2. 助ける決意
ーーーーーーたしかに、オレは、ピカチュウになっていた。
でも、人間だったこと以外、何も思い出せない。
これは、どうなってるんだ?
「きみ、少し変わってるね……?
あ、じゃあ名前は?きみの名前は、なんていうの?」
……名前。
そう、それだけ覚えているのだ。ほとんど記憶がない中で、ひとつだけ。
それさえ、正しいかは分からないけれど。
「……オレは、『ルーブ』」
「ルーブくん?なんか、面白い名前だね。」
お前も変な名前だと思うけど、とは言わなかった。
急に声がしたのは、その時だった。
「だれかぁ~!助けて~!」
声の方を振り向くと、必死の様子の『バタフリー』がこちらへ飛んできた。
やっぱり、ここはポケモンの世界のようだ。人間にはまだ一人も会ってない。
「ど、どうしたの?」
ラグリも気づいたみたいだ。
バタフリーは焦った様子で話し出す。
「大変なのよ!うちのキャタピーちゃんが……ほらあなに落っこちちゃったのよ!」
「ええっ!」
「急に地面が割れて、その中にキャタピーちゃんが!
自分で出ようにも、あの子、まだ幼いから出られなくて……。
その上、助けに行こうにもポケモンが襲ってきて……!」
その言葉に、ラグリは不思議そうな顔をする。
「お、襲ってくる?ポケモン達が……?」
「ええ!きっとみんな、地割れで我を忘れているのよ!私の力じゃ、あのポケモン達には
かなわないし…」
ぽんぽんと言葉を交わしているラグリとバタフリー。
なるほど、なんとなく話は読めた。
バタフリーの子供が穴に落ちちゃって、助けに行きたいけどポケモンが襲ってきて。
強そうに見える、バタフリーでもかなわないのだ。
オレ達に助けることは到底無理だろう。
だから、今のオレ達に出来ることはーーー
「こうしちゃいられない。ルーブくん、その……一緒に、助けに行かない?」
……いやいや。
「お前、本気で言ってる?バタフリーでもかなわないんだぞ。オレ達には無理だよ。」
すると、ラグリはとたんに悲しそうな表情になる。
「だめ、かな……?」
「いや、だめというか……オレ達が役に立つとは思えないんだけど。」
その言葉に、ラグリは一瞬下を向いた後、口を開いた。
「役に立つかは分かんないけど、もしかしたら、意味のないことかもしれないけど、
僕は困ってるポケモンがいたら助けたい。
でも、僕は弱虫だから一人では怖くて……。
だから、一緒に来て欲しいけど、無理にとは言わないよ。」
これを聞いて、すごいと思った。
弱虫?
弱虫なのはオレの方だ。
他人のことを考えて、行動できる。
それって、すごいことじゃないか。
だから、オレは頷いた。
「オレがラグリの役に立つかは分かんないけど、いいよ。一緒にキャタピーを助けに
行こう。」
そう言うと、ラグリはもう一度こちらを向いた。
そして、途端に嬉しそうな顔になって、大きく頷いた。
「うん、行こう!キャタピーちゃんを助けに!」