5. 『なないろ』
「えっと、ここなんだけど……」
ラグリについて行って見たものはーーー
ーーーー家?
自然豊かな場所にひとつ建っている、シンプルだけど木の温かみが感じられそうな家だ。
でも、なんだろう……
なぜか、すごく嬉しい……!
オレは人間のはずなのに、ポケモンだからこそ感じる何かというか、尻尾を振りたくなる感じというか……とにかくすごく嬉しい!!
「ルーブくん、もしかして感動してる?
その、ここならきっと住みやすいんじゃないかなって思ってたんだ。」
少しいたずらっぽい表情を浮かべてラグリが言う。
「うん、すごく素敵な家だね。」
素直に感想を述べる。
すると、ラグリは最初笑顔になって、でも、その後、少し苦しそうな表情になって、ちょっと目を伏せた。
家の前にあるポストを指差す。
「これは『おたすけポスト』。
最近、キャタピーちゃんのときのような災害が頻繁に起きてるんだ。
そして、たくさんのポケモンたちが災害に苦しんでるんだよ。」
「そうなんだ……」
ラグリは何かを決意したような表情になって顔を上げた。
「僕はそんなポケモンたちを助けたいんだ。みんなが安心して暮らせる世界にしたい。
僕にできることは少ないかもしれないけど、それでも少しでもできることをしたい。
そこでさ……さっきルーブくんがキャタピーちゃんを助けた時、僕、すごいと思ったんだ。
ルーブくんとなら世界一の救助隊になれると思う。
だから、僕と、救助隊やってくれませんかっ?」
ラグリは一息に言ってオレを見た。
少し不安そうに、だけど強い表情だった。
「いいよ。どうせ行くあてもないし、オレも誰かの役に立てるのなら嬉しいし!」
ラグリは嬉しそうに笑った。
「ほ、ほんとっ?じゃあ、決まり!今日から、ルーブくんと僕は仲間だね!」
「うん。でもさ、仲間になったんだから呼び捨てで呼んでよ。」
俺の言葉に、ラグリはちょっと戸惑って、じゃあ、とはにかみながら言った。
「これからよろしくね、『ルーブ』。」
「ああ、よろしくな、『ラグリ』!」
お互いに名前を呼び合って、なんだかおかしくなって、はは、と笑いあう。
「じゃあ、チーム名、決めよっか。」
ラグリがまだ笑いながら言った。
チーム名……
そんなこと言われても急には思いつかない。
何がいいんだろう……
腕を組んで考えていた、その時だった。
ーーーー……頭の中に浮かんだのは、
雨上がり、みずたまりを優しく照らす太陽と一緒に映った、七色の……ーーーー
「……っ」
その直後、頭痛がしてオレは目をつぶった。
「……ルーブ?思いついたの?」
ラグリがオレの方を不思議そうに見つめるが、正直言葉を返す余裕なんてなかった。
頭痛に耐えながら、さっき浮かんだ、あの景色を思い浮かべる。
みずたまりに映った……
「なないろ……」
なないろの、なんだあれ……
せっかく、思い出せそうだったのに……!
記憶を少しでも取り戻したい。そう思って必死に考えるけど、思い出せない。
「なないろ?……うん、いい名前だね!なんかしっくりくるよ……!!」
「え」
いや、チーム名のつもりじゃなかったんだけど……
……まぁ、いいか。
なないろ、確かに良い響きだし……!うん、良いかも!
「じゃあ、救助隊『なないろ』だな!」
「うん、明日から頑張ろうね……!」
お互い手を振り合ってラグリと別れて、オレはラグリに紹介された家を見る。
ーーん?これはオレがもらって良い……のか?
とりあえず、今日は疲れたし家を借りて寝るか……。
また明日、頑張ろう。