
「!?」


何と、突然神狩さんが上に吹き飛ぶ。
その勢いで神狩さんは下水から抜け出し、顔に?を浮かべていた。
そして、その後凄まじい勢いで水飛沫が飛び散り、何者かが下水を泳いでいるのが理解出来る。
いや、何者かじゃない…このスピードで泳げる人なんて間違いなく!


ケララッパ
『こ、これは物凄い! 白那が水中から一気にブースト!!』
「上の愛呂恵や女胤に追い付こうというスピードで一気に差を縮めております!!」



神狩
(白那さんに助けられた…今は敵同士なのに、本当に優しい人だね)


神狩さんはどうやら白那さんに助けられたのが解った様で、少し項垂れていた。
しかし、まだ希望は捨てずに梯子を上って行く。
勝負は最後まで解らない…



………………………



愛呂恵
(…後ろには女胤さん、そして下からは白那さんですか)

女胤
(これは予想以上にマズイですわ! まさか白那さんがそんな戦法を取るだなんて…!)

白那
(…このペースなら、下水を抜ける頃には追い付いているはず)
(逆にそれ以降は自力で何とかしなけりゃならない…!)


愛呂恵さんはそろそろ下水を抜けようかという所。
女胤はそれを追う形で、やや遅れている。
そして、白那さんは水中を息継ぎ無しで泳ぎ、猛スピードで追い付いていた。
この下水道は、基本的にアップダウンの大きなステージで、地上を走る分には結構障害が多い。
対して水中は完全な直進。
通常、泳ぐよりも走る方が普通は速いと思うが、そこは流石にポケモン。
水タイプでもある白那さんは、まさに水を得た魚の様に凄まじい速度で泳いでいたのだ。

これには全員が驚愕していた。
そして同時にそんなショートカットもあるのだと理解する。
水タイプであるならば、その身体能力だけで泳ぐ事は可能なのだから…


華澄
(成る程、それは気付きませんでした…拙者もそこを攻めていれば)

阿須那
(やっぱ地形は把握すべきやな…今後もこんな抜け穴はあるやろ…)


華澄と阿須那は苦い顔でモニターを見ている。
待機組は基本的に運動場で専用の巨大モニターから中継を見ているのだ。
そして、この情報は貴重だ。
リーダーからしたら、今後の選出理由が変わって来る。
今後はもっと別の切り口も生まれてくるだろうな…



(だけど、結果的に愛呂恵さんはトップ維持、前の結果的にも1位で抜けたい所だろうな)


もっともそれは女胤も同じ。
ここで白那さんに抜かれれば、全体で不利になるのは明白だ。
何としてでも女胤は阻止したい所だろう。



………………………



ケララッパ
『さぁ、長い下水道も抜けて後はラストスパート!!』
『残りは崩れた足場でひたすら直進だぁ!!』



愛呂恵
「!!」

女胤
「くっ!」


愛呂恵さんは荒れた足場を軽くジャンプして飛び越えてしまう。
そこは本来なら地上から2m程下に降りた足場なのだが、愛呂恵さんはそれすらも飛び越えてしまったのだ。
女胤は地上からその隙を狙おうとするも、完全に射程外で手を失っていた。
やはり基本は速度勝負。
妨害するにも、ある程度は追い付けなければ意味が無い。


白那
「…さて、崩すならここかな!」


白那さんは女胤の後方から腕を振る。
女胤は反応して身をかわすも、その場の空間は切り裂かれる。
その時間はかなり重要だ。
白那さんの亜空切断は、1〜2秒間程切った空間が残り続ける。
そして、その空間が再び戻ろうとする間、近くにいる女胤は空間ごと引っ張られてしまうのだ。
本当に僅かの効果だが、これは意味がある。
1秒を争う競技な以上、その足止めは効果が大きいのだ。


女胤
「ですが、この距離でかわせますか!?」

神狩
「…それは、させない!」


何と、このタイミングで神狩さんが割り込んで来る。
まさかの展開に観客は一気に沸く。
神狩さんは息を切らしながらも追い付いて来たのだ。
そして、これにより愛呂恵さんはトップ確定。
女胤は神狩さんの神速でバランスを崩され、白那さんは足場に飛び込む。
神狩さんはそのままトップスピードで白那さんを追いかけて後を追った。
哀れ女胤…相変わらずお前はネタ枠で収まってしまうのか。


女胤
「ふ、ふふ…やってくれましたわね!」
「まさかこの手まで使うとは思いませんでしたわ!!」


女胤は胸元から何と爆弾を取り出す。
ゲェッ!? アイツ仕込んでやがったのか!?
女胤は不適に笑い、それを全力で白那さんたちの足元に投げ付ける。
そしてそれに向けて種マシンガンを放ち、即起爆させた。

チュドォォォォォンッ!!と小爆発。
白那さんと神狩さんは咄嗟に横に跳ぶも、完全にはかわせなかった。
そして、その瞬間不安定な足場が揺れる。
下の足場は砂地の様になっており、かなり走り難い構造だ。
そこの中心辺りで爆発は起き、砂が同時に多数舞い上がっている。
その後、砂地の足場はゴゴゴゴゴッ!と音を立て、蟻地獄の様に一気に砂を地下に吸い込んでしまった。
白那さんと神狩さんはそれに巻き込まれ、下に落ちかけてしまう。
辛うじて穴の手前で踏ん張るものの、砂だらけの中ではすぐに滑ってしまっていた。
結果的に白那さんと神狩さんは互いに手を繋ぎ、その場で協力して落ちるのを拒否する事しか出来なかった…


ケララッパ
『これは非情! 女胤の爆弾でまさかの事態!!』
『当の女胤は高笑いし、華麗にジャンプして安全な所を進んだぁ!!』


女胤
「オーホッホッホ!! これで2位は確定ですわね!!」

白那
「…やれやれ、こりゃどうにもならないね」

神狩
「…やられた、ここまでやるなんて」


女胤は余裕の笑みで2位ゴール。
白那さんと神狩さんは時間切れで失格となった…
言い忘れていたが、この競技は各所にチェックポイントがあり、それぞれ3分以内に突破出来なければ失格となってしまうのだ。


ケララッパ
『これにて2本目も終了!! 1位は黄組! 2位は緑組! 残りは失格だぁ!!』



………………………



愛呂恵
「………」

鐃背
「よくやった! これで前の失格も取り戻せよう!」

愛呂恵
「…だと良いのですが」


私は不安を抱いていた。
確かに順位的に見れば4チームとも拮抗はしている様に見える。
しかし、まだ正式な順位は通達されていないのだ。



「守連さんも、次の競技は問題無く出れるそうですので、安心ですね」

香飛利
「あう〜」


とりあえず、守連さんに問題が無いのは幸いですね。
後は、今現在の順位がどうなっているのか…?



………………………



女胤
「とりあえず、予定通りですわね…」

喜久乃
「まぁ、やるからには徹底的にが基本ですからね、失格のおふたりはご愁傷さまとしか言えません」


「何だかなぁ〜…まぁ、それがルールなら仕方ないけど」

騰湖
「お前は甘いんだ、聖殿が囚われてる以上、勝たなければ意味が無い」


「でも、それは他の奴等でも出来る事じゃないのか?」


鳴さんの言いたい事も解りますが、正々堂々だけで勝てる程甘い戦いではありませんからね…
それに…


女胤
「あの程度のアクシデントで失格になる様でしたら、恐らく黒組には勝てませんよ?」


「…確かに、このルールを考えたのが黒組なら、ありとあらゆる妨害を用意している可能性がある」


穹さんの言う通りですわね。
あくまでこれは挑戦権をかけた戦い。
本当に考えなければならないのは、黒組との戦いなのです。
それを考えれば、ありとあらゆるシチュエーションを試さねばなりません。
何が有効で、何が効果的なのか?
良くも悪くも、他のチームの皆さんには実験台になってもらいますわ。



「………」

騰湖
「お前は好きにやれば良い、それも踏まえて作戦を組むのがこちらの大将だからな…」

喜久乃
「そういう事ですね、鳴さんは鳴さんらしくやれば良いんですよ」


良くも悪くも、チームワークは皆無と思いましたが、案外そうでもないのかもしれませんね。
騰湖さんも、鳴さんも、正反対な性格ですが、互いの事を良く解っている。
喜久乃さんも頭は回る方ですし、色々フォローはしてくれるでしょう。
問題は穹さんのみですが…ここまで見て、それほど問題とも思えない。
協調性が無いわけでもありませんし、それなりに楽しくやっているみたいですね。



「とりあえず、走るのはもう良い…暑いし」

女胤
「まぁ、残りの競技次第ですね…順位にも寄りますが」

喜久乃
「順位…そういえばどうなってるんでしょうか?」


私たちは現在の順位の通達を待つ。
その結果いかんによっては、作戦も練り直さなければなりませんからね。



………………………



白那
「あはは…ゴメンね〜やっぱり難しかったみたいだ」

阿須那
「まぁ、仕方ありまへんわ…女胤があそこまで徹底するとは予想してへんかったし」

大愛
「しかし、思いのほか効果的だな、落ちている武器を使うのも」

櫻桃
「確かに、あれならある程度非力でもカバー出来るね…」

浮狼
「しかし、それは相手も同じ事…効果的に利用出来るかは解りませんね」


浮狼はんの言う通りやな、確かに武器は利用価値がある。
せやけど、それを確実に拾って効果的に利用する…ってなると、こっからは難しいやろな…
女胤が武器を効果的に使えたのも、他の3人がそれを軽視してたからやろし。
今後は、そんな駆け引きも含めて争いが行われる…こら、益々気ぃ引き締めんとな!



………………………



神狩
「…ゴメン、無理だった」

華澄
「致し方ありません、ああなってしまっては相手を誉めるべきでしょう」

舞桜
「うん、今後は落ちてる物にも注意してやらないと…」

水恋
「うーん、水中泳いで良いんだったら、アタシが出れば良かったかも…」

悠和
「確かに、地形の相性も考えたらその方が良かったのかもしれませんね…」


うむ、やはり考える事は多いですな。
良くも悪くも、正攻法ではあしらわれた感じですか。
こちらには、阿須那殿や女胤殿の様な司令塔がいないのが厄介と言えますな。
拙者の頭では、流石にあのおふた方には敵いませぬ。
それも踏まえて、今後は作戦も考えなければ…



………………………



サンダース
「それではクロスカントリーの結果発表!!」


「………」


全員がその宣言に息を飲む。
俺は詳細を聞いているのでもう知ってるが、皆はそれなりに気が気じゃないのかも…
とりあえず、このポイント制は意外に細かい。
ただ順位を見るだけじゃ、全く先は解らなくなる。


サンダース
「…現在1位は緑組20P! 2位は黄組18P! 3位赤組15P! 最下位青組13P!」


その通達に選出全員がざわめく。
それもそのはず、この大会のポイント制は、様々な分野で評価されて計算されている。
一見、順位を落とす行為もプラスになる事があるのだ。


阿須那
(そこまで差が出たんか!? となると、女胤たちはある程度予想してたんか…?)

華澄
(…いきなり辛いスタートですな、しかし1種目でここまで差が出るなら挽回は可能という事!)

女胤
(概ね予想通りの結果ですわね…ゲーム的な解釈で考えれば、順位だけでポイントが決まるとは思えませんでしたからね)

守連
(愛呂恵さんのお陰で、何とか持ち返したんだ…これからは妨害もちゃんと視野に入れないと!)


大将4人はそれぞれ顔を引き締めているな。
とにかく今後も間違いなく荒れる。
はてさて…どうなるやら?


サンダース
「とりあえず次の種目まで10分休憩! その後に種目を発表とする!!」


「…やれやれ、とりあえず休憩か」


俺はサンダースと共にまた教室に戻る。
次の種目は既に聞いているので俺は見ているだけだけどな…



………………………



サンダース
「…そろそろか」


「ん? 何かあるのか?」


サンダースは掛時計を見て、呟く。
すると、狙い済ましたかの様に教室のドアは開き、そこから体操服ブルマの女性が中に入って来た。
額には黒の鉢巻を巻いており、黒組なのは解る…がっ!



「まさかの未来(みく)さん!?」

未来
「ほう、話に聞いてはいたが、本当だった様だな」
「今回は、世話になる…また、よろしく頼む」


そう言って未来さんは軽く頭を下げる。
あれから結局1度も会えなかったし、色々気になってたけど…まさか黒組として招かれるなんて。


サンダース
「歓迎しよう未来さん! 黒組の同志として、共に戦おう!」

未来
「…協力するのは構わんが、小生は好きにやらせてもらうぞ?」

サンダース
「構わん! だが、貴女を使うかどうかは私が決める!」


未来さんは微笑し、とりあえず俺の側に近付いた。
相変わらず威圧感のある身体だよな…体操服も胸の大きさでパッツンパッツンだし。
未来さんが黒組に入るとなると、相当な助っ人だな…


未来
「…多くは語らぬ、ただそなたの為なら小生は剣は振るおう」


「未来さん…どうか、体にだけは気を付けて」


俺はそれだけ言って後は何も言わなかった。
互いの信念はもうぶつけ合っている。
だったら、俺は未来さんを信じるだけだ。
初めて会った時とは違う…きっと、未来さんはあれから変わってくれたと思うから。



「そう言えば、未来さんはどうやってこの世界に?」

未来
「…すまぬが、それは言えん」
「口止めされているのでな」


は? 口止め? 一体どういう事だろうか?
とりあえず未来さんの表情からは何も読み取れない。
俺に言えない事なのか…?
サンダースはただ笑って腕を組んでいるが、何か良からぬ事でも画策してるんだろうか?
悪意はまるで感じない混沌だが、前のペルフェとかいう奴の件もある。
最後まで、気は抜かない方が良さそうだ…










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第1話 『恐怖! ルール無用の黒巣完鳥居(クロスカントリー)!!』


To be continued…

Yuki ( 2019/06/20(木) 10:53 )