1年生編
第8話 『セレブな教育実習生!』
紫音
「え? 教育実習生が来る…?」

海南
「そうそう! しかも、PKMらしいんだよ〜!」

ルナール
「へぇ…でもそれって、大学生って事なん?」
「だったら、いつから通ってんだろ…?」


そう言って、ルナールさんは私を無表情に見る。
確かにちょっと気になるかも…何せ、日本の歴史的には私が史上初のPKM高校生らしいし、もしそれ以上の経験者でPKMなら世界的にも注目されそうだけど…


海南
「うーん、それがね…かなり特例のPKMらしいよ?」
「何でも、そのPKMの保護責任者が大物政治家の人らしくて…」

紫音
「政治家〜? それってかなり有名人って事?」

ルナール
「でも、そんなPKMの話題聞いた事無いけど…」


確かに、私はこれでも早い段階で現出したPKMだし、そういう情報があればテレビとかでも映されそうな話題ではある。
なのに、聞いた事も見た事も無いだなんて…


海南
「ちなみに、これって噂なんだけど…」


海南ちゃんは突然、声のトーンを落として口元に手を当てる。
私達はそれを見て、耳を海南ちゃんの口元に近付けた。


海南
「…そのPKM、不正な手段で入手されたPKMって話らしいの」

ルナール
「はぁ…? 要はスキャンダル系?」
「まぁ、大物政治家って言う位だし、人に言えない性癖とかもあるんだろうけどさ…」


勝手にスキャンダルにされてる…ただの噂なのに。
その政治家さんが誰かは知らないけど、お気の毒様である。
しっかし、一体どんなPKMなんだろ?


紫音
「特例かぁ…でも、それで何で教育実習生に?」

海南
「本人の希望らしいよ? 元々大の付く天才らしくて、大学通うまでもなく先生やれる位頭が良いんだって〜」
「だから今回の実習は、実質予行練習らしいんだよ…」

ルナール
「うは…そんな絵に描いた天才とかマジにいるわけ?」
「なら、性格とか悪そうじゃね?」

赤井
「くらぁ!! 今日は教育実習生を紹介するぞぉ!?」
「テメェ等、黙って全員着席!!」


私達の話題をぶった切る赤井先生の怒号。
そして定例の竹刀で教壇をブッ叩き、一気に場は静寂と化した…
これもこのクラスの名物だ…



「…何? 今のがアンタの持ちネタ?」

赤井
「ネタじゃねぇ! コレが素だ!!」
「それよりも早速自己紹介!!」


バシィッ!と竹刀の音が鳴り響き、ひとりのPKMが遂に姿を現した。
見た目はパッと見でまずセレブ!
異様に綺麗なコートを見に纏い、凄くキラキラしてる…
更にミニスカとハイヒールって、ホントに教育実習生なのか疑ってしまう場違い感だ。
そんなセレブPKMはツカツカと教壇まで歩き、少しだけやる気の無さそうな顔でチョークを1本手に取る
そして黒板にデカデカと自分の名前を書いて見せた…そこに書いてあった名は。



「私は『エネコロロ』の『猫乃 味金(ねこの みこん)』! まぁ2週間程度だけど、相手したげるわぁ〜♪」


そんな風に悩ましげなポージングを取り、明らかにこちらを見下した態度を1発目から見せる。
その際に綺麗な薄紫のロングヘアーが靡き、頭に生える特徴的な耳がピコピコ動いた。
首元には同色のマフラーみたいな毛?がモフッと生えており、何か良く解らないピンポン玉みたいな丸いのが4つ付いてる…アレ何?
ちなみに長い尻尾も腰から延びており、先端にこれまた薄紫の毛先が付いていた。

エネコロロかぁ〜確か猫ポケモンだったっけ?


赤井
「とりあえず猫乃さんには、2週間の間ここの担任をやってもらう!」
「今回の実習はあくまで政府特例の処置であり、軽いテストも兼ねてる内容だ」
「お前ら、珍しいからってくれぐれも迷惑かけんなよ!?」


赤井先生がそう釘を差して全員を注意する。
そしてフンッと鼻息を鳴らし、今度は猫乃さんを見てこう言った。


赤井
「後は任せて良いんだな?」

猫乃
「どうぞご自由に…内容は全部頭に入ってるわ」


猫乃さんが軽くそう言うと、赤井先生は少しだけ目を細める。
そしてチラリと私達を流し見た後、そのまま教室を出て行った。
あれ…? こう言うのって、普通付き添う物なんじゃ…?


猫乃
「とりあえず、私の担当は英語よ!?」
「それ以外の授業は基本やらないから、そのつもりでいなさい…」
「じゃあ、出席を取るわよ? 阿賀野〜?」

阿賀野
「は、はいっ!」


阿賀野君は唐突な猫乃さんの出席取りに戸惑っていた様だ。
いや、それ以上に何処か悲しそう…やっぱり赤井先生じゃないとダメなんだね!
…と、そのまま猫乃さんは全ての出席を取り終え、パタンと名簿を閉じてそれを脇に挟んだ。


猫乃
「んじゃHR終わり〜…後自由!」


そう言って猫乃さんはさっさと教室を出て行った…
え、それだけ!?


ルナール
「…うわ〜典型的なイヤミタイプじゃね?」

紫音
「うーん、アレだけだと良く判断出来ないけど…」
「でも、本当に天才っていう位なんだったら、それこそ見てる目線も違うんじゃないかな?」


少なくとも私は学生としては凡人だ。
いや、それ所か学力に関しては遅れに遅れてるレベルだろう。
それなのに、猫乃さんは私なんかとは比較にならないレベルの立場にいる訳だから…

特例ってのも気になるけど、そもそもそれを許される位あの人は凄いって事なんだろう。


海南
「ねぇねぇ、どう思う?」

ルナール
「アタシはビミョー…初対面の印象的には最悪1本手前じゃね?」

紫音
「うーん…気にはなるけど、赤井先生は迷惑かけるなって言ってたし…」


私達は各々意見を交わしあいながらも、休憩時間を過ごしていく。
そして、4時限目…遂に英語の時間がやって来た。



………………………



猫乃
「Then I'll start an English class!」

全員
「……?」


開口一番、早口で意味不明な言語が飛び出て来た。
少なくとも、このクラスでは誰ひとり反応は出来なかったみたいだね…
英語が苦手な私に至っては完全に不意を突かれてイミフだ…


猫乃
「ったく…どいつもコイツも」
「アンタ等英語舐めてんの!? この程度のリスニング位は理解出来る様になりなさい!!」

ルナール
「すんませーん、ここ日本なんで日本語でお願いしまーす」


明らかにカチンときてるであろうルナールさんが、事もあろうに早速噛み付いた。
一瞬で場がざわつくも、すぐにバシィッ!と教科書で教壇を叩く猫乃さん。
そして猫乃さんは特に感情を出す事も無く、ルナールさんを真っ直ぐ見てため息を吐いた。


猫乃
「…ルナール・カメリア、フランス出身のPKMだっけ?」
「あっちじゃ英語は習わなかったのかしら?」

ルナール
「むしろ日本語勉強したんで、英語はボチボチかな〜?」

猫乃
「成績はそれなりに優秀…アンタは聞き取れてたんじゃないの?」

ルナール
「聞き取れてたとしても、猫乃さんのは早口過ぎて難易度激ムズだと思うけど?」
「そんな速度のリスニング、東大の入試でも出て来ないっしょ…」


うわ、何かルナールさんがさりげなく出来る娘アピールしてる!?
って言うか、理解出来てたのアレ!?
しかも成績優秀って…ルナールさん頭良かったんだ!?


猫乃
「ふん、まぁ良いわ…とりあえず授業を始めてあげる!」
「安心しなさい…今度はちゃんと前の授業の続きから教えてあげるから♪」


そう言って猫乃さんは、妖艶な笑みを浮かべて教科書を開いた。
ルナールさんもそれ以上は噛み付かず、ややムスッとした顔で椅子に座る。
うーん、何でルナールさんあんな噛み付き方したんだろ?
いつものルナールさんなら、無視を決め込みそうな物なのに…



………………………



しかし、不安とは裏腹に猫乃さんの教え方は凄く解りやすかった。
言動は確かに高圧的だけど、発音は凄く綺麗だし聞き取りやすい速度で丁寧に説明してくれる。
何て言うか…今までの英語教師は何だったのか?って位に温度差が激しい授業内容だった…


猫乃
「それじゃあ、今日はここまで! 残りのページ分は宿題にするから、キッチリ覚えておきなさいよ?」


その言葉の後にキッチリとチャイムが鳴り、私達は礼をして授業を終える。
この後は昼休みだし、とりあえずご飯だね…


紫音
「ルナールさん、何でいきなりあんな事言ったの?」

ルナール
「ん…何となく、かな?」
「どうにも相手にされて無さそうな感じだったから、何かカチンときて…」
「…ぶっちゃけ、ムカつく態度だし」


それが本音だよね!?
問題起こらなくて良かったけど、すぐ側の私は気が気じゃ無かったよ!?


ルナール
「それよか、どうせ皆屋上でしょ? さっさと行く」


そう言ってルナールさんは鞄から保冷バッグを取り出していた。
私はそれを見て?と思い、思わず聞いてみる。


紫音
「あれ、お弁当作ったの?」

ルナール
「違うって、コンビニ弁当…学食混むし、こっちで十分っしょ?」


ああ、成る程…コンビニ弁当を単に保冷バッグに入れてただけか。
もう11月だし、保冷する程って感じはしないけども。



………………………



グリナ
「あ、そっちでもそんなんだったんですか?」

海南
「って事はグリナちゃんのクラスでも?」

ルナール
「あのエネコロロ姉さん、別のクラスの授業でも同じ事やってたんかい…」

紫音
「うーん、もしかして私達のレベルを確かめる為にやったんじゃない?」


私は何となくそう思って言ってみた。
すると3人はうーむ…と唸ってしまう。


ルナール
「…まぁ、仮にそうだとして」
「それでもアレは普通聞き取れないと思うけどね〜?」

海南
「私も要所要所、単語は理解出来たけど…」

グリナ
「私のクラスは、全員沈黙してましたね…」


「はん…その程度で沈黙する程度の度胸なら、その程度の授業で十分って事よ」


突然私達にそんな言葉が向けられる。
私達は全員驚き、声の方を見ると…手にピザを乗せた猫乃さんが優雅に立っていた。
何故にピザ!? しかもLサイズ!!


ルナール
「うわ、アレが昼食…? ひとりで食うの? 胸焼けしない?」

猫乃
「ダマラッシャイ! この私が貧相なおにぎりでも食べると思ってるの!?」
「セレブな私は、いかなる時も豪勢な食事を取るものなのよ〜♪」

紫音
「あ、やっぱセレブなんだ…」

グリナ
「にしても、その量ひとりで食べられるんですか?」

猫乃
「無理に決まってるでしょう! 余ったらアンタ達にあげるわよ…」


勝手に押し付けられてる!?
いや、貧乏学生には嬉しいだろうけど…


ルナール
「え、マジで…? だったらセレブな猫乃先生は晩飯も豪勢なのを?」

猫乃
「ふっふーん! 当然じゃない!!」

ルナール
「いやぁ〜流石は猫乃先生! それじゃあワタクシ共も今夜随伴しても?」

猫乃
「オーーーホッホッホ!! お安い御用よ! 貧乏学生には到底味わえないフルコース料理を味わわせてあげるわ!!」


ルナールはそれを聞いてこっちを見る。
そして無言でグッとガッツポーズを取った。
ルナールさん、乗せるの上手いなぁ〜……って、猫乃さんが単純なだけかもしれないけど。


ルナール
「やったぞ…アレは乗せれば奢ってくれるタイプだ!」

海南
「あ、あはは…良いのかなぁ〜?」

グリナ
「ううむ…でもちょっと気になるかも」

紫音
「本当に良いのかなぁ〜?」


猫乃さんはとてもご満悦な顔で高笑いしていたけど…
そしてそのままルナールさんは猫乃さんをヨイショし、気分良くさせておくのであった…



………………………



猫乃
「それじゃあ、今日はこれで解散!」


その言葉と共に、私達は本日の日程を終えて帰路に着く。
するとルナールさんは早速猫乃さんに話しかけていた。
ちゃっかりしてるなぁ…本当にたかる気らしい。


ルナール
「え? そんじゃあ遅くなるの?」

猫乃
「そうねぇ、少し寄りたい場所もあるし…」
「何なら、一緒に来る? 終わったらそのまま食事に行っても良いし」

ルナール
「是非ご一緒させていただきます!」

紫音
「猫乃さん、本当に良いんですか?」


私があえてそう尋ねると、猫乃さんはクスクス笑ってしまった。
何だろう…そんなにおかしな事を言ったかな?


猫乃
「貴女、真面目ねぇ〜? 折角なんだから、こういう時は乗せられときゃ良いのに…♪」


その言葉を聞いて、ルナールさんはギクリとなる。
そして目をパチクリさせ、猫乃さんの方を見た。
猫乃さんはそれを見てクスクス笑う。


ルナール
「…あの〜、もしかしてワザと?」

猫乃
「さぁ、どっちかしらね? でも別に良いのよ?」
「私がセレブなのは事実だし、晩飯奢る位なら大した事無いもの…」
「もっとも、何度もたかるならそれ相応の結果は見せて貰いたい物だけど…ね?」


そう言ってペンを片手にルナールさんを指した。
ルナールさんは口笛を吹きながらワザとらしく惚ける。
やれやれ…何だか急に疲れたよ。


ルナール
「…なーんだ、猫乃先生も割とフツーのPKMなんじゃん」

猫乃
「まだ先生じゃないけどね? どうせなるから良いけど…」
「これでも人生は楽しむのがモットーなのよ♪」
「だから、金も好きに使う! 教師はやりたいからやる!」

紫音
「それで…どうして教師になろうと?」


私がそう聞くと、猫乃さんは高笑いしながらこう答えた。
その辺は演技じゃ無いのかな…? もう良く解らないよ…


猫乃
「…まっ、教師がやってみたかっただけ」
「アンタ達みたく、面白そうな生徒を相手に出来るならそれこそ面白そうじゃない?」


猫乃さんは、やや含んだ感じをさせながらもきっぱりそう言った。
面白そう…か。
猫乃さんは天才っていう位だし、本当はどんな職業でもやれたのかもしれないけど…それでもあえて教師を選んだ。
理由は、ただ…面白そうだから、か。


猫乃
「…橘だっけ? アンタ、看護師になりたいらしいじゃん♪」

紫音
「あ…は、はい!」

猫乃
「理由は? この時期からPKMが夢を語れるのは、明確な理由が無きゃまず出来ないでしょ?」

紫音
「私は、誰かを助けてあげたいから…です!」
「大切な人が傷付いた時、私は何もしてあげられなかった…」
「だから、そんな時誰かを助けられる様になりたいって…そう思って!」


私は自分で感じた事を、全て猫乃さんに打ち明けた。
そんな私の話を聞いて、猫乃さんは微笑みを返す。
そして、やや片眉を吊り上げて高らかにこう言う。


猫乃
「オーーーホッホッホ! 良いんじゃないの?」
「そうやって夢を描き、真っ直ぐに絵を描いて進める奴は限られてる!」
「アンタはまだ力が足りないかもしれない、でもそこに辿り着くエンジンは最初っから付いてるのよ?」
「それを…しっかり覚えときなさい!」


そう言って、猫乃さんは裏拳で私の胸を軽く小突く。
私は少しだけ、気が楽になった気がした。
こうやって、純粋に背中を押して貰えたのは初めてだからだ。
赤井先生も応援はしてくれたけど、猫乃さん程親身には言って貰えなかったから…


海南
「紫音ちゃ〜ん! そんな悲しい顔しないで〜!!」

紫音
「ぐえっ!? 海南ちゃんギブギブ!!」

ルナール
「御愁傷様…」


ルナールさん合掌してないで助けてよ!?
猫乃さんも高笑いしてないで!?
軽く意識が遠退きそうになる中、私の悲鳴が教室に響き渡るのだった…



………………………



猫乃
「よっし到着!」

紫音
「ここって…」

ルナール
「ゲーセンだね…見るもレトロな雰囲気の」

グリナ
「あ、ここって結構有名なお店なんですよ〜♪」
「今じゃ貴重な筐体も置いてありますし、その道のユーザーには重宝されているらしいです!」

海南
「猫乃さん、ゲームとかやるんですか?」


海南ちゃんがそう聞くと、猫乃さんは微笑みながらさっさとひとつのゲームの前に腰かける。
見た感じ古いゲームみたいだけど、対戦格闘ゲームみたいだね〜


ルナール
「あえての○斗ですかい…」

グリナ
「しかもジョインジョインミスター○ート!」

海南
「あえてそっちなんだね…」

猫乃
「ただ強キャラ使っても面白くならないでしょ!?」

ルナール
「しかし、あえての1P!」

グリナ
「まぁ、対戦相手がソルジャーシートに座ってますからね…」


良く解らないけど、とにかく猫乃さんの対戦が始まった。
独特の英語ボイスが流れ、猫乃さんはやたらと太くてデカイキャラを動かす。
相手は何か黒い仮面を被ったキャラで、何かドラム缶とか出してる。
って! これどんなゲームなの!?


ルナール
「あ、ガス決まった」

グリナ
「そのまま壁コン直行ですね」

海南
「あーバスケ始まったよ〜\(^o^)/オワタ」


何か知らない内に、猫乃さんのキャラは画面を上下にバウンドし続けていた。
私達はそれを見ている事しか出来ず、当の猫乃さんもただ腕を組んで待っている。
って!? これで終わりなの!?


猫乃
「や、やるじゃない…! まさか1R目からバスケにいかれるとは…!!」
「だが、まだここからよ!!」

ルナール
「おっ、今度は良いペース!」

グリナ
「しっかりゲージも溜まってますぞ!?」

海南
「あ、タイフーンループだ〜♪ 相手\(^o^)/オワタ」


何か今度は猫乃さんが1発差してコンボ移行、そのまま気が付いたらグルグル回って相手を倒していた。
正直、私には何が楽しいのか全く解らない…!
ただ一方的な試合が繰り広げられてるだけだし…

と、そのまま次のRは猫乃さんのキャラが速攻大爆発してFATAL KOしてしまった…ホント何処が楽しいのこのゲーム!?


猫乃
「…ふっ、今回は私の負けにしてあげるわ!」

ルナール
「いやまぁ、1P○ートは多分全キャラ相手に不利だし…」

グリナ
「むしろ相手褒めるレベルのコンボ精度でしたからねぇ〜」

海南
「ラストわざわざ俺の名からの一撃ロマンコンボだったのは解ってるよね〜♪」

紫音
「(-_-;)」


もう何も言えなかった…本人的にはそれなりに良い対戦だったらしい。
とりあえず、1発目からこんな濃いゲームやらなくても良いのに…


ルナール
「しっかし、古いの一杯あるなぁ〜コレなんて1982年って書いてあるよ?」

海南
「でも有名なゲームだから私でも知ってるんだよね〜♪」

グリナ
「うーん、この時代のシューティングは大抵パターンゲーですし、やり込めると延々遊べちゃうんですよね〜」

猫乃
「その辺りは古いゲームの悩み所よね〜」
「でも、当時ではこういうのって攻略法を見付けるのも一苦労だったらしいし、何よりそれだけクレジット数もかかる…」
「その分、最後までクリア出来た時のカタルシスは大きいし、有名なゲーム程その達成感も大きかったんじゃないかしら?」
「つまり…長く遊べるのはそれだけ頑張ったご褒美と思えば良いのよ♪」
「まっ、インカム的にはOut! なんだけどね〜」

紫音
「…って、猫乃さんも年齢的には当時を知りませんよね?」


私がそう言うと、猫乃さんは髪を掻き上げながら当たり前よ!と力強く言う。
ちなみに猫乃さんはまだ22歳らしい…まぁ教育実習生だし、妥当な年齢だよね。


猫乃
「私は単にゲーム好きだから、こっちの世界に来てやり込みまくってただ〜け…」
「…幸い、お金には困らない家に引き取られたし、ね」


何だか、その時だけ猫乃さんの表情は笑ってなかった。
でもすぐに微笑んで猫乃さんは明るく振る舞う。
私は…何となく猫乃さんの家の事が気になってしまった。
聞くべきじゃないとは思うけど…どうしようか?


紫音
(…止めた方が、良いよね)


猫乃さんは今が楽しそうなんだし、もし暗い過去なら掘り返すべきじゃないだろう。
今の猫乃さんは、やりたい事をただ目指しているのだから…



………………………



そのまま1時間程ゲームを皆で楽しんだ後、私達は1度解散してから改めて集まる事にした。
流石に制服姿で食事会ってのもアレだしね…って猫乃さんに注意されたからだ。
なので…私達はそれぞれ保護者に許可を貰い、改めて猫乃さんの指名した場所に集まるのであった。


紫音
「あれ? 高級フルコースじゃないんだ…」

ルナール
「フツーに寿司屋だね…しかも回転寿司」

海南
「でもこっちの方が良くない? コース料理とか何か面倒そうだし…」

グリナ
「私もこっちが良いです!」


猫乃さんの指定した住所に集まった私達は、いわゆる回転寿司チェーン店の前にいたのだ。
猫乃さん、あえて住所だけ教えて店の名前は明かさなかったんだよね…
そしてまだ当の本人は来てない…と。


ルナール
「うわ、アレ猫乃さんじゃね? リムジンとか初めて見たよ…さっすがセレブ」

グリナ
「あれ? でも自分で運転してますよ…セレブなのに」

海南
「ある意味、シュールな光景だね…高級リムジン1人乗りで運転して来るセレブって」


何処か呆れている私達の反応を余所目に、猫乃さんは車を駐車場に停めてから私達の前に現れた。
服装は例によって高級感たっぷりのコートであり、いかにもな高級バッグも持っている。
そして特に意味も無さそうなサングラスまでしており、ワザとらしい足取りでわざわざ目立つ歩き方をしていたのだ。

当然の様に、私達まで目立つ羽目になる。


猫乃
「ん、時間には正確でよろしい! ちゃんと遅刻しなかったわね?」

ルナール
「…いや、まぁ良いんすけどね」
「とりあえずツッコンで良い? 何で自分で運転してんの?」
「フツーリムジンとか専門の運転手がいるんじゃね?」
「それとも猫乃さん、実は寂しい人とか?」


ルナールさんは例によってズカズカと聞き難い事をズバッと聞いてしまう。
猫乃さんはお黙り!と綺麗にツッコミを返し、とりあえず適当に言い繕って店内に向かった。
私達はその後ろに付いて行き、とりあえず店内に入る。


グリナ
「うわ、混んでますね〜」

猫乃
「予約してるからすぐに座れるわよ? はい他の客にぶつからない様に!」


猫乃さんは真面目にそう注意して私達を促す。
こういう所は実に大人の対応であり、本当に教師みたいだね…
って言うか、セレブ過ぎる見た目だけに反ってギャップが…



………………………



猫乃
「ほい! おしぼり!」

ルナール
「うわ、本当にフツーの回転寿司だ」
「何気に初めてなんよね〜ちょっとwktk♪」

グリナ
「私は久し振りですね〜たまに家族で食べたりします!」

海南
「私も久し振りかな? 家族で外食とか、ここの所サッパリだったから…」

紫音
「私は初めてだね…こういうお店で食べるのは」
「お寿司自体は食べた事あるけど…」


とりあえず、回転寿司とかいうのはテレビでしか見た事が無かった。
家でなら何度か食べた事あるんだけど、出前だったしなぁ〜
そういう意味ではちょっとウキウキしてしまう自分がいる♪


猫乃
「とりあえず、何でも好きなだけ食べなさい!」
「今日は出会いの記念って事で、未来の先生が先行投資よ!?」

海南
「あはは〜それじゃあ早速トロいただきます♪」

ルナール
「あ、ならアタシウニ貰い〜♪」

グリナ
「鯛ですよ鯛! 久し振りだなぁ〜♪」

紫音
「えっと、じゃあ私卵…」

猫乃&ルナール
「控えめかっ!?」


ふたり同時にツッコマれた…良いじゃん好きなんだから!
私は初めての回転寿司でツッコミを受けながらも、楽しく食事を進めるのだった…



………………………



ルナール
「あー食った食った…猫乃さんゴチーっす!」

海南
「ご馳走さまでした〜♪」

グリナ
「ご馳走さまです!」

紫音
「どうも、ご馳走さまでした♪」

猫乃
「ん! 皆沢山食べてよろしい! 奢り甲斐があるわ♪」
「帰り送ってあげるから、ちょっと待っててね?」


そう言って嬉しそうに笑った猫乃さんは、そのまま楽しそうに駐車場へ向かう。
私達はしばしその場で待つ事にした…


ルナール
「…送るって、あのリムジンで…よな?」

海南
「ですよね〜」

グリナ
「うわ、あんな車に乗る時が来ようとは…」

紫音
「って、肝心の猫乃さんが運転手ってどういう状況なの!?」
「私達、送られて良いのかな!?」


そんな私のツッコミも空しく、猫乃さんは高級リムジンを私達の前に持って来た…
当然注目の的であり、私達はややオドオドしながらもリムジンに乗る事に…
そこは…まさに未知の空間だった。


ルナール
「うわ…広っ、テーブルとか何であるん!? 金持ち臭っ!」

海南
「4人乗っても全然余裕だよ〜! 流石高級車!」

グリナ
「でも、コレ運転してるのが専門職の人じゃなくてセレブ本人なんですよね…」

猫乃
「だって誰かに運転してもらうとか面倒じゃない!」
「イチイチ目的地指示して待つ位なら、自分で運転した方が退屈しないし!」


実に猫乃さんらしいと言えば良いのか?
多分、この人は飾りだけで金持ちやってる人じゃないのは今日だけで解った気がするけど…
猫乃さんって、多分普通の金持ちの感覚で生きて無いんだろうなぁ〜
そういう意味では、セレブであってセレブでは無いのかもしれない…


紫音
「うわ〜シートもフワフワ〜…車とは思えない!」

ルナール
「ゲッ…棚に高級っぽいワインとかブランデーがある!」

猫乃
「こら! 未成年は飲んじゃダメよ? 見るだけにしときなさい!!」


猫乃さんは運転しながらそう注意する。
猫乃さんの運転は至極精細で、全く不安を感じさせないパーフェクトな腕前だった。
確かにこれだけの技術あるなら、自分で運転した方が良いのは何となく解るかな…


海南
「そう言えば、猫乃さんどうやって免許取ったんですか?」
「PKMが資格取れる様になったのて、今年からですよね?」

猫乃
「私は色々特例だらけなのよ…だからそういう縛りとか最初から無かったの」
「ただ欲しいから免許取っただけだし、車も自分が運転したいからするだけ…」
「Do you understand?」


猫乃さんは綺麗な発音でそう言う。
これなら私でも理解出来る…2重の意味で!


ルナール
「ふーん、やっぱ猫乃さんってどっか普通じゃないね〜」

猫乃
「あーそれから、良い忘れてたけど…私の事はFarst name!で呼びなさい!」
「名字で呼ばれるのって、あんまり好きじゃないから」

グリナ
「? 好きじゃない…? 一応日本国籍なんですよね?」


猫乃さんはその質問には答えなかった。
少しだけ空気が重くなるも、私はそこであえてこう言う。


紫音
「え、えっとそれじゃあ味金先生!」

味金
「ん! よろしい!! まだ先生じゃないけど、どうせなるから許す!!」
「…私の事で気になる事があるのは理解してるけど、今は勘繰らないでおいて」
「ちゃんと先生になった時には、少しづつ話してあげるから…」

ルナール
「良いんじゃね? アタシもあんま家の事は探られたくないし、気持ちは解るから…」

グリナ
「す、すみません…何か地雷踏んじゃったみたいで」

味金
「気にするなJK! これから気を付ければ良いのよ!」

海南
「あはは…本当に味金さんって、変わってるかも」


そんな感じで、私達は味金さんに送られて各々家に帰る。
結局、味金さんの家の事やら過去やらは隠されたままだけど、いずれそれも明かされる日が来るのかもしれない。
でも、私はこう思う…

たった1日の出逢いでコレなのだから、本当に味金さんが先生になってしまったら、どうなるのだろうか?と…



それから2週間…味金さんとの関わりは私達に少しだけ勇気を与えてくれた。
去り際も味金さんはひたすら明るく、私達にI'll be back!!と言って元気に去って行ったのだ。
この2週間は…ある意味濃密だった。
英語の苦手な私にとってはやや大変だったけど、味金さんの丁寧な授業は私に勇気をくれたのだから…

だから、私はまだ頑張ろうと思える。
いつか味金さんが本当に帰って来る時の為に、もっともっと勉強しないとって!





………………………




紫音
「って!? もしかして本当にこの学校に帰って来る気なの!?」


その疑問は…その内明かされる事になる……かも!!










『突ポ娘異伝録 春夏秋冬 〜四人娘の学園生活〜』



第8話 『セレブな教育実習生!』


…To be continued

Yuki ( 2021/11/01(月) 21:37 )