第1章 第5話 気ままな旅
リーフはヒカリから受け取った『希望』を、リュックサックの中に入れる。
人と会って少しの間会話しただけだと言うのに、リーフにしてみればその僅かな時間ですらも現実感が無かった。
(ヒカリさんと出会ったこの日を、絶対に忘れない。私がもっと強くなって、少しでもヒカリさんに追いつける様に)
不思議と気分が高揚していた。彼女が放つ熱気の様なものに感化されたのだろうか。
発奮して、気合を入れ直さなければならないと思った。立ち止まってはいられないのだ。
(何故だろう。別に話してしまっても構わないのに、アカネに話したくない私がいる……
きっと私は今の胸の高鳴りを、彼女との会話を自分の中にしまっておきたいんだろう。
いずれは話さなければならない事だけど、今だけはこの気持ちを隠しておきたい)
左手をぎゅっと握り、右手で左手を包み込む。
リーフは目を閉じて祈りを捧げるかの様に少しの間佇んでいたが、やがて決意に満ちた表情で歩き出した。
(今までの私じゃ、駄目なんだ。世界に触れる事を拒否して、閉じ篭もってばかりいた私じゃ……
そんな事をしていても、何も変えられない。私は少しでも世界が良くなる様に、何かを変えてみたい)
溢れる自信と、毅然とした態度。ヒカリから放たれる力が、リーフの殻にヒビを入れ、砕いたかの様だった。
彼女は現状を変えたかった。その為には誰かの助けを待つのでは無く、自分から動かなくてはならないと言う事を悟ったのだ。
「御父さん、お母さん。上から見ていてね……私、頑張るって約束するから」
生きている人間に伝えたワケでも無い、小さな決意。
しかしその決意がやがて大きなうねりを生んでいく様な予兆は感じられた。
アカネと合流して、人からイーブイを貰った事を告げると彼女は自分の事の様に喜ぶ。
「へぇ、気前のええ人もいるもんやねぇ。イーブイは貴重なポケモンやで。
ウチはノーマルタイプのポケモンが好きなんやけど、イーブイはそこから色々なポケモンへと進化するんや。
その進化の条件も様々で、特殊な『石』を与えたり、特定の場所に連れていったりするとな……」
リーフと離れていたのが寂しかったかの様に喋りまくるアカネ。
ジョウト地方の人間は他愛も無い会話が大好きだと言うが、アカネも例外では無かった。
「私、目標が出来たの。リーグチャンピオンを目指すって言う目標とは別の目標が。
でもその目標を達成する為にすべき事は同じ。まずはニビシティを目指しましょう」
「なんや、随分感じが変わったなぁ……別人みたいやで。
少し前まで自分に自信が無い感じやったのに。人は変わるんやね」
俯いて、時折視線を逸らす事すらあったリーフ。だが今の彼女に挫けている暇は無かった。
ヒカリと同じ様に強くありたい。強い人間になりたい。
ただ漠然と生きてきたリーフに芽生えたその気持ちが、彼女の性格にも影響を与えていた。
リーフはアカネと共に歩いている途中、イーブイを貰ったと言う事以外の情報をアカネに一切与えなかった。
アカネを疑っているワケでは無く、ただ余韻に浸っていたいと言う思いから話さなかったのだが、彼女も必要以上の詮索はしなかった。
「ウチな、根掘り葉掘り聞くのは止める様にしとるんよ。人には色々事情がある。
無理に聞けば互いに不幸を呼ぶ事だってあるかもしれへん。話したくなる時までずっと待っとればええ」
自転車を押しながら微笑むアカネに対して、少しだけ罪悪感の様なものを感じたリーフだったが、それでも全てを話しはしない。
(貴方は私に全幅の信頼を置いているのかもしれない。友達になれると思っているのよね。
私だってその気持ちは同じ。貴方とはもっと長く一緒に歩いていきたい。
でも、もう少しだけ待って。私自身、まだ心の中で完全に整理が出来たワケじゃ無いから……)
申し訳ないと思っていた事がもう1つあった。
リーフは自転車を持っていない為、アカネはリーフと出会ってから徒歩移動を強いられている。
リーフが自転車を持ってさえいれば平坦な道を一気に駆け抜ける事が出来るのだが、それが出来ないと言う現実が歯痒い。
(でも自転車って高いのよね……ショップに売ってるやつだと20万、30万は当たり前だし。
逆にちょっとでも金を節約しようとすると粗悪な自転車ですぐに故障してしまう。
色々待たせてしまうのは心苦しいんだけど……もう少しだけ待って。もう少し、ね)
心の中でアカネに何度も頭を下げるリーフ。アカネはその心境を察したのか、リーフの肩を叩いた。
「ウチに負い目を感じる必要なんかあらへんよ。ウチが好きでリーフはんの旅についていこうって思ったんやから。
それに走るのも面白いけど歩くのかて面白いやん。見方を変えれば色々なモンが見えてくるんやで」
変わろうと思っても、人間の血液を全部取り替える事が出来ない様に、本質は残り続ける。
アカネと自転車に視線を合わせ、ばつの悪そうな表情を浮かべたその一瞬を彼女は見逃さなかった。
「ごめんなさい」
「大丈夫やて、気にする必要は全く無いんやから……お、入口が見えてきたで」
トキワシティからニビシティへと向かう為に通る2番道路は、『トキワの森』とも呼ばれている。
人が通る為に舗装された道路から横道にそれると、虫ポケモン達の生態を見る事が出来るのが最大の特徴だ。
爽やかな森の空気を感じ、木漏れ日の中で森林浴が出来ると言う事もあって、通過すると言う目的以外でこの場所を訪れる者も少なくなかった。
「結構広くて迷うから、脇道にそれん様にせんとな……
話によると虫を取る為にこの森に入って迷子になった奴もおるらしいわ。凶暴なポケモンもおるから油断は禁物やで」
刺されれば一瞬で泡を吹いて倒れる程の毒針を持つスピアー、幻覚作用のある鱗粉をばらまくバタフリー、
近付くと子供であるミツハニーを何匹も飛ばしてくるビークインなど、危険な野生ポケモンの宝庫でもある。
勿論殆どのポケモンが危険である事には変わりが無いのだが。
その為子供・大人問わずポケモンを持っていない者がトキワの森に入る事は禁じられていた。
「元気やなぁあの子達」
そんな大人ですら命の危険がある野生のポケモン達に、虫取り少年達は果敢に立ち向かっていく。
「いけ、トランセル!体当たりだ!」
1人の虫取り少年が、スピアーに対してトランセルを地面に出し応戦させる。
あわよくばHPを減らして捕まえようとしている様だが、まるで歯が立たない。
「うわ、やばい!トランセル、エレキネット、エレキネットだ!」
中途半端に傷を負い怒り狂って突撃しようとしてきたスピアーの眼前に電気で出来た網が出現する。
絡めとられ痺れているスピアーを尻目に、虫取り少年は捕獲を諦め一目散に逃げていった。
『いくら何でも無謀が過ぎるロ。レベルの差が10以上も開いていたら勝負にならないのは当たり前ロに』
スピアーが虫取り少年の後を追いかける様に姿を消すのを見届けた後、ロトム図鑑はそう言って理解出来ないと言った態度を見せる。
「人間っちゅーのは無謀でもやると決めたらやる生き物なんよ。ポケモンには解らへんかもしれんけど」
『成功する可能性が限りなく低くてもやるロ?』
「可能性を考えていたら一歩を踏み出す事なんて出来ないもの。ああいうのは確率論じゃないのよ」
自分に言い聞かせる様にリーフはそうロトム図鑑に話しかけた後、子供をあやす様に頭を撫でる。
『でも、勝利する可能性を出来る限り増やす事。つまり勝率を上げる事は重要ロ!
闇雲に挑んでもバトルには勝てないロ。レベルを上げていかないといけないロ』
腰を落ち着ける事が出来る場所、ニビシティで何らかの手を打つ必要性はあった。
ヒトカゲもオニスズメもイーブイもレベルが上がっていないと言う事実。不安は拭えない。
「ま、ジムリーダーに低レベルのポケモンで挑めなんて無茶な注文を付けられとるワケや無いんやしええやろ。
何処かでバトルをして、レベルを上げる必要はあるんやけどな」
リーフが頷き、何気なく視線を別の方向に移した瞬間、彼女の目に飛び込んできたものがあった。
草の上にイーゼルを立て、パレットと筆を用い絵を描いている少女がいる。
少女と言ってもリーフ達より相当年上で、20歳では無いであろうと思う程度だ。
「うーん……困りましたね。絵になる様なものが欲しいんですが」
長い金色の髪には所々絵の具が付着し、Tシャツもかつては純白であったと思われるが絵の具が付いているせいで模様の様に見える。
紺色のジーンズも所々破れており、とても御洒落に気を遣っている様には見えない。
「ま、悩んでも仕方が無いですね。休憩してから場所を変えましょう」
側にあった切り株の上にリュックサックを乗せると、おにぎりを取り出して口に咥える。
「うわわ、助けてッ!!」
その時、その少女の背後から先程の虫取り少年が走ってきた。
その後ろには余程スピアーを刺激してしまったのか、数匹のスピアーが激昂したかの様な表情を見せつつ彼を追いかけている。
「うーん、良いですね。頭に血がのぼっているスピアーの群れ……創作意欲をかきたてられます」
少女がおにぎりを一口食べ、片方の手におにぎりを戻すともう片方の手には何時の間にかモンスターボールが握られていた。
「黙って見ているワケにもいきませんし、何とかしましょうか。アブリボン、かふんだんごです」
閃光と共に姿を現した小さなポケモンは、見た目ではとても数匹のスピアーの相手が出来そうでは無い。
しかし羽ばたきながらそのポケモンが黄色い球体をスピアーにぶつけると、スピアーの赤い瞳の色が少し変化した。
「自分の巣に戻って、ゆっくりくつろいでください。怒っても何も良い事は無いですよ」
スピアーはすっかり戦闘意欲を失ってしまったのか、針になっている両手をだらんと下げると飛んできた方向へと戻っていく。
一緒についてきていた別のスピアーも、慌ててそのスピアーを追いかけて飛んでいった。
「あれ、傷になってますね?ちょっと腕を見せてもらえますか」
「いいよ、ちょっと擦りむいただけだから」
トランセルを抱きかかえたまま立ち上がった少年の腕や膝は、転んだのか擦り傷が出来ている。
「駄目ですよ。子供の頃は汚れた傷から破傷風になるリスクがあるんですから。
アブリボン、かふんだんごをその子にぶつけてあげてください」
アブリボンがその少女の言葉に対して頷き、再び黄色い球体を患部にぶつけると、最初から傷など無かったかの様に傷が消えていった。
「アブリボンの花粉には、人やポケモンの怒りの感情を和らげる力があります。
そして癒やしの力も。どうせなら、力で押さえつけるのでは無くこういう方法で争い事を解決したいですよね」
「なんだよ、お前だって『子供』だろ!」
助けてもらったにも関わらず、虫取り少年は捨て台詞を吐くと走り去っていく。
自分が全く抵抗する事が出来ず、命の危機を女性に救ってもらった事が不満だったのだろう。
「……まぁ、そうなんですけどねー」
助けた少年に嫌な事を言われても少女はマイペースを貫き、また一口おにぎりをほおばると大きく伸びをした。
「さっきの戦い、凄かったです!凶暴なスピアーを倒す事無く追い払ってしまうなんて」
リーフとアカネは彼女に駆け寄り、称賛の言葉を述べたが彼女は特に表情を変えはしなかった。
「大した事じゃ無いですよ。私の力じゃ無いですから……アブリボン、戻ってください」
マイペースと言うよりは、人と一定の距離を置いている様にも感じられる。
リーフはかつて同じタイプの人間だった為、彼女が壁を築いている事をすぐに察した。
「私、ポケモントレーナーのリーフって言います。こっちはアカネ。
私達2人共トレーナーで、今はニビシティを目指している所です」
彼女の心に近付こう。そう思ってリーフは自分達に敵意が無い事を言葉で伝える。
少女は暫くおにぎりを口に咥えたまま黙っていたが、やがて口元を緩ませた。
「君はポケモントレーナーなんですね。私はマツリカ。バックパッカー兼絵描きです」
そう自己紹介した少女は、旅の先々で絵を描き、その絵を売る事で日銭を稼いでいる事をリーフ達に告げた。
得たお金でまた次の街へ出向き、そこで絵を描いてその絵を人に売る。
それを繰り返す事により様々なエリアを見てきたのだと言う。
「私はアローラ地方出身なんですけど、色々なものを見る事で見聞を広めたいなと思ったんですよ。
カロス地方のプリズムタワーも見ましたし、イッシュ地方のリバディガーデン塔も見ました。
水を吐き続けるマーライオン。水晶で出来た巨大なピラミッド……
世界は驚きに満ちています。そして、その全てが私の創作意欲に火をつけてくれるんです」
『凄いロ!ネットワーク上では『幻の天才画家』として噂になってるロ!
1つとして同じ作品は存在せず、その絵のクオリティの高さから1枚10万円の値がついた事もあるそうロ』
人間、どうしても金が絡むと目が変わってしまうものだが、リーフは動じなかった。
「そういう事目当てに近付いてくる人とかおるんか?」
アカネはジョウト出身らしくそういう事が少し気になってしまう性分らしい。
「うーん……そもそも私がそういう画家だって思われた事が無いですね。
見ての通りこの恰好ですし、1つの場所に留まっている事が無いので……
だから基本的には一期一会です。誰かと会っても、もう1回会うって事はなかなか無いですよ」
野暮ったい恰好、少しボサボサになっている髪。
シャワーは浴びているのだろうが服の替えはあまり持っていない様にも見える。
「あ、あの……私とアカネの姿を描いてもらってもいいですか?
貴方に会った記念にしたいんです。御代は払いますから」
トレーナーでは無いが、かなりの実力を誇る彼女と繋がりを持っておいた方が良い。
直感的にそう判断したリーフは少し時間を潰してでも絵を描いてもらうべきだと思った。
「良いですよ。君達結構絵になる恰好してますからね。
ただし、絵のモデルなんですから動かないでくださいよ。
写真みたいに一瞬でハイ出来ました。とはならないのが絵画です」
森の木々をバックに、2人が横並びで立つとマツリカは絵筆を取る。
「そうですね……デッサンと下絵を塗りたいので、30分位は動かないでください。
完璧に動かないと言うのが無理なのは解っていますから、動いても大丈夫。
大切なのは『動いたら元のポーズに戻る事』ですよ」
ロトム図鑑はフワフワ浮いている為モデルとして採用されず、少しだけ機嫌を悪くしていた。
『ボクだって超一級の画家にかっこよく描いてもらいたかったロ!』
「静かに」
マイペースで気楽な雰囲気を出していたマツリカが、一転して真剣な表情になっている。
絵を描いている時は徹頭徹尾真面目で、ポーズの仕方などをリーフ達に指定していた。
「変なポーズを取ったり、ピースサイン等をしない方が『モデルとしては』楽です。
何しろその状態で動かないでいる事自体が至難ですからね」
欠伸やくしゃみを咎める様な事はしない。だが、絶対に元のポーズと表情を記憶しておく事。
マツリカが課した条件は簡単な様でいて意外と難しかった。
(自分がどんな表情でイーゼルの前に立っているのか忘れそう……
アカネはあまり待つのが得意じゃなさそうだし、何も起きなきゃいいんだけど)
ジョウト出身の人間は『じっとしている』と言う事が大の苦手である。
常に身振り手振りで面白おかしく喋る事を信条としているアカネが微動だにしないのは奇跡と言っても過言では無かった。
(リーフはんには考えがあるんや。これから先の事を見据えての一手やろ。
デッサンと下絵を描き、そこまでの時間が無いから一旦別れるとなれば、連絡が必要になる。
絵も欲しいけど、一番欲しいのはマツリカはんの『電話番号』に違いない)
長い時間を耐えに耐え、何とか30分間リーフとアカネは動かずにデッサン作業を乗り切った。
「後は色塗りの為の下絵。本塗りじゃなくて、服や背景の色指定をする為の行為です」
今度は微動だにする必要こそ無いものの、両手両足を伸ばしてくれ等と言う注文が入る。
「立体的な絵を描く為には、描かなくてもモデルの裏側を知っておく必要がありますから」
静止している絵でも、しゃがんだり後ろを向いたりすると言うのがリーフにはいまいち解らなかったが、その工程も終わった。
「それじゃあ、今度お会いした時に渡しますね。電話番号を登録しておきましょう。
実は初めての経験だったんですよね。こういう事をするの。
何時もは絵を完成させてから路上で販売する事の方が多かったので……」
近くにいたロトム図鑑に電話番号を教えると、ロトム図鑑はすぐにその番号を登録した。
『ボクは図鑑機能だけでなく、テレビ電話としての機能も内蔵されているロ!
どんな所にいても、電話番号さえ登録されていれば何時でも、誰とでも話が出来るロ!』
マツリカの腕には立体映像が出現する最新型のポケギアが装着されていた。
恐らく金を貯めて購入したのだろう。その為に出費を切り詰めたものと思われる。
「さぁて、私はもう少しこの森で絵になるものを探す事にしますよ。
君達と会えてマツリカはとても楽しかったです。またお会いしましょう」
リーフとアカネはマツリカに別れを告げ、トキワの森を後にした。
脇道にそれさえしなければ意外と森を抜けるのは早く、合計1時間で森の出口へと辿り着く。
「イワヤマトンネルとかはこう簡単には通れへんで。
丸1日歩く事も覚悟せんと。トレーナーは足腰を鍛える事も大事やな」
洞窟では自転車に乗って楽々……とはいかない。自転車があってもなくても歩く事になるだろう。
自転車を小さく畳める事が出来ればいいのに、とリーフは思った。
「それにしてもあの人、トレーナーになっていても大成していたと思うわ。
一瞬でスピアーを宥めてしまうなんて。しかもたった1匹のポケモンで」
「先頭を飛んでいたとは言え、あのスピアーさえ大人しくしてしまえば後は大丈夫と言う判断が出来たのも凄いわな。
どうすれば状況を打破出来るのかがよう解っとる。凄い御人やわ」
朝から出発し、途中で人と会ったりしていた為ニビシティに到着したのは午後3時頃だった。
「うわぁ、凄い……トキワシティはそこまでじゃ無かったけど、ニビシティは広いわね」
「高い建物も結構あるしな。カントーでは結構栄えてる所らしいで。
昔結構大きな隕石が落ちてきて、それから街が発展していったっちゅう話も聞いたなぁ」
トキワシティより規模、品揃え共に充実しているフレンドリィショップに、ニビシティ科学博物館。
トレーナーズスクールの横に宿舎とポケモンジムが併設されている。
「やるべき事は色々あるやろうけど、まずは宿舎へ行ってチェックインする所からやね。
仰山人が泊まっとるからアカンみたいな事にならんとええけど……」
トキワシティはそこまで人の出入りが盛んでは無いが、街の規模が大きくなればなる程トレーナーも多くなる。
トレーナーが多くなれば当然宿泊者も増える為、アカネはそれを心配していた。
「いや、勿論あぶれても泊まる所はあると思うで?でも最低一泊4000円はかかるやんか。
余程の金持ちトレーナーならともかく、ウチらみたいなギリギリでやってこうと言うトレーナーには痛過ぎるって。
ロハで済ます事が出来るならそれが一番ええに決まっとるがな。頼むでぇ……」
両手を擦り合わせて祈るアカネに対して、リーフは比較的楽観視していた。
(宿舎にまるきり空きが無いって事は無いと思うんだけどなぁ……
一番最初の街でトレーナーがひっきりなしに来るんだから、収容人数も多いと思うわ)
自転車を置いて身軽になる為にも、宿舎にチェックインしなければならない。
2人はニビシティのジムリーダーから宿泊する許可を得る為、ニビシティジムへと足を運ぶのだった。