1年生編
第1話 『PKMの転校生!?』
少女
「……!!」


少女はひとり走っていた。
いや、その姿をただの少女と言って良いのかは疑問であるが…

まず最初に説明しておく事であるが、この世界には普通の人間とそうでない種族が共存している。
今走っている少女は、『そうでない』種族の方なのだ。

頭には猫の様な耳がピンと立っており、本来人間にあるであろう耳は存在していない。
そして臀部からはこれまた尻尾が生えており、その先端はまるで鎌の先端の様に奇妙な形と毛並みだった。
これこそが彼女を別の種族とする一端である。


少女
「……!!」


少女は尚も走り続けている。
身長160cm少しの体格で、体はやや細身。
髪色は紫で肩まで延びるセミロング。
後ろ髪の先端はカールする様に跳ねており、それは彼女の特徴…

体格は一般的な同世代の人間と比べれば発育が明らかに良く、走る彼女の胸部は大きく揺れている程だった。
そして、驚愕すべきはその走る速度…
彼女が出している速度は前を走る自転車を容易く追い抜く程であり、時速にしておよそ40q程。
明らかに路上で出して良い速度では無いが、彼女は優れた動体視力と反応速度を駆使し、誰にもぶつからずに走り続けていたのだ。

これもまた彼女の種族としての特徴。
彼女の身体能力は明らかに人のソレではなく、まるで獣その物とも言えた。
獣…そう、ある意味それは正しい比喩と言えるだろう。
何故ならば、彼女は『ポケットモンスター』…縮めて『ポケモン』なのだから。


少女
「……!!」

少年
「うわっ橘!? 何つースピードで走ってんだよ!?」


橘(たちばな)と呼ばれた少女は後ろを振り替える事無く走っていた。
自転車を走らせながら、少女の背中を見送った少年は呆然とする。

ちなみに彼女は所謂『高校生』であり、本年度に入学を果たした、ポケモンで初の高校生女子なのだ。
ここでもうひとつ説明を加えよう。
何故彼女はポケモンでありながら、獣人の様な姿で存在しているのか?
残念ながらその疑問に答える事は出来ないのだが、強いて言うのであればまさに神の悪戯。

ともかく、ここに至った経緯は様々あるのであるが、今は割愛しておこう。
重要なのは、あくまで彼女はポケモンであり『チョロネコ』という種族が擬人化された姿…

そして…この物語の『主人公』のひとり、『橘 紫音(たちばな しおん)』である!!


















『突ポ娘異伝録 春夏秋冬 〜四人娘の学園生活〜』


第1話 『PKMの転校生!?』

















クラスメートの少女
「あ、紫音ちゃんおはよう〜♪」


私が軽く息を整えながら校門で休んでいると、後ろから声をかけられた。
その少女は私のクラスメートであり、この学校で初めて出来た『人間』の友達でもある。


紫音
「海南ちゃん! あはは…おはよう♪」

海南
「うふふ、今日は寝坊でもしたの?」


海南ちゃんは嬉しそうに笑いながらそう言う。
彼女の名前は『楠 海南(くすのき かいな)』。
見た目は人間として特に目立つ訳でもなく、実に平凡な黒髪ロングの一般女子という見た目だ。
身長は私よりも少し大きい位だけど、胸は私よりも小さい。
ちなみに彼女は陸上部に所属しており、それなりに体力はある。
その為、運動部らしく体はそれなりに引き締まっており、体付きは一般女子よりもよっぽど良いと言えるのかもしれない。


紫音
「あっはは…昨日遅くまで宿題やってたから、つい寝坊しちゃって」

海南
「ああ、そう言えばまだ終わってないって言ってたもんね〜」
「でも、そんなに時間かかる程残ってたっけ?」


実の所、宿題はそこまで原因じゃない。
あんな物、毎日コツコツやってれば最終日にはしっかり終わっている代物だ。
昨日の問題は、それ以外の要因が原因なのよね…
私は昨日のアレを思い出すと、つい苦笑してしまった。


紫音
「…はぁ、とりあえず当分特撮番組は見たくないかな」

海南
「特撮? 紫音ちゃんってそういうの興味あったっけ?」

紫音
「無いっていう程でもないけど、別にその話題で熱くなる程でもないし…」
「まぁ、とにかく思い出させないで…」


私は頭を抱えながらため息を吐く。
今日から初の2学期だというのに、先が思いやられる。
今日はオジさんにも会えなかったし、色々ストレスだよ…



………………………



担任
「よしっ! テメェ等HR始めるぞぉ!?」


そんな大きな叫びが竹刀で床を叩く音と共に教室に響き渡り、即座に場が静まる。
そしてふてぶてしく教壇の前に立つ赤ジャージの教師は紛れもなく私たちの担任であり、名は『赤井 美代子(あかい みよこ)』…
左頬には斜めに傷が入っており、どう見ても体育会系の先生だと初見の人は思うだろう。
しかしながら、ああ見えて赤井先生の担当は数学であり、ガチガチの理系女子だったりするから世の中解らない…


赤井
「まずは出席だぁ!! 阿賀野ぉ!!」

阿賀野
「はいっ!!」


阿賀野君は勢い良く立ち上がり、ビシィッ!!と敬礼して答える。
彼は色んな意味で特殊な性癖らしく、どうにも人には言えない趣味を抱えている男子だ。

まぁ、特にこれ以上語る事は無いのでそのまま場は進行していく。
新学期開始で欠席は誰ひとりおらず、実に我がクラスは優良健康児の集まりと言えるだろう。



………………………



赤井
「うっし! これから全員で体育館に向かうんだが…その前に転校生を紹介する!!」

紫音
「転校生?」

海南
「へぇ〜誰なんだろ? 男子かな? 女子かな?」


私たちは俄にざわつき始める。
だけど、赤井先生の竹刀がビシィッ!と教壇を叩くと、全員は一瞬で黙った。
そして先生はヤクザみたいな細い目で私たちを威嚇し、静かにこう告げた…


赤井
「良いかテメェ等…? くれぐれも問題だけは起こすなよ?」
「よし入れ転入生!! まずは自己紹介しろぉっ!!」


その言葉と共にガララ!と勢い良く扉が開き、そこからひとりの女子が入って来る。
当たり前だけど私たちと同じ夏服の制服を着ており、髪色は暗い赤色で長さは腰の下まで延びるロングヘアー…
身長は約170cm位で体格はそれなりに良く、胸は私と同等クラスに大きい。
そして何よりも驚かされたのが、頭から生える長い黒耳と大きな赤い尻尾だった。
私たちはその姿にどよめきを隠せず、注目せざるをえなかったのだ。


転校生
「…『ルナール・カメリア』、『クスネ』のPKM」


そう名乗った少女はふてぶてしい顔でふんっと鼻息を鳴らした。
どうにも不安だらけな感じがする娘だけど、まさかの外国人!?


赤井
「とりあえず軽く説明するが、コイツは元フランス出身のPKMで今は日本の機関で引き取った存在だ」


知らない人の為に一応説明するけど、『PKM』…『Pokemon Keep Maintenance(ポケモンを守る為の名称の意)』とは現在私たち人化したポケモンたちの事を一般的に表す呼称だ。(正式名称は後付けって噂があるけど…)

このPKMという存在は全世界に多数存在しており、その数は未だに正確には把握されていないと言われている。
私もそのひとりなんだけど、まさかもうひとり入学してくるなんて…


赤井
「まぁ色々理由はあるが、とにかく今日から一緒に過ごす一員だ! 仲良くしろよ!?」


全員がはいっ!と大きな声で答えるも、当のルナールさんは耳の穴に指を突っ込み、鬱陶しそうにしていた。
うーん、何だか協調性の欠片も見えなさそうなんだけど、本当に大丈夫なのかな?


赤井
「よし!! すぐに体育館に向かうぞ!? 全員整列だぁ!!」



………………………



校長
「…というわけで、今学期に置いてはふたりのPKMを新たに向かえるという事になりました」


今、全校生徒が体育館で始業式を受けていた。
今は校長先生のありがた〜いお話し中であり、すでに私はあまりに眠くてウトウトしてしまっている。
正直、何を話しているのかも良く解っておらず、既に意識は別の所へ旅立とうとしているのだった…


校長
「それでは、おふた方…どうぞ皆さんにご挨拶を」


「え、えっと…琴紀(ことき) グリナと言います! 」
「正直、学校とか生まれて初めてで、どうしたら良いのか良く解りませんけど…」
「どうかよろしくお願いします!」


そんな言葉と共に皆からは拍手で歓迎される。
まぁ私の時もそうだったし、大体同じ様な対応と言えるでしょ。
ちなみに私は既に壇上は目に入っていない。
もう良いから、早く眠りたい…


赤井
「次ぃ!! ルナール、テメェも宣戦布告だぁ!!」

ルナール
「…あ〜アタシ、ルナール・カメリア」
「フランスから来たけど、別に日本語OKなんで気にしなくて良いから」
「まっ、よろしく…」


赤井先生の叫びで意識が呼び戻された…
そしてルナールさんはかなりザックリした対応で挨拶する。
何て言うか…やる気の欠片も感じられない。
しかし、ちゃんと拍手は起こり歓迎はされる。
…って、当たり前の対応なんだけどね。
私も欠伸をしながら拍手だけはしておいた。
うー…ホント今日は最悪の眠さだよ。



………………………



そのまま始業式は滞りなく終わり、再び私たちは教室に戻った。
そして、赤井先生がまずこう話す。


赤井
「とりあえず、今から席替えをやるぞ!?」


その言葉と共に全員がハシャギ始める。
私はよく知らないけど、そんなに嬉しいイベントなの?私は机に突っ伏しながら欠伸をしていると、隣の海南ちゃんが話しかけてくる。


海南
「紫音ちゃん紫音ちゃん! 席替えだよ!?」
「うわ〜ドキドキするね〜♪」


私には全く理解出来ないイベントだった…
とはいえ、他の生徒は皆一喜一憂しているし、意味のある事なのだろう。


赤井
「とりあえず公平にクジ引きだ! 早い者勝ちで取りに来い!!」


先生がそんな事を言ってしまうもんだから、すぐに皆は亡者の様にたかり始めた。
当然皆揉みくちゃになりながらクジを引いていき、みるみる内に席は埋められていく。
ちなみにクジを引いた生徒は一旦元の席に座り直し、全部終わってから正式に席を変える気の様だった。
私はとりあえず落ち着いた辺りでうーんと背伸びをし、ゆっくりと席から立ってクジを引く事にした。

まっ、残り物には福があるってオジさんも言ってたしね♪


紫音
「………」

ルナール
「………」


何故か、ルナールさんと目が合った。
どうやら私とタイミングが被ったみたいで、共に最後のクジを狙っていたみたいだ。
私たちはふたり教壇の前で止まってしまい、そのまま沈黙が始まる…


紫音
「…どぞお先に〜」

ルナール
「はぁ? アンタが先じゃない、さっさと引きなさいよ」


そんな事を言われる。
ルナールさんは鬱陶しそうに片眉を釣り上げ、ふんっと鼻で息をしてしまった…
私は面倒臭くなったので先に引く…数字は7番!
ラッキーセブンだね♪


紫音
「えっと…席は?」


私は黒板を確認し、7番の席の位置を見る。
ちなみに番号の配置はデタラメであり、順番通りに等なっていない。
赤井先生らしいというか、自由奔放なやり方だね…


紫音
「とりあえず、窓際確保〜♪」


しかも今の席から後ろに下がるだけだ、これは楽で良い♪
私は満足しながら元の席に戻り、後は先生の指示を待った。


赤井
「よっしゃあ! なら今から席を変わるぞ!?」
「荷物はしっかり机から出しとけよ!? 忘れ物するんじゃねぇぞ!?」


そんな怒号にも似た号令で皆は一斉に動き出す。
私は机に何も入れていないので、鞄だけ持って後ろに下がるだけだ。
海南ちゃんは少し寂しそうにしながらも、笑顔で手を振って私の席から離れて行った。

そ、そっか…席替えだから、そういう事もあるよね。


そしてワラワラとしばらく皆が動き回り、やがて全員が新たな席に着く。
私の席は窓際最後方の席であり、ある意味絶好のポジション。
後ろを気にしなくて良いのは気分的に楽だ♪

ちなみに隣には男子生徒の沢辺君が座っていた。
特に目立つ事も無い、眼鏡のインテリ系だね。
そして肝心の私の前…所謂以前私が座ってた席には彼女が。


ルナール
「………」


そう、ルナールさんだ。
今日転校して来たばかりの、クスネの女子生徒。
クスネって、聞いた事無い種族だけどどんなポケモンなんだろ?
見た感じ獣系で、耳や尻尾の色合いから私と同じ悪タイプみたいな感じするけど…


赤井
「よしっ!! なら宿題回収したら今日はここまでだ!!」
「ルナール以外の全員、帰り際で良いから提出していけ!!」
「明日からは授業開始だ! 気ぃ抜くんじゃねぇぞ!?」
「じゃあ解散っっ!!」


その号令と共に、私たちは一斉に立ち上がる。
そして私は鞄から出来上がった宿題を取り出し、小走りしてそれを先生の元に持って行った。


赤井
「よし、上出来だ! あ、橘…お前今日はルナールと一緒に掃除当番な?」

紫音
「あ、は〜い…ってふたりだけで?」

赤井
「他に欲しけりゃ自分で交渉しろ」
「それとも、人望に自信が無ぇか?」


そう言ってワザとらしく微笑む先生…
私はうーん…となり、とりあえず先に交渉する事にした。
まぁ、後ひとりふたり入れば別に良いでしょ!


紫音
「海南ちゃ〜ん、掃除手伝ってくれない?」

海南
「うん、良いよ〜シェイクで手を売ってあげる〜♪」


あはは…相変わらずしたたかだね。
オドオドしてる風に見えて、海南ちゃんは中々しっかりさんだ。
1年生ながらも、陸上部で頑張ってるし成績も優秀。
良い加減クラスにも馴染んでるし、今やそれなりに人気者だもんね〜


紫音
「後、もうひとり位…」


私はキョロキョロするも、既にクラスメートたちはいなくなっていた。
って、皆逃げるの早っ!

最後に皆の膨大な宿題を大きな鞄に入れ、赤井先生が教室を出て行った。
残されたのは私たち掃除当番3名…


ルナール
「ウザッ、何でアタシが…」

紫音
「文句言わないの〜、誰かがやらなきゃならないんだから」

海南
「そうそう! これも学生生活の一環だもんね〜♪」


海南ちゃんはそう言って楽しそうに机を押していく。
私も一緒にそれを手伝い、ルナールさんはため息を吐いて箒を手にした。
口は悪そうだけど、別にやる気が無いわけでも無さそうだ。
私は少し安心しながらも、そのまま掃除を続ける事にした…



………………………



紫音
「ふぅ、やっと終わった〜」

海南
「あはは…思ったより時間かかっちゃったね」

ルナール
「…じゃ、さよなら」


そう言ってルナールさんはすぐに立ち去ろうとする。
すると、海南ちゃんがこう声をかけた。


海南
「あ、ルナールさんも良かったら一緒に帰らない!?」
「折角の縁なんだし、少し寄り道して帰ろうよ♪」

ルナール
「…アタシに何のメリットあんの?」

紫音
「じゃあ、シェイクおごってあげようか? どうせ海南ちゃんにそうする約束だし」

海南
「そうそう! 紫音ちゃんのおごりだよ〜♪」


それを聞いたルナールさんは少し考える…イマイチ何を考えてるのか解らないけど。
どうにも、普通の生徒とは違う雰囲気だしね〜
って、PKMなんだしそりゃ仕方無いのか。

と、私が思っているとルナールさんはここで私たちの予想しない返答を返す事となる…


ルナール
「…シェイクって、何?」



………………………



紫音
「というわけでやって参りました、いつものファーストフード店!」

海南
「○クドナルド〜♪」

ルナール
「…ああ、○クドね」

海南
「あ、流石に知ってるよね〜って、そこは○ックじゃないんだ…」


何か妙な所ですれ違う言葉の壁。
私はどうでも良いけど、フランスじゃ言い方が違うんでしょ、多分。
私は気を取り直していつもの行列を見る。
うん、今日も大人気だ!


ルナール
「ウザッ、何でこんな時間にこんな並んでんの?」

海南
「まぁ、今日は学生だらけだからね〜」

紫音
「皆考えてる事は一緒って訳か…」


私はとりあえず今日のネタは何なんだろう?と、何となく想像を膨らませつつも、とりあえず3人で列に並んで待つ事にした。


紫音
「シェイクだけなら別に持ち帰りで良いよね?」

海南
「そうだね、まだお昼には早いし…でも私はポテトも欲しいかな〜♪」
「ルナールさんは、何か食べたい物ある?」

ルナール
「…ん、じゃあマカロンが良いかな」

紫音&海南
「えっ?」


ルナールさんは素でそう言った。
マカロンって、何かアレだよね?
フワッとした、お菓子だっけ?
そんなのこの店にあったっけ?
いや覚えが無い…CMでも見た事無い!


海南
「あ、あはは…それは流石にここには無いかな」
「アップルパイとかじゃダメ?」

ルナール
「じゃ、任せる」


ルナールさんはぶっきらぼうにそう言って以後黙る。
あまり口数は多くない娘なのかな?
まっ、とりあえずしばらくは順番待ちだね〜



………………………



店員
「ふっ、またあの甘美な誘惑に惑わされたか?」
「だがそれもまた生きる者の性!!」
「さぁ受け取るが良い!! こちらは漆黒の闇より抽出されし気高き魔力!!」
「そしてこちらは天界より堕ちた、かつての白き残滓より生み出せし罪深き魔力!!」

海南
「ありがとうございます〜♪」

店員
「ポテトとアップルパイは、焼き上げにもうしばらくお待ちくださ〜い♪」


とまぁ、いつのものノリで私たちはシェイクを受け取った。
とりあえずポテトとアップルパイは少し時間がかかるとの事なので、先にシェイクだけ受け取ったのだ。


ルナール
「…ケスクセ?」

紫音
「はい? 何の事?」

海南
「美味しく無かった?」


ルナールさんは謎の言語を放った後、無言でバニラシェイクを飲んでいた。
私たちは定番のチョコシェイクを飲んでいる。
とりあえず、味に不満は無いみたいだけど。


ルナール
「…あの店員、PKMだけど」

紫音
「ああ、琉女(るな)さんね」

海南
「って、ルナールさんと名前が似てる〜♪」


確かに、琉女さんとルナールさん…発音だけだと少し紛らわしいかもね。
文字にしたら間違え様も無いんだけど…


ルナール
「ケスクセ…じゃなくて、何なのアレ?」
「意味不明な言語で喋ってるけど、何であんなキャーキャーされてんの?」


ルナールさんは今日1番の口数でそう尋ねてきた。
うん、そりゃまぁそうだよね…初見だと誰でもそう言うよね!
とりあえず知らない読者の為にも解説は入れておこう…


紫音
「あの人は『紅恋 琉女(ぐれん るな)』って言って、『ルナアーラ』ってポケモンなんだって」

海南
「伝説の月輪ポケモンなんだよ〜♪ しかも厨二系美少女!」


そう、今も尚様々な厨二的ポーズで台詞を連呼し、お客さんを喜ばせているのがその琉女さん。
今年入ったばっかの新人なのに、今や街でもトップクラスの有名人だもんね〜


ルナール
「ルナアーラ、伝説の…?」
「…世も末だね、そんなポケモンが接客業とか」

紫音
「別に良いんじゃない? 伝説ったってこの世界じゃ所詮一般市民だし」
「本人がやりたい事やって生きるのは、別に良い事でしょ?」

ルナール
「ウザッ、何説教?」
「随分良い娘ちゃんだ事…」

海南
「も〜喧嘩はダメだよ〜!? はい、アップルパイ!」
「それ持って、一旦外に出よ?」


海南ちゃんがそう制し、私たちはとりあえず外に出る。
後は何となく食べ歩きながら、会話を交わして帰路に着いていた。



………………………



海南
「ルナールさんって、何処に住んでるの?」

ルナール
「アンタに教えるメリットあんの?」

紫音
「そんな突っかからなくてもいいじゃん…」


何となく私はそうツッコム。
そういう性格なのかもしれないけど、どうにも彼女の態度には馴染めそうもない。
いくらなんでも口が悪すぎるでしょうに…


海南
「う〜ん、住んでる所が解ればギリギリまで一緒に帰れるルートが解るじゃない?」

ルナール
「それアタシに何のメリットあんの?」
「いやアンタにはメリットかもしんないけど、アタシには何のメリットも無いよねその答え?」

紫音
「あ〜言うだけ無駄だよ…? 海南ちゃんは気に入った友達見付けたら絶対に退かない娘だから」


ルナールさんはかなりウザそうな顔をした。
うん、解らなくは無いよ…私も初期はドン引きする事もあったし。
まぁ、全然悪い娘じゃないからその内慣れるんだけどね♪


海南
「ってな訳で、お友達になってくれますか?」

ルナール
「いやそれ断ってもアタシが頷くまで付き纏われるパティーンでしょ!?」
「かなりウザいんだけど、何なの? この『はい、いいえ』の2択迫りながら『はい』しか許さないつー意味が全く無い選択肢は!?」

紫音
「うわ、実に的を射た表現だね…」
「まぁ強いて言うなら強制イベント?」
「御愁傷様〜」


私はかなりテキトーなテンションでそう言って合掌した。
海南ちゃんはニコニコ顔で答えを待っているが、ルナールさんはプルプル震えながらウザそうにしている。
うわ…コレは重症だね。
よっぽど友達いないに違いないこの娘は。


ルナール
「チッ、付き合ってられるか…」

海南
「あ、ルナールさ〜ん!」

紫音
「もう良いんじゃない? どうせ明日も学校で会えるんだし」


ルナールさんはスタスタと早足で去ってしまう。
あの方角はオジさんの家がある団地の方角だね…もしかしたら同じ所かな?


海南
「うーん、すぐには心を開いてくれないかぁ〜」

紫音
「むしろ開けると思ってたの!? 初対面で!?」

海南
「だって紫音ちゃんは開いてくれたじゃな〜い!」


そう言って海南ちゃんは私に抱き着く。
ちなみに私は断じてレズではないので、一向に萌えはしない。
ただ、海南ちゃんは重度の可愛い物好きであり、自分の性癖が隠せないだけなのだ…
つまりまぁ…うん、ルナールさんは御愁傷様!



………………………



紫音
「…はぁ、何か今日は疲れた」


「お、もう学校は終わりか? お疲れさん…」


私はその声を聞いてピコン!と耳を立てる。
そして臭いを確認し、私は一気に男性の体に飛び付いた。


紫音
「オジさん〜!」

オジさん
「何だ何だ? 今日はまた随分勢いがあるな…」


私の全力抱き着きでもオジさんはビクともしなかった。
それもそのはず、オジさんは私のヒーローだからこんな事位では何ともないのだ!
ちなみに、オジさんの身長は185cmで髪はボサボサ。
そして腰まで伸びるお下げを首の下でゴムバンドを使い止めている。
服は白のタンクトップで、下は茶色のズボンでベルトにはチェーンが付いているのがポイントだ。
更に年齢は33際で、職業は何でも屋…

まぁ他にも語り出したらキリが無いけど、この人こそが世界で1番! 私の大好きなオジさんなのだ♪


紫音
「もう聞いてよ〜、昨日のアレのせいで寝坊するし、何か転校生が刺々しいし、海南ちゃんはいつも以上にノリノリだし!!」

オジさん
「ははは、楽しそうじゃねぇか♪ 愚痴が出る内は余裕ある証拠だぞ?」


オジさんはそう言ってタバコを吸いながら私の頭を撫でてくれる。
私はそのまま頬をオジさんの胸に擦り付け、ゴロゴロさせてもらった。


オジさん
「しっかし、そうか〜もう夏休みも終わったのか…」


オジさんは何やら空を見上げながらぼーっとした。
半年位かけてやってた大きな仕事が片付いて、しばらくは気が楽になったって言ってたけど…


紫音
「…オジさん、今は忙しいの?」

オジさん
「…ああ、まぁ多少はな」


オジさんは含みのある言い方でタバコを吸いながら答える。
実の所、このオジさんはちょっと人に言えない仕事をしている人なのだ。
私はそんなオジさんの裏の顔も良く知っている。
知っている上で、私はオジさんの事が大好きなのだ。

このオジさんは私の大切な家族を救ってくれた恩人。
あの1件以来、私はオジさんの優しさに憧れて夢を抱く様になった。
汚い仕事からは手を洗い、全うな人生を歩む為に…

だから、私は今『看護師』になるという夢をひたすらに目指している。
私でも、誰か救える様になる為に…その為に勉学も運動も頑張っているんだ。


オジさん
「まっ、いつもの事だからな…紫音ちゃんが気にするこたぁ無ぇさ」


そう言ってオジさんはタバコを握り潰し、吸い殻をパラパラ…と備え付けの灰皿に捨てた。
私は少しオジさんから離れ、うーんと背伸びをする。
それを見てオジさんはカカカと笑った。


オジさん
「本当に猫っぽいよな」

紫音
「だってチョロネコだもん♪」


と、その時…突然謎の音楽が鳴り響いた。


テーレレレッテーレレレッ! テーレレレッテーレレレッ!
テーレレッテレーテレレレレッー!



「レーザーブレェェェドッ!!」

紫音
「げえっ!? 昨日のデジャブがぁ!?」

オジさん
「おう、何だ仕事か?」


オジさんは携帯電話を耳に当てて通話していた。
ちなみに今の音楽はオジさんの着メロで、とある有名な作品の物らしい。
そして、それにすかさず反応して叫ぶ謎の少女が…



「また会いましたね! ヒーロー!!」

オジさん
「ああ解った、また後で連絡するわ」

紫音
「…もうヤダ、何でこうなるの?」


私は一気に疲れが溜まり、頭を抱えてしまった。
そして颯爽と現れた謎の少女の姿を見て私は更に驚愕する事になる…


オジさん
「おっ、グリナちゃんじゃねぇか! 何だ、また語りたくなったのか?」
「って、今日は制服なんだな…それも紫音ちゃんと同じ」

紫音
「な、何で!? 赤のリボン…って事は、1年生!?」


ちなみに、私たちの制服は胸元にあるリボンの色で学年が解る様になっている。
1年は赤、2年は緑、3年は青となっているのだ。
グリナと呼ばれた彼女は、つまり1年生。
私と同級生という事だねっ。


グリナ
「って、今日始業式で挨拶しましたよね?」

紫音
「そ、そう言えばしてたかも…」


あの時は眠すぎて記憶が曖昧だったけど…
でも確かにふたりPKMの転校生が来たって言ってた様な…!


オジさん
「何だ、ふたりはタメか?」
「だったら同じPKM、仲良くしろよ? 俺は用事出来たし、そろそろ行くけどまたな!」


そう言ってオジさんは笑顔で手を振って行ってしまった。
グリナは同じ様にニコニコしながらそれを見送る。
うぐ…これでもかと尻尾を振っているじゃない!

ちなみに彼女は『グラエナ』という種族のポケモンだ。
髪は私と同じ位のセミロングで、やや毛並みはふわっとしてる。
頭に生えている耳は灰色の縁取りで内側は黒い色。
尻尾は黒一色であり、タイプも解りやすいだろう。
そして一見純真無垢な彼女の紅い瞳からは、私に対して異様な何かを放っていた。
私はそれを感じてやや後ずさる。
すると、グリナは一歩強く踏み込んでこう話した。


グリナ
「私と一緒に、今から遊びに行きませんか!?」


それは、明らかに友好的な態度だった…
私は昨日の事がトラウマの様に思い出され、頭がパンクしそうになる。
しかも昨日の今日だ…逃げられる気もしない。
昨日だって無理矢理付き合わされたし…
私はきっと今頃涙目になっていた事だろう。

だが、これは紛れもなく現実であり、現在進行形。
私の苦難は…ここから始まるのかもしれないのだ…
そしてこれは…そんな4人の女子生徒が織り成す、平凡な学園生活の物語。










『突ポ娘異伝録 春夏秋冬 〜四人娘の学園生活〜』



第1話 『PKMの転校生!?』


…To be continued

■筆者メッセージ
この作品は、突然始まるポケモン娘と歴史改変する物語 スピンオフストーリー 『Avenger』シリーズからの外伝作品となっております ですので先に当該作品を読み終えていただいた方が深く物語に入り込めるかと思われます
Yuki ( 2021/04/04(日) 14:57 )