とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第8章 『聖の選択』
第7話
祭花
「いらっしゃいませー! こすぷれ〜ん…チュッ♪」


私は笑顔を振り撒いてポーズを取る。
お客さんはそんな私に興奮して、嬉しそうにしていた。
もう9月とはいえ、まだまだ日中は暑く、店内も冷房は欠かせない。
私は汗をかきながらも、店の外で接客をしていた。

今日も店先では大行列。
ランチタイムという事もあり、食事を兼ねて来る人が激増する時間帯だ。
そんな中、私はバイトの子と一緒に頑張っていた。



………………………



明海
「祭花さん、恵美ちゃん! そろそろ交たーい!」

祭花
「オッケー! それじゃ休憩に入りまーす!」
「恵美ちゃん、行こっ!」

恵美
「はいっ!」


バイトの人間である恵美ちゃんは、元気に返事をして私に付いて来る。
私たちは駆け足で従業員用の入り口に回り、そこから店内に入って休憩室に向かった。
こうやって、私たちは時折休憩を取る。
この間は他のメンバーが代わりに動いており、10分程休憩したらまた交代する事になるのだ。
私は冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し、恵美ちゃんに渡してあげた。


恵美
「ありがとうございます、祭花さん」

祭花
「まだまだ外は暑いよ…ちゃんと水分補給はしとかないとね」


私も自分の分のお茶を飲み、ふぅ…と息を吐く。
お客さんの熱中症対策もしっかり考えないと…今の所は大丈夫だけど、油断し始める頃が1番危険なのよね…
今日は阿須那さんとバイト3人が休みだし、足りないメンバーの分はちゃんとカバーしていかないと!

基本、年中無休のこの店はいつも大繁盛だ。
稼ぎ頭の阿須那さんがいるのも大きいけど、段々と風路さんの料理の評判も知られて来てるし、料理目当てのお客さんも増えつつある。
この前なんて、イベント中にテレビ局が来て大騒ぎになったからね〜
アタシたちの偽装は写真だと正体がバレちゃうから、あの時はかなり焦った…
幸いにも、ビデオで撮る分には問題無かったみたいで、ちゃんと偽装はされていた様だ。
ビデオに撮ってもちゃんと認識齟齬の機能ごと保存されてたらしいのよね…
この辺の仕様は完全に理解出来てないから、ちゃんと覚えておかないと…

でも、よくよく考えたらコンビニとかの防犯カメラとかには常に映されてるし、ここまで何も騒ぎになって無いんだから問題は無かったのよね…
でも、何でカメラの写真だとダメなんだろ?

まぁ、良くも悪くもこの店は有名すぎるから、偽装の事も考慮しないといけない。
カメラって言っても、デジタルカメラやスマホのカメラは偽装出来てるし、あくまでアナログな方法だとダメだって事なのよね…
藍ちゃんたちも対策は考えてるらしいし、私が考えていても仕方ないのかもしれない。


祭花
「っと、そろそろ時間だね! じゃあ行くよ恵美ちゃん?」

恵美
「はい! 残り時間頑張りましょう♪」


恵美ちゃんは元気にガッツポーズを取って笑う。
うんうん、やっぱり笑顔が1番大切だよね!
私もニッコリ笑って、担当場所に戻る。
今度は店内で接客だ!



………………………



客A
「祭花ちゃーん!」

客B
「こっち向いてー!」

祭花
「はーい♪ こすぷれ〜ん…チュッ♪」


私のアピールにお客さんは喜んでくれる。
店員の中でも、特別背が低い私は何かと需要があるみたいだった。
見た目は小学生以下の身長だし、これで19歳ってギャップが堪らなくツボらしい。
私はその辺の事情は良く解らないけど、とにかく役に立てているなら何よりだ。

だけど、私には中々辛い作業でもある。
身長が低いという事は、それだけ周りから目立たないという事でもあるし、アピールするにも距離を考えないと全く視界に映らない。
空を飛べれば何の問題も無いのだけど、流石にそれは禁止だから絶対に出来ないし。

元々、私は足で歩く事自体が苦手で、慣れるまでは全く足が付いて行かなかった。
アブリボンはそもそも飛行タイプで、空を飛んで移動するのが基本の種族。
わざわざ弱い足腰を駆使して、歩いたり走ったりするのは普通有り得ないのだ。
でも、この世界ではそれが普通…私もそれを理解しているから、これまでずっと足を鍛えて頑張って来た。
今じゃ、フルタイムで動き続けてもちゃんと立っていられる様になったし。
ポケモン娘だって、鍛えれば苦手も克服出来るんだと私は確信した。


客A
「むふー! やっぱ祭花ちゃんのちっちゃさは天性だね〜♪」

客B
「最近は日本も高身長化が進んでるし、祭花ちゃんみたいなタイプはホント貴重だよね〜」


成る程、そんなにアタシみたいなのは貴重なんだ…
元々アブリボンは進化前共々、小さい事が多い。
大きめのアブリボンでも、良いとこ150p後半もあれば巨漢と言えるだろう。
それ位小さい種族なのだ、私たちは。
とはいえ、そんな物も個人の個性。
ひょっとしたら世界には2mもあるアブリボンもいるのかもしれない…
要は人それぞれなのだ…華澄ちゃんとかだって、ゲッコウガとしては多分小さすぎる体格だし。
逆に守連ちゃんなんかは、ピカチュウとしては大きめに感じる。
ある程度種族の差はあるだろうけど、個体差は何だで沢山あるのだ。
そもそも、人化したポケモンは成長も人間っぽくなるから、それまでの食事事情で成長は変わってくる。
私は、食事する事すら難しいあの世界で、花の蜜だけを便りに生き長らえていたからね…
そもそも、栄養があまり取れなかったのかもしれない。
私は元々戦闘は苦手で、勘の良さと空間把握力、そして五感の鋭さに目を付けられ、浮狼様にスカウトされたんだから…

思えば、隊長格で志願兵じゃないのって私だけだったんだよね…
杏や唖々帝、李なんかは自分から志願して仲間になったって聞いたけど、私はたまたま浮狼様の目に留まってスカウトされたから仲間になっただけ。
もし、何かの順番が違っていたら、私は茫栗さんの所にいたのかもしれない。
そうなっていたら、私はきっと…ここにはいなかったんだろう。


祭花
(でも、今はここにいる…それは何も間違ってない)


私は、確かに杏たちとは違って浮狼様に恩があったから仲間になったわけじゃない。
最初は利害の一致で協力してただけだった。
浮狼様が、茫栗さんの力に対抗出来ると思えたから、一緒に居続けていたんだ。
でも、そんなある日…私は聖様を見た。
初めて見る人間の男。
それは、ただの一目惚れだった。


祭花
(最初はおかしいと思った)


ポケモンが人間に恋をする? まるでおとぎ話だ。
でも、それは現実であり、浮狼様は聖様に恋をしていた。
私は少し嫉妬した、でも仕方ないとも思った。
ただの一目惚れが勝てる程、ふたりの絆は浅くなかったのだから。


祭花
(結果、戦争は終わり、世界には平和が訪れた)


浮狼様は王として世界を変え、国を変え、人々の心を変えた。
誰もが英雄王と崇め、浮狼様は神の如く扱われる。
でもそんな世界を浮狼様は望んでいなかった。
だからこそ、人々が手を取り合える世界を作ったら、浮狼様は聖様の元に旅立ったんだ…

そして、私たちも何故かこの世界にいた。
意味は解らなかったけど、私たちは選ばれたのだ。
この時、杏姉妹や唖々帝、李は?を浮かべただけ。
この時は、間違いなく私が先に聖様を好きになってたんだ…


祭花
(でも、結局何も変わらなかった)


私は臆病だから、想いを伝える事なんて出来ない。
ましてや、全員を等しく愛すると宣言する聖様に対して、ひとり愛を囁いた所で、それは無意味。
そんなこんなで今に至り、気が付けば杏も唖々帝も李も、聖様を好きになっていた…
私の気持ちは、もう特別でも何でもない…



………………………



祭花
「お疲れ様でしたー!」

風路
「祭花ちゃんは、明日休みだったわね? ゆっくり休んでね♪」

祭花
「はい、そうさせてもらいます♪」


私は笑顔でそう言って更衣室に向かう。
コスプレだけでもやっぱり疲れる…最近は朝部隊と夜部隊も兼ねる事があるし、体力ももっと付けないと。
私はこれでも努力家だ、出来ない事は出来る様に考えて行動する。
今は人間として、ちゃんと違和感無い様に振る舞えないと…


祭花
(とはいえ、疲れはしっかり取らないとね〜)


休みは週1で貰ってるけど、疲れを残してたら意味が無い。
明日は、買い物でもしてゆっくり羽を伸ばそう…



………………………



祭花
「…もう、日が沈むのも早くなったなぁ〜」


8月に比べると暗くなるのが早い。
もう17時過ぎとはいえ、夕日は沈みかけていた。
私は五感を研ぎ澄まして辺りを索敵する。
フェアリータイプとしての能力もあり、私は微弱な脳波なら感じ取る事が出来るのだ。
とはいえ、エスパータイプみたいに読み取ったりは出来ない。
あくまで波長を少し感じられるだけ…言葉で言うなら、ラジオのノイズみたいな周波を感じ取ってるだけ。


祭花
「…周囲に人間の気配は多数か、時間的にも帰宅ラッシュだしね〜飛ぶのは止めよ…」


今はマンションの『旅立ち荘』から城に出入りしているので、帰りはそっちになっている。
相部屋の李は夜部隊やるって言ってたから、しばらく帰っては来ないわね…
だったら、先に入浴してご飯食べよ〜っと。



………………………




「おっ、お帰り祭花…李は一緒じゃないのか?」

祭花
「うん、ただいま♪ 李は今日夜部隊だから、21時過ぎまでは帰って来ないと思うわよ?」


杏はそう…とだけ言い、箒を片手に掃除をする。
何だで杏も結構目立つわよね…見た目は長身巨乳美女だし、美人管理人って話題になってるものね…
最近は自炊して料理も覚えてるみたいだし、私も自炊位出来る様にならないとなぁ〜


祭花
「ねぇ杏、料理ってどうやって覚えたの?」


「ん? 適当にレシピ本買って見ながらやったけど…ゴチャゴチャしすぎててあんまり参考にならなかったな」
「結局、自分なりに味見を繰り返して仕込んだけど、まぁ悪くは無かったよ」


杏らしいわね…頭の回転がなまじ早いから、下手に本見ても無駄が多いって解っちゃうのね…
とはいえ、素人に何かオススメの料理とかってあるのかしら?


祭花
「何か、初心者でも作れそうな料理とかってある?」


「それをアタシに聞いてどうする…それなら、愛呂恵や櫻桃さんに聞いた方が絶対早いぞ?」


た、確かに…どうせ教えてもらうなら専門家に聞く方が良いわよね。
とはいえ、いきなり押し掛けるのも問題だし、それはまた今度にしよっかな?
明日は折角の休みだし、色々お店も見て回りたい。
とりあえず今日は体を休めよう…


祭花
「とりあえず、部屋に戻る〜」


「ああ、分かったよ」


私は少しダレながら階段に向かう。
3階まで上がるのは少し億劫だ…人の目が無ければ飛んで行くんだけど。
しかも廊下の奥の方の部屋だから、距離が長いのよね…
私はため息を吐きながらも部屋に戻った、他のメンバーは先に戻ってるのだろう、途中で出会う事は無かった。



………………………



祭花
「ふんふんふーん♪」


私は鼻歌を歌いながらお風呂で体を洗う。
こっちの世界に来てからはこれが楽しみで仕方ない、綺麗な水を沢山使って全身を洗っても怒られないなんて、素晴らしい世界だ。
私はお気に入りの石鹸でくまなく体を洗い、触角と羽は優しく洗う。
全身を洗い終わったら、いよいよ入浴だ。


祭花
「あ〜癒される〜…♪」


丁度良い温度で私は満足する。
のぼせる手前までたっぷり浸かるのが私の入浴方だ。
ちゃんと入浴剤も入れており、私はほっこりしながら悦に入った。
今は個人の部屋で好きなだけ入浴出来るから、嬉しくて仕方ない。
李は私が長風呂でも文句は言わないし、やっぱりこの時間は至福の時だね!



………………………



祭花
「…うーん、家で出来る趣味も探さないといけないわね」


私は城で食事を取り、今はマンションの部屋に戻っている。
事実上、城の部屋は寝室としてしか使ってなく、今はこうやってマンションのリビングでくつろいでいた。
生活感が無いと怪しまれるって言われてたからそうしてたんだけど、何だで悪くない。
ここならテレビもいつでも見れるし、冷蔵庫もすぐそこにある。
エアコンも完備だし、後は自分でカスタマイズ出来れば完璧だよね〜♪
…まぁ、掃除を自分でやらないといけないのは厄介だけどね!


祭花
「そういえば、あまり気にしてなかったけど、お金どれだけ貯まってるんだろ?」


私は自分で口座を管理してなかったから不明なんだけど、これまでの給料はちゃんと振り込まれているはずなのよね…?
基本的に働いてる人は皆自分でお金は管理してるって聞いてたけど、私のってどうなってるんだろ?
私は棚を調べ、貯金通帳を発見する。
しかし、そこにはほとんど何も書かれていない。
使った事無いから当然よね…(-_-;)

基本的に今までは城で住んでたから、お金の管理は必要無かったのよね…
必要な物は聖様が全部揃えてくれたし、自分でお金を使う時は必要分だけ貰う形だったから…
今はこうやって通帳とカードを改めて貰ったんだけど、金額は想像も付かなかった。
明日は平日だし、銀行に行って見ようかな?
折角だから、何か買い物でもしてみたいし♪

とりあえず、明日の方針は決まった。
今日はこのままグータラしよ〜っと♪



………………………




「ただいま〜」

祭花
「あ、お帰り〜♪ ご飯は食べて来たの?」


「ああ、風路さんに食べさせてもらったよ」


李は予想通り21時過ぎに帰って来る。
私はソファーにうつ伏せで寝転がり、テレビのチャンネル片手に気楽に過ごしていた。
李はかなり疲れている様で、鞄をやや荒く床に置き、大きく息を吐いている。
私はとりあえず軽く宙を飛んで冷蔵庫に向かい、李が好きな冷たい牛乳を出してあげた。
それを李に渡すと、李は礼を言って一気に飲み干す。
まだ800mlはあったはずだけど、数秒かからずに飲んじゃったわね…



「あ〜! マジで疲れた…」

祭花
「どうしたの? いつも以上に何か疲れてそうだけど…」


「今日は、何かディナータイムにどっと客が来たんだよ…」
「夜7時に満席だぜ!? 一緒に担当してた水恋と一緒にてんてこまいさ!」
「よりによって阿須那さんがいない内にあんな状況になるとか、予想出来ねぇよ…」


うわ…何て言うか、御愁傷様…
タイミングの悪さもあるとはいえ、李は運が悪かったんだね…
私はとりあえず、お風呂の準備をしてあげる事にした。
李はかなり汗をかいており、気温の低くなっているこの時間でも疲労が目に見えていたからだ。
氷タイプである李は、暑さには弱いもんね〜


祭花
「とりあえず、お湯張るまで休んでなよ! 着替えは自分で用意してね?」


「ああ、悪い…とりあえず着替え取って来るわ」


李は寝室に入って着替えを取りに行く。
今はこのマンションに必要な物は全部移動してあるから、着替えはこちらの部屋にある。
李とかはざっくばらんだから、寝る時もマンションの寝室なんだよね…
私は流石に寝る時は城の寝室なんだけど…他の皆はどうなんだろ?
李ってとにかく考えるのが苦手だから、面倒があると色々省略しがちなんだよね…
まぁ、李は比較的偽装無しでも人間っぽいから、あんまり問題も無いのかもしれないけど。




………………………




「はぁ…とりあえず落ち着いた」

祭花
「本当に大丈夫? 何だったらシフト考え直してもらったら?」


「いや、これはアタシの鍛練の足りなさが原因だし、他の皆には迷惑はかけられねぇ」
「ようやく、接客とか料理とか解る様になってきたし、ここで踏ん張らねぇと…!」

祭花
「えっ? 料理とかって…もしかして料理、出来る様になってるの?」


私はかなり目を丸くしてそう聞いた。
すると李は、かなりダルそうにしながらも、うーんと腕を組んで天井を見る。
今は風呂上がりで李の姿は下着姿…女同士の部屋とはいえ、無防備過ぎよね李って…
ちなみに私は黄色い花柄のパジャマよ♪



「いや、実際に出来るわけじゃねぇんだけど、何となく風路さんのを見て理解は出来る様になったんだよな…」
「多分、真似るだけなら簡単な料理は出来る…と思う」


それは、かなりスゴい事だと思うよ…?
李って感覚的に物事を捉えるから、教わるよりも慣れた方が良いのかもしれないわね…
実際、吸収力は目を見張るし、仕事もしっかり出来てる。
覚える事は直感で何とかしてるし、基本的に風路さんや阿須那さんの仕事を見て覚えようとしてたもんね〜


祭花
「むぅ…これは負けられないかも」


「何が?…じゃなくて、何に? か…」

祭花
「…私だって、聖様に何かしてあげたいって思うのに」


正直な気持ちだ。
李や唖々帝は、混沌で聖様を守ってみせた。
杏たちだって、何処かで役には立ってる。
その点、私は何なんだろう?
仕事はしてるけど、別に聖様の役には立ってない。
楽しくは生きてるけど、どこかぽっかり穴が開いてる…



「まぁ、アタシがどうこう言える事じゃ無いと思うけど…」
「気楽にしてた方が良いんじゃねぇか?」

祭花
「気楽にって…それじゃ何も変わらないじゃな〜い」


私は困った顔でそう言う。
李は特に表情も変えず、真顔で更にこう言った。



「聖は、アタシたちが幸せならそれが1番良いって思ってんだからさ」
「だから、楽しければそれで良いんじゃね? 聖はそれが嬉しいんだから…」


私は少し、言葉に詰まる。
聖様が、嬉しいなら…か。



「後、聖はあまり様付けされるの嫌いみたいだから、止めた方が良いぞ?」
「世間的にも普通じゃないって感じだし、特に理由無いなら尚更だ」

祭花
「う…そうなの? でも、まぁ…それ位ならすぐに直すけど」


「ある意味、お前の悪い所ってそこじゃね? 妄想だけして、相手の領域には踏み込まない所…」


まさか李にそんな指摘されるなんて…
って言うか、踏み込めないから妄想するんでしょうが!
もっとも、私の妄想なんて騰湖ちゃんや女胤ちゃん程じゃ無いんだからっ。
比較対照が悪いですか、そうですか…


祭花
「踏み込むったって、大体どうするのよ〜? 何やったって一定以上のラインには進めないのに…」


「別にそこまでで良いじゃん…それともお前は聖を独り占めしたいタイプなのか?」

祭花
「そう、とは言わないけど…でも、そうあってほしいとは思わないの?」


「まぁ、アタシは恋とかそういうのは、疎いから全然解かんねぇな」
「他の連中はどうか解かんねぇけど、そういうのは聖の家族じゃ無いんじゃね?」


私は、チクリと胸が痛くなる。
やっぱり、私はどこか置いていかれてる。
李も唖々帝も、杏も土筆や未生羅だって…皆成長してるのに。
私は…ひとり置いていかれてる。
何だろう…何か、悔しい。
私はソファーに座りながら、俯いて拳を握り震えていた。
どこで差が付いたんだろう? どうしてこうなったんだろう?
聖様…じゃなくて、聖君が好きなのは私も同じはずなのに。
選ばれてこの世界に来たのは、私も同じなのに。
聖君の事を好きになったのは、私の方が先なのに…!


祭花
「…ズルいよね、何か」
「私も、ひとり混沌にでも巻き込まれてたら、もっと強くなれたのかな?」


「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない…」
「アタシは確かにひとりで巻き込まれた事もあったけど、あの世界はアタシの為に作られた様な世界だったし」
「祭花が巻き込まれてたら、それはそれで違う世界になったんだと思う」


李は真顔でそう言った。
そうよね…私じゃ直接戦闘はあまり役に立たないし、根本的に役目が違うから。
でも、差が付いたのは絶対そこからだ。
李は無頓着だから何も思わないだけ…私は、いつだって聖君と手を繋いだり、デートしたりとか妄想しているのに。


祭花
「分かった、明日は聖君とデートする!!」


「えっ!? 本気か…?」

祭花
「本気よ! 私だって聖君の事が大好きなんだって、聖君に教えてあげるんだから!!」


私は拳を振り上げてそう宣言する。
李は呆れていたが、もう私は止まらない。

踏み込んでやるわよ…!
私が地味で根暗で臆病者の虫女だって言うなら!!

誰もそこまで言ってない



「まぁ、頑張れよ…アタシは応援してるぜ?」

祭花
「目にもの見せてやるんだからね!? 私の魅力にひれ伏すが良いわ!!」


私はもはや異常なテンションとなり、デートの事しか頭に無かった。
そして、その日はすぐに眠る事にし、私は明日の予定を夢の中でシミュレーションする。



………………………




「すみません祭花さん、電車がモロ込みで!」

祭花
「定番のネタね!? 待ち合わせ場所は近所の公園なんだから、ここまで徒歩でも来れるでしょ!? 後、電車が込んでも乗れれば遅れないから!!」


開幕からそんなやり取りをする羽目になる。
私は盛大にツッコミながらも、何だか不穏な空気を感じ取ってしまった。
と、とりあえず今回は駅前でウインドウショッピング!
ふたりで仲良く手を繋いでラブラブデートよ!!


祭花
「さぁ、お姉さんの手を取って…エスコートしてあげる♪」


「は、はい…それじゃ、お言葉に甘えて…」

少女
「ママー、あの子可愛い服着てる〜私より小さいのに〜」

母親
「あら、本当ね…でも指差しちゃダメよ? 失礼だから…」

少女
「はーい! バイバーイ♪」


私たちは笑顔で手を振って応える。
私は完全に顔が引きつっていたと思うけど。
そして、親子が見えなくなった所で私はこう叫ぶ。


祭花
「これでも19歳なんだから! 今年で20歳なるんだからね!?」


「ま、祭花さん落ち着いて…」


私はゼーハー言いながらもすぐに気を取り直す。
ふっ…この程度の仕打ちで狼狽えるとはまだまだね私も!
どこぞの○ーヴィン並みの身長しかない私は、お子様に見られても仕方がないという事よ!
つまり、雰囲気で大人感を醸し出すしかない!
私は改めて聖君の手を握り、そのまま歩き始めた。

その途中、何度も子供扱いされたけど、私はすぐに慣れてしまった…



………………………



祭花
「やっぱり、アクセサリーかしらね〜?」


「コレなんか似合うんじゃないですか?」

祭花
「うん、モアイのイヤリングとかよく見付けたね!? 私そっち系で好感度上がるイロモノじゃないよ!?」


聖君は笑顔でネタなアクセサリーを薦めて来る。
私はすかさずそれにツッコミ、更に嫌な予感を加速させる事になった。
とりあえず私は無難にシルバーネックレスを購入し、それを試着して聖君に見せる。
聖君はフツーに似合ってますよ、と至極無難な台詞を言い、複雑ながらも私はそのまま店を後にした。



………………………



祭花
「じゃあ、少し早いけど食事にでもする?」


「そうですね、何か食べたい物はありますか?」

祭花
「もちろん…あ・な・た♪」


「すみません、俺の血とか吸っても多分美味しくないですよ?」

祭花
「アブだけどね!! 私のモチーフはむしろトラツリアブだから、吸うのは花の蜜よ!?」


なお、技として『吸血』が使えるのは秘密だ。
まぁ、どうせ体力吸収するなら『ドレインキッス』の方が有用なんだけどね!
とりあえず私たちは無難にファミリーレストランへと入った。



………………………



祭花
「私、ハンバーグセットにしよーっと!」


「じゃあ、俺はミートスパゲッティとサラダバーで」


私たちは注文を済ませ、とりあえず料理の到着を待つ。
その間は流石に暇なので、私たちは雑談を交わす事にした。



「そういえば、仕事は大丈夫ですか?」

祭花
「もちろん! これでも結構人気あるんだから♪」


「貴重なロリ巨乳ですからね…やはり需要は高いのか」


うん、解ってはいたんだけど、聖君的にはそこからなんだよね!
やっぱり胸なんだね! まずは!!
私的には、ロリっぽさの方が評価されてる気がしないでもないけど…


祭花
「聖君って、そんなに巨乳が好きなの?」


「おっぱいに国境はありませんよ…俺は巨乳が好きなんじゃなくて、おっぱいが好きなんです」
「…まぁ、どちらかと言われると大きい方が良いのは事実ですが」


聖君は遠い目をして額に手を当て小さく答える。
格好良いのはポーズだけで、言動はどっちかって言うと変態寄りだからね!?
っていうか、他のお客さんが割と白い目で見てるわね…流石にこの手の話は自粛しよう。
聖君って、ネタに関しては周りを気にしない時があるのだと痛感した。


祭花
「でも、私みたいな小さい体でもOKって人はそんなに多いのかな?」


「まぁ、マニアックって言ったらそうだと思いますけど、祭花さん程可愛いなら大抵の男は背丈なんて気にしないんじゃないですかね?」

祭花
「えっ、そ、そんなに可愛い…?」


「やっぱり虫タイプですし、体の小ささは補食のしやすさにも繋がるんでしょう」
「素早さもあるだけに、並みの男ならコロリと転がせると思いますよ!」


うん! 私、人間を補食とかしないからね!?
聖君、私の事何か勘違いしまくってる気がするよ!!
これでも普通の人間の女の子と同じだからね!?
と、心の中で激しくツッコムも、私は笑顔を絶やさなかった。
この程度で怒ってはダメよ…お姉さんなんだから、おおらかな目で見ないと!
そんな感じで私は会話を何とかこなし、やっと来た食事にホッとする。
正直、味は全く記憶に残らなかった……



………………………




「それじゃあ、今日はここまでですね」

祭花
「うん、でも…もう少しだけ」


私は別れの前に聖君の首に両腕を回し、抱き付く。
身長差があるのでぶら下がる形だけど、聖君は少し驚くだけで割と冷静だった。
私はかなりドキドキしながらも、少しづつ顔を近付ける。
後少しで、唇と唇が……



「祭花さん、まだお腹空いてたんですか?」

祭花
「ドレインキッスじゃないからね!? ここで乙女のハートを砕かないで!!」


そもそもドレインキッスは接触判定じゃないから!
あれ遠距離技だから触れる必要無いし!!
っていうか、もうムードもへったくれも無い!
私は覚悟を決めて一気に唇を奪う。
これで聖君のハートも一気に……


祭花
「てぼぅわぁっ!?」


私はベッドから転がり落ち、妙な叫びをあげてしまった。
そして、頭をボーッとさせながら私は周りを見る。
ここは城の寝室で、私の部屋だ。
李はマンションで寝てるのね…時間は、朝6時。
何だ……夢か。


祭花
「道理でネタまみれだと思ったわよ!! 夢で恋愛シミュレーションした結果がコレだよ!?」










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第7話 『祭花の恋愛シミュレーション』


To be continued…

Yuki ( 2019/06/04(火) 18:24 )