第一章 僕らの色が、交わる時
5. 『なないろ』
「えっと、ここなんだけど……」

ラグリについて行って見たものはーーー


ーーーー家?

自然豊かな場所にひとつ建っている、シンプルだけど木の温かみが感じられそうな家だ。

でも、なんだろう……
なぜか、すごく嬉しい……!

オレは人間のはずなのに、ポケモンだからこそ感じる何かというか、尻尾を振りたくなる感じというか……とにかくすごく嬉しい!!

「ルーブくん、もしかして感動してる?
 その、ここならきっと住みやすいんじゃないかなって思ってたんだ。」

少しいたずらっぽい表情を浮かべてラグリが言う。

「うん、すごく素敵な家だね。」

素直に感想を述べる。
すると、ラグリは最初笑顔になって、でも、その後、少し苦しそうな表情になって、ちょっと目を伏せた。
家の前にあるポストを指差す。

「これは『おたすけポスト』。
 最近、キャタピーちゃんのときのような災害が頻繁に起きてるんだ。
 そして、たくさんのポケモンたちが災害に苦しんでるんだよ。」

「そうなんだ……」

ラグリは何かを決意したような表情になって顔を上げた。

「僕はそんなポケモンたちを助けたいんだ。みんなが安心して暮らせる世界にしたい。
 僕にできることは少ないかもしれないけど、それでも少しでもできることをしたい。
 そこでさ……さっきルーブくんがキャタピーちゃんを助けた時、僕、すごいと思ったんだ。
 ルーブくんとなら世界一の救助隊になれると思う。
 だから、僕と、救助隊やってくれませんかっ?」

ラグリは一息に言ってオレを見た。
少し不安そうに、だけど強い表情だった。

「いいよ。どうせ行くあてもないし、オレも誰かの役に立てるのなら嬉しいし!」

ラグリは嬉しそうに笑った。

「ほ、ほんとっ?じゃあ、決まり!今日から、ルーブくんと僕は仲間だね!」

「うん。でもさ、仲間になったんだから呼び捨てで呼んでよ。」

俺の言葉に、ラグリはちょっと戸惑って、じゃあ、とはにかみながら言った。

「これからよろしくね、『ルーブ』。」

「ああ、よろしくな、『ラグリ』!」

お互いに名前を呼び合って、なんだかおかしくなって、はは、と笑いあう。

「じゃあ、チーム名、決めよっか。」

ラグリがまだ笑いながら言った。
チーム名……

そんなこと言われても急には思いつかない。
何がいいんだろう……

腕を組んで考えていた、その時だった。


ーーーー……頭の中に浮かんだのは、
    雨上がり、みずたまりを優しく照らす太陽と一緒に映った、七色の……ーーーー


「……っ」

その直後、頭痛がしてオレは目をつぶった。

「……ルーブ?思いついたの?」

ラグリがオレの方を不思議そうに見つめるが、正直言葉を返す余裕なんてなかった。
頭痛に耐えながら、さっき浮かんだ、あの景色を思い浮かべる。
みずたまりに映った……

「なないろ……」

なないろの、なんだあれ……
せっかく、思い出せそうだったのに……!
記憶を少しでも取り戻したい。そう思って必死に考えるけど、思い出せない。

「なないろ?……うん、いい名前だね!なんかしっくりくるよ……!!」

「え」

いや、チーム名のつもりじゃなかったんだけど……

……まぁ、いいか。
なないろ、確かに良い響きだし……!うん、良いかも!

「じゃあ、救助隊『なないろ』だな!」

「うん、明日から頑張ろうね……!」

お互い手を振り合ってラグリと別れて、オレはラグリに紹介された家を見る。


ーーん?これはオレがもらって良い……のか?

とりあえず、今日は疲れたし家を借りて寝るか……。

また明日、頑張ろう。

ポチャ ( 2022/04/16(土) 22:38 )