01 第一話 レイカとカフィーと勇者達
「ま、じか、よ・・・!」
俺は血とともに言葉を吐き出す。
それは、これまでの冒険を棒にふったという、後悔のあらわれかもしれない。
たった一匹の仲間であるブースターが、慌てたようにくんくん鳴いた。
魔王。
俺に期待した全国民は、これを聞いてなにを思うだろうか。
畏怖。
圧倒的。
邪悪な敵。
・・・勇者が倒してくれる物。
そう、勇者が倒すべき物なのに。
なのに・・・。
意識がもうろうとし、膝から地面に倒れ込む。
▼ゲーム オーバー。 はじめに 戻りますか?
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「ん・・・。うあ?」
朝の日が差し込む、狭いログハウス。
上部に取り付けられたベットに、俺は寝かされていた。
はじめの村のハウスだ。
眼下を見下ろすと俺の荷物が一固めにしておいてあった。
ヒュイが入ったボールが揺れ、光と共に本人が出てくる。
「ああ、ヒュイおはよう。だめじゃないか、勝手に出てきたら。」
それを聞いてしゅんとなる。
やべえ、めっちゃかわいい。うちのブースターめっちゃかわいいんすけど。
無言でヒュイをなでる。
これ以上なでていると顔がにやけるので、やめることにする。
外に出ると、村人はもう既に起き始めていた。
「あら、勇者よ。また戻ってきたんだわ。」
「本当、ホントいつになったら倒してきてくれるのかしら?」
俺はその視線を避け、足早に森へ向かった。
向かうはずだった。
村はずれで、一人の少女に会うまでは。
「こんのコミュ障大馬鹿勇者め!」
「いって・・・ってレイカ。なんだよこんなときに。」
「こんなときに。じゃなーい!ちゃんと挨拶しなきゃひっぱたくよ!」
俺の幼なじみ―レイカ。
後ろからこつんと軽く殴られたところが、すこしだけいたい。
ヒュイに助けを求めようとオレンジ色の毛を探すと、ヒュイはレイカのサンダース、カフィーと一緒にいた。
くっそぅこのリア充めが。
「ヒュイに助けをもとめなーい。・・・あんた、また魔王に帰らされたんだって?」
レイカは絶対に俺のことを『魔王に負けた』といわない。
前になぜかと聞くと、「あんたは負けてない。」のだそうだ。意味がわからない。
「しょうがねぇじゃん。だいたい、勇者だってくじで決めたんだし・・・。」
「ぐだぐだいわない。」
レイカは人差し指をのばし、俺の口に当てた。一瞬だが、心臓が大きく打った。
「じゃあ、あんたを強くするために、ヒュイ君の訓練をしてあげましょー!」
「はぁ?」
「くぅ!?」
ほぼ同時に響く、俺とヒュイの声。
カフィーはのんきに首をたもげた。
→次回予告:ヒュイの戦闘!?