1年生編
第4話 『秋…橘は美しく実る』
グリナ
「私のパンチを受けてみろ!!」


そんな叫びを響かせながらグリナはパンチングマシーンを殴り抜けていた。
出た記録は202s…平均点より上位だね。
っていうか、何気にパワーあるね!?


海南
「グリナちゃん凄いね〜♪ 小さめの体格なのに…」

ルナール
「まぁ、仮にもPKMだし…ねっ!!」


続いてルナールさんがマシーンを殴る。
今やってるのは4人対戦モードっていうルールの奴で、グリナから順にひとりづつ計測しているのだ。
ちなみにルナールさんの記録は173s…平均点より少し下だね。


ルナール
「あ〜やっぱ、こういうのは素直に苦手だわ…」

海南
「うふふ、でも女の子だし良いんじゃない?」


ニコニコと笑いながらグローブを装着する海南ちゃんだけど、明らかに雰囲気が只事ではないのを私は感じる。
仮にも運動部所属で、それなりの体格をしている海南ちゃん…
普段からニコニコ笑顔で、とても人を殴れそうに無い雰囲気だけど一体どんなパンチが飛び出すのか…?


ズバァァァンッ!!


…そんな凄まじい音が鳴り響き、全員がポカーンとする。
あまりの勢いに近くの客まで注目してしまい、しばし場が静寂に包まれたのだ…
そして出た記録は……


海南
「やった〜258s、記録更新〜♪」

ルナール
「…これからは滅多な事言わない様にしとこ、うんそれが良い」

グリナ
「ど、同世代の人間女子に負けるとは…!」

紫音
「あ、あはは…それでも上には上がいるもんね〜」


ちなみにこの筐体でのランキングだと今のは3位に入ってるね…
しかし、海南ちゃんにこんな一面があったとは…


海南
「はい、最後は紫音ちゃん♪ 腕痛めない様に気を付けてね?」

紫音
「あ、うん…」


最後に私がグローブを受け取り、それを右手に付ける。
うーん、いくら私でも本気で誰かを殴った事なんて無いし、そんな大した記録は出ないかな?

(誰かを蹴った記憶ならあるんだけど!)


紫音
「とりあえず適当に…!」


バシンッ!とやや軽めの音を響かせながらも、私は真っ直ぐマシーンを殴る。
出た記録は157s…大体予想通りの結果だね。


紫音
「あっはは…やっぱこんなモンだよね〜」

ルナール
「お疲れお疲れ…気ーにしない気にしない」
「これでアタシ等は健全なJK確定したんだし、前向きに考えよ?」


そう言ってルナールさんはローテンションな顔で私の肩を叩く。
な、何か共感されてる?
ルナールさん的には最下位じゃなかったのが嬉しかったんだろうか?


海南
「あ〜! ストレス解消した〜!!」

グリナ
「…溜まってたんですか? ストレス…」


グリナちゃんがそんなまさか…という顔で海南ちゃんにツッコム。
ま、まぁ…海南ちゃんの性格だとそんな風には思うよね!


海南
「うふふ、そりゃそうだよ〜」
「夏休みも終わったし、これから自由な時間は減っちゃうからね〜」

ルナール
「現実的な問題乙…まぁアタシからしたらあんまし変わんないけど」

グリナ
「私たちは新入生ですしね〜」

ルナール
「正確にはアタシは転校生な? これでもフランスじゃ学校もどきには行ってたんだから…」

紫音
「もどき?」

ルナール
「いわゆる、PKMだけの育成施設みたいなもん…」
「ちゃんと人間に交じって学校生活送れんのか?っていうのを試験する学校があんのよ」
「アタシは一応そこで試験パスしたから、保護してくれる人のいる日本に来て高校入ったって訳」


私はへぇ〜と素直に感心した。
私は死に物狂いで勉強して普通に受かっちゃったけど、海外だとそういう施設で試験されるのかぁ〜


海南
「じゃあ、そこでは他にも勉強してるPKMがいるの?」

ルナール
「あ〜…まぁいるにはいるんだけど」
「ぶっちゃけ、同世代のPKMでそんなに意識高いのってそんなにいなくね?」


私は少し考えてしまう。
言われてみれば、確かに私は日本で初のPKM高校生らしいんだけど…
私は人間の世界を勉強して今の学校に入った。
でも、それは頑張れば誰でも出来る事だし、そんなに難しくは無いはず。

でも、実際に学校に入ったPKMは私たち3人のみ…
それって、やっぱり普通じゃないって事なのかな?


グリナ
「私も相当勉強して何とかって感じでしたしね〜」
「結局春には間に合わなかったんで、秋季入学になっちゃいましたけど…」

海南
「でも、それだと余計に大変だったんじゃない?」
「遅れた分も余計に勉強しなきゃならなかっただろうし…」

グリナ
「はい、ですから努力しました!」
「どうしてもちゃんとした学校に入って、卒業して、ちゃんと働きたいですから!」

ルナール
「それが意識高いって事…ほとんどの同世代PKMはそんな事考えちゃいないって」


実際にそうなんだろう。
ルナールさんは、フランスの施設でそういうのを見てきたはずなのだから…
そういえば、グリナはどうしてわざわざ私と同じあの学校を選んだんだろうか?

春には間に合わなかったっていう位なら、もう少しレベルの低い学校もあったと思うんだけど…


紫音
「グリナって、何か理由があってあの学校を選んだの?」

グリナ
「理由っていうか、紫音さんが先に受かってたから自動的にそこになったっていうか…」


私は?となり、自分を指差す。
グリナはコクリと頷き、尻尾をフリフリしながらこう語った。


グリナ
「やっぱり、まだPKMに対する風当たりは強いみたいで…」
「本当はもっとレベル低い学校に行く予定だったんですけど、入った後の事を考えたら別が良いんじゃない?ってお姉ちゃんに言われて…」

ルナール
「まぁ、下手にレベル低すぎるトコだと治安も悪そうだしね〜」

海南
「そうだね…ただでさえPKMって言うだけでイジメられたりするかもしれないし」


海南ちゃんは悲しそうな顔で俯いてしまう。
イジメかぁ…確かにグリナはちょっとそういうの苦手そうかもね〜
…っていうか、私も入学前に絡まれたんですけどね!?


紫音
(でも、あの時は暴君が助けてくれたんだよね…)


私の大好きなオジさんの家に住んでるPKM…通称暴君。
まぁ色んな意味で過去にやらかした経験のある曰く付きの人で、今も色々国に睨まれてる人でもある。
私を助けてくれたのも多分気紛れで、何となく機嫌が悪かったんでしょ!


グリナ
「まぁそんな感じで、それならちょっとレベル上がるけど紫音さんのいる学校が良いんじゃない?っていう結論に至ったわけで…」

ルナール
「まぁ実績って重要だからね〜アタシもそれが理由で薦められたし」

紫音
「ええ? ルナールさんもそうだったの?」


これは想像以上に影響が大きい…
私って実は相当な事成し遂げちゃったんじゃ?


海南
「でも、確かに紫音ちゃんって話題性は凄いよね?」
「入学したての頃なんか、すぐにマスコミが集まってたし」


私はその時の事を思い出す。
確かにあの時は凄かった…赤井先生が怒鳴り散らして追い払ってたもんね…
でも、赤井先生がああしてなかったら今頃どうなってたか…


ルナール
「まっ、貴重なサンプルだしね…お偉いさんからしたら、アタシ等PKM女子高生なんてモルモットみたいなモンだろうし」

紫音
「…そういう言い方はどうかと思うけど」

ルナール
「現実問題、そうな訳…」
「PKMは人間にとってはまだまだ未知数の生命体」
「去年の事件知らない訳じゃないでしょ? 未だにPKMを危険視してる人間は、ごまんといるんだから…」


私は、その時の事を思い出して身体を抱える。
ある意味、私も当事者だったからね…
でも、そうか…やっぱ暴君のせいで未だにそういう目で見られるわけか。
反面教師としてしっかりと学んでおこう!
あんなPKMになってはダメ! 絶対!!


海南
「…あれは本当に酷い事件だったよね、羽黒首相まで亡くなっちゃったし」

グリナ
「結局、しばらくは日本政府もガタガタでしたもんね…」


良くも悪くも、私には笑えない話だ。
表向きにはただPKMが暴れて被害が出て、今ようやく落ち着いたって話だけど…
私は全部事情を知ってる…本当は、ただ悲しい運命に巻き込まれただけの復讐鬼が辿った結果なのに。


ルナール
「…どしたん橘、気分でも悪いん?」

紫音
「あ…ううん、ゴメン」
「大丈夫、だから…」


私は無理にでも笑ってみせた。
ルナールさんは表情変えないけど、何となく察してしまったのかも…
ダメだな…私、こういう時はちゃんとしないと!


ルナール
「おっと、そろそろ時間か…悪いけど、アタシはこれでオサラバするよ」

海南
「あ、うん! 今日はありがとうルナールさん♪」
「また明日ね〜!」

紫音
「またね〜」
グリナ
「またよろしくお願いします!」


私たちがそれぞれそう言うと、ルナールさんは駆け足でその場から離れた。
時間は16時位か…ルナールさん、一体何をしてるんだろ?


海南
「ルナールさん、バイトでもしてるのかな?」

グリナ
「バイトって、しても良いんですか?」

紫音
「学校に許可貰えるならやっても良いらしいよ?」
「でも、PKMがバイト出来る場所なんてそうそうある?」

海南
「あ、それじゃあ今から行ってみる?」
「丁度お腹も減ってきたし、間食ついでに♪」


私とグリナは?を浮かべながらも、両手を顔の前で合わせてニコニコする海南ちゃんを見て何となく嫌な予感はし始めていた。
って言うか、何処へ連れて行くつもりなのかなぁ〜?



………………………



海南
「は〜い到着〜♪」

グリナ
「あ、ホントにPKMが働いてますね〜しかもメイド服とな!?」

紫音
(あっ、やっぱりここかぁ〜)


私は何となく予想はしてたものの、予想通りの喫茶店だった。
とりあえず、私たちは3人でその喫茶店に入る事にする。
そしてまずは、入り口でひとりのPKMに声をかけられた。
見た感じ猫っぽい耳が特徴のメイドさん…確かニャスパーのPKMだったかな?


ニャスパー
「お帰りなさいませにゃんご主人様〜♪ どうぞこちらへ〜」

海南
「は〜い♪」


私たちはそのまま海南ちゃんの後を追って店内に入る。
私は何となく懐かしみを覚えつつも、店内をグルっと見渡した。
すると、私は明らかに見た事のあるPKMを発見する。


紫音
「あ、『細歩(さいほ)』さん!?」

細歩
『あれ〜? 紫音だ〜いらっしゃ〜い♪』


そう、そこにいたのは知り合いの細歩さんだった。
相変わらずのインパクト抜群のPKMで、種族は『ランクルス』…
細歩さん本体はランクルス特有である緑色の細胞壁に身を包んでおり、本体は動く事も出来ないらしい。
なので、エスパー特有の超能力…いわゆるサイコパワーで細胞壁を操って生活するという、トンデモな生態をしたPKMなのだ!

そして更にインパクト重視なのか、細歩さんはその細胞壁にメイド服を着せており、ぶっちゃけてコレ萌えられるの!?という位、異彩を放つ見た目だった…

ちなみに、細歩さんの身長は120cm程…中身の幼女部分で!
ゲル状の細胞壁まで含めると150cm位だね…
後一応、細歩さんは見た目幼女でも21歳だから! ここ重要!!


海南
「あれ? 紫音ちゃんって、細歩さんと知り合いなの?」

グリナ
「…初見だとどう反応したら良いのか解らない萌えキャラ(?)ですね!?」


流石のグリナもただただ驚くしかなかった様だ…
対して海南ちゃんは慣れてるのか普通の反応…むしろ私の反応に驚いてるみたいだね。


紫音
「うん、知り合いの人の家に住んでるPKMだから…」

細歩
『こっちは初めましてだね〜よろしく〜♪』

グリナ
「ハ、ハイ…うわ、プニプニしてる!」


細歩さんはおっとりとした雰囲気で、気さくに握手を求めていた。
グリナは戸惑いながらもゲル状の細胞壁で出来た腕を握り、感触を楽しむ。
あれ、それなりに良い感触なんだよね〜…慣れると癖になりそうな位。



「ほう? 見た顔がいると思ったら…久しいな」

紫音
「あ、華凛(かりん)さん! お久し振りです♪」


私に声をかけてくれたのは、超爆乳のお姉さん。
アブソルのPKMらしく、頭には黒い角が伸びている。
以前、私が困ってる時にお世話になった事もあり、私にとっては大恩人のひとりだ。


華凛
「ふふ、今日は友人と来客か?」

紫音
「あ、はい…ちょっと間食ついでにって誘われて」

海南
「きゃ〜♪ 華凛さん今日も素敵ですね〜!」


海南ちゃんがそう言って両手を開いてアピールすると、華凛さんは妖艶に微笑んでポーズを取ってくれる。
他のお客さんもそれを見て騒いでいた。

うーん、やっぱり華凛さんって凄い人気だね…


紫音
「あれ、そう言えば『蛭火(ひるこ)』さんは? 細歩さんがいるって事はここで一緒に働いてるんですよね?」

細歩
『蛭火は…厨房担当だから〜』


厨房…ああ、そう言えばそんな事言ってたかも。
ちなみに蛭火さんは『ドヒドイデ』のPKMで、これまた細歩さんに負けず劣らずインパクト大の見た目をしている。
今は多く語らないけど、色々と凄い女性だ…


海南
「紫音ちゃん、蛭火さんとも知り合いなんだね?」

紫音
「うん…細歩さんの家に遊びに行く事多いから」

グリナ
「それより、注文しましょうよ! 私、このケーキセットが食べたいです♪」

細歩
『は〜い♪ ご注文ありがと〜』


細歩さんは超能力を駆使して伝票に書き記す。
私と海南ちゃんもとりあえず注文を済ませる事にした…



………………………



グリナ
「これ、美味しいですね〜♪」

海南
「でしょ? コーヒーもスッゴク良い香りだし♪」

紫音
「確かに美味しいよね…しかもそんなに高くないし」


普通、メイド喫茶と言ったらお高いのが通常だ。
サービス料的な意味合いが強いだろうし、仕方無い部分なんだけど…
それでも、このお店はあくまで普通の喫茶店としての側面を強くしており、飲食でも攻めるスタンスを貫いてるらしい。

これで更に華凛さんみたいな美女がいるんだから、そりゃ流行るよねぇ〜



「チョリーッス、おはようございまーす」

細歩
『あ、おはよう〜…って、新人ちゃん裏から入らないと』


「あ、そうなんすか? すんませんパイセン、すぐに着替えて交代しますわ〜」


今誰かが来たみたいだけど、どうしたんだろ?
何か細歩さんに言われて外に出たみたいだけど…


細歩
『それじゃ、私そろそろ勤務時間終了だから〜』

紫音
「あ、はい…蛭火さんにも、よろしく言っておいてください♪」

細歩
『うん、伝えるよ〜♪ また、いつでも遊びに来てね〜?』


細歩さんはニコニコ笑顔で手を振ってから、そう言ってバックヤードに向かった。
そう言えばそろそろ17時…スタッフは交代の時間かぁ。


海南
「それじゃあ、私たちもそろそろお会計にしよっか?」

グリナ
「はい!」

紫音
「うん、そうだね♪」


私たちは伝票を持ってレジに向かう。
店内はまだまだ歓声に包まれており、熱気は凄かった。
ここで働いてるPKMは、皆楽しそうで良いな〜



「はーい毎度〜、お会計1800円になりまーす」

海南
「あれ? ルナールさん?」

グリナ
「え?」
紫音
「うん?」


私たちはレジで固まっていた。
それもそのはず、レジ打ちを担当していたのはまさかのルナールさんだったのだから…


ルナール
「…2000円お預かりしまーす、ハイこれお釣りね? じゃっ、また来世」

紫音
「いやいやいや!? 普通にスルーしないで!?」
「目を反らさない! ちゃんとこっち見て対応してね!?」


私は思わずツッコンでしまった。
するとルナールさんはあからさまに他人の振りをして誤魔化そうとしている…
そっか〜ここで働いてるからあの時間で帰ってたんだね…


海南
「わぁ〜ルナールさん可愛い〜♪」

ルナール
「いやもう良いから出て行き…後ろの客に迷惑っしょ?」

紫音
「あ、ゴメン…ほら、行こ?」

グリナ
「は、はい…」


私は海南ちゃんの腕を引っ張って外に出る。
事情はどうあれ、ルナールさんは仕事してるんだから邪魔しちゃダメだよね…
って言うか、あのルナールさんがあんな可愛いメイド服来て接客してるとか想像出来ないよ!
もしかして見えてない所でキャピキャピしてるんだろうか?



………………………



海南
「いや〜良い物見れたね〜♪ 眼福眼福〜♪」

グリナ
「ルナールさん、完全にウザがってましたけどね!?」

紫音
「あっはは…凄い偶然だったもんね」


でもルナールさん、ホントに将来の為にお金貯めてるんだね…ちょっと尊敬する。
私たち同世代のPKMは意識低いのが殆どだってルナールさんは言ってたけど、当の本人も十分意識高いよね〜
でも、ルナールさんはルナールさん、私たちは私たち…かぁ。


紫音
「…ねぇ、グリナって将来何したいか決めてる?」

グリナ
「えっ? そ、そうですね…私はまだ、正直良く考えてないです」
「やりたい事は一杯ありますけど、まだコレッ!って言うのはちょっと…」


グリナは耳と尻尾を垂れ下げ、申し訳無さそうにした。
それを見て海南ちゃんがよーしよし!と頭をこれでもかと撫でる。
グリナは複雑な顔をして海南ちゃんのナデナデ攻撃に耐えていた…


海南
「私たちは、まだ高校1年なんだから難しく考えなくても良いんだよ?」
「そういうのは、しっかりと高校生活を楽しんでから決めないと!」

紫音
「…海南ちゃんは前向きだよね〜少し羨ましい」


私も少し耳を垂らす。
私の目標は、看護師…誰かを助けるPKMになりたいから。
でもその道のりはとても遠く、今の学力じゃとても達成出来ない。
だけど、私は絶対に諦めない!
何があっても、どんな障害があっても、最後まで努力するんだから!


紫音
「…うん、頑張ろう! まずは高校卒業まで!」

グリナ
「はいっ! 私も卒業までには何をしたいか決めます!」

海南
「うんうん! 4人で一緒に頑張ろー♪」

紫音
「うん?」

グリナ
「4人?」


私とグリナは笑顔のまま?を浮かべて固まる。
すると、海南ちゃんはニコニコしながら軽くこう言った。


海南
「ルナールさんも含めて、4人で!」

グリナ
「サラリと巻き込んだ!? 絶対怒られる案件ですよそれ!?」

紫音
「あっはは…ルナールさん、どんな顔するやら」


きっとウザそうな顔をする事だろう…
とはいえ、海南ちゃんに目を付けられたらもう手遅れだ。
ああ見えて海南ちゃん、こう!と決めた事には頑なになるからね…


グリナ
「あっと…それじゃ、私はここで! おふたり共、今日は本当にありがとうございました!」


グリナはそう言ってお辞儀をし、私たちに礼をした。
こういう礼儀正しい所は、お姉さんの影響とかあるんだろうね。


紫音
「まぁ、これも何かの縁だと思うし」
「私も楽しかったから、気にしないで良いよ?」

海南
「そうそう! 私たちもう友達なんだから、いつでも誘ってね〜?」


海南ちゃんはそう言ってグリナの手を取って、縦にブンブン振り回す。
グリナは体ごと縦に振り回されるも、何とか耐えていた。
仮にも進化形PKMのグリナをああも軽々と振り回すのだから、海南ちゃんのパワーは恐ろしい…!


グリナ
「で、ではまた学校で〜!!」(ドップラー効果)

海南
「バイバーイ! またね〜♪」

紫音
「またね〜!」


グリナは嬉しそうな足取りで去って行った。
とりあえず、急なイベントだったけど上手くいったかな?
少なくとも、失敗はしてないと思いたい。


海南
「それじゃ、私はあっちだから…」

紫音
「あ、うん…また明日ね♪」


私たちは手を振って別れる。
そう、私たちには…また明日があるんだ。
だから今は、まだ人生を楽しもう♪



………………………



紫音
「おっはよ〜」

グリナ
「あ、紫音さんおはようございます!」

海南
「ふたり共おはよ〜♪」


翌日、私たちは3人で一緒に登校した。
別に示し合わせた訳でもないのに、自然と一緒になったのだ。
きっと、私たちはそういう運命の元に集まったのかもしれないね…


海南
「グリナちゃん、朝は強いの?」

グリナ
「いえ、実は大の苦手です…いつもお姉ちゃんに起こして貰ってるので」

紫音
「どうせ夜更かししてたんでしょ?」


私がそう言うと、グリナはうぐっ…と露骨に反応する。
図星か…解りやすい。


紫音
「ホント、グリナってアニメとか好きなんだね…」

グリナ
「はい! もうそれが無いと生きていけない位に!!」

海南
「あはは…あまり依存しない様にね? 勉強もしっかりしないと♪」

ルナール
「あん? アンタ等朝まで仲良く登校してんの? どんだけ仲良いのよ…」


そんな事を言いながらも、わざわざ自分から話しかけて来るルナールさん。
何だかんだで、それなりに気にしてるって事なのかな?


海南
「あっ、ルナールさんおはよー!」

ルナール
「はいはい、おはようさん…良いから近付くなし、朝っぱらから鬱陶しい」


ルナールさんはやや眠そうな目で海南ちゃんを遠ざけていた。
昨日のバイトの件もあるから、結構遅くまで頑張ってたんだろうか?


グリナ
「ルナールさん、おはようございます!」

ルナール
「そんな畏まんなくても良いよ? 同世代なんだし、もっと気楽に接すれば」
「…コイツ程気楽なのは問題だけどね?」

海南
「あ〜ん! ルナールさんのいけず〜!」


海南ちゃんはそう言ってルナールさんに抱き付こうとするも、ルナールさんは全力で拒否していた。
流石にPKMの敏捷性には海南ちゃんも敵うわけなく、少しして諦めた様だ…


紫音
「あはは…朝から大変だね」

ルナール
「そう思うなら代わってくれない? ぶっちゃけこちとら朝から疲労したくないし…」


ルナールさんはそう言って、ダルそうに鞄を肩から背中に担いで歩いて行く。
その際、特徴的な形の尻尾はまるで第3の足の様に地面に設置させていた。


紫音
「そう言えばクスネって聞いた事ない種族だけど…悪タイプなんだよね?」

ルナール
「そうだよ、ぶっちゃけチョロネコとは相性最悪っていうね」
「特に進化形同士は基本敵だから、気を付けなよ?」


え、そうなの!? チョロネコとクスネにそんな因縁があったなんて…
でも、あくまで種族的な話であってルナールさんにそういう意識があるとは思えないけど。


紫音
「うーん、でも進化かぁ…考えた事無かったね」

ルナール
「ぶっちゃけ、進化しない方がアタシ等可愛くね?」
「特にアタシの進化形は色々と残念な見た目になるから、あんましたくないし…全力でBキャンするわ」


た、確かに見た目は重要かも…
私の場合はレパルダスに進化出来るけど、見た目的にはどうなるのかな?


グリナ
「…何故私を見るんですか?」

紫音
「あ、いや…グリナって一応進化したみたいだから」

ルナール
「ポチエナとグラエナなら、そんな見た目変化しないしね」
「この娘はアタシ等程の悩みは無いと思うよ?」


って言うか既に同類扱いされてる!?
別に私の進化は残念って程じゃないと思うんだけど!


紫音
「うーん、進化したら流石に大人っぽく妖艶になるのかな?」

ルナール
「…この娘見てみ? 進化しても小さいのは小さいんだから」

グリナ
「さりげなくバカにされました!? 私はまだ成長期なんですからね!?」

海南
「でも、人間だと女の子の成長期は10歳頃がピークだよ?」
「15歳ってなったら、男子でも成長はストップする頃だし…」


無情にも海南ちゃんはそう切り捨てる。
グリナはプルプル震えながらも、握り拳を強くしていた。
う、うん! 希望は捨てちゃダメだよね!?


紫音
「…まぁ、当分は別に良いかな」

ルナール
「そうそう、今が精一杯なんだから」


私たちは何故か共感する事になった。
少し不思議に思う…本来のチョロネコとクスネは仲が悪いのに、私とルナールさんは別にそういうわけじゃない。
確かに初見はちょっと揉めそうだったけど、それでもちゃんと話せば解る事だった。

多分、ルナールさんもそんな感じだったんだろう…


紫音
「…ルナールさん、最初は私の事気に入らなかったりした?」

ルナール
「そりゃ最初はね…」
「初対面でいきなりなぁなぁされるのは正直ウザいし」
「互いに大して理解も出来ないまま、さも相手の事知った風な顔で最初から付き合うのはアタシ大っ嫌いだから…」
「でもまぁ、アンタは別にそういうんじゃ無かったし…今は良いかな?とは思ってる」


ルナールさんは変わらずのダウナー口調で、ローテンションにそう話す。
やっぱり、ルナールさんって深く考えてるんだよね…
初見だとただの嫌な感じに写るけど、ルナールさんはちゃんと相手の事を考えて行動してる結果なんだ。
そういう所は、性格でちょっと損してるのかもね…


ルナール
「ぶっちゃけ、後のをどうにかしてくれるなら親友にだってなったげるよ…」

紫音
「後…?」


私は思わず背後見て理解する。
海南ちゃんが羨ましそうに私たちをハァハァ言いながら見ていたのだ。
混ざりたいんだね…会話に!
だけど、ルナールさんの平穏の為に今は海南ちゃんを押さえておく事にした。
そして、私たちは4人で仲良く一緒に正門を潜る。
そう、『4人』で…

だって、この物語は……


紫音
(私たちの学園生活だから!)










『突ポ娘異伝録 春夏秋冬 〜四人娘の学園生活〜』



第4話 『秋…橘は美しく実る』


…To be continued

Yuki ( 2021/07/07(水) 12:22 )