第2話
聖
「キング○リムゾン! その時間を吹き飛ばす!!」
守連
「…何、それ?」
?
「オモロイなぁ〜アンタのトレーナー♪」
あ、ありのまま今起こった事を話すぜ…
俺が守連を匿ってから1週間後…俺はフツーに守連を家に置いて学校に行っていたんだ…
そして、フツーに学校から家に帰ったら、いつの間にかひとり増えていた…
な、何を言ってるのか解らねーと思うが、俺も何が起こったのか解らなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
幻覚だとか、夢オチだとかそんなチャチなモンじゃ断じてねー…
もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ…
?
「〜♪」
と、まぁ冗談は置いておいて、どうやらこれは現実らしい。
守連の隣で優雅にコーヒーカップ(俺の家にあったのを勝手に使用)を片手に、コーヒーを啜っているのは、九本の尻尾を揺らめかしている長い金髪で関西弁の女。
もはや7月に入り、暑さがどんどん上昇している中だと言うのに、コイツは厚手のコート(金色)なんぞを着込んでおり、見ているコチラがバテそうな見た目だった。
しかし、それを吹き飛ばす程の端麗な顔付き!
そして、多くの紳士を釘付けにするであろう、あの胸の山!!
俺はそんなロマンの前に、この非常識な現実を受け止めてしまったのだ…
ちなみに、あのコーヒーはたまたま家にあったインスタントの『ホット』コーヒーだ…
マジで暑苦しい…
聖
「だが、アレは…良い物だ(おっぱい的な意味で)」
守連
「モグモグモグ」
金髪
「あははっ! この漫画オモローイ♪」
俺の独り言にも反応せず、守連はガツガツとあんぱんを頬張る。
ここん所は、間食を挟ませる事でとりあえず守連の空腹は凌がせているが…
そうしないと段々弱ってきやがるからな…
ただでさえコイツは暑さが苦手らしく、想像以上にこの季節はヘタれている様だ。
そして謎の金髪女は、俺の部屋にある漫画を見て爆笑している。
つーか、どう見てもコイツ…
聖
「キュウコン」
金髪
「何や、会っていきなり求婚?」
聖
「また微妙なネタを突然かますな!!」
「答えはイエスかノーだ!」
金髪
「はちみつくまさん♪」
聖
「今時反応しにくいわ!!」
「どんだけのポケモンユーザーがそれを理解出来ると思う!?」
深い言及は避けるが、ネタの時期的にはリアル金銀世代ピンポイントとだけ言っておく。
とりあえず、答えはイエスって事だ。
聖
「で、お前も記憶喪失のオチか?」
キュウコン
「そやね、何も知らへんよ」
俺の目を見ずにズズッ…とコーヒーを啜りながら漫画を片手に答える。
何つー怪しい答え方だ。
これを信用して良いものなのか…?
少なくとも守連は裏表無く、見たまんまの素直さだったからな。
だが、コイツは怪しいとしか言えん。
そもそも、戸締まりはしっかりしていたし、守連にも決して鍵を開けるなと釘を指しておいた。
な・の・に!
守連がトイレに行っていた間に、コイツがいつの間にか俺の部屋にいたと言うのだ!
こんな摩訶不思議があろうか?
守連がエンカウントしただけでも大事なのに、何で増えてんだよ…?
聖
「とりあえず元の世界に帰ってください」
キュウコン
「え〜? 戻り方知らへんも〜ん」
俺の提案に、彼女は顔を膨らませて嫌がる。
ちなみに耳は守連同様、頭に付いている。
ただ、その耳はキツネをイメージする物で、ピカチュウの守連に比べるとかなり獣っぽい。
まぉ、ピカチュウの耳はかなり特徴的だからな…
守連
「ハムハムハムッ」
聖
「お前はさっきから食い過ぎだ!」
バシッ!と俺は守連の頭を軽く叩く。
効果は普通だが守連の動きは止まった。
別に王者の印は持っていないがなっ。
ちなみに手は痺れた…チクショウ、コイツの静電気、発動率高けぇな!
守連
「うぅ…まだお腹空いてるのに」
聖
「少しは自重しろ! 厨ポケでも無いくせに…」
まぁ、厨ポケでも自重するに越した事はないのだが…
とにかく、ただでさえ守連は無駄に食費がかかる。
今でもあんパンやらカレーパンやら、もう2〜3個は平らげているからな。
学食の余り物を安く購入したりしてるから、費用は抑えてあるが、もう少し自制してもらわねば。
キュウコン
「なぁ〜別にええやんか〜? ウチも匿ってぇな〜♪」
そう言って狐女は俺の腕を優しく掴んで揺さぶる。
その際にあの胸の膨らみが腕に押し付けられた。
当然、健全な青少年の俺はその仕草にドキッとしてしまうが、これも作戦だとしたら、簡単に引っ掛かるわけにはいかない。
俺は少々乱暴に引っ剥がし、強めに反論する。
聖
「甘えるな! 攻撃がガクッと下がる!」
「いくら何でもふたり養うのは財政がキツい!」
実は、割と切実な問題だ。
家は別に貧乏ではないが、それでも俺が動かせる金はそう多くない。
…まぁ、もちろん決して不可能でも無いんだが。
聖
(あの親から金をせびるのは最終手段だ)
そんな事したら、即座に心配して飛び帰って来かねん。
今の状況が落ち着くまで、守連の事は両親に秘密にするつもりだからな。
キュウコン
「う〜ん、確かにそれはちょっと問題やね。生活費となると、そうポンとは出てこうへんか」
狐女は胸の下で両手を組み、うんうんと言いながら、意外にもマトモな事を言う。
どうやらそれなりに考える頭はあるようだ。
だが、コイツは直後にとんでもないことを言い出す。
キュウコン
「よしっ、ほなウチが働いて稼いだる!」
「それなら文句無いやろ?」
聖
「アホっ! いや、言ってる事は正しいが、やろうとする事はアホだ!!」
「お前のその格好で、どうやって人前に出る気だ!?」
金髪、狐の耳、九本の尻尾、夏日の中で毛皮のコート!
どう考えても職務質問コースだろ!?
コスプレにしたって季節を選べ!
キュウコン
「そんなん大丈夫やて♪ ちょっと外に出た時も全然大丈夫やったし」
聖
「そりゃ、普通はコスプレか変人と認識するだろうしな」
「つか、既に出てたのかよ!? 俺への体裁を考えろ!」
コスプレ女をふたりも匿ってたとバレたら確実に変人認定だ。
出来れば目立った認識はされたくない。
つーか、もうバレてんじゃなかろうな…?
キュウコン
「大丈夫やって! ウチが保証したる!」
「もう働き口も決めてるし!」
聖
「は? 随分段取り良いな…何の仕事だよ?」
率直な意見だが、逆に気になる。
そもそも、ポケモン娘であるコイツらが人間として働くのに何の違和感も無いのか?
キュウコン
「いっぺん通りがかった所でな、喫茶店見つけてん♪」
「中の店員、皆ウチみたいな耳と尻尾付けとったで?」
成る程…コスプレ喫茶か。
そういや、近くの商店街にあったな…流石に行った事はないが。
まぁ、確かにそこなら違和感は無い…か?
聖
「ぬぅ…この際、背に腹は代えられんが」
キュウコン
「ええやん、決定!」
「アンタには絶対迷惑かけへんから!」
そう言ってお願い♪のポーズで体をくねらせる。
その際にコートの上からでもはみ出る胸元に俺は視線を奪われる。
おのれ…無駄にエロい身体しおって。
まぁ、そうまで言われては俺もむげには出来ない。
聖
「分かったよ、とりあえずそれで行こう」
「それなら少しは飯もグレードアップ出来るしな」
ひとりなら特に気にもしなかったが、大飯喰らいがいるとなると正直キツイ。
更に増えるとなると、頭が痛くなるわ。
だが、ひとりでも働けるなら、その負担はほとんど無くなる。
と言うか、むしろ給料によってはプラスになる確率が高い。
仕送り 給料という計算になるからな。
コイツなら週5〜6はフルタイムで入れるだろうし、収入は測り知れんか。
キュウコン
「よしっ! ほな早速手続きや! 電話ってどれ?」
聖
「慌てるな! 店の番号知ってるのか?」
そもそも電話の使い方知ってるのか?
つーか、よく電話の事知ってたな…
キュウコン
「あ、そうか…ウチとしたことが」
「ほな、直接行くわ!」
聖
「だから慌てるな! 履歴書も何もねぇだろ!?」
こやつ…せっかち過ぎる。
思い立ったら吉日とは言うが、急がば回れが俺の心情だ。
まぁ、場合にも寄るが…
キュウコン
「むぅ、意外と面倒やねんな…」
「分かった、ほなアンタに任せる!」
ドタバタしたものの、結局そうぶっちゃける。
どうやら頭良さそうに思えて、直感タイプの様だ。
間違いなく素早さに補正が入っているな。
その分防御は低そうだが…
俺はとりあえず、たまたま自室の棚にあった履歴書を取り出し、必要事項を記入していく。
万が一の時、バイトでもするかと思って用意しておいたのが役に立つとはな…
聖
「と…そういや名前は?」
キュウコン
「知らんよ、記憶喪失やもん…アンタが決めてぇな?」
聖
「む…そうか。なら…」
キュウコン
「可愛いので頼むで!?」
そう言って彼女は子供の様に目をキラキラさせて期待していた。
ぬぅ…そこまでされると下手にネタをかますのは気が引けるな。
聖
「よし、なら阿須那(あすな)だ」
守連
「うぅ…最初からマトモな名前」
横から妙な愚痴が聞こえて来たが気にしない。
とりあえず仕方ないので俺は『魔更 阿須那』と、名前記入欄に記載した。
とりあえず、家の者としておいた方がトラブル無いだろ。
そして、当の本人は…
キュウコン
「ええやんええやん!! ウチ気に入ったで!」
「阿須那…ウチの、名前♪」
予想以上の喜び様に、俺はちょっと焦る。
何だかなぁ…そんなに名前が嬉しいのか?
向こうの世界じゃニックネームとかあんま付けないのかね?
俺は基本的につける派だが。
聖
(まっ、後はなるようになれ、か…)
元々深く考えるのは苦手だ。
自分で思った様にやってりゃ後悔も少ないだろ…
そんな風に思い、俺は履歴書を書き終え、阿須那に手順を事細やかに説明した。
ちなみに、阿須那は20歳らしい。
本当かどうかは解らないし、そもそもキュウコンと人間の年齢比率が一緒とは限らんし。
メタな話、キュウコンは1000年生きるとか図鑑に書いてあったからな!
そうなると、1000年の内の20年とか赤ん坊も良い所だろ…?
とまぁ、別に気にする事も無いんだがな…
聖
「よし、とりあえず俺も同行してやるから、まずは写真を撮りに行くぞ?」
「守連は留守番な」
阿須那
「OK、分かったわ」
守連
「うん、早めに帰って来てね?」
俺はああ、とだけ守連に答え、阿須那を連れて外に出る事にした。
が、その前に忘れていた事があった。
聖
「そういや、その服何とかするぞ!」
「外に出るなら基本的に別の服に着替えろ!」
阿須那
「えぇ〜? 今更やん、別に」
聖
「だから体裁を考えろ! そんな目立つ服の女が我が物顔で家に出入りしてたら、俺がここにいられなくなるわ!!」
それだけは何としても避けたい。
幸い、両親の服があるから、それを拝借しよう。
俺はそう思い、1階にある両親の部屋に行く。
………………………
聖
「………」
両親の部屋に着いた俺は、何となく佇んでしまった。
別に定期的に掃除に来てるし、久し振りと言うわけでもないのだが。
ただ、何となく…
聖
(いつ帰って来るんだろうねぇ〜?)
そう思った。
元々放任主義の両親で、基本仕事人間だからな。
今も海外でふたり仲良くやってんだろう。
帰って来たら、妹とか出来てたり…って流石にそれは無いか。
…無いな! 無いと思おう!!
聖
(アホらし、さっさと見繕おう)
俺はいたってフツーの白のワンピースを選ぶ。
後は帽子も見繕っておいた。
後、阿須那は裸足だったから、靴下も揃えないとな。
靴は、下駄箱に入ってるだろ。
こうして、俺はそれを阿須那に着替えさせ、何とかマシな風には持っていった。
………………………
阿須那
「ん〜そんなに耳や尻尾は見せん方がええのん?」
聖
「当たり前だ、もし聞かれたりしたら、アクセサリーだと言い張れよ?」
阿須那
「むぅ、分かった」
何だでコイツも割と素直に言う事は聞いてくれる様だ。
それなりに後ろめたい気持ちもあるのか、一応家主の俺に迷惑をかけるのはしたくないのかもしれない。
しかし、ワンピースの中に無理矢理尻尾隠させてるから、妙に尻側が膨らんでやがるな。
まぁ、人とすれ違う程度ならそんなに気にはならないか…
………………………
聖
「よし、これで後は機械の指示に従えば大丈夫だ」
阿須那
「…ん」
俺は商店街の写真機で、証明写真の取り方を教えてやる。
特に問題も無く、出てきた写真を俺はその場で切り分け、そして履歴書に写真を貼った。
ちなみに、耳は無理やりフレームアウトさせて目立たない様にさせてある。
この辺のテクもさりげなく重要だ。
さて、後は肝心の店に行くだけだな。
最も、そこが一番難しいんだが。
聖
(そもそも、いきなり行って面接なんて受けてさせもらえるのか?)
普通に考えたら、後日改めて…とかがパターンだが。
とはいえ、そんな俺の予想はいとも簡単に覆される事になったのだった。
結果は即面接、即採用。
そんなに気に入られたんだろうか…?
まぁ、間違いなく可愛いのは認めるが。
………………………
阿須那
「えっへへ〜ごっつ楽勝やん! もう明日からでも来てやって♪」
聖
「そ、そうか…何も疑問に思われなかったか?」
俺が不安そうにそう聞くと、阿須那はうんっ、と気持ち良く頷いた。
嬉しそうだな…かなりご機嫌の様だが、どんな面接だったんだろう?
だが、俺は特に追及はせずに、そのまま阿須那だけを家に返して、俺は買い物に向かうことにした。
さて、一難去ってまた一難…今夜は何作るかねぇ?
………………………
聖
「さて、とりあえずは飯にするか…」
「お前ら何食いたい?」
守連
「私は何でも♪ 贅沢は言えないし」
阿須那
「ウチも任せるわ、あんま人間の料理とかよう知らんし」
ふむ、なら返って拘るのも問題か。
だったら、楽に作れるので行きますかな!
………………………
俺はとりあえず、ちゃんぽんを作っていた。
10円で買った安物の中華そばを5玉程大鍋にぶち込み、そこに野菜と肉を適量入れる。
これだけでもかなり安上がりになるからお得だ。
後はご飯の量を確認…よし、5合あれば何とかなるだろ。
とりあえずシンプルにこれだけで今回は行きますかね!
聖
(しっかし、俺が誰かの為に料理するとはね…)
別に今までもずっと俺は自炊生活だったんだがな。
学校でも基本自分で作った弁当だし、何だかんだで全部自分の事は自分でやってるんだよな…
まっ、だからといって料理の味が特別良いとは言えないんだけど…
聖
(仕方ないわな…自分の好みの味しか、作ってなかったんだから)
俺は少し感傷的になる。
これからは、守連たちの分も俺が作ってやらないとな…
聖
「さって、ご飯も炊けたし、麺も丁度良し!」
「さぁ、お前ら! 飯の時間だぞ〜!!」
俺は意気揚々と鍋からラーメン用の碗に一人前分ける。
阿須那はこれで良いだろうが、守連は3杯は容易いだろうな…
って言うか、5人前だからそれ以上食われると足りん!
………………………
守連
「ズズズッ! ん〜美味し〜♪」
阿須那
「へぇ…ホンマにウマイわ! 聖って、料理上手なんやな?」
守連は凄まじいペースですすっていた。
この調子だと、ご飯配る前に一杯終わりそうだな…(゚Д゚;)
阿須那はとりあえずフツーのペースですすっている。
このペースなら、一人前で大丈夫そうだ。
聖
「守連用のはどんぶりで山盛りっ…と!」
守連
「ありがと〜♪ これお代わり!」
阿須那
「冗談かと思うとったら、マジかいな!?」
「ホンマにそのどんぶりの量がスタンダードなんか!?」
「どう見てもウチの3倍はあるやろ!?」
そうだよな…フツーはこの反応するよな〜
やっぱ、守連の食事はフツーじゃないんだ…コイツは大食いなんだ!
俺はとりあえず、解ってはいた事なのでさっさとちゃんぽんを足しに行く。
俺の分は後回しだなこれは…
………………………
守連
「ご馳走さま〜♪ 満足満足〜♪」
阿須那
「結局ペロリといきよった…何であの量があの体に収まんねん!」
聖
「まぁ、世のフードファイターはあんなモンじゃないけどな」
「それこそ、守連の倍以上は食う人もいるだろうし」
テレビとかで出てるフードファイターの女性はスゴいよな〜
たまに大食いの番組とか見るけど、あれに比べたら守連はまだ現実的なのかもしれない。
そもそも、フードファイターは大会前に胃を鍛えるらしいからな…
意味が解らないが、そういう物らしい。
守連の食事は、あくまで大食いの範疇であってファイターの範疇では無いという事か。
阿須那
「はぁ…成る程、こら食費かかるわな」
聖
「解ってくれるか…お前ひとり追加でもヤバイ理由が?」
俺は遅れて自分のちゃんぽんとご飯を食べながら、阿須那にそう言う。
阿須那は口をポカンと空けながら、残っているご飯とちゃんぽんを無言で食い始めた。
聖
「守連! 食い終わったなら、グータラしてないで食器片付けろ!」
守連
「あ、ゴメンなさい…! すぐにやるね…」
俺が少しキツ目に言ってやると、守連は素直に謝って従う。
素直なのは良い所なんだがな…気を抜くとアイツはすぐダレる。
まぁ、ヘタに刺激して電撃かまされても困るわけだが…
阿須那
「守連って、ええ娘やな?」
聖
「ん…? どうかな、俺は女の子の事はよく解らないから…」
女性となんざ、ろくに話した記憶無いからな。
そもそも、俺は他人と会話した事自体、守連が初みたいなもんだ。
そんな俺が、勝手な主観で良いか悪いかなんて、決められないだろ。
阿須那
「…聖って、変な所冷めとるよな?」
聖
「冷めてる…?」
阿須那
「そっ…フツー、こんなウチみたいな巨乳美女と一緒に暮らすってなったのに、何でもっと喜ばへんの?」
「人間の事はあまりよく知らへんけど、こう言うスタイルの女は人気があるって、漫画にも書いてあったで?」
そりゃ、人間ならな。
コイツは残念ながら人間じゃない。
見た目が良いのは認めるが、欲情するかと言うと……
聖
「………」
阿須那
「……?」
俺は大きくため息を吐き、ちゃんぽんの残りを一気にすすった。
そしてご馳走さま!と言ってすぐに食器を流しに持っていく。
阿須那は?を浮かべてポカンとしていた。
聖
(ヤバイよな…フツーなら、そりゃ欲情するわっ!)
冷静になればなる程、俺は凄まじく危険な状況になっているのを理解した。
守連はまだ年下って感じの妹属性だから良いが、阿須那はどっちかって言うと年上のエロいお姉さん。
確かに、ひとつ間違えれば18禁に突っ込みかねん!
この作品はギリギリでもR17には抑えたいのだ!!
聖
(雑念を捨てよう…冷静になるのだ、俺は菩薩)
そう、煩悩は消さねばならぬ!
俺はあくまで未成年で高校2年! ○クターゾーンの域に達するわけにはいかんのだ!!
等とバカな事を考えてると、途端にどうでも良くなってきた。
やっぱ無いわ…俺が欲情とか。
そもそもエロいのは好物だが、実際にやりたいと思った事は無いからな。
俺はエロネタは好きでも、一線を超える男ではないのだ!!
………………………
阿須那
(聖…なぁ)
ウチは食事後、守連に案内されて自室を与えられる。
広さは普通で、布団が一組。
後は何も無いな…とりあえず寝るだけの部屋や。
守連
「何か解らない事があったら、気軽に聞いてね〜?」
阿須那
「なぁ守連…アンタ、聖の事は好きなん?」
ウチはこの際、直球で聞いてみた。
まずは内部調査や、ウチにとってホンマに聖は相応しいんか。
守連
「うんっ! とっても大好き♪」
「優しいし、こんなダメな私にでも、名前をくれたもん♪」
阿須那
「それは、愛や恋とは違うよな?」
守連
「…阿須那、ちゃん?」
一瞬、守連の空気が変わった気がした。
何やこのプレッシャー? 守連、顔は笑っとるが放つ気が笑ってへん!?
ウチは、少し踏み込みすぎたんやと理解した。
守連の気持ちは…ウチが気軽に触れられるもんや無いらしい…
阿須那
「…止めぇやそんなん」
「まだ出会ったばっかやのに、争いなんて御免やで?」
守連
「…だったら、絶対に聖さんは傷付けないで」
「もし、聖さんに何かあったら…私でも怒るよ?」
それは、警告やった。
守連の奴、人畜無害に振る舞っといてそれか?
聖は絶対この守連は知らんやろな…
知っとったら、あんな風に守連に接してはおらんはずや。
しかし、裏を返せばそれは守連の絶対的な信頼。
つまり、聖にはそれだけの価値がある証明。
ウチは逆に嬉しなる。
そうや、やっぱりウチの感覚は間違うてない!
名前をもろた時のあの喜び…ウチの胸の中にあるこの想いは、やっぱり本物なんや!
阿須那
「…守連、心配せんでもウチは味方や」
「聖の為になら、ウチは何でも出来るがな?」
「まぁ、仲良くしようや♪ これから長い事一緒になるんやし、な? 」
ウチは軽く微笑んで右手を出す。
しかし、守連は耳を垂らして困った顔をしてしまった。
な、何や…何かあるんか?
守連
「…ゴメンね、私直接触れるのは…怖いから」
阿須那
「触れる……っ!?」
ウチは察してつい右手を引いてもうた。
守連はピカチュウや、静電気があるんやろ…
しかし、そないに怖がる程なんか?
確かに、守連からは尋常やないプレッシャー感じたけど。
ちなみにPPの減りは多分増えへんで?
あくまで特性は静電気のはずやからな!
守連
「私、電気の扱いが下手くそだから…電力のコントロールが上手く出来ないの」
阿須那
「せやったんか…そら、知らずにすまんな」
「気ぃ悪くしたなら、謝るわ…堪忍な」
守連
「ううん、阿須那ちゃんは悪くないよ…全部、私のせいだから」
守連はそう言って俯いてしまう。
これやと、守連は聖とも触れ合った事無いんやな…
ウチは少し可哀想に思ってしもた。
守連は、きっと辛いんや…せやけど気丈に耐えとる。
スゴいな、守連は…ウチやったら、そんな状況多分耐えられへん。
守連
「阿須那ちゃん、この事出来れば聖さんには…」
阿須那
「…ええけど、ウチは言うた方がええ思うで?」
「聖かてずっと一緒におったら、いつか気付くやろ?」
守連
「うん…でも、お願い」
守連の意志は固そうやった。
ほんなら、ウチからは別に言う事無いわ。
これは守連の問題や、守連がウチを頼らんのやったら、本人に任せた方がええ。
阿須那
「OKや、ほな好きにし」
「せやけど、耐えられへん様なる前に言いや?」
「ウチかて、いつでも助けたるからな?」
「何てったって、家族になるんやから♪」
守連
「家族…?」
ウチは笑顔でそう言う。
そう、一緒に暮らして行くんやから、な?
阿須那
「せや、家族や」
「聖と、ウチと、守連…」
「とりあえず、この3人で家族や♪」
守連
「…うん、そうだね♪ 家族…家族♪」
守連は嬉しそうな顔をした。
ウチはその顔を見て、改めて確信する。
守連は、聖の事を愛してるんやな…
せやけど、守連は怖いから距離を置く。
辛いやろうけど、それは守連が自分で選んだ道や、ウチはウチのペースでやらしてもらう。
阿須那
「さて、ほんならウチは体洗って寝るわ」
「着替えとかってあるん?」
守連
「うん、聖さんが用意してくれてるよ。そこのタンスに入ってるって」
ウチは部屋の隅にあった小さなタンスを見つける。
こんなんもあったんか…見落としとったな。
引き出しを開くと、とりあえず何枚か着替えは入ってた。
とりあえず、寝間着どれか解らへんけど、これでええやろ…とウチは適当に見繕って取り出す。
阿須那
「風呂って下やっけ?」
守連
「うん、トイレの反対側にあるよ」
ウチはそれを聞いてとりあえず向かう事にする。
何分、初めての事だらけやから、守連に色々教えてもろた。
蛇口の捻り方とか、湯の出し方とか。
後、シャンプー?とか、ボディソープ?とか…
まぁ、色々あるわ…せやけど、ウチは楽しかった。
これが、人間の生活なんや。
ウチは、人になった…人化したキュウコンやけど。
これから、どうなっていくんかな?
ウチは期待に胸を膨らませる。
きっと、これからは楽しい事がたくさんある!
ウチは家族の為に、頑張って助けてあげるんや!
それが、今のウチのやりたい事……
『とりあえず、彼女いない歴16年の俺がポケモン女と日常を過ごす夢を見た。だが、後悔はしていない』
第2話 『炎の石は初代以降、第5世代まで新キャラに使う事は無かった…』
…To be continued