1年生編
第11話 『2月…バレンタイン、そして』
ルナール
「は? チョコ?」

海南
「そうだよ〜♪ だって今日は2月14日だもん!」


そんな事を言って、ルナールさんのみならず私にもチョコを渡す海南ちゃん。
ルナールさんは完全に呆れた顔をしており、綺麗な包装で包まれた板チョコを無言で机の上に置いた。


紫音
「…こういうのって、女の子同士で渡し合う物なの?」

ルナール
「知らね…アタシPKMだし」
「そもそもそこまで人間の風習とか、知ってるわけでもないしねぇ〜」


ルナールさんはそう言うものの、私からすれば十分解ってる方だと思う。
とはいえ、今回の件に関しては流石のルナールさんも初体験だったのかもしれない。
私は、もう苦笑するしかなかった…


海南
「紫音ちゃんは、例によってあのオジ様に?」

紫音
「あ、うん…そうだね〜」
「…例によって市販品だけど」

ルナール
「お、何? まさか本命? 橘やるじゃん♪」


そう言って面白そうにニヤつき、ルナールさんは肘で私の腕を突付く。
私は苦笑するしか出来なかった…
まぁ、別に隠す必要も無いからね〜


紫音
「海南ちゃんのコレもお店で買ったんだよね?」

海南
「そりゃあねぇ〜自分で作る技術無いし…」

ルナール
「世も末よな…今時のJKはチョコも自作出来ないとか」

紫音
「ルナールさんは作れるの?」

ルナール
「そりゃ…まぁチョコ位余裕っしょ?」


私と海南ちゃんはふたりしておお〜!と唸る。
ルナールさんはむしろ何で出来ないの?って顔してるけど…


海南
「うーん、例え作り方解ってても私は多分作らないかなぁ〜」

紫音
「そう? 私だったら手作りであげたいと思うけど…」

ルナール
「なら教えたげよっか? 放課後で良いなら」


私はそれを聞いて耳をピンと立てる。
そして勢い良く頷き、意欲を見せた、
じゃあ折角という事で、海南ちゃんも付き合うみたいだ。

…こうして、私達はルナールさんからチョコ作りを教わる為に頑張るのだった。



………………………



ルナール
「…で、具体的にどんなチョコ作りたいの?」

紫音
「え?」

海南
「え?」

グリナ
「…え?」

ルナール
「………」

4人
「え?」


しばしの沈黙。
私達は放課後4人で集まり、スーパーの製菓コーナーで立ち尽くしてしまっていた。
やがてルナールさんがポカーンとしたまま、軽く息を吐いてこう言う。


ルナール
「…もしかして、なーんも知らん訳?」

グリナ
「私は知ってます! 甘さが違うんですよね?」

紫音
「ああ…カカオの量とかそういうの?」

海南
「だったら私は甘い方が良いかなぁ〜?」

ルナール
「ああ、待ち待ち! それもあるけど、そもそもチョコの種類とか有るっしょ?」
「ミルクとかホワイトとか、スイートとか…」

3人
「……?」


私達は3人とも?を浮かべてルナールさんをガン見する。
さしものルナールさんもこれには呆れ果てた様だ。


ルナール
「悲しいねぇ…今時のJKは」

グリナ
「ルナールさんも今時のJKですけどね!?」

ルナール
「まぁ良いや…それならそれでリクエストあんの?」
「それに合わせて材料買わなきゃならんし、出来れば具体的にヨロ」


こうして私達は皆で相談し、それぞれ作りたいチョコを決めるのであった…
そしてそれに合わせた材料を買い、私達は一路私の家に…



………………………



ルナール
「…意外にしっかり容器とかはあるのな」

紫音
「うん…お婆ちゃん以前に料理教室とかやってたみたいだから、その名残で一式揃えてあったんだって」


この家は完全に和風建築なんだけど、キッチンとかは意外にもしっかり現代風。
お婆ちゃんが料理好きなのもあり、必要な器材は全部揃っているのだ。
ルナールさんはとりあえずそれを確認しながら、テキパキと容器を準備していく。


ルナール
「とりあえず橘のからいく? 板チョコで良いんだっけ?」

紫音
「うん、ビターチョコで♪」


ルナールさんはそれを確認して適当な型枠を用意した。
一般的なサイズの型であり、そこに材料を流し込んで固めればOKとの事だ。
しかしながらその前にやらなければならない工程があるとの事…


ルナール
「じゃあまずはテンパリングな、ビター系のチョコを適当に砕いてみ?」

紫音
「えっと…こんな、感じ?」


私はビニール袋に入れたチョコを手で砕き割っていく。
ルナールさんの指示の元、私はそれを細かく砕いていった。
その間にルナールさんは湯煎を用意し、ボウルを温めてくれている。


ルナール
「なら、これに入れて…ほんで温度計で40℃位までいったらかき混ぜて、今度は逆に冷ましてくから」

紫音
「う、うん!」


私は溶けていくチョコを凝視しながら温度計も見る。
やがて適正温度になった所でボウルを湯煎から離し、チョコを丁寧に混ぜていった。


ルナール
「そのまま温度計も見な、27℃前後位まで冷ましたらもっかい温めるから」

紫音
「け、結構細かいんだね…!」

ルナール
「慣れりゃ簡単…こんなのは小学生でも出来るし」


そんな感じで私は何とかチョコを混ぜ合わせ、出来上がったのを型枠に流し込んだ。
そしてルナールさんの指示に従い、私は型枠をトントンと叩いて空気を抜いていく。
次第にチョコは平らになり、綺麗に型へと収まっていった…


ルナール
「ハイ終わり、後は冷凍庫で固めな…多分30分位で出来ると思うから」

紫音
「あ、これで完成なんだ…」


本当に簡単に出来てしまった…
確かに、テンパリングの工程さえ覚えてしまえばこんなにもすぐ出来るんだね〜
私はウキウキしながらもチョコを冷凍庫に入れるのだった…


ルナール
「じゃあ次…どっちがやる?」

グリナ
「じゃあ私で! シンプルにチョコクッキー!」


今度はグリナがルナールさんに教わってクッキーを作っていた。
これもそんなに時間はかからず、グリナは危なげなく仕上げてオーブンにクッキーを持って行く。
後は焼き上がるのを待つだけらしい。


ルナール
「ならラスト…楠のは」

海南
「チョッコケーキ!」

ルナール
「…流石に0からだと時間かかるし素人にいきなりはキツいから、スポンジにデコるだけにしような〜」


そう言ってルナールさんは完成済みのスポンジを小さく切り分ける。
後は海南ちゃんに指示を出し、クリームやらソースやらでケーキを作らせていた。
海南ちゃん的には、アレでも楽しいらしい。



………………………



紫音
「完成ーー!!」

グリナ
「こっちも良い感じです!」

海南
「やったね! 皆で手作り♪」

ルナール
「そういや、橘はともかく楠達は誰に渡すん?」


そういえば聞いてなかったね…
グリナは放課後に当たり前の様に付いて来てたけど。
海南ちゃんは折角だから…って言ってたよね?


グリナ
「私は家族に!」

海南
「私もそうだよ♪」

ルナール
「ふーん、まぁアンタ等に浮いた話があるとは思ってなかったけどね…」

紫音
「…ルナールさんは、そういうの興味無さそうだよね」


私がそう言うと、ルナールさんは若干顔を引きつらせた。
まぁ、図星って感じだよね…でもその割には料理スキルも高いし、ルナールさんって女子力凄いんだよね〜


グリナ
「ルナールさんって、頭も良いし料理も出来るし、ゲームも上手いしで、何気に完璧超人ですよね…」

海南
「確かに! 運動神経もPKMらしく抜群だし、どっかのギャルゲーのラスボスに匹敵する位じゃない?」

ルナール
「いや流石にあんなのと一緒にすんなし…」
「アタシは、無難にやる事やってるだけだから」
「ぜ〜んぶ自分の為…将来ひとりで生きていける様に、さ」


そう語ったルナールさんの顔は、少しだけ虚しそうだった。
でも私にはそれを追求する事は出来ない。
したら…もうルナールさんはいなくなってしまう気がしたから。


紫音
「そ、それじゃあ今日は解散しよっか?」
「私もすぐにチョコ持って行きたいし!」

海南
「そうだね〜じゃあ今日はありがとルナールさ〜ん♪」

グリナ
「御教授助かりました♪ この恩は何処かで返しますんで!」

ルナール
「ああハイハイ…別にこん位大した事じゃないから」


こうして私達は解散する。
それぞれ皆帰路に着き、私だけはひとり別の場所に走っていた。
気が付けば、もうすっかり気温も上がってきてる気がする。
厚着で走ってたら、体がポカポカだ…



………………………



ピース
「まーた来やがりましたか泥棒猫! 今日は絶対来ると思ってましたよ!!」

紫音
「あはは…オジさんは?」

ピース
「…今日は仕事でいません、残念でしたね!」


仕事…かぁ。
それなら、仕方無い。
私は空笑いしながらも、バッグから包装した板チョコをピースさんに差し出す。
ピースさんはそれを見て、苦い顔をした。


ピース
「まさか毒入りですか? ひっそりここで暗殺しとこうと!?」

紫音
「そんな訳無いでしょ!? オジさんに渡しといて!!」


私が勢い良くツッコムとピースさんは露骨に舌打ちする。
そしてチョコを受け取ってそれを凝視していた。


ピース
「…ふん、じゃあ預かっといてやりますよ!」

紫音
「うん…お願い!」


私はそれだけ伝えてその場を離れた。
直接渡せなかったのは残念だけど、仕事中なら仕方無い。
きっと今も、オジさんは誰かの為に戦っているのだろうから…



………………………



紫音
「…あれ? 今のって」


私は帰り道の途中、見知った姿を確認した。
明らかに場違いな姿をしており、間違いなくPKM。
確かあのPKMって…


紫音
「あの…」

PKM
「…? お前は、誰だ?」


どうやら覚えていないらしい。
まぁ、そうだよね…こうやって話しかけたのは初めてだし。
私は苦笑しながらも特徴的な両腕を持つ黒いPKMにこう話しかけた。
確か彼女は…『イベルタル』というポケモン。
そして彼女がいるという事は、多分あの人も…?


紫音
「私、橘 紫音って言います」
「貴女は…ルザミィさんのパートナーですよね?」

イベルタル
「…ルザミィの知り合いか? 何処かで会っていたのか?」

紫音
「前にオジさんを連れて来てくれましたよね? ルザミィさんと一緒に…」


私がそう説明すると、彼女はやや無言で思い出そうとしている様だった。
そしてしばらく無言で私を見つめ、ああ…と呟く。
そんなに印象無かったか〜…初詣でも見かけてたんだけどなぁ〜


イベルタル
「あの時のチョロネコか…いたな、確かに」

紫音
「…よっぽど興味無かったんですね」


私は苦笑するも、彼女は全く意に介さず真っ直ぐ私を見る。
やがて彼女は軽く息を吐き、私に対して突然こんな質問をした。


イベルタル
「…お前、何処で何があった?」

紫音
「…?」


彼女は意味の解らない質問をする。
何処で何があった?って言われても…


イベルタル
「お前の色は、何故そんなにも白い?」

紫音
「色…? 白い?」


私はこの時点で少し察する。
多分彼女は、私の中にある何かを見ているんだと…
イベルタルは伝説のポケモンであり、かつての神。
少なくとも私には到底理解出来ない様な能力を持っているのだろうから。


紫音
「色の事は解りませんけど、私の事だったらルザミィさんに聞けば多分解ると思いますよ?」

イベルタル
「…そうか、なら良い」
「それで…何か用なのか?」

紫音
「おっとっと…忘れる所だった」
「あの、ルザミィさん…今日本にいるんですか?」


私が笑顔でそう尋ねると、彼女はやや俯く。
そして少し考えた後、静かにこう答えた…


イベルタル
「アイツはいない…この国にはな」

紫音
「そう…ですか」


私は少し残念がる。
もし来てるなら、色々話したかったのに…
オジさんも、もうしばらく会ってないらしいしね〜


イベルタル
「…お前は、ルザミィの秘密を知っているのか?」

紫音
「秘密…? 裏の仕事の事、とか?」


私は少し真剣な顔をしてそう答えるものの、彼女の求める答えでは無かったらしい。
彼女はやや息を吐き、別の方を向いてこう呟く。


イベルタル
「…もうあまり関わるな、アイツはお前と住んでいる世界が違う」

紫音
「…はい、でも」
「これだけ、伝えてもらえますか? ルザミィさんに…ありがとう、って…」

イベルタル
「……了解した、伝えておこう」


そう答えた彼女は一瞬でその場から飛び去る。
そのスピードは尋常でなく、数秒後には影すら残さず消えていた。
住んでる世界…かぁ。
彼女も、そんな世界に住んでるんだよね。
そして、オジさんも……


紫音
(本当は、解ってる…私じゃオジさんの支えにはなれない事位)


それでも、好きだという気持ちだけは本物だ。
例えそれが、叶わぬ恋でも…



「へーい彼女〜! こんな日に失恋でもしたのかい?」


私は袖で顔を拭いて声の方を向く。
するとそこにはサングラスをかけた黒服の女性が堂々と立っていた。
確か、この人…オジさんの知り合い。


御影
「お姉さんで良ければ、相談に乗ってあげるわよ?」

紫音
「御影さん、でしたっけ? オジさんの知り合いの…」

御影
「そう、ね…どのオジさんかは把握しかねるけど」


おっととと…そりゃそうだ!
いくら何でもそれじゃあ伝わるわけ無い…
私は気を取り直して、こう尋ねた。


紫音
「石蕗 大護さんの、知り合いなんですよね?」

御影
「一応ね…もっとも接点なんて殆ど無いけど」


そう言って御影さんは肩を竦めておどけてみせた。
この人も、オジさんの仕事の事を知っているんだろうか?
もしかして、私…見張られてたりしてるんじゃ?
下手したら重要参考人とか?
うわ、こりゃ下手な事は言わない様にしないと!


御影
「…OK、そんなに警戒しないで」
「お姉さんは貴女の味方だから…」

紫音
「……」


私は警戒しつつも近付こうとはしなかった。
確かに悪そうな感じはしないけど、何処か信用も出来ない。


御影
「参ったわね、これでもPKMを保護するのが仕事なんだけど…」

紫音
「保護…?」

御影
「そっ、行き場の無いPKMを助けるお仕事…」
「だから信用してくれない? 橘 紫音さん?」



………………………



御影
「そっか〜若いわね…まぁ、あんな男相手なら仕方無いけど!」

紫音
「御影さんは、オジさんの事どう思ってるんですか?」


私達は公園のベンチでホットコーヒーを飲みながら話していた。
御影さんはたまたま近くをパトロールしてただけらしく、イベルタルの姿を見付けて警戒していたとの事…
そこへたまたま私がいた…と。


御影
「うーん、彼はねぇ…良くも悪くも遠い所にいる人かな?」

紫音
「…別に、会いに行くだけなら簡単じゃ?」

御影
「そうじゃないのよ…立場的にね」
「私は、彼の敵になっちゃうから」


そう言って御影さんは缶コーヒーを飲む。
私は何となく察した。
そりゃオジさんの仕事は…そうだもんね。


御影
「でもまぁ、良くあんな男を好きになったわね〜」

紫音
「…オジさんがいなかったら、私はきっとここにはいないだろうから」
「誰も助けてくれなかった私を救ってくれたのは、オジさんだったから…」


私はあの時の事を思い出す。
お婆ちゃんの為にヘルスやってお金稼いで、それでもどうにもならなくて…
たまたま見かけて話しかけた人が、オジさんだった…
オジさんは見ず知らずの私にお金を渡し、そしてお婆ちゃんを助けてくれた。
あの時の恩は…未だに返せずにいる。
ううん、多分きっと…一生返せない。


御影
「…そう、彼は貴女にとってヒーローなのね」

紫音
「うん…凄く近くにいるのに、手が絶対届かない所にいるヒーロー…」


私は夜空を見つめてオジさんの事を想う。
それでもきっとこの恋が叶う事はない。
私はそれでも…


御影
「さっ、送ってあげるから家に帰りましょう!」
「学校もあるんでしょ? 体壊したら大変だから!」


そう言って御影さんは私の手を引く。
私は頷き、御影さんと一緒に家へ向かう事にした…



………………………



御影
「それじゃあ、何かあったらいつでも連絡して♪」

紫音
「はい、ありがとうございました…」


私はペコリと頭を下げて礼を言う。
すると御影さんはニコニコしながら手を振り、そのままひとりで去って行った。
PKMの保護かぁ…何気に凄い仕事だよね。
私も、看護師になる為もっと頑張らないと!
3学期の期末テストは、もっと成績上がる様に勉強しないとね!

私はそうやって自分を奮い立て、改めて家の中に入る。
また心機一転! 明日から勉強だ!



………………………



アセリナ
「これは…グリナが作ったの?」

グリナ
「そう! 友達から教わったんだよ?」

お爺ちゃん
「ほう! こりゃ美味いの! グリナの手作りとは、こりゃ幸せもんじゃて!!」



私達は家族で楽しくクッキーを食べていた。
やっぱり作って良かった♪ こんなにも幸せな気持ちになれるんだから…



………………………



海南
「ハイあ〜ん♪」

グリュ
「…あ〜」


私はグリュちゃんにケーキを食べさせてあげていた。
グリュちゃんもそんなにケーキは嫌いじゃなかったのか、味に文句は無いみたいだ。


海南
「まだまだ日本語も勉強しないといけないし、食べたらまたガンバロ♪」

グリュ
「むぐ…」


グリュちゃんは顔をしかめつつも勉強は受け入れていた。
あれからもう1ヶ月経つけど、まだまだグリュちゃんの言葉使いは拙い。
最初は箸の使い方も解ってなかったし、もうとにかく毎日が大変だ!
幸い、言う事はしっかり聞いてくれるし私が学校に行ってる間も家でしっかり待っててくれてる。
基本的な生活の仕方も解ってきてるし、きっとこれからも大丈夫だよね♪


海南
「…グリュちゃん、何かしたい事とかあったら言ってね?」
「折角一緒に住んでるんだから、私達もう家族だもん♪」

グリュ
「……家族」
「家族、なら…何で、ここには、お前と俺、しか、いない、んだ?」


私はそう言われて、少し固まってしまった。
でも、すぐに笑顔のまま私は笑う。
そしてグリュちゃんに向かって私はこう答えた。


海南
「…大丈夫、だよ」
「グリュちゃんの事は、絶対に守るから」
「家族だから……私の」

グリュ
「……?」



………………………



在校生徒一同
「♪〜〜♪♪〜〜〜♪」


あれから更に時は過ぎ、2月も終わろうという頃…
私達は卒業式で歌を歌っていた。
そう…今日は卒業式。
現3年生は学校を卒業し、それぞれの道へと巣立って行く。
私達は在校生として、そんな卒業生を見送るのだ…



………………………



紫音
「卒業、かぁ…」

ルナール
「まぁアタシ等は2年後の話だし?」

海南
「でも、もうあれから1年かぁ…本当にあっという間」

グリナ
「4月からは私達も2年生ですもんね! クラスとかどうなるんだろ?」


私達は卒業式を終えて4人で集まっていた。
周りは多くの学生達で溢れており、場はてんやわんやだ。
別れを悲しむ者、旅立ちを喜ぶ者、皆思い思いだね…


海南
「あ、ゴメン! 私陸上部の方に顔出さなきゃだから!」

ルナール
「あっそ…んじゃまたね〜」

グリナ
「さよなら〜」

紫音
「またね〜」


海南ちゃんは私達に見送られ、陸上部の方へと走って行く。
海南ちゃん、何だで陸上部のエース候補らしいから来年も忙しいんだろうなぁ…


ルナール
「…楠って、次期部長候補っしょ? 何気に凄くね?」

グリナ
「そうだったんですか? 確かに運動神経良いですもんね〜」

紫音
「確か、前の大会でも高校記録出しかけたとか言ってたもんね〜」


思えば、私達は海南ちゃんとずっと顔を合わせていたものの、彼女の事を多くは知らない。
海南ちゃんは家の事を語ろうとはしないし、いつもニコニコしてるし、遊ぶ時はトコトンまで遊ぶ性格だ。
部活も真面目にやってるし、悪い噂も聞かないし、何なら結果もしっかり出してる優等生…
そんな海南ちゃんは、ひとりでいる時一体何を考えていたりするんだろうか?


ルナール
「…割かし、楠って人気者よな?」

紫音
「そうだね〜、元々人懐っこいし基本的には人畜無害だから」

グリナ
「…可愛い物好きの悪癖さえなければ、ですけど!」


グリナは苦笑いしていた…多分1番の被害者だからね。
海南ちゃんは良くも悪くも、自分が可愛いと認めた物には常に真っ直ぐだ。
それも何があろうとも決して曲がろうとしない真っ直ぐさ。
ある意味海南ちゃんの信念でもあり、執念でもあるんだよね〜


ルナール
「…ん〜でも不思議なんよね」

グリナ
「何がです?」

ルナール
「楠って、アタシ等以外と遊んでるとこ見た事ある?」

紫音
「無い……かな?」


これまで1年近く私は海南ちゃんと過ごしてきたけど…
確かに、覚えが無い。
部活の時以外はほぼ私と一緒だし、休日も大抵そう。
海南ちゃんが他の人と遊んでるのは…確かに見た事が無い。


ルナール
「あんだけ人懐っこい楠が、何でアタシ等だけに執着するんかね?」

紫音
「…でも、別に不思議じゃなくない?」
「他の女子だって、割と固定グループでいたりするし…」

グリナ
「そうですね、別に海南さんが不思議という風には…」

ルナール
「…ん〜、単にPKM好きってのもあるんかもだけど」
「楠の性格なら、もっと多くの友人作ってそうなイメージあるんよな〜」


ルナールさんのそのイメージは確かに納得だった。
海南ちゃんの性格なら、きっとどんどん友達を増やしていくだろう。
そして誰とでも仲良くなって、ワイワイするのが大好きなはず…
でも、結果は……?


紫音
「…海南ちゃん、私達と一緒で何も言われないのかな?」

ルナール
「…さぁね、少なくともこの1年でアタシ等への風当たりはマシになったと思うけど?」

グリナ
「今は各所でもPKMの活躍が報道されてる時代ですしね〜」
「もうPKMの高校生!ってだけじゃ特に目立ちもしなくなりそうですし…」


あくまで、私の偏見なのかもしれない。
確かにクラスメートは私達に良くしてくれてるし、それは先生達も同様。
海南ちゃんも、あの性格だから特に周りから何か言われる事も無いのかな…?
どっちにしても、4月からは2年生になって新しいクラスかぁ〜


紫音
「もしバラバラのクラスになっても、私達は一緒だよね?」

ルナール
「…まっ、嫌って言っても楠は来るっしょ」

グリナ
「私は元々違うクラスですし、今更ですね!」


私達は3人でそう言い合って笑っていた。
この学校にPKMはこの3人だけ…でももしかしたら来年からは増えるかもしれない?
今後、PKMが一般的に入学してくるなら…学校生活はどうなるだろうか?
そして、私達が卒業する頃には…PKMはどうなってる?

どれだけ想像してみても、それは解りそうになかった…
それ位…今は歴史が速く進んでいる気がするから。










『突ポ娘異伝録 春夏秋冬 〜四人娘の学園生活〜』



第11話 『2月…バレンタイン、そして』


…To be continued

Yuki ( 2022/02/15(火) 14:29 )