とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない













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第8章 『聖の選択』
第4話
夏翔麗愛
「ってな訳で、楽しいキャンプだったのですよ〜♪」

同級生
「へぇ〜それも良いなー、ちなみに俺ん家は海行ったんだぜ?」

夏翔麗愛
「定番なのですね〜でも普通に楽しそうなのです♪」


私たちは学校の教室でそんな話をしていた。
私の隣の席のクラスメートは、ゴウダ タケシ…ではなく、『仁日 武司(にび たけし)』と言う名前の短パン小僧なのです!
それなりに活発なタイプで、野球を愛する夢見がちな少年ですね。
ちなみに私の後ろには棗お姉ちゃんが座ってるのですよ♪


武司
「でも山か〜夜中とか、怖くなかったか?」

夏翔麗愛
「むしろ何も無さすぎて、やや退屈だったのです!」
「レアな虫に出会う事も出来ず、ただただコモン虫ばっかり群れていたのです!」

武司
「はは、夏翔麗愛らしいな…お前ってホント好奇心旺盛だよな〜」

夏翔麗愛
「それ位の度胸が無いとクソゲーハンターにはなれないのです!」


とはいえ、別にそれだけをプレイしてるわけじゃないけど…
どっちかと言うとバカゲーの方がやってて楽しいですし♪


武司
「ゲームとかは俺はあんまり解かんねぇけど、どうせやるなら普通に面白い奴が良いけどな〜」

夏翔麗愛
「普通に良作やっても、面白いだけですよ…」
「やっぱり笑い飛ばせる位のインパクトがあるゲームが最高なのです!」
「うーん、とはいえ古いゲームは入手難なのが大変なのですよ…」


「…チャイムが鳴ったわよ?」

武司
「おっと! まぁ、今日は始業式だけだし、気楽で良いよな〜♪」

夏翔麗愛
「そうですね、午後は全部遊びに回せるので助かるのです!」


そう言っていると、担任の先生が入って来る。
髭が濃い中年の先生で、性格は温和なおっとり系ですね。
ああ見えて運動神経が高いのは中々驚きなのですよ。

とまぁ、そんなこんなで今日の学校は終わり…
私たちはそのまま家に帰宅する事になった。
ちなみに私たちは毎日お母さんが迎えに来るので、皆とは正門までなのです。



………………………



白那
「お疲れ様、今日はどうだった?」

夏翔麗愛
「普通なのです! でも、明日からは初めての2学期なの♪」


「…まぁ、教わる事なんて体育と道徳位しか無いけどね」

夏翔麗愛
「個人的には図工も為になるのですよ! ペーパークラフトとか、やった事無かったし♪」

白那
「ふふ、楽しそうで何より…さぁ、それじゃあ帰ろうか」


私はお母さんと手を繋いで歩く。
浮遊した方が楽だけど、私はこのゆっくりしたスピードも好きだ。
この世界でなら、私はお母さんと幸せに生きられる。
後は、お父さんが早く結婚してくれれば最高なのですが…
私的には早く妹が欲しいのです! 弟でも可!


白那
「あはは〜それは聖君次第だからね〜」


「…まぁ、期待は出来ないわね、当分は」


ふたりはテレパシーで私の考えを読み取ってそう返す。
何気にこういう時、考えがモロバレルのは少し問題にも思うのですよ…


夏翔麗愛
「…むぅ、ボスはこういう時に度胸が無いですからね〜」
「お母さんがさっさと既成事実作ってくれれば万事オッケーなのに…」

白那
「あ、はは…ゴ、ゴメンね、お母さん臆病で」


「…それで良いのよ! 高校生に孕まされたとか話題になったら、もう外歩けなくなるわよ!?」


棗お姉ちゃんも無駄に良識人なのですよ…
これが藍お姉ちゃんなら色々考えてくれるのに〜
私はとりあえず頬を膨らませて、そっぽを向く。
子供だと言われても気にしない。
私は戸籍上は10歳なのだから…



………………………



夏翔麗愛
「というわけで、○ィープダンジョンに潜るのです!」

喜久乃
「地下の未踏査エリアでしたっけ? どこまであるか解らないっていう…」


「そんな所に行って何があるんだ?」


とりあえず私はこれまでの経験を元に情報を整理する。
この時点で解っている事は…


夏翔麗愛
「何があるかは解りませんけど、どうにもこの城の地下は別の空間に繋がっているみたいなんですよ…」

騰湖
「別の、か…だが納得だな、それ程の地下があるとするなら、別空間でも無ければおかしいからな」

喜久乃
「100m掘れば温度は3℃上がるって言いますからね…」
「単純計算で、高さ3mの部屋が仮に地下1000階まであったとしたら、90℃も地熱が上がりますし」


「90℃かよ…人間の体なら焼け死んじまうな」


もちろん、掘る場所によって地熱は変わりますし、あくまで単純計算ですけど。
どっちにしても、どこまで続くか解らない深さの地下空間は、明らかに別の空間に繋がっているのが最近解ったのです。
お母さんも覚えは無いって言ってましたし、お母さんが制御出来ない空間とか、キナ臭いにも程があるのです。
一体、地下の先には何があるのでしょうか?


騰湖
「で、何故このメンバーなんだ?」

夏翔麗愛
「1番暇そうだったからですよ…特に騰湖お姉ちゃんは、○ナニーばっかりしてないで少しは働くのです!」


「まぁ、暇なのは否定しないけど…」

喜久乃
「まぁこういうのも悪くは無さそうですね、意外と面白そうです♪」


予想外に喜久乃お姉ちゃんは乗り気だ。
鳴お姉ちゃんはどっちでもって顔で、騰湖お姉ちゃんは下らなさそうにしながらため息を吐いていた。


騰湖
「…で、報酬は?」

夏翔麗愛
「ドロップ品があったら優先的に回してあげるのですよ」

喜久乃
「ってハクスラ確定!? モンスター出るんですか!?」


「って、ゲームじゃないんだから…」

夏翔麗愛
「鳴お姉ちゃんが現実的にツッコムと悲しくなるのです!」


とはいえ、実際に何があるかは解らないですし、ここで戦力が減るのはちょっと問題ですね…
仕方ない、何か考えましょう!


夏翔麗愛
「ではキャッシュで100万円用意するのです! それでどうですか?」

喜久乃
「高っ!? 何か逆に怖くなるんですけど…」

夏翔麗愛
「もちろん、これ1回の契約料じゃないですよ? 今後も何度かに分けて進むつもりですので、限界に到達するまでの契約料です」


「まぁ、俺は金はどうでも良いけど…」

騰湖
「それだけあれば、かなりの物が買えるな…悪くない」

喜久乃
「通販でレアなゲームも買える…!」


とりあえずやる気になってくれて何よりです。
まぁ金塊には余裕ありますし、大丈夫でしょう。
さて、とりあえずは探索に向かうとしますか!



………………………



喜久乃
「そういえば、本格的に地下2階から下には降りた事無いんですよね…」


「俺も無いな…だって基本的に進入禁止だろ?」

騰湖
「そのはずだ…何も施設は無いし、行く理由も無いしな」

夏翔麗愛
「とりあえず地下2階からは迷宮になってるので、迷ったら2度と戻って来れない可能性もあるのですよ…」


私の言葉に3人は凍り付く。
既にモチベーションが下がってるじゃないですか…
とはいえハッタリでは無いのです。
10年前に探索した時は、トラップだらけのダンジョンでしたし、殺意だらけでしたからね。


喜久乃
「…これ、勝手に探索して大丈夫なんですか?」

夏翔麗愛
「許可は貰ってるのです、最悪ボスが回収してくれますよ」


「雫前提の難易度!?」

騰湖
「あくまで最後の手段だな…後で何を言われるか解らんが」


まぁ、そういう事です。
とにかく今回は前と違うルートに進むのです!


夏翔麗愛
「地下2階で確認出来る下への階段は、今の所4つです」
「内ひとつは既に攻略済みで、それは除外」


「残り3つってわけか…」

喜久乃
「…その先で分岐が無ければ、ですけどね」

騰湖
「その場合は厄介度が跳ね上がるな…」


その辺もどうなるか解らないですね…
攻略済みのルートは単純な2択攻めだけでしたし、地下3階で終了とそんなに長くは無かった。
他のルートはそれも解らない…入り口があって、別空間に繋がっているのは既に調査済みだけど、そこから先はまだ未知数なのです。



………………………



夏翔麗愛
「とりあえず、ここがBルートの階段です」

喜久乃
「B…ですか」


「見た目は普通の階段だな…やたら暗いけど」

騰湖
「『フラッシュ』を使えば問題は無いだろう、さっさと行くぞ?」

夏翔麗愛
「それじゃあ久し振りに…バルス!」


「目がぁぁぁぁぁ!! って、そんなに光ってない?」

喜久乃
「戦闘用のフラッシュじゃないんですから当然ですよ…」

騰湖
「とりあえず明るくなったが…かなり長い階段だな」


私は頭上に光の玉を作り、場を明るく照らす。
PPが続く限りはこれで探索を続けられる。
逆に、これが切れる前には帰還しなければならない…


夏翔麗愛
「この階段はおよそ30mあるのです…そこからは、別空間となります」

喜久乃
「30m…! ホントにどうなってるんですかね、この城?」

騰湖
「元々、どこかに存在していたと思われる城らしいからな、少なくとも我らが知らぬ世界の建造物かもしれん」


「そういや、気にもしてなかったけど、この城って元々白那さんの物じゃ無かったんだよな〜」


まさにその通り。
あくまでお母さんは、理から逃げる為に空間転移と剥離を繰り返していた。
その結果この城にたまたま辿り着き、私たちはここを拠点にして今に至るのです。
初めから城には誰もおらず、誰もいないのに綺麗なまま存在していたこの城は、今考えたら違和感だらけですね…



………………………



夏翔麗愛
「…転移しましたね、階段の途中で既に切り替わってますよ」


「そうなの? 全然気付かなかったけど…」

喜久乃
「確かに、空気が違いますね…何て言うか、ひんやりする」

騰湖
「…気温が下がっているのか?」


私たちは少し肌寒く感じる。
本来なら逆に蒸し暑くなるはずなんですがね…この空間はどうなっているのか。
とにかくここからは正真正銘の未踏査区域。
さぁ、調査開始です!


夏翔麗愛
「この時点で既に3方向に分かれているのです、方位磁石も使えないので迷わないでくださいね?」
「マッピングは私がやるので、皆は周囲を見ながら進むのです!」

喜久乃
「なら、どれから行きます?」


「任せる、どこからでも良い」

騰湖
「なら左から行くぞ…どの道全ての部屋を調べるのだろう?」


私は頷いてノートとペンを出す。
そして、手書きでマッピングを開始し、まずは左の通路を進んだ。
ドアの類いは存在しておらず、ひたすら通路を進む様ですね…



………………………




「お、部屋があるぞ?」

騰湖
「…何だここは、何も無いぞ?」

喜久乃
「天井は高いですね…10mはある?」


最初に到達したのは巨大な空き部屋。
何も置いている事もなく、通気孔すら無い石造りの部屋は異様にも思えた。
罠の類いがあるかもしれませんし、注意はしないと…



「な〜んにもねぇな」

喜久乃
「…かえって怪しいですね」

騰湖
「やれやれ…何の為にこんな広さの部屋があるのか」


とりあえずそのまま素通りして行く。
分岐も無く、私たちは更に先の通路に入って行った。
こんな感じで特に何も起こる事無く、ただ同じ様な空き部屋を私たちは調べ続ける。
しかし全てのルートを調べても、何ひとつ階段は見付からなかった…



………………………



夏翔麗愛
「…トラップの類いすら見付からなかった」

喜久乃
「階段もありませんでしたし、ただの無駄足だったのでは?」


「何時間歩いたんだよ…かなりの部屋数があったよな?」

騰湖
「数えるのも面倒な位にはな…ハズレだったのではないか?」


再び2階への階段を前に私は考える。
ならこの空間は何故作られたのか?
部屋数にして87部屋、分岐だけでもかなりの数があった。
そして部屋は全て同じ構造で、何も無く広いだけの空間。
落ちている物も無く、ただ無駄に歩かせるだけの空間?

そんな訳が無い、前の探索ではあからさまな罠と意味不明のエロ同人があった。
もし同じ作り手が作っているなら何か意味があると私は睨む。


夏翔麗愛
(マッピングに何かヒントは…?)


私は手書きでまとめたマッピングノートを開く。
殴り書きで書いてるからかなりいびつだけど、何かヒントは無いのだろうか?
すると、私は何か違和感に気付く。
そして何となく解った、恐らくこの階層には…


夏翔麗愛
「隠し通路がありますね、多分」

喜久乃
「何か解ったんですか?」

夏翔麗愛
「見てください…これだけの通路と部屋があるのに、ど真ん中1ヶ所だけ不自然に空白があるのですよ」


私はノートを3人に見せてそう言う。
部屋の位置や通路分岐はデタラメに見えますが、その実この真ん中のエリアだけには近付かせない様に分岐は分けられている。
正直かなり怪しい…ここまで何も無くノーヒントだけに、余計に何かある気がした。


騰湖
「ならどうする? この際壁を破壊して行くか?」


「力技なら俺に任せろ!」

夏翔麗愛
「何があるか解りませんし、そういうのは最後の手段にします」
「とりあえず、この部屋の配置から推測すると…多分ここと、ここが怪しいと私は思うのです」

喜久乃
「…通路には何も無いと?」

夏翔麗愛
「勘ですけどね、作り手のイメージを予想したらそうかもしれないって…」


あくまで誰かが意図的に作った迷宮なら、その作り手の思考がギミックに反映されてるはず。
前のルートは2択分岐だけで、ハズレたら即死トラップ。
単純ですけど、その数が多ければそれだけ試行回数は稼げる。
ノーヒントで2択とか、全部正解する確率なんて気が遠くなりますよ…
実際、お母さんのチート能力があったからトラップは全部跳ね返せたけど、私ひとりだったら何度目かで死んでいたはずです。
今回は何も危険は無い…ですが、それ自体が罠のトリガーだとしたら?


夏翔麗愛
(…時間にして4時間、タイムオーバーがあるとしたら少し遅すぎる気もしますね)


恐らく、トラップは隠し通路にあると見ます。
ここは二手に分かれて行きましょうか…


夏翔麗愛
「喜久乃お姉ちゃんは鳴お姉ちゃんとここを調べてください」
「騰湖お姉ちゃんは私と一緒に別の部屋を調べましょう」

喜久乃
「何かあった時の連絡は?」

夏翔麗愛
「何か大技でもぶっ放してください、その時のフィーリングをサーチしてそっちに向かいます」


「思考を直接読めば良いんじゃないのか?」

夏翔麗愛
「私はそっちの能力はあまり強くないのですよ…藍お姉ちゃんなら得意分野なんですけど」
「距離があると、私の能力じゃ思考は読み取れないのです、だけどフィーリングなら読み取れる」

騰湖
「成る程、だから技か…それも大技ならそれなりの気合いを入れるだろうからな」


その通りです。
私はあくまで感情ポケモンなので、読心はフィーリングを通してじゃないと読めない。
いわゆる脳内の台詞を読むのが、私は苦手なのです。
得意分野という意味では、借音お姉さん辺りが1番強いと思う。


喜久乃
「とりあえず分かりました、じゃあ行きましょうか鳴さん!」


「って、マップ貰わなくて大丈夫か?」

喜久乃
「記憶力には自信ありますよ、その場所なら迷わず行けます」


そう言って喜久乃お姉ちゃんは駆け出す。
鳴お姉ちゃんはやや不安そうにそれを追った。
私はルートを頭に浮かべ、浮遊して進む。
騰湖お姉ちゃんは無言で付いて来てくれた。



………………………



とりあえず、私たちはそのまま目的の部屋に到着し、そこから調査にかかった。


夏翔麗愛
「…当然、見た目には何も解らない」

騰湖
「こちらがハズレの可能性も有るのだろう?」


確かに、その可能性はありますね。
喜久乃お姉ちゃんの方もハズレてたら、何とも言えませんけど。
しかし、どちらもハズレたとなれば、現状手詰まりを意味する。
私の予想は、それなりに自信があるんですけどね…


夏翔麗愛
「とりあえず、壁を調べましょう…何かおかしな点があったらすぐに報告してください」

騰湖
「やれやれ、面倒だな…」


愚痴を言いつつも騰湖お姉ちゃんは協力してくれる。
何だかんだで騰湖お姉ちゃんは良い人なのですよ♪



………………………



夏翔麗愛
「…? ここ、何か音が違う?」

騰湖
「どうした? 何か見付けたのか?」


私は壁を叩いて音を確かめていた。
単純な手法ですけど、どうやら見付かったらしい。
私はそこに向かって、思いっきり『念力』を放つ。
しかし壁はビクともせず、ヒビひとつ入らなかった。
エスパータイプの念力は、物を動かす事に主軸を置いた技だから破壊には向かない。
とはいえ、一般的な石造りの壁に傷ひとつ付けられない程弱くもない。
これは、明らかにおかしいですね…


夏翔麗愛
「ふっ!!」


私は全力で拳を握る。
拳に格闘タイプのエネルギーを乗せ、『グロウパンチ』を私は壁に放った。
しかし、それでも壁はビクともしない…力技は徹底的に弾く仕様なんですかね?


騰湖
「その壁に何かあるのか?」

夏翔麗愛
「ここだけ厚みが違うのですよ、絶対に奥に別の部屋があります!」


とはいえ、普通の技じゃビクともしない…1体どうすれば?
すると、私の背後で凄まじい熱量を感じる。
私はすぐに嫌な予感がし、横に飛んで後ろを見た。


騰湖
「少しイライラしてるからな…少々発散させてもらうぞ!?」


騰湖お姉ちゃんは尻尾を稼働させ、『ターボブレイズ』を発動させる。
そして両手に練られた『青い炎』は間違いなく最大火力。
とはいえ石の壁に通用するのかは何とも言えない。
炎は岩に今ひとつですからね〜

ドッゴオォォォォォォォォッ!!と大爆炎。
壁に着弾したと同時、凄まじい嵐が巻き上がって部屋の温度が一気に増す。
全てを焼き尽くさんとばかりのその炎はビームの様に照射され、壁は…焦げただけだった。


夏翔麗愛
「完全に無駄だったのです! 逆に蒸し焼きになるかと思ったのですよ!!」

騰湖
「これ位の温度で喚くな…それよりさっさと『冷凍ビーム』を撃ち込め、それ位出来るだろう?」


私はそれを聞いてピーン!と来た。
成る程、騰湖お姉ちゃん意外に頭が回るのです!


夏翔麗愛
「○リーザーストーム!! なのです!!」


私は右手から『冷凍ビーム』を放ち、高温に熱された壁を一気に冷やす。
普通の物質なら、これだけの温度差…軽く……


騰湖
「ちっ、何かバリアみたいな物でもあるのか?」


騰湖お姉ちゃんは軽く蹴ってみるものの、壁はビクともしなかった。
それどころか、焦げていたのは表面の塵だけだった様で、氷と共にパラパラと落ちてしまう。

夏翔麗愛
「っていうか、冷静に考えたら熱応力利用するなら、冷やしてから温めるのが基本なのですよ!」

この理論はあくまで冷たい物の拘束力に、急な熱膨張を加える事によって破砕を狙う理論ですので、逆だとあまり意味が無いのです…
まぁ、急激な温度変化で耐久性は普通落ちそうな物ですけど…


騰湖
「やれやれ、むしろ塵ひとつ無くなってピカピカになってるぞ?」

夏翔麗愛
「こりゃお手上げですね…間違いなく何かの仕掛けがあるのですよ!」


そして次の瞬間、私は鳴お姉ちゃんの強烈なフィーリングを感じ取る。
って、まさか向こうにも何かが!?
とはいえ、私の能力だと遠距離にテレパシーは送れない。
さて、どうしますかね…?


夏翔麗愛
「やむを得ないのです…騰湖お姉ちゃんはここで待機! 私は喜久乃お姉ちゃんの方に向かうのです!」

騰湖
「…仕方あるまい、了解だ」


騰湖お姉ちゃんはため息を吐きながらも素直に従ってくれた。
私はそれを確認し、喜久乃お姉ちゃんたちのいる部屋に全速力で飛ぶ。



………………………



夏翔麗愛
「いた! 喜久乃お姉ちゃん! 鳴お姉ちゃん!」

喜久乃
「あれ、騰湖さんは?」

夏翔麗愛
「待機させてあるのです、こっちにも怪しい壁が見付かったので」

喜久乃
「そっちも、ですか…という事は」


「俺の『雷撃』でもビクともしやがらねぇ…物理も特殊もダメ、どうすんだこれ?」


私は試しに壁を叩く、音はこっちのとほぼ同じ…奥に空間があるタイプですね。
そして破壊不可能の謎の壁…こうなると、この階層の壁は全て破壊不可と思うべきですね。


喜久乃
「夏翔麗愛は何か気付きました?」

夏翔麗愛
「…ゲーム的な解釈なら、同時攻撃ですかね」


喜久乃お姉ちゃんは目を細める。
同じ予想をしたみたいですね…
とはいえ、タイミングを合わせるには何か手を考えないと…このメンバーじゃテレパシーでの通信は出来ない。
仮に同時攻撃するにしても、簡単に壊れる?


喜久乃
「…やるにしても、パワーがどれだけいるのかも解りませんし」

夏翔麗愛
「もしかしたら別のスイッチみたいな物があるのかもしれません」


「でも、他には何も見付からなかったぜ?」

夏翔麗愛
「通信役がいないと、同時にアクションさせるのも難しいし…」

喜久乃
「ここと、向こうの中間地点で両方に届きませんか?」

夏翔麗愛
「無理だと思うのです…借音お姉さんならともかく、私の力だと…」


せめて中継役でもいれば何とかなりそうなのですが…
むむぅ…まだ最初の階層なのに、いきなり面倒なギミックなのです!


喜久乃
「…でしたら、ストップウォッチ使ってタイミング合わせましょうか?」

夏翔麗愛
「おお、その手がありましたかっ!」


私たちはすぐにスマホのアプリを起動させアラームを起動させる。
そして、ふたりのスマホのアラームを同時に鳴る様に設定し、私たちは頷き合った。


夏翔麗愛
「アラームが鳴ったら思いっきり技をぶっ放してください! こっちも騰湖お姉ちゃんにやらせますので!」


「了解だ、任せとけ!」

喜久乃
「それじゃあそっちはお願いします!」


私はすぐに騰湖お姉ちゃんの所に向かう。
そして騰湖お姉ちゃんに作戦を説明して、後は時間を待つばかりだった。



………………………



夏翔麗愛
「技のタイミングは合わせられます?」

騰湖
「腐っても姉妹みたいに育った仲だからな…嫌でも合わせられるさ」


そう言って騰湖お姉ちゃんはターボブレイズを起動させる。
恐らく鳴お姉ちゃんも同様に構えているはず。
後1分でアラームは鳴る。
果たして、どんな結果になるか…?


ピー!! ピー!! ピー!!


騰湖
「!!」


騰湖お姉ちゃんは両手を目の前で交差させ、そこから十文字の炎を作り出す。
まるで巨大な弩弓の鏃の様に見えるその炎は瞬時に炎球となり、高速回転して壁へと向かった。
そして着弾と同時にそこから何故か電気エネルギーが発生し、炎を相殺しているかの様に見える。
騰湖お姉ちゃんはそれを見てすぐに突進し、エネルギーが残っている壁に向けて右手を当てた。
すると騰湖お姉ちゃんの尻尾が激しく稼働し、後ろ髪の先端と両手の爪が赤く輝く。
同時に騰湖お姉ちゃんはそのまま右手を左手で押さえ、そこにもう1発『クロスフレイム』を叩き込んだ。

更に倍加した炎は電気と連動し、激しく壁が振動する。
やがて壁にはヒビが入り、強力な炎と電気のエネルギーに耐えられず壁は崩壊を始めた。


夏翔麗愛
「や、やったのです!! 突破したのですよ!!」

騰湖
「…この電気、間違いなく鳴の?」


騰湖お姉ちゃんはターボブレイズを解除し、自分の右手を見ていた。
あれは間違いなく、鳴お姉ちゃんとの合体技。
でも、どうして離れた場所の壁でそれがリンクしたの?
騰湖お姉ちゃんも意味が解らないと言った具合に、たた右手を見て疑問に思っている様だった。
そして、私の目の前には下への階段が隠された小部屋…
どうやら、これで先への道が開かれたみたいですね。


夏翔麗愛
「…とりあえず、そろそろ時間がヤバイのです」
「今回はこれで切り上げましょう、騰湖お姉ちゃん!」

騰湖
「…ああ、分かった」


騰湖お姉ちゃんはやっぱりどこか疑問が残っている様だった。
何だか珍しいのです…あの桃色脳ミソの騰湖お姉ちゃんが、そこまで考え込むなんて。



………………………



夏翔麗愛
「とりあえず、お疲れ様なのです!」

喜久乃
「…結局、階段はふたつですか」


そう、喜久乃お姉ちゃんの方でも壁は同じく破砕し、下への階段が見付かったのだ。
しかも、鳴お姉ちゃんも騰湖お姉ちゃんと同じ様に、何かを疑問に思っている様だった。



「…ただの、偶然なのか?」

騰湖
「解らん、だがあの感じ…何かを思い出すかの様な」

夏翔麗愛
「…とりあえず、もう休んでくれて良いのですよ?」
「何も無ければ、次の土曜日にまた探索を進めるので」

喜久乃
「う〜ん、でも何でこんな特殊なギミックにしたんだろう?」
「もしかして、あれってレシラムとゼクロムじゃなきゃ攻略出来なかったんじゃないですか?」


私も考えてみる。
もしそうだとしたら、それは何の為に?
レシラムとゼクロム程のレアなポケモンが攻略の鍵とか、かなりレアケースなのに…


騰湖
「…まぁ良い、考えた所で意味は無いのかもしれんしな」


「同感だ、最後まで行けりゃ謎も解けるのかもしれないしな!」


ふたりはそう言って結論付けた様だ。
そしてそのまま無言で互いに部屋に戻って行く。
それを見て、喜久乃お姉ちゃんは水筒からお湯を飲んで息を吐いた。


喜久乃
「…案外、計画的に張られた伏線なのでは?」

夏翔麗愛
「だとたら、この城の製作者は未来でも見えていたんですかね?」
「それこそ、ボスの存在すらも予見して…」


私たちは互いに黙る。
そして更に謎は増えた。
果たして、この城の地下には何があるのだろうか…?
そして私たちは、最後まで辿り着く事は出来るんだろうか?
私たちに、それはとても予想出来る物じゃ無い気がした…










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第4話 『城地下Bルート、第3階層』


To be continued…

Yuki ( 2019/05/23(木) 18:14 )