とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第8章 『聖の選択』
第8話
二海
「…で、色々あって今はメキシコだよ」

白那
「そう、元気なら何よりだけど…あれが例のゲノセクトかい?」


私は白那さんと再会し、以前の話をしていた。
今日は9月分の薬を貰う予定日だからな。
そして、今回はジェノたちの分も含めて多めに貰うつもりだ。
白那さんは、やや遠めの距離で休んでるジェノとアクアを見ていた。
アクアは意識こそ取り戻したものの、知的障害を起こしており、マトモに考える事が出来なくなっている。
ジェノはそんなアクアに寄り添って、手を握ってやっていた。


白那
「とりあえず、事情があるの解った」
「だけど、君がひとりで背負う必要は無いんじゃないのか?」

二海
「ひとりじゃないさ…でもまぁ、必要なら協力は仰ぐ」
「それまでは、私ひとりで十分だ」


私はそう言って白那さんから薬を貰う。
そして手紙を白那さんに渡した。
三海は大分成長も終わり、大きな問題も無くなった様だし、とりあえずは安心かな。
こっちはこっちで厄介事ではあるが、当面自力で何とかするつもりだ。
余計な負担はあっちにかけるつもりは無いからな。


白那
「とりあえず、気を付けて」
「混沌に関してはいつ巻き込まれるか解らない、君も聖君に関わってる以上、何が起こってもおかしくないから」

二海
「ああ、理解はしているさ…大丈夫だ」

白那
「それじゃ、今回はこれで…元気でね」


そう言って白那さんは空間を越えて消えてしまった。
相変わらず便利な能力だ…私のテレポートと違って地球の裏側でも一瞬だからな。
私は少し息を吐きながらも薬を手にジェノの元へ向かう。
アクアは?を浮かべながらも、どこかジェノに甘えているかの様な感じで意味もなくジェノの手を弄くっていた。


ジェノ
「…話は終わったのか?」

二海
「ああ、これが偽装薬だ」


私はそう言ってジェノに薬のケースをふたつ渡す。
まぁ、ふたりは見た目的に髪と瞳の色位しか特徴が違わないから、そこまで必須でもないんだが…
大きな街に行く時は目立たない方が良い。
これを飲んでいれば肌を露出させていても偽装してくれるからな。


二海
「とりあえずそれを1錠飲めば1日の間は普通の人間に偽装出来る」
「だが、あくまでそう見られるだけで、自分の体は一切変化が無いというのは覚えておけ」

ジェノ
「成る程な、分かった」


ジェノはそれを受け取り、とりあえず懐に入れる。
まぁ、この辺りは人気もほとんど無いし、山か川しかないからな。
無理に飲む必要は無いが、ジェノ的にはまだ必要無いと思ってるのか…


二海
「で、妹の存在は感じられるのか?」

ジェノ
「…何となくだがな、このまま南下していけば誰かに会える気がする」


ジェノはそう言って南を見る。
ひたすらに川が流れるこの地帯は、かなり広大だ。
このまま進み続けたら、その内コロンビアに着くだろう。
正確な距離は不明だが、その位の旅は覚悟しないとな…


ジェノ
「さぁ、行くぞアクア? ちゃんとヘルメットを被れよ?」

アクア
「うー…」


アクアは赤子の様な反応をし、ヘルメットを被ろうとする。
ジェノは優しくそれをサポートしてやり、アクアがヘルメットを被るとそのままバイクの後部座席に乗せた。
そしてエンジンをかけ、バイクは独特の排気音を奏でる。
私は少し息を吐き、体を浮遊させた。
アクアはしっかりとジェノの背中に抱き付き、離れまいとする。
私たちはそのまま、ひたすらにメキシコの大地を南下していった…



………………………



二海
「…やれやれ、思ったよりも長旅になりそうだな」

ジェノ
「まだ反応は先だ…地理で言うなら、ブラジル辺りになるか」


ジェノは地図を見ながらそう語る。
今はコロンビアの辺りだが、ここから南米に渡ってブラジルとなるとまだまだ距離があるな。
改めて日本は小さい国なのだと思い知る。
とはいえ、ジェノの改造バイクで飛ばせば明日にはブラジルに着くだろう。
この辺りは比較的荒野で、道は開けてるからな。


アクア
「うー」

ジェノ
「ちょっと待ってろ…もうすぐ肉が焼ける」


そう言ってジェノは串に刺さった肉を焚き火で焼く。
前の町で買った食料で、火は技で点けた。
アクアは嬉しそうにニコニコしながら、それが焼けるのを待っている様だった。


二海
「そういえば、アクアはお前と違って青色が目立つが、名前の通り属性でもあるのか?」

ジェノ
「…ああ、正確にはカセットで変えれるんだがな」
「俺たちゲノセクトは、アクア、ブレイズ、イナズマ、フリーズ…4つのカセットを使う事によって、『テクノバスター』のタイプを変える事が出来る」

二海
「テクノバスター…って、技だとは思うが、その銃の事なのか?」


私はジェノの腰に下げられている銃を指差してそう聞く。
それはアクアにも付けられており、どうもゲノセクトの象徴でもある様だ。
だが、アクアは一丁でジェノは二丁ある。
この辺りは長女の特権なのだろうか?


ジェノ
「ああ、本来ならカセットを差し替える事で5つ のタイプを使いこなせるんだが…」
「妹たちはその内のひとつしか使えず、いわゆる俺の劣化品扱いになってる」

二海
「劣化品…」

ジェノ
「名前でそのまま予想は付くだろう? アクアはその名の通り、アクアカセットしか使えないんだ」
「そしてそれは他の妹も同様…」


成る程、つまり他の姉妹はそれぞれ炎、電気、氷を扱うわけか…
ん…? それだと、最後のひとりは何になるんだ?


ジェノ
「唯一、ノーマだけはタイプがノーマルとなる」
「アイツはカセットをひとつも使えない失敗作で、テクノバスターもノーマルタイプとしてしか使えないんだ」

二海
「…失敗作、か」


だがノーマルタイプを侮る事は出来ない。
逆に言えばノーマは誰にでも同じ様に戦えるという事。
対姉妹では相性が悪いが、それ以外にはそれなりの万能性を持つのかもしれないな。


二海
「しかし、あくまで変えられるのは技のタイプだけで、自身のタイプを変えられるわけじゃないんだな…」

ジェノ
「ああ、あくまで俺たちは虫、鋼タイプだ」
「炎をマトモに食らえばひとたまりもない」


それがタイプ相性って奴だからな。
とはいえ、ジェノは完成品らしくその弱点を技で補っている。
実際、改造されてるだけあって身体能力は並のポケモンを軽く凌駕しているだろう。
ましてや機械の体…ちょっとやそっとの痛みは何の影響も受けない。
私みたいに自己再生は出来ないが、それでもオートリペアの様な機能は有しているみたいで、普通の人間よりも傷の修復は速い様だった。
アクアも後遺症こそ残ってしまったが、体の方は元気その物で特に心配は無い程だ。
しかし、後4人か…それも、もう少しで出会う可能性がある。
今度は、少しでも話が通じれば良いんだがな。


ジェノ
「よし出来た…しっかり食えよ? 改造されてても栄養は必要だ」

アクア
「〜♪」


アクアはジェノから串を受け取り、それに食い付く。
味に文句は無いのか、嬉しそうに頬張っていた。
何となく…三海を思い出すな。
アイツも、食事の時は特に嬉しそうな顔してたっけ…
私はそんな事を思いながら、串を取ってタレをかける。
この国の調味料は特に味が濃い。
分量をしっかり考えないと後で後悔するのが厄介な所だ。

…と、こんな感じで旅は続いている。
そして、その日は休んで次の日…私たちは、一気に緊張を走らせる事になった。



………………………



ジェノ
「…! 近付いている、この感覚は…ブレイズか!」

二海
「!? という事は、こちらに感付いたって事か?」


ジェノはバイクを一旦止め、前方を見定めた。
既に国境近くに私たちはおり、時間的には夕暮れ前。
通る車も存在せず、人っ子ひとり存在はしてなかった。
だが、確実に緊張は高まる。
私には感じられないが、ジェノは確実に妹の接近を感じていたのだ。
アクアもそれが解っているのか、僅かに震える。
今のアクアに戦えと言うのは無理がある気もした。
そもそも、戦う事の意味も多分理解出来ていない。
ブレイズとか言うのがどんな性格か解らないが、アクアを護る事もちゃんと視野に入れておかなければ…!


ジェノ
「来るか…なら、ここで救ってやる!」

二海
「! こっちでも捉えた…距離500m以内だ! 時速100km程で突っ込んで来てやがる!」


私はこの時点でおかしい事に気付く。
前方の視界にソイツが見えないのだ。
遮る物が無い開けた視界500mに、誰も見当たらない。
そして私は理解した、相手はハナから奇襲が前提だったのだと。


二海
「飛べジェノ! 下から来る…!?」


言うよりも速く足元が揺れる。
焼ける様な熱を私は感じ、すぐにアクアの手を引っ張って宙に浮いた。
ジェノは一瞬顔を歪めるも、すぐに両手に銃を持ち、背中のバックパックの側面からふたつのカートリッジを射出した。
それらは銃のグリップにしっかりと収まり、一瞬で装填は完了する。
そしてそこから打ち出される弾丸は……!


ドバシャアァッ!! ビキビキビキィッ!!


弾が足元に着弾したと同時、ジェノの足元は一気に凍り付く。
先に水を撒き散らし、次の瞬間冷気で凍らせたのだ。
熱された地面は一瞬で冷却され、水蒸気を発生させて熱さとせめぎ合う。
互いの能力がぶつかり合い、炎と氷の熱量が互いを奪い合っていた。
やがて、水蒸気は収まり、氷も程よく溶ける。
ジェノはそれを確認して足を踏み鳴らし、銃のカートリッジ…というかカセットを外してバックパックに戻した。
今のが『テクノバスター』だな…銃を使って別タイプの弾丸を発射する技か。
威力も相当ある…ハイドロポンプや吹雪のそれを上回っているかもしれない。
それを自由に切り替えて扱えるジェノは、確かに妹とは一線を画する性能に思えた。


ジェノ
「さっさと出て来い…でないと、無理矢理引きずり出す事になるぜ?」


その瞬間、ひび割れた地面から飛び出す同型のゲノセクト。
真紅のジェノとは違い、オレンジのカラーリングが施されたソイツは、腰まで伸びるポニーテールをマスクの首元から伸ばしていた。
そして数m離れた場所でソイツは着地し、ジェノと対面する。
ジェノが目を細めて睨むと、ソイツはマスクを外して横に投げ捨てた。


ブレイズ
「姉さん、待ってたよ…」

ジェノ
「俺もだ、ようやく救える日が来たぜ」


ブレイズ…ジェノの妹であり、アクアの姉。
いわゆる4番目の妹だそうだが、割とマトモそうな性格に思えた。
だが、コイツも脳は弄くられており、殺人衝動は抑えられない。
無感情にも思える端正な顔立ちは、ジェノとは正反対にも感じられた。


ブレイズ
「理由はいらない、死んでくれ」

ジェノ
「やれるもんならやってみろ… 俺は絶対に救うぞ?」


互いに緊張感を走らせる。
ゲノセクトの特性は『ダウンロード』…互いに低い方の能力を参照して能力を高める。
ジェノは特防の方がやや低く、妹たちは常に特攻が上がるのが悩み所だとジェノは言っていた。
逆にアクアは防御が低く、ジェノは攻撃が上がる。
果たしてブレイズはどっちなんだ? 流石の私もここから見るだけじゃ防御と特防の違いなんて解らないが。


ブレイズ
「!!」
ジェノ
「!!」


互いに一瞬で攻撃体勢に入る。
ブレイズは銃を構え、ジェノは前傾姿勢で踏み込んだ。
この時点で互いの戦術は予測出来る。
ジェノは攻撃が上がり接近戦スタイル、ブレイズは特攻が上がり射撃スタイルだ!
しかもブレイズのカセットはよりによって炎!
ジェノが食らえば一撃で死ぬ可能性も有り得る。
私はとりあえず、すぐに結界を作り出してバトルフィールドを形成。
外からの干渉を断ち切った。


ブレイズ
「死ね姉さん!! アンタの機能はアタシがいただく!!」


ブレイズは高速でテクノバスターを発射する。
が、ジェノはその前に速度を倍加させ、射線から消えた。
ブレイズは舌打ちし、すぐにバックステップする。
しかし、ジェノは先に回り込んでいた。


ジェノ
「悪いが、統制プログラムは破壊済みだ…!」


ジェノの蹴りがブレイズの腹に炸裂する。
それは炎を纏う『ブレイズキック』! 姉妹の中で使えるのはジェノのみで、効果は抜群。
ブレイズは叫び声をあげながら結界の端まで吹っ飛び、腹を押さえてすぐに立ち上がった。
やはり効果抜群でも必殺と言える効果は得られないのか…?
人体改造で防御力は相当高いみたいだからな…テクノバスタークラスの技でなければ即死はしないのかもしれない。


ブレイズ
「クッ! この程度で終わると思うな!?」

ジェノ
「安心しろ…! 終わるまで殴り続けてやる!!」


ジェノはブレイズの弾丸を全てかわして接近する。
今度はブレイズも肉弾戦に応じるが、ジェノのパワーにはまるで及ばないのか、あっという間に吹っ飛ばされた。
ジェノはジェノで相討ち覚悟で踏み込んでおり、口から血を吐きながらも正面からブレイズに歩み寄っている。
ブレイズは咆哮しながらも、テクノバスターを射つ。
だが、ジェノはそれを自らのテクノバスターで射ち勝ってみせた。
ジェノのアクアカセットにより、ブレイズの炎はあっさり消える。
ダウンロードで威力が高まっているにも関わらずこの結果。
これが、劣化品との差なのか…


ジェノ
「テクノバスターってのはこういう使い方も出来るんだぞ?」


ジェノはもうひとつの銃を持ち、カセットを装填してブレイズに射つ。
それは氷の弾丸となり、ブレイズの手足を一瞬で凍り付かせた。
結界に張り付けられる形となり、ブレイズはそこから動こうとするが、ジェノはすぐに踏み込んでブレイズの顔面を蹴り抜いた。
足から軽く炎が噴射され、ブレイズは意識を混濁させる。
さて、そろそろ出番か…


二海
「後は私に任せろ、コイツの制御チップも綺麗に取り除いてやる」

ジェノ
「ああ…任せる」


私はブレイズの額に手を当て、異物の位置を探る。
そしてアクアの時の感覚を思い出してすぐに発見した。
後はそれを超能力で手元にアポートし、私はチップを粉々に握り潰す。
ブレイズはその瞬間意識を失い、ガクリと項垂れた。
どこまで影響があるのか解らんが、アクアと違って後遺症は酷く無いと思いたいな…


ジェノ
「…後、3人!」

二海
「これなら後も楽に救えそうだな…やり方さえ解れば、問題は無いと言えるだろう」


だが、ジェノは笑う事も無く、ブレイズの氷を溶かして優しく抱き上げるだけだった。
その表情は重く、不安が見える。
一体どうしたのだろうか? 間違いなく順調なのに、ジェノは逆に緊張感を高めているとは…

結局、ジェノはそれ以上何も語らず、その日は国境越えて町に向かった。
そこの宿で私たちは一泊する事になり、とりあえず休む。
ブレイズはまだ意識を戻さず、寝たままの状態だったが…



………………………



二海
「…何故ブレイズは目覚めない?」

ジェノ
「制御チップは脳を直接支配してる、いわばコントローラだ」
「それが無くなれば、当然体や意識のコントロールも異常をきたす可能性はある」


何だと…? あのチップはそこまでの支配力があったのか?
だったら、ただ取り除くだけでは完全に救う事は出来ないってのか?


ジェノ
「気にするなよ? 俺は感謝してるんだ…」
「どんな形であれ、妹は生きて救えるのが解った」
「希望が見えたんだ…また、姉妹で仲良く暮らせるって」


ジェノの言葉に偽りは無い様だった。
だが、私は完全に納得出来ない。
ブレイズが目覚めるかどうかも解らない状態で、それは救えてると言って良いのか?
多分、アイツなら納得しないだろうな…


二海
(最終的には、頼る事になるのかもしれない…)


私には、所詮奇跡を起こす事は出来ない。
だけど、それを起こす力がこの世界には存在する。
あくまで最終手段ではあるが、可能な限り私は自分の力でこの姉妹を救ってやりたいと思った…



………………………



三海
「そうか…元気なら、それで良い」

白那
「うん…きっと、その内顔を見せると思うよ」


私は白那さんから手紙を受け取り、姉の無事を確認する。
今はメキシコで、南米に向かっているらしい。
日本の裏側で姉は何かしているみたいだけど、手紙からその内容は解らなかった。
ただ、私は信じている。
あの姉なら、きっと何があっても大丈夫だと…


三海
「…で、当面はアレの問題だ」

白那
「…うん、ジガルデだっけ? いつの間に住み着いてたの?」

三海
「ついさっき…突然姿を見せたんだ」


私たちが見るのは冷蔵庫の足元。
チラリとだけ見えるその姿は、前に見たジガルデセルの物。
まるで某Gの様に隠れて潜むソイツは別の意味で恐怖を覚えそうになる。
とはいえ、こっちに危害を加えるわけでもなく、ただソイツは常に何かを見ていた。
気が付けば場所を変える事もあり、移動方法は全く予想が付かない。
消えたら消えたで、反応が0になるからな…感知しろと言うのが無茶だ。
目に見えてる間なら微弱な何かは感じ取れるが、それはおおよそ意志と呼べるか怪しい。
アグノムの藍お姉ちゃんですら、それが意志かどうかも判断出来ないって言ってたし。


白那
「…あくまで予測だけど、彼女は聖君の為にここに来たんじゃないのかな?」

三海
「それは解るが、何故今になって?」
「話によればもっと早くからこの世界に来ていたのに、何故今になって姿を表したのだ?」


白那さんは言葉に詰まる。
予想はあるのだ…その唐突な出現の意味に。
秩序ポケモンであるジガルデ。
その意味は、世界の秩序を保つ者。
それが出現するという事は、すなわち世界の秩序が乱れる時。
この現実の世界に、何があるというのだ?
それとも、まさか姉が何か関わっていたりするのだろうか?
だとしたら、私は何があっても姉を助けなければならない。
聖の事は1番大事だが、姉も同じ位大事だ。
あのジガルデが敵対するのであれば、私は何があっても護ってみせる!


白那
「…消えた、か」

三海
「…厄介な能力だ、いつ現れるかも予測出来ん」
「微粒子レベルまで体を分解しているからと予想するが、それが形を成せばどうなるのか…?」

白那
「聖君の話からすると、神も同然の能力と予想出来るそうだよ?」
「自由に体を分解、再構築し、あらゆる攻撃を無効化」
「移動も世界の裏側だろうが恐らく一瞬、そして常に全世界に監視の眼を光らせている…」

三海
「Gより厄介だな…こうやって話している私たちの事すら、常に監視されているとは」


全くプライベートも何も無いではないか。
つまり奴は聖のイヤン!な姿も見放題!
何と羨ま…ゲフンッ! 不埒な奴か!!


白那
「とにかく、聖君に判断は全て委ねている…これからどうするのかは、聖君次第だね」

三海
「手遅れにならなければ良いが…」


アレが動いてからでは多分遅い。
下手をすれば、全てがリセットされてもおかしくない程の力を持つポケモンかもしれないのだ。
ここまで築いて来た聖との絆を、私は絶対に捨てたくは無い…


白那
「そろそろ戻るよ、夏翔麗愛たちが下校するから」

三海
「ああ、いつもありがとう♪」


私はにこやかに笑い、白那さんは手を振って消える。
パルキアとて、神にも等しいポケモンのはずなんだがな…
あのジガルデに対しては、パルキアの力すら無力だったと聞く。
戦って勝てるとは到底思えんが…どこかに弱点はあるはず。
仮にもポケモンではあるのだ、ドラゴン、地面タイプの…


三海
(氷には確実に弱いはず、飛んでるフェアリーなら、技はほぼ無効化可能だろう)


あくまでポケモンバトルとしての想定だが。
いかなる攻撃も通用しないというのが厄介すぎる。
出来れば、関わりたくない相手だな…



………………………



三海
「…ふむ、こんな所にも店があるのか」


私は普段歩かない所で屋台を見付けた。
そこではホットドッグを売っており、やや高かったがひとつ購入する。
熱々の出来立てであるそれは、間違いなく私の鼻腔を揺さぶる物だった。


三海
「うおお…! 予想外に美味い!」
「値段は張る物の、これはそれに見合うボリュームと味だ!」
「パンも良い感じの焼き加減で、食感は損なっていない! 野菜とソーセージ、挟まれたベーコンはケチャップ&マスタードの王道ディップに相応しい!」
「大食いの私としては量が足りんが、これで380円ならば一般人は文句無いだろう!」
「うむ、気に入った! ここは記憶しておかねば…!」


私はペロリと大きめのホットドッグを平らげ、次の店を探す。
この辺りは街から少し外れた街道だからな…思ったより店は無い。
いわゆる団地等がたくさんある場所で、駅で言えば2〜3駅分は離れている。
コンビニ等はちらほらあるものの、ああいう屋台は滅多に見付からないな。
とはいえ穴場は存在している…探索する価値はあったのだ!
私は今ひとりで食べ歩きしているが、実に楽しい♪
本当は聖や姉と歩きたいが、それも仕方無い。
とにかく、今は充実しているのだ!



………………………



三海
「ふむ…この辺りは学生が多く見られるな」


しばらく歩くと、大量の学生たちが帰宅ラッシュの様だった。
どうやら近くに学校があるらしく、高校生の様だ。
聖のとは違う制服で、デザインは差があるな。
聖のは割とどこでも見るタイプのブレザーだが、こっちのはどことなくお洒落な感じがする。
そんなお洒落な制服の群の中で、一際目立つ少年がひとり見付かった。
その少年は大きなショルダーバッグを肩に担ぎ、全身を泥だらけにして歩いている。
周りからは奇異の眼差しを向けられており、一部では笑い声があがっていた。
私は少し不愉快になり、その少年の元に駆け寄る。
すると少年は驚き、足を止めた。
周りの視線は一気に集まり、今度は感嘆の声が聞こえる。
まぁ、私の美貌を持ってすれば注目を集めるのは容易いからな♪


少年
「こ、この人も…胸が大きい……!」


そうか、やはりそこか!
奇しくも私はまだ夏服の半袖ミニスカートスタイル!
特に薄い生地の桃色Tシャツは私の胸をパッツンパッツンに強調しているからな。
…そろそろ買い換えるか、サイズが小さくなって来てるし。
ゲフンッ! と、とにかく今はそれは良い。
とりあえず、少年の事を聞かねば!


三海
「少年、何故そんな泥だらけなのだ? まさかとは思うが、イジメでも受けているのか?」

少年
「えっ? そんな事無いですけど…これは、その……」


少年はとりあえず嘘は吐いていない様だった。
だが、何か躊躇っている様な感じで、言葉に出来ない様だ。
むぅ…? つまり他に理由があるという事だが、それが原因なのか…?


三海
「理由は解らんが、やましい事が無いなら堂々としろ!」
「周りを見てみろ…奇異の目で見られているではないか!」


私はあえて解りやすい様に肩を竦めて周りを見渡す。
すると、奇異の視線を向けていた学生共は途端に眼を反らした。
私はふん…と鼻を鳴らし、眼を細める。
だが少年は特に表情も変えず、何かを察している様だった。


少年
「良いんです、どれだけおかしいと思われても、僕は自分が信じている事には嘘は吐きませんから」

三海
「信じている、事…?」

少年
「この世界には、いるんです…! 未知の宇宙人が!!」


私はポカンとしてしまう。
だが、少年は確信した目で握り拳を固めて力説した。


少年
「まだ噂程度ですが、人間に紛れて潜んでいる宇宙人がいると、一部のメディアでは考察されてます!」
「その宇宙人は、未知の技術で人間を装っており、人知れず紛れているとも…!」


私は少し絶句する。
噂とはいえ、私自身がそうなのだ…宇宙人では無いが。
仮にもポケモンである私は、確かに人知れず人間に紛れている。
まさか、この少年はそれを探しているのだろうか?


少年
「確証や根拠は何もありません、ですが未知の生物は絶対にいると僕は思ってます!」
「今日も、それを探して学校の裏山を探索して汚れていたんです…」


成る程、それが原因だったのか…
しかし、山を探索とは…鐃背さん辺りが何かやったんじゃないだろうか?
これは色んな意味で少々面倒事だぞ?


三海
「まぁ、理由は解った…だが、それを追い詰めてお前はどうするつもりなんだ?」

少年
「どうする…ですか、僕は…とりあえず話をしてみたいです」
「未知の生物と言っても、それが地球を征服しようとか考えてるとは限らない」
「むしろ友好的な宇宙人もいるかもしれない…」


ふむ、この少年は良くも悪くも純真な様だ。
少なくとも悪意の欠片も無い、とても透き通った心の少年。
良くも悪くも問題は生まれたが、少なくともこの少年はまだそれ程の問題にはならない気もした。


三海
「…まぁ、良い」
「だが、その事はあまり他人に話すべきではないだろう」

少年
「どうして、ですか?」

三海
「もし、少年が原因でその宇宙人が虐げられたら、責任を取れるのか?」


少年は眼を見開いて、言葉を失う。
解っているのだ…未知の生物という物が、どれだけ人類が欲しているかを。
良くも悪くも、人間は卑しい。
見た事も無い物には、後先考えずに情報を得ようとする。
その先に、対象の虐待等は何も考えずに…


三海
「知らない物を知ろうとする欲求は良い、だが独り善がりの独善は時に誰かを殺す」
「少年に、その覚悟があるか? 誰かを殺してでも、救いたいという覚悟が…!」


私はかなり強い気を込めて少年にそう言った。
紛れもなく、私が思い浮かべたのは聖の事だ。
聖ならば、迷わず救うと言うだろう。
例え誰かが結果的に犠牲になったとしても、聖は救う方を選ぶ。
エゴの塊ではあるが、聖は紛れもなく私たちの救世主だ。
少なくとも、私は恩しかない…聖が選んでくれたからこそ、私はここにいられるのだから。


少年
「…すみません、軽率だったのかもしれませんね」
「確かに、僕にはその覚悟はありません…」
「でも、僕は知りたい…! 本当に、宇宙人はいるのかって!!」


少年は強い眼差しでそう言った。
エゴイストだな、この少年も…
しかし、嫌いではない…己の欲求に素直なのは人間の証だ。
きっと、本心は真っ直ぐなのだ、この少年も聖と同様に。


少年
「あ、すみません! もう時間なんで行かないと!!」

三海
「あ、ああ…こちらこそすまなかった、勘違いして呼び止めてしまって」


少年は深々とお辞儀をし、すぐに走り去ってしまった。
あの方角は駅か…不思議な少年だったな。
良くも悪くも、隠された真実に近付こうとしている。
私は少し俯きながら、ふっ…と鼻で笑う。
どこのポケモンが、偉そうに語るんだかな…?
さして人生も経験していない1歳未満の赤ん坊が、覚悟を問うとは…
だが、私は後悔していない…むしろ覚悟は決めている。
家族を守る為ならば、この手を血に染める事も厭わないと…!


三海
(視ているんだろう監視者? 私は抗うぞ…何があっても)


私は聖が好きだ、姉が好きだ、家族が好きだ。
それ等の幸せが守れるなら、私は悪鬼羅刹にすらなってみせる。
これは、私の覚悟だからだ…救えるなら全部救う!
救えない物もあるかもしれないが、それは仕方無いと割り切る。
全ては聖の為に、そして家族の為に…


三海
(ポケモンは、ここにいて良いはずなんだ…きっと)










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第8話 『二海の救済、三海の覚悟』


To be continued…

Yuki ( 2019/06/07(金) 20:13 )