1年生編
第13話 『2年生開始、新たなる出逢い』
校長
「え〜、この度新たに入学をなされました新入生の皆さん…」
「どうか、この学園で皆さんの新たな道を見付けられますよう…」

紫音
「……」


季節は4月…
今私達は新たな新入生達と一緒に入学式を共にしていた。
今年新たに入学した新入生は100名程であり、その内PKMの生徒は何と10名にも及んでいたのだ!
この数字は全国で見てもかなり多い方であり、改めて私達が与えた影響という物を思い知れる。

…とはいえ、そんなに世間は甘い物じゃない。
私達は今日から先輩!
だからこそ、しっかり皆の模範になれる様に頑張らないと!!



………………………



海南
「うぅ…まさか皆と違うクラスとはぁ〜!」

ルナール
「まっ、諦めなって…どうせ休憩時間には会えるんだし」

グリナ
「そうですよね〜、私も去年はそうでしたし大丈夫ですよ♪」

紫音
「それじゃ、私達はA組だから」


私はそう言って手を振り、グリナと一緒に自分のクラスへと向かった。
ちなみにルナールさんはB組、海南ちゃんはC組だ。
今年は担任誰になるんだろ?
前の赤井先生は一年担当らしいし、全く別の先生になるのかな?



………………………



男子A
「おっ、来たぜ? 例のPKM…」

男子B
「ヒュ〜♪ やっぱ見た目はバッチシだな!」

男子C
「チョロネコとグラエナだっけか? やっぱ体つきも人間とは全然違うんかね?」


私達はいきなり注目の的になる。
あれから1年経ったとはいえ、まだまだ私達PKMの事を良く思ってない人はまだまだいる…
私は自分の身は自分で守れるけど、グリナは…?


グリナ
「……」


グリナは特に気にした風も無く、冷静に自分の机を見付けて座り込んだ。
私も自分の席を見付けてそこに座る。
どうやら出席番号順に並べてあるみたいだね…だからグリナとは席が離れてる。
グリナは少し廊下寄り、私は中央よりやや窓側だね…

私は鞄を机の横に引っ掻けてしばらく教室を眺める。
ひとり、またひとりと教室に人が入って来ており、その中には見知った顔もそれなりにいた。
全体で言うと1/3位が混ざった感じなのかな?
…まぁ、元々1学年3クラスしかないんだけどね!

グリナはひとり座って、ひたすらスマホを弄っている。
多分またSNSやらインターネットやら見ているのだろう。
そんな中、私に近付いて来る男子が…



「よっ、確か橘だっけ?」

紫音
「…?」


私は訝しげな顔でその男子を見る。
少なくとも知った顔じゃないけど…相手は私の事を知っているらしい。
って、私の事は逆に有名すぎて全校生徒周知済みのはずなんだけどね!
そう思って私は軽くため息を吐いてしまった。
すると目の前の男子は?を浮かべる。
それを見た私は苦笑しながらもとりあえずこう答えた。


紫音
「えっと、どなたですかね〜?」


「おっと、そりゃそうか…俺は『柳(やなぎ)』」
「柳 長治(ちょうじ)だ」


そう名乗った男子を私はマジマジと見る。
身長は170cmちょい、体は細すぎず太すぎず、髪型は黒髪の短髪系だね。
目付きはやや悪めだけど、表情からはそんなに悪さは伝わって来ない。
少なくとも、あっちでグループ組んでる男子とは毛並みが違うみたいだね…


紫音
「…それで、私に何か?」


「いや、折角同じクラスになったんだ…話でもとな」
「あっちの琴紀とは友達なのか?」


柳君は私の前の席の机に腰掛け、そう問い掛ける。
私はとりあえず軽く頷き、グリナの方を見た。
…けど、全くこっちを見てもいない。
完全にスマホに集中してるね…指の動きが速すぎるし!



「ふーん、まぁ良いか」
「で、お前部活とかやる気あるか?」

紫音
「え? ううん、私は委員会に入ろうと思ってるし…」


「何だ、そうだったのか…PKMの身体能力には興味あったんだがな」


そう言って柳君は少し残念そうな顔をする。
そんな質問をするって事は、私を部活に誘おうとしてたって事かな?
それも、体育会系か…


紫音
「柳君は運動部なの?」


「ああ、バスケ部でな…女子の部員が少ないらしくて」


バスケ部かぁ…授業でちょっとやった事はあるけど、正直何が楽しいのか私にはまるで解らなかったな〜
ボール持ってジャンプして籠に入れるだけとか、単調すぎるし…
そもそもPKMが本気で運動部に入っちゃダメでしょ!?


紫音
「…とりあえず、PKM誘うのは止めた方が良いよ?」
「そもそも、バスケみたいな部活はPKM禁止されてなかったっけ?」


「そうだっけか?」


どうやら柳君はその辺の知識は殆ど無いみたいだ。
本当に興味本位で行動してるみたい。


紫音
「私みたいな動物モチーフのPKMは、人間とは身体能力が違いすぎるから試合とか組めないしね…」


「そんなに違うのか?」

紫音
「…少なくとも私程度の能力でもジャンプ1回でゴールは飛び越せるよ?」
「そんな高さまで跳べる人間とかいると思う?」


それを聞いた柳君は明らかに顔をしかめる。
少なくとも私達が部活をやるには、その能力を制限でもしないと無理だろうね…
そんな技術が生まれるかなんて、私には予想も付かないけど。



「…成る程、そりゃ確かに試合にならなさそうだ」

紫音
「文化部ならともかく、ね」


「しかし、それはそれで何で委員会に?」

紫音
「うん、私…看護師志望だから」
「今年から本格的に保健委員やってみようかなって…」


それを聞いた柳君は驚いた顔をする。
しかし私をバカにする訳でもなく、彼は顎に手を当ててクスリと笑っていた。
そして優しげな声色でこう呟く。



「…そうか、ちゃんと自分のやりたい事を見付けてるんだな」

担任
「よーし、全員席に着け! 今から出席を取る!!」


直後に担任の先生が現れ、柳君は驚いて立ち上がる。
そのまま教室は騒然となって慌ただしく生徒達は席に着き始めた。
担任の先生はいかにも体育会系なゴリマッチョの男性だ。
あれが、私達の担任かぁ〜


………………………



ゴリマッチョ
「えー、突然だがお前達に話しておく事がある!」
「今日は諸事情あって俺が代理の担任となったが、明日以降は新しい担任が来るからそのつもりで!!」

男子A
「あれ? じゃあ明日から別の担任?」

男子B
「そりゃ良いや! どうせなら美人の担任が良いもんな〜♪」

男子C
「言えてる! その方がモチベ上がるし!」


一部の男子は言いたい放題だ。
でも出席番号最後尾の席に座ってる柳君は涼しげな顔で外を見てた。
ああいうのにはあまり興味が無いって事かな?
グリナに至っては、早く終わってくれ…と顔に出てる!


紫音
(でも、新しい担任…ね)


少なくとも何か事情があって今日は来れなかったみたいだけど。
新任の先生って事なのかな?
一体どんな人なんだろう?

とまぁ、そんな感じで私達の始業式も終わりを告げるのだった…



………………………



ルナール
「へぇ、そっちはそんな感じなんだ」

グリナ
「そうなんですよ〜、何か慣れるまで時間かかるかも…」

紫音
「ところで海南ちゃんは?」

ルナール
「ああ、楠なら部長の挨拶あるからって…」


そっか、海南ちゃん正式に部長やるって言ってたもんね〜
そうなると、去年よりも一緒に遊べる時間は無くなるのかな?


グリナ
「ところで見ました? 新入生のPKM!」

ルナール
「ん? いや見てないけど、何かあったん?」

グリナ
「いや、何でもとんでもないポケモンが紛れてるって噂ですよ?」

紫音
「とんでもないって、そんな今更な…」

ルナール
「だね、こちとらもう禁伝準伝にも会ってんだから今更驚かないっての…」


私達が素っ気なくそう言うとグリナは甘いです!!と叫んで私達をビシィ!と指さす。
そして彼女はワザとらしく私達に耳打ちをしようと顔を近付けた。
ルナールさんもそれに合わせてわざわざ耳に手を当てて付き合ってあげている。

…そもそも私達の聴覚だと小声でも普通に聞き取れるけどね!


グリナ
「実はですね…」

ルナール
「ふむふむ?」

グリナ
「新種ですよ新・種!」

ルナール
「新種!? まさか幻のアレ!?」

グリナ
「あ、いやミュウは関係無いですけど…」

ルナール
「無いんかい! 紛らわしい!!」


ルナールさんは軽快にツッコミを入れる。
もうこの光景も慣れたものである…
って言うか、今更だけど海南ちゃんいないとテンポが悪いなぁ〜
グリナからだとどうしてもネタ寄りになっちゃうしねぇ。


紫音
「新種って、初めて見付かったポケモンって事?」

グリナ
「そうらしいです! 少なくとも既存のポケモン図鑑には登録されてないって!!」

ルナール
「って、現実に図鑑とかあったん?」
「ちなみにそれ言ったらアタシも新種扱いになるけどね!」

グリナ
「…そう言えばルナールさんも新種のクスネでしたっけ」


私はその辺詳しくないけど、確かポケモンには各々世代分けがあって今は一応8世代なんだっけ?
クスネはいわゆる8世代に分類されてて、まだ殆ど発見報告も無い状態なんだよね〜


ルナール
「まぁ良いや、そんで何てポケモンなん?」

グリナ
「えっと、何だったけ? サル…サルー?」

紫音
「猿?」

ルナール
「今更猿の新種かい!」


ルナールさんはまたもツッコム。
結局グリナは正確に思い出す事は出来なかったみたいだ。


女子A
「あ、見付けましたよボス!?」

女子B
「アレが例のパイセンっすよ!!」

ルナール
「あん? 何あの集団…見るからにアレな雰囲気醸し出してるけど」

グリナ
「あっ、アレですアレ!! アレが例の…」

紫音&ルナール&グリナ
「猿!?」

ボス
「誰が猿だコラァ!? アタシしゃ『ザルード』だよ!!」


そう叫んだ女子は特徴的な黒髪をしていた。
5人程の集団であるが、全員が同じ様な特徴を持っている。
まさか、全員が同じPKM?

とりあえず私は先頭の1番大きいボスに注目する。
目は赤く目の周りには白い模様が付いている。
髪は斜め上にピンと伸びてるのが特徴で、後頭部側はお下げの様に足元近くまで伸びていた。
他の娘達は各々特徴は同じでも髪型が違うみたいだね。

ただボスと呼ばれた彼女だけは何だか首や体に緑の何かを巻き付けている。
他の娘に比べてその数が多いみたいだね。


ルナール
「で? そのボス猿さんが何か用? 要件によっちゃこっちも出すもん出すよ?」


ルナールさんはそう言って凄みを利かせながらボスの娘を睨み付けた。
まぁ、ルナールさん元々目付き悪いからただ普通に見てるだけなんだけども…
それを見たボスの娘は舌打ちして、袖を捲る。
するとそこから腕が露出されて緑の何かを伸ばし始めた。
ルナールさんは特に驚く事も無く、鞄をクルクル縦回転で回している。
って、まさかいきなり喧嘩!?


紫音
「ちょ、それは流石にダメだって!」

ルナール
「なーに言ってんの? 正当防衛ならこっちが訴えて勝てるっしょ?」

グリナ
「いや絶対両成敗になるのがオチですって!!」

紫音
「どうせ赤井先生辺りに見付かってこってり絞られるだけだと思うけど…」

ルナール
「ああハイハイ…冗談、冗談だから」
「こんなん相手してても仕方無いし、さっさと帰る!」


ルナールさんは頭を搔きながらそう言って背を向けた。
するとボスの娘は睨みを利かせながら触手っぽいのを引っ込める。
一体何の意味があったのか知らないけど、あんまり良い事とは思えないよね…


グリナ
「ルナールさん行っちゃいますよ?」

紫音
「あ、先に行ってて…私、少し用事思い出したから」


私はそう言ってグリナを見送る。
ルナールさんは振り替える事無くそのまま帰路に着いた。
さて…それじゃあ。


紫音
「貴女達! もう少し目立たない様にしなさい!!」

ボス
「!?」


私は腰に手を当てて胸を張りそう言う。
こういうのはしっかりと言わなきゃダメだ。
じゃないと私達PKMはどんどん悪い方向に向かってしまう。
幸い彼女達は新しく入った後輩だ、まだまだ更正は間に合う。
とりあえず、話だけでもしておかないと!


ザルードA
「何なんだテメェはよ!? 先公か!?」

ザルードB
「偉そうに説教垂れてんじゃねぇ!!」

ボス
「テメェ等は黙ってろ!!」


ボスの娘はそう叫んで他の娘を黙らせる。
その声に周りが反応しだし、少なからず場はざわつき始めた。
さて…どうしようかな?


紫音
「あまり意味無く大きな声を出さない! 余計な印象を与えて自分の立場を悪くしちゃうよ?」

ボス
「うるせぇ! アタシ等にはアタシ等のルールがある!」


そう言ってボスの娘は鞄を肩に背負ってそのまま歩き始めた。
残り4人もそれに付いて行く。
その際に私を睨み付けて威嚇していた。
うーん、何だか事情がありそうな雰囲気だね…
やれやれ…2年生になってすぐにトラブルとは。


紫音
(…アレ? そう言えばあの娘達、こっちの事知ってるみたいな感じだったよね…?)


私は最初の言葉を思い出す。
彼女達、やっぱり私達に用があったんじゃ?
でもそれだと誰に…?
私は確認しようかと思ってたら既に彼女達はいなくなっていた。
いつの間に…あっという間に移動したのかな?
体格も大きかったし、肉体派のポケモンみたいだね…
仕方無い、今度会った時に聞いてみるか。

私はそう思うと帰る事にする。
どうせ同じ学校…いつでも会えるはずだしね。



………………………



ピース
「はぁ? ザルードですって?」

紫音
「うん、今日ウチの学校に入学してきてね…ピースさんなら知ってるかもって」


私は家に帰ってから着替えてオジさんの家にお邪魔していた。
相変わらずオジさんは忙しいみたいで家にはいなかったけど…


カネ
「私も聞いた事無いわね…知ってる?」

ピース
「少なくとも管理局のデータベースには載ってましたね」
「ザルード、『悪猿ポケモン』…悪・草タイプですね」
「どうも、幻のポケモンみたいでかなりレアな存在みたいですよ?」

紫音
「そうなの? 少なくとも5人組でいたけど…」

ピース
「レア度の捉え方が違いますよ、そこに5人いてもそこにしかいなかったらどうするんです?」


私は???を浮かべてしまう。
するとピースさんはあからさまに呆れた顔で首を振っていた。
カネさんはクスクス笑うものの、代わりにこう説明してくれる…


カネ
「あくまで例えばの話になっちゃうけど…全人口の中でたった5人しかいない種族が1ヵ所に集まってたら、世界的にはその町以外誰も見た事無い種族になってしまうのよ?」

紫音
「あ…そうか、だから世界的には幻って思われても仕方無いって事?」

ピース
「概ねそういうイメージで良いです」
「…とにかく、そのザルードってのには注意しておきなさい」

紫音
「…? 注意…?」


ピースさんはボリボリとお菓子をかじっている。
カネさんはやや不思議そうな顔をするも、私にこうアドバイスをくれた。


カネ
「仮にも幻のポケモンって言うなら、何か超常的な力を持っていてもおかしくない」
「下手に関わって、世界が脅かされても問題になるわ…」

ピース
「まぁ学校に入れる程度には知能があるんですから、基本テスト位はクリア出来てるでしょうけど…安全は安全でも、あくまで警戒するに越した事無いってだけです」
「どこぞの駄女神みたく、時間でも吹っ飛ばせたりしたら危険極まりないんですから…」

紫音
「う…確かにそれは怖いね」


確かにどんな能力持ってるかも解らないし、下手に刺激はしない方が良かったのかも…
明日からは少し自重しよう…


カネ
「でも、このタイミングで幻のポケモン?」

ピース
「日本での登録自体はここ最近みたいですね、アメリカからの輸入みたいです」
「どうせ手に負えなくなって、厄介払いで日本に来たんでしょ?」

カネ
「それでも、学校に入れるんだから友好的なPKMじゃないの?」

紫音
「うーん、見た感じ不良まっしぐらってイメージの態度だったけど…」


思い出してもそんなイメージしかない。
明らかに素行不良だよアレは…


カネ
「…とにかく、常に集団ならそういう習性を持ったPKMの可能性が高そうね」

ピース
「ただの部族的価値観でしょ? 所詮猿なんですし…」

紫音
「それ、本人が聞いたら絶対怒るよ?」

ピース
「ふん、こちとら最終兵器ポケモンですよ? 何なら月にでも叩き付けてやりましょうか?」


この人は本気でやりそうだから怖い…
そもそも、ピースさんに比べたらあの程度全く怖くないもんね…


カネ
「さて、そろそろ夕飯の支度しないと…紫音は食べていく?」

紫音
「あ、私はそろそろ帰るんで良いです」

ピース
「ならさっさと帰れ! 私も色々忙しいんです!」


そう言ってピースさんはしっしっ!と手を振って私を追い出した。
私は苦笑しながらも挨拶をしてそのまま家を出て行く。
後はそのまま、帰宅していつも通りだ…



………………………



そして次の日…


新担任
「Hey! 約束通り私は帰って来たわよ!?」

紫音
「あーーー!? 新しい担任って味金先生なのーーー!?」


そう、朝から私達を驚愕させたのはあの『猫乃 味金(ねこの みこん)』先生だったのだ。
去年、教育実習に来て私達に英語を教えてくれ、更に寿司をご馳走してくれたセレブ!
その味金先生が、本当に帰って来た…


グリナ
「まさか本当に帰って来るとは…」

味金
「私は言ったはずよ!? I'll be back!!(また来る)とね!!」

男子A
「あれ、去年の実習生よな?」

男子B
「マジか〜美人だけどPKM…」

男子C
「まぁゴリマッチョよりマシじゃね?」


とりあえず皆の反応はボチボチ…
味金先生の授業はとっても解りやすいし、面倒見の良い性格だからきっと大丈夫…のはず!


味金
「それじゃあ、出席取るわよ〜? 足摺(あしずり)!」

足摺
「は、はいっ!」


こうして、味金先生の帰還によって私達の学校生活は一変する事となる。
良くも悪くも人類史上初のPKM教師!
きっとこれから…退屈はしなくなるのだろう、と私は心ながらに思った。



………………………



ルナール
「うわ、って事はグラウンドに置いてあるリムジンやっぱ味金ちゃんのなん?」

グリナ
「確定ですよね…まさかリムジン止めてある学校とか噂になりますよ?」

海南
「うーん、そっちは担任も良いなぁ〜こっちにももっと可愛い成分が欲しいよ〜!!」

紫音
「あはは…海南ちゃんは相変わらずだね」


私達はいつも通り屋上で昼食を取っていた。
そして皆で各々のクラスの事を話す。
特に皆問題も無いみたいで、割と普通な感じかな?
となると、当面の問題は…


海南
「うーん、ザルードの5人組かぁ〜」

グリナ
「名字は全員同じですんで、もしかしたら五つ子とか!?」

ルナール
「それ単に保護責任者が同じってだけっしょ…」
「姉妹みたいな雰囲気はしてなかったけどねぇ〜?」

紫音
「でも、ちょっと気になるよね…何でこの学校に来たんだろ?」


私達は食事をしながらもそう話を進めていく。
少なくとも特に1年で問題がある様にも思えないし、普通に授業は受けてるみたいだけど…



「よっ、こんな所でいつも食ってるのか?」

紫音
「あれ、柳君?」

ルナール
「何? 知り合い?」

グリナ
「クラスメートの男子ですよ」


見ると柳君の手にはパンが握られており、今から昼食の様だ。
学食で買ってきたみたいだけど、わざわざここまで?



「楠も一緒だったんだな」

海南
「うん、私はいつもここだから♪」

紫音
「あれ、知り合いだったの?」


私が気になって尋ねると海南ちゃんはうん、と頷く。
すると柳君は、軽く微笑んでこう説明した。



「陸上部のエースだからな楠は…」

海南
「柳君も、今年はインターハイでしょ?」


「さて、な…それは相手次第だし、今考える必要も無い」
「それより、そっちの新入部員はどうだ?」

海南
「そこそこかな…ウチは個人戦主体だし、良くも悪くもやりたい人だけって感じだから」


そんな感じでふたりは楽しそうに部活の話で盛り上がる。
それを見ていた私達PKM3人はやや気まずい感じで食事を取っていた。
うーん、普通に考えたらこれが当たり前なんだけどね〜


ルナール
「…で、その爽やか少年は一体何の用でここまで?」


「ん? 単に飯を食いに来た…それだけだが?」

グリナ
「でも、それなら男子同士で普通食べません?」
「ギャルゲーじゃないんですから、現実的にこんなシチュ有り得ませんって!」

海南
「あはは…グリナちゃん厳しいね」


流石にルナールさんとグリナは警戒気味みたいだね。
今までずっと4人で食べてたし、いきなり増えるとそれはそれで違和感があるのも事実だし。
…ましてや、男子が混ざるとなると。



「…もしかして、あまり歓迎されてない?」

海南
「そんな事はないけど…少し唐突だったかもね」


そう言って海南ちゃんはパンを頬張る。
柳君も立ちながらパンをかじっていた。
ルナールさん達もとりあえず文句は言わずに食べ進めた。
だけど、微妙に会話が…


紫音
「それより、ザルードの事だよ…何か私達に用があったんじゃないのかな?」

ルナール
「うーん、だけどこっちには何の事か解らないし」

グリナ
「少なくとも、お友達になりたい様には見えませんでしたしねぇ〜」


「何、何の事?」

海南
「今年の新入生なんだけど、その中にザルードってPKMがいて…」


「もしかして、5人組の?」

グリナ
「知っているのか柳!?」


「ああ…何でも近くの神社に住んでるらしく、常に5人組で行動してるみたいだけど」


グリナのネタに対して至って真面目に答える柳君…
どうやら彼にそっちの才能は無いらしく、グリナは少し不満そうだった。
ルナールさんは肩を竦めている…諦めろって事らしい。


紫音
「常にって、クラスまで同じなの?」


「そうらしい、何でもそういうルールで入学するのが条件だったとか」

ルナール
「ふーん、やっぱ徒党を組むのが基本スタイルって事か」

グリナ
「でも、よっぽどの理由じゃないとおかしくないですか?」
「態度からしてアレですし、すぐに問題起こす気しかしませんよ?」


「案外そうでもないらしい…俺の後輩に知り合いがいるんだが、そいつの話だと授業自体は普通に受けてるそうだ」
「まぁ、誰も近付こうとはしてないみたいだけどな…」


典型的な不良かと思えば、案外普通なの?
ピースさんも最低限の基本はクリアしてるはずって言ってたから、つまりはそういう事?
うーん、つまりあの態度は素であって悪意があるわけじゃないのかな?
自分達には自分達のルールがあるって言ってたし、そういう事なのかも。



「ただ、他のPKM新入生に比べると異質なのは確からしい」
「他のPKM新入生は、皆大人しく友好的らしいからな…」

海南
「いわゆる、紫音ちゃん達みたいなタイプだよね〜♪」

ルナール
「いやアタシも含めんなし、アタシこれでも結構尖ってる方だって自負してるかんね?」

グリナ
「まぁ見た目の近付き難さはルナールさんもどっこいですからね…」

紫音
「…うーん、やっぱり気になるなぁ」


私はお弁当を平らげてお茶を飲む。
そして風も強く、天気も曇っている空を見て少し憂鬱になってしまった。


海南
「キャッ! 今日は風強いね〜」

ルナール
「何か雨振りそうな感じだし、早めに切り上げよ!」

グリナ
「退散退散!!」


「やれやれ、慌ただしいな」


柳君も思ったより馴染んでいるみたいだった。
ルナールさん達も気が付いたら受け入れてるみたいだし、違和感があったのも最初だけだったみたいだね。
とりあえず柳君は特に悪いイメージも無いし、海南ちゃんの友達なら大丈夫だろう。



………………………


味金
「よしっ、これで今日はお仕舞い!」
「皆、寄り道は程ほどにして帰りなさいよ〜?」

男子A
「ギャハハ! 先生、それマジで言ってる?」

男子B
「先生なのに寄り道推奨とか?」

男子C
「それじゃ程ほどに寄り道して帰りまーす!」

味金
「ん! あんまし他人に迷惑はかけない様に!!」

3人組
「シャーッス!」


そんな感じで味金先生は皆に大人気だった。
実習生の時も終わる頃には皆に惜しまれてたし、やっぱり味金先生は凄いなぁ〜


グリナ
「紫音さん、帰りましょ?」

紫音
「あ、ゴメンちょっと味金先生に用あるから…先に帰ってても良いよ?」


私はそう言ってグリナとは別行動を取る。
とりあえず味金先生の側に行って私はこう尋ねる事にした。


紫音
「あの、味金先生!」

味金
「おっ、迷える子羊よ先生に何でも相談したまえ!?」


そう言って味金先生は楽しそうに両手を広げて私を促した。
私は苦笑しながらも話を続ける。


紫音
「あの、保健委員の事について聞きたいんですけど…」

味金
「ふむ、早速夢に向けて勉強か! 結構結構!!」
「ん〜でも、今年の保健委員はやけに立候補多くてね…」
「2年は良いんだけど1年からがかなり立候補多くて、最悪2、3年の定員減らしてやろうか?って話になってるのよ」

紫音
「え、そんなになんですか?」

味金
「そっ、しかも1年ってPKMが複数立候補してるから、後学の為にも優先的にさせてあげたいってのが教師陣の考えな訳」


PKMが複数立候補かぁ…私と同じ様な考えのPKMがそんなにいるとか?
それとも興味本位なんだろうか?
どっちにしても、PKM優先って考えなのは驚きだ。


味金
「一応、聞いておくけどやる気はあるのよね?」

紫音
「はい、そのつもりで来ましたから!」

味金
「ん、よろしい! なら私の方から話はしておくから、明日必要書類を書く準備だけしておきなさい!」

紫音
「はいっ、どうもありがとうございます!」


私はペコリと頭を下げてそう礼を言った。
すると味金先生は面倒そうな顔をし、そんなの良いから!と手を振って教室から出て行く。
私は苦笑しながらも、鞄をしっかり持ってそのまま帰る事にした。



………………………



紫音
「…寄り道、かぁ」


思えばあまりひとりで寄り道とかした事無いし、逆にこういう状況は新鮮かもしれない。
たまには息抜きに、商店街の方に寄ってみようかな?
家で食べるお菓子とか探しても良いかもしれないし♪

私はそう思うとそのまま商店街方面に足を向ける。
そして今日は何を買おうか?と楽しく想像しながら早足で歩いて行った。



………………………



紫音
「あれ? あれってまさか…!」


私は商店街を歩いていて、とんでもない光景を目にする。
何とあのザルード5人組と最終兵器暴君が相対していたのだ!


ボス
「テメェ、この落とし前はどうつけてくれるんだ!?」

ピース
「はぁ? このビーフコロッケは私が予約してたんですよ!!」
「当然あげませんよ!?」


私は思わずズッコケそうになる。
どうやらコロッケを巡っての争いらしく、途端に緊張感が無くなった。
周りの人たちもクスクス笑ってるし、ある意味慣れてるのかもしれない…
暴君だし、こういうトラブルはもう何度目かも解らないのだろう…


ボス
「ヤロウ…テメェのせいで『モモ』の分のコロッケが無くなっちまったじゃねぇか!?」

ピース
「知りませんよ、私より先に予約してない方が悪いんです」


そう言って暴君はこれ見よがしにコロッケを美味しそうな音をたてて頬張る。
うわ…酷い、流石暴君!


モモ
「ボ、ボス…ウチの分はもう良いんで」

ザルードA
「何言ってんだモモ!? 楽しみにしてたんだろ!?」

ザルードB
「『トト』の言う通りだ! アイツのせいで売り切れちまったんだぞコラァ!?」

ボス
「そういうこった…家族(ファミリー)の楽しみ奪われて黙ってられるかぁ!!」

ピース
「ならどうします? 宇宙旅行したいなら手伝ってあげても良いですよ!?」


そう言って暴君は空いた手にエネルギーを集中させる。
あ、コレ絶対ヤバイ奴だ…
私は流石に止める事にした。


紫音
「こらーーー!! 警察呼ぶわよ暴君!?」

ピース
「うぐっ!? いつから国家権力の犬になったんですか泥棒猫!?」


私がそう言って割り込むと、暴君はあからさまに狼狽える。
そしてチッ!と露骨に舌打ちして暴君はそのまま逃げてしまった。
やれやれ…逃げ足も速いんだから!

私はため息を吐きながら、改めてザルード達を見る。
すると、鬼気迫る表情でボスの娘はこちらを睨んでいた。


ボス
「テメェ、よくも邪魔を…」

紫音
「はいそこ! こんな所で騒がない!!」
「気持ちは解るけど、こういう時はちゃんと我慢しなきゃダメ!!」
「貴女達が問題起こしたら、家族にも学校にも迷惑かかるんだよ!?」


私がそう言うと、ボスの娘は少しだけ怯む。
この娘はちゃんと理解してる、決して無鉄砲に暴れようとしてるんじゃない。
だけど、家族の事になったらきっと黙ってられないタイプなんだ。
それだけ、後ろの4人が大切なんだね…


ボス
「…だが、このままじゃモモが!」

紫音
「なら家に来なさい!! コロッケ位、ご馳走するから!!」


こうして、私は思いきって彼女達を家に向かえる事にした。
…もっとも、作るのは私じゃないんだけどね!!



………………………



お婆ちゃん
「はい、お待ちどう様…コロッケですよ〜♪」

モモ
「おおお…! で、出来立てですよボス!?」
「これ、本当にウチが食べても良いんですか!?」

ボス
「当たり前だ…お前の為のコロッケだからな」


当のモモちゃんは、控えめな感じながらもボスの娘に促されてコロッケを手に取る。
するとあまりの熱さに手を離してしまった。
それを見てお婆ちゃんはすぐに冷たい手拭いを出してモモちゃんの指を冷やしてあげる。
私はそれを見てとりあえずフォークを取り出してあげた。


紫音
「はい、これ使って」

お婆ちゃん
「ごめんなさいね、気が利かなくて…もしかしてお箸は使えなかったの?」

ボス
「すまない、先に言うべきだった…モモはまだ、日本の食器に慣れてなくて」

モモ
「うう、どうもです」


モモちゃんは目が隠れる位に伸びた前髪の裏から涙目を浮かべながらも、フォークをしっかりつかんでコロッケを刺す。
そしてビクビクしながらもゆっくり口に運び、かじり付く。
するとあまりの美味しさにモモちゃんは口を大きく開けて感動してしまった…


モモ
「お、美味しすぎます! これ、商店街のコロッケよりも美味しいです!!」

ボス
「そうか、良かったな…」

お婆ちゃん
「うふふ、そう言って貰えて嬉しいわ♪ さぁ、皆さんの分もありますから、遠慮せずにどうぞ…」


そう言ってお婆ちゃんは皆の分のお皿とフォークを取り出した。
そしてザルード5人組は皆、お婆ちゃんのコロッケの虜になったのである。
その後、私達は改めて話をし、彼女達とちゃんと自己紹介をするのだった…



………………………



紫音
「そう、それで『カカ』ちゃんは皆のボスとして…」

カカ
「そうだ、ザルードは常に家族で行動する」
「そしてその家族を纏めるボスが家族を支えなきゃならないんだ」
「ゼゼ、トト、ノノ、モモの4人はアタシが率いる家族の一員だ」
「年は皆同じでも、アタシはボスとして皆を守らなきゃならない」


やや言動も気性も荒いのが、ゼゼちゃんとトトちゃん。
逆に無口であまり前に出ないノノちゃんと、内気なモモちゃんか…
良くも悪くも個性は強いね…新キャラに皆食われなきゃ良いけど!

ちなみに、体格は皆そこまで変わらなくボスのカカちゃんを除いてそこまで差は無いみたいだ。
髪型は一応皆違っており、ゼゼちゃんはおかっぱ頭のショートヘアー、トトちゃんは肩まで伸びるセミロング、ノノちゃんはロングヘアーでモモちゃんは前髪だけ長いショートヘアーだね。


紫音
「ところで、私達に何か用があったんだよね?」

カカ
「…ああ、お前達は先輩のPKMだからな」
「相手が先輩とはいえ、ボスのアタシが舐められるわけにはいかない」

紫音
「それで、あんな態度だったんだね…そりゃルナールさんもイラッとするよ」
「でも、一応ここは日本なんだから学校では年功序列をちゃんと守った方が良いよ?」
「きっとその方が、社会に出た時もプラスになるから…」

カカ
「…アンタはモモの恩人だ、だからアンタの言葉は受け入れる」
「今日はすまなかった、借りはその内返す」
「行くぞ! 野郎共!!」

ゼゼ&トト
「ッシャア!!」
ノノ
「……!」
モモ
「ヤー…!」


5人は勢い良く家を出て行く。
とりあえず…和解は出来たんだよね?


お婆ちゃん
「うふふ、紫音もすっかり先輩ね♪」

紫音
「お婆ちゃん…私、しっかり出来てるかな?」

お婆ちゃん
「ええ、勿論…だって私の自慢の娘ですもの♪」


そう言ってお婆ちゃんは私の頭を優しく撫でてくれる。
私は思わず泣きそうになるけれど、我慢して目を拭った。
こんなPKMの私を娘と言ってくれる、そんなお婆ちゃんの為にも…私は絶対に間違った事だけはしない。

そして、夢を叶えて…お婆ちゃんを助けてあげるんだから!





………こうして、私達の新たな1年は始まりを向かえた。
新たに入学したPKM、新たな友人、そして先生。
これから私達がどんな彩りを向かえるか、また見守っててください♪










『突ポ娘異伝録 春夏秋冬 〜四人娘の学園生活〜』



第13話 『2年生開始、新たなる出逢い』


…To be continued

Yuki ( 2022/04/30(土) 16:58 )