1年生編
第12話 『1年生、最後の月』
紫音
「…もう、1年かぁ」


私は自室でまったりと机に向かっていた。
今は既に春休み中であり、私は自室で勉強している。
あれから成績は平均点以上を取れているものの、まだまだ先は長い…
2年生になって、また授業の難易度も上がるのだから、私はちゃんとそれに付いていかないとならないのだ。


紫音
「うーん! 少し休憩するか〜」


私は椅子の背もたれにもたれ掛かって伸びをする。
ここの所勉強ばっかりだったから、運動不足かもしれない。
たまには外に出て、気分を変えないとね…


………………………



お婆ちゃん
「あら、出掛けるの?」

紫音
「うん、たまには気分転換♪」


私がやや疲れた顔でそう言うと、お婆ちゃんは優しく笑ってくれる。
何だかんだで、お婆ちゃんには苦労かけさせてる気がするなぁ…
出来る限り、負担は減らせる様にしたいけど…


紫音
(私って、どうにも要領が悪いからなぁ〜)


そもそも、私にはコレといった特技が無いのだ。
…いや、まぁあるにはあるんだけど、青少年には刺激が強すぎるだろうし!

しかし考えてもみれば、普通誰でもひとつは取り柄が有るものだ

海南ちゃんなら運動は出来るし、ルナールさんは頭が良い。
グリナはマニアックな知識が豊富だし、暴君とかならそれこそ何でも出来る大天才だ。
私って…誰かに自慢出来る様な特技って、何も無いよね…



………………………



紫音
「………」


気が付けば、何となくオジさんの住んでる団地に辿り着いた。
この時間だったら仕事してるかもだし、流石に暴君位しかいないかな?


紫音
「…って、行ってどうするんだっての」
「気分転換が目的なのに、これじゃ意味無いでしょ…」


私はため息を吐いて団地から背を向ける。
何だかバカみたいだ…もう、甘えてばかりはいられないのに。
私は、高校生活の間オジさんをあまり優先しないと心に決めていた。
オジさんとは卒業しても交流は出来る。
でも、海南ちゃん達との交流は今だけかもしれない。

今は少しでも…思い出を作らないと、ね。
私はそこで思い直し、改めてポケットからスマホを取り出した。
そして登録してある番号にダイアルし、相手を呼び出す。


海南
『もしもし〜紫音ちゃん?』

紫音
「…海南ちゃん、今時間ある?」

海南
『え〜っと、ちょっと今は…』
『…あ〜! ダメだよグリュちゃん!! それは……』


何やら電話の向こうでドタバタしたやり取りが聞こえる。
そういえば、海南ちゃんの家にもPKMが来たって話だったわね…
もしかして、小さい子供のPKMとかなんだろうか?
ちょっと興味はあるけど、プライベートな問題に突っ込むのはダメだよね…


海南
『あ、ゴメ〜ン紫音ちゃん! 何かなぁ?』

紫音
「…ううん、大丈夫」
「また、今度にするよ…またね♪」


私はなるべく笑顔でそう言い、そのまま通話を切った。
海南ちゃんは海南ちゃんで大変そうだもんね…
私は改めて電話帳のリストを見てみる…すると、改めて気付く。


紫音
(…登録してる番号、少ないよね〜)


元々グループで行動してるのもあるけど、他のクラスメート達とはそんなに交流無かったもんね…
少なくとも連絡先交換する様な仲はまず無いし。
それ以外はオジさん関係の番号位だし、後はお婆ちゃんか…


紫音
「…ルナールさんは春休み中ずっとバイトやるって行ってたし、グリナは旅行行くって言ってたんだよね〜」
「…アレ? 詰んでね?」


良くも悪くも、私は春休みで勉強しかしてない。
自業自得とも言えるけど、いざ外に出て遊ぶ仲間がいないのはどうなのか?
これじゃホントに気分転換にならないよ…


紫音
「かと言って暴君に電話する勇気は無い!」


一応登録はしてるんだけど、かけた事って1度も無いんだよね…
何か怖い予感しかしないし、メリットがあるかも解らない。
ただでさえポリゴンZなんていう電脳戦士だし、どこから情報が漏洩するかも解らないもんね!

…まぁ私のスマホにそんな重要な情報は眠ってないんだけど!
どっちにしても、私はそこまでフリーダムな主人公じゃないし、そんなギャグめいた危ない橋をわざわざ渡るタイプでもない。
読者に期待されてるかもだけど、私は絶対に無いから!!


紫音
「…ふぅ、怖い怖い」
「とりあえずスマホは仕舞って、別の事考えよう…」


私はテクテク…とひとりで歩きだす。
このまま宛の無い旅をしてても仕方無いし、とりあえず駅前にでも行こう。
もしかしたら何か新たな出会いとかあるかもだし!
…うん、無いよね多分。

私は何となくそんな確信を覚えながらも、駅前へと向かった…



………………………



紫音
「…相変わらず人が多いなぁ〜」


まだ昼前とはいえ、道は大渋滞。
ここは都心って訳じゃないんだけど、それでも人は多いよね〜
私も、もう何度もこの辺には来てるから大丈夫だけど、それでもこの人だかりはあまり慣れそうになかった…


紫音
(さて、どうしようかな?)


私はとりあえず昼食が取れる場所を探した。
本当は家に帰っても良かったんだけど、折角だしたまにはひとりでゆったりと外食しても良いだろう。
気分転換なんだし…ね♪

しかし、そんな私の軽いウキウキ気分とは裏腹にそれは訪れる。
私は微かに聞こえる『声』をピンと立てた耳で聞き取り、表情を強張らせた。
そして声の方を向いて状況を確認する。
近くにはいない…声の距離からして、路地裏の方?
私は人混みを上手に避けてその方向へ真っ直ぐ向かった。



………………………



高いビルに遮られ、真っ昼間だというのに薄暗い路地裏…
その先には微かな声ですすり泣く小さな子供の姿があった。
私はすぐにその子の元に走り、状況を確認する。
まず眼に入ったのは、その子の怪我だ。
ズボンの膝辺りが裂けており、出血が見られる。
子供の顔は軽く青ざめており、鳴き声も小さい。
多分、出血が多すぎて貧血になってるんだ!
私はすぐにポケットからハンカチを取り出し、その子の膝より少し上の太股を強く縛った。

こうする事で出血は押さえられるはず!
後はすぐに病院に連れていかないと!!
私は無我夢中で子供を背負い、一気に路地裏から飛び出した。
そして人混みの中を駆け抜け、1番近い病院へと向かう。
背中から聞こえる弱々しい吐息は、私の心臓をバクバクと追い詰める様にも感じてしまっていた…



………………………



紫音
「…はぁっ! はぁっ! ……はぁ」


病院に辿り着くと同時、私はその場でへたり込んでしまっていた。
幸い子供の命には別状なく、軽い治療で助かる様だ。
そして次第に意識はクリアになり、改めて消毒液の臭いがする病院の中をグルリと見渡した。

回りには怪我をした人や病気の人達がいて、私を注目してる。
私は途端に気恥ずかしくなり、猫の様にバッ!と跳び上がってそのまま外に逃げ出した。
うう…何か気まずい!



………………………



紫音
「…はぁ、ダメだなぁ私」
「せめてもっと堂々としないと、看護師になるなら!」


私はそう思ってグッとガッツポーズを取る。
そして途端に力が抜けてダラ〜としてしまった。
うう…体に血の臭いが付いてるし、これじゃあ昼食所じゃないよ〜

もう今日は帰ろ……
と、そんな項垂れる私の前に、何やら黒いスーツに身を包んだ何者達かが私を囲んでいた。
私はギョッとなるも、目の前にいる一際雰囲気の違う男性が私の前に立つ。
そして、彼は一言だけ私に小さくこう言った…



「…感謝する、息子を助けてくれて」


私がその言葉に反応する前に、気が付けばその集団は跡形も無く消えていた。
私は狐につままれた様な気分になり、キョロキョロと周りを見るも何も痕跡は無い。
あんな目立つ黒服達だったのに、誰も気に留めてなかったの!?

それとも…幻覚?


紫音
(でも…あの人、息子って言ってた)


だとしたら、多分あの子の親なのだろう。
見た感じ女の子みたいな顔してたけど、男の子っぽい服だったね…
でも、考えてみたら何であんな所で泣いてたんだろうか?
少なくとも友達と一緒にいた様にも思えない。
あんな路地裏で、あんな怪我して、どうしてひとりでいたの?

考えれば考える程、引っ掛かる部分が多かった。
でも…それを今考えても仕方無い気はする。
少なくともあの子は助かった、それに感謝された。
今は、それで良い…よね?


紫音
「………」


私は何となく、スマホを手に取って電話をかけた。
そしてその通話に反応した相手はまず開口一番…


ピース
『何の用ですか泥棒猫? 生憎こっちは暇じゃないんですよ?』

紫音
「…この街で、黒スーツの集団っているの?」

ピース
『……?』


私の唐突な質問に対し、ピースさんは訝しんだ様だった。
ただ、その質問がただならぬ事と思ったのか、ピースさんはらしからぬ位に真剣な声でこう答える…


ピース
『…紫音、世の中には関わらない方が良い事はいくらでもあるんですよ?』

紫音
「うん…知ってる、でも関わっちゃったみたいだから」

ピース
『…なら、その事は忘れるんですね』
『何なら良いヤブ医者紹介しましょうか? 記憶位軽く消してくれますよ?』

紫音
「良い…ゴメン、ありがと…」


私はそれだけ言って通話を切る。
少なくとも、裏の関係なのは明白…か。
だったら、忘れよう。
私はあくまで表の存在なんだから、裏の世界にもう関わっちゃいけない。
じゃないと、オジさんに苦労をかけちゃうから…



………………………



紫音
「ただいま〜」

お婆ちゃん
「あら、早かったのね? まぁどうしたの? 服に血が付いてるじゃない!」

紫音
「あ、うん怪我した子を背負って走ったから…その時に」

お婆ちゃん
「そうだったの…うんうん、紫音は偉いわね〜♪」
「なら今からお風呂を沸かしますね…少し待ってて」


そう言ってお婆ちゃんは浴場へと向かう。
私は1度自室に戻り、着替えを用意する事にした。
その後、居間にて私は少し寛ぐ…



………………………



お婆ちゃん
「はい、温かいミルクよ♪」

紫音
「うん、ありがとうお婆ちゃん♪」


私はミルクの温かさを両手で感じ、少し息を吐く。
猫舌な私に合わせて、いつもお婆ちゃんはぬるめの温度にしてくれるのだ。
私はその気遣いにいつも感謝している。
適度な温度のミルクを私は少しづつ飲み、顔を綻ばせるのだった…


お婆ちゃん
「紫音、何か辛い事があるなら正直に言いなさい」

紫音
「え? どうして、急に…?」


お婆ちゃんは唐突に真剣な顔でそう言ったのだ。
今までこんな顔を見せた事は殆ど無く、私は驚いていた。
それとも、そんな顔をする程…私は変な顔をしていたのだろうか?


紫音
「…別に、大丈夫だよ? 確かに辛いと言えば辛いかもしれないけど…」
「でも、自分で決めた道だから…絶対に叶えてみせるもん!」


私が力強くそう言うと、お婆ちゃんは少し息を吐いて笑ってくれた。
少しだけ、悲しそうな顔をしたけど…
少なくとも私は嘘なんて言っていない。
だから…大丈夫、だよね?


お婆ちゃん
「そう、貴女がそう言うなら私は信じます」
「でも、ひとりで悩まないで必ず誰かに相談する事!」
「それだけは、約束して?」

紫音
「うん、約束する!」


私が笑顔でそう言うと、お婆ちゃんは私に小指を立てる。
そして?を浮かべる私にお婆ちゃんはこう説明した。


お婆ちゃん
「…お互いの小指を絡めて、約束するのよ」
「ゆ〜び〜き〜り〜げ〜ん〜ま〜ん♪ うっそつ〜いた〜らは〜りせ〜んぼ〜んの〜ます♪」
「ゆ〜びきった! ってね♪」


そう言って、お婆ちゃんは絡めた指を離す。
どうやら古い伝えの儀式みたいな物らしく、今時の子は多分知らないんだそうだ。
お婆ちゃんが若い頃は、こうやって約束を交わした子も多かったらしい。

私は、何となく笑ってしまう。
こんな形式だけの約束に、一体どんな制約があるのだろうか?
でも、人間はそうやって何かを紡ぎ、繋いで来たのだと私は思う。
自分の小指を見て、私はそこに見えない何かが繋がれているのだと感じた。

誰にも見えないし感じない…でも私とお婆ちゃんにはきっと解る。
この儀式は、それだけの為だけにきっとあるのだろうから…



………………………



紫音
「…はぁ、やっぱり看護師って難しいんだろうなぁ〜」


あんな一件だけで私は大慌てだった。
それに比べて、本物のプロは冷静だったなぁ〜
まるで私がひとりで慌ててるだけみたいで、本当に恥ずかしかった。
やっぱり、本物の看護師は凄いんだ!
私もいつか…なってみせるんだから!

改めてそう決意を固め、私は夜も勉強をする。
学校の勉強だけじゃなく、これからは看護の勉強も増やしていこう。
今日みたいな事件がまた無いとも限らないし、素人は素人なりに対処法を学んでおかないと!
ひとりでも、救える誰かがいるなら、私はそれに手を差し伸べられる様になりたい。

私は、誰かを救う為にその道を目指すんだから!



………………………



紫音
「え、花見?」

海南
『うん! ルナールさんやグリナちゃん集めて一緒にやらない?』


それは、3月も終わろうかという時期の誘いだった。
花見とは人間社会における祭りみたいな物で、いわゆる『桜』という花を見ながらどんちゃん騒ぎをする遊び…で良いのかな!?
まぁとにかく! 海南ちゃんはその集まりをやりたい…と電話で伝えてきたのだ。


紫音
「私は良いけど、ルナールさん達は来てくれるの?」

海南
『うん! ルナールさんはシフト合わせてくれるって!』
『グリナちゃんももう旅行から帰ってきてるし、多分大丈夫だよ♪』


多分、ね…まぁルナールさんは自分から言ったなら来てくれると思うけど。
グリナは…言わなくても来そうな雰囲気はあるね。
でも花見かぁ〜どんな感じになるんだろ?
オジさんに1度聞いてみた方が良いかなぁ?


紫音
「とりあえず、解ったよ…じゃあ月末だね?」

海南
『うん! じゃあ当日に〜♪』


海南ちゃんは嬉そうに言って通話を切った。
私はその後、オジさんに電話をかけてみる…が、オジさんは忙しいのか電話には出なかった。


紫音
「ありゃ? しょうがない、ここは無駄と解ってても暴君に…」

ピース
『何です?』

紫音
「花見って、どんなんなの?」

ピース
『そんなもん裸になって腹踊りしてりゃ笑い取れますよ』


私は無言で通話を切る。
聞いた私がアホだった!
やっぱり役に立たないねあの暴君は!!
私は仕方無くスマホのネットで検索する事にした。
っていうか、今時この方が早いよね!?


紫音
「うーん、とりあえずお酒はアウトとして基本的には桜を見ながら楽しめばオッケーかぁ」


そもそも私達が楽しめるのかは疑問だけどね…
まぁ海南ちゃん的には友達同士で集まれるならそれで良いんだろうけど。
ルナールさん辺りはどんな気持ちで来るんだろうか?
…その辺は全く予想が付かない。
もうこの辺はその時次第かな!?
とまぁ、そんな感じで私は気楽な気持ちで花見に挑むのだった…



………………………



紫音
「へぇ〜桜ってこんなに咲いてる物なんだ〜」

ルナール
「何気にこんなガッツリ見る機会って貴重よな…ガッコだとそこまで意識的に見ないし」

グリナ
「これぞ日本の風物詩! 花見は無礼講!!」

ルナール
「はいはい、グリナはテンション下げる…こんなモン、本来は大人が酒飲んでワイワイやるだけの祭りだから」

紫音
「ルナールさん!? 現実的な事情を突き付けないで!?」


私達は海南ちゃんが用意したであろう、大きな公園の『場所』に集まり海南ちゃんを待っていた。
しかしその当人はまだ来ておらず、私達はとりあえずその場で立ち尽くすしかないという…


ルナール
「…で、呼び出した本人はまだなわけ?」

グリナ
「珍しいですよね〜、海南さんだったら真っ先に来てそうな物なのに…」


グリナのツッコミは最もだ。
こういうイベントにおいて、海南ちゃんはまず真っ先に行動するはず。
なのに今回に限って海南ちゃんが遅れるという…
ルナールさんもそれが解ってたからか、疑問には思いつつも特に追求はしなかった。

やがて、待つ事数分…ようやく海南ちゃんは私達の前に姿を表すのだった。
…知らない誰かを連れて。


紫音
「あれ…海南ちゃん、その娘一体…」

海南
「いやぁ〜! 時間かかっちゃってゴメン! 皆待ってた?」

ルナール
「いや、それは良いけどさ…その後ろにいる明らかな人外誰なのさ? PKMで良いんだよね?」

グリナ
「でも、何か物々しいっていうか…ただ者じゃなさそうな雰囲気ですよ!?」


私達がまず注目したのは、海南ちゃんが連れて来たPKMだった…
その姿はかなり異質であり、赤い長髪に猫背の姿…
身体には所々異様な模様が走っており、ぼんやりと明滅していた。
服はややボーイッシュな感じであり、黒のタンクトップに藍色の長ズボンだね。
少なくとも普通のPKMとは思えないけど…?


海南
「あ、あはは…今まで色々あって、皆には紹介出来なかったんだけど」
「今日こそはと思って、連れて来たの!」
「はい! この娘が私の家族のひとり!! グリュちゃんだよ〜♪」

グリュ
「……」

グリナ
「うわ、物凄くウザそうな顔してますよ!?」

ルナール
「ちょい待ち、とりあえず何ポケモン? 特徴的にその辺のパンピーポケとは思えないんだけど?」
「まさか、伝説のポケモンとかじゃないん?」


ルナールさんがそう疑問を投げ掛けると、海南ちゃんは明らかに顔を引きつらせる。
肝心のグリュちゃんはウザそうな顔をするだけであり、およそ仲良くしようという気は感じられなかった。
その際、口元からは鋭い牙が見えており、私は相当気性が荒いPKMなのだと想像する。


紫音
「えっと…グリュちゃんで良いのかな?」

グリュ
「…? ……!!」


グリュちゃんは私に顔を覗き込まれ、顔を背けてしまう。
私はそんなグリュちゃんを見て何となく察する。
そして、それ以上は何も言わずにとりあえずこう言った。


紫音
「とりあえず始めない? 今日はこのメンバーだけなんでしょ?」

海南
「あ…うん! ビニールシート持ってきたから、それ敷こう!」


私は海南ちゃんと一緒にビニールシートを足元に敷く。
ちゃんと5人が余裕を持って座れるサイズであり、やや強風に打たれながらも私達は手早く準備を済ませた。

そして海南ちゃんは大きめの箱を鞄から取り出し、そこからサンドイッチ等を私達に見せる。
それを見てまずグリナが驚いた。


グリナ
「これ、まさか海南さんが作ったんですか!?」

海南
「まっさか〜! ちょっと知り合いに貰って…」

ルナール
「貰ったって、コレかなり本格的な奴じゃね?」
「…うん、味も文句無し!」


ルナールさんは早速サンドイッチをひとつ手に取って食べていた。
味は問題無い様で、ルナールさんも絶賛している。
海南ちゃんは空笑いするだけであり、何とも気になる反応ではあったけど…
私はグリュちゃんを見て、その挙動をチェックする。
彼女は一心にサンドイッチを見ており、早く食べたい様だ。
私はそれを感じ取り、視線の先にあるツナサンドを手に取ってグリュちゃんに差し出してあげた。


紫音
「はい、これが食べたいのかな?」

グリュ
「!? !!」


グリュちゃんは一瞬驚くものの、差し出された私の手からツナサンドをぶん取って野獣の様に食べる。
ワイルドと言えば聞こえは良いけど、これはそういうレベルじゃないよね?


ルナール
「…まるで野生の獣だね」

グリナ
「人化して間もないポケモンなのかもしれませんよ?」
「…まぁ私達自身、いつから人化したとか記憶に無いんですけど!」


確かにグリュちゃんの挙動はまるで野生の獣そのもの。
多分、これこそ海南ちゃんが私達に紹介出来なかった理由なんだろう。
このPKMは…あまりに人に慣れてなさすぎる。
でも、あえてこの日に連れて来たって事は…?


海南
「…あはは、グリュちゃんお腹空いてたんだね〜」

紫音
「それより、どうしてここに連れて来たの?」
「この娘、明らかに検査をクリアしてないんじゃない?」

ルナール
「…成る程ね、もしかして違法PKM?」
「本来人里に委ねられるPKMは、訓練された中で基準値以上の評価を出せなきゃ預けられないのが法律だからね〜」

グリナ
「えっ!? でも、そんなPKMをそもそも引き取るなんて無理じゃないです?」
「管理局の眼を盗んでそんな事出来るとは思えないんですけど…」


私の一言から一気に皆の疑問が噴出する。
それを受けて海南ちゃんは大きく項垂れ、空笑いすら出ない様だった。
あの明るい海南ちゃんからは想像出来ない程、深刻な姿だったのだ。
流石の私も、そんな海南ちゃんを見て心配にしかならない。
だからこそ、私はあえてこう言った…


紫音
「…海南ちゃん、この娘本当にどうしたの?」

海南
「…紫音ちゃんは、神様って信じる?」


私は思わず?を浮かべてしまう。
でも海南ちゃんの言う神様という言葉に、私は思わず色々想像してしまった。
この世界には、様々なポケモンがいる。
それこそ、神と言われる様なポケモンだって…


紫音
「…海南ちゃん、ハッキリ言って」
「この娘、ううんこのポケモンは…何なの?」

海南
「…グラードン、って言うらしいんだけど」


海南ちゃんが躊躇いがちにそう言うと、サンドイッチを頬張ってたルナールさんが突然吹き出す。
隣にいたグリナはそれに怯んでいたけど、構わずにルナールさんはこうツッコンだ。


ルナール
「けほっ! グ、グラードンって、アホか!?」
「そんな禁伝ポケ、何処で拾ったのよ!?」
「いやつーか落ちてるの!? 落ちてたの!?」

グリナ
「ど、どうどう…ルナールさん!」


ルナールさんのツッコミを受けて海南ちゃんは苦笑する。
グリナはルナールさんを何とか宥めている内に、海南ちゃんは静かに語り始めた…

その内容はかなり衝撃的な物であり、正月に起こった出来事。
そして意外にもその話に1番反応していたのはグリナだった…



………………………



グリナ
「え〜!? それじゃあ琉女さんやトキさん達の知り合いだったんですか〜?」

ルナール
「…むしろ何でグリナまで知り合いなのさ」
「世界狭すぎじゃね?」

紫音
「私もオジさんやトキさんから色々聞いてはいたけど、やっぱりそうだったんだね…」
「そっか…グリュちゃん、って言うかグリュさん!」

グリュ
「……」


肝心のグリュさん本人は一心不乱にサンドイッチを平らげていた。
それでもまだ足りないのか、更に下の段にある箱の中身も物色している…
どうやら5段重ねらしく、全てに豪華な料理が詰め込まれている様だった。


紫音
「グリュさん、海南ちゃんと一緒に住んでてどうですか?」

グリュ
「…んが?」


グリュさんはソーセージを口に咥えながらそう反応する。
そして鋭い牙でそれを噛み千切り、ムシャムシャと咀嚼してしまった。
その後、サッパリした顔でこう答える。


グリュ
「とりあえず飯は食わしてくれるし、不便はしてない」

紫音
「…そ、それだけ?」


グリュさんはそれ以上何も言わず、手掴みで料理を取る。
それを見て呆れながらもルナールさんがため息混じりにこう告げた。


ルナール
「ハイハイ待ち!! アンタ人間社会に馴染む気なら基本の作法位はマスターしな!」

グリュ
「むぐっ!? 何すんだ!!」


ルナールさんはグリュさんの手を掴んでまず綺麗におしぼりで拭く。
グリュさんの手はかなりガッシリしており、爪も相当大きくて鋭い。
そんな狂暴そうなグリュさんに怯む事なく、ルナールさんは優しくグリュさんの手を拭いてフォークを握らせた。


ルナール
「手掴みなんて行儀悪いっしょ!? ちゃんとフォークがあるんだから使う! 日本人なら常識だかんね?」

グリュ
「…チッ、メンドクセェ」

ルナール
「あん? 何か言った?」

グリュ
「……な、何も」

グリナ
「…おお、ルナールさんのガチメンチであの禁伝が怯んだ!」


ルナールさんは優しくも厳しくグリュさんを躾る。
良くも悪くもルナールさんは根が優しいし、間違った事は基本してないからね〜
でも、ここまで怖い眼をしたルナールさんは初めて見るよ…


海南
「あ、はは…ゴメンねルナールさん、私のせいで」

ルナール
「そうな、全面的にアンタが甘い!!」
「こういうのは付け上がらせたら舐められるっての!」
「禁伝だからって何? 家ん中じゃ後から来た奴が序列低いんだから!!」

グリナ
「そ、それはそれで極端過ぎません!?」

紫音
「ルナールさんらしい考え方だけどね…でも、グリュさんのこれからを考えたら、ね?」

グリュ
「……」


グリュさんはフォークを何とか使いながら料理を食べる。
海南ちゃんはちゃんとお皿も用意し、それをグリュさんに持たせた。
うん、ちゃんと物は使えてるし大丈夫そう。
3ヶ月近くは一緒に生活してたんだし、基本的な事は学んでいると思うんだけど…
それでもまだまだ危うそうな所は多い…かな?

とまぁそんな感じで…私達は何とか5人で楽しく花見を続けるのであった…♪



………………………



紫音
「へぇ、それじゃあトキさんはグリュさんの後輩になるんですか?」

グリュ
「…まぁ、アイツは下から2番目だからな」

グリナ
「逆にゼロさんって、もっと上の立場なんですね〜」

海南
「むしろ琉女ちゃんが上から2番目っていうのも驚きだよね〜」
「全然そんな風に見えない位可愛いのに!」


私達は食事を終えるとそんな談義に夢中だった。
私は何となくは知っていた事だけど、序列とかそういう細かい所は聞いてなかったからある意味新鮮だ。


グリュ
「…アイツはアイツで色々怖いんだよ」

ルナール
「ん? 琉女さんの事?」
「そりゃまぁ…仮にも上の立場でルナアーラなんだし、ねぇ?」


とは言うものの、ルナールさんはぼんやりとイメージして失敗したのか、顔を押さえて唸ってしまっていた。
うん…あの琉女さんからそんな怖いイメージしないもんね!


グリュ
「基本、序列はそのまま強さのレベルに相当する」
「勿論相性とかで差は出るが、そう言うのが絡まなかったら大体上には勝てねぇんだよ…」

ルナール
「レベルを上げて物理で殴るしか出来んしね、基本グラードンだと…」
「素早さも負けてるし、ルナアーラは特殊がメインだから確実に1発耐えられて上から2発撃たれりゃそりゃアボンよな〜」

グリナ
「現実的な考察ですね!? しかもあくまで同レベルっていう前提で!!」

紫音
「そのレベルも年上の琉女さんが上だって言うんだから、勝てないのも無理は無い…かぁ〜」


何だか気が付いたら話題がそっちに変わっていた。
いや美猫会議じゃないんだからそっちの話題はね!?
私そこまで詳しく説明出来ないし!


ルナール
「でもさ、結局アンタは海南と一緒にいて何したいわけ?」
「バカにされたから見返したいって理由にしろ、何かもっとあんでしょ? 目的とか、そういうの…」

グリュ
「…俺は秘宝を探してるんだ」

グリナ
「来たぞ来たぞ〜!!」


グリナのボケに対してルナールさんが無言で脳天にチョップを放つ。
おお、ルナールさんにしては珍しい…!
つまり、それだけグリュさんにとっては意味がある物なのだろうか?


海南
「よく解らないんだけど、とにかくそういう何かを探してるんだって…」
「それでコーラの瓶の蓋とかを何故かコレクションしてて…」

ルナール
「アンタはアニポケのコジロウか!!」

グリナ
「しかもその設定、当分忘れ去られてますよね…?」

グリュ
「…良いじゃねぇか、何か綺麗だし!」


そう言ってグリュさんは小さなポーチを開けて沢山の蓋…いわゆる『王冠』のコレクションを私達に見せてくれた。
皆はそれを見て感嘆の声をあげており、これまでに色んな物を集めているのを理解する。
そしてグリュさんの顔はとても楽しそうだった…


ルナール
「でも、ガチなコレクターならちゃんとしたケースとかに入れた方が良くね?」
「このままだと擦れたりして、その内傷とか付いちゃうよ?」

グリュ
「そ、そうなのか!? ケースって、どうしたら良いんだ?」

海南
「あ、それなら今度買ってあげるよ〜♪ やっぱりちゃんとした趣味だし、しっかり保存しておきたいもんね!」


とりあえず王冠コレクションについてはそれで一段落…
さて、問題の秘宝とかについてだけど…


紫音
「秘宝、かぁ…」


この際、解りそうな人に聞いてみよう。
というわけで私は徐にスマホを取り出して暴君を呼び出した。


ピース
『何です泥棒猫? 今度は何を…』

紫音
「秘宝って何か解る?」

ピース
『77個集めろってパッケージにも書いてありますがありゃ嘘ですよ!?』
『って! 舐めてんですか!?』


うわ、ノリツッコミされた…自分からボケたのに!
って言うか、基本秘宝って言われたらそういう反応なんだ…


紫音
「えっとね、グラードンが探してるっていう秘宝らしいんだけど…」

ピース
『はぁ? グラードンですってぇ?』
『…だったら、紅色の珠とかじゃないんですか?』

紫音
「…紅色の、珠?」

ピース
『グラードンにとって重要アイテムとかそれしかないでしょうが…じゃあ切りますよ!?』


そう言って一方的に切られてしまった。
でも流石は暴君! しっかりと重要なキーワードは残してくれた。
どっかの役に立たないヒントしかくれない機能とは一線を画すね!!


海南
「紫音ちゃん、どうかしたの?」

紫音
「あ、うん…何か『紅色の珠』っていうのがグラードンにとって重要なアイテムだって」

ルナール
「何、ゲンシカイキでもしたいわけ? 下手にやったら干ばつ起こすから止めときなって…」

グリナ
「しかも装備してたら自動発動の代物ですしね!!」

グリュ
「…紅色の、たま」


グリュさんはそれを聞いて何か考えている様だった。
正直、私はこの時あまり気にしてなかったのがマズかったのかもしれない。
後に起こる事を考えたら、私はこの時相当迂闊な事を言ってしまったのだと、未来で後悔する事になるのだから……



………………………



海南
「でも、これで私達も2年生かぁ〜」

ルナール
「まぁ長かったような短かったような?」

グリナ
「私達は2学期から入りましたしね! お陰で進級テストギリギリでしたし…!」

海南
「ふふ、けど皆揃って進級出来て良かったよね〜♪」


そう、明日からもう4月…そして春休みが終われば遂に2年生だ。
私達もクラス替えがあるから、また一緒になれるとは限らないけど…
…まぁ、実際には3クラスしかないから確率3分の1なんだけどね!!


紫音
「…2年生か、また授業難しくなるのかぁ―」

ルナール
「紫音は結構頑張ってるっしょ? 1年じゃ良い成績だし、基本出来てりゃ余裕余裕…」
「つか、看護学校受かる位ならそこまで学力いらないし、むしろちゃんと看護の勉強した方が良くね?」

紫音
「一応少しやり始めてる…でも、やっぱり実際にやるのと想定するのじゃ全然違うし」

ルナール
「まぁ、そりゃそうか…なら、保健委員とかやってみたら?」
「その方が実際に怪我とか見たりするから参考になるっしょ?」


私はそれを聞いて思わず呆気に取られてしまう。
むしろ、私は何で今まで気付かなかったのか?という位の衝撃を受けていた。
多分今の私の顔は劇画風になっている位の濃い顔をしているだろう…


海南
「冷静に考えたら、確かに何でやってなかったんだろうね…」

グリナ
「まぁ紫音さん勉強家ってイメージだから、そっちの方に意識向けられなかったんじゃ?」

ルナール
「2学期の時点じゃ平均点スレスレだったし、余裕無いのは確かか…」

紫音
「でも、うん…そうだね! 私、2年生からは保健委員やってみたい!」

グリュ
「…何だその保健、委員…って?」

海南
「怪我した人とか、病気の人を助けてあげる委員会の事だよ?」


説明はされるものの、グリュさんは首を傾げて?を浮かべていた。
とりあえず、納得はしたのかそれ以上はツッコマなかったけど…


ルナール
「まっ、まずは立候補してみるこったね…他にやりたい生徒がいたら多数決になるだろうし、そん時は自分で何とかしなよ?」

紫音
「そ、そっか…他にやりたい人いたら、どっちかしかなれないもんね」


私達の学校は、基本的に1クラスで1委員ひとりだけだ。
つまり、私の入るであろうクラスで保健委員になれるのはひとりだけ…
もし他にやりたい人が立候補した場合、クラスの中で多数決が取られる。
いわゆる、選挙制だ。
この場合、アピールの方法とかも考えておかないもいけないのかもしれない…


グリナ
「でも、わざわざ自分から立候補する人ってあまりいなくないですか?」
「ぶっちゃけ保健委員って他よりも忙しい感じですし、人気はあまり無さそうな感じですけど…」

ルナール
「まぁ確かにね、そん時ゃ橘がひとり勝ちだし別に良いんじゃね?」
「忙しいからって橘が諦めるでもなし…」

紫音
「うんっ! 私は絶対やり遂げるよ!?」

海南
「紫音ちゃん流石〜♪」


私はガッツポーズを取ってアピールする。
…とはいえ、実際の保健委員が何してるかよく知らないんだけどね!
何かアンケートとかやってるのは見た事あるけど…


ルナール
「そういや楠は部活どうすんの? 部長になるって話あるんでしょ?」

海南
「あ…それは断ろうかと思ってるの」

グリナ
「え、何でです?」

海南
「うん、グリュちゃんの事もあるし流石に部長の活動までは手が回らないかなって…」
「無理にやって、両方に迷惑かけたら本末転倒だし」

紫音
「そう、だね…確かにどっち付かずになったら最悪だし」

グリュ
「…ふん、俺の事なら気にすんな」
「ちゃんと家の事はやるし、お前がいない間は俺が守ってやる」


私達の会話を聞いてか、グリュさんが気丈にそう言う。
実際にはかなり難しいだろうに、それでもやると言うのか…
そしてそれを聞いた海南ちゃんはあまりに感激してしまい、とてつもない速度でグリュさんに抱き付いた。


海南
「あーーーん! グリュちゃん健気ーーー!!」
「だったら私頑張るよ!? もうグリュちゃんの為に部長でも何でもやっちゃう!!」

グリュ
「ふぐっ…! 良いから抱き付くなーー!!」

ルナール
「御愁傷様…禁伝でもアレには耐えれないのか」

グリナ
「むしろ気絶しないだけマシですよ! アレ本当に痛いですからね!?」


横から見てるふたりはあまりの光景に青ざめていた…
う、うん…気持ちは、解るよ?
私も1学期の時は食らいまくってたからね…でもあの時はまだそこまででもなかったのになぁ〜

まさか…この1年でそこまでパワーアップを果たしたの!?


紫音
「…えっと、グリナは特にやりたい事とかないの?」

グリナ
「そうですね〜部活とかそういうのは興味無いですし、ネットで会話してる方がもう慣れてしまいましたから!」

ルナール
「何だでアンタはそういうの強いもんね〜」


確かにグリナはアレからどんどん知識を得て、パソコン関係の事とかに詳しくなっていた。
基本的にネット関係で活動してる事も多く、私じゃ全く解らない用語をいくつも知ってる。
この調子だと、そういう方面の仕事も視野に入るのかな?


ルナール
「琴紀、将来的にはソッチ系の仕事とかしたいわけ?」

グリナ
「えっ? どうですかね〜? まだそこまで考えてはいないですけど…」
「でもまぁ、趣味が仕事になるんならそれが1番ですけどね!」


グリナはあくまで楽天的だった。
まぁまだ後2年もあるし、考える時間はあるよね…
そういう意味でも私達はまだまだ3分の1を消化したばかりだ…
残り2年間…私達はどうなるかな?


グリナ
「って、そういうルナールさんは何か目標とか無いんですか?」
「あまりルナールさんって自分の事語らないから、スルーされてますけど…」

ルナール
「おっとと藪蛇…まぁ今はまだ未定かな」


ルナールさんは可愛くベロを出してそう誤魔化す。
とはいえ、特に嘘は言ってない様にも感じる。
ルナールさんは口や態度は悪くても、根は善人だ。
最初は結構刺々しかったけど、今ではもうすっかり友達。
何だかんだで面倒見も良いし、何気にこの中じゃ1番大人な考え方してるんだよね〜
しかも成績は優秀だし、その気になれば一流大学とかも行って一流企業に就職したりも出来る才女…

…って、考えてもみたらルナールさんってスペック凄いよね!?


紫音
「…ルナールさん、あれだけ成績良いなら何処にでも就職出来るんじゃない?」

ルナール
「まぁ、成績だけならね…でもまぁ、結局PKMじゃん?」
「将来どうなるか知らんけど、アタシがPKMっていう事実は変わらないし変えられない」
「結局…最後にモノを言うのは地力ってね」

グリナ
「そっか…そう、ですよね」
「私達はどうあってもPKM…人間とは、違うから」


それは、私達3人にとってとても大きな壁とも言えた。
きっとそれは私達の想像を越えた壁であり、どうにもならない物なんだろう。
それでも私はそんな壁を前にして、きっとこう答える。


紫音
「…今はそうでも、きっと私達が変えていけるよ」

グリナ
「…え? 何を、です?」

紫音
「PKMは、怖い生き物じゃないんだよって…皆と一緒に笑い合える、仲間なんだよ♪って…」


私はそう言ってふたりに笑いかけた。
そんな私を見てか、ふたりはクスクスと笑ってしまう。
私も釣られて笑い始めた。
気が付くと、海南ちゃんもこちらに気付いて笑い始める。
グリュさんだけは?を浮かべていたけど、私達の屈託ない笑顔を見て別に悪い気はしていない様だった。

そんな風に、桜舞い散る中私達は何処か幸せな雰囲気に包まれていた…
この時、私は確信する。
きっとPKMの未来は明るい…私達PKMは、例えどんな災厄に見舞われようと、必ず人間と共に歩むのだと。










『突ポ娘異伝録 春夏秋冬 〜四人娘の学園生活〜』



第12話 『1年生、最後の月』


…To be continued

Yuki ( 2022/03/10(木) 13:03 )