1年生編
第10話 『楠 海南、神様に会う!』
海南
「おーい紫音ちゃーーん!」


今日は1月1日…つまりは元旦!
年も新たに、私はウキウキしながら紫音ちゃんの家に来ていたのだ。
そしてインターホンも鳴らさずに、私は2階にある紫音ちゃんの部屋に向かって叫んでいた。
だけど、紫音ちゃんは一向に出て来ず何の反応も無い。
私は?を浮かべながら首を傾げていると、ガララ…と玄関の扉が横に開いて、中からお婆ちゃんが現れるのを確認して笑顔になる。

その人は…紫音ちゃんの保護責任者だ。


お婆ちゃん
「あら、海南ちゃん…明けましておめでとう♪ 今日は早いのね?」

海南
「あ、紫音ちゃんのお婆ちゃん! 明けましておめでとうございます!」


私がそう元気に挨拶すると、お婆ちゃんもニコニコしながら挨拶を返してくれる。
本当に紫音ちゃんのお婆ちゃんはいつも優しい笑顔だね〜♪


海南
「ところで、紫音ちゃんは…?」

お婆ちゃん
「それがね…昨日から出掛けてて、まだ帰ってないのよ」
「連絡はあったから、今日中には帰るそうだけど…」


私はそれを聞いて、え〜?となってしまう。
年末は結局一緒に遊べなかったから、今日こそはって思ったのに〜!
でも、昨日から出掛けてたって何処に…?
携帯も昨日から繋がらなかったんだよね〜


海南
「紫音ちゃん、今何処にいるか解ります?」

お婆ちゃん
「うーん、石蕗(つわぶき)さんの所に行くって言ってたから、去年の時と同じ様に神社かもしれないわね…」


石蕗さん…って言ったら、例のオジ様よね?
成る程…それで神社って事は、私達に内緒で初詣か!?
むぅ〜! 私が先に紫音ちゃんと初詣行く予定だったのに〜!


海南
(とはいえ…相手があのダンディだと致し方無しか〜)


良くも悪くもあの人は紫音ちゃんの想い人だ。
流石の紫音ちゃんも友情より愛を取ったって事だね〜
私はそれを理解すると、ガックリ項垂れる。
お婆ちゃんが気の毒そうな顔したので、すぐに空笑いで誤魔化したけど…

結局、そのまま私はお婆ちゃんに礼をしてその場を去る事に…



………………………



海南
「あーあ〜…今日に限ってルナールさんもグリナちゃんも音信不通だし、何か寂しい〜!」


私はひとり寂しく歩きながらそうボヤく。
元旦なだけに何処の店もやってないし、ひとり孤独に初詣行くのは絶対拒否!
とはいえ、この寂しさを埋めるにはどうすれば…?


海南
(流石に○ックもポケにゃんも休みだしね…)


どうにも八方塞がり…
そんな私が、はぁ…とため息を吐きながら項垂れていると、突然前から声をかけられる事になったのであった。



「…妙な色をしているな」

海南
「!? だ、誰ですか!?」


私に声をかけたのは、ひとりの黒い女性…?
ただ、私がその後絶句したのにはもっと別の理由がある。
その女性の腕はまるで何かの翼の様であり、明らかに人間ではなかった。
そう…この人、ううんこの女性は。


海南
「PKM…! でも見た事が無い位綺麗な黒色〜!!」


私がそう言って目をキラキラさせながら彼女を見つめると、その女性は無言で呆れる様な顔をした。
私は構わず彼女の周りをウロウロし、この目に彼女の姿と特徴を焼き付ける。


海南
「全体的に黒いけど、赤い部分もあって益々綺麗〜!」
「スタイルも凄いし、クールな所が生唾!!」
「こりゃかなりの逸材ですよ奥さん〜!?」
「あ、写メ撮っても良いですか!?」

黒いPKM
「………」


私がスマホを出してそう頼むと、彼女は何も言わずに立ち尽くしていた。
何処となく諦めた表情だったけど、ルナールさんとはまた違ったタイプの性格みたいだ…
そもそも口数が極端に少ないもんね〜


海南
「…あの、もしかして何か気に障りました?」

黒いPKM
「……いや、別に」
「それよりも、お前が持つその色は妙だ」
「何故…いや、何がと言うべきか?」
「お前の生命(いのち)には…何が憑いている?」


その女性の低い声で放たれたその言葉は、何故か私の心臓を鷲掴みにしたかの様な重圧があった。
私の体は突然ガタガタと震え出し、その場から1歩も動けなくなる。
彼女のぼんやりと輝く目は酷く冷淡であり、私の事なんか見ていない様だった。
彼女が今見ているのは、私の中にある何か…?
それが、何故か彼女は気になっている?


海南
(ど、どうしよう…!? もしかして、私…とんでもないPKMに遭遇しちゃったんじゃ!?)


この世界には、様々なPKMが生活している…
ただ、一口にPKMと言ってもその力関係はピンキリ。
赤子以下の力しか持たない者もいれば、歴史を塗り替えかねないレベルの者もいるという…
そして、私の目の前にいるこの漆黒のPKMは…多分後者側の方だ。
私は、決して関わっちゃいけないPKMに…関わってしまったのかもしれない…

そんな中、絶望に苛まれる私に対し、この空気を断ち切る声が突如響き渡る。



「HEY! ベル、貴女何してるの!?」

黒いPKM
「…む、何って…私は別に」


黒いPKMの後ろから現れたのは、また別のPKMだった。
頭にはカラフルな角を多数生やしており、異様な輝きを放っている。
その色を見た黒いPKMは露骨に嫌そうな顔をし、クールにしながらも顔をしかめていた。
って言うか、ベルって…このPKMの名前?


カラフルなPKM
「何言ってるの! その娘のバイタルに異常があるじゃない!!」

ベル
「…いや、だからそれはコイツの色が」

カラフルなPKM
「Be quiet!! 貴女のオーラは一般人には毒なのよ!?」

ベル
「……分かった、分かったからアクティブモードのまま威圧するな!」
「お前のオーラも、一般人には毒だろうが…」


結局、ベルさんが折れた。
よっぽどカラフルなPKMの力が怖いのか、両手を上げて降参している。
その瞬間…私の緊張がドッと解け、その場で膝から崩れてしまう。
そんな私を心配してか、カラフルなPKMの女性は角の色を変え、私の体を抱き留めた。
すると不思議な程に体から力が湧き上がり、私の心臓は正しく鼓動し始める。


ベル
「…ホリィ、お前にも見えてるんだろう? その色が」


ホリィ…とはこの立派な角の人の事だろう。
名前的に、外国に住んでるPKMなのかな?
ホリィさん、要所で英語喋ってたし…


ホリィ
「ええ、勿論…でも、この色は違うのよ?」

ベル
「…違う?」


ふたりは何だか私に解らない内容の会話をする。
ベルさんも最初に言ってたけど、私の色って…?


ホリィ
「この娘の生命の色は、感情の色…」
「人間ってね…まだまだ私達でも理解が追い付かない色を持った者が沢山いるのよ」

ベル
「………」


ホリィさんは優しく笑ってそう言う。
この人もかなり美人だけど、ベルさんとは性格が真逆みたいだ。
後…やっぱりあの角はどうかと思うよ。
あれだけ長かったら、絶対生活で邪魔になると思う!


ホリィ
「ゴメンなさいね、妹が迷惑かけたみたいで…」

海南
「…い、いえ」


ホリィさんはそう謝るものの、私は戸惑ってしまった。
そもそも私が悪かったんだろうし、ベルさんに絡んだのはむしろ私の失態だ。
っていうか、姉妹だったの!?
あまりに似ていない姉妹だけど、義理の姉妹か何かだろうか?


ホリィ
「ベル…貴女も謝りなさい」

ベル
「……謝罪する」


ベルさんはやや不機嫌そうにしながらも、そう言って頭を下げる。
ホリィさんは何だか不服そうな顔をしてたけど、とりあえずそれを見て納得はした様だった。


ホリィ
「…全く、この事は育美様に報告しておきますからね?」

ベル
「……何故?」

ホリィ
「Why!? 貴女が色を勘違いしてオーラのコントロールを間違えたからでしょ?」
「下手をしたら、この娘は今頃脱け殻になってたわよ!?」


うわぁ〜そんな事になってたんだ〜
って、この人達一体何なんだろ?
何だかとても普通じゃない雰囲気だけど…


海南
「あ、あの…今回は私も悪いんで」

ホリィ
「Sorry! でも甘やかしちゃダメだから!」
「この地上で人間と共に生きていく以上、最低限ルールには従わないと!」


うわぁ真面目だなぁ〜
対してベルさんの目が死んでるよ…よっぽど嫌なんだろうなぁ〜


ベル
「…もう良い、好きにしろ」
「さっさと神社に行くぞ…もう時間だろう?」

ホリィ
「おっと…そうね! じゃあ悪いけれど、私達はこれで♪」

海南
「あの…神社ってもしかして初詣ですか?」

ホリィ
「さぁ? 何分私は日本なんて初めてだし、風習とかもあんまり知らないから…」

ベル
「私も似た様な物だ、ただ上司に呼ばれたに過ぎん」


上司に…? こ、こんな人達の上にまだ凄い人がいるの!?
い、一体どんなPKMなんだろ? あ、いやPKMとは限らないのかな?
ひょっとしたら、会社みたいな関係なのかもしれないし!


海南
「良かったら、案内しましょうか? この辺の神社だったら多分解るんで… 」

ホリィ
「Oh! Thanks!! それじゃあ、お願いしようかしら?」

ベル
「……やれやれ」


大喜びのホリィさんに対して、呆れた顔のベルさん。
そんなこんなで、私はふたりを神社に案内する事になったのだった…



………………………



海南
「へぇ〜…そんな凄いPKMだったんですか?」

ホリィ
「そうね…かつては神なんて呼ばれてたし」
「でも、今はただのPKM…それ程人間と変わらないわ♪」


ホリィさんはそう言って優しく微笑む。
どうやらホリィさんは『ゼルネアス』という凄いポケモンらしく、何でも『再生』を司る神様らしい。
逆にベルさんは『イベルタル』というポケモンであり、『死』を司る。
ふたりは対であり、双子の姉妹の関係…互いに生命というオーラ的な何かを色として識別出来るらしく、私の色はベルさんにとって見た事の無い色であり、それを邪気みたいな物として誤認してしまったそうなのだ。

…そんな、特別な色を自分がしてるって言うのは何だか凄いのかも。


ホリィ
「それにしても、貴女の色は本当に不思議ね…」
「感情の起伏によって様々な色を見せる…ここまで感情と生命がリンクしてるのは初めて見るわ」

ベル
「…成る程な、それだけ感情が生命と直結しているわけか」
「確かに…そんな人間等初めて見る」

海南
「な、何だか複雑…」


うーん、誰でも感情で心を震わせる事はあると思うんだけどな〜?
…ま、まぁ確かに私はよく暴走して皆にドン引きされる事はあるけど。
にしたって、私よりも凄そうな感情した人は他にもいそうだけど?


ホリィ
「やっぱり、人間は面白いわね♪」
「特に日本人はアメリカ人とまるで違うわ…特にオタク文化とか」

海南
「あ、それ分かります! やっぱり感性が何処か違うんですよね〜!」
「特に萌え文化!!」

ベル
「…萌え?」


私達は歩きながらも、そうやって楽しく会話をしながら神社へと向かう。
目的の神社はこの辺じゃ有名な所だし、迷う事は無い。
ただ、この時間だともうかなりの混み具合になりそうだけど…



………………………



ベル
「……この中に入るのか?」

ホリィ
「うわ〜スッゴイ人混み! Japanの初詣ってこんなんなんだ…?」

海南
「これ位は普通ですよ? 都心とかだったらここの数倍以上混みますし…」

ベル
「数倍…だと……!?」


ベルさんは物凄く驚いていた。
まぁ海外に住んでいるんだったら、この光景は信じられないよね…
良くも悪くも日本は狭い国なのだから。



「おっ、来たなふたり共! あけおめ〜! ことよろ〜♪」


突然横から声をかけて来たのはまた別のPKMだった。
その姿はやや小さいものの、立派な翼と尻尾が映えている。
ベルさんよりも更に黒光りしたそのカラーリングは、ある意味悪趣味にも見えるけど…
ただ、ボーイッシュそうな顔付きの割に服装はとても可愛らしい。
まるでコスプレかと勘違いする様なゴスロリ衣装は、見た目とのギャップ萌えに刺さる素晴らしさだ!


ホリィ
「あらゼロ! 可愛らしい衣装ね? イタリアじゃそういうのが流行ってるの?」


ゼロって名前なのか〜、別に○ンダムじゃないよね?
グリナちゃんがこの場にいたら間違いなく反応してただろうなぁ〜
そして更にその後ろからこれまた美形の白いPKMが現れる。
その姿はまるで美青年の様であり、パッと見芸能人か何かかと思える位だ。
服装も真っ白なスーツを着用しており、腕と尻尾の部分は改造してるっぽい?
ゼロちゃんもそうだけど、あの翼と尻尾はスッゴイ邪魔になりそう…
でもこっちの人はベルさんと似た様な腕だね…翼と一体化してるみたいなの。


ベル
「…ターニャか、久し振りだな」

ターニャ
「ああ…この国では明けまして、だったか?」

ホリィ
「ターニャも久し振りね! 元気そうで何よりだわ♪」

ゼロ
「聖(ひじり)は去年の宴会来なかったもんな〜」

海南
「…ん? 聖って誰ですか?」


私が何となくそう尋ねると、全員の目がこっちに向く。
うわぁ…何か凄い場違い感。
そもそも、このPKM達どういう関係なんだろ?
上司がいるらしいけど、やっぱり会社の同僚とか?


ホリィ
「聖は私の名前よ…Name! まぁ、アメリカじゃホリィで通ってるんだけどね…」


そう言ってホリィさんは肩を竦める。
実にアメリカ人って風な反応であり、目の前で見るとおお…ってなるわね。
しかし、聖…それでホリィって○ョジョじゃないんだから。
これもグリナちゃんやルナールさんがいたら絶対反応する案件だね…!


ゼロ
「元の名前で呼ばれないってのも中々不憫だよね〜」
「デスってのも、それはそれでヤバすぎる名前だけど」
「つーか、コードネームを本名扱いしてて良いの?」
「コンバット○前じゃないんだから…」

ベル
「…その件は既に相棒に指摘された」
「だから今はベルと呼べ…普段生活する上での仮の名だ」


うわ…こっちはこっちで何か物騒な単語が出てきた!
コードネームって何!? デスって直球過ぎない!?
もしかしてベルさんって暗殺者か何かだろうか?
私なんか初対面で既に殺されかけてたみたいだし、下手な事を尋ねるのは絶対に止めた方が良さそうだ。


ゼロ
「…そりゃそうだよね、当然の指摘だわ」

ターニャ
「…そうなのか? 何故だ?」

ホリィ
「ほら、Deathって英語だと直訳で死を意味する単語だから…」

ゼロ
「まぁモノホンの死神だしね〜」

ベル
「元、な…」


サラリと凄い事言われてる!
死神とかヤバくない!? 裏では虚(○ロウ)とか退治してるのかな!?
むしろベルさんの○覇装とか見てみたい!!
後○魄刀はどんなの!? 卍○凄そう!!
…コホンッ! いやいや、つい熱くなっちゃったよ!


海南
(そもそも、何でそっちの死神なんだっちゅーの!)

ゼロ
「ところで、この娘誰? 聖達の知り合い?」

ホリィ
「ちょっと訳有りなんだけどね…まぁ袖振り合うも多生の縁って事で♪」

ターニャ
「何だそれは?」

海南
「えっと…要は些細な出会いなんですけど、付き合ってみよう…とか、そんな風な意味で」


私がそう説明すると、ターニャさんとゼロちゃんは感心していた。
…本当にそんな意味かは自信無いんだけどね!?
っていうか、ホリィさん…じゃなかった聖さんって、アメリカ在住なのに日本語良く知ってるなぁ〜
名前も漢字で書くみたいだし、ただの日本被れって感じじゃないのかも…


ターニャ
「それより、他の奴等は?」


「まだ見てないわよ? 育美様は?」

ゼロ
「育美様なら、今息子に授乳中だよ…もう少ししたら戻って来る」

海南
「…授乳って、赤ん坊?」


「そっ、私達の上司の子が先月産まれたばかりでね…今日は一緒に初詣やるからって、皆呼ばれた訳!」
「予定だと後6人来るはずなんだけど…って、ああ来た来た!!」


そう説明すると聖さんはこちらに向かって来るふたりのPKMに手を振る。
私はその姿を見て思いっきり吹き出してしまった。


琉女
「ふっ…神聖かつ邪念だらけのこの地に、かつての神々が肩を並べるとはな!」


「ハッハッハ!! 明けましておめでとう!!」


何と片方のPKMはあの琉女さんだ!
確か琉女さんはルナアーラってポケモンで、かなりレアだとは聞いてたけど…
後、その隣のものスッゴイ大きな女性は…?
ふたりとも振袖を来て、とても綺麗だけど…


ゼロ
「あけおめ〜! 天海、琉女〜♪ ことよろな〜!」

琉女
「ふっ、お互い無事に生き残れた…ならば死ぬその時まで我等の盟約は続く!!」


そんな事を言いながら琉女さんは格好良いであろうポーズを決めてゼロちゃんと握手する。
ゼロちゃんもニコニコ顔で楽しそうにしていた。


海南
(天海…さんかぁ、何か何処かで見た事ある様な?)


私はガチムチの振袖巨女を見ながらそんな事を考える。
あんな目立つPKMだったら、一目見たら忘れられなさそうだけど…


天海
「今年も妹共々、よろしく頼む!」

ターニャ
「…今回も旦那はいないのか?」

天海
「うむ! 今年は何でも会社の同僚に誘われてたらしくな!」
「だから、今回は俺もこっちを優先する事にした!」


「そう…でも良いの? 旦那さん、寂しがらない?」


聖さんがそう聞くと天海さんはガッハッハ!と豪快に笑う。
見たまんまの豪胆な性格で、天海さんは笑顔のままこう答えた。


天海
「俺の夫を甘く見るな? それ位笑って許してくれるわ!!」
「何せいずれこの国を取る器だからな!!」


な、何か凄いスケールの話だね…ってか、夫って結婚してるんだ!?
PKMの結婚って噂には聞いてたけど、本当にいるんだね〜
こんないかにも凄そうなPKMと結婚するなんて、お相手はどんなガチムチなんだろう?
○ドンや○ムソンクラスの兄貴じゃないと務まらない気がするけど…


ゼロ
「しっかし、ふたりともしっかり振袖着てるし! 失敗したなぁ〜僕もそっちにするんだった!」

ターニャ
「…振袖とか、俺達用にカスタマイズするのは骨が折れるぞ?」

海南
「あ、やっぱり服は改造してるんですか? その翼と尻尾じゃ着替え大変そうですもんね〜」


私はあまりに気になったのでふたりの背中側に回ってじっくり観察してみる。
するとゼロちゃんの背中側は完全にはだけてしまっており、ぽっかりと穴が空いててそこに翼を無理矢理通してるだけの様だ。
尻尾に関してはスカートの上からはみ出してる…うん、まぁ仕方無いよねこれじゃ。
ターニャさんのスーツも袖はわざわざ広くしてるし、ズボンに穴を空けて尻尾を通してる…
確かに、これで振袖通すのは…かなり大変そう。


ターニャ
「俺の服はオーダーメイドだからな…こんな面倒な改造、自分で出来ん」

ゼロ
「まぁ、僕達に裁縫技術なんて無いもんね〜」

琉女
「私の翼はゴースト系だし、そういう悩みは皆無なんだよね〜」

天海
「翼持ちは服に難儀する物だな…俺は尻尾だけ考えれば済むが」

海南
「天海さんの尻尾は服の中に?」


私がそう言って天海さんの後ろに回ると、尻尾用の穴は空いていなかった。
どうやらそのまま振袖の中にあるらしく、足元から先が少し見える程度だ。


天海
「俺の尻尾は猫と変わらんからな〜鋼タイプではあるが柔軟性もある!」


「私も尻尾は短いし、そこまで苦にはならないわね」
「代わりに角が大変だけど…」

海南
「あ、やっぱり…どう考えても邪魔そうですもんね」


「そうなのよ! 比較的大きな家選んだのに、それでも気を遣わないとすぐ引っ掛かるし…」

ベル
「…やれやれ」


愚痴る聖さんを見てベルさんはため息を吐く。
ベルさんは腕だけしか面倒そうな部分は無いし、この中ではそんなに生活に苦労はしないのかもしれないね…



「あれ? もしかしてボクが最後?」

海南
「うわっ!? いつの間に私の隣に!?」


気が付くと、私のすぐ側にボーイッシュな風の髪型をした振袖の女性がいた。
胸はかなり大きく、このメンバーの中じゃ多分トップクラス!
サイズなら天海さんの方が体格分大きいけれど、カップなら多分こっちがトップだろうね〜

…改めて、PKMってズルい。


ゼロ
「あけおめパルキア〜、まだカイグラ姉妹が来てないよ〜ってかホントに来るのアレ?」


どうやらパルキアという人らしい。
外人っぽいけど、しっかり振袖なんだね…


パルキア
「…そう、ところで彼女は?」


パルキアさんは私を指差してそう尋ねる。
すると全員が私に注目し、私は思わずビクッとなる。
本当に…何で私が混ざってるんだろうね?


琉女
「うん? 良く見たらウチの店で良く見る顔だね〜確か楠 海南さんだっけ?」

海南
「うわっ! 何で私の名前が!?」

琉女
「そりゃ、いっつも大きな声でダベってるからね…」
「もう何度も見てるし、そりゃ名前も耳に入るって」


そ、そうだったんだね…
確かに紫音ちゃんと一緒に来る事も多かったし、秋からはルナールさんやグリナちゃんも一緒の時が多い。
そんな私達を見てたら、そりゃ店員の琉女さんでも記憶に残るのか…


ベル
「…わざわざ客の名前を記憶してるのか?」

琉女
「良く来る客のはね…勿論、私から尋ねた事なんて無いよ?」
「ただ、接客しながら会話に耳を傾けておくだけ…」
「それだけでも、貴重な情報を得られるからオススメの参考になるし♪」


そ、そんな事考えながら接客してたんだ〜!
私は改めて琉女さんの凄さを思い知った。
店員姿の琉女さんはいっつも大胆不敵に厨二病で接客してるのに、本心ではしっかりとお客さんの好みとかを考えながらメニュー選んでたんだ…
やっぱり、琉女さんは最高の店員だね!


琉女
「でも、何で貴女がここに?」

天海
「まぁ良いではないか! 袖振り合うも多生の縁!!」
「琉女の知り合いならそれで良し!」
「皆も、特に異論は無かろう!?」


「ええ、勿論♪」

ベル
「…好きにしろ」

ターニャ
「右に同じだ…」

ゼロ
「皆が良いなら異論無ーし」

パルキア
「あ、あはは…ゴメンね、えっと…海南ちゃん?」

海南
「あ、は…はいっ!?」


皆が同意していく中、パルキアさんは少し呆れた顔をしながらも私の名を呼んだ。
私は何だかそれがとても嬉しく、思わず顔を赤らめてしまった事だろう…


パルキア
「こんな不思議なメンバーに混ざって大変だとは思うけど、良かったら色々人間世界の事を教えてくれると嬉しい…」
「あれから1年経ったけど、まだまだボク達が知らない事は多いから…」


私はパルキアさんにそう言われ、少し緊張が弛む。
パルキアさんは、きっととても優しいPKMなんだと…私は何となく思った。
多分、このPKMの集まりは相当凄いのだと私は予想する。
だからこそ、こんなチャンスは2度と無いかもしれないと覚悟を決めたのだ。



「そういえば、パルキアはひとり? ディアルガはどうしたの?」

天海
「ああ、アイツなら既に中におるぞ?」

ゼロ
「課金する為に短期バイトやるって言って、三ヶ日の間はひたすら屋台で働くらしいよ〜?」
「だから、後はカイグラだけ! ってかアイツ等だけ集まり悪すぎない!?」


「うっせぇわ!! あフりカ、から、こんなト、コまで、来るのが面倒、なん、だよ!!」

??
「み、皆…明けまして」

???
「皆、明けましておめでとう♪ 良く集まってくれたわね!」


突然、3人の女性が場に現れる。
その姿に全員が驚いており、その3人に注目していた。
3人とも振袖を着ており、間違いなくメンバーなのだろう。
カイグラ姉妹…とかゼロちゃんが言ってたけど?


琉女
「カイオーガ! ことよろ〜♪」

カイオーガ
「う、うん…琉女も、こと…よろ♪」

ゼロ
「ギャッハハ! グラードン似合わねーー!! ってか、何か日本語の発音変じゃね?」

グラードン
「しゃあね、ぇだろ!? ふラン、す語…とかいうのしか、翻訳、出来、なかったん、だ、から!!」
「育美様、から教わったばっか、なん、だよ!!」

育美様
「ふぅ、まさかグラードンの翻訳レベルがそこまで退化していたとはこの私も思ってませんでしたからね…」
「お陰で矯正するのに少し時間がかかってしまいました」


カイオーガに、グラードン…そして、この人が育美様?
カイオーガさんってPKMは、かなり大きな袖から海洋生物の様なヒレをした腕を見せている。
尾ビレみたいなのも足元に見えるし、色的にも水棲系みたいだ。
対してグラードンちゃんは身長こそ小さいものの手足は物凄く太く、カイオーガさん同様に何か肌に明滅する筋が走ってる。
やけに猫背で何だかダルそうだね…よっぽど日本の風土が合わないのだろうか?

そして…ニコニコと笑顔の美人さんがもしかして噂の上司、育美様?
両腕には小さな赤ん坊が抱かれており、今は安らかに寝息をたてている。
育美様の姿はとても綺麗であり、まさに神々しさの塊!
見た目は白髪なだけで殆ど人間その物…この人だけはPKMじゃないのかな?
美しい髪飾りで長い髪を綺麗に留めており、いかにもな空気をその身に纏っている様だった。



「あ、この子が例の? 名前は何と言うんですか?」

育美様
「…悠気(ゆうき)と、名付けました」


悠気…そう呼ばれた子は聖さんに顔を覗かれてか少しビクッとした。
眠っているみたいなのに、まるで周りが見えているかの様な反応だ…
それを見て、聖さんは驚いた顔をする。



「…成る程、まさしく育美様の子ですね」

ベル
「…理解した」

ターニャ
「ならば…いずれは我等が忠誠を誓う存在、何なりとご命令を!」

パルキア
「ターニャ…気持ちは解るけど、そういうのもう止めよう」
「育美様が呆れてしまうから…」

ゼロ
「そうそう! 全く、ターニャはまだまだ融通が効かないんだから…」


膝を着いて真面目に応対するターニャさんをふたりがそうして諌める。
それを見て育美様は何だか嬉しそうに笑った。
他のメンバーも順に集まり、育美様の腕に抱かれている赤ん坊を見ていく。
やがて全員の挨拶が終わり、最後に育美様は私を真っ直ぐ見た。
私はそれを受けて、思わず息を飲む。
すると育美様は…ツカツカと私の前まで歩いて来た。
うわぁ! 物凄く良い匂いがする〜!!


育美様
「そう、貴女が皆を引き合わせてくれたのね…」

海南
「…へ?」


そう言われて、私はキョトンとなる。
既に何かを悟ったみたいな育美様は、すぐにニコッと笑って私の手を引いてこう言った…


育美様
「感謝しますよ、楠 海南さん…お礼に、今日は初詣を共に楽しみましょう♪」

海南
「あ…は、はいっ!!」


こうして、私は奇妙な縁で初詣を迎える事となった。
そしてこの縁が後々、とんでもない事に繋がるというのを…この時の私は、知る由も無かったのである…



………………………




「ヘイラッシャイ! フランクフルトに焼きもろこし! どうぞ買っていってくんなー!!」

女A
「だー! もう何なのよこの客の量は!?」

女B
「ほらほら! 早く焼かないと間に合わないわよ?」

ゼロ
「やっほ〜10人分貰える?」


とある屋台を見付けたゼロちゃんは、楽しそうな顔で行列に並んでいた。
その屋台は他の店に比べてもかなり客が多く、とても繁盛している店みたいだ。
そんなに味が良かったりするんだろうか?
しかし、私の目は節穴じゃない!!
あの行列にはちゃんとした理由があったのだ!!


海南
(店員やってる女性ふたり…あれ多分PKMだわ!)


私は脳内にある美少女センサーをフルに発揮してそれを確信する。
あの人間離れしたスタイルに髪の色、どう考えてもそうのはず。
それに、大きな声で元気に接客しているのは…まさかのあの人だった。


紫音
「ねぇオジさん! これはここで良いの?」

大護
「おう! それ置いたら紫音ちゃんは休憩してて良いからな〜♪」
「おらアミバ! 早く次の客に渡せ!!」

女A
「だからアミバって呼ぶな!?」

ゼロ
「あっはは! 楽しそうだねトキ〜?」

トキ
「ゲッ!? アンタがここにいるって事は、もうそんな時間…?」


アミバだかトキだか解らない悲しき天才はこちらの方を見て絶句していた。
それを見てか、私の隣で微笑んでいる育美様が手を振る。
悲しき天才はそれを受けて頭を抱えていた。


トキ
「…ちぃ、もう少しで休憩の予定だったのに」

ゼロ
「御愁傷様♪ まっ、こんだけ繁盛してたら結構儲かるんじゃない?」

パルキア
「ふふ、トキも元気そうで何よりだよ♪」

トキ
「あーあー!! もう良いからさっさとこれ持って行きなさいよ!」
「私は昼にそっち合流するから!」

パルキア
「それじゃあ、料金はこれで良いかな?」

大護
「あー良い良い! 知らねぇ仲じゃねぇんだ、トキのオゴリにしといてやるよ♪」


そう言ってダンディなオジ様は歯を煌めかせてサムズアップする。
隣のトキさんはプルプル震えてるけど…
って言うか、紫音ちゃんがまさかこんな所に!
オジ様と一緒にバイトしてたの〜?


トキ
「ちょっと!? 私のオゴリって、アレ10本も頼まれたら10連ガチャ以上の出費じゃないの!!」

大護
「良いじゃねぇかそれ位〜、親孝行とでも思っとけ!!」

海南
「紫音ちゃーん!」

紫音
「あれ? 海南ちゃんも初詣?」


私は言い合うトキさん達を尻目に、紫音ちゃんに話しかける。
紫音ちゃんは嬉しそうな顔をして耳をピンと立てていた。
う〜ん、やっぱり紫音ちゃんはぐうかわだよ〜!!
…出来れば振袖姿を見たかったけど!!


海南
「最初は紫音ちゃんの家に行ったんだけど、いなかったから…」

紫音
「あ、ゴメンね〜…昨日はオジさんに誘われて初日の出見に行ってたから」
「今日はそのまま、社会勉強も兼ねてここでバイトしてるの♪」

大護
「紫音ちゃん、何なら今日はもうあがっても良いぜ?」
「折角友人と会えたんだ、紫音ちゃんも楽しんで来な!」


オジ様はそんなイケメンな事を言ってくれる。
でも紫音ちゃんは複雑そうな顔をしていた。
うーんこの! 本当はオジ様と一緒にいたいはずだもんね〜!!
紫音ちゃんの少しショボンとした笑顔、私にはダメージが大きすぎるよ〜!!


海南
「えっと…紫音ちゃん、私は今日別の約束が出来ちゃったから…ゴメンね?」

紫音
「あっ…そう、なんだ」

大護
「何だ、別件があったのか…それなら仕方無ぇな」

トキ
「はいもろこしお待ち!! カネ、次は!?」

カネ
「フランク2本に、焼き鳥4本よ!」


成る程、トキさんの隣にいるスタイルグンバツの黒人さんっぽい人はカネさんって言うのか…
いかにもな外人に見えるけど、目の色が明らかに違う。
何て言うか、リアルにキラキラしてると言うか…
それに、手で触れてもいないのにお金が宙に浮いてるし!
多分、アレがエスパータイプとかなんだね〜


育美様
「大護さん、明けましておめでとうございます♪」

大護
「おう若葉さん! 明けましておめでとう!」
「ガキンチョも元気か〜?」


オジ様は育美様の胸に抱かれて眠っている悠気君を見てニカッと笑う。
それに反応したのか、悠気君は目を瞑ったままピクリと動いた。
…眠ってるん、だよね?


育美様
「ふふ…悠気も嬉しいんですね♪」

大護
「ははっ、そりゃ光栄だな! 旦那はまた仕事なのか?」

育美様
「ええ…ですが夜には帰って来ますので♪」


育美様は本当に幸せそうな顔をしてそう語る。
その顔を見て、オジ様も軽く微笑んでから仕事を続けた。
後はいくつか会話を交わし、育美様は私を連れて先に進んで行く。
他のPKMの9人も、それに付き従う様にゾロゾロと付いて行った…
全員PKMだから流石に圧巻だね…!


育美様
「…良かったのですか?」

海南
「え? 何がですか?」

育美様
「…本当はご友人と一緒の方が良かったのでは?」


私はそれを聞いて少し俯く。
そりゃ、本音は紫音ちゃんと一緒にいたいけど…
でも…今回は私も最後まで付き合うと決めたから。


海南
「紫音ちゃんとは、また来年も有りますし」
「こっちとの縁は…もう2度と無いかもしれないじゃないですか…」
「そう考えたら…チャンスは絶対に掴まないと!!」


私はそう言って目を輝かせ、ガッツポーズを取ってアピールする。
勿論、こんな美人揃いの可愛い子ちゃん達とお近付きになれるなら私は一向に構いません!!


育美様
「ふふふ…! 貴女は、とても面白い人ですね?」

海南
「? そう、ですか…?」


何がツボにハマったのか、育美様はプルプル震えて笑いを堪えていた。
私は何だか気恥ずかしくなってしまう。
うーん、そんな可笑しな事言ったかな?



………………………



海南
「………」


私達はそれから神社の最奥部に辿り着き、皆でお賽銭を投げてお参りする。
皆はどんな事を願ってるのかなぁ?
ちなみに私は…


海南
(今年も可愛い子ちゃんと友達になれます様に!!)

パルキア
(トキもティナも、育美様達も…皆平穏で幸せになれます様に)


(無病息災…世界中にいる人達にどうか慈悲を)

ベル
(…アイツに、少しでも幸をやってくれればそれで良いんだがな)

ゼロ
(今年もレアドロ沢山よろしこ!!)

ターニャ
(スパシーバ、爺さん婆さん…)

琉女
(今年も楽しく! 皆と一緒に…)

天海
(願うは慎吾の覇道! いずれ頂点に俺が連れて行く!!)

グラードン
(秘宝が欲しい!!)

カイオーガ
(今年も平和であります様に〜)


皆、それぞれ願い終わったのか次々と背を向けて去って行く。
私も続こうかと思ったけど、まだ育美様が動いていなかった。


育美様
「………」

海南
(育美様、どんなお願いをしてるのかな?)


でも、多分予想は出来る気がした。
騒がしい初詣の中なのに、安らかな寝息をたてる悠気君。
ある意味豪胆であり、今後どんな成長を遂げるのか気になってしまうね…


育美様
「…お待たせしました、行きましょうか」

海南
「はいっ」


育美様は笑顔だった、でも一瞬だけ悲しそうな目をした。
何を思ってそんな目をしたのかは私には解らない。
でも、それだけは聞いちゃいけないっていうのは何となく察せた。
だからこそ、私もただ一言しか返事が出来なかったのだ…



………………………



グラードン
「これう、めぇ、な!」

カイオーガ
「バリボリ…! りんご飴も美味しい〜♪」

ゼロ
「カイオーガ、りんご飴ってそういう食い方する食べ物じゃないからね!?」
「後グラードン! 普通は芯ごと食べないから!!」


焼きもろこしを美味しそうに芯ごと食べるグラードンさんに、りんご飴を鋭い牙でバリボリ噛み砕くカイオーガさんはそれでも満足そうだった。
う、うーんふたり共ワイルドだね!



「うーん、やっぱりアメリカのとじゃサイズ差がねぇ〜」

ベル
「コレでもコンビニのよりかはマシか…」


聖さん達はフランクフルトを食べて感想を述べていた。
やっぱりアメリカのと比べたら小さいのかな?
コンビニのよりかは確かに大きいと思うけど…
でも、最近コンビニのも結構美味しいと思うんだよね〜


天海
「ほれターニャ! 焼きそばを買ってきてやったぞ!?」

ターニャ
「む…悪いな、代金は?」

天海
「何、全部育美様持ちだ! だから気にせず食うが良い!!」


そう言って天海さんはターニャさんの背中をバシバシ叩く。
ターニャさんはそれを受けても微動だにしなかった…見た目以上に逞しい!?
今のプロレスラーの張り手並に見えたんだけど…


琉女
「楠さん?」

海南
「はうあっ!? ど、どうしたの琉女さん!?」


突然背後から名前を呼ばれて、私は思わず飛び上がってしまった。
すると可愛い可愛い琉女さんが、私に焼き鳥を差し出してくれる。
私はそれを数本貰い、琉女さんと一緒に食べる事にした。
うわ〜! 琉女さん一口一口が丁寧で可愛い〜♪
もうコレ見てるだけでご飯3杯はいけるよ!!


海南
「そういえば、琉女さんってプライベートは基本素なんですか?」

琉女
「まぁ、気分次第かな? 流石に今回は身内ばっかりだし、控えようとは思ってるけど…」

パルキア
「むしろ、何でそんな風になっちゃったの?」


横からパルキアさんがわた飴を手にそう言った。
それを聞いて、琉女さんはうーんと唸りこう話し始める…


琉女
「いや、単にアニメに影響されたんだけどね…」

パルキア
「そ、それだけで…?」

海南
「いーや甘いですよパルキアさん!?」
「今日び思春期の若者はどんなアニメに影響を受けてるか解りません!!」
「でも、それが他の人からは痛く見えても貫き通すのが魂の叫び!!」

琉女
「ふっ、その通りだ!! この混沌の求道者、ルナティック・カオス・ディザイア!!」
「飽くなき魂の奔流に逆らい、神をも断罪せし者なり!!」


そう言って実に格好良いポーズを取って、琉女さんは焼き鳥を武器の様に構える。
その姿を見てギャラリーが一気に注目し始めてしまった。
パルキアさんはそれを理解してすぐに顔を真っ赤にして手を振る。
すると…気が付いたら私達は神社の外に…


海南
「え、ええっ!? 一体何が!?」

琉女
「あらら…パルキア私達まで巻き込んで」

パルキア
「何言ってるの!? あのままだとどんな目にあってたか…!」


うーん、確かに琉女さんはこの街だと結構有名人だもんね〜
何だかんだで学校内でも知名度高いPKMだし、大衆の面前であのアピールは確かに問題だったかも…


海南
「あはは…琉女さん、ここじゃあまり堂々とやらない方が良いかもね〜」

琉女
「う…気を付けよう、葛(かつら)さんにも注意されてたしなぁ〜」

パルキア
「その葛さんって人が、琉女のパートナー?」


パルキアさんにそう言われて、琉女さんはうんっ!と力強く頷いた。
そして美味しそうに焼き鳥を頬張り、私達に笑いかけてくれる。
パートナー…って保護責任者の事かな?
いやでもお姉さんの天海さんは結婚してるって言うし、もしかしたらパートナーってそういう意味!?


海南
「琉女さん、その人お付き合いしてるんですか?」

琉女
「うーん、どうなんだろ? あくまで協力関係だし…」

パルキア
「琉女は、そこまでの感情を持ってないの?」


パルキアさんの問に対し、琉女さんは何とも言えない顔をする。
別に嫌いじゃない…って風には見えるけど。
琉女さんは頬張っていた焼き鳥を全部飲み込み、改めてパルキアさんにこう答える…


琉女
「…私の想いはともかく、多分葛さんは別の所を見てる気がする」

パルキア
「別の所を…?」

琉女
「うん」


琉女さんは小さく頷いて空を見上げる。
今日の天気は晴れだけど、チラホラと厚い雲も見え始めていた。
気温は氷点下近くであり、実の所かなり寒かったりする。
そんな中振袖なふたりだけど、寒さには強いのか全く意に介していない様だった…


琉女
「ゴメン、この件は…」

パルキア
「あ、ううん…ボクの方こそゴメン」
「…少し、羨ましいと思ったから」

海南
「パルキアさんは、そういう人居ないんですか?」


私がそう尋ねると、パルキアさんはクスッと笑って空を見る。
そして数秒…何かを思い出すかの様な仕草をしてから私にこう答えた。


パルキア
「…とりあえず、今はまだかな」

海南
「今は…ですか?」


パルキアさんはうん…と小さく頷く。
私はそれ以上何も言えなかった。
何だか、踏み込んじゃいけない領域の様に思えたのだ。
琉女さんもパルキアさんも、見た目以上に何か大きな物を背負ってるのかもしれない…


育美様
「こんな所に居たのですか? 探しましたよ…」

パルキア
「あ…! す、すみません! 突然転移してしまって…」


パルキアさんは育美様相手に平謝りする。
うーんまさに上司と部下って感じだね〜
でも育美様はニコニコ笑顔で怒る気配すら無いけど。
パルキアさんの態度を見ると、それなりに恐れ多いって感じではあるんだけどね…


育美様
「お参りも済みましたし、そろそろ移動しましょうか?」

ターニャ
「全員確認済みです、欠員はございません!」


ターニャさんが胸に手を当て、丁寧に頭を下げてからそう告げる。
ターニャさんって本当に厳格そうなイメージだよね…
パッと見、男性だと見紛う程なんだけど女性らしいし。
端正な美青年…と言われても殆どの人は納得しちゃいそう。


パルキア
「それじゃあ、転移しますね!」


パルキアさんがそう言った瞬間、私の視界がまた変わる。
今居るのは、何だか一般住宅の庭みたいだけど…


育美様
「ありがとうパルキア…さぁ、皆どうぞ上がってください♪」


育美様はそう言って笑顔で鍵を使って玄関のドアを開ける。
成る程…ここが育美様の家なのかぁ〜
思ってたよりも普通の一軒家なんだ…てっきり高級マンション住まいとかを想像してたよ。

私は皆さんの後にその住宅に上がらせてもらう。
思ったよりも間取りは広く、この人数で入っても全然余裕はある位だ。
育美様達はそのまま広い和室の方に移動し、皆を誘導した。


育美様
「少し狭いかもしれませんが、ゆっくり寛いでください」
「今からお節料理を持ってきますので…」


そう言って育美様は慎ましく部屋を出て行く。
この部屋には大きなテーブルがひとつ有り、全員でそのテーブルを囲む事になった。
私は何故か1番上座に座らされてしまっており、思わず恐縮してしまう。
ちなみに隣に居るのは天海さんで、その隣が琉女さん、そしてターニャさん、ゼロちゃんと続いていた。
そしてテーブル向かい側の下座には聖さん、ベルさん、グラードンさん、カイオーガさんと続く。
その隣には……何故か空席があって、その隣の最後の席にパルキアさんが座っていた。
空席の所には誰か来るのかな?

私がそんな事を考えていると、パルキアさんは壁時計に目をやる。
時刻はまだ10時位…か、お昼には早いけど。


ゼロ
「しっかし、よくもまぁ今回は全員揃ったよね〜」


「そうねぇ…皆各々の生活があるし、こんな機会はそうそう無いでしょうね」

海南
「あの…ところで皆さんのこのグループって、どういう関係なんですか?」
「何か会社とかそういう…?」


私が手を挙げてそう尋ねると、全員が黙ってしまう。
どう説明すれば良いのか解りかねるのか、各々が考え込んでいる様だった。
そんな中、すぐに考えるのを止めた天海さんが豪快にこう答える。


天海
「ガッハハッ! まぁ要するにだ! 俺達は神様だったって事だな!!」

ターニャ
「…そして俺達は皆、ひとりの王に支えていた」


神様…それは聖さん達も言っていた事だ。
でも、それでひとりの王に支えていたって?
何だか唐突に突拍子も無い話が出て来た。
とはいえ、少なくとも誰も天海さん達の言葉を否定しないし、皆納得してる。
嘘や冗談なんかじゃないと思えた…


海南
「ここにいる全員が神様なんですか?」


「厳密には元、だけどね…」
「前にも言ったけど、今はただのPKMよ…ちょっと他より規格外な能力を有した、ね?」


聖さんはウインクをして可愛く言うものの、私は苦笑しか出来ない。
そもそも神様です!なんていきなり言われても、普通は全く想像出来ないし、そもそも擬人化したポケモンというレベルの時点で常軌は逸してる。
その中で更に神様とか言われたら…実際にはどう反応しろと?


琉女
「別に難しく考える必要は無い、ただ己の波動に導かれよ!!」

ゼロ
「アハハッ! どうせ皆人生謳歌するだけだしね〜♪」

グラードン
「ふん…自由、なら、それ…で、良い! だろ!」


本当に各々主張も考え方も違う…
そんな9人がここに集まってるって事は、それだけ育美様は凄い人なんだね〜
って言うか、育美様って結局どんな立場の人なの?
神様達の上司って事は……?


育美様
「お待たせしました、それでは皆で一緒に頂きましょうか?」

パルキア
「あの、まだトキがいませんが?」


トキ…って、確か屋台でオジ様と一緒に働いてた青髪の女性よね?
そういえば後で合流するみたいな事言ってたけど、あの空席ってその人の為の?


育美様
「ふふ、別にお節は無くなりませんよ?」
「トキは後で来ると言っていたのですから、ここで食べながら待ちましょう♪」

天海
「うむ! それでは僭越ながら序列第二位、不肖この元太陽の神ソルガレオが音頭を切らせてもらう!!」


天海さんは立ち上がり、そう言って酒の入ったグラスを掲げる。
そして皆に対して高らかにこう告げた…


天海
「皆! 新年明けましておめでとう!! 今年も1年間よろしく!!」
「乾杯!!」


天海さんがそう言うと、全員がグラスを掲げて乾杯と答える。
私のは流石にお茶だけどね!
とりあえず全員が各々多数の重箱から料理を取って食べていく。
この際作法とかは無粋なのか、育美様は何も言わずにただ微笑んでいた。
悠気君は今別室にいるのか、ここにいないね…


海南
「うわぁ〜凄い出来…こんなお節、お店でも中々見れないよ〜!」


私は色とりどりの料理を見て感嘆する。
全ての重箱に手抜きは一切無く、妥協すら許さぬレベルの華やかさは見る者をまさに魅了する魔性さが伝わってきていた。
味も文句無く、まさに一級品!
こんな美味しいお節料理、始めてだよ〜!


天海
「さぁグラードンも飲め飲め! 今日は無礼講だ!!」

グラードン
「お、おう!」


「やっぱり日本酒はひと味違うわね…」

ターニャ
「ここの所ウォッカに慣れていたからな、度数が低く感じるが悪くはない」


お酒もかなり高級品なのか、飲んでる人は美味しそうに飲んでいた。
特に天海さんは凄まじく、一升瓶をラッパ飲みしている。
相当強いんだろうなぁ〜


ベル
「…やれやれ、久し振りにマトモな食事だな」

ゼロ
「ベルって、普段何食べてんのさ?」

琉女
「そういえば、前に私のお店来てたよね?」
「結構ファーストフード利用してるの?」

ベル
「…むしろその方がマトモだからな」


ベルさんは何処か遠い目をしていた…
な、何だか深い悩みが有るみたいだけど。


パルキア
「ほら、カイオーガちゃんも食べよう」

カイオーガ
「うん、ありがとう♪」


パルキアさん達は仲良く慎ましく料理を食べていた。
このふたりは基本的に大人しい方なのか、他のメンバーよりも主張が小さいんだよね〜
とはいえ、別に他のメンバーと仲が悪いわけでもないみたいだし、あくまで性格なのかな?

とまぁ、そんなこんなで昼前からドンチャン騒ぎをしている私達。
私も可能な限り色んな話をし、皆と仲良くなろうと努力した…



………………………



そして数時間後…


トキ
「ようやく一息〜…って、何じゃこりゃあ!?」

育美様
「あら、ようやく来たのね…さぁ、貴女も座って♪」

トキ
「いや座って♪じゃねぇでしょうが!?」
「この酒池肉林っぷりはどういう案件!? 事案ですか!?」


私は空笑いしか出来なかった。
トキさんがツッコムのも仕方無い状況であり、端的に今の有り様を表すとしたら…滅茶苦茶。
大半のメンバーが既に酔い潰れており、服もはだけさせて畳に伏せているのだ。
かくいう私も、いつの間にかグラスに酒を仕込まれてしまっており、酔いが回っている。
正直、既にフラフラしてる…のよね。


トキ
「つーか明らかに未成年っぽいのまで巻き込まれてんじゃない!? 何やらかしたのよアンタ!?」

育美様
「無礼講無礼講♪」


育美様は酔っているのかどうか解らない感じでそんな冗談を言う。
トキさんはかなり激しいツッコミを入れてるけど、育美様は笑いながら流していた。


トキ
「だーーー!! とにかく介抱しなさいよーーー!?」


そう言ってトキさんは私の体を支えてくれる。
この人…口は悪そうだけど意外とやさし……



………………………



海南
「…あれ?」


私は目が覚めると違和感に気付く。
毛布がかけられていたのだ。
このお陰で凍える事は無かったらしい。
そして徐に窓から外を見ると、雪がしんしんと降っている。
それを見た途端、私は思わずブルッと震える。
予想以上に室内気温は低いらしいね…

周りを見ると他の人(PKM)達はチラホラ起き始めていた。
そして厨房からか、何やらトントンと音が聞こえる。
育美様が何か作っているのだろうか?
私はとりあえず、様子を見にそこへ行ってみた。



………………………



育美様
「そう、それが出来たら後は煮込むだけです」

トキ
「ふーん、結構簡単なのね♪」


厨房からは何やら美味しそうな匂いがする。
そしてグツグツと何か煮込む音が聞こえており、私はそれがお汁粉だと判断した。
甘い匂いがとても鼻腔をくすぐる…


海南
(でも、あのふたり…何だかとっても楽しそう)


まるで親子の様な雰囲気…トキさんにとって、育美様も上司なんだろうか?
でも、ふたりのやりとりはまるで親子の様であり、トキさんが育美様から料理を学んでいるかの様だった。
何だか、アレは邪魔しちゃいけない気がする…
ここは、立ち去った方が良いよね…♪



………………………



天海
「むぅ…流石に飲みすぎたか?」

グラードン
「うぐ…な、んで……こん、な…目に?」

ゼロ
「zzz〜」

海南
「あ、あはは…皆大丈夫ですか?」

ベル
「……?」


まだ皆頭がクラクラしてるらしい。
かくいう私もかなり頭が痛いんだけどね〜
少量でもあんなにクルとは…お酒って怖いね〜…


海南
「あ、グラードンさん! ほら、服脱げちゃってますよ!?」

グラードン
「?」


イマイチ理解が出来ていないグラードンさんは?を浮かべて顔をしかめる。
私は構わずグラードンさんの体に服を直してあげた。
うわ…グラードンさんってスタイル凄っ!
身長は低いのにこんな立派な胸は女としても憧れるよね〜


グラードン
「ぐぅ…! この服、ごわごわ、して…嫌い!」


そう言ってグラードンさんは胸元をはだけさせてしまう。
私はあわわ…!としながらもグラードンさんの胸を隠す。
いくら男がいない場と言えど、守るべき領域は守らないと!


天海
「ハッハッハ! グラードンに振袖は使いこなせぬわな〜!」

グラードン
「う、うぐっ!? 舐め、んな! これ位…着て、みせらぁ!」


そう言ってグラードンさんは振袖をちゃんと着直す。
良かった…天海さんの挑発有りきとはいえ、グラードンさんの領域は守られたよ…


天海
「しかし、グラードンよ…お前、未だにひとり孤独に生きておるのか?」

グラードン
「ああ、ん? それの、何…が、悪い!?」


天海さんはやや厳しい顔でグラードンさんにそう言う。
グラードンさんは対抗する様に睨むも、天海さんは怯みもしなかった。
そして、やれやれ…といった顔で天海さんはグラードンさんにこう言う。


天海
「悪いとは言わんが、お前も人と交わりあってみてはどうだ?」

グラードン
「…!? ま、交わり、あって…って、おまっ!?」

天海
「ん? おおっ!! そうか! お前にそんな経験は有るはず無いわな!!」


私は思わず顔を真っ赤にした事だろう。
天海さんの言ったソレは、まさに男女の営みの事…
つまり、天海さんはもう…?


海南
「あ、あの…天海さんはもしかして既に経験者なんですか?」

天海
「ん? 何の事か解らんが、慎吾との交わりなら既に何度もやっておるぞ!?」


グラードンさんはそれを聞いて全身を真っ赤にして熱量を上げる。
その際、体に浮かぶ線が光輝いていた。
間違いなく興奮してるね…私も流石にちょっと聞いてて恥ずかしいよ…


グラードン
「ば、ばっか、やろう!? お、おまっ、お前は!!」
「に、人間! ごと、きに!」

天海
「馬鹿者!! 人間を軽んじるな!!」


天海さんのその言葉は大きく響き渡り、さしものグラードンさんもビクッと体を震わせて驚いていた。
対して天海さんは真剣な顔でグラードンさんを睨み付けている。
天海さんは、人間の男性を愛して結婚した。
そりゃ、そんな愛した人を貶されたら…怒るよね。


天海
「…グラードン、俺は慎吾を愛した事を後悔した事等1度も無い!」
「そして愛した男に体を捧げる事に何の躊躇いがあろうか!?」
「俺は少なくとも慎吾の為ならば命を捨てられる!」
「人間を避け、自分勝手に生きるお前がどうして人間を蔑める!?」

グラードン
「…!! そ、れは…!」

海南
「ま、待ってください! グラードンさんだって、多分そんなつもりじゃ…!」

育美様
「いえ、この件はグラードンの落ち度ですね!」

トキ
「ったく、何羞恥心くすぐる話題を人目もはばからずに話してんのよ!?」


突然現れたのは、大量のお汁粉をトレイに乗せた育美様とトキさんだった。
天海さんも流石に育美様には逆らえないのか、腕を組んで黙っている。
グラードンさんはバツが悪そうに俯いて震えていた。

やっぱり、育美様の発言力は凄いんだね〜!


育美様
「グラードン、貴女も少しは人間の事を理解してみては?」

グラードン
「…そ、んな…事、出来、るわけ……」

トキ
「そんなんだから社会に出遅れんのよ…まぁ、私が言える立場じゃないけどね」


トキさんはそう言ってテーブルにお汁粉を並べていく。
育美様も笑顔で同じ様に並べていった。
私達はそれを見て、とりあえずお椀を手に取る。
うわ〜良い匂い♪ やっぱり正月はお餅だよね〜♪


ベル
「…む、これは?」

ターニャ
「…ぐ、頭が」


「…ん〜? この匂い、甘そう〜♪」


匂いに反応したのか、寝ていた皆が起き始める。
そして、いつの間にか天海さん達の言い争いは忘れたかの様に、皆がまたザワザワとし始めた。
天海さんももうどうでも良くなったのか、先に餅入りのお汁粉を飲み始めている。


天海
「うむっ、美味い! これは何度でもお代わり出来るな!!」

グラードン
「……確かに、美味、い、な…」

海南
「はいっ、流石育美様ですね!」

育美様
「ふふ…これはトキが作ったんですよ?」

トキ
「敬ってもらっても良いわよ!?」

パルキア
「…う、トキの…手作り?」

ゼロ
「あ〜…頭イタイ〜」

カイオーガ
「……???」


他の寝てた皆も次々とお汁粉に手を付ける。
そして各々がその温かさにホッ…とするのであった。


琉女
「あ〜…温まる♪」

カイオーガ
「本当〜♪」

ターニャ
「うむ、良い温度だ…」

海南
「はい、グラードンさんもどうぞ?」

グラードン
「う…! 人、間……な、んて!」

トキ
「こら! 人間だって一緒に生きる仲間でしょ!?」
「アンタも私達も、もう神じゃないんだから、いい加減その辺は頭切り替えなさいよ!?」


トキさんはまるで姉が年下の妹をいさめる様にそう注意する。
するとグラードンさんはバツが悪そうに頬を膨らませてしまった。
私は何だかそれが凄く可愛く思えてしまい、思わずお汁粉のお椀を持ってグラードンさんに差し出してしまう…
するとグラードンさんは顔を真っ赤にして恥ずかしがってしまった。
私はそれが全力でツボに入り、暴走状態になってしまう事に…


海南
「あ〜ん! グラードンさん、か・わ・い・いー!!」
「もう、良かったら家の娘になって欲しいーーー!!」

育美様
「それは良いですね♪ グラードン、この際人間を知る為にも海南さんと一緒に住んでみなさい!」

グラードン
「は、はぁっ!?」


思わず私が言ってしまった戯れ言が、育美様には真剣に写ってしまったらしい…
私は一瞬、やっちまったなぁ〜! とは思うも、時は既に遅し。


トキ
「良いんじゃないの? アフリカとか僻地で生活するより、こっちの方が絶対充実するわよ?」

天海
「ハッハッハ! それなら俺達とも交流が楽だしのぉ!!」

ターニャ
「…好きにすれば良い、人間を知りたいと言うならむしろ薦める」

ゼロ
「アハハッ! 愚鈍なグラードンには良い経験になるんじゃないの!?」


「まぁ、ゼロの言い方はアレだけど…私は悪くないと思うわよ?」

ベル
「…ふん、私には関係無い」

パルキア
「…私はノーコメントで」

カイオーガ
「……う、私も余り関わりたくない」


何だか、皆割りと適当だった…
私の不意な一言で大事になった気がするけど、コレどうしよう?
そんな私の考えとは裏腹に、琉女さんは追い討ちでこう言う…


琉女
「ふっ! 大地の神グラードンよ!? お前は更なる進化を望むか!?」
「それとも今のまま衰退して滅ぶか!? さぁ選べ!!」

グラードン
「ぐ、ふ、ふざけっ! んな!!」
「や、やって…やろう、じゃ…ねぇか!?」

育美様
「おおっ! それでは契約成立ですね! さぁ、海南さん! 彼女に是非名を与えてください!」

海南
「え、ええっ!? な、名前って…?」

トキ
「そんなもんテキトーに付けりゃ良いわよ…どうせグラードンのだし」

パルキア
「いや、それ酷くない!? ボク達にとって名は死活問題だよ!?」


そ、それはとても重要な事項なんじゃ!?
わ、私なんかがそんな大役担って良いんですか!?
育美様は完全に笑ってる! もうなる様になれって事!?
私はこの際、痛い頭をフルに回転させて全力でグラードンさんの名を考えた。
そして、その頭脳から導き出されたステキな名とは…?


海南
「じゃ、じゃあ……グ、グリュちゃんって言うのは…?」

トキ
「ギャッハッハ! あのグラードンが、グリュちゃん!?」
「サイコー!! もう、それで決定ね!!」

育美様
「ふふふっ! 良いのですか? グラードン、選ぶのは貴女次第ですが…」

グラードン
「…や、やってやろうじゃ、ねぇか!?」
「じょ、うとう!! 俺、は…これ、から…グリュ! だ!!」


な、何かそのまま決まってしまったらしい。
ほ、本当にそれで良いの!?
私的には大歓迎なんだけど…だ、大丈夫かなぁ〜?


海南
「あ、あの…本当に良いんですか?」

グラードン
「女、に…二言は、無ぇ! 何処、へ…でも! 連れ、て行き、や…がれ!!」

カイオーガ
「お姉ちゃんサヨナラ〜…」

パルキア
「いや、別に最後の別れとかじゃないからね!?」

琉女
「ふっ、これでお前も我と同じステージに立ったか! さぁグリュよ! 共に混沌の世界を歩もうぞ!!」


…と、様々なツッコミを受けながらもグラードンさん…もといグリュさんは私の家に来る事になったらしい。
私もこの時の記憶は色々と混濁しており、正直あまり覚えていなかった。
果たして次に私が目覚めた時、何が起こっているのか…?
それは…また先の話になりそうです。










『突ポ娘異伝録 春夏秋冬 〜四人娘の学園生活〜』



第10話 『楠 海南、神様に会う』


…To be continued

Yuki ( 2022/01/13(木) 19:07 )